ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第26話 ありふれない喧嘩番長

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

 

大士たちが知るデジタルワールドとは別のデジタルワールド―――

その世界に居るたった1人の人間、大門 マサルがデジタルワールドに来てから5年が経った。

マサルは子分であり、相棒でもあるアグモンと共に、今日も今日とてデジタルワールドの平和を守るため駆け回っている。

先程も、ゴブリモンとシャーマモンの集団が争おうとしていたので、喧嘩両成敗にしたところだ。

そして、今日の寝床を探していたとき、アグモンが何かを見つけた。

 

「アニキ~。これどっかで見たことあるんだけど何だっけ?」

 

アグモンが持っていたのは、土で泥だらけになり、表面に苔も生えている古ぼけた金属の球体。

マサルはそれをよく見る。

アグモンの言う通り、マサルにもその金属の球体はどことなく見覚えがあった。

 

「ん~?確かにどっかで見たことあるな。何だったかな~?」

 

マサルは腕を組んでよく思い出してみる。

 

「え~と、確かこれは…………」

 

その時マサルは、1つ思い当たるものを思い出した。

 

「………時空………振動爆弾………!?」

 

そう呟いたとき、偶然にも時空振動爆弾が起動し始める。

 

「おわっ!捨てろアグモン!」

 

「わわわっ!」

 

アグモンは慌ててそれを投げ捨てる。

 

その瞬間、時空振動爆弾は爆発し、ゲートが開かれる。

けど、それは途轍もなく不安定だった。

 

「やべぇ!吸い込まれる!」

 

本来は無い筈の吸引力をそのゲートは持っていた。

マサルとアグモンは、木の枝に掴まっていたがあっけなく折れ、

 

「「うわぁあああああああああっ!?」」

 

2人一緒にゲートに吸い込まれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

「ここから先は一歩も通さねえ!! この大門 マサル様がな!!」

 

その言葉を聞いた時、俺は一瞬思考が停止した。

大門 マサル…………?

あのデジモンセイバーズの主人公で喧嘩番長の…………?

その男の横に居るのは、腕にベルトを巻いたアグモン。

俺が思わず呆けていると、大門 マサルと名乗った男は立っていた大岩からこちらに向かって飛び降りて来て、

 

「うぉらぁっ!!」

 

そのまま俺の頬を殴りつけた。

 

「ぐあっ!?」

 

突然の事に呆けていた俺は、デジソウルによる強化が遅れてそのまま殴り飛ばされる。

 

「「「大士!?」」」

 

葵が俺に駆け寄り、ドルモンとリュウダモンが俺達を護る様に前に立ちはだかる。

 

「お前は誰だっ! いきなり何するんだ!?」

 

ドルモンが叫ぶ。

 

 

「さっきも名乗ったが、俺は喧嘩番長、大門 マサルだ!」

 

「喧嘩……?」

 

「……番長?」

 

マサルの名乗りに一瞬呆けるドルモンとリュウダモン。

 

「ぐっ………痛ってぇ~~~…………!」

 

俺は殴られた頬を押さえながら立ち上がる。

殴られた頬がジンジンと痛い。

身体の芯まで響く様な衝撃だった。

 

「俺の拳を受けて立ち上がるとはやるじゃねえか!」

 

マサルは立ち上がった俺を見て、ニヒルな笑みを浮かべる。

 

「なら、いっくぜぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

マサルが拳を振り被りながら駆け出してくる。

 

「このっ! メタルキャノン!!」

 

そんな勝に対して、ドルモンが鉄球を放った。

すると、

 

「おらぁっ!!」

 

マサルは躊躇することなくその鉄球に拳を繰り出し、鉄球を粉々にした。

 

「嘘ッ!?」

 

ドルモンは思わず驚愕する。

鉄球を素手で砕くとは思っていなかったんだろう。

だが、それもその筈。

 

「なっ!? その輝きは………!?」

 

リュウダモンが驚愕の声を上げた。

何故なら、マサルの右手には炎の様に揺らめくオレンジ色の四角い光………デジソウルが宿っていたからだ。

しかし、驚いていたのはマサル自身も同じだった。

 

「デジソウル…………って事は、お前達デジモンかっ!」

 

ドルモンとリュウダモンを見て、そう叫ぶマサル。

そう言えばマサルは、デジモン………っていうか、デジタル物質を殴らないとデジソウルが使えないんだったか。

デジソウルが発生したことで、ドルモン達をデジモンだと判断したんだろう。

 

「デジモン達を利用するとはふてぇ野郎だ! この喧嘩番長、大門 マサル様が成敗してやる!」

 

何か勘違いが加速してるんだが?

 

「ちょっと待て! 俺達は………!」

 

俺が釈明しようと声を上げようとする。

だが、

 

「問答無用!!」

 

単純馬鹿一直線のマサルは話を聞く気は無い様だ。

デジソウルを宿した拳を振り被って突っ込んでくる。

 

「チッ!」

 

俺は舌打ちしつつ、拳を握りしめて迎え撃つように駆け出した。

 

「うぉおおおおおおおおおっ!!」

 

「はぁああああああああっ!!」

 

マサルの拳と俺の拳がぶつかり合う。

その瞬間、衝撃が突風を巻き起こす。

 

「きゃっ!?」

 

「うっ!?」

 

「くっ!?」

 

葵、ドルモン、リュウダモンが声を漏らす。

だが、

 

「兄貴の拳を受け止めた!?」

 

向こうのアグモンは、俺がマサルの拳を止めた事に驚いている様だ。

そして、俺の拳には金色のデジソウルが宿っている。

 

「なっ!? お前もデジソウルを!?」

 

マサルもそのデジソウルをみて声を上げる。

すると、一旦飛び退き、

 

