ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第35話 ありふれた開戦

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

ガリアの某所。

研究室のような場所に倉田と、そしてワルドが居た。

 

「調子はどうですか? ワルド子爵」

 

「素晴らしい………! 以前の力がまるで児戯の様に思える力だ……!」

 

ワルドは感動に打ち震える様な声を漏らした。

 

「それは結構。究極体に適合できた人材は、あなたを含めて極僅かでしたからね」

 

倉田がフッフッフと怪しく笑う。

 

「とは言え、アーマー体の適合率は予想以上………お陰で数は十分に揃いました」

 

倉田が眺めるガラス戸の先には、ずらりと並ぶ100人程の兵士達。

 

「さあ、新たなスポンサーに、我々の力を見せつけてあげようではありませんか!」

 

倉田の声が、薄暗い研究室の中に響くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それに最初に気付いたのは、ロマリアとガリアの国境に配備された、ロマリア艦隊だった。

ロマリア艦隊は、『ガリアの侵攻に警戒せよ』という任を受け、地上部隊と共にロマリアとガリアを結ぶ『虎街道』と呼ばれる街道の出口付近にて警戒を行っていた。

ガリア側に向かって警戒を行っていたが、その艦隊で哨戒に当たっていた1人が、ガリア方面の空に、ポツポツと黒い影が幾つも現れているのに気付いた。

 

「何だあれは? 竜騎士隊か?」

 

その兵士はすぐに上官に報告し、艦隊全てに警戒するように通達が行く。

やがてその影の形がハッキリとしてきた。

確かにそのシルエットは竜に近い形をしていたが、明らかに火竜や風竜とは違っていた。

何故なら、その竜達は身体が金属で出来ていたからだ。

ロマリア艦隊の兵士達には知る由も無いが、その竜は、デジモンのアーマー体、『プテラノモン』に酷似しており、頭部が赤い事と、翼の一部にコードの様な物が見える。

これこそ、倉田が新たに生み出したバイオデジモン、『バイオプテラノモン』の編隊であった。

その編隊は、30体ほどのバイオプテラノモンで構成されており、ハルケギニアの艦や竜などとは比べ物にならないスピードで向かって来る。

ロマリア艦隊は、すぐに攻撃に移るものの、バイオプテラノモン達は大砲の弾の直撃を受けてもものともせず、真っ直ぐに向かって来た。

その事実に乗組員たちが驚愕する暇も無く、バイオプテラノモンの翼に装備されているミサイルが次々に放たれる。

40隻ほどで構成されたロマリア艦隊は1分と持たずに全滅する事となった。

 

 

 

 

その様子を地上から目撃した地上部隊にも戦慄が走った。

虎街道から、見たことも無い生き物たちが進軍中だという報告を受けたのだ。

その数、大よそ60体。

そちらも、アロモンやステゴモン、ボアモンといったアーマー体を素体としたバイオデジモンの群れであった。

地上部隊も唯見ていただけでなく、大きな陸亀に大砲を乗せた砲亀兵と呼ばれるもので砲撃を加えるが、やはり1体たりとも倒すどころか、その進軍速度を落とす事すら出来ずに蹂躙され、壊滅する事となった。

 

 

 

 

 

 

「ククク………フハハハハハ! 圧倒的では無いか!」

 

その様子をシェフィールドのガーゴイルを通じて見ていたジョゼフが大声を上げて笑っていた。

 

「まさか、ロマリアの艦隊と地上部隊を、一刻と掛からず全滅させるとは………」

 

シェフィールドは、ジョゼフと違ってバイオデジモン達を脅威に感じたようだ。

もしあの矛先が自分達に向いたら………

そう思うと、身体の震えが止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

虎街道周辺が占領された事は、すぐにアクイレイアに居た俺達に伝わった。

報告では、敵は見たことも無い生物の集団で、瞬く間に艦隊も地上部隊も全滅したという。

 

「聖下! あなたはどう責任を取るおつもりなのですか!? あなたの挑発で、ガリアは戦争を仕掛けてきたではありませんか!」

 

女王サマがヴィットーリオに物申している。

 

「わたくしの挑発?」

 

ヴィットーリオは怪訝そうな顔で聞き返す。

 

「そうです! あなたが国境に軍など配備するから、いらぬ戦が起こる羽目になったのです!」

 

「これは異な事を。国境に軍を配備しなければ、我らには会議する時間すら与えられませんでしたよ」

 

報告では、一刻と持たずに全滅したとあったんだが?

