エセアルラウネが居た階層からまたしばらくの時が流れ、俺達は奈落の迷宮を下へ下へと下り続けていた。
そして、次の階層でハジメと合流した階層から丁度百階層目。
【オルクス大迷宮】が百階層と言われていたが、ハジメと合流した場所でも既に百階層前後。
もしかしたらもっと下だったのかもしれないので、この迷宮は一般的に言われている【オルクス大迷宮】をクリアすると挑戦できる隠しダンジョンのようなモノなのかもしれない。
引き返す事も出来ないベリーハードモードな鬼畜仕様だがな。
俺達も、ハジメが偶然にも神結晶を発見していなかったら、飢えるか魔物の肉を食べて死んでいただろう。
そう思うと俺達は超ラッキーだったって事だ。
それで相変わらず魔物を食料としてきたハジメ、白崎さん、優花の3人のステータスだが…………
南雲ハジメ 17歳 男 レベル:76
天職:錬成師
筋力:1980
体力:2090
耐性:2070
敏捷:2450
魔力:1780
魔耐:1780
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・熱源感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・念話・言語理解
白崎香織 17歳 女 レベル:76
天職:治癒師
筋力:1330
体力:1680
耐性:1410
敏捷:1230
魔力:3250
魔耐:3250
技能:回復魔法[+回復効果上昇][+回復速度上昇] [+複数同時発動] [+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲回復効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少] [+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇] [+持続時間上昇][+連続発動] [+複数同時発動][+遅延発動]・高速魔力回復[+瞑想] ・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地] [+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・熱源感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・念話・言語理解
園部優花 17歳 女 レベル:76
天職:投術師
筋力:1810
体力:1760
耐性:1640
敏捷:3470
魔力:1920
魔耐:1920
技能:投擲術[+投擲速度上昇][+飛距離上昇][+遠隔回収][+遠隔操作][+目標補足][+自動追尾]・火属性適性[+消費魔力減少][+発動速度上昇][+効果上昇][+属性付加][+連続発動] [+複数同時発動]・雷属性適性[+消費魔力減少][+発動速度上昇][+効果上昇][+属性付加][+連続発動] [+複数同時発動]・気配感知・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地] [+豪脚]・風爪・夜目・遠見・魔力感知・熱源感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・念話・言語理解
いやもう、この3人留まる事を知らない。
この3人で世界征服できるんじゃなかろうか?
いや、まだ分からんが。
俺のステータスは相変わらずほぼ変動なし。
体力や筋力が1上がった程度だ。
それはともかく、俺やハジメの予想では次の百階層目では恐らく何かあるはずだ。
というか、次で何かなければ、終わりが一体いつになるか予想もつかない。
俺達は期待を込めて次の階層へ足を踏み入れた。
【Side 葵】
女子達でプチ女子会を開いたあの時から、私は大士への想いが黒い騎士様への想いで抑え付けられていることをハッキリと自覚していた。
あれからも何度も大士と一緒に戦い、ある時には助けられ、またある時には助ける。
呼び捨てで呼び合う間柄になった事も相まって、今まで以上の信頼関係が築かれ、同時に距離が近付くことは必然だった。
普通なら、たった一度だけしか会ったことが無く、また会えるかすらわからない相手より、身近にいる頼りになって好感の持てる男の人に惹かれるのが当然だと思う。
だけど、私の中の大士への想いが、あの黒い騎士様を超えようとするたび、黒い騎士様への想いが蓋のように大士への想いを抑え付ける。
それをはっきりと分かっているのに黒い騎士様への想いが捨てられない。
今も、黒い騎士“様”と思っているように、あの方への想いで恋焦がれている。
自分で自分が気持ち悪い。
本当にこの想いは呪縛だ。
優花も私に気を使っているのか、大士に自分から迫るような事はしていない。
寧ろ積極的に言い寄って早く付き合ってくれた方が、逆に諦めがついて苦しまなくていいかもしれない…………
そんな考えを持ちながら辿り着いた百階層。
正確には二百階層かな?
