ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

102 / 298
第7話 ありふれた道中

 

 

 

 

朝もやが立ち込める中、俺、葵、優花、ドルモン、リュウダモン、ハックモン、ルイズ、ギーシュは校門前に居た。

すると、ギーシュが口を開く。

 

「あの、君たち」

 

全員がギーシュの方を向く。

 

「アルビオンへ行くって事は、ラ・ロシェールへ向かうんだろ? じゃあ、何で馬を用意しないんだい? まさか、歩いていく心算じゃないだろうね?」

 

ルイズは一瞬怪訝な顔をしたが、ギーシュは何も知らないことを思い出し、

 

「そういえば、アンタは知らなかったわね」

 

そう言って俺に視線を向けた。

 

「タイシ、頼むわ」

 

その言葉に俺は〝宝物庫〟から魔力駆動四輪を目の前に出した。

横を見れば、ギーシュが目を見開いて固まっている。

 

「な、ななな、何だねこれは!?」

 

ギーシュが思わず叫ぶ。

 

「これは、タイシ達が居た所にある乗り物で、馬の要らない馬車みたいなものよ」

 

ルイズがドヤ顔しながらそう言った。

何故ルイズがドヤ顔するのか分からないが。

 

「これは馬なんかよりずっと速くて、しかも疲れ知らずな優れモノよ! これならきっと、1日足らずでラ・ロシェールまで辿り着けるわ!」

 

ルイズはそう言うが、どうせ早く着いても、時期の関係で足止めを食うと思うが。

つーか、ドルガモンに進化させて飛んでいった方が早いのか?

 

「あ、ああ。全く驚かされるね。…………と、そうだ、お願いがあるんだが……………」

 

「なによ?」

 

「僕の使い魔を連れて行きたいんだ」

 

「使い魔ねぇ…………」

 

「ギーシュの使い魔って、あのでっかいモグラだよね?」

 

俺が声を漏らし、葵がそう言う。

 

「その通りさ! カモン! ヴェルダンテ!」

 

ギーシュがそう言いながら足で地面を叩く。

すると、地面がモコモコと盛り上がり、ボコッと大きなモグラが顔を出した。

ギーシュはそのモグラに抱きつく。

 

「ヴェルダンテ!ああ!僕の可愛いヴェルダンテ!」

 

そんなギーシュの姿に、優花は呆れた視線を向ける。

 

「まあ、感性は人それぞれって事ね…………」

 

「アンタの使い魔ってジャイアントモールだったの?」

 

「そうだ。ああ、ヴェルダンテ、君は何時見ても可愛いね。困ってしまうね。どばどばミミズはいっぱい食べてきたかい?」

 

モグモグモグ、と嬉しそうに巨大モグラが鼻をひくつかせる。

 

「そうか!そりゃよかった!」

 

ギーシュは巨大モグラに頬を擦り寄せている。

つーか、どうやって意思疎通してんだか。

 

「ねえ、ギーシュ。ダメよ。その生き物、地面の中を進んでいくんでしょう?」

 

「そうだ。ヴェルダンテはなにせ、モグラだからな」

 

「そんなの連れて行けないわよ。私達、コレで行くのよ」

 

ルイズは困ったように魔力駆動四輪を指差しながら言った。

 

「結構、地面を掘って進むの速いんだぜ?なあ、ヴェルダンテ」

 

巨大モグラはうんうんと頷く。

 

「いや、馬より遥かに速いって言ってるのにどうやって付いて来る気だよ? むしろ、どうしても連れて行きたいっていうのなら、荷台に乗っけてった方が早いぞ」

 

「私達、これからアルビオンに行くのよ。地面を掘って進む生き物を連れて行くなんて、ダメよ」

 

まあ浮遊大陸だし。

原作ではMVPだったが、多分必要無いし。

ルイズがそう言うと、ギーシュは地面に膝をついた。

 

「お別れなんて、つらい、つらすぎるよ……………ヴェルダンテ…………」

 

その時、巨大モグラが鼻をひくつかせた。

 

「な、なによこのモグラ」

 

くんかくんかと、ルイズに擦り寄る。

 

「ちょ、ちょっと!」

 

巨大モグラはいきなりルイズを押し倒すと、鼻で体をまさぐりだした。

 

「や!ちょっと何処触ってるのよ!」

 

ルイズは体をモグラの鼻でつつきまわされ、地面をのたうち回る。

 

「いやぁ、巨大モグラと戯れる美少女ってのは、ある意味官能的だな」

 

「否定はしない。女に色気が足りないが」

 

ギーシュの言葉に俺は腕を組んで頷きあった。

巨大モグラはルイズの右手の薬指に光るルビーを見つけると、そこに鼻を擦り寄せた。

 

