ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第33話 ありふれた聖国

 

 

 

 

 

「ちちち、ちいねえさまを………! よよよ、嫁にしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

ラ・ヴァリエール公爵の所を訪ねて何とかカトレアを貰う許しを得て来た翌日。

留守にしていた理由をルイズに聞かれたため、正直に話したところ、ルイズが文字通り爆発(エクスプロージョン)した。

ルイズがこういう反応する事は予想がついてたし、カトレア限定のシスコン気味のルイズにとって、大好きな姉が男の嫁に………しかも、貴族ではなく庶民で複数の恋人を持つ俺に嫁ぐとなれば、我慢できなくなることは理解できるので、甘んじてその爆発を受けた。

まあ、デジソウルで防御したのでノーダメージだが。

その事については怒る気も無いし、これもカトレアを貰う為の試練と思っている。

その後、幾分か感情を爆発させて冷静になった後、カトレアがルイズを説得したことで何とか納まった。

 

 

 

 

 

それからまた少しの時が流れたある日。

突然ルイズに女王サマからの書状が届いた。

その内容は、『ルイズとティファニアは、至急ロマリアの首都まで来られたし』との事。

因みに護衛は自由だが、出来れば俺達に頼みたいという事も遠慮がちに書いてあった。

いよいよロマリアが本格的に関わってくるかと思い、尚且つ、ここでのロマリアの出方によって今後の方針が決まってくるので、護衛の件は了承した。

後さらに言えば、ここでガリアと深くかかわってくるため、シャルロットの決着を付けさせるのに丁度いいというのも理由の一つだ。

そして一緒に行くメンバーだが、ルイズ、ティファニア、シャルロットは当然として、護衛役に俺、ドルモン、葵、リュウダモン、優花、ハックモンはもちろんの事、マサル、アグモンも護衛という名目で連れて行き、下手に離れているよりも安全という理由で、美姫とカトレアも同行することになった。

因みに原作で一緒に行った水精霊騎士団の面々は、近衛騎士では無いので連れて行く理由が無いので置いてきぼりだ。

まあ、連れて行ったとしても足手纏いだから必要無いんだけど。

そして移動方法だが、原作と同じように、コルベール先生のオストラント号に乗せてもらうようにお願いした。

なので、コルベール先生とキュルケも自動的に同行することになる。

 

 

 

それで現在、オストラント号でロマリアに向かって飛行中なのだが、

 

「比べる方が間違っていると思うが、流石にハジメの飛空艇(フェルニル)の方が速いな」

 

神代魔法で色んな物理法則無視してるハジメの飛空艇(フェルニル)には流石に及ばない。

オストラント号………というより、この世界の空飛ぶ船は、風石によって浮力を得て、推進力は帆船と同じように帆で風を受けて得ている。

航空力学など完全無視の代物だ。

ただ、このオストラント号に関しては、横に広く伸びた翼と、蒸気機関によって得た動力でプロペラを回す事で、浮力や推進力を得ているため、少なからず航空力学が使われている。

それでもまだまだ無駄が多いが。

 

「それにしても………」

 

俺は甲板から回転するプロペラと、煙を吐き出す煙突を眺める。

 

「蒸気機関を実用レベルで作っちまうとはな…………おっと、コルベール先生は『水蒸気機関』って名付けたんだったか………」

 

「旦那様の居た場所では、このような動力が主流なのですか?」

 

いつの間にか隣に控えていたカトレアが、自然と話しかけてきた。

因みに、カトレアと正式に恋人になってからは、『旦那様』と呼ばれるようになっている。

嬉しいがむず痒く感じているのも確かで、トータスの旅の途中で、レミアさんに『あなた』呼ばわりされていたハジメの気持ちは多分こんな気持ちだったのだろうと、今更になってハジメの気持ちを理解できるようになった気がした。

 

「主流と言うか………一昔前に主流だった動力だな。今はこれよりも小型で効率の良い動力があるから、そっちが主流だ」

 

カトレアの質問にそう答える。

 

