トリステイン・ゲルマニア連合軍が上陸して布陣した港町ロサイスは、アルビオンの首都ロンディニウムの南方300kmに位置している。
上陸直後、連合軍は敵の反撃を予想した。
軍を揚陸させてすぐに、先ずはロサイスを中心とした円陣を築いた。
だが、アルビオン軍の反撃は行なわれなかった。
連合軍としては、ロサイスに布陣後、反撃に来たアルビオン軍と『決戦』を行い、打ち破った後に、そのままの勢いで首都ロンディニウムに攻め込み、一気に制圧するという短期決戦を目論んでいたのだが、それが見事に空振った形だ。
その為、作戦の変更を余儀なくされたのだが、軍議の結果、ロサイスとロンディニウムの直線状にあるシティオブサウスゴータを足掛かりとしてロンディニウムに攻め込むという原作同様の作戦を採ることになった。
ルイズと一緒に軍議に出ていた俺達が会議室を出ると、
「ちょっといいかな」
透き通るような声で、いきなり声をかけられた。
一瞬、男か女か判断がつきかねるほどの美声だった。
俺達がそっちを向くと、長身で鮮やかな金髪の少年がいた。
「………お前は?」
俺がそう聞き返す。
「僕は第三竜騎士中隊の隊長を務めているものだ。噂の人間の使い魔を一目見たくてね」
そう言いながら、その少年は髪をかきあげる仕草をする。
………こいつがジュリオか?
俺はそう思いながらその美少年を観察する。
その少年の左目はルイズの様な鳶色だったのだが、髪に隠れていた右目は透き通るような碧眼だ。
つまり、左右の瞳の色が違う。
所謂、虹彩異色。
オッドアイとかヘテロクロミアとも言うものだ。
ハルケギニアだと、双月にちなんで月目って言うんだったか?
うろ覚えだが。
すると、顔をジッと見ていた事に気付いたのか、
「瞳の色が違うのが珍しいのかい?」
その少年はそう聞いてきた。
「まあな。虹彩異色を実際に見たのは初めてだ」
「コウサイイショク?」
「俺達の故郷じゃ、左右の眼の色が違う事をそう呼ぶんだよ。他にもオッドアイとかヘテロクロミアとか呼ぶ場合もあるな」
俺は改めてその目を観察する。
「そんなに見つめられたら照れるじゃないか」
と言いつつ、表情に照れた様子は何処にも無い。
「仕方ないだろ? 珍しいものに興味を引かれるのは人間の性だ」
揶揄おうとしているのが分かっているので、俺は冷静にそう返す。
思っていた反応と違ったのか、軽く肩を竦めた。
「虹彩の異常らしくてね。君が噂の使い魔タイシーン君だね?」
「大士だ」
間違いを指摘する様に名乗ると、相手は大仰な身振りで、手を振ってのけぞった。
優雅に一礼する。
「すまない! 大変失礼をしたよ! 僕はロマリアの神官、ジュリオ・チェザーレだ。以後お見知りおきを…………人間が使い魔だなんて、珍しいからね。「(仮)だがな」君に一度会いたいと思っていたんだよ………おや、あなたは」
一応ツッコミを入れた俺の言葉をスルーする様にルイズに気付き、ジュリオはクールな仮面を脱ぎ捨て、特大の笑みを浮かべた。
大輪の花が開いたような、無邪気さを感じさせる、そんな素の笑みであった。
「あなたがミス・ヴァリエール? 噂どおりだね! なんて美しい!」
ルイズがぽかんと口をあけていると、いきなりその手を取って口付けした。
普通の相手だったらルイズの性格なら怒るのだろうが、ルイズは怒らなかった。
「いけないひとね」
と、ちらっと斜め前に視線を落として頬を染めた仕草が彩る、はにかみを含んだ言葉が飛んだ。
ルイズはこう見えて美形に弱いのだ。
割と面食いなのだろう。
まあ人は顔では無いと言うべきなのだろうが、どちらかと言えば、美形の方がそうでない者よりも初対面の印象はいいだろう。
「申し訳ない! 僕はロマリアより新たなる美を発見しに参戦したのです! あなたの様に美しい方に出会うために、僕は存在しているのです! マーヴェラス!」
ギーシュに輪をかけてキザな言い回しだ。
だが、その美形と相まって、余り嫌味に聞こえないのがジュリオの凄い所だろう。
まあ、その腹の中は真っ黒だが。
すると、ジュリオの視線が葵と優花に向く。
嫌な予感がした俺はその視線の間にサッと割り込んだ。
「言っておくが、この2人に手を出したら問答無用でぶっ飛ばすからな……!」
冗談抜きの本気100%でジュリオを威嚇する。
ジュリオは両手を挙げ、
「おやおや、ぶっ飛ばすのは勘弁してくれないかな?」