「この!無礼なモグラね!姫様に頂いた指輪に鼻をくっつけないで!」

 

ギーシュが頷きながら呟いた。

 

「なるほど、指輪か。ヴェルダンテは宝石が大好きだからね」

 

「現金なモグラだな」

 

「現金とか言わないでくれたまえ。ヴェルダンテは貴重な鉱石や宝石を僕のために見つけてきてくれるんだ。『土』系統のメイジの僕にとって、この上も無い、素敵な協力者さ」

 

その時、一陣の風が舞い上がり、ルイズに抱きつくモグラを吹き飛ばした。

やっぱ来たのか。

 

「誰だッ!!」

 

ギーシュが激昂して叫ぶ。

朝もやの中から羽帽子を被った、1人の長身の男が現れた。

 

「貴様、僕のヴェルダンテに何をするんだ!」

 

ギーシュは杖である薔薇の造花を掲げる。

だが、一瞬早く羽帽子の男が杖を引き抜き、薔薇の造花を吹き飛ばした。

 

「僕は敵じゃない。姫殿下より、君たちに同行することを命じられてね。君たちだけではやはり心もとないらしい。しかし、お忍びの任務であるゆえ、一部隊つけるわけにもいかぬ。そこで僕が指名されたって訳だ」

 

長身の男は帽子を取ると胸に当てて一礼し、

 

「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」

 

そう名乗った。

その言葉に、文句を言おうと口を開きかけたギーシュは項垂れる。

魔法衛士隊の隊長という肩書を聞いて、相手が悪いと悟ったのだろう。

ワルドはそんなギーシュの様子を見て首を振った。

 

「すまない。婚約者がモグラに襲われているのを見て見ぬ振りは出来なくてね」

 

「え?」

 

ギーシュが驚きの声を漏らす。

 

「ワルド様…………」

 

立ち上がったルイズが、震える声で言った。

 

「久しぶりだな! ルイズ! 僕のルイズ!」

 

ワルドは笑みを浮かべると、ルイズに駆け寄り、抱え上げた。

 

「お久しぶりでございます」

 

ルイズは頬を染めて、ワルドに抱きかかえられている。

 

「相変わらず軽いな君は!まるで羽のようだね!」

 

「…………お恥ずかしいですわ」

 

そんなワルドを見て、

 

「ロリコンだな」

 

「ロリコンだね」

 

「ロリコンね」

 

満場一致でワルドはロリコンと認定とした。

 

「……………彼らを、紹介してくれたまえ」

 

何か間があった気がしたが、ワルドはルイズを地面に下ろし、俺達の反応をスルーしつつそう言った。

 

「あ、あの…………ギーシュ・ド・グラモンと使い魔のタイシ、アオイ、ユウカ、ドルモン、リュウダモン、ハックモンです」

 

ルイズは順番に指差して言う。

それに合わせて一応会釈をしておいた。

 

「君達がルイズの使い魔かい? 人とは思わなかったな」

 

ワルドは気さくな感じで俺達に近寄った。

 

「僕の婚約者がお世話になっているよ」

 

「まあ、一応使い魔(仮)なんで」

 

ホントに何で俺達を召喚するんだか。

つい溜息が出てしまう。

その様子を勘違いしたのか、

 

「どうした? もしかして、アルビオンに行くのが怖いのかい? なあに! 何も怖いことなんてあるもんか。君はあの『土くれ』のフーケを追い払ったのだろう? その勇気があれば、なんだってできるさ!」

 

いや、ルイズの我儘に付き合っただけです。

そう内心突っ込む。

すると、ワルドが口笛を吹き、朝もやの中からグリフォンが現れた。

鷲の頭と上半身に、獅子の下半身がついた地球の伝説にもある幻獣だ。

立派な鷲の翼も生えている。

ワルドはひらりとグリフォンに跨ると、ルイズに手招きした。

 

「おいで、ルイズ」

 

ルイズはちょっと躊躇うようにして俯き、暫くモジモジした後にワルドに抱きかかえられ、グリフォンに跨った。

俺達も魔力駆動四輪に乗り込む。

ワルドは手綱を握り、杖を掲げて叫んだ。

 

「では、諸君!出撃だ!」

 

その号令でグリフォンが空に羽搏き、俺は魔力駆動四輪のアクセルを踏むのだった。

 

 

 

 

 

 

