ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第27話 ありふれた再会

 

 

 

 

 

【Side 美姫】

 

 

 

 

ある日、またお兄ちゃんが行方不明になった。

2度ある事は3度あるという諺の通り、南雲さんの話では、また異世界に飛ばされたみたい。

生きているかどうかは南雲さんの『アーティファクト』という不思議な道具で確認できるからいいとして、問題は、お兄ちゃん達が異世界に飛ばされる間接的な原因を持つ人。

中野 信治さんという人の事だった。

この人からお兄ちゃん達が、光る鏡に呑み込まれたという情報を持ってきたんだけど、何処か挙動不審だったから、白崎さんが現場で過去再生という魔法を使った所、光る鏡の様なモノが出現したことは確かだったけど、お兄ちゃん達は警戒して近付かなかった事。

そんなお兄ちゃんをからかい半分に突き飛ばして光る鏡に突っ込ませたのは、中野さん本人だった。

その結果、

 

「判決」

 

「「「「「「「「「「有罪(ギルティ)」」」」」」」」」」

 

満場一致で中野さんの有罪が確定した。

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで大体8カ月程の時が流れた。

南雲さんが言うには、お兄ちゃん達がいる世界への〝扉〟を開くだけの魔力は溜まっているみたいだけど、何か邪魔するものがあって、その世界へ行くことが出来ないみたい。

南雲さん達は、その邪魔するものを何とかしようと、目下奮闘中です。

私は何気ない日常を満喫していましたが、何かが物足りません。

 

「……………………お兄ちゃん…………」

 

私は口から零れたその言葉に気付いてブンブンと首を振ります。

物足りないと思っているのは、きっとドルモンのモフモフが無いからです!

そうに違いありません!

お兄ちゃんは、恋人を2人作るような女ったらし。

そんなお兄ちゃんが居なくなった所で寂しい訳がないんです!

いや、南雲さんは恋人が8人いるけど…………

そんな風に考えながら、休日の買い物をする為にボーっと歩いていた時でした。

曲がり角を曲がった瞬間、目の前に光る鏡の様なものが現れました。

 

「ふえっ?」

 

ボーっとしていた私は、それに気付くのが遅れ、気付いた時にはその光る鏡に触れていました。

その瞬間、抗う暇も無く引っ張られる様にその鏡に吸い込まれました。

そして、次に気付いた時には、金髪で耳が尖り、綺麗な顔をした胸の大きい女の子がいました。

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………………………………………………………お兄ちゃん?」

 

「…………………………………………………………………………………美姫?」

 

欠片も予想していなかった妹との突然の再会に俺は呆然となる。

何故美姫がここに居るのか?

何故美姫がこのハルケギニアに居るのか?

色んな思考が頭の中を駆け巡り、考えが纏まらない。

 

「嘘っ…………美姫ちゃん…………?」

 

「どうして美姫が………?」

 

葵やドルモンも驚愕の声を漏らす。

 

「ッ!」

 

すると、美姫がこっちに向かって駆け出してきて、

 

「……お兄ちゃん!」

 

俺の胸に飛び込んできた。

 

「えっぐ………ぐすっ………お兄ちゃん………!」

 

美姫は泣き声を漏らしながら、俺の胸に顔を埋める。

そして、その飛び込んできた確かな感触が、美姫がここに居るという現実を、強く俺に実感させた。

 

「ッ!」

 

俺は思わず美姫の肩を掴むと、胸から放し、

 

「美姫!? 本当に美姫なのか!?」

 

強い口調で問いかけてしまう。

美姫はビックリしたように目を丸くしたが、コクリと頷く。

 

「お前…………なんでここに………!?」

 

俺が問いかけると、

 

「なんだ。お前、やっぱり美姫の兄貴だったのか」

 

マサルが後ろからそう言って来た。

 

「えっ!? こいつが美姫の兄だっていうのかい!?」

 

マチルダも驚いた声を上げる。

 

「ああ。黒騎って苗字を聞いた時に、もしやって思ってたけどな」

 

「へぇ~、大士、美姫の兄貴だったんだ」

 