向こうがその気ならとっくにこっちまで攻め込んでいる所だ。

軍を配備してもしなくても、結果に変わりは無かったと思う。

向こうがアクイレイアまで攻め込まなかった理由は分からないが、少なくとも、奇襲など使わなくても勝てるという確信があるのだろう。

 

「『我が同胞』を殺すために、ジョゼフ王は軍を使った。それだけの話ではありませんか」

 

その言葉に女王サマは口を噤む。

罪を人に擦り付けるのが上手いなぁ。

 

「でも、でも………何も戦になる事は………」

 

「あなたは誤解しておられる。アンリエッタ殿。此度の戦いは政争では無いのです。陰謀を暴いて失脚させる等の、宮廷のままごととは根本に意を変えるのです。どちらが滅亡するのか。この世から消え去るのはどちらなのか。そう言う種類の戦いなのです。陰謀を暴くのはその手段の1つに過ぎません。そしてそう、戦もまた、その手段の1つなのですよ」

 

ヴィットーリオの考え方は、別に否定はしないが気に入らない。

 

「交渉? 調停? そんなものは最早この戦には存在しません。こうなったからには全力で相手を叩き潰す。同じ力を持つ以上、完全なる同盟か、完全なる敵対か、そのどちらかしか無いのです。今回の件を、通常の外交だと捉えられてはわたくしが困る。おそらく、ジョゼフ王もそうでしょう」

 

いや、ジョゼフは全くそんな事、これっぽっちも考えて無いと思うが。

 

「ガリアの異端共は、エルフと手を組み、我らの殲滅を企図している。わたくしは、始祖と神の僕として、ここに、『聖戦』を宣言します!」

 

聖堂にヴィットーリオの声が響き渡る。

一瞬の静寂の後、

 

「「「「「「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」」」」」」」」

 

歓声が沸く。

女王サマは、漸くヴィットーリオの狂気的ともいえる信仰心に気付いたのだろう。

ぺたりと床にへたり込んだ。

 

「『聖戦』の完遂は、エルフより『聖地』を奪回する事により成すものとします。全ての神の戦士たちに祝福を!」

 

全てを利用し、目的を完遂しようするヴィットーリオに、俺はある意味呆れを超えて、感心すら覚えそうな気がしてきた。

だが、ガリアとの戦いに協力するとは言ったが、俺達は俺達の考えで動くとも言った。

このまま利用されるだけは癪なので、少し位嫌がらせをしてやろうと俺は思うのだった。

 

 

 

 

 

ヴィットーリオの宣言の後、俺達は仲間内で集まっていた。

 

「まさか、『聖戦』が発布されてしまうなんて…………」

 

ルイズがぐらりとよろめく。

味方が死に絶えるか、敵が全滅するまで終わらない狂気の戦。

ルイズもその事は分かっているのだろう。

 

「あれがヴィットーリオの本性だろう。目的の為には、どんな手段も犠牲も厭わない」

 

俺がそう言うと、

 

「そんな………いくら争いを無くすためとはいえ、その目的の為にそれ以上の血を流してしまったら意味が無いじゃない…………」

 

ルイズはそう呟く。

 

「まあ、仮にこの戦いに勝ち、悠久の平和が訪れるのだとしたら、どれだけ血を流そうとも、『僅かな犠牲』で済むんだろうけどな」

 

俺は皮肉を込めてそう言う。

 

「あんた達から見て、この『聖戦』に勝利したとしたら、ハルケギニアは平和になると思う?」

 

ルイズがそう問いかけてきたので、

 

「無理だな」

 

「無理だね」

 

「無理ね」

 

「無理だと思う」

 

「無理なんじゃねえか?」

 

俺、葵、優花、美姫、マサルの順で答える。

満場一致で無理だという結論になった。

 

「そう………考えるまでも無いのね………」

 

「事実だからな」

 

そもそも、ヴィットーリオの目的は地球侵略の可能性が高くなってきたわけだし。

それが確定した時点で『敵』認定だ。

 

「あんた達は如何する気なの?」

 

「俺達は言った通り、ガリアの戦いには手を貸すさ。おそらく報告にあった謎の生物群は、デジモン、もしくはバイオデジモンだろう。相手に出来るのは俺達だけだ」

 

「バイオデジモンが居るって事は、倉田の野郎も居るって事だしな!」

 

マサルがバシッと右の拳を左の掌に打ち付ける。

 

「だけど、聖下はきっと、あなた達の功績を利用するわ。『始祖の使い』とか銘打って、あなた達を『聖戦』から逃れられなくする腹積もりなのかも………」

 

ルイズのその言葉に、俺は思わず目を丸くした。

 