「これよりも素晴らしいものがあるのですか………!」

 

カトレアは純粋に驚きの表情を浮かべる。

 

「こっちには魔法なんてものは無いからな。生活をより良くしようと日夜新しい『技術』が開発されてるんだよ」

 

「ふふふ………今から旦那様の故郷に行く時が楽しみです」

 

カトレアはそう言って笑う。

まあ、帰ったら帰ったで、恋人を増やしたとなれば、色々と面倒なこともあるんだが………

その辺はハジメに何とかしてもらおう。

 

 

 

そんなこんなで、3日後。

オストラント号はロマリア南部のチッタディラという港に到着した。

テファには、以前渡した認識阻害のイヤリングでエルフ耳を隠してもらう。

入国する時に見慣れない船という事で一悶着あったが、無事入国は出来た。

そこから馬車で首都へ向かう訳だが、当然の如く、俺は馬車酔いでダウンした。

で、毎度の如く恋人たちの膝枕で1日過ごした。

葵、優花、シャルロット、そして、新たに恋人になったカトレアが交代で膝枕をしてくれる。

毎度恒例の姿に、ルイズ達は慣れたモノだったのだが、見慣れていないコルベール先生や美姫なんかは唖然としていた。

テファも何か思う所があるのか、じぃ~っと見つめ続けていた。

因みにマサルは暇だったのか、寝こけていたので特に何も言われなかった。

で、漸く首都に着いたのはいいんだが、

 

「おい! そこの怪しい生き物を連れた集団!」

 

門を潜った瞬間に衛士に呼び止められた。

怪しい生き物っていうのはデジモン達の事か?

 

「何者だ貴様たちは!? 何の目的でこの街に来た!?」

 

最初から高圧的な態度で問いかけてくる。

一応お忍びなので、その理由を言う訳にもいかず、

 

「我々はトリステイン魔法学院の者で、『学生旅行』としてこの国に参った次第です。私は引率役のコルベールという者です」

 

コルベール先生が表向きの理由である学生旅行を口にする。

 

「トリステイン魔法学院生徒?」

 

「はい。そして、その見慣れぬ生き物は、生徒が召喚した使い魔でございます」

 

一応嘘ではない。

(仮)だが、ルイズに使い魔として召喚されたのは本当だ。

アグモンは違うが。

 

「使い魔だと…………?」

 

衛士は訝しげな眼を向ける。

 

「ふん、何とも間抜けた面をしている生き物だな」

 

デジモン達を馬鹿にする言葉にカチンとくる。

葵と優花も不機嫌な表情になるが、一応この場で面倒事を起こすのは拙いと分かっているのか、何とか耐えている。

だが、

 

「間抜け面とは何だ!? この顔は生まれつきなんだよぉ!」

 

アグモンが見事に売り言葉を買ってしまった。

そう言えば、マサルとアグモンは、初対面で売り言葉に買い言葉で喧嘩してたっけ。

 

「おうおう! 俺の子分を馬鹿にする奴は許さねえぞ!!」

 

マサルにも火が付いたようだ。

 

「なっ!? 貴様! 神と始祖に仕えるロマリア騎士を侮辱するか!?」

 

「神だか紫蘇(シソ)だか知らねえが、売られた喧嘩は漏れなく買ってやるぜ! この喧嘩番長の大門 マサル様がなぁ!!」

 

「なっ!? 何たる物言い! 不敬もここに極まれり! やはり貴様ら………! おのおの方! 怪しい上に不敬の輩がおりますぞ! 出ませい!」

 

その衛士が叫ぶと、詰所からわらわらと衛士達が溢れてくる。

 

「不敬とな!」

 

「例の件に関係しているのかもしれん! 取り押さえろ!」

 

その衛士達は何やら煌びやかな杖や道具を持っている。

それを見て、

 

「やば。あいつら聖堂騎士(パラディン)だわ」

 

キュルケが拙そうな声を漏らした。

マサルは喧嘩を買う気満々だったのだが、その前にルイズが聖堂騎士達の前に立ち塞がった。

 

