突然現れたミョズニトニルンのシェフィールドのガーゴイルを退けた後、俺はルイズを連れて学院へ戻ろうとしていた。
だがその時、空中に居る俺達を照らしていた月明かりが、突如として遮られた。
「何だ?」
俺は上を見上げる。
そこには、夜空に浮かぶ翼を広げた巨大な鳥の様なシルエット。
「ガーゴイル!?」
ルイズが叫ぶ。
だが、そのシルエットは先程のガーゴイルとは明らかに違う。
となれば、
「いや、あれは…………」
俺がそう呟いた瞬間、
『あなた達、こんな所で何をしてるの?』
拡声器を使ったような声が響く。
そして、その声はよく知る声だ。
「キュルケ!?」
ルイズが驚きながら叫ぶ。
『タイシ君、ミス・ヴァリエール。聞きたい事はあると思うが、こちらも急を要する。一先ず学院近くにこの『オストラント号』を着陸させる。君達はミス・シャルロットを至急連れてきて欲しい』
「コルベール先生…………シャルロットを?」
俺は怪訝に思うが、その声からただ事ではない事を察して、言う通りにすることにした。
言われた通りにシャルロットを連れて、オストラント号が着陸した場所に来た。
尚、シャルロットだけでは無く、使い魔のイルククゥ、一緒に居たルイズはもちろんの事、葵、リュウダモン、優花、ハックモン、美姫。
それからマサルとアグモンも興味本位で着いてきていた。
キュルケとコルベール先生は、オストラント号の前で既に待っている。
俺達が2人に近付くと、2人は神妙な顔をしていた。
「シャルロット…………」
キュルケが申し訳なさそうな表情をしながら、シャルロットに歩み寄る。
「…………どうしたの?」
シャルロットが問いかけると、キュルケは一瞬躊躇う様な仕草をした後、覚悟を決めた様な表情になってシャルロットに向き直る。
そして、
「………………ごめんなさい、シャルロット………」
「!?」
いきなり謝罪の言葉を口にして、キュルケは頭を下げた。
その行動にシャルロットは一瞬戸惑いを見せたが、
「……………あなたのお母様が…………攫われたわ……………」
「ッ!?」
続けて言われた言葉に絶句した。
「どういう事だ………!?」
俺は思わず問いかける。
何故オルレアン夫人が攫われる!?
いや、原作では、シャルロットがガリアを裏切った事を理由に、オルレアン夫人は攫われ、それを助けに行ったシャルロットも囚われの身になった。
だが、オルレアン夫人には認識阻害のアーティファクトがある。
それをしている限り、オルレアン夫人の居場所を突き止められることは無いと思っていたのに………!
「…………………シャルロットのお母様を攫ったのは…………『エルフ』よ」
その言葉に、ルイズが驚愕する。
「エルフが!?」
原作の知識からすればビダーシャルの可能性が高いが…………
「すまない。我々も何とか阻止しようとしたのだが…………力及ばず………」
コルベール先生は申し訳なさそうに項垂れる。
「気を落とさないで、ジャン。いくらジャンでも相手が悪いわ…………何しろ、どんな魔法を放っても、そのまま跳ね返して来るんだから」
キュルケの言葉に、先住魔法の『
「いや、何より恐ろしいのは、そのエルフはそれだけの攻撃を受けて尚、我々を『敵』とは認めなかった事だ。そのエルフの表情からは『遠慮』しているということしか感じ取ることが出来なかった。我々は、そのエルフの障害に、何らなりえなかったという事だ」
コルベール先生は戦慄した表情で呟く。
すると、
「そして、そのエルフは、ミス・シャルロットの母君を連れ去る際、こう言い残したのだ。『この女の娘に伝えろ。アーハンブラ城で待つ』、と」
「ッ!」
その言葉を聞いた瞬間、シャルロットは瞬間的に駆け出した。
「シャルロット!!」
俺はそんなシャルロットを呼び止める。