割と余裕そうな表情だ。
だが、その頬には一筋の冷や汗がタラリと流れている。
「別に大士がぶっ飛ばさなくても、あんなことされたら私が自分でぶっ飛ばすわよ」
優花がそう言うと、
「私も同じかな………」
葵が苦笑しつつ同意する。
「やれやれ………残念だがフラれてしまったようだ」
余り残念がってない態度でそういう。
「顔は綺麗だと思うけど、私の好みじゃないのよ」
「っていうか、腹黒そう」
ズバッと突っ込んだ2人の言葉がジュリオの胸に突き刺さった様に見えた。
「ハハハ……ぶっ飛ばされたくないから、僕はそろそろ退散するとしよう」
苦笑いを浮かべ、最後まで格好つけながらジュリオは立ち去るのだった。
幾日が経ち、上陸から15日が過ぎた。
シティオブサウスゴータの城壁から1リーグ離れた突撃開始地点で、侵攻軍は、ラッパの合図を待ち構えていた。
俺達はドルガモンとギンリュウモンの背に乗り、
空中から戦場を見下ろしている。
ウェールズは、今回の作戦にルイズ………
延いては俺達を組みこまなかった。
おそらく、この作戦の何処かにルイズを突っ込ませると、俺達の力を頼ってると思われて、関係が悪くなると判断したんだろう。
まあ、その通りだがな。
「さてと………これが原作通りの流れなら…………」
俺は宝物庫から双眼鏡を取り出して侵攻軍を見回す。
「お、居た」
双眼鏡の拡大された視界の中には金髪の少年、ギーシュの姿があった。
ギーシュは確かこの戦闘で一番槍を挙げるんだったか?
「優花、もしもの時は頼むな?」
「別に良いわよ? 全く知らない相手って訳でもないし」
別に国の為に戦うつもりは無いが、知り合いを助ける位はしても良いと思っている。
ギーシュは性格はあれだが、別に悪い奴とは思わないしな。
すると、上空に艦隊が現れ、砲撃を始めた。
砲弾が城壁に撃ち込まれ、所々が崩れていく。
まあ大砲と言ってもこの世界の大砲は鉄球を飛ばすだけのものだ。
威力はドルガモンのパワーメタルにも劣る………と言うか、一発当たりの威力はドルモンのメタルキャノンよりも少し強いぐらいでは無いだろうか?
なので、城壁を破壊するというより、鉄の球をぶつけて少しずつ砕いて行ってるのだろう。
まあ城壁の方も石製なので、鉄の球でも十分だろうが。
すると、巨大なゴーレムが現れて、崩れた城壁の瓦礫を退かしていく。
何体かはバリスタでやられた様だが、やがて無事に瓦礫を取り払う。
そして、いよいよ侵攻軍が攻め入ろうと準備を始めた時だった。
突如として城壁の内側から雷の様なエネルギーが放たれ、ゴーレム部隊が一瞬で全滅する。
「ッ!? 何だ!?」
俺は思わず叫ぶ。
巻き起こった煙が晴れていくと、城壁の内側から、ズシンズシンと、とてつもなく重そうな足音が聞こえた。
そして、その足音の主の姿が露となった。
それは、身体中が金属で覆われた、巨大な恐竜の様な姿。
「あれは………メタルティラノモン!?」
俺はDアークを取り出す。
「メタルティラノモン 完全体 ウィルス種 サイボーグ型デジモン。必殺技は『ギガデストロイヤーⅡ』と『ヌークリアレーザー』………やっぱりメタルティラノモンか!」
俺が情報を確認した時、メタルティラノモンが右腕を艦隊に向けた。
「拙いっ!!」
その動きでメタルティラノモンが何をするのかを悟った俺は叫ぶが、それと同時にメタルティラノモンの右手の掌から複数のミサイルが放たれた。
必殺技のギガデストロイヤーⅡだ。
そのミサイルは艦1隻につき、一発ずつ向かい、着弾と同時に大爆発を起こし、艦隊を吹き飛ばした。
「ッ…………!」
空を飛ぶとは言え、この世界の艦は木製だ。
核弾頭級の威力を受ければ跡形も残らない。
突然起こった出来事に、地上部隊に動揺が走る。
これがこの世界の事情で起こった出来事なら静観するつもりだったが、メタルティラノモンはデジモン………この世界の『運命』とは異なる存在だ。
「葵! 頼む!!」
「うん!」
俺は葵に呼びかける。
葵は光に包まれ、女神の姿となると、その大きな白い翼を羽搏かせて天を舞った。
そして、壊滅した艦隊の中央で、再生魔法と魂魄魔法を広範囲に渡って発動させた。
女神姿の葵………アルオイスを中心に、光の波動が壊滅した艦隊を包み込む。
すると、まるでビデオの逆再生の様に艦隊が瞬く間に元通りとなり、爆炎の中に散った軍人達もその命を取り戻した。