「何だ貴様は!?」

 

聖堂騎士の1人が叫ぶ。

 

「私達はトリステイン王政府のものよ! 今現在、この国に滞在しているアンリエッタ女王陛下の御許へ向かう途中ですの! 私達に手を出したら、とんでもない外交問題よ! 分かってるの!?」

 

ルイズは堂々とそう言うが、女王サマや俺達がここに居るのはお忍びだという事を忘れているらしい。

 

「………アンリエッタ女王陛下?」

 

「そんな報告は受けていないぞ?」

 

案の定、下っ端の騎士には女王サマが来ている事は伝わっておらず、ますます怪しい目を向けられた。

 

「貴様………トリステイン女王の名まで持ち出しおって………ますます怪しい連中だ」

 

「纏めてたっぷりと宗教裁判にかけてやる。覚悟しろよ!」

 

聖堂騎士達が俺達を囲みながら迫って来る。

俺は溜息を吐き、

 

「仕方ない…………」

 

宝物庫からデルフリンガーを取り出す。

まあ、俺もドルモン達を馬鹿にされた事にはムカついていた。

その鬱憤は晴らさせてもらおう。

 

「一応言っておくが殺すなよ? ますますめんどくさくなるから」

 

俺は葵達にそう言うと、向かって来る聖堂騎士をデルフの峰打ちで吹っ飛ばす。

 

「おらあっ!!」

 

いつの間にかマサルは、既に数人を伸していた。

葵も二刀の峰で騎士達を叩き伏せ、優花は余裕の表情で槍を振り回している。

次々と伸されていく騎士達を見て、

 

「何だこいつ等!?」

 

「強いぞ! 気を付けろ!」

 

他の騎士達が警戒を強くする。

 

「神と始祖ブリミルの敬虔なしもべたる聖堂騎士諸君! 可及的速やかに異端共を叩き潰せ!」

 

聖堂騎士の隊長らしき男が叫ぶ。

 

「〝第一楽章〟始祖の目覚め」

 

聖堂騎士達がまるで合唱するように呪文を唱え始めた。

聖堂騎士達の杖から炎の竜巻が伸び、幾重にも絡み合って巨大な竜の形を取り始めた。

 

「何だありゃ?」

 

マサルが驚いたように叫ぶ。

 

「讃美歌詠唱。聖堂騎士が得意とする呪文」

 

シャルロットがそう答えるが、その顔に特に焦りは無かった。

 

「………………」

 

炎の竜が襲い掛かってくるが、シャルロットが人差し指をついっと振ると、氷の粒を纏った竜巻が発生し、炎の竜に絡みつくと、あっさりと消し去った。

 

「異端の癖にやるじゃあないか」

 

先程の隊長らしき男が次の呪文を指揮する。

正直この隙に殴り飛ばしてもいいが、それだとつまらないのでシャルロットに任せる事にする。

今度は水系統だったようで、氷の矢が何百本も生み出され、一斉に撃ち出された。

再びシャルロットが指を振ると、今度は目の前に分厚い氷の壁が生み出され、その全ての矢を受けきる。

いつの間にか周りに集まっていた見物人からヤジが飛ぶ。

聖堂騎士の隊長が悔しさからか、ギリッと歯を噛み締めると、

 

「うぬぅ………おのれぇ………かくなる上はぁ………!」

 

再び讃美歌詠唱を開始する騎士達。

今度は風系統なようで、荒れ狂う竜巻が全てを吹き飛ばさんと迫って来た。

だが、

 

「…………………」

 

三度シャルロットが指を振ると、讃美歌詠唱によって生み出された、スクウェア・スペルもかくやという威力の竜巻を、更に超えた威力の竜巻が生み出された。

 

「なっ!?」

 

シャルロットの生み出した竜巻は、聖堂騎士達の竜巻を飲み込むと、そのまま聖堂騎士達へ向かって行く。

聖堂騎士達が言葉を失い、覚悟を決めた瞬間、

 

「…………………」

 