俺達は順調に道中を進んでいた。

つーか、寧ろ遅すぎる位だった。

ワルドのグリフォンは普通の馬よりかは速いのだろうが、道程のペース配分を考えてそこまでのスピードを出していなかった。

その所為でトロトロ走ることになり、ストレスが溜まっていたので、何度アクセルを思いっきり踏んで置き去りにしようかと思った事か。

日が沈んだ頃にラ・ロシェールの入り口に差し掛かる。

峡谷の間を進んでいた俺は、もし原作通りならそろそろかと思っていると、突然松明が投げ込まれた。

俺が来たかと思っていると、何本もの矢が魔力駆動四輪に降り注いでくる。

 

「うわぁああああっ!?」

 

ギーシュは窓からその光景を目撃したのか慌てふためく。

だが、魔力駆動四輪に降り注いだ矢は、一本たりとも突き立つことなく、装甲や強化ガラスの前に弾かれた。

 

「よくこんな得体の知れない乗り物を襲おうと思うな…………」

 

俺は余りの不自然さにそう漏らす。

 

「大丈夫か!?」

 

上空からワルドの声が聞えてくる。

 

「ご心配なく」

 

車の中からそう言っても聞こえないと思うので、序に手を振っておく。

 

「夜盗か山賊の類か?」

 

ワルドがそう呟く。

自分が手引きしているくせに白々しい。

 

「もしかしたら、アルビオンの貴族の仕業かも………」

 

「貴族なら、弓は使わんだろう」

 

この世界の貴族は、武器を使う事が恥みたいな風習があるからなぁ。

すると突然、崖の上で竜巻が発生した。

続けて男達の悲鳴が響く。

 

「おや、『風』の呪文じゃないか」

 

ワルドが呟いた。

崖の上の男たちが転がり落ちてきて、地面に体を打ちつけ、うめき声を上げている。

すると、空から見慣れた風竜が姿をみせた。

ルイズが驚いた声を上げる。

 

「シルフィード!」

 

それは、タバサの使い魔シルフィードだった。

地面に降りると、キュルケがぴょんと飛び降りた。

 

「お待たせ」

 

ルイズがグリフォンから飛び降りて、キュルケに怒鳴った。

 

「お待たせじゃないわよッ! 何しに来たのよ!」

 

すると、シルフィードが魔力駆動四輪の窓からドルモンを見つけると、

 

「きゅいきゅい」

 

嬉しそうに鳴き声を上げる。

その直後にキュルケがワルドにすり寄るが、ワルドにあっさりと躱されて不満そうな表情をするのだった。

 

 

 

 

何故2人と1匹がここにいるのかを要約すると、まず、朝の出発をシルフィードが目撃。

ドルモンが居ることに気付くと、すぐにタバサを叩き起こして、着替えを急かす。

丁度着替え終わったときに、同じく朝の出発を目撃していたキュルケが乱入。

そのまま、便乗して後をつけてきた、という事らしい。

シルフィードのドルモンへの執着が凄いんだが…………

 

 

 

 

ラ・ロシェールで一番上等な宿、『女神の杵』亭に泊まることにした俺達は、一階の酒場でくつろいでいた。

無駄に豪華すぎて庶民な俺達は逆に落ち着かないが。

そこに、『桟橋』へ乗船の交渉に行っていたワルドとルイズが帰ってきた。

ワルドは席に着くと、困ったように言った。

 

「アルビオンに渡る船は明後日にならないと、出ないそうだ」

 

「急ぎの任務なのに・・・・・」

 

ルイズは唇を尖らせている。

まあ、分かっていたことだが。

 

「あたしはアルビオンに行ったことがないからわかんないけど、どうして明日は船が出ないの?」

 

キュルケの方を向いて、ワルドが答えた。

 

「明日の夜は月が重なるだろう?『スヴェル』の月夜だ。その翌日の朝、アルビオンが最も、ラ・ロシェールに近付く」

 

「ふ~ん」

 

キュルケは相槌をうった。

 

「さて、じゃあ、今日はもう寝よう。部屋を取った」

 

ワルドは鍵束を机の上に置いた。

 

「5つ部屋を取った。そして、僕とルイズが同室だ。残りは君たちで好きにしたまえ」

 

まあ特に困ることは無いが。

だが、ルイズは驚いた表情をしている。

 

「婚約者だからな。当然だろう?」

 

「そんな、ダメよ!まだ私達結婚してるわけじゃないじゃない!」

 

しかし、ワルドは首を振って、ルイズを見つめた。

 

「大事な話があるんだ。2人きりで話がしたい」

 

結局ワルドに押し切られ、ルイズとワルドの同室が決まった。

 

「じゃあ、私達で一部屋だね!」

 

葵がカギを取ると、俺と優花に笑みを向けながら言う。

 

「おう」

 

「当然ね」

 

俺と優花が頷くと、

 

「ちょ、君達………!?」

 

ギーシュが驚愕の表情を俺達に向けるが、

 

