ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第25話 ありふれた殿軍

 

 

 

シティオブサウスゴータを制圧してからそう時を置かず、アルビオン軍から休戦を申し込まれた。

新年から始まる降臨祭の為だ。

降臨祭は、戦も休むのが慣例であるらしい。

俺から言わせれば、相手はそんな慣例を守る奴らかと突っ込みたくなるが。

シティオブサウスゴータの住人に食料を分けた連合軍も、補給の為にその申し出を呑んだ。

この街を占領した連合軍は、誇らしげに胸を張って歩いている。

サウスゴータの市民たちの顔にも、敗戦国民の悲愴さは見られない。

味方とはいえ、亜人達に街を闊歩されている状態は楽しいものではなかっただろう。

その上、アルビオン現政権の貴族派レコン・キスタはあまり好かれていなかったらしい。

更に、食料を供出したことで、解放軍として連合軍は受け入れられているようだ。

一部城壁は破壊されたものの、極力市街地への攻撃は避けられたため、街や市民の被害は殆ど発生していない。

自分たちの戦争が終わったことと、これから始まる降臨祭への期待で、自然と市民たちの顔は綻んでいた。

そんな中、

 

「始祖ブリミルと女神アルオイスにカンパーイ!!」

 

という声が、あちこちから聞こえて来ていた。

先日ウェールズが言った通り、女王サマが女神アルオイスの存在を公式に認めた為、瞬く間に連合軍中にアルオイスを称える声が広がったのだ。

特に艦隊に所属している者達は、自分達が救われた事も相まって、彼女を称える声が後を絶たない。

そんな声を葵は恥ずかしそうに聞いていた。

 

 

その降臨祭は10日ほど続いた。

この間に、以前アルバイトした『魅惑の妖精亭』のスカロン店長やジェシカ。

その親戚であるシエスタ達との再会があったが、特に特筆する事は無いだろう。

この10日間、俺達はこの街の井戸や川の水を飲まないように気を付けていた。

俺の記憶が確かなら、この街の水源がアンドバリの指輪によって汚染され、操り人形にさせられる筈だ。

ウェールズ達にも遠回しに忠告はしておいたが、そこまで効果は無いだろう。

そして、降臨祭の最終日である10日目にそれは起こった。

突如として鳴り響く、断続的な爆発音。

それと共に、街の西区を中心に火の手が上がる。

突然起こった反乱に、連合軍は混乱の極みに陥った。

更に、ロンディニウムのアルビオン軍主力が動き出したという報せも届き、総司令官であるウェールズは、苦渋の決断としてロサイスまで撤退する事を決めた。

 

 

 

俺達がロサイスに到着してから程なく。

ルイズと俺達はウェールズに呼び出された。

そこには女王サマとマザリーニ枢機卿も、沈痛な面持ちでそこに居た。

 

「よく来てくれた。こんな非常時に呼び出してしまってすまない………」

 

ウェールズは冷静を他所って入るが、その表情には悔しさが滲み出ている。

アルビオン奪還が目前のこの時に、反乱が起きて撤退を余儀なくされた事が悔しいのだろう。

 

「いえ、それでご用件とは………?」

 

ルイズが聞き返すと、

 

「現在、敵主力はここロサイスに向かって進軍を続けている。敵軍4万に加え、反乱した兵3万、計7万の大軍だ。明日の昼にはここロサイスに突っ込んでくるだろう」

 

ウェールズは現状を話す。

 

「撤退状況は?」

 

俺がそう聞くと、

 

「急がせてはいるが、ロサイスの港湾施設は巨大だが、何せ軍港でね。桟橋の数が少ないんだ。全軍が乗船するには、早くても明後日の朝まで掛かると思う」

 

「約1日の遅れか………」

 

俺が呟くと、

 

「なら、ぐずぐずしてはいられません! 姫様、すぐに脱出を………!」

 

ルイズがそう進言するが、女王サマは首を横に振る。

 

「いいえ。わたくしは、最後の船に乗ります」

 

「陛下!?」

 

女王サマの答えにルイズは驚愕する。

 

「わたくしはトリステインの女王です。全員が脱出するまで、ここを動く気はありません」

 

女王サマは真剣な表情で答えた。

 

「私も同じだ。全員の脱出を見届けるまで、ここを動く気はない」

 

ウェールズもそう答えた。

 

「ッ…………!?」

 

ルイズは絶句する。

すると、ウェールズは俺達に視線を向けた。

 

「……………連合軍総司令官として、君達に『依頼』したい………!」

 

真剣な表情でそう言葉を紡ぐ。

 

「連合軍の撤退が完了するまでの約1日、敵軍の足止めをお願いしたい……!」

 