「………何よ?」

 

その目に気付いたのか、ルイズが聞き返してくる。

 

「いや、お前からそんな言葉が出るとは意外だった。むしろ、始祖ブリミルの為に戦えと言うのかと………」

 

半分冗談でそう言うと、

 

「あんたねぇ…………!」

 

ルイズがジト目を向けてくる。

 

「勿論今でも私は始祖ブリミルを敬愛しているわ。それは変わらない。だけどね、今のロマリアは違うっていう事も私は分かっているつもりよ。私には、聖下は始祖ブリミルを言い訳にして、目的を果たそうとしているようにしか思えない………!」

 

ルイズの言葉に、俺は的を射ていると感心した。

 

「少しは成長したようだな。実際俺もそう思う。ヴィットーリオは目的の為なら何でも利用するからな。まあ、自分達の力を過信している感はあるが」

 

「うっさいわね………で? 聖下があんた達の功績を利用する事には如何するつもりなの?」

 

その言葉に俺は笑みを浮かべる。

 

「まあ、一応対策はある」

 

「へっ?」

 

俺はカトレアの方を向き、

 

「カトレア…………俺達に利用されてくれるか?」

 

「はい。旦那様の望むままに」

 

ワザと少し悪く言った言葉にも、カトレアは笑みを浮かべて頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ルイズは原作通り『アクイレイアの聖女』として前線に投入された。

当然だが俺達も付いて来ている。

だが、俺達の傍にはフードを被った人物が2人と、子供位の背丈のフードが1人。

そして、シャルロットと、巫女服姿のティファニア、それと美姫も同行している。

流石にあの街に置いておく気にはならない。

俺達を含めた聖女の護衛を任された騎士の一団が虎街道の入り口に到着すると、そこには無数のデジモン達が跋扈していた。

記憶にあるデジモン達とは若干差異がある事から、やはりバイオデジモンの様だ。

ルイズの登場に、言い様にやられていたロマリア軍は沸き立つ。

 

「アクイレイアの聖女殿! 万歳!」

 

「我らが巫女殿! 敵を吹っ飛ばしてやってくれ!」

 

その声に応えるように、ルイズが杖を掲げ、呪文を唱えだした。

長い『爆発(エクスプロージョン)』の詠唱が終わると、ルイズは杖を振った。

 

「エクスプロージョン!!」

 

虎街道周辺に跋扈していたバイオデジモン達を、光の球が呑み込む。

俺がルイズに頼んだことは、1つだけ。

 

『全力でぶっ放せ』

 

それだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

虎街道の崖の上からエクスプロージョンの光の球を眺めている倉田が口を開いた。

 

「ほほう。これが『虚無』とやらの魔法の威力ですか………なるほど、こんな原始的な世界にこれほどの威力が出せるとなれば、信仰の対象になるのも頷けますね」

 

倉田は興味深そうに眺めているが、特に焦りも何も感じさせない。

 

「フッ………私も今思えば、この程度の力を何故欲していたのか理解できんよ」

 

倉田の隣に控えていたワルドも澄ました表情で呟いた。

彼らの視線の先では、光の球が徐々に小さくなっていく。

そして、その光の球が消えた時、そこには、円形に抉れた地面と、1体も倒れていないバイオデジモン達の姿があった。

そのバイオデジモン達がギロッと光の球の出所であるルイズ達の方を向く。

その瞬間、

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 化物だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

ルイズを護るべきはずの騎士や兵士達が真っ先に逃げていく。

残ったのは、ルイズと大士達、そしてフードの人物達だけだ。

 

「おやおや、聖堂騎士とあろうものが、仮にも『聖女』を置き去りにして逃げるとは………」

 

ワルドは呆れた様に呟く。

 

「それではせめて、可哀想な『聖女』に御挨拶に行きましょうか」

 

倉田がそう言うと、近くに居たグリフォモン………

頭部が緑色なので、バイオグリフォモンだろうが、それに乗って飛び立つのだった。

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

ルイズのエクスプロージョンが炸裂するが、1体たりとも倒せていない現実を見て、聖堂騎士や兵士達は全員逃げ出してしまった。

大口叩いておきながら、『聖女』を見捨てて逃げ出す様は、なんだかなーと思う。

 

「はあ………予め言われてたけど、虚無の魔法が全く通じないっていうのは、やっぱりショックね………」

 

ルイズは溜息を吐きつつそうボヤく。

 