「恋人同士だからな。当然だろう?」

 

さっきのワルドの言葉を真似する様にそう言ってみた。

 

「因みにデジモン達で一部屋な」

 

そして、残りの部屋は、キュルケとタバサ。

そしてギーシュの1人部屋という部屋割りとなった。

 

 

 

尚、その夜の俺達の部屋からは、不思議な事に物音一つしなかったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

俺達が朝起きて服を着た時、部屋の扉がノックされた。

俺は、まさかと思いながら扉を開けると、

 

「おはよう、使い魔君」

 

ワルドが俺を見下ろしながら、そう挨拶してきた。

ワルドの身長は普通に2m超えなので、当然ながら見上げなければならない。

 

「(仮)ですけど……………こんな朝っぱらから何か?」

 

一応訂正しつつそう聞くと、

 

「あの『土くれ』を撃退した君の実力がどのぐらいのものだか知りたいんだ。ちょっと手合わせ願いたい」

 

ガンダールヴじゃなくても勝負挑んで来るのかよ。

 

「あ~、あんまり気が進まないんですけど…………」

 

俺は気怠げに頭を掻きながらそう答える、

 

「おや? 逃げるのかい?」

 

「どう受け取るかはご自由に。基本的に荒事は好きじゃないんですよ」

 

嘘は行ってない。

荒事は好まないが、必要な時には力を振るう事を躊躇わないだけだ。

 

「だが、男として自分の力を試したくはないかい?」

 

「そこは見解の相違ですね。俺にとって『力』は誇示する為に振るうものではなく、大切なモノを護る為に振るうものです。それを臆病と言うのなら別に否定はしません。俺は自分の『大切』を失う事を非常に恐れている。それは自覚していますので」

 

俺には俺の価値観がある。

 

「………残念だ。君の力に興味があったのだが…………」

 

「『敵』じゃなければ『力』を振るう気はありませんよ。『敵』じゃ無ければね」

 

ワルドは渋った顔をしていたが、それ以上無理に踏み込むことはせず、踵を返して去っていった。

 

 

 

 

 

 

その日の夕方。

全員で宿屋の一階の酒場で夕食を摂っていた。

 

「さて、明日はいよいよアルビオンへ出発だ。各自、準備を怠らないように」

 

ワルドが皆へ注意するよう呼びかける。

まあ、準備と言っても俺達は〝宝物庫〟の中に全部入ってるんだがな。

って言うか、原作基順だと襲撃があったような気が…………

そう思った瞬間、

 

「……………どうやら団体さんのようね」

 

優花がポツリと呟く。

次の瞬間、玄関から傭兵の一団が雪崩れ込んで来て一直線に俺達に向かって襲い掛かって来た。

鎧を着こんだ傭兵が斧を振り被って飛び掛かってくる。

ワルドが即座に杖を抜いて、風の魔法でその傭兵を吹き飛ばした。

タバサも風の魔法で床と一体化しているテーブルの脚を切ると、そのテーブルを倒して盾にした。

キュルケも机の影から炎の魔法で傭兵たちに向かって攻撃する。

すると、今度は矢が雨の様に放たれ、キュルケは慌てて頭を引っ込めた。

 

「参ったね」

 

ワルドの言葉にキュルケが頷き、

 

「やっぱりこの前の連中は、ただの物盗りじゃなかったわね」

 

多分ワルドが手引きしたんだろうけどな。

 

「………奴らはちびちびと魔法を使わせて、精神力が切れたところを見計らい、一斉に突撃してくるわよ。そしたら、どうすんの?」

 

「僕のゴーレムで防いでやる」

 

キュルケの言葉にギーシュが勇ましそうにそう言うが、

 

「足が震えてるぞ」

 

ギーシュの足が小鹿の様に震えていた。

キュルケは、淡々と戦力を分析しながら言った。

 

「ギーシュ、アンタの『ワルキューレ』じゃあ、一個小隊ぐらいが関の山ね。相手は手練れの傭兵達よ」

 

「やってみなくちゃわからない」

 

「あのねギーシュ。あたしは戦のことなら、あなたよりちょっとばっか専門なの」

 

「僕はグラモン元帥の息子だぞ。卑しき傭兵如きに後れをとってなるものか」

 

「ったく、トリステインの貴族は口だけは勇ましいんだから。だから戦に弱いのよ」

 

ギーシュは立ち上がって、呪文を唱えようとした。

ワルドがシャツの裾を引っ張って、それを制する。

 

「いいか諸君」

 

ワルドは低い声で言った。

 

「このような任務は、半数が目的地にたどり着ければ、成功とされる。ここは二手に別れて…………」

 

「必要無いわよ」

 