マサルとアグモンがそう言うと、

 

「それよりも、何で美姫がここに!?」

 

俺は何よりもそれが知りたかった。

すると、

 

「ご、ごめんなさい!!」

 

ティファニアがものすごい勢いで頭を下げた。

 

「ミキは、私が使い魔として召喚してしまったんです………!」

 

ティファニアは頭を下げながらそう言う。

すると、マチルダが前に出て、

 

「ティファニアを責めないでやってくれないか? ティファニアに使い魔召喚を勧めたのは私なんだ。戦争でこの辺もキナ臭くなってきたからね。ティファニア達の身を守るために召喚させたのさ。まさか、人間を召喚するなんて思わなかったけどね。おっと、そう言えば、あんた達も召喚されたんだったね………」

 

そう説明する。

 

「そうか………ティファニアに召喚………ティファニアの………使い………魔……………!?」

 

俺はその瞬間ハッとなった。

 

「け、契約はっ……!? 使い魔の契約(コントラクト・サーヴァント)はしたのか!?」

 

俺は美姫の肩を掴んで問いかけた。

 

「それって、キ、キスの事だよね………? うん、したけど…………?」

 

「ッ………!? ど、何処に!? 使い魔のルーンは何処に現れた!?」

 

俺は焦りを隠せずに叫んだ。

 

「えっ? ルーンは胸の所に………」

 

美姫は胸の上の方に手を当てながらそう言った。

その瞬間、俺は思わず息を呑んだ。

 

「…………美姫が…………リーヴスラシルだと…………!?」

 

リーヴスラシル…………

虚無の使い魔の中でも生贄の様な存在…………

美姫をそんなものにした元凶を、俺は思わずギロリと睨み付けた。

 

「ッ!?」

 

俺が睨み付けた相手、ティファニアは、恐怖からビクリと身体を震わせる。

俺は沸き上がる感情に突き動かされ、ゆっくりとティファニアに歩み寄った。

そして、右の拳を握りしめる。

 

「大士っ!?」

 

「あんた! 何を!?」

 

マサルとマチルダが叫ぶ。

俺はそのまま右の拳を振り被り、思い切り殴りつけた。

自分の額を。

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

突然自分の額を殴りつけた俺に、全員が絶句する。

 

「………………ふう」

 

何とか精神を落ち着けた俺は、大きく息を吐いた。

改めてティファニアに向き直る。

 

「怖がらせてしまってすまない。一瞬感情を抑えきれなくなってな」

 

俺はティファニアに謝る。

 

「えっ? あの………?」

 

ティファニアは困惑するが、

 

「大士、一体どうしたんだよ?」

 

マサルが問いかけてくる。

 

「悪い。美姫がリーヴスラシルにされた事に、一瞬我慢が出来なかった」

 

「りーぶすらしる?」

 

「何だいそれは?」

 

マサルとマチルダが問いかけてくる。

 

「リーヴスラシル…………虚無の使い魔、『ガンダールヴ』、『ヴィンダールヴ』、『ミョズニトニルン』に続く第4の使い魔、それが『リーヴスラシル』だ」

 

「虚無の………使い魔だって………!? それってもしかして………!」

 

マチルダは何かに気付いたように子供達に向き直り、

 

「皆! いきなりだけど、あの歌を歌ってくれないか?」

 

そう呼びかけた。

子供達は、「はーい!」と返事をすると、歌い出した。

 

 

 

―――神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守り切る。

 

―――神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。

 

―――神の頭脳はミョズニトニルン。知恵の塊神の本。あらゆる知識をため込みて、導きし我に助言を呈す。

 

―――そして最後にもう1人………記す事さえはばかれる…………

 

―――4人の僕を従えて、我はこの地にやってきた…………

 

 

 

歌が終わる。

マチルダが俺の方に向き直った。

それに対して俺は頷く。

 

「その通りだ。リーヴスラシルは、最後の記す事さえはばかれる使い魔だ」

 

「って言う事は、ティファニアは………」

 

「虚無の担い手って事だな」

 