「へへっ………!」

 

嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「アグモン、久々に骨のありそうな相手だ……! 久しぶりに行くぜ!」

 

「おおっ! いつでも行けるぜ、兄貴!」

 

マサルの言葉にアグモンが応えると、マサルは懐から長方形のデジヴァイス、『デジヴァイスバースト』を取り出した。

そして、

 

―――EVOLUTION

 

デジヴァイスバーストの画面に、その文字が刻まれた。

 

「デジソウル………チャージ!!」

 

そのデジヴァイスバーストに、マサルはデジソウルが宿る右手を翳した。

デジヴァイスバーストにその光が吸い込まれ、進化の光が放たれる。

 

「アグモン進化!」

 

その光を受けたアグモンが輝き、進化を始める。

アグモンの体が分解され、大きく、強い姿へと再構成される。

それはグレイモンによく似た姿だが、通常のグレイモンよりも筋肉質で、身体の各部に生えた棘が、より攻撃的な印象を持たせるグレイモンの亜種。

 

「ジオグレイモン!!」

 

ジオグレイモンが光の中から現れ、その巨体を見せつける。

 

「グレイモンじゃない!?」

 

葵がジオグレイモンの進化に驚き、Dアークを取り出す。

 

「ジオグレイモン 成熟期 ワクチン種 恐竜型デジモン。必殺技は、『メガフレイム』、『メガバースト』、『ホーンインパルス』…………ジオ……グレイモン………?」

 

葵が情報を読み上げる。

 

「どうだ! こいつがジオグレイモンだ!!」

 

マサルが誇る様にそう叫ぶ。

 

「……………だったらこっちも! 行くぞドルモン!」

 

「ああ!」

 

俺の呼びかけにドルモンが応える。

 

―――EVOLUTION

 

Dアークの画面にその文字が刻まれる。

 

「デジソウル………チャージ!!」

 

そのDアークに、俺はデジソウルが宿る右手を翳した。

Dアークにその光が吸い込まれ、進化の光を放つ。

 

「ドルモン進化!」

 

ドルモンが光を放ち、成熟期へと進化する。

それは金色の体毛と機械化されたボディを持つ獣竜。

無垢のクロンデジゾイドの重量で抑制しなければいけない程のパワーを秘めたサイボーグ型デジモン。

 

「ラプタードラモン!!」

 

俺の隣にラプタードラモンが降り立つ。

 

「ッ!? 向こうのデジモンも進化しやがった!」

 

マサルが驚きの声を漏らす。

 

「これで条件は同じだな」

 

俺がそう言うと、マサルは不敵な笑みを零す。

 

「へっ! 進化したのには驚いたが、それでも俺達が負ける筈がねえ!」

 

自信満々のその言葉。

それは、パートナーと揺るぎない信頼で結ばれている事を感じさせる。

 

「行け! ジオグレイモン!!」

 

「おおっ!」

 

ジオグレイモンが足音を響かせながら突っ込んでくる。

 

「迎え撃て! ラプタードラモン!!」

 

「ああ!」

 

ラプタードラモンもジオグレイモンに向かって突進し、中央でぶつかり合う。

 

「………葵、リュウダモン。今のうちにその辺に転がってる奴らを巻き込まれないように集めといてくれ」

 

「うん、わかった」

 

「承知!」

 

葵とリュウダモンは頷いて倒れている盗賊達に向かって行った。

ラプタードラモンとジオグレイモンは組み合っていたが、

 

「うぉおおおおおおおおおっ!!」

 

ジオグレイモンが押し出し、ラプタードラモンを突き飛ばした。

 

「くっ!」

 

「力はジオグレイモンの方が上か………!」

 

ラプタードラモンはたたらを踏むが、何とか持ち堪える。

だが、ジオグレイモンは息を大きく吸い込む様に顎を上げていた。

 

「いっけー! ジオグレイモン!!」

 

「メガフレイム!!」

 

マサルの掛け声と共に、ジオグレイモンの口から灼熱の火炎が放たれる。

普通のグレイモンのメガフレイムは、圧縮された豪火球だが、ジオグレイモンのメガフレイムは放射状に放たれる炎だ。

その炎にラプタードラモンは呑み込まれる。

 

「よっしゃあ!」

 

マサルはそれを見てガッツポーズを取る。

だが、

 

「俺のパートナーを甘く見るなよ」

 

俺の言葉と共に、メガフレイムの炎が掻き消え、ラプタードラモンは無事な姿を見せつける。

 

「メガフレイムが効かない!?」

 

マサルは驚愕の声を漏らす。

ラプタードラモンの装甲は、拘束具とは言えクロンデジゾイド製だ。

それは成熟期の中でも高い防御力を持つ事を意味する。

同じ成熟期の必殺技の直撃を受けようとも、1発ぐらいでは如何こうなるものではない。

 

「お返しだ! ラプタードラモン!!」

 

「クラッシュチャージ!!」

 

俺の掛け声と共に、鋭利な装甲を武器とした体当たりを仕掛ける。

 

「ッ! ホーンインパルス!!」

 

ジオグレイモンは鼻先の巨大な角による突進で迎え撃った。

ラプタードラモンとジオグレイモンがぶつかり合い、衝撃を撒き散らす。

2体は一旦弾かれあったが、

 

「ラプタードラモン!!」

 

俺の掛け声でラプタードラモンは空中で制動を掛け、ジオグレイモンに組み付く。

 

「何ッ!?」

 

マサルが声を漏らした瞬間、

 

「アンブッシュクランチ!!」

 

鋭利な牙と強靭な顎を使い、ジオグレイモンの左肩に、強烈な噛み付き攻撃を喰らわせる。

 

「うぐぁああああああああっ!?」

 