ワルドの言葉を遮りながら、優花が気怠そうにそう言った。

 

「ユウカ?」

 

ルイズが呟くと、優花は戸惑いもせずに立ち上がると、ヒョイとテーブルを乗り越えてその姿を傭兵たちの前に晒す。

 

「ちょ、ユウカ!?」

 

キュルケが慌てた様に叫ぶが、その瞬間、十数本の矢が一斉に飛んできた。

 

「ユウカ!?」

 

ルイズも叫ぶ。

矢が優花に降り注ぐ寸前、ルイズ達は思わず目を瞑ってしまう。

だが、次の瞬間、矢が刺さった音が聞こえない事を不思議に思いながら恐る恐る目を開けると、

 

「「「嘘……………」」」

 

ルイズ、キュルケ、ギーシュが揃って驚愕の声を漏らした。

何故なら、優花の手には先程放たれた矢が1本残らず掴まれていたからだ。

すると、優花はその矢を掴んだまま、両腕をクロスする様に振りかぶり、

 

「ほら、返すわよっ」

 

広げると同時に投げ放った。

投げ返された矢は、弓で放たれる時よりも速いスピードで弓を持った傭兵達に当たり、その勢いで大きく吹き飛ぶ。

まあ、急所は外しているようで死んではいない様だが。

すると、優花は、

 

「警告するわ……………死にたくなければ立ち去りなさい!!」

 

〝威圧〟を発動しながらそう言い放った。

直接押し付けられるような重圧をその身に受けた傭兵達は、

 

「じょ、冗談じゃねえ!」

 

「こんな化物なんて聞いて無いぞ!」

 

「割に合わねえよ! こんなの!」

 

その〝威圧〟に耐えきれずに一目散に逃げて行く。

 

「………他愛無いわね」

 

何人かは残ると思っていたのか、全員逃げ出した傭兵達を見て、優花は拍子抜けしたように呟いた。

 

「……………これは驚きだね………まさか全員追い返すとは………」

 

ワルドも意外そうな表情だ。

 

「…………だが、応援が来ないとも限らない。今すぐ出発しよう!」

 

その言葉に全員が頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

酒場での襲撃の後、俺達は桟橋へ向かい、ワルドが船長を叩き起こして脅迫に近い交渉の結果、ワルドが風石の代わりをするという事で船を出して貰えることになった。

船が空を飛ぶ中、俺は宛がわれた部屋で、船に乗る前にも襲撃があったんじゃ無かったかな~?と、うろ覚えの原作知識との違いに首を捻っていた。

まあ、フーケが捕まっていない事から、この襲撃に加わっていない事は、まあ分かるが。

つーか、この世界の船が浮くのは風石の力で浮いてるって話だよな?

重力魔法とは違うみたいだから、どんだけの風の力がかかっているのか不思議で仕方がない。

すると、

 

「アルビオンには、明日の昼過ぎには着くそうだ」

 

船長から話を聞いてきたワルドが、そう言いながらやってくる。

 

「船長の話では、ニューカッスル付近に陣を配置した王軍は、攻囲されて苦戦中の様だ」

 

「ウェールズ皇太子は!?」

 

ルイズがハッとしたように聞き返すと、ワルドは首を振り、

 

「わからん。生きてはいる様だが………」

 

元気に海賊の頭目をやってますなんて言ったらどうなるんだろう?

 

「どうせ、港町は反乱軍に押さえられているんでしょう?」

 

「そうだね」

 

キュルケがそう言うと、ワルドは頷く。

 

「どうやって王党派と連絡を取ればいいんだい?」

 

ギーシュが疑問を口にすると、

 

「陣中突破しかあるまいな。スカボローから、ニューカッスルまでは馬で1日だ」

 

魔力駆動四輪なら半日以内に着くな。

 

「反乱軍の間をすり抜けて?」

 

「そうだ。それしか無いだろう。まあ、反乱軍もトリステインの貴族に手出しは出来んだろう。隙を見て包囲網を突破し、ニューカッスルの陣へと向かう。ただ、夜の闇には気を付けないといけないがな」

 

ワルドは暗殺を仄めかす事を口にする。

 

「まあ、空飛んでいっても火竜の大群に囲まれるだけだろうからな」

 

俺はそう口にする。

強引に突破しようと思えば、完全体にでも進化させれば余裕で出来るが。

ルイズ達は、デジモンの進化はドルガモンだけしか見て無いから、流石に突破は不可能と思っているんだろう。

話し合いも程々にして、明日の為に眠ることにした。

 

 

 

 

 

 

「アルビオンが見えたぞーーー!!」

 

そう叫んだ船員の声で目を覚ました。

俺達が甲板に出ると、目の前には、空に浮かぶ巨大な大陸が広がっていた。

 