「ティファニアが…………」

 

マチルダは驚きの声を漏らす。

 

「じゃあ、なんでアンタはさっきティファニアを睨み付けたんだい?」

 

「それはリーヴスラシルの役目が原因だ」

 

「役目?」

 

「虚無の使い魔にはそれぞれ役目が存在する。ガンダールヴは『盾』。主人を守ることが役目だ。よって、そのルーンを持つ者には、武器を持った際、その武器を使いこなせる身体能力と手に持った武器の知識が与えられる。ヴィンダールヴは『笛』。簡単に言えば、動物や幻獣を操る能力を得る。ミョズニトニルンは『本』。あらゆるマジックアイテムを使いこなす能力が与えられる。そして、最後のリーヴスラシルの役目は、『心臓』………」

 

「『心臓』?」

 

「リーヴスラシルとなった者の命を対価として、虚無の呪文の威力を増幅するというものだ」

 

「命を………対価………!?」

 

「つまり、その能力を使い続ければ、リーヴスラシルの役目を負った者は死ぬ」

 

「えっ…………?」

 

声を漏らしたのは美姫だ。

その表情は、ショックを受けたのか蒼白だ。

 

「私……死んじゃうの………?」

 

美姫がふらりとよろめく。

俺は慌ててその肩を支える。

 

「落ち着け。今言ったのは、リーヴスラシルの力を使い続けた場合の話だ。契約してから今までに、力が強制的に抜ける感覚………もしくは、ティファニアが魔法を使った事はあるか?」

 

美姫はフルフルと首を横に振る。

 

「あ、ありません!」

 

ティファニアも慌てながらハッキリと答えた。

 

「なら一先ずは大丈夫だ。今の所リーヴスラシルの力は発動していない」

 

俺がそう言うと、美姫は幾分かホッとした仕草を見せる。

 

「だが、そうなると問題は…………」

 

俺は美姫がリーヴスラシルになった事の弊害を考える。

少なくとも、ロマリアが狙ってくる事は確定だ。

つーか、原作では『生命(ライフ)』の呪文を覚えたのはルイズだが、それは才人がルイズ、ティファニアと二重契約をしたから成り立ったことだ。

ルイズが『生命(ライフ)』を覚えたとしても、リーヴスラシルである美姫と繋がりが何もない現状では、エクスプロージョンと同等が精々では無いだろうか?

タルブで思いっきりぶっ放したから、ルイズの残り魔力は1万前後だと予想している。

しかし、アニメでは主人でない担い手にも、触れた状態ならリーヴスラシルの力が発動していた。

この世界でも、触れた状態なら他の虚無の担い手でもリーヴスラシルの力が発動すると考えた方が良いだろう。

他の可能性として、ティファニアが『生命(ライフ)』を覚えた場合だ。

原作ではガンダールヴの主人であるルイズが特別とか何とか言ってた記憶もあるが、俺からしてみれば一番の特別はリーヴスラシルを召喚したティファニアだろう。

そもそも『生命(ライフ)』とは、リーヴスラシルの補助無しに唱えられるものではない。原作では、才人がリーヴスラシルとなった為に、ティファニアよりも攻撃適性の高いルイズが選ばれたが、本来であれば、リーヴスラシルを召喚したティファニアが『生命(ライフ)』を習得していたのかもしれない、と俺は考える。

 

「そうなると、ティファニアをずっとここに置いておくわけにはいかないな…………」

 

「どういう意味だい?」

 

俺の呟きにマチルダが反応する。

 

「………ロマリアは虚無の担い手と使い魔を求めてる。いずれここも嗅ぎつけられるだろう。あいつらは、世界の為なら多少の犠牲など構わない連中だ」

 

「それは………まあ、分からないでもないけど………」

 

「美姫は俺の大事な妹だ。世界のためとはいえ、犠牲になんかさせるつもりは全く無い……!」

 

「…………お兄ちゃん」

 

「ロマリアは人心掌握の術に長けている。世間知らずのティファニアは簡単に丸め込まれるだろう」

 