シャルロットが魔法を中断し、騎士達を飲み込もうとした竜巻が、一気に四散した。

騎士達は腰を抜かして唖然としている。

その瞬間、周りから歓声が沸き起こった。

その歓声は、俺達を讃えているようで、どうやら聖堂騎士達は、この国ではあまり人気が無いらしい。

 

「ぐぐぐ………忌々しい異端共め…………聖下をかどわかし、何処へ連れて行くつもりだ!?」

 

聖堂騎士の隊長が、何かそんな事を言い出した。

 

「異端の誘拐犯共め!!」

 

俺達が首を傾げていると、フードを被った人物が現れ、その隊長に近付くと、

 

「カルロ殿、ご苦労様です。だが、聖下は攫われてはいない」

 

そう言った人物を見て聖堂騎士達が目を丸くし、姿勢を正して神官の礼を取った。

 

「チェザーレ殿!」

 

ふと聞き覚えのある名を口にする。

って言うかジュリオだ。

 

「やあやあ、久し振りだねタイシ! アルビオンで会った時以来かな?」

 

ジュリオが軽い態度で挨拶してきた。

 

「知り合いか?」

 

マサルが聞いてきたので、

 

「以前ちょこっと会った事があるだけだ」

 

「酷いなぁ、一緒に戦争に参加したじゃないか」

 

ジュリオはそう言うが、初対面の挨拶以外に、コイツと深くかかわった記憶は無いのだが。

 

「一体どのようなわけで、このような事態になったのかを説明していただきたい」

 

カルロと呼ばれた聖堂騎士の隊長がそう尋ねる。

 

「いやなに。カルロ殿。聖下が攫われた、という噂を流したのは僕なんですよ。この方たちは怪しいものではない。我々のお客です」

 

「はぁ? どういう意味です?」

 

カルロは怪訝な声を漏らす。

ジュリオが口を開こうとした時、

 

「簡単に言えば、俺達の実力を試すテストを兼ねた悪ふざけだろう?」

 

俺が先にそう言う。

ジュリオは開こうとした口が止まる。

 

「港からつけていた奴が居た事は優花が気付いていた。別に害はなさそうだからほっといたけどな。俺達がこの街に来るタイミングを見計らって、予めお偉いさんが攫われたという噂を流しておけば、俺達みたいな目立つ人間は真っ先に疑われるだろうって腹だろ?」

 

「いやはや、まいった。その通りだよ」

 

ジュリオはあっさりと認める。

 

「な、何と人騒がせな………」

 

聖堂騎士達は呆然とした。

だが、俺達の無実が証明された形になるので、騎士達は散っていく。

ジュリオに対する文句が所々漏れていたが。

そのジュリオは、ニコニコと笑みを浮かべながら近付いてくる。

なので、

 

「動くな」

 

俺はデルフの切っ先を突き付けながらジュリオに言い放つ。

 

「ッ!? 何の真似だい?」

 

ジュリオは僅かに狼狽えるが平静を装って聞き返してくる。

 

「1つ聞くが…………先程の行為は、俺達に対する『敵対行為』と受け取っていいのか?」

 

「な、何を言ってるんだい? それは君がさっき言った通り…………」

 

「ああ。確かにお前にとっては力試し序の悪ふざけのつもりだったんだろう…………だけどな、さっきあの騎士達が放った讃美歌詠唱とやらは、並の使い手ならその命は無かった。人を呼び出しておいて、人を殺せる攻撃で出迎えるのは、俺達を亡き者にしようとしている策だと受け取られても仕方ないと思うが?」

 

「それは、君達がこれから行う過酷な任務をやり遂げられるかを試すためさ。ただ魔法をぶっ放したり、剣を振り回す事が得意なだけじゃ務まらない。この位の危機は、力じゃなくて頭で乗り切って欲しいものだね」

 

「なるほど…………つまりお前達は俺を『敵』に回すという事だな?」

 

「な、何で…………?」

 

「別に俺だけならいい。葵や優花、シャルロットも、あの程度なら自力で如何にかできる実力を持つから、ギリギリだが納得するとしよう。だがな、カトレアと美姫は別だ………!」