そこは今までとは雰囲気がまるで違っていた。
その階層は、規則正しく一定間隔で並んだ柱で支えられた広大な空間だった。
壁や床、天井もレンガのように長方形に切り出された石材で綺麗に舗装されていて、何処かの神殿の内部の様な雰囲気を感じさせる。
道なりに200mぐらい進むと、突き当りが見えて来て、そこに巨大な両開きの扉が見えた。
その大きさは、ドルグレモンがそのまま通れそうなほど。
そうなると大体この部屋の大きさは、横幅が100mぐらいで奥行きが300m、高さが50mぐらいかな。
「……これはまた凄いな。もしかして……」
「……反逆者の住処?」
南雲君がその扉を眺めながら呟き、ユエがそう予想する。
でも、こういう所って…………
「多分、最後の門番が居るんだろうな………」
大士がそう口にする。
私もそれに同意だ。
「所謂ラスボスって奴ね………!」
優花も何か予感を感じているのか冷や汗を流す。
でも、
「ハッ、だったら最高じゃねぇか。ようやくゴールにたどり着いたってことだろ?」
南雲君はそう啖呵を切る。
「……んっ!」
「うんっ! 私達が力を合わせれば、きっと大丈夫!」
ユエが頷き、香織が心を奮い立たせるようにそう言う。
覚悟を決めて先に足を進めると、直径が30mほどもある召喚の魔法陣が浮かび上がった。
「おいおい、なんだこの大きさは? マジでラスボスかよ」
「……大丈夫……私達、負けない……」
その大きさに南雲君は引き攣った笑みを浮かべていた。
それでもユエは表情を崩さすに南雲君の腕を握った。
「ユエちゃん! どさくさに紛れて何してるのかな?」
香織、今はそんな事言ってる場合じゃないと思うけど?
魔法陣が光を放ち、その中から魔物の姿が露になる。
それは、体長が大体30m、色違いの6つの頭と長い首を持つ大蛇。
敢えて呼ぶとしたらヒュドラかな?
「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」
ちょっとかわいいと思える鳴き声を上げて、6つの頭の眼がこちらを睨む。
すると、赤い鱗を持つ大蛇の頭が口を開き、その口から火を吹いてきた。
それは固まって行動している私達全員を呑み込むほど、
あ、ちょっとヤバい。
私と大士はそういう攻撃に耐えられるようなステータスは持ってない。
私がそう思った瞬間、
「“聖絶”!」
光の障壁が私達を包み、炎から護る。
香織の防御魔法だ。
以前聞いた話では、二十階層の転移罠に掛かった時、騎士団の人たちが2m四方の最高級の紙に描かれた大きな魔法陣と四節の詠唱、さらに三人同時発動で作り出した障壁でベヒモスの突進を受け止めたらしいけど、香織はその時を遥かに超える強固な障壁を魔法陣も詠唱も使わずにノータイムで構築した。
「ありがとう香織!」
「助かった!」
私と大士がお礼を言う。
すると、
「葵!」
大士が私に呼びかける。
その目を見た私は、何を言いたのかを直ぐに理解した。
「うん!」
私は頷いて1枚のカードを取り出す。
ほぼ同時に大士もカードを取り出し、
「「カードスラッシュ!」」
同時にスラッシュする。
そのカードはもちろん、
「「超進化プラグインS!!」」
リュウダモン達を進化させるカード。
――EVOLUTION
私達のDアークにその文字が表示され、光を放つ。
「ドルモン進化!」
「リュウダモン進化!」
それと同時にリュウダモン達も光に包まれ、進化する。
「ドルガモン!!」
「ギンリュウモン!!」
2体の成熟期デジモンが光の中から現れ、空中へと舞い上がる。
それと同時に、南雲君とユエ、優花も動き出した。
南雲君が右、ユエが上、優花が左に散らばる。
ヒュドラは6つの頭の内、赤が南雲君に、緑がユエに、青が優花に対処する行動を見せる。