ジオグレイモンは堪らず悲鳴を上げる。

 

「ジオグレイモン! この野郎!」

 

マサルが地面を蹴ると、ジオグレイモンに食いついているラプタードラモンに飛び掛かり、

 

「俺の子分を放しやがれ!」

 

その頭部にデジソウルを纏った拳を叩きつける。

 

「うあっ!?」

 

クロンデジゾイドの装甲で覆われている筈の頭部を当然の様に殴りつけ、ラプタードラモンを仰け反らせる。

 

「ジオグレイモン!」

 

「ッ!」

 

ラプタードラモンが怯んだ瞬間、ジオグレイモンがラプタードラモンを突き飛ばし、

 

「メガバースト!!」

 

口の中で火炎を圧縮させ、熱線として放つ必殺技、『メガバースト』が放たれた。

極太ビームの如く放たれた熱線に、ラプタードラモンが呑み込まれる。

 

「ラプタードラモン!?」

 

その威力はメガフレイム以上。

その熱線が途切れると、

 

「何て奴だ………メガバーストにも耐えやがった………」

 

マサルの言葉通り、五体満足のラプタードラモンがそこに居た。

だが、流石に無傷とはいかず、あちこちに焼け焦げた跡が見て取れる。

 

「大丈夫か? ラプタードラモン………」

 

「ああ………まだまだ平気さ!」

 

ラプタードラモンは強がるようにそう言うが、ダメージは決して低くは無いだろう。

すると、

 

「思ったよりもやるじゃねえか」

 

マサルはそう言いつつも、まだまだ余裕の表情だ。

それは当然だろう。

ジオグレイモンはまだ成熟期なのだから。

 

「けどよ、俺達の力はまだまだこんなもんじゃないぜ?」

 

マサルはそう言いながら、俺に見せつけるように右手の拳に宿るオレンジ色のデジソウルを燃やす。

 

「…………それはこちらも同じだ」

 

マサルに対抗する様に、俺も拳に金色のデジソウルを宿した。

それを見ると、マサルは不敵な笑みを零し、

 

「へっ! なら、見せて貰おうじゃねえか!」

 

「…………いいだろう!」

 

お互いが競うようにデジソウルの輝きを強くする。

そして、俺はDアークを。

マサルはデジヴァイスバーストを突き付けた。

 

――PERFECT

  EVOLUTION――

 

Dアークとデジヴァイスバーストにその文字が刻まれた。

互いのデジソウルが天を衝くほどに溢れ出す。

 

「「デジソウル…………フルチャージ!!」」

 

俺達は同時に、全身から溢れたデジソウルをそれぞれのデジヴァイスに纏めて叩き込む。

その液晶画面からレーザービームの如く光が放たれ、ラプタードラモンとジオグレイモンを包んだ。

 

「ラプタードラモン進化!」

 

「ジオグレイモン進化!」

 

光の中でラプタードラモンはサイボーグの獣竜の姿から竜人の姿へ。

ジオグレイモンは身体の各部が機械化されていく。

竜人となったラプタードラモンは、その身を金色に輝かせ、青いマントをはためかせる。

ジオグレイモンは、左腕が巨大なリボルバー式の銃となり、背中にブースターを装備する。

ラプタードラモンが進化した戦士型デジモン。

ジオグレイモンが進化したサイボーグ型デジモン。

 

「グレイドモン!!」

 

「ライズグレイモン!!」

 

グレイドモンとライズグレイモンが向かい合う。

 

「ライズグレイモン…………」

 

葵がDアークを見る。

 

「ライズグレイモン 完全体 ワクチン種 サイボーグ型デジモン。必殺技は、『トライデントリボルバー』、『ライジングレストロイヤー』、『ソリッドストライク』」

 

すると、

 

「そっちは随分と縮んじまったな」

 

マサルがそう言った。

ライズグレイモンは、ジオグレイモンよりもさらに大きくなり、全高15m前後。

対してグレイドモンは、全高が3.5mほどしかない。

その大きさは歴然だ。

だが、

 

「小さいからと言って甘く見ると、痛い目を見るのはそっちだぜ?」

 

「へっ! 上等だ!」

 

マサルのその笑みに油断は無い。

 

「行け! ライズグレイモン!!」

 

「グレイドモン! 来るぞ!」

 

ライズグレイモンが背中のブースターを吹かせ、全力で突っ込んでくる。

そして、左腕の銃身を振り被った。

 

「ソリッドストライク!!」

 

ライズグレイモンは、容赦無くグレイドモンに向かって、全力で殴りかかる。

端から見れば、大人げないとも見られかねない光景だ。

だが、マサルもライズグレイモンも本能的に理解しているのだろう。

グレイドモンが、手加減して勝てる相手では無い事に。

そして、それはその通りだ。

 

「ふっ!」

 

迫りくる銃身をグレイドモンは双剣を頭上でクロスして受け止める。

だが、パワー勝負では先程と同じくライズグレイモンに分があるだろう。

故にグレイドモンは、その一撃をまともに受け止めたりはしない。

双剣を巧みに操り、その力の向きを変え、側面へと受け流す。

ライズグレイモンの一撃は、受け流されてグレイドモンのすぐ横の地面を陥没させるだけに留まった。

 

「ライズグレイモンの一撃を、あっさりと受け流しやがった!?」

 

マサルが驚愕の声を漏らす。

それも当然だ。

グレイドモンは、ロイヤルナイツであるロードナイトモンを超える剣技を持っている。

力任せの一撃なら、受け流すのは容易い。

その瞬間、グレイドモンがライズグレイモンの懐へ飛び込み、その胴体に剣の一閃を食らわせる。

 

「ぐぅっ!?」

 