因みに葵が女神化したのは、人間の状態では艦隊全てをカバーできるほどの再生魔法と魂魄魔法を使えないからだ。
突然襲い掛かった絶望と、突然起こった奇跡にその場に居た者達は呆けてしまう。
だが、
「ドルガモン!!」
「わかってる!」
ドルガモンは急降下してメタルティラノモンに向かう。
「カードスラッシュ! マトリックスエボリューション!!」
俺はブルーカードをカードスラッシュした。
――MATRIX
EVOLUTION――
「ドルガモン進化!」
ドルガモンがドルグレモンへ進化する。
「ドルグレモン!!」
ドルグレモンは、その勢いのままメタルティラノモンへと突進する。
すると、メタルティラノモンは左腕をこちらに向け、雷撃の様なエネルギー波を放ってきた。
「カードスラッシュ! 防御プラグインC!!」
俺は防御用のカードをスラッシュすると、ドルグレモンはそのままエネルギー波の中に突っ込む。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
防御力の上がったドルグレモンは、強引にエネルギー波の中を突っ切った。
そのままメタルティラノモンの懐へ飛び込むと、
「ブラッディタワー!!」
鼻先のブレードを使ってメタルティラノモンを空中へ放り投げる。
「グォォッ!」
メタルティラノモンは空中に放り投げられるが、空中で強引に右腕を向けてミサイルを放ってきた。
だが、それは狙いが定まっておらず、ミサイルはドルグレモンを素通りする。
しかし、そのミサイルの行き先は、侵攻軍の地上部隊。
だが、俺は何も心配していない。
何故なら、
「メテオフレイム!!」
マシンガンの様に放たれた火球が、そのミサイルを撃ち落とす。
セイバーハックモンのメテオフレイムだ。
ドルグレモンはそのままメタルティラノモンへ突進する。
「カードスラッシュ!」
俺は再びカードをスラッシュする。
それは、
「攻撃プラグインN!!」
ドルグレモンの攻撃力を強化するカード。
「いけえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「うぉおおおおおおおおおおおっ!!!」
俺の叫びと共に、ドルグレモンが突っ込む。
そして、ドルグレモンの鼻先のブレードが、メタルティラノモンの胸に深々と突き刺さった。
「グォァアアアアアアアアッ!?!?」
メタルティラノモンは断末魔の叫びを上げて消えていく。
残ったデジタマは地上に落下していった。
その後、何だかんだあったが、気を取り直した侵攻軍は、シティオブサウスゴータを占領する事に成功した。
尚、やはり一番槍はギーシュの部隊だったそうだ。
戦っているのが俺達だという事に気付き、一番早く我を取り戻したのが功を奏したとか。
そして俺達だが、一段落した後にウェールズと女王サマに呼び出された。
部屋の中にはウェールズと女王サマしか居らず、人払いをしている様だ。
俺達が2人の前に来ると、2人はいきなり頭を下げた。
「我が軍の艦隊を救って貰った事、本当に感謝している」
「わたくしからもお礼を申し上げます。本当にありがとう」
2人はそう言う。
「あ~、とりあえず頭を上げてくれ。別に感謝されたくてやったことじゃないんだ」
「私も………大きく外れてしまった『運命』を修正する事も、私の役目の内ですから……」
俺と葵はそう言う。
2人は頭を上げる。
俺は自己満足で艦隊を助けるように言ったが、葵としては、『女神』としての役目も含めて行ったようだ。
「もしあのままだったら、我が軍の士気は大きく下がり、撤退を余儀なくされていただろう。君達には感謝をしてもしきれないよ」
ウェールズは真面目な顔だ。
あのまま艦隊が壊滅していたら、本気でヤバかったのだろう。
「ところで、話は変わるのだが、艦隊に居た者達の多くが『女神様を見た』と口をそろえて言っているんだ。何か知らないかね?」
「あ~……それは………」
俺は誤魔化そうと言い訳を考えていると、
「それはアオイです!」
ルイズが叫んだ。
「おい………ルイズ」
俺はルイズを止めようとしたが、
「アオイ殿………?」
「はい、アオイは本当の女神様なのです」
ルイズはキッパリと言ってしまった。
「本当の………女神………?」
女王サマが首を傾げる。
2人が不思議そうな目を此方に向けて来た。
あ~もう!