すると、赤が火炎弾を、緑が無数の風の刃を、青が冷気の息を吐いた。
何とも分かり易い色と属性の関係ね。
南雲君は駆け抜けながらその火炎弾を避けて流れるような動きでドンナーを向け、ユエは更に上昇することで風の刃を躱し、優花は跳躍することで冷気の息から逃れる。
その直後、
「はぁっ!」
お返しとばかりに南雲君がドンナーを数発発砲。
「“凍雨”………!」
ユエが氷の刃を無数に降らせ、
「はっ! せやっ!」
優花が炎を纏った手裏剣と雷を纏った苦無を無数に投げる。
更に、
「パワーメタル!!」
「徹甲刃!!」
駄目押しとばかりにドルガモンとギンリュウモンが必殺技を放つ。
弾丸が赤い頭の鱗を貫き、氷の刃が緑の頭に突き刺さり、炎の手裏剣と雷の苦無が青い頭に降り注ぎ、黒い頭に鉄球が当たって怯んだところに鋼の槍が無防備な首を貫いた。
どうやら前に出てきた巨大蠍の様な理不尽な防御力は持っていないみたいで、それぞれが十分なダメージを与えている。
総合的なステータスは巨大蠍よりもヒュドラの方が上なんだろうけど、あの時よりも南雲君達のステータスが倍以上になっている分、楽に倒せそうな気がした。
でも、
「クルゥアン!」
白い頭が鳴くと、白い光が傷付いた頭達を包み、傷付いた頭を癒していく。
「白は回復役か!」
大士が叫ぶ。
「だったら! 白いのを先に潰す!」
南雲君が白い頭にドンナーを向け、引き金を引いた。
でもその瞬間、黄色い頭が白い頭の前に立ち塞がると、まるでコブラの様に横幅を広げると、弾丸を全て受けきった。
しかも周りの頭よりも防御力があるみたいで、無傷ではないけど傷が小さい。
「ちっ! 盾役か。攻撃に盾に回復にと実にバランスのいいことだな!」
南雲君が吐き捨てるようにそう言う。
すると、
「ふむ……………」
大士が何か考えるように辺りを見回していた。
「どうしたの?」
私が尋ねると、
「いや………どうやらこの階層はあのボスと戦う事を想定しているだけあって、他の階層より頑丈に作られているみたいだと思ってな…………」
「えっ?」
「だったら…………ちょっとぐらい暴れても問題無いな………!」
大士はニヒルな笑みを浮かべて1枚のカードを取り出した。
「あっ!」
大士の言葉の意味に気付いた私は声を漏らす。
「出し惜しみする理由も無いから、遠慮なくやらせてもらう!」
大士はDアークにそのカードを通し始める。
「カードスラッシュ!」
すると、Dアークに通し始めたカードが例のブルーカードに変わっていく。
「マトリックスエボリューション!!」
それをスラッシュするとDアークの画面に文字が表示された。
――MATRIX
EVOLUTION――
それと共に大士のDアークが光を放ち、ドルガモンも光に包まれる。
「ドルガモン進化!」
光の中でドルガモンが完全体へと進化していく。
「ドルグレモン!!」
進化したドルグレモンは、4枚の翼を羽搏かせて空中に浮いている。
何気にドルグレモンが空中を飛んでいる所を見るのは初めてだ。
「うぉおおおおおおおおっ!!」
ドルグレモンは勢いを付けて体当たりを仕掛ける。
ヒュドラは迎撃の為に炎、冷気、風の刃のそれぞれのブレスを放った。
ドルグレモンはそれに当たって爆発に呑まれる。
でも、
「いけぇっ!!」
ダメージを共有している筈の大士は何事も無いように気合いを入れた声を出した。
その瞬間、煙を切り裂いてドルグレモンが飛び出し、そのまま全体重を乗せた体当たりを食らわせた。
大きさこそヒュドラの方が大きいけど、内包している力は圧倒的にドルグレモンの方が上。
ヒュドラは呆気なく吹き飛ばされて床に倒れる。
「ははっ! 流石完全体! 圧倒的だな!」
南雲君が興奮した声を漏らす。