ライズグレイモンは苦しそうな声を漏らして後退した。

 

「それなら!」

 

ライズグレイモンは銃口をグレイドモンへ向ける。

 

「トライデントリボルバー!!」

 

その破壊力は核弾頭に匹敵すると言われる銃弾を3連射する。

それに対し、グレイドモンは双剣を十字に構え、

 

「クロスブレード!!」

 

十字の斬撃を飛ばし、トライデントリボルバーと相殺させる。

その場が爆煙に包まれるが、

 

「グレイドモン!!」

 

俺の合図でグレイドモンがその煙の中に突っ込む。

 

「ッ!? 見えないっ……!」

 

ライズグレイモンが思わず漏らす。

ライズグレイモンの巨体はこちらからは十分に把握できる。

だが、小さいグレイドモンは、ライズグレイモンからは把握し辛いだろう。

次の瞬間、煙の中を突っ切ったグレイドモンは、ライズグレイモンの目前に飛び出した。

 

「なっ!?」

 

「グレイドスラッシュ!!」

 

上段に振りかぶった二刀を、全力で振り下ろす。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

その一撃を受けたライズグレイモンは後ろ向きに倒れそうになった。

だが、

 

「負けるなライズグレイモン! 気合いだぁっ!」

 

「ッ! ぬんっ!!」

 

マサルの声に応えるように、目を見開いたライズグレイモンは、強引に体を捻ると強烈な尾撃を繰り出す。

 

「ぐはぁっ!?」

 

技を繰り出した直後の隙を狙われ、グレイドモンはその尾撃を諸に受けて吹き飛ばされる。

しかも、ライズグレイモンの機械化された尻尾の先で受けた為、その威力は一押しだ。

 

「グレイドモン!?」

 

吹き飛ばされたグレイドモンは地面に叩きつけられる。

 

「今だ! ライズグレイモン!!」

 

ライズグレイモンがグレイドモンに向き直ると、背中のブースターを大きく広げ、そこに装備されているビーム砲を向けた。

グレイドモンは立ち上がった所だが、僅かに遅い。

 

「拙い!」

 

俺は咄嗟に宝物庫から1枚のカードを取り出した。

 

「カードスラッシュ!」

 

そのカードをDアークにスラッシュした瞬間、

 

「ライジングデストロイヤー!!」

 

ライズグレイモンのブースターに装備されている6つのビーム砲が輝き、それぞれからビームが放たれると、ライズグレイモンの前方で収束。

極太ビームとなって放たれた。

グレイドモンはその極太ビームに呑み込まれる。

 

「よっしゃあっ!」

 

マサルは思わず称賛の声を上げる。

だが、その直後にライズグレイモンの後方にグレイドモンが現れた。

 

「何ッ!?」

 

「速いっ!?」

 

ライズグレイモンとマサルが驚愕した瞬間、

 

「クロスブレード!!」

 

グレイドモンの神速の十字斬りが、無防備なライズグレイモンの背中を捉えた。

 

「ぐああああああああああああああああああああっ!?!?!?」

 

無防備な背中に、しかも不意打ちで受けた事で、ライズグレイモンに致命的なダメージを与える。

ライズグレイモンは光に包まれ、アグモンに退化した。

 

「アグモン!!」

 

マサルはアグモンに駆け寄る。

 

「アグモン! しっかりしろ!」

 

「ううっ………アニキ………!」

 

「一体………何が………?」

 

マサルは完璧に捉えた筈の一撃を躱され、更に反撃を受けたことが信じられない様だ。

答えは簡単。さっきスラッシュしたカードは高速プラグインB。

一瞬だけだが、超高速移動が可能になるカードだ。

このカードをスラッシュすることで、本来なら直撃するはずだった一撃を躱し、反撃を可能にしたのだ。

 

「………………………」

 

俺はマサルとアグモンを見据える。

普通の敵だったのならここで終わりなのだが、生憎相手は『あの』大門 マサルとそのパートナーのアグモンだ。

 

「…………まだ行けるな、アグモン?」

 

「へへっ………当然だぜ………!」

 

ボロボロになりながらも、アグモンは笑みを浮かべて立ち上がる。

2人には諦めの色など微塵も無い。

 

「なら見せてやろうぜ! 俺達の、本当の『力』を!!」

 

マサルがその手にデジソウルを宿しながら力強くそう言うと、

 

「おう!!」

 

アグモンは迷いなく頷いた。

そして、次の瞬間、

 

――ULTIMATE

  EVOLUTION――

 

マサルのデジヴァイスバーストにそう表示される。

 

「デジソウルチャージ! オーバードライブ!!」

 

全身に溢れるデジソウルを右手に集中させ、デジヴァイスバーストに叩き込んだ。

そして、デジヴァイスバーストから溢れる光の奔流。

その光の奔流を受け、アグモンは進化する。

 

「アグモン進化!」

 

大きさはライズグレイモンよりさらに大きく。

人型に近い形状だが、真紅の鋼の翼を持ち、グレイモン系の特徴である側頭部の2本の角と、鼻先の角。

太く長い竜の尻尾を持つ、全身に灼熱の太陽エネルギーを蓄えた究極体の光竜型デジモン。

 

「シャイングレイモン!!」

 

全高30m近い巨体を持つシャイングレイモンがその場に降り立つ。

 

「来たか………! シャイングレイモン………!」

 

俺は小声で呟く。

 

「シャイングレイモン 究極体 ワクチン種 光竜型デジモン。必殺技は、『グロリアスバースト』、『シャイニングブラスト』、『ジオグレイソード』………究極体………」

 

葵がDアークで情報を読み上げる。

 

「見たか! これがアグモンの究極体! シャイングレイモンだ!!」

 