「あ~………それは否定できないねぇ………」

 

「ふえっ………?」

 

俺とマチルダから視線を向けられたティファニアは声をもらした。

 

「…………っていうか、今更だけど何であんたはそんなに詳しいんだい? リーヴスラシルなんて名前も、基本的には出回ってないだろう?」

 

「出所は秘密だが、俺には俺の情報源があるんだよ」

 

前世で見た小説とアニメなんて言えんが。

 

「…………そうなると、その情報が本当かどうか怪しいんだけど?」

 

「信じないなら信じないで構わない。俺は俺の知識に基づいて、俺の大切なモノを護る為に行動するだけだ。その際に俺の前に立ち塞がるなら誰だろうと踏み越える。それだけだ………!」

 

マチルダの言葉に俺はそう返す。

 

「………………はぁ~。どうやら本気みたいだね」

 

「当たり前だ。俺は俺の大切なモノを優先して動く。そこに妥協はない」

 

「で? ティファニアをどうする気だい?」

 

マチルダは真剣な表情でそう問いかけてくる。

ティファニアを害する気なら、命を懸けてそれを阻止する気だろう。

 

「とりあえず………葵。魂魄魔法でルーンを引き剥がせないか?」

 

ルーンの解除方法として、魂魄魔法を頼る。

 

「ん~………! このルーン、魂の結構深い所まで根が張ってるみたいだからね………無理に引き剥がそうとすると、魂を傷付けちゃうから、あまりお勧めはしないね」

 

葵が『神眼』を使って美姫を見る。

 

「『神力』でもダメなのか?」

 

「残念だけど、対処するには私が今使う事の出来る『神力』の上限を僅かにオーバーしちゃう。時間をかけて、ゆっくりと取り除いていく他ないね」

 

葵の言葉を聞いて肩を落とす。

ブリミルの奴め、めんどくさい術式構築しやがって。

因みに、使い魔の契約は、主人と使い魔どちらかの死で解除されるので、どちらかの命を奪って再生魔法と魂魄魔法で生き返らせるという外道な方法は、思いついた瞬間に却下した。

再生魔法は対象の時間を巻き戻してしまう為、契約も復活させてしまう可能性があるし、何より、可能性の話で『大切』の命を奪う様な軽んじた真似はしたくもない。

 

「そうか…………そうなると、やっぱりティファニアには、トリステインに来てもらうしか無いな。このままここに置いておくには危険すぎるし、美姫だけを連れて行っても、使い魔の契約の繋がりは、距離なんか関係ないからな」

 

「でも………ティファニアにはエルフの血が…………」

 

マチルダがティファニアの尖った耳を見つめる。

 

「そう言う理不尽な理由でティファニアを傷付ける様な輩からは、俺が責任を持って護る!」

 

「ふえっ!?」

 

何かティファニアが声を漏らしたが俺は続ける。

 

「子供達が心配だというのなら、子供達もトリステインに移住出来るように女王サマに要求するし、ティファニアはトリステイン魔法学院に入れてもらう。マチルダも、ロングビルとして魔法学院に居れば、安心できるだろう?」

 

「まあ、それは確かに………」

 

「何なら、マチルダを貴族に戻すようにウェールズに掛け合う事だって出来るぞ?」

 

「は? ちょっと待ちな! 何でウェールズ王子の名が出てくるんだい!? だって、ウェールズ王子はレコン・キスタの反乱で死んだはずだろ!?」

 

「ところがどっこい。実は生きてるんだなこれが。俺達がウェールズ王子を救い出した張本人だし」

 

「んなっ!?」

 

「必要なら、あんたに謝罪もさせるし、家の名誉の回復だって要求してやる。ティファニアの安全も保障させるし、いざとなれば、『敵』となるものを全部ぶっ潰したっていい」

 

「…………あんた、何でそこまで…………」

 

「俺は自分の『大切』を護りたいだけだ。その為にはどんな事だって利用するし、『大切』を傷つけようとするなら、絶対に許さない………!」

 

「ッ…………!?」

 

マチルダは息を呑んだ。

 