それでも白い頭を全力で庇っていたのか白い頭が首を擡げて他の頭と体の治癒を始めた。
でも、そんなのを悠長に待っているほど大士達は油断しない。
ドルグレモンは鼻先のブレードをヒュドラに向ける。
そして、そのまま突進、
「ブラッディー…………!」
白の頭を狙ったが咄嗟に黒が割り込み、白を護った。
因みに黄色は先程の体当たりの時に防御しようとしたため一番ダメージを負っており、まだ回復しきれていない。
黒の喉元辺りにドルグレモンのブレードが突き刺さる。
そのままドルグレモンは首を振り上げ、
「………タワー!!」
黒い頭を引きちぎり、そのまま天井に投げ飛ばした。
千切られた頭から血が噴き出し、その名の通り
普通の感性であれば、エグイとか気持ち悪いなどの感想が出てくるんだろうけど、生憎今までの迷宮の探索でこれ以上にエグイ場面など何度も見てきたから、別に如何とは思わなかった。
多分だけど、人死を見ても平静でいられる自信はある。
友達や仲間は別だけど。
我ながら図太い神経になったものね。
そんな事を思いながらヒュドラの様子を伺うと、また白い頭が治癒を発動させる。
でも、千切れた首の部分の傷を治しただけで、首は再生されなかった。
多分治癒魔法と同じで傷は治せても欠損部位は再生できないらしい。
黒い頭はどんな能力を持っているか結局分らなかったけど。
「「「「「クルァァァァァァン!」」」」」
残ったヒュドラの頭は戸惑う様な声を上げる。
とりあえず、ドルグレモンがいるから負ける心配は無いと、私はそう思っていた。
【Side ??????】
―――
―――脅威度をレベル2へ上方修正
―――レベル2
―――ゲート
【Side 葵】
ドルグレモンが再びヒュドラへ攻撃を仕掛けようとした時、それは起こった。
この階層の中央辺りから突然霧の様な現象………デジタルフィールドが広がった。
「ッ………!? デジタルフィールド!?」
大士が叫ぶ。
デジタルフィールドは瞬く間にこの階層を覆いつくす。
「こんな時にデジモンが出てくるの!?」
優花が警戒しながら叫んだ。
やがて、デジタルフィールドの中に影が浮かび上がる。
デジモンがリアライズしようとしているみたい。
でも、その影は1つじゃなかった。
「まさか………2体!?」
大士が叫んだように、視線の先には2つの影が浮かび上がっていた。
そして、その2体が完全にリアライズすると、
「「グォオオオオオオオオオオオオオッ!!」」
凄まじい叫び声と共にその姿が露となった。
片方は蛇の様に長いオレンジ色の体に紺色の翼。
機械化された頭部と両腕を持ったサイボーグ暗黒竜型デジモン。
もう片方は同じように蛇の様に長い体だが、体色は青に近い灰色で頭や両腕だけでなく翼も機械化されている同タイプのデジモン。
「おいおいおい! マジかよ!?」
「あ、あのデジモンって確か…………!」
南雲君と香織が引きつった声を漏らす。
その2体の内の1体は割と知名度があるデジモンで私もよく知っている。
私はDアークにそのデジモンの情報を表示する。
「メガドラモン 完全体 ウィルス種 サイボーグ型デジモン。必殺技は、『ジェノサイドアタック』」
そして同じように、大士ももう一方のデジモンの情報を読み上げた。
「ギガドラモン 完全体 ウィルス種 サイボーグ型デジモン。必殺技は、『ジェノサイドギア』…………なんつーデジモンがリアライズしてくるんだよ…………!」
大士も動揺を隠せない。
「私はデジモンについては良く知らないんだけど、あの2体ってそんなにヤバいの?」
優花が私に尋ねてくる。
「えっと………メガドラモン1体で東京位の都市なら大した時間も掛けずに瓦礫の山に出来るって言えば、大体わかるかな………?」
「うぇっ!? マジ?」