ウェールズはそう言って頭を下げる。

 

「君達の力を当てにすることは、君達が戦争に参加する条件に反していると分かっている。だが、それでも君達を頼るしか無いんだ。全員が無事に脱出する為に………! 報酬は、可能な限り全ての要求に応える。だから、どうか頼む………!」

 

「わたくしからもお願いします。どうか、今一度その力をわたくし達にお貸しください………! 女王の名において、望む限りの報酬をお約束します………!」

 

女王サマも頭を下げる。

そんな2人に、

 

「わかった。引き受けよう」

 

俺はごくあっさりと引き受けた。

 

「「ッ!?」」

 

2人は驚いたように顔を上げて俺を見る。

 

「随分あっさりと引き受けてくれたね………?」

 

ウェールズはもっと渋られると思ったのかそう聞いてくる。

 

「依頼は敵軍の『足止め』なんだろ? 殺戮をする必要が無いのなら、そこまで意固地になることも無い。それに、前にも言ったがアルビオンにはまだ用事があるしな」

 

「アンドバリの指輪だったか………? その情報もつかめていないが………」

 

「いや、今回の出来事で大よその把握は出来た」

 

「ッ!?」

 

「今回の様な何の前触れもない反乱………覚えが無いか?」

 

「ッ………まさか!?」

 

「おそらく今回の反乱もアンドバリの指輪が原因だ」

 

「だが、以前とは規模が違い過ぎる! 3万もの人間を一斉に操れる力があるのなら、我々はもっと早く全滅していた!」

 

「それは使い方の違いだろう。1人1人操り人形にしていくなら、時間は掛かるが何度でも効力を発揮する。だが今回は、指輪自体を媒体にして、それを水源なんかに混入させたのだとしたら、一度きりだが、その水を摂取した人間を大量に操れるって事だろう」

 

「そう言う事か!」

 

ウェールズは机に拳を叩きつける。

その表情は怒りと悔しさが入り混じっている。

 

「そのような非道な輩にしてやられるとは…………!」

 

その様子を見つつ、

 

「ま、あくまで予想だ」

 

俺はそう付け加える。

 

「ともかく、足止めの任については引き受けた。俺達はまだやることがあるから、気にせず退却してくれ」

 

俺がそう言って葵と優花、デジモン達と退室しようとした時、

 

「待って!」

 

ルイズに呼び止められた。

 

「私も行くわ!」

 

「駄目だ」

 

その言葉が予想出来ていた俺は即答で否定する。

 

「ッ………!? どうしてよ!?」

 

「足手纏いだ」

 

俺はハッキリとそう言う。

ルイズはショックを受けた様に俯く。

だが、

 

「使い魔だけを行かせるのは、メイジのすることじゃないわ!」

 

「別に(仮)だから気にしなくても良いだろ?」

 

「(仮)でも何でも、あんた達は私の使い魔なの! なら、メイジとして共に行く義務があるわ!」

 

ルイズはこう言い出すと頑固だ。

メイジという立場に誇りを持っている為、その一線は絶対に譲らない。

正直、付いて来ても邪魔なだけなんだが…………

俺はどうするか思案していると、ふと閃きが奔った。

 

「………わかった。条件を飲むなら許可しよう」

 

「ホント!?」

 

「大士?」

 

ルイズは嬉しそうな表情をし、葵が不思議そうな顔をする。

 

「俺から出す条件は、作戦中は俺の指示に従え。それから、『俺からの頼みを一度だけ文句を言わずに引き受けろ』。これだけだ」

 

「わかったわ!」

 

ルイズは即答する。

まあ、ついて来たいだけで頭が一杯なんだろう。

 

「オーケー。交渉成立だ」

 

俺は頷くと、改めて殿軍を務める為に外へと向かった。

 

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

まだ朝もやが立ち込める、日が差し始めた時間帯。

合計で7万の大軍を率いる将軍ホーキンスは、馬に乗りながら部下からの報告を受けていた。

 

「この進軍速度であれば、本日の昼前にはロサイスに到着できるでしょう」

 

「うむ」

 

ホーキンスは頷くと前を見据える。

如何いう方法をとったかは知らないが、連合軍の3万もの兵が離反し、こちら側についた。

釈然としない何かは感じるが、今は命令通りに連合軍を追撃するのが先決だとホーキンスは考える。

連合軍は残り3万。

こちらは7万。

そして連合軍は既に敗走を始めている。

後は追撃して可能な限り殲滅するのみ。

普通に考えれば、勝負は決していた。

部下も、そしてホーキンス自身も勝利を疑っていなかった。

日の光が7万の軍を照らし始め、ホーキンスからも日の出が見える。

だが、ふとホーキンスは気付いた。

ホーキンスの眼から見える太陽の中に、2つの影がある事に。

 