マサルは堂々と言い放つ。

シャイングレイモンの巨体とグレイドモンのサイズ差は凄まじいものだ。

 

「……………………!」

 

前世のアニメでは何度も見たデジモンだが、こうやって実際に相対すると、その威圧感は半端じゃない。

すると、

 

「どうやらそっちのデジモンは剣が得意みたいだからな………こっちも剣で行かせてもらうぜ!」

 

マサルはそう言うと、デジヴァイスバーストの側面に手を翳す。

 

「ジオグレイソード!!」

 

「むんっ!」

 

シャイングレイモンが右手を地面に打ち込むと、シャイングレイモンの周りに炎の環が発生する。

 

「ぬぅぅぅぅぅぅぅん!」

 

シャイングレイモンが右手を地面から引き抜くと、そこには金色のツインソードが握られていた。

 

「行け! シャイングレイモン!!」

 

「うぉおおおおおおおおおおっ!!」

 

シャイングレイモンがジオグレイソードを振り被りながら突進してくる。

 

「ッ!」

 

グレイドモンが迎え撃とうと双剣を構える。

 

「はぁああああああああああっ!!」

 

シャイングレイモンがジオグレイソードを振り下ろした。

圧倒的なスピードの前に、避ける暇もない。

グレイドモンは仕方なく受け止める選択をする。

ジオグレイソードがグレイドモンの双剣に叩きつけられる。

グレイドモンは、剣技こそ優れているが、そのポテンシャルは完全体の域を出ない。

究極体のパワーとスピードの前には受け流す事も出来なかった。

その為、グレイドモンの双剣が砕け散る。

 

「ッ!?」

 

グレイドモンが驚愕した瞬間、

 

「はぁああっ!!」

 

ジオグレイソードの逆側の刃が切り返され、薙ぎ払われた。

 

「うぁあああああああああああっ!?!?」

 

究極体の一撃は、完全体のデジモンにとっては致命的だ。

グレイドモンはドルモンに退化してしまう。

 

「ドルモン!」

 

俺はドルモンに駆け寄る。

 

「くぅ………大士………あいつ、強いよ………」

 

「ああ、分かってるさ。そんな事、戦う前からな………!」

 

大門 マサルはデジモンシリーズの主人公の中でも、一番規格外な主人公だ。

ドルモンはよろよろと立ち上がると、

 

「大士………こっちも究極体で…………!」

 

ドルモンの言葉は当然だ。

究極体に対抗するには究極体しかない。

だが、

 

「…………………………」

 

今の俺には、ドルモンと融合進化をする気は起きなかった。

 

「………………………何でだろうな?」

 

俺は自問する様に呟く。

 

「大士………?」

 

ドルモンが怪訝な声を漏らす。

 

「……………こんなの俺のキャラじゃない筈なのに…………俺は、あいつと同じ土俵で戦いたいと思ってる…………」

 

「同じ土俵って…………? まさか………!」

 

俺の言葉にドルモンも察しがついたのか、驚いたように目を見開く。

 

「…………………………」

 

俺は自分の拳に宿るデジソウルを見つめる。

あの時は、怒りのままに進化させ、制御不能の暴走状態に陥った。

だけど、今なら…………

 

「ドルモン………俺は今、1人の『男』として、あの『漢』に勝ちたいと思っている………!」

 

マサルの熱さに感化されたのだろうか?

俺らしくないと分かっているのに、同じ土俵で戦いたいという気持ちが止まらない。

 

「………………やろう、大士!」

 

ドルモンが叫んだ。

 

「ドルモン………!」

 

「あの過去を本当に乗り越えるためにも、やるべきだと俺は思う!」

 

ドルモンは俺を真っすぐに見つめる。

 

「大丈夫。大士なら出来るよ」

 

そう言って笑った。

その顔を見て、俺も思わず笑みを浮かべる。

 

「………ああ、そうだな。俺なら………俺達なら出来る!」

 

もう迷いは無い。

 

「やるぞ、ドルモン!」

 

「ああ! 大士!」

 

俺の言葉にドルモンは迷いなく頷く。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

俺は勝ちたいという思いを胸に、デジソウルを爆発させる。

そして、その爆発させたデジソウルを意志の力で制する。

身体中から溢れ出したデジソウルが集約し、高密度のオーラとなって身体に纏われた。

 

「こいつは………まさか!?」

 

マサルが驚愕の声を漏らす。

俺はDアークを取り出し、それを突き出した。

 

――ULTIMATE

  EVOLUTION――

 

「デジソウルチャージ! オーバードライブ!!」

 

身体中に集約されたデジソウルをDアークに叩き込む。

Dアークから光の奔流が溢れ、ドルモンを包んだ。

 

「ドルモン進化!」

 

ドルモンの腕が分解され、灰銀の甲殻を持つ獣竜の腕として再構成される。

ドルモンの脚が分解され、灰銀の甲殻を持つ獣竜の脚として再構成される。

ドルモンの体が分解され、灰銀の甲殻を持つ獣竜の体として再構成される。

ドルモンの頭が分解され、灰銀の甲殻を持つ獣竜の頭として再構成される。

怒りでは無く、勝ちたいという思いに応えて進化した、ドルモンのもう1つの究極体。

 

「ドルゴラモン!!」

 

以前、破壊の権化として降臨した獣竜が、再びその姿を現した。

 

「あの進化はっ!」

 

リュウダモンが焦った声を漏らす。

リュウダモンは、ドルゴラモンの暴走を直に見てるから仕方ないが。

 

「……………行けるか? ドルゴラモン」

 

俺の言葉に、ドルゴラモンはゆっくりと眼を開く。

その瞳には、確かなドルモンの理性の輝きがあった。

 

「………大丈夫。コントロールできる………」

 

ドルゴラモンは落ち着いた声でゆっくりと答えた。

その言葉に、俺は笑みを浮かべる。

俺と共に、ドルゴラモンはシャイングレイモンとマサルを見据えた。

ドルゴラモンの大きさは、シャイングレイモンにも引けを取らない。

 

「向こうも究極体に………」

 

マサルが声を漏らす。

だが、すぐに再び不敵な笑みを浮かべると、

 

「へへっ! 面白くなってきやがった! シャイングレイモン!!」

 

「おおっ!!」

 

マサルの声で、再びシャイングレイモンがジオグレイソードを構えて突っ込んでくる。

ジオグレイソードを振り被り、ドルゴラモン目掛けて振り下ろした。

だが、

 

――ギィンッ!