「おお~! 絶景だなこりゃ!」

 

俺はその光景に感動を覚える。

浮遊大陸は、創作物の中ではさほど珍しくは無いが、こうやって実際に見ることが出来ると、やはり心に来るものがあった。

 

「わぁ~、綺麗………!」

 

「流石にこの光景は、地球やトータスじゃお目に掛かれないわね…………」

 

葵や優花も感慨深い声を漏らした。

 

「凄いや………流れ落ちた川が雲になってる………」

 

「うむ………『白の国』と呼ばれるのも頷けるな………」

 

「素晴らしい眺めだ」

 

デジモン達もこんな光景は見たことが無い様だ。

それぞれがこの光景に感動していると、突然ドンッドンッと大きな音が響いた。

聞こえた方に視線を向けると、黒い船がこちらに向かって近付いてくるのが見える。

 

「来たか…………」

 

大まかに原作通りに進んでいる事に俺はホッとする。

もしここであの船に襲われなかったら色々と面倒なことになっていたからだ。

少しすると、ルイズ達も船の中から慌てた様子で出てくる。

 

「一体何!?」

 

ルイズが叫ぶと、俺は黒船を指差す。

 

「なっ!?」

 

ルイズが驚愕した時、黒船がこの船の側面に付け、

 

「空賊だ! 抵抗するな!」

 

黒船から大声が響く。

 

「空賊ですって!?」

 

キュルケも驚愕する。

キュルケは慌てて杖を構えようとしたが、目の前に隣のタバサの杖で遮られ、制された。

タバサは相変わらず落ち着いたまま本を読んでいるが。

この船に乗り込んでくる男達を見て、元から王党派の船と知っているからか、彼らの動きに不自然さを感じた。

何と言うか、慣れない事をそれらしくやろうとしていると言うか、空賊を演じている役者の様に感じるのだ。

とりあえず俺達はその場では抵抗せず、身代金目的という事で、大人しく捕まった。

 

 

 

 

俺はデルフを、メイジであるルイズ達は杖を取り上げられ、一つの船室に閉じ込められた。

ギーシュがどの様な目に合わされるのかとガタガタと震え、キュルケがめんどくさそうにぼやき、ルイズは気丈に振る舞っている。

ワルドは冷静なままで船室の様子を伺っている。

すると、俺の服の裾がくいくいと引っ張られた。

 

「ん?」

 

俺が振り向くと、本を読むことを中断したタバサが俺を見上げていた。

 

「どうした?」

 

俺がそう聞くと、

 

「………どうしてワザと捕まったの?」

 

タバサはそう問いかけてきた。

 

「どうしてそう思う?」

 

「あなた達の実力なら、空賊達を全滅させることも簡単だった筈」

 

タバサは確信を持ってそう言う。

 

「……………まあ、ちょっと気になることがあってな」

 

「気になる事?」

 

「まず最初に、『空賊だ』と言って乗り込んできたが、態々襲っている相手に、『自分は賊だ』なんて名乗るか普通? これが有名な盗賊団だったりしたら、『俺達は○○盗賊団だ』っていうのならまだ理解できるが」

 

「ッ…………つまり、自分達が賊だという事を印象付けたかった?」

 

「そう。次に相手の姿が本に出てくるような賊の恰好そのまんまって事も不自然に思えたし、口調も無理矢理それっぽく聞こえるようにわざとらしさを感じた」

 

「…………確かに」

 

「それにあいつらの動きも、野蛮で我流の様にも見えたが、その実しっかりと訓練されたように動きに無駄が少なかった」

 

「つまり、この空賊はしっかりと訓練を受けた兵士?」

 

「あくまで予想だがな」

 

タバサは鋭すぎて困る。

今言ったのは、即興で思いついた口実だ。

原作知識があったからなんて言えんし。

すると、船室の扉が開き、空賊の1人が入ってきて、

 

「おめえらは、もしかしてアルビオンの貴族派かい?」

 

そんな質問をしてきた。

 

「おいおい、だんまりじゃわからねえよ。でも、そうだったら失礼したな。俺達は貴族派の皆さんのお陰で商売させてもらってるんだ。王党派に味方しようとする酔狂な連中が居てな。そいつらを捕まえる密命をおびているのさ」

 

「じゃあ、この船はやっぱり反乱軍の軍艦なのね?」

 

「いやいや、俺達は雇われているわけじゃねえ。あくまで対等な関係で協力しあってるのさ。まあ、おめえらには関係ねえことだがな。で、どうなんだ? 貴族派なのか? そうだったら、きちんと港まで送ってやるよ」

 

貴族派に味方すると言っときながら、貴族派の為に荷を運んでいるこの船を襲うのはおかしく無かろうか?