シャルロットは一度立ち止まった。
「どうする気だ?」
俺はそう聞くと、
「母様を助けに行く。大丈夫、迷惑はかけない………」
シャルロットはそう言って再び駆け出そうとして、
「…………1人で行く気か?」
「……………タイシ達に迷惑はかけたくないから…………」
シャルロットの言葉に、俺は軽く息を吐く。
そしてシャルロットに歩み寄ると、
「確かに俺は、関係の無い相手がどうなろうと知ったことっちゃないタイプの人間だ………だけどな」
俺はシャルロットの肩に手を回す。
「シャルロットは…………俺の『大切』な存在だ。そして、そんなお前が辛そうな顔をしているのに、黙って見ていられるほど、俺は大人しい人間じゃない」
「タイシ…………!」
シャルロットはハッとなって顔を上げる。
「それに、お前の母親なら俺にとっても義母になる人だ。そんな人を放っておくなんて選択肢は無いぞ」
「……………ん、ごめん。改めてお願い。私は、母様を助けたい。力を………貸して欲しい」
「ああ。もちろんだ」
シャルロットの言葉に即答する。
俺は皆に向き直ると、
「そういうわけで、俺達はこれからオルレアン夫人を助けに行ってくる。葵、優花、付いて来てくれ」
「もちろん!」
「ええ」
2人は迷いなく頷く。
「ちょ、ちょっと…………」
ポンポン話が進んでいく俺達に、ルイズが声を掛ける。
「悪いが止めるつもりなら聞かないぞ。俺は自分の『大切』を優先して動くからな。その所為で外交問題に発展しようが俺の知った事じゃない。文句があるなら軍隊でも派遣すればいい。俺は自分の『大切』を護る為に戦うだけだ」
俺は自分の覚悟を口にする。
「ッ……………!」
ルイズは絶句する。
「へっ! 面白そうじゃねえか! 俺も協力するぜ!!」
マサルもやる気がある様にそう言う。
だが、
「いや、気持ちはありがたいが、マサルはここに残って欲しい」
「ッ………何でだよ!?」
出鼻を挫かれた所為か、マサルは不満そうに言ってくる。
「ここにも大切な妹である美姫が居る。それに、テファも護ると約束しているからな。マサルには、万が一に備えて俺の代わりに美姫達を護って欲しい。マサルを信じられる『漢』と見込んでの頼みだ」
「チッ………そこまで頼られちゃあ聞かねえわけにはいかねえな」
マサルは舌打ちをするが、その顔はどことなく嬉しそうだ。
「頼む」
「おう! 任せとけ!」
マサルの返事に俺は頼もしさを感じる。
俺はシャルロットに向き直った。
「なら、行くか」
「うん」
すると、
「微力ながら協力させてほしい。このオストラント号なら…………」
コルベール先生がそう言い掛けたところで手で制した。
「気持ちだけ受け取っておきます。その船はあなたの『夢』の為の船だ。争いに使うものじゃない」
「タイシ君…………」
「それに、少人数を運ぶのなら、こっちの方が速い…………!」
俺は右手にデジソウルを宿した。
――ULTIMATE
EVOLUTION――
Dアークにその文字が刻まれる。
「デジソウルチャージ! オーバードライブ!!」
右手に集約されたデジソウルをDアークに叩き込む。
Dアークから光の奔流が溢れ、ドルモンを包んだ。
「ドルモン進化!」
光の中で、ドルモンが究極体へと進化する。
「ドルゴラモン!!」
灰銀の獣竜がその姿を現す。
「………って、ドルゴラモンじゃない!?」
優花が驚愕の声を漏らした。
そう言えば、優花はドルゴラモンに進化出来るようになったのは知らなかったか。
「ああ、マサルと喧嘩した時にちょっとな………」
俺がそう言うと、
「きゅい~~~~! ドルモンさま! なんて勇ましい姿なのね!!」
イルククゥが目をキラキラさせてドルゴラモンを見上げていた。
ドルゴラモンも竜だから、琴線に触れる何かがあったんだろうか?