 

と甲高い音を立てて、その一撃はドルゴラモンの左腕によって防がれる。

 

「くっ………!」

 

「ジオグレイソードが防がれた!?」

 

マサルが驚愕の声を漏らす。

 

「はぁあああああっ!!」

 

ドルゴラモンは、受け止めた左腕を振り上げて、シャイングレイモンの手からジオグレイソードを弾く。

 

「くあっ!?」

 

シャイングレイモンは後退し、ジオグレイソードはその後方に突き刺さった。

 

「くっ! それなら!」

 

シャイングレイモンは両手を胸の前で向かい合わせにすると、そこにエネルギーが集中していき、高密度の豪火球を生み出す。

 

「グロリアスバースト!!」

 

その豪火球を押し出すようにして放った。

ドルゴラモンに向かって迫って来る豪火球。

だが、俺はそれを見ても落ち着いていた。

 

「撃て、ドルゴラモン」

 

俺はそう告げる。

すると、ドルゴラモンの口にエネルギーが集中し、

 

「ドルディーン………!」

 

破壊の衝撃がレーザーの様に放たれた。

ドルディーンがグロリアスバーストとぶつかり合うと、ドルディーンがグロリアスバーストの真ん中を貫通した。

 

「なっ!? うあっ!?」

 

貫通したドルディーンを、シャイングレイモンは紙一重で躱す。

ドルディーンはそのまま空へと消えた。

以前の様な破壊力は無いにしろ、その力は究極体の上位でもトップクラスだ。

 

「グロリアスバーストを貫いた!?」

 

マサルは驚愕する。

 

「…………行け、ドルゴラモン!」

 

俺の言葉にドルゴラモンは全身にエネルギーを纏う。

それは、全身全霊の突進攻撃、

 

「ブレイブメタル!」

 

ドルゴラモンは全身にエネルギーを纏って突進する。

 

「負けるな! シャイングレイモン!!」

 

「うぉおおおおおおおおっ!!」

 

シャイングレイモンも同じように全身にエネルギーを纏う。

 

「シャイニングブラスト!!」

 

ドルゴラモンに対抗する様に突進攻撃を行う。

ドルゴラモンとシャイングレイモンが互いに接近する。

 

「…………………………………!」

 

「うぉおおおおおおおおおっ!!」

 

そして、その2体がぶつかり合った瞬間、

 

「うぁあああああああああああああっ!?」

 

シャイングレイモンが一方的に押し負けた。

シャイングレイモンが地面に叩きつけられる。

 

「シャイングレイモン!?」

 

マサルが叫ぶ。

だが、

 

「決めろ! ドルゴラモン!!」

 

ドルゴラモンは空中でUターンして、地面に倒れたシャイングレイモンに向かって行く。

この一撃で戦闘不能にするつもりだ。

ドルゴラモンがシャイングレイモンに迫る。

 

「くっ…………!」

 

シャイングレイモンは、ダメージの影響ですぐには動けそうにない。

俺はこれで決まったと思った。

だが、俺は忘れていた。

その『漢』は、そんな常識など軽く殴り倒す奴だという事を。

 

「させるかよぉっ!!」

 

ドルゴラモンがシャイングレイモンに止めの一撃を決める寸前、マサルが横から飛び込んできた。

 

「ッ!?」

 

ドルゴラモンは目を見開く。

そして、

 

「うぉらぁあああああああああああああああっ!!!」

 

デジソウルを纏った拳を、ドルゴラモンの横っ面に叩き込んだ。

 

「うぐぁああああああああああああっ!?!?!?」

 

ドルゴラモンが横殴りに大きく揺らいだ。

そして、そのまま横倒しに転倒する。

 

「ウソォ……………ドルゴラモン殴り倒すか普通…………?」

 

俺は思わず呆けてしまった。

 

「アニキ………スゲェ………」

 

シャイングレイモンもそう零す。

だが、マサルは地面に着地すると、

 

「立て、シャイングレイモン! さっきの借りを返してやれ!!」

 

「ぬぁああああああああああああっ!!」

 

シャイングレイモンが気合の入った声を上げて立ち上がる。

すると、

 

――BURST

  EVOLUTION――

 

「チャージ………! デジソウル………バースト!!」

 

マサルがデジヴァイスバーストに手を翳し、更なる光がシャイングレイモンを包む。

シャイングレイモンの身体が真紅に染まり、右手に炎の剣。

左手に炎の盾。

そして背中には炎の翼。

シャイングレイモンが限界を突破した姿。

 

「シャイングレイモン バーストモード!!」

 

シャイングレイモンBMが姿を現す。

 

「行けぇ! シャイングレイモン!!」

 

「おおおおおおっ!!」

 

シャイングレイモンBMが猛スピードで突っ込んでくる。

 

「ドルゴラモン!!」

 

炎の剣の一撃をドルゴラモンは左腕で防御するが、先程と違い、その腕には傷が出来る。

 

「うおおおおおおっ!!」

 