 

「ッ!?」

 

俺の放つ殺気にジュリオは身を震わせる。

 

「カトレアと美姫は、俺達とは違って力を持たない普通の人間だ。カトレアはメイジではあるが、少し前まで病弱だった彼女は、碌な魔法の訓練すら出来ていない。戦いなんて以ての外だ! お前達は、そんなカトレアや美姫に…………俺の『大切』に向かって致死性の魔法を放ったんだ。笑って許されると思うなよ………!!」

 

俺はそう言い放つ。

 

「旦那様………!」

 

「お兄ちゃん………」

 

2人が声を漏らす。

 

「ッ………! す、すまなかった………! 僕の悪ふざけで、君達を危険に晒した事を詫びよう………!」

 

ジュリオはようやく事態を飲み込めたのか、頭を下げて謝罪を述べる。

 

「ふん…………」

 

俺は不機嫌な感情を隠そうともせずにデルフを宝物庫へとしまった。

 

「だったら、俺の機嫌がこれ以上悪くならない内にさっさと案内してもらおうか」

 

「わ、分かった………すぐに案内しよう」

 

慌てて歩き出すジュリオについて、俺達は歩き出す。

だが俺は、ティファニアが少し寂しそうな目で俺の背中を見ていたことには、気が付くことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大聖堂についた俺達は、女王サマに挨拶し、晩餐会に案内された。

しかし、その晩餐会は2つに分けられており、片方はシャルロットやカトレア、コルベール先生、キュルケ、マサル、アグモンに与えられた。

そしてもう1つ。

ロマリアの教皇ヴィットーリオが出席する、大晩餐室で行われる晩餐会にはルイズとテファ、俺、ドルモン、葵、リュウダモン、優花、ハックモン、そして、美姫が通された。

俺達はともかく、美姫がこちらに呼ばれた事に、俺はある懸念が思い浮かんだ。

晩餐会が始まり、髪の長い20歳程の美男子であるヴィットーリオはジュリオから報告を受けながら食事をしている。

テファや美姫は、カチコチに固まりながら食事をしていた。

俺達は礼儀作法など知ったことでは無い。

そうやって食事がある程度進むと、ヴィットーリオは突然深々と頭を下げた。

 

「わたくしの使い魔が、大変ご迷惑をおかけしました」

 

その言葉に、ルイズがブホッと噴き出す。

 

「………聖下、今何と?」

 

ルイズが聞き返す。

 

「ご迷惑をおかけして申し訳ありません、とお詫び申し上げたのです。ジュリオ? 何故勝手にそのような事をしたのです? 私はただ、『迎えに行って欲しい』と頼んだはずですが」

 

ジュリオは笑みを浮かべるだけだが、俺はこの一連の流れは、先程の騒動はジュリオの独断であり、ヴィットーリオは関係無いと印象付けているように思えた。

しかも、

 

「そ、そうじゃありません!」

 

ルイズがそんな事よりも気になることがあると言わんばかりに立ち上がったため、その話自体がうやむやになる。

例え後でその事を掘り返されても、謝罪を遮ったのはルイズの為、こちらが強く出れない状況を作り出されたように感じる。

 

「今、聖下は『使い魔』と仰いましたね?」

 

「はい、そうです」

 

ヴィットーリオはルイズとテファを交互に見つめ、頷く。

 

「わたくしたちは兄弟です。伝説の力を宿し、人々を正しく導くための力を与えられた、兄弟なのです」

 

ヴィットーリオの告白に、ルイズは目を丸くする。

そして、直後にジュリオが右手の手袋を外す。

ジュリオの右手の甲には、使い魔のルーンが刻まれていた。

 

「ぼくは神の右手、ヴィンダールヴだ。そこに居るミキ………ティファニア嬢の使い魔であるリーヴスラシルと兄弟という事だよ」

 

「チッ……………」

 

ジュリオの言葉に、俺は小さく舌打ちする。

やはり先程の懸念は当たっていた。

この部屋に美姫が呼ばれたという事は、美姫がテファの使い魔であり、リーヴスラシルであるという事は、既にロマリアにバレていたようだ。

 

「ど、如何してその事を…………!?」

 

テファが震えながら問いかける。

それから恐れるように俺の方をチラチラと窺っている。

バレてはいけない相手にバレていたことで、俺の不評を買うと思ったのだろうか?