「うん。一発一発の攻撃力は他の完全体に劣るけど、その分手数に優れていて、広い範囲を短時間で制圧できるの…………それに攻撃力が低いって言っても、成熟期の必殺技以上の攻撃力は持ってるよ。しかもギガドラモンは更に攻撃力に特化してるの。その分機動力は劣るけど、それをカバーするために機動力に優れたメガドラモンとセットで行動することが多いらしいよ」
「ちょっと……それってかなりヤバいんじゃ………!」
「やっと分かってくれた?」
優花も現状の危機感を強く感じたらしく、冷や汗を流す。
すると、
「あのデジモン達は俺達で何とかする! 葵とギンリュウモンは俺達のサポートを頼む! ハジメ、悪いがそっちは何とかしてくれ!」
大士は咄嗟にそう叫ぶ。
「分かった! こっちは俺達で何とかする! 気を付けろよ!」
「ああ!」
南雲君はそれに頷くと、香織、ユエと一緒にヒュドラの方に向かって行く。
「私はここで2人を護るよ」
優花がそう言った。
「すまん、助かる!」
大士はそう言うとメガドラモン達に向き直った。
「ドルグレモン!!」
大士がドルグレモンに呼びかけ、ドルグレモンが翼を羽搏かせて2体へ向かって行く。
その時、メガドラモンとギガドラモンがそれぞれ両腕のメガハンドとギガハンドを向けると、その先が展開する。
「ッ! カードスラッシュ!」
大士はそれに気付いた瞬間カードをスラッシュする。
その瞬間、
「ジェノサイドアタック!!」
「ジェノサイドギア!!」
無数の有機体系ミサイルが発射される。
「防御プラグインC!!」
ドルグレモンの防御力を上げる大士。
その瞬間、ミサイルがドルグレモンに殺到した。
「ぐ………うぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
爆発に呑まれながらも、それに耐えるドルグレモン。
「うぐぁあああああああっ!?」
同時に大士も苦しそうな声を上げた。
傍目から見ても大士の体がボロボロになっていくのが分かる。
「大士!」
私は思わず駆け寄ってその身体を支える。
「優花! 一発でも多くミサイルを撃ち落として!」
「わ、分かったわ!」
「ギンリュウモン! 少しでもメガドラモン達の気を引いて!」
「心得た!」
私の言葉に優花は手裏剣や苦無を投げつけ、ミサイルを誘爆させていき、その隙にギンリュウモンがメガドラモンに接近すると、
「徹甲刃!!」
至近距離から鋼の槍を放つ。
それはメガドラモンの目の近くに当たり、メガドラモンを怯ませた。
弾幕が薄くなった瞬間、
「ドルグレモン!!」
「おおっ!」
大士の呼びかけに応えてドルグレモンが突撃する。
狙いは怯んだメガドラモン。
1体を倒してしまえば後は1対1。
勝率はかなり上がる。
でも、ドシィという重そうな音と共にドルグレモンが受け止められた。
「なっ!?」
大士が声を漏らす。
ギガドラモンがメガドラモンのカバーに入り、ドルグレモンを受け止めたのだ。
ギガドラモンはメガドラモンよりパワーと防御力で勝り、ドルグレモンと互角のパワーを持っている。
ドルグレモンが攻めあぐねていると、怯んだメガドラモンが体勢を立て直し、
「アルティメットスライサー!!」
腕のメガハンドからビームソードを発生させ、それでギンリュウモンに斬りつけた。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
それはギンリュウモンの鎧を軽々と切り裂き、ギンリュウモン大ダメージを与える。
「ギンリュウモン!」
私は思わず叫ぶ。
ギンリュウモンはそのまま落下し、床に叩きつけられた。
更に、
「ギルティクロー!!」
ギガドラモンがギガハンドを振り上げ、エネルギーを込めたそれでドルグレモンを殴り飛ばした。