「何だ?」

 

ホーキンスが声を漏らした瞬間、その影が徐々に大きくなり、巨大な竜の姿を形作った。

そして次の瞬間、突如として竜の頭上に超巨大な球形の影が現れたかと思うと、

 

「メタルメテオ!!」

 

その巨大な影が軍のすぐ前方に撃ち込まれたのだ。

地面が揺れるほどの振動と、衝撃波が大軍を襲う。

見れば、軍の前方に直系200mほどのクレーターが出来上がっていた。

 

「な、何事だ!?」

 

ホーキンスが叫んだ瞬間、ホーキンスを影が覆った。

上を見上げると、火竜よりも遥かに大きな紅の竜と、鎧を纏った蛇の様な形をした竜がこちらを見下ろすように滞空している。

ホーキンスは、咄嗟に攻撃命令を下そうとした。

だが突然、その2匹の竜から3つの影が飛び降りた。

その影は、ホーキンスから50mほど前に着地する。

それは、1人の少年と2人の少女だ。

 

「てっ、敵襲!!」

 

部下の1人が叫ぶ。

突然の事に呆けていた兵たちが、その声で我を取り戻し、迎撃に入ろうとした瞬間だった。

突風の様に2人の少女が飛び出し、少年とホーキンスの間に居た兵たちを全員吹き飛ばした。

 

「なっ!?」

 

ホーキンスが声を上げた瞬間、目の前に一瞬で移動してきた少年に大剣の切っ先を突き付けられていた。

正に電光石火の早業であった。

ホーキンスは抜こうとした杖を手放し、両手を挙げた状態になる。

すると、

 

「さて、アンタがこの軍を率いる将軍で間違いないな? ここからは交渉の時間だ」

 

その少年、大士の放った言葉にホーキンスは目を見開いた。

 

「交渉だと?」

 

ホーキンスは冷静を装い、聞き返す。

 

「こちらからの要求は、『この場で明日の日の出まで進軍を止める事』。それに対する対価は、『それ以降俺達は、お前達に手を出さない』だ」

 

「何………?」

 

ホーキンスは怪訝に思う。

 

「断ればどうする?」

 

「その時は、さっきの巨大な鉄球をこの軍に直接ぶち込む。少なくない損害が出るだろうし、それだけで1日以上の時間は稼げるだろ?」

 

「ッ…………ならば何故交渉の場を設けた?」

 

「虐殺を楽しむ様な趣向は持ってないんでね。可能であれば無駄な血を流すのは避けたいっていうのが本音だ。まあ、必要なら躊躇わないけどな」

 

迷うことなく口にした大士の言葉に、ホーキンスは内心舌打ちをする。

殺しを嫌う甘い人間なら言いくるめることも可能なのだろうが、今の大士の言葉に嘘は無かった。

殺しを嫌っているのは間違いないだろうが、必要なら迷わず手を下すだろう。

 

「さあどうする? すぐに決めてくれ。10秒以内に返答が無ければ先程の鉄球を直にぶち込む」

 

大士が上を指差すと、ドルグレモンが再びメタルメテオの鉄球を準備していた。

 

「ッ…………!?」

 

「10……9……8……」

 

大士がカウントダウンを開始する。

 

「7……6……5……」

 

「ッ~~~!」

 

ホーキンスは一瞬葛藤する。

 

「4……3……2……」

 

だが、カウントダウンが目前に迫った時、

 

「わかった! 交渉を受け入れる!」

 

ホーキンスは咄嗟に頷いた。

時間が無かったことも確かだが、大士が本気だという事を感じ取ったからだろう。

すると、大士が手を挙げるとドルグレモンが鉄球を消す。

そのまま地上に降りてくると、

 

「忠告しておくが、余計な事はしない事だ。戦列を立て直すぐらいは構わないが、それ以外の何かを企てようした時点で交渉は決裂したと判断し、その時点で攻撃を加える」

 

大士達はそのままドルグレモンに乗ると飛び立ち、少し離れた丘の上に着地する。

それを確認すると、ホーキンスは部下に部隊を立て直すよう命じる。

その際、部下から大士達に刺客を送り込むよう進言があったが、ホーキンスは却下した。

大士達3人を同時に気付かれないように始末する様子を思い浮かべる事が出来なかったからだ。

そしてその予想は正しく、刺客を送り込んでいれば、大損害を受けていた事は言うまでもない。

 

 

 

 