シャイングレイモンは炎の翼を噴出させ、ドルゴラモンを押していく。

 

「くぅぅっ………!」

 

「ドルゴラモン!?」

 

ドルゴラモンを超えるパワー。

これがシャイングレイモンBM。

俺が改めてシャイングレイモンBMの強さに感嘆していると、

 

「うおりゃぁあああああああああっ!!」

 

シャイングレイモンBMの肩からマサルが飛び出し、ドルゴラモンの頭を殴りつけた。

 

「ぐああぁっ!?」

 

ドルゴラモンは怯む。

 

「はぁああああああああっ!!」

 

シャイングレイモンBMは両手に炎の剣を持つと、ドルゴラモンを斬りつける。

 

「がぁああああああっ!?」

 

強靭なはずのドルゴラモンの身体に傷ができ、少なくないダメージが見て取れる。

 

「ドルゴラモン!!」

 

俺は思わず叫ぶ。

後ろ向きに倒れるドルゴラモン。

 

「止めだ!!」

 

シャイングレイモンBMは両手の炎の剣を1つにして炎の大剣を生み出す。

それを、ドルゴラモンに突き立てようと振り上げた。

それを見た瞬間、俺の身体は勝手に動いていた。

 

「やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

デジソウルを全開にし、身体能力を限界まで強化し、地面を蹴った。

ドルゴラモンに炎の剣を突き立てようとしたシャイングレイモンBMの顔に肉薄する。

 

「なっ!?」

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………………だりゃぁああああああああああああああっ!!!!!」

 

俺は、シャイングレイモンBMの顔目掛けて渾身の拳を叩き込んだ。

 

「ぐっ!? うわぁあああああああああああああっ!!」

 

「シャイングレイモン!?」

 

横向きに倒れるシャイングレイモンBMと驚愕の声を上げるマサル。

 

「……………ハハッ………やれば出来るもんだな…………」

 

やった後で改めて考えると笑えて来る。

俺がシャイングレイモンを………

しかもバーストモードを殴り倒した。

正直自分でやっておいて信じられない。

 

「ぐっ………まさか、デジモンの究極体を殴り倒す事が出来る人間が、アニキ以外にも居たなんて…………!」

 

シャイングレイモンは驚きの言葉を口にしながら起き上がる。

すると、

 

「へへっ…………!」

 

マサルが嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

「アニキ………?」

 

「面白れぇっ! 勝負だ!!」

 

そう言ってマサルが俺に向かって駆け出してくる。

 

「受けてやらぁっ!!」

 

俺も右手にデジソウルを宿しながらマサルに向かって駆け出す。

 

「うぉおおおおおおおおおおおっ!!」

 

「はぁあああああああああああっ!!」

 

お互いのデジソウルを纏った右の拳を繰り出す。

拳が交差し、そのまま互いの頬へ突き刺さった。

 

「ぬ………ぉぉぉぉおおおおおおっ!!」

 

「ぬがぁぁぁぁぁあああああああっ!!」

 

次の瞬間、お互いによろけて後ずさる。

流石はマサルの拳と言うべきか、デジソウルで強化していたにも関わらず、殴られた頬がめっちゃ痛い。

いや、痛いで済んでるだけでも大概かもしれないが。

すると、

 

「…………何でだ?」

 

「?」

 

マサルが突然口を開く。

 

「何でこんな真っ直ぐな拳を持ってて、盗賊なんかやってやがる!?」

 

いきなりそう問いかけてきた。

 

「…………………つーか、そもそも俺達は盗賊じゃないんだが?」

 

「……………………へ?」

 

俺の答えに、マサルは素っ頓狂な声を漏らした。

 

「俺達は偶々通りかかった『通りすがり』なんだが?」

 

「…………………マジ?」

 

「マジ」

 

俺の言葉にマサルは沈黙する。

 

「…………………なんだよ。それならそうと言ってくれりゃ………」

 

「言う前に問答無用で殴りかかって来たのはそっちだからな」

 

「……………………………………」

 

再び沈黙するマサル。

 

「………アニキ…………」

 

シャイングレイモンも気まずそうな声を漏らす。

すると、パンッと顔の前で手を合わせ、

 

「その………悪かった! 俺の早とちりだ………!」

 

自分が悪いと判断したのか、そう謝って来た。

 

「お前のデジモンは大丈夫か? 結構思いっきりやっちまったと思うんだが………」

 

「まあ、ドルゴラモンはそんな柔じゃない。ダメージは受けたが命に係わるほどじゃないさ」

 

「そ、そうか………重ねてすまんかった」

 

「まあ、誤解が解けたなら何よりだ」

 

すると、

 

「終わった?」

 

葵が声を掛けてくる。

 

「ああ」

 

俺は頷く。

 

「あんた、こいつの連れか?」

 

「うん。私、神代 葵。こっちはパートナーのリュウダモン」

 

「リュウダモンだ」

 

葵がそう名乗ると、

 

「俺はさっきも名乗ったが、喧嘩番長の大門 マサルだ」

 

親指で自分を指しながらそう名乗る。

 

「そんで、こっちは俺の子分のアグモンが進化したシャイングレイモンだ」

 

続けてシャイングレイモンを指し、そう言った。

 

「子分?」

 

「そんなパートナーの関係もあるのだな………」

 

デジモンを子分にしたのは後にも先にもマサルだけだろう。

すると、マサルが俺に右手を差し出してくる。

 

「お前の拳、中々だったぜ」

 

「……………フッ」

 

マサルの言葉に俺は思わず嬉しくなって笑みを浮かべる。

その手を握り、

 

「俺は黒騎 大士だ。よろしくな、マサル」

 

そう名乗った。

すると、

 

「黒騎…………? お前、もしかして…………」

 

マサルが何か言いかけた時、

 

「マサル! 一体何事だい!?」

 

強気な女性の声が聞こえた。

俺達が振り向くと、走って来たのか息を乱す女性の姿。

それは、緑の髪を持つ女性だった。

って言うか、

 

「ロングビルさん?」

 

「マチルダ?」

 

俺とマサルが同時に声を漏らす。

 

「「ん?」」

 

思わず顔を見合わせる。

咄嗟に名前が出てしまったが、フーケと言わないでよかった。

むしろ魔法学院ではロングビルの名で呼び続けていたのが功を奏した様だ。

つーか、何でマサルがロングビルさんの名前を知ってるんだ?