「うぐぁっ!?」
「がはっ!?」
ドルグレモンがギガドラモンに殴り飛ばされると同時に大士にも今までで一番の衝撃が走り、支えていた私の手を振り切るように吹き飛ばされた。
「大士!?」
その瞬間、背後で轟音がした。
気付けば、ヒュドラの頭がいつの間にか銀色の一つの頭になっており、そこから凄まじい威力のブレスを吐き出していた。
香織が聖絶で防いでいたけど、
「防ぎ………切れない…………!」
その威力は香織の聖絶を打ち破ろうとしていた。
「香織! ユエ!」
彼女達の前に金剛を発動させた南雲君が立ちはだかって彼女達を庇うが、そのままブレスに呑み込まれた。
「ああっ!」
「南雲! 香織! ユエ!」
私は声を上げ、優花が3人の名を呼ぶ。
「ッ! 葵!」
次の瞬間、優花が切羽詰まった声で私の名を呼んだ。
私がハッとして振り返ると、メガドラモンがミサイルを私に向けて放とうとしていた。
「ッ!?」
私が目を見開いた瞬間、メガハンドからミサイルが放たれた。
目前に迫る『死』を呆然と眺めながら私の脳裏に過るのは、やはり黒い騎士様の事。
でもその瞬間、何かが目の前を遮った。
轟音が響き渡り、ミサイルの爆発から私を護った『それ』は、
「ギンリュウモン…………」
私のパートナーのギンリュウモン。
ギンリュウモンは僅かに静止した後、ゆっくりとその場に倒れ込んだ。
「ギンリュウモン!」
私は思わずギンリュウモンの顔の近くに駆け寄った。
「ギンリュウモン! しっかりして!? ギンリュウモン!」
必死に呼びかける私。
「う………あ、葵……………」
力無い声で私の声に反応するギンリュウモン。
「あっ………」
良く見れば、先程の傷口から僅かにデータ粒子への分解が始まっている。
「グォオオオオオオオッ!!」
でも、敵はそんな感傷に浸らせてはくれない。
メガドラモンが襲い掛かってくる。
「させるかっ!!」
直前でドルグレモンが体当たりでメガドラモンを吹き飛ばす。
それを見てホッとした時、
「ぐぐ…………!」
ギンリュウモンが立ち上がろうとしていた。
「ギンリュウモン!? 動いちゃ駄目! これ以上無茶したら死んじゃうよ!?」
私はそう言う。
でも、
「葵………某はまだ戦える…………!」
「でも、相手は完全体なんだよ………!? ここは大士とドルグレモンに任せて………!」
私は何とか説得しようとする。
「葵………某は其方を護るために戦いたい………! 戦わせてくれ………我がテイマー…………!」
「だけど…………!」
私がそう言いかけた時、
「止めるな、葵」
そんな言葉が後ろから聞こえた。
「えっ?」
私が振り向くと、そこには優花に肩を貸して貰って何とか立っている大士の姿。
「パートナーが諦めずに戦おうとしているんだ………テイマーが諦めてどうする………?」
その言葉でギンリュウモンを見つめ直す。
ギンリュウモンはふらつきながらも立ち上がり、戦う意志の籠った眼で敵を見据える。
「ギンリュウモン………」
「葵………お前に足りないのは『戦う意志』だ」
「『戦う意志』………?」
「ああ………お前は心の何処かで戦って貰っている、護って貰っているというように、自分を後ろに置いてしまっている。けどそうじゃない………! テイマーとはパートナーを支え、共に戦う者だ」
「共に戦う…………」
「そうだ。パートナーと共に、自ら脅威へと立ち向かい、戦う意志! それを持つんだ!」
その言葉に、私は目を瞑ってリュウダモンとの出会いから今までの戦いを思い返していた。
リュウダモンが成熟期へ進化した時、私はリュウダモンが私を護るために進化してくれたと思っていた。
でも、そうじゃなかった。
リュウダモンが初めて進化した時、私は諦めようとしていた?