「皆! 乗って!」
ドルゴラモンは身を屈めるが、それでも10mぐらいの高さはある。
とは言え、その程度の高さなら、今の俺達には問題無い。
葵と優花は、リュウダモンとハックモンを抱え、シャルロットはイルククゥにレビテーションを掛ける。
そのままドルゴラモンの背に跳躍して降り立った。
「頼んだぞ、ドルゴラモン!」
「ああ!」
ドルゴラモンはそう言うと翼を広げる。
ドルゴラモンの巨体が宙に浮きあがり、猛スピードで夜空を駆け抜けたのだった。
夜空を掛けるドルゴラモンの背の上で、俺達はオルレアン夫人を助け出す作戦を話し合っていた。
因みに、優花の空間魔法のお陰で風は逸らされているので快適だ。
「オルレアン夫人を助け出すための作戦だが…………正直作戦って程でもない。俺達で正面から堂々と突っ込むから、その隙に優花が城の中に侵入。オルレアン夫人を救出してくれ」
「ええ、任せて」
優花は自信を持って頷く。
「シャルロットは………」
俺はシャルロットも優花と一緒に救出側に組み込もうと思ったのだが、
「私も陽動側に回る」
「……………いいのか?」
「ユウカの実力なら問題無い。むしろ、私がついて行くと足を引っ張ることになる」
こんな時でもシャルロットは冷静に状況を分析している。
内心母親を助けに行きたくて仕方ないのだろうが、ついて行かない方が成功率が上がると踏んだのだろう。
「……………任せてシャルロット。あなたのお母さんは無事に助け出して見せるわ」
シャルロットの信頼に応えるように、優花はそう言った。
「お願いする」
【Side 三人称】
現在、アーハンブラ城には約300人の兵隊が駐留していた。
貴族の将校も10人ほどいた。
「まったく! あの〝無能王〟は何故私をこんな所に追いやったのだ? 仮にもミスコール家はガリア有数の武門だぞ。挙句にこんな田舎でエルフと元公爵夫人のお守りをさせるとは…………」
そう愚痴る男は、この部隊を纏めるミスコール男爵という貴族だ。
彼は、数日前からこの城に連れて来られたオルレアン夫人の警護に就かされていた。
だが、彼はその任務を不服に思っており、度々こうして愚痴っている。
そんな彼がふと窓から夜空を見上げる。
空には双月が輝いていた。
だがその時、ミスコール男爵は怪訝に思った。
双月の内、青く大きな月の中央辺りに黒い点がある事に気付いたからだ。
ミスコール男爵は、一瞬雲かと思ったが、その点を注視していると、その黒い点が徐々に大きくなっていた。
いや、それは黒い点では無く、何かの影だ。
その影の形が徐々にハッキリして来て、ミスコール男爵は自然に自分の知識とその影の形を照らし合わせ始める。
「…………………!」
そして、その影の形が最も近い物が竜だと気付いた時にはもう遅かった。
その影は完全に双月を覆い隠す程に大きくなり、次の瞬間、轟音と共に城壁が爆散したのだった。
【Side Out】
ドルゴラモンでアーハンブラ城の城壁をぶち破った俺達は、ドルゴラモンの背から飛び降りる。
優花は作戦通り気配を消し、城壁を伝って城内部へと向かう。
兵士達は一瞬混乱したようだが、ドルゴラモンの背から飛び降りた俺達が目の前に着地すると、すぐに取り囲んできた。
「貴様達! 何者だ!?」
すぐ傍にいた10人ほどの兵士が、槍を構えて俺達を取り囲む。
「俺達が何者かって……………? 俺達は…………」
俺は不敵な笑みを浮かべ、
「単なる襲撃者だよ!!」
デジソウルを纏った拳で地面を殴りつけた。
その拳は地面を陥没させ、衝撃を辺りに撒き散らす。
その衝撃で兵士達が怯んだ瞬間、
「はっ!」
「ふっ!」
葵が二刀流の峰打ちで兵士達を気絶させ、シャルロットが氷嵐で残りを吹き飛ばす。