「………………そもそも、トリステインの女王陛下やウェールズ王子がアンタの頼みを聞く保証はあるのかい?」

 

「忘れたのか? 俺は7万の軍隊を相手に殿軍を務め、更にクロムウェルを捕虜にした。よっぽどの要求は通ると思うぞ?」

 

「なるほど、それは確かに………」

 

マチルダは納得したように頷く。

すると、

 

「なあ、さっきから一体何の話をしてるんだ? 俺にも分かりやすく説明してくれよ」

 

話について来れなかったのか、マサルがそんな事を言った。

 

「えーっと…………ざっくり言えば、この辺は危険だから、皆で違う場所に引っ越しましょうって事だ」

 

「なんだ、そんな事か!」

 

マサルは納得したようにそう言った。

 

「端折り過ぎだよ!」

 

マチルダは軽く頭を抱えた。

 

「これで納得されるとは俺も思ってなかった…………で? どうするんだ?」

 

俺はマチルダに確認を取る。

 

「ま、私としては、こんな所で隠れるように住むよりも、ティファニアにはもっと広い世界を見て欲しいって思ってるけど…………あの耳がね…………」

 

ハルケギニアの人間にとって、エルフは恐怖の対象だ。

尖った耳は、その筆頭だろう。

 

「その事なら心配するな。優花に認識阻害のアーティファクト………マジックアイテムを作って貰えば問題無い」

 

「何かとんでもない言葉が出てきたような気もするけど…………方法があるならいいよ」

 

マチルダはティファニアに向き直る。

 

「ティファニア。あんたは如何したい? 魔法学院には私もいるし、会おうと思えばいつでも会えるけど………」

 

「……………私、行くよ」

 

ティファニアは言った。

 

「いいのかい?」

 

「………ミキがリーヴスラシルになっちゃったのは、私の所為なんだよね? それなら、私は最後まで責任を取るべきだと思うの」

 

ティファニアはそう言って美姫に向き直る。

 

「ミキ………ごめんね。私の所為で余計な運命を背負わせちゃって…………」

 

「あ、ううん! 気にしてない………って言えば嘘になるけど、テファの所為とは思って無いから!」

 

「ミキ…………」

 

「大丈夫! きっとお兄ちゃん達が何とかしてくれるよ!」

 

「………ありがとう、ミキ………」

 

ティファニアは微笑む。

 

「決まりだな。今日はもう日が暮れるから、今日は一泊して、明日の朝出発しよう」

 

その言葉に皆が頷く。

すると、

 

「改めて、久し振りだね美姫ちゃん」

 

葵が美姫に話しかける。

 

「あ、はい。お久しぶりです。葵さん………」

 

美姫も挨拶を返す。

すると、葵がニッコリと笑い、

 

「美姫ちゃん、さっきからずっと大士にくっ付いてるよね? やっぱり大好きなお兄ちゃんに会えなかったのは寂しかった?」

 

そんな事を言った。

 

「えっ? あ……………」

 

美姫はずっと俺の服の裾を掴んで離してはいなかった。

それに気付いた美姫は、見る見る顔を真っ赤にして、

 

「こ、これは違いますからっ…………!!」

 

突き飛ばすように俺から離れる。

 

「これは…………そう! 寂しがりやなお兄ちゃんへのサービスです!」

 

「それは苦し過ぎる言い訳じゃないのかねぇ………?」

 

マチルダがクククと笑みを零す。

 

「ホントにホントですから! これは…………そう! ドルモンをモフモフする為の対価です!」

 

美姫はそう言うとドルモンに飛びつく。

 

「わっ!? 美姫!?」

 

「モフモフ~~~~~!」

 

ドルモンの毛に顔を埋めるように擦り付ける。

だが、その仕草はまるで顔を隠すための様に思えた。

俺はその様子に深く息を吐くと、

 

「ミキ、元気が出たみたいで良かった」

 

ティファニアがそう言った。

俺が顔を向けると、

 

「ミキ、平気な振りをしてたみたいだけど、何処か寂しそうだったから………」

 