そして明朝。

ドルグレモン達は約束通り日の出と共に姿を消し、アルビオン軍は再び進軍を開始したが、ロサイスでは既に撤退が完了しており、もぬけの殻だった。

 

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

特に問題なく7万の大軍を足止めした俺達は、とある方向に向かっていた。

 

「ねえ! トリステインに戻るんじゃないの!?」

 

ルイズがそう問いかけてくる。

 

「この際だ。ウェールズにもうちょい恩を売っておく」

 

「恩………?」

 

「見えてきたぞ」

 

その言葉でルイズは前を向く。

そこには、

 

「ね、ねえ………もしかしてあれって………?」

 

「首都のロンディニウムだな」

 

「…………ちょ、もしかして恩って………!」

 

「クロムウェルをとっ捕まえる!」

 

「ええ~~~~~っ!?」

 

ルイズは驚愕の叫び声を上げる。

 

「突っ込むぞ!!」

 

「ちょ、まっ………」

 

ルイズの制止は無視してドルグレモンとヒシャリュウモンがロンディニウム城に突っ込んだ。

そこは、

 

「ななな!? 何者だ貴様たちは!?」

 

派手な服を着た男が腰を抜かしていた。

目の前には玉座っぽい豪華な椅子。

それっぽい場所に突っ込んだが、どうやらビンゴだったようだ。

周りには当然騎士っぽい奴らも居たが、優花により一瞬で意識を刈り取られている。

 

「…………お前がクロムウェルか?」

 

周りの状況を踏まえてそう口にすると、

 

「ちちち、違うぞ! 私は断じてクロムウェルなどと言う名前では無い!」

 

「はいビンゴ。クロムウェルじゃ無ければ、少なくとも呼び捨てでは呼ばないだろうしな」

 

俺はその男の言葉の内容を指摘する。

 

「はい、確保」

 

「がっ……!?」

 

優花が手刀でクロムウェルの意識を刈り取り、首根っこを掴んで引き摺る様に持つ。

一応念の為に、血を摂ってステータスプレートでクロムウェルであることを確認する。

 

「よし、どうやらクロムウェルで間違いないようだな」

 

俺がそう言うと、

 

「なら急いだ方が良いわ。この騒ぎを聞きつけて、兵士達が集まって来てるわよ」

 

そりゃ当然か。

 

「もうここには用はない。ずらかるぞ!」

 

「大士、言い方が何か盗賊っぽいよ?」

 

「………言うな。俺も言ってからそう思った」

 

葵のツッコミに俺は少し肩を落としながらそう言った。

 

「やってることは盗賊どころじゃないけどね」

 

ルイズも一周回って頭が冷静になったのか、そう突っ込んできた。

 

「……………」

 

俺達はドルグレモンとヒシャリュウモンに乗り、その場を離れるのだった。

 

 

 

 

 

当然だが追手が掛るものの、完全体のスピードはこの世界の竜とは比べ物にならない為、すぐに振り切ることが出来た。

余裕が出てきた所で俺はルイズに話しかける。

 

「さてルイズ。ここに連れて来る条件を覚えてるよな?」

 

「うっ………ええ、もちろんよ。で? 私に何をさせようっていうの?」

 

ルイズは渋々ながらもそう答える。

 

「何、そんな難しい事じゃない。このまま優花と一緒にクロムウェルを連れて、ラ・ロシェールに戻ってくれればいい。それで、表向きにはクロムウェルを捕まえたのはお前の功績にして欲しいってだけだ」

 

「は!? 何よそれ!? 私にあんた達の功績を掠め取れっていうの!?」

 

そこで喜ぶのではなく怒る辺りが流石ルイズと言うべきか。

 

「まあ平たく言えばそう言う事だ。まあ表向きだし、ウェールズや女王サマにはデカい貸しにしとくけどな」

 

「だったら功績もあんた達の物で良いじゃない! 何でわざわざ私に………!」

 

分かってないルイズに溜息を吐く。

 

「あのなぁ、俺達はお前の使い魔(仮)だが、傍から見ればただのぽっと出の平民だぞ? そんなぽっと出の平民が巨大な功績を上げたなんて言ったら、面白く思わない連中が出てくるに決まってるだろ? 別に刺客を送られたからと言って返り討ちにする自信はあるが、一々相手するのは面倒だ。お前なら公爵令嬢だし、しかも女王サマの女官で後ろ盾もばっちりだ。しかも虚無の担い手って言う肩書も持ってるしな。お前が功績を上げても文句言う奴は少ないだろ」

 

俺はそう説明する。

 

「………でも」

 

「それと、連れて来る条件は、『俺からの頼みを一度だけ文句を言わずに引き受けろ』だ」

 