まあ、ここでまともな神経の持ち主なら、嘘でも貴族派と答えるだろう。

だが、我らがご主人サマであるルイズはそんなまともな神経の持ち主ではない。

 

「誰が薄汚いアルビオンの反乱軍なものですか! 馬鹿言っちゃいけないわ! 私は王党派への使いよ。まだ、あんた達が勝ったわけじゃないんだから、アルビオンは王国だし、正統なる政府はアルビオンの王室ね。私はトリステインを代表してそこに向かう貴族なのだから、つまりは大使ね。だから、大使としての扱いをあんた達に要求するわ!」

 

ズバッと真正面から言い切ったルイズに、キュルケとギーシュは慌てた表情を見せる。

 

「正直なのは確かに美徳だが、お前達、ただじゃすまないぞ」

 

「あんた達に嘘をついて頭を下げる位なら、死んだ方がマシよ」

 

「…………頭に報告してくる。その間にゆっくり考えるんだな」

 

空賊が去っていくと、

 

「………………呆れた。馬鹿じゃないのあなた?」

 

キュルケが大きく溜息を吐きながらそう言う。

 

「誰が馬鹿なのよ!?」

 

「あなたに決まってるじゃない! あそこは嘘でも貴族派ですって言って、船から降ろして貰ってからチャンスを伺うべきでしょ!?」

 

「嘘なんか吐けるもんですか! あんな連中に!」

 

ルイズはそう言い切る。

ワルドが近付いて来てルイズの肩を叩き、

 

「良いぞルイズ。さすがは僕の花嫁だ」

 

嬉しそうにそう言った。

すると、再び扉が開き、

 

「頭がお呼びだ」

 

先程の空賊がそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達が連れて行かれた先は、この船の船長室だった。

空賊の船とは思えないぐらい立派である。

実際に空賊では無いが。

ディナーテーブルの上座に派手な格好の空賊が腰かけている。

これまた縮れた黒髪に眼帯に無精ひげという、ザ・海賊の頭(キャプテン)と言った風貌だ。

これで片手が義手でその先がフックになっていたら、何処に出しても恥ずかしくないキャプテンの完成である。

 

「おい、お前達、頭の前だ。挨拶しろ」

 

そう言われるが、ルイズは頭を睨み付けるだけだ。

 

「気の強い女は好きだぜ。子供でもな。さてと、名乗りな」

 

頭がそう言うと、

 

「大使としての扱いを要求するわ」

 

ルイズは名乗らず、その言葉を口にする。

 

「そうじゃなかったら、一言だってあんた達なんかに口をきくもんですか!」

 

すると、頭もその言葉を無視し、

 

「王党派と言ったな?」

 

「ええ、言ったわ」

 

「何しに行くんだ? あいつらは明日にでも消えちまうよ」

 

「あんた達に言う事じゃないわ」

 

「貴族派に着く気は無いかね? あいつらはメイジを欲しがっている。たんまり礼金も弾んでくれるだろうさ」

 

「死んでも嫌よ」

 

ここまでキッパリ言い切るルイズには俺も感心する。

少なくともルイズは、貴族であることに本気で命を懸けている。

その姿は否定しないし、素直に格好いいと思う。

ただ、真似しようとは絶対に思わんけどな。

すると、頭は大声で笑いだした。

 

「トリステインの貴族は、気ばかり強くってどうしようもないな。まあ、どこぞの国の恥知らず共よりも、何百倍もマシだがね」

 

突然雰囲気の変わった頭に、ルイズや事情の知らないキュルケ達は戸惑う。

 

「失礼した。貴族に名乗らせるなら、こちらから名乗らなくてはな」

 

その言葉に合わせて、周りに控えた空賊達も一斉に直立する。

頭は黒髪と髭を剥いだ。

それはカツラと付け髭だったのだ。

眼帯も取り、その下から現れたのは金髪の青年。

 

「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官………本国艦隊とは言っても、すでに本艦『イーグル』号しか存在しない、無力な艦隊だがね。まあ、その肩書きよりこちらの方が通りがいいだろう」

 

金髪の青年は一呼吸置くと佇まいを直し、名乗った。

 

「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」

 

ルイズが口をあんぐりと開けた。

キュルケやギーシュも同じように口を開けている。

ワルドは興味深そうにウェールズ皇太子を見つめた。

タバサや俺達は予め予想していたので驚きは少ない。

 

「アルビオン王国へようこそ。大使殿。さて、御用の向きを伺おうか?」

 

そう言われるが、ルイズは空賊の正体がウェールズ皇太子だったことのショックから立ち直れていない。

 