違う。
私は抗おうとしていた。
目の前の恐怖から、脅威から。
そうだ。
リュウダモンはそんな私の思いに応えてくれて進化したんだ。
「…………………………」
私は目を開け、前に歩き出すとギンリュウモンの隣に並ぶ。
「葵……………」
「ギンリュウモン…………私も一緒に戦う…………今度こそ本当の意味で………!」
そう私が決意した時、持っているカードの中の1枚が光を放っていることに気付いた。
「これは…………」
その輝くカードを手に取ると、ブルーカードへと変貌した。
「ブルーカード……………」
このカードが現れた意味することは勿論分かっている。
「……………ギンリュウモン、行ける?」
「当然だ………!」
ギンリュウモンの返事に私はDアークを構える。
そして、ブルーカードをDアークにスラッシュし始めた。
「カードスラッシュ!」
私は戦う意志を込めてそのカードをスラッシュする。
「マトリックスエボリューション!!」
その瞬間、Dアークの画面に文字が表示された。
――MATRIX
EVOLUTION――
それと共にDアークが光を放ち、ギンリュウモンが光に包まれる。
「ギンリュウモン進化!」
光の中でギンリュウモンが進化を始める。
獣の特徴を残していた姿はより龍に近い姿となり、鱗の鎧をその身に纏う。
右手に金竜、左手に角竜の魂の珠を持った獣竜型デジモン。
「ヒシャリュウモン!!」
ギンリュウモンが進化した完全体、ヒシャリュウモンが光の中から姿を現す。
「ヒシャリュウモン 完全体 ワクチン種 獣竜型デジモン。必殺技は、『成龍刃』と『縦横車』」
大士がヒシャリュウモンのデータを読み上げる。
「グォオオオオオオオオッ!!」
メガドラモンが素早い動きでヒシャリュウモンに接近しようとした。
でも、ヒシャリュウモンは伝説に出てくる龍の様に体をくねらせ、泳ぐ様に空中を移動すると流れるような動きでメガドラモンの背後を取り、強烈な尾撃を食らわせた。
弾き飛ばされたメガドラモンは怯むけど、体勢を立て直すとミサイルを撃ってくる。
天井に当たると崩落の危険があったから、ヒシャリュウモンはミサイルをその身で受ける。
その瞬間、
「あぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!??」
想像以上の痛みが私を襲った。
一瞬意識が飛びそうになり、足を縺れさせてしまう。
これがヒシャリュウモンが感じている痛み。
大士が………ううん。
戦ってる皆が感じてる痛み………
足を縺れさせた私は床に倒れそうになった。
だけど、その背が支えられ、私は床に倒れることは無かった。
「大丈夫か?」
それはボロボロになりながらも優花に肩を借りて立っている大士。
彼は、優花に支えられている方とは反対の手で私を支えていた。
「大士………」
「きついだろうがもうひと踏ん張りだ…………勝つぞ!」
「…………うん!」
私は大士に支えられながら自分の足で立つ。
「ヒシャリュウモン!!」
私の声に応えるようにヒシャリュウモンがメガドラモンの周りを回りだす。
そのスピードはどんどん上がっていき、上下左右全てを包囲している。
それを見たギガドラモンが援護に来ようとしていたけど、
「はぁあああああっ!!」
ドルグレモンがギガドラモンに組み付き、動きを封じる。
その瞬間、
「縦横車!!」
包囲した状態から目にも止まらぬ攻撃が無数にメガドラモンを襲う。
「グギャァアアアアアアアッ!!??」
叫び声を上げながら成す術無く攻撃を受け続ける。
「はぁああああああっ!!」
最後の一撃が致命的なダメージを与え、メガドラモンはデータ粒子に分解されていく。
でも、すぐにヒシャリュウモンはギガドラモンを見据えると、
「ドルグレモン!!」
ドルグレモンに呼びかけた。
「分かった!」
ドルグレモンは一旦ギガドラモンから離れると、
「ブラッディータワー!!」
鼻先のブレードを構えて突進し、ギガドラモンを空中へ打ち上げる。
でも、メガドラモンよりも防御力で勝るギガドラモンにそれだけでは致命傷にならない。
しかしそこへ、
「成龍刃!!」
ヒシャリュウモンが前方へ1回転するとその身が巨大な1本の剣となる。
その剣が打ち上げられたギガドラモンに向かって飛び、その身を貫いた。
「ガ………ァ………………!?」
流石にそれはギガドラモンも耐えきることは出来ず、データ粒子に分解して消え去った。
それを確認すると、ドルグレモンとヒシャリュウモンがゆっくりと降りてきて、地面に着地する寸前に光に包まれ、そのままドルモンとリュウダモンに戻って私達の前に降り立った。
「お疲れ様………」
私はリュウダモンを労う。
リュウダモンは疲れた仕草をしていたが、
「…………ありがとう、葵………我がテイマーよ」
私に向かってそう言った。
「…………うん!」
私は嬉しくなって笑顔で頷いた。
ふと見れば、ヒュドラの方もほぼ同時に倒されている。
南雲君が怪我をしてるみたいだけど、皆無事みたいだ。
私はまたテイマーとして一歩を踏み出せた気がする。
でも、それだけじゃない。
教えられた『戦う意志』。
脅威に立ち向かい、戦う覚悟。
同時に私は、自分の『心』と戦う覚悟を持つことを決めた。
私は顔を上げて背中を支えてくれている大士を見る。
「ん? どうした、葵?」
私に見られていることに気が付いたのか、そう聞いてくる大士。
その顔を見てると、大士への想いが大きくなるのを感じる。
だけど、その想いが一定の大きさを超えようとする瞬間、黒騎士様への想いがその大士への想いを抑え付けようとする。
私はいつもここで諦めていた。
だけど、これからは私は自分の心とも戦う!