「うっ…………」

 

俺は予め反対されることは予想していたのでこういう条件を付けくわえておいたのだ。

 

「わ、分かったわよ………今回だけだからね!」

 

ルイズは渋々と受け入れた。

そうして優花の空間魔法でルイズ、優花、ハックモンと別れ、俺達はアルビオンに残った理由の残り2つを片付ける為に再び移動を開始した。

目的地はシティオブサウスゴータ。

俺達はこの街に流れ込む水源を探っていた。

 

「見つけた!」

 

サーチモンのカードをスラッシュしておいたドルグレモンが、水路を見つける。

 

「じゃ、やるね」

 

葵が水の中に手を入れる。

現在、この街の水はアンドバリの指輪によって汚染されている。

つまり、水の中にアンドバリの指輪が溶け込んでいる状態だ。

ならば、そこに葵の再生魔法を使えば…………

一瞬水路が光り輝き、すぐに納まると、葵は水の中から手を出した。

そして、握っていた手を開くと、そこには1つの宝石が乗せられていた。

 

「よし、成功だな。台座は無いが………ミョズニトニルンが持ってるんだったか? コイツだけで勘弁してくれないかな?」

 

俺は呟く。

原作だと、確か台座だけでOKだった筈だが………

 

「じゃあ、残る目的はあと1つだね」

 

葵の言葉に俺は頷く。

最後の目的。

それはティファニアと関りを持つ事だ。

ティファニアの使い魔はリーヴスラシル。

原作では才人が二重契約でリーヴスラシルとなったが、この世界では分からない。

リーヴスラシルは、最強の虚無魔法『生命(ライフ)』を発動させるためには外せないピース。

今はバレていないのだろうが、いずれロマリアがティファニアに行きつくのは時間の問題だろう。

その時の為に、ティファニアを此方の陣営に引き込んでおく必要がある。

ティファニアは純真だから、ロマリアに言い様に騙される光景が目に浮かぶ。

それを防ぐ為に、ロマリアより先にティファニアと知り合っておく必要があると判断したわけだ。

まあ問題は、ウエストウッドの正確な位置が分からないって事だが………

ドルグレモン達に乗って探すと、余計な警戒をさせるかもしれないしなぁ。

とりあえず、シティオブサウスゴータとロサイスの街道の近くにある森の中って事しか分からないんだが………

でも、確か原作だと、ルイズやシエスタ、アニエスが行方不明の才人を探しに来て、割とあっさり見つけてたから、ロサイスからそこまで遠くは無い筈だが…………

とりあえずロサイスから街道沿いに進んで、最初にあった森の近くでドルグレモン達から降りて、森の中を探索する事にした。

俺達の後を、成長期に戻ったドルモンとリュウダモンが付いて来る。

森の中にもとりあえず道はあるようで、これなら迷う事は無いだろう。

最悪はまたドルモン達に進化して貰って空から脱出するだけだ。

 

 

 

森の中をしばらく進んでいると、少し開けた場所に出る。

その瞬間、

 

「なっ?」

 

「えっ?」

 

「これって………」

 

「一体何事だ………?」

 

俺達は思わず声を漏らした。

何故なら、そこには十数人の男達が倒れ伏していたからだ。

まあ、身形からして盗賊か?

呻き声が聞こえる事から死んではいない様だ。

俺はどうするかと思い掛けた時、

 

「ベビーフレイム!!」

 

「なっ!?」

 

突然聞こえて来たその声と、足元に飛んできた火球に驚く。

すると、

 

「まだ仲間が居やがったのか!?」

 

突然響く男の声。

俺が咄嗟にそちらを向くと、広場の真ん中あたりにあった大岩の上に立つ二つの影。

太陽を背にしており、逆光の影響でその姿はシルエットしか分からない。

片方は男性の様だが、もう片方は、ドルモンと同じぐらいの大きさの恐竜の様なシルエット。

 

「アグモン………?」

 

俺はハジメのパートナーのアグモンを思い浮かべるが、その横に居る男がハジメでない事は一目瞭然。

何故なら、ハジメは基本的に先程の様な暑苦しい声は上げないし、敵と判断したら即『ドパン』だからだ。

すると、再び男が声を張り上げた。

驚愕の一言を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここから先は一歩も通さねえ!! この大門 マサル様がな!!」

 

 

 

 

 







ゼロ魔クロス第25話です。
さっさと戦争終わらしたかったので、ほぼダイジェストの様な形になってしまいました。
だって書くとこないんだもん。
まあ、ここは勘弁してください。
そして、最後に現れたのは何と………………!
次回をお楽しみに。

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