その時、騒ぎを聞きつけた他の兵士が集まって来た。
俺は宝物庫からデルフを呼び出す。
「んあ………? 久々に出番か相棒?」
デルフが寝ぼけた声でそう言う。
「ああ。寝起きで悪いが働いてもらうぞ?」
「ふあ………この宝物庫って奴の中は居心地が良すぎていけねえや。偶には暴れねえと鈍っちまう」
すると、後方から魔法が飛んでくる。
それを俺はデルフで吸い込んだ。
「お前達に恨みは無いが…………運が悪かったと思ってくれ!」
その言葉と共に、俺は兵士達に向かって突っ込んでいった。
それから暫くして。
出てきた兵士達は、全員がその辺で伸びていた。
まあ、いくら300人いようと、今の俺達を如何こうできるはずも無し。
寧ろ1人でも余裕だった位だ。
「さて…………」
俺は辺りを見回す。
すると、コッコッと足音が聞こえて来た。
「お前たち。何をしている?」
その声のした方向に視線を向けると、城の入り口へ続く階段の上に男が立っていた。
その男の耳はピンと尖っており、エルフである事を示している。
「エルフ…………」
シャルロットが呟く。
「私はエルフのビダーシャル。お前達に告ぐ」
高圧的というよりも、単に格下に告げるような声でそう言う。
「去れ。我は戦いを好まぬ」
一方的にそう言って来た。
「……………お前が攫って行ったオルレアン夫人を返してくれるなら、これ以上は何もせずに去るつもりだが?」
俺はそう言ってみる。
「オルレアン? あの女性か。それは無理だ。我はその者を『ここで守る』という約束をしてしまった。渡す訳にはいかぬ」
「ならどうしてオルレアン夫人を攫った?」
「我も詳しいことは知らぬ。ただ、その女性を助けに来るであろう『娘』を捕らえ、同じように『ここで守る』という事も約束している」
「…………………」
ビダーシャルの反応からすれば、ここに居るシャルロットが、その『娘』である事には気付いていない様だな。
まあ、外見的特徴として青い髪だと聞かされているだろうから、今の白髪のシャルロットと結びつけるのは不可能だろう。
「………………どうしてもオルレアン夫人を返すつもりは無いんだな?」
「無理だ」
再度問いかけても答えは同じだった。
「なら仕方ない。戦いしか無いだろう」
俺はデルフを構える。
「立ち去れ、蛮族の戦士よ。お前では、決して我に勝てぬ」
「……………蛮人ね…………1つ聞きたいが、その『蛮族』っていうのは、俺達がアンタらを『エルフ』と呼ぶのと同じように、エルフから俺達『人間』を呼ぶときの呼称なのか? それとも、言葉通り、野蛮な人種と罵っているのか?」
ビダーシャルの言葉にそう問いかける。
「…………両方だ」
ビダーシャルは少しの沈黙の後そう答えた。
「初対面の人間に向かって野蛮な人間と決めつけるとは、何とも傲慢な事で。俺の価値観から言わせてもらえば、初対面の人間を蛮族呼びする方が、よっぽど蛮族と呼ぶにふさわしいと思うがな?」
少し煽る気持ちでそう言ってみる。
「気分を害したというのなら詫びよう。我々は、お前達をそのような人種だと教え込まれて育つ。それが当然なのだ」
「なるほど…………ま、こっちの人間達もエルフは恐怖の対象、聖地を奪った敵みたいな事を教え込まれてるから、お相子か…………」
意外と冷静だなビダーシャル。
「無駄話が過ぎたな。俺達の答えは変わらない。オルレアン夫人を返してもらう! ついでにそのスカした面を一発ぶん殴る!」
俺がそう叫んだ瞬間、シャルロットが巨大な氷の槍、〝ジャベリン〟を放つ。
小手調べなのか、普通のメイジが放つより少し大きめな程度だ
「無駄だ」
ビダーシャルは身構える事すらなく、その場に立ち続けている。