私自身の想いが、決められた偽りの想いに負けて堪るものか!!
私はじっと大士の顔を見つめ続ける。
「な、何だ………? その、そんなに見つめられると少し恥ずかしいんだが…………」
大士は狼狽えているけど、そんな彼をずっと見つめ続ける。
抑えられても抑えられても沸き上がるこの想い。
そして私は口を開く。
「大士…………」
「な、何………?」
「私ね…………大士に伝えたい事があるの…………!」
「葵………あなたまさか……………!」
優花が私の言いたいことに気付いたのか声を漏らす。
でも、私はここで止めたくない。
「私………私ね……………」
そして本当の私の想いを言葉にしようとした。
その瞬間だった。
【Side ??????】
―――
―――脅威度をレベル5へ上方修正
―――レベル5
―――ゲート
【Side 葵】
私がその想いを口にしようとした瞬間だった。
ゾクリと私にも分かるほどに背筋に悪寒が走る。
大士や優花もそれを感じたのかある一方向を見続けている。
そこには半径5mほどの小さなデジタルフィールド。
だけど、冷や汗が止まらない。
すると、そのデジタルフィールドの中からズシンズシンと重そうな足音が聞こえてきた。
デジタルフィールドの中から身長が4mほどの人型の影が見えてくる。
それは、緑色の皮膚を持ち、体の各所にボルトを打ち込まれたようなデジモンで、背中にバトルアックスを背負っていた。
「あ、あれはボルトモン! 究極体だっ!!」
大士が焦った声で叫んだ瞬間、ボルトモンの手が背中のバトルアックスの柄を掴んだ。
その瞬間、
「離れろ!!」
瞬間的に大士が私と優花を突き飛ばした。
私は元より、優花も突然の事に耐えることは出来ずに突き飛ばされる。
その瞬間、ボルトモンのバトルアックスが地面に振り下ろされ、地面に亀裂が入り、その亀裂が真っ直ぐにこちらに伸びてくる。
その亀裂が丁度大士の足元を通過すると、
「うわっ!?」
その亀裂が広がり、まるで絶壁のようになる。
そして、その真上にいた大士は、
「うわぁああああああああああああああっ!?」
その亀裂に呑み込まれた。
「大士!」
ドルモンが大士を追ってその亀裂に飛び込む。
「えっ……………?」
私は目の前の光景が信じられなかった。
「たっ、大士っ!?」
優花が声を上げながらその亀裂に駆け寄る。
私も目の前の光景を理解できないままその亀裂に駆け寄る。
そこは、底が見えないほどに深い奈落より深い深淵。
大士とドルモンの姿は無い。
「あ………あ…………」
すると、引き裂かれた地面が周りの圧力によって閉じていき、僅かな亀裂を残して閉じてしまった。
「う………嘘……………?」
優花の呟き。
それの意味する所は…………
大士の『死』。
「あ…………い……嫌………………!」
それを理解した瞬間、私の感情は崩壊した。
「「大士ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」」
私達の絶叫が響いた。
第11話の完成。
若干最後が纏まりなかったかな……………?
最下層の戦いでした。
ヒュドラだけでは相手にならんので完全体デジモンを2体追加。
攻撃を避けられない状況でしたので大苦戦です。
ハジメ達は香織が居る分若干マシでヒュドラを倒しました。
右目は失いましたけどね。
ハジメは戦闘後にぶっ倒れてはいません。
で、登場したヒシャリュウモン。葵さんもテイマーとして一歩前進です。
無事完全体を倒したと思いきや、いきなり登場究極体。
大士とドルモンが亀裂に呑み込まれ帰らぬ人に。(すっとぼけ)
残された葵と優花達の運命や如何に!(すっとぼけその2)
それでは次回をお楽しみに。