 

「おや? あんた達はヴァリエールの小娘の………」

 

そこまで言って彼女はハッとした。

 

「コホン………いえ、あなた達はミス・ヴァリエールの使い魔の………」

 

咳払いをした後、いつものロングビルの口調で話し出したが、

 

「何だよマチルダ、その似合わねえ喋り方は?」

 

「うっさいよマサル! 黙ってな!」

 

すぐにボロが出た。

 

「あ~、そっちがロングビルさんの地って事ですか?」

 

知ってるけどな。

 

「…………はぁ~。ああ、そうだよ。こっちが私の地さ。魔法学院じゃ秘書っぽい喋り方をしてるんだよ」

 

ロングビルことマチルダは渋々と白状した。

 

「ふ~ん。まあいいんじゃないか? 仕事で役を演じるなんてよくある事だろ」

 

俺は気にして無いとそう言う。

 

「そうかい」

 

とりあえず立ち話も何なので、マチルダが面倒を見ている集落に案内してもらう事にした。

 

 

 

 

道すがら、戦争中にあった事を掻い摘んで話すと、

 

「7万の軍隊を足止めしたぁ? とんでもないね………」

 

純粋に驚きの言葉を漏らすマチルダ。

 

「すげえじゃねえか! 漢だぜ!」

 

「いや、別に個人的事情が多分に含まれてるから褒められるような事じゃない」

 

マサルの称賛に俺はそう言う。

因みにドルモンとアグモンも成長期に戻って俺達の後を付いて来ている。

暫く歩くと、小さな集落に出た。

ウエストウッド村だ。

 

「今戻ったよ!」

 

マチルダが呼びかけると、家の扉が開いて、金髪の少女が飛び出してくる。

 

「マチルダ姉さん! マサル! アグモン!」

 

こちら向かって駆けてくる少女。

その少女の耳は尖っており、エルフの血が流れている事を証明している。

この子がティファニアだな。

そして、その子がティファニアだと証明するものがもう1つ。

こちらにかけてくるたびに、言葉通り胸が弾んでいる。

ゼロの使い魔という物語で随一の胸の大きさを誇る少女。

それがティファニアだ。

 

「わ~…………私より胸の大きな人、ティオ以外で初めて見た………」

 

葵がボソッと呟く。

ティファニアの胸の大きさは、おそらくティオとどっこいどっこいぐらいだろう。

だが、ティファニアは身体の線が細いため、ティオ以上に巨乳に見える。

すると、他の家からも年端も行かない少年少女達がぞろぞろと出てきた。

おそらくウエストウッド村に住む子供達だろう。

ティファニアがマチルダとマサル、アグモンの前に来ると、

 

「よかった………3人とも無事で………物凄い音が響いてたから心配してたのよ」

 

ティファニアはホッとした表情を見せる。

その『物凄い音』というのは、ドルゴラモンとシャイングレイモンの戦いだろう。

 

「あ~、悪い。ちょっとした勘違いで喧嘩になっちまってな………けど、誤解は解けたからもう大丈夫だ」

 

マサルが苦笑しながらそう言った。

つか、あの戦いを『喧嘩』で済ませるのは如何なものかと。

俺は、ふとこちらに寄って来る子供達に視線を向ける。

 

「……………………………………………え?」

 

俺はその瞬間呆然となった。

 

「マサル、その人達は?」

 

「ああ、紹介するよ。こいつらは………って、おい大士? どうしたんだよ?」

 

マサルが何やら言ってくるが、何も耳に入ってこない。

何故なら、俺の意識は全て、子供たちに混じってこちらを向く、俺より少し年下の少女に向けられていたからだ。

何故なら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………………………………………………………お兄ちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その黒髪をサイドテールにしたその少女は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………………………………………………………………美姫?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界に居るはずの無い、俺の妹だったのだから………………

 

 

 

 

 




ゼロ魔クロス第26話です。
遂に登場我らがアニキ。
予想外の爆弾だったようで皆様の反響が凄まじいです。
そして題名からして特別です。
アニキがティファニアの使い魔と予想してた人もいるみたいでしたが違います。
時空振動爆弾の不発弾の暴発が原因でこっちの世界にすっ飛ばされました。
アニメじゃあれだけポンポン爆発させてましたから、不発弾位あっても不思議じゃないだろうと思って、こんな設定にしました。
そして漸くドルゴラモン及び究極体進化が解禁されました。
ここまでは究極体を出す気が無かったので。
こっからは容赦無く出していくつもりです。
さて誤解から始まった2人の喧嘩(と言うにはレベルが高すぎる戦い)。
ドルゴラモンが強すぎるかと思いましたが、まあ、この位のレベルはありそうだと思ったのでこんな感じにしました。
大士とマサルの殴り合い。
これはやっておきたかったので。
そして登場したのは何とマチルダさん。
この人は一応戦争が始まる前に帰郷したという設定です。
そして、漸くティファニアが出てきたかと思えば、予想外の爆弾その2が爆発しました。
この流れを予想出来た人は居るのか!?
次回をお楽しみに。
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