めんどくさいことになるから黙ってたって言うのに!
若干心の中でルイズに恨み言を呟きながら、仕方なく説明する事にした。
「アオイ殿が………『運命』の女神様………」
「運命神………アルオイス………様………」
一通り説明した後、2人は放心していた。
因みに女神としての姿も見せたので疑う余地はない。
「言っておくが葵が女神って事は絶対に言い広めるなよ! 絶対にどっかの馬鹿が寄ってくるから!」
俺は脅しを含めてそう言う。
後ろでは優花も〝威圧〟を発動させていた。
「わ、分かった………誰にも言わない事を誓おう」
「私も誓います………」
2人は冷や汗を掻きながら頷いた。
すると、
「ただ、『女神 アルオイス様が降臨し、艦隊を救った』という話だけは広めさせて欲しい」
俺は首を傾げる。
「兵士達の間では、『始祖の奇跡』、『神の奇跡』など、あらゆる噂が飛び交っている。このままでは、新たな複数の派閥が生まれかねない。だから、王族としてアンリエッタがその話を広めれば、派閥は一本化するはずだ」
「いや、そこは『始祖の奇跡』で良いんじゃないか?」
俺の言葉にウェールズは首を振った。
「『始祖の奇跡』と言うには、アルオイス様のお姿が多くの兵士達に目撃されてしまっている。始祖ブリミルは、その姿こそ明確になっていないが、名前からは男性だと思われる。始祖ブリミルの再来と言うには、少々無理があると思うんだ。それに、本当の『神様』の偉業をかすめ取るような真似は、私達には出来ないよ」
「いえ、私は気にしませんけど…………」
葵が思わずそう言う。
「私達が納得できないんだ」
「はあ、アルオイス教でも興すつもりですか?」
俺が聞くと、
「まあそうなるだろうね」
ウェールズは頷いた。
すると、
「では、お願い事があります」
葵がそう言い出す。
「お願い事とは?」
「ブリミル教から無理に改宗させないでください。私は別に、私の他に信仰する人物や神が居ても気にしません。その人の心の一部にでも私を信仰する気持ちがあれば、それで十分なんです」
「…………わかった」
ウェールズは意外そうな顔で頷いた。
「それと、細かい禁止事項などは特に設けないでください。私は人の生き方を制限する気はありません」
葵はそこで一呼吸置くと、
「そして最後に、『神』とは見守る者です。数多の『命』が生きていけるようにほんの少し力を貸すだけ。『神』に縋っても何もしません。今回は『人間』に転生している状態だったから出来た事です。『運命』とは、流されるものではなく自分の手で掴み取るものです。『運命』に嘆くのではなく、『運命』を切り拓く者にこそ、『未来』はやってきます。」
「その言葉、胸に刻みます」
ウェールズと女王サマは胸に手を当ててもう一度頭を下げた。
尚、そう遠くない未来、本当にハルケギニア全体に『アルオイス教』が広まるのは余談である。
ゼロ魔クロス第24話です。
特に盛り上がる所は………
アルオイス教が興った事?
軽く流そうと思ったら何故かこんな感じに。
完全体デジモン現れたら流石に無傷じゃおかしいよなと思って、艦隊撃墜。
でも、女神様降臨で無かったことに。
神様云々については、自分の考えた設定なので、もし信心深い人が居て気に食わないと思ってもスルーしてください。
さて、次回で戦争を終わらせたいと思ってます。
そして…………
次も頑張ります。