美姫も驚きながらも警戒した表情をする。

 

「……………おそらくテファが美姫を召喚する前から既にロマリアに監視されていた。もしくは、少し前に美姫が大浴場を使った時だろうな。その時に美姫の胸にルーンがある事は、少ないながらも生徒達に目撃されていたはずだし、その話をロマリアが掴めば、誰の使い魔かは大体予想出来る」

 

俺の推理にヴィットーリオとジュリオは笑みを浮かべるだけで何も答えない。

恐らくどっちかが正解なんだろう。

 

「ルイズ嬢は未だ契約を結んでないから………これで3人の担い手、2人の使い魔、そして………」

 

ヴィットーリオはルイズの傍らに置かれた『始祖の祈祷書』を見つめ、

 

「1つの秘宝、2つの指輪………が集まった訳です」

 

そう言った。

すると、ジュリオが近付き、

 

「指輪はあと1つ加わるかと………」

 

そう小声で言った。

 

「となると、指輪は3つ………と言う事ですね」

 

それから、ヴィットーリオは女王サマの方を向いた。

女王サマは緊張した面持ちで頷く。

 

「さて、本日こうしてお集まりいただいたのは他でもない。わたくしは、あなた方の協力を仰ぎたいのです」

 

ヴィットーリオは言った。

 

「協力とは?」

 

ルイズが聞き返すと、

 

「わたくしがお話ししましょう」

 

と女王サマが口を開いた。

 

 

 

女王サマの話を聞き終えたルイズは、やっとの思いで口を開く。

 

「つまり………姫様がおっしゃりたいのは、私達の力を使って、エルフから聖地を取り返したいって事なのですか? それでは、レコン・キスタの連中と変わりないではありませんか」

 

「違います。そうではないのよルイズ。『交渉』するのよ。戦う事の愚を、あなた達の力によって悟らせるのです」

 

「…………どうして、聖地を回復せねばいけないのですか?」

 

その問いには、ヴィットーリオが答えた。

 

「それが『心の拠り所』だからです。何故戦いが起こるのか? 我々は万物の霊長でありながら、愚かにも同族で戦いを繰り広げるのか? 簡単に言えば、『心の拠り所』を失った状態であるからです。我々は聖地を失ってより幾千年、自信を喪失した状態であったのです。異人たちに、『心の拠り所』を占領されている………その状態が、民族にとって健康なはずありません。自信を失った心は、安易な代替品を求めます。くだらない見栄や、多少の土地の取り合いで、我々はどれだけ流さなくてもいい血を流してきた事でしょう」

 

ルイズは言葉を失っている。

 

「聖地を取り返す。伝説の力によって。その時こそ、我々は真の自信に目覚める事でしょう。そして………我々は栄光の時代を築く事でしょう。ハルケギニアはその時初めて『統一』されることになりましょう。そこにはもう、争いはありません。始祖ブリミルを祖と抱く我々は、皆、神と始祖のもと兄弟なのです」

 

「……………………」

 

ヴィットーリオの言葉に、ルイズは心を動かされている様だが、何処か違和感を感じているのか、すぐに賛同はしない。

女王サマは既に言いくるめられてるのか、ヴィットーリオに賛同している様だ。

内心舌打ちする。

ウェールズが一緒だったなら、もう少し慎重に行動していたと思うが、1人で来たものだから、簡単に懐柔されたらしい。

いや、それが分かってたから、ロマリアは女王サマだけを呼び寄せたんだろう。

まだまだ頭はお花畑から抜け出せない様だ。

 

「タイシ殿、あなたはどうお考えですか?」

 