ジャベリンが迫り、その身を貫くと思われた瞬間、その寸前で停止。
その直後にそのままのスピードで跳ね返って来た。
だが、その程度は予想していたので慌てることは無い。
跳ね返って来た氷の槍をデルフで砕いた。
「今のは『
「あいつの絶対の自信と余裕はそう言う事か」
まあ、知ってたが。
すると、
「石に潜む精霊の力よ。我は古き盟約に基づき命令する。礫となりて我に仇なす敵を撃て」
ビダーシャルが呪文を唱えると、城壁を形作る無数の石が剥がれ、弾丸のように襲い掛かってくる。
「ハッ!」
シャルロットが竜巻を起こし、石の弾丸を全て吹き飛ばした。
だが、それと同時にビダーシャルの頭上には石が集まって巨大な塊となって浮遊している。
ビダーシャルが手を振り下ろすと、その巨大な石の塊が向かって来る。
俺はそれを見て、デルフを左手に持ち替えると、右の拳を握りしめてデジソウルを発生させる。
「おらあっ!!」
俺がその巨岩に殴りかかると、粉々になって吹き飛んだ。
「……………思ったよりはやるようだな」
ビダーシャルはそう言うが、余裕の表情は崩れていない。
原作では、ルイズの
とはいえ、そもそも
せめて、自力であの面に一発入れなければ気が済まない。
すると、
「…………私があの壁を破る。その隙に」
シャルロットがそう言って前に出た。
「まだ続けるのか? 蛮族達よ」
「………………………」
ビダーシャルの言葉にシャルロットは答えずに、右手を横に伸ばす。
そこに氷の爪が生み出されていく。
更に、その氷の爪に雷が纏わされた。
「〝纏雷氷爪〟…………!」
氷爪に纏雷を重ねたのか。
だが、それだけでは終わらなかった。
その雷を纏った氷の爪が、青いデジソウルによって包まれる。
ビキッと言う音と共に氷の爪の鋭さが増し、纏う雷も激しく轟いた。
「ッ!?」
その時、初めてビダーシャルの表情が変わった。
その瞬間、シャルロットが地面を蹴って跳びあがる。
「はぁああああああああああああっ!!」
空中から〝纏雷氷爪〟を繰り出す。
「くっ………!」
ビダーシャルは苦そうな表情でその一撃を防ぐ。
シャルロットの一撃と、ビダーシャルの
だが、次の瞬間、ビキリッと言う音と共に、
「なっ!?」
ビダーシャルは目を見開いて驚愕する。
並の魔法ではビクともしない筈の
それも当然だろう。
「はああああっ!!」
更にシャルロットが力を込めた瞬間、バリィィィンとガラスが割れるような音を立てて、
「なっ…………!?」
ビダーシャルはその事実に一瞬呆けてしまう。
そして、その一瞬を俺は見逃さなかった。
俺は地面を蹴ってビダーシャルに肉薄する。
「さて…………宣言通りその面…………一発殴らせてもらう!!」
俺は右手を握りしめ、デジソウルを使わずに、力一杯殴りつけた。
「ぐうっ!?」
ビダーシャルは声を漏らして後ろに倒れた。
俺は拳を振り抜いた体勢から身体を起こすと、
「ナイスだ」
「ん………」
シャルロットと軽く拳をぶつけ合う。
「くっ………」
流石にデジソウル無しでの拳ではダメージが小さかったようで、ビダーシャルは殴られた頬を拭いながら立ち上がる。
「まさか、
その目は、こちらを脅威と認めたのだろう。
今までになく厳しい視線だ。
「その力、看過する事は出来ん。我力の全てを以って排除させてもらう!」
ビダーシャルが両手を振り上げると、城壁が剥がれていき、巨大な石の拳となった。
「この城を形作る石達と、我は既に契約している。この城に宿る全ての精霊の力は、我の味方だ」
そう言うビダーシャルの周りには、無数の石が浮遊している。
それを見て、俺はデルフを鞘に納めた。
それと同時に、シャルロットも戦闘態勢を解く。