「その顔は、どうして空賊風情に身をやつしているのだ? と言った顔だね。それは………」

 

「相手の補給線を遅らせ、同時に物資を手に入れるため。ですよね?」

 

俺が皇太子の言葉を遮ってそう言う。

皇太子の言葉を遮るなんて、無礼討ちにされてもおかしくないかもしれないが俺は気にしない。

 

「ほう?」

 

「ついでに俺達を捕まえて貴族派かと何度も問いかけたのは、こちらが本当に王党派の味方なのかという確証が持てなかったから。ですかね? 普通なら命惜しさに貴族派ですと答えるのが普通ですから」

 

そうは言いつつも、すぐ傍に貴族派の回し者が居るんですけどね。

 

「タイシ!? あんた分かってたの!?」

 

ルイズが驚いた顔で問いかけてくる。

 

「普通の空賊じゃなく、訓練された兵士であることは分かっていた。貴族派が空賊の真似をするメリットは無いから、王党派が空賊の振りをしてるんじゃないかという可能性は高いと思っていたな。そうじゃなかったら、俺達が大人しく捕まると思ってんのか?」

 

「うっ…………」

 

ルイズが確かにそうだと今更ながらに気付いたらしい。

 

「いや、見事な推理だ。全く持ってその通りだよ」

 

ウェールズ皇太子が笑いながらそう言う。

すると、ワルドが前に出て、

 

「アンリエッタ姫殿下より、密書を言付かって参りました」

 

優雅に頭を下げながら、そう話を切り出す。

 

「ふむ、姫殿下とな。君は?」

 

「トリステイン魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵。そしてこちらが姫殿下より大使の大任を仰せつかった、ラ・ヴァリエール嬢でございます」

 

「なるほど、君の様な立派な貴族が、私の親衛隊にあと10人ばかりいたら、このような惨めな今日を迎える事は無かったろうに!」

 

ウェールズ皇太子はワルドを褒めているが、こいつがあと10人いたら、王国の滅亡がもっと早まっていたと思います。

 

「して、その密書とやらは?」

 

ルイズが王女サマからの手紙を取り出すと、ウェールズ皇太子に渡すために近付いていたが、躊躇する様に立ち止まった。

 

「あ、あの………」

 

「なんだね?」

 

「その、失礼ですが、ほんとに皇太子さま?」

 

ルイズは戸惑ったようにそう問いかけた。

ウェールズ皇太子は笑い、

 

「まあ、さっきまでの顔を見れば無理もない。僕はウェールズだよ。正真正銘の皇太子さ。なんなら証拠をお見せしよう」

 

ウェールズが自分の指輪を外すと、ルイズの指に嵌められている水のルビーに近付けた。

すると、その2つの指輪は共鳴する様に虹色の光を放つ。

 

「この指輪は、アルビオン王家に伝わる『風のルビー』だ。君が嵌めているのは、アンリエッタが嵌めていた『水のルビー』だ。そうだね?」

 

「は、はい……」

 

「水と風は虹を作る。王家の間に掛かる虹さ」

 

虹は太陽の光が空気中の水滴に反射して見える現象だから、風は関係無いんじゃ無かろうかと思う俺は無粋なのだろう。

 

「大変失礼をばいたしました」

 

ルイズは謝罪の意味を込めて一礼すると、手紙を差し出す。

ウェールズ皇太子はその手紙を受け取り、愛おしそうに見つめてから花押にキスすると、封を開けて中の手紙を読み始めた。

そして、

 

「姫は結婚するのか? あの、愛らしいアンリエッタが………私の可愛い………従妹は」

 

ウェールズ皇太子のその言葉には、何処か落胆が含まれているように聞こえる。

その言葉にワルドが頭を下げて肯定の意を示した。

ウェールズ皇太子が手紙をすべて読むと、

 

「話は了解した。だが、件の手紙は今手元には無い。ニューカッスルの城にあるんだ。姫の手紙を、空賊船に連れてくるわけにはいかぬのでね」

 

それからウェールズは笑い、

 

「多少面倒だが、ニューカッスルまで足労願いたい」

 

その言葉により、俺達はニューカッスルの城まで向かうことになった。

 

 

 





ゼロ魔クロス第7話です。
この辺は特に活躍の場が無いので軽く流しました。
フーケが居ないと襲撃もあっという間に鎮圧されるので、別行動なんてする必要も無し。
みんな揃ってアルビオン行きです。
さて、ロリコン隊長と、序に皇太子も登場しました。
皇太子の運命は如何に?

タバサをヒロインに格上げするか否か?

  • ヒロインにしてしまえ!!
  • しない。初恋とは散るものである
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。