「そうか…………」

 

「やっぱり、お兄さんがいると違うんですね………えっと………」

 

ティファニアが俺の名を呼ぼうとして戸惑っている事に気付いた。

 

「ああ、名乗るのが遅れたな。俺は大士。黒騎 大士だ。美姫の兄だ」

 

「タイシさんですね? 私はティファニアって言います。呼びにくければ、テファで構いません」

 

「わかった、テファ。それから、妹の面倒を見てくれてありがとう」

 

俺はその事には礼を述べる。

美姫を召喚してしまったのはテファの責任かもしれないが、不自由なく生活できていた事は、美姫の様子を見ていれば分かった。

その事にはちゃんと感謝するべきだ。

 

「そんな! 頭を上げてください! ミキを呼び出してしまったのは、私の所為で………!」

 

「それでも、美姫の面倒を見てくれたのは、君の優しさだろう? だから、ありがとう」

 

「え、あ、はい………どういたしまして…………」

 

テファは恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にする。

すると、

 

「……………やっぱり、タイシさんもエルフを怖がらないんですね?」

 

俺の顔に向き直ってテファがそう言った。

 

「怖がる理由が無いからな」

 

「もしかしたら、ミキが言っていた事は本当なのかもしれない………」

 

「ん?」

 

「いえ、ミキが、自分は異世界から来たと言っていたので………」

 

「まあ、信じられないかもしれないが、それは本当の事だぞ」

 

「えっ?」

 

「俺達は、異世界の人間だ」

 

「ええ~~~~~っ!?」

 

テファが驚愕の声を上げる。

そこで俺はハッとした。

異世界と言えば、

 

「マサル。そう言えば、お前は何でこの世界に居るんだ?」

 

俺はマサルに向き直ってそう聞いた。

 

「ん? ああ、俺達はデジタルワールドを旅してた時に、時空振動爆弾の不発弾を見つけて、それが爆発して………って、言っても分からねえか」

 

マサルはそう言うが、俺は何となく理解した。

おそらく時空振動爆弾の不発弾を見つけて、それが何かの拍子に起動して、この世界へのゲートを作り出したんだろう。

なら、偶然とはいえ、あいつが流れ着いたこの世界にマサルが来たのも、きっと『運命』だろう。

 

「………話は変わるがマサル。倉田という男を知っているか?」

 

「倉田!? もしかして、メガネかけたおっさんか!?」

 

「ああ。その男が以前、『大門 マサル』って名前を口にしたから、もしかしてと思ってな。この世界の人間だが、バイオデジモンに進化する連中とも何度か戦ったぞ」

 

それを聞くと、マサルは右の拳を左の掌に打ち付ける。

 

「倉田の奴が………この世界に………!?」

 

「ああ。どうやってるのかは分からないが、奴はこの世界にデジモンを呼び寄せる方法を確立している様だ」

 

「何だと!? くそっ! 何処に来てもやること変わらねーのかよ!」

 

マサルはそう吐き捨てる。

 

「倉田の奴は何処に居るんだ!?」

 

「悪いがそれは分からない。直接会ったのは今までに1回だけだからな」

 

「そうか……………くそっ、今度会ったらこの俺がぶっ飛ばしてやる!」

 

頼もしい言葉を口にするマサル。

 

「俺もやるぜ、アニキ!」

 

「おう!」

 

アグモンの言葉に応えるマサル。

 

「つーわけで、俺らもお前達について行かせてもらっていいか? この世界の事は分かんねえし、寝床もねえからよ」

 

「まあ、その位は交渉してみるさ」

 

「サンキュー!」

 

こうして大まかな予定を決めた俺達は、このウエストウッド村で一晩を過ごすのだった。

 

 

 

 

 

 







ゼロ魔クロス第27話です。
今回は美姫との再会でした。
美姫が何故この世界に来たのかはこんな感じです。
そんで美姫ちゃん、最初は素直でしたが、心に余裕ができてからはツンデレ妹に逆戻りです。
次回はアンリエッタ、ウェールズとの交渉の予定。
お楽しみに。



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