「何のつもりだ?」
戦う意志の消えた俺達を怪訝に思ったのか、ビダーシャルはそう問いかけてくる。
「別に………もう気が済んだだけだ」
「……………………?」
俺の言葉を、理解できないと言わんばかりに沈黙するビダーシャル。
そもそも、俺達がビダーシャルと戦ったのは、単なる我儘の様なものだ。
シャルロットの母親を攫った張本人を、一発だけでも殴りたい。
そう思ったから正面から
それを達成した今、もう意地になる必要はない。
そもそも、ビダーシャルとは戦う必要さえなかったのだ。
何故なら、ビダーシャル………というか、エルフが使う先住魔法の力の源は精霊達だ。
だが、こちらにはその精霊達を眷属とする更に『上』の存在が居るのだから。
「じゃあ葵、後は任せた」
「お任せあれ」
俺の言葉に、葵は陽気に答えた。
葵が前に出ると、
「ッ…………! 石の精霊よ。我の敵を圧し潰せ!」
ビダーシャルが両手を振り下ろすと、石で作り出された巨大な拳や、無数の石が殺到する様に襲着かかって来た。
だが、それを見ても、俺達には一欠けらの焦りも無い。
「『鎮まりなさい』」
ただ一言。
葵が発したその一言で、全ての石の動きが一斉に止まった。
「な………に…………?」
ビダーシャルは驚愕している。
その驚き様は、先程
動きの止まった石は、一瞬後にその場で全て崩れ落ちる。
「我の契約が…………全て解除された………? 何故…………?」
ビダーシャルは信じられないと言わんばかりに声を震わせている。
そんなビダーシャルに、葵は歩み寄りながら女神の姿へと変わる。
「なっ…………………!?」
女神の姿へと変わった葵………アルオイスに、ビダーシャルは絶句した。
「お前……いや、あなた様は一体…………?」
『格』の違いを感じ取ったのか、ビダーシャルは言葉を言い直しながら問いかける。
「『………私は、あなた達が『大いなる意志』と呼ぶ大精霊…………その上に立つ者です』」
「ッ………………!?」
ビダーシャルはその場に跪いた。
「『私はこれ以上あなたを咎めるつもりはありません。ただ、友人の母親を助けに来ただけです。彼女を解放していただければ、私達はここを去ります』
「ははっ! あなた様の御心のままに………!」
おおう。
相変わらず凄いなアルオイスの存在感は。
さっきまでこっち見下してたビダーシャルが跪いてら。
返事も即答だし。
「『とは言え、断りを入れる必要も無かったのでしょうが…………』」
その言葉に視線をズラせば、城の入り口から優花がオルレアン夫人を連れて現れた所だった。
「『……………それから、これは私の個神的な意見ですが、他者を見下す行為は自らの品位を下げる行為です。そのような行為はあまりお勧めしません』」
「も、申し訳ありません…………!」
「『命に上も下もありません。
「ははっ…………!」
「『ですが、あなた達には、あなた達が積み上げてきた歴史があります。それをすべて否定する権利は、
「い、いえ、そんな事は………」
「『
「ははっ、そのお言葉、胸に刻みます」
そう言ったビダーシャルは、アルオイスの姿が見えなくななるまで、ずっと跪き続けるのだった。
ゼロ魔クロス第30話です。
まあ、対ビダーシャルはこんな感じに。
シャルロットは原作でのリベンジ?成功ですね。
大士が殴り壊しても良かったのですが、シャルロットの強さを再確認する様な意味も含めてこんな感じになりました。
まあ、最終的にはアルオイス様降臨で全部済むんですけどね。
自分でキャラ作っといでアレですが、アルオイス様こと葵ちゃんはホントなんでもアリですな。
次回はティファニア関係になるかなぁ?
お楽しみに。