女王サマが俺に問いかけてくる。

なので、遠慮なく口にした。

 

「やりたいなら勝手にやれ。俺達を巻き込むな。ってだけです」

 

「ッ………!」

 

「大士殿っ!」

 

女王サマは叱るような口調で諫めてくる。

 

「悪いがこれが本心だ。俺達は所詮余所者。この世界の事柄に深くかかわる気は無い。この世界の行く末はこの世界の人間が決めればいい。俺は自分の『大切』を最優先して動く事に変わりは無い」

 

俺がそう言うと、

 

「タイシ殿は以前、ミキ殿の力を借りなければ解決できない事柄に直面した場合、全力で協力すると仰いましたね?」

 

やはりと言うべきか、その約束を口に出した。

 

「言ったな」

 

「では、今がその時なのではないのですか?」

 

女王サマはそう言う。

 

「俺はそうは思わない。今回は、別に聖地を取り戻そうとしなければ回避できる事柄だ。美姫の力が必要不可欠とは思わない」

 

「ッ!?」

 

「俺が言った解決できない事柄とは、例えばの話、『太古から眠っていた世界を滅ぼす強大凶悪な竜が復活し、美姫がその命を犠牲にしなければその竜を倒せない』というような場合だ。そういった場合なら、俺は美姫を護る為に喜んで力を貸そう。だが、一部の人間の理の為に攻め入る事に力を貸す気は無い」

 

「そんな! ですが、このままでは争いで多くの血が………!」

 

「俺から言わせれば、教皇サマの言っていた事は、単なる理想論だ。例え聖地を取り戻そうとそれだけで人々の間から争いが無くなるとは思えない」

 

俺はハッキリとそう言う。

 

「この世界の文明レベルは俺達の世界で言えば500年から1000年前の文明レベルに近い。俺達の世界の歴史じゃ、その後も数々の争いが繰り広げられている。現在でこそ比較的平和だが、世界のあちこちでは、まだ争っている場所だってあるんだ。俺達の世界よりも命の軽いこの世界で争いが無くなるなんて、一朝一夕じゃ無理だと思うね」

 

「…………では、あなたは何故人が争うとお考えですか?」

 

今度はヴィットーリオが問いかけてくる。

 

「争う理由なんて人それぞれだと思うが…………一番の理由は生き残りたいからだろう」

 

「生き残る…………?」

 

「生きるために敵を殺す。飢えたくないから他者から奪う。もっと裕福に生きたいから他者を蹴落としてでも手に入れる。そういった事だ」

 

「なるほど、それもまた真理ですね」

 

ヴィットーリオ理解したように頷く。

だが、

 

「ですが、心に余裕ができれば、生きる事にも余裕ができます。それはつまり、戦いそのものを減らす事に繋がるのです」

 

この教皇サマは、どうしても聖地を手に入れたい様だ。

ま、ここまで来ると、地球侵略ルートの可能性が大だな。

まだ確定では無いが。

 

「左様で。ま、さっきも言ったがやりたきゃ勝手にやってくれ。聖地を取り戻すなんて戦いに興味は無いし協力する理由もない。ただ、ガリアに関しては別だ。ガリアとは戦う理由があるから、そっちに関しては無条件で協力してやる」

 

「…………なるほど、ガリアに関する事には協力していただけると」

 

「ああ。ただ、俺達は俺達の考えがあって動く。その考えが、あんた達と反りが合わなければ、衝突する可能性もあるかもな」

 

「そうですか」

 

ヴィットーリオはさも気にしていないと言わんばかりに頷いた。

 

「ですが、ガリアとの戦いには協力していただけるのですね?」

 

「まあな」

 

「わかりました。ガリアの虚無の担い手をおびき出すのに、良い作戦があります」

 

ヴィットーリオは、そう言って作戦の内容を話し出すのだった。

 





ゼロ魔クロス第33話です。
ロマリアへの入国と、ヴィットーリオの対面まででした。
それなりに自分勝手に言いまくったけどどうでしょうか?
次回は今回の続きです。
お楽しみに。

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