すると、俺達を影が覆った。

上を見上げると、そこにはグリフォンの様な姿をしたデジモン。

頭が緑色なので、おそらくバイオグリフォモンだろう。

そして、その背には、羽根帽子を被った長身の男、ワルドと、白衣を着てメガネを掛けた男である倉田が乗っていた。

 

「久し振りだね、ルイズ。こうやって顔を合わせるのは何時振りだろう?」

 

ワルドが余裕の表情でルイズに語り掛ける。

 

「ワルド!」

 

ルイズはキッとワルドを睨み付けた。

 

「何度言われても、あんたについて行くのはお断りよ!!」

 

ルイズはそう叫ぶが、

 

「心配しなくてもいい。私は既に君を………いや、虚無の力を必要としていない」

 

「何ですって?」

 

「私はついに手に入れたのだ。本当の、『究極』の『力』というものを!」

 

「タイシ達に散々やられてる癖に、よくそんな大口が叩けるわね!」

 

ルイズも言い返す。

 

「大口かどうかはすぐにわかるさ」

 

ルイズの言葉にも、ワルドは冷静に返答した。

 

「ワルド子爵、旧交を温めるのもそのあたりで」

 

倉田が口を出す。

 

「さて、私は以前言いましたね? これ以上私の邪魔をするのなら容赦はしませんと…………その覚悟がおありですかな?」

 

倉田がサッと手を挙げると、地上にいたバイオデジモン達が一斉に戦闘態勢を取り、倉田が乗るバイオグリフォモンの背後にバイオプテラノモン達が待機する。

 

「いくら君達とは言え、たった3匹のデジモン達だけで、これだけの数のバイオデジモン達を相手にするのは、いささか力不足と思いますがねぇ………」

 

倉田は厭味ったらしくメガネの位置を直しながらそう言ってくる。

 

「………それでも邪魔をすると言ったら?」

 

俺が問いかけると、

 

「それでは仕方ありません……………覚悟してもらいましょうか!!」

 

倉田の声を合図に、正面から猪型のバイオボアモンが突っ込んでくる。

俺は迎え撃とうと拳にデジソウルを宿した。

その瞬間、

 

「進化されると厄介なので、その隙は与えませんよ!!」

 

倉田はそう叫ぶ。

背後から忍び寄っていた恐竜のアロサウルスの様な姿をしたバイオアロモンが襲い掛かって来た。

確かにそれは正しい。

ドルモン達は強いが、進化しなければ成長期の域を出ない。

相手が全力を出す前に潰すのは、戦いでは当然のセオリーだ。

だが、

 

「はぁああああああああああっ!!」

 

俺は正面のバイオボアモンを殴り飛ばす。

完全体を超えるアーマー体のバイオデジモンとは言え、今の俺は、究極体すら殴り倒せる域に達している。

バイオボアモンを殴り飛ばすのは難しくは無かった。

だが、同時に背後にいたバイオアロモンが飛び掛かって来る。

 

「貰いましたよ!!」

 

倉田は勝利を確信した声で叫んだ。

だが、俺はフッと口元に笑みを浮かべた。

何故なら、

 

「うぉらぁっ!!!」

 

フードを被っていた人物の1人が、飛び掛かって来たバイオアロモンに拳を繰り出し、オレンジ色のデジソウルが発生すると同時に吹き飛ばしたからだ。

 

「な、なんですとぉっ!?」

 

勝利を確信していた倉田は驚愕の声を漏らす。

そして、フードを纏った人物の拳に宿るオレンジ色のデジソウルを見て、目を見開く。

 

「そ、そのデジソウルは………ま、まさかぁっ!?」

 

倉田は狼狽えるようにバイオグリフォモンの背中で一歩下がった。

 

「久しぶりだな倉田ぁ………相変わらずくっだらねえ事してるじゃねえか…………」

 

そのフードの人物が、纏っていたローブに手を掛けて、一気に脱ぎ去る。

 

「今度こそ引導を渡してやるぜ! この喧嘩番長! 大門 マサル様がなぁっ!!」

 

堂々と名乗りを上げるマサル。

 

「覚悟しろ倉田ぁ!!」

 

同時に、小さい方のフードを纏っていた方もローブを脱ぎ去り、アグモンが叫びながらその姿を見せた。

 

「だっ、大門 マサルゥゥゥゥゥゥゥッ!?!? な、何故あなたがこの世界にぃ!?!?」

 

倉田が驚き過ぎで狼狽える。

 

「へっ、まさか、偶々流れ着いたこの世界にお前が居るとは思わなかったぜ」

 

マサルはニヤリと笑って見せる。

 

「ぐぬぬぬ…………やはりあなた達親子は、私の前に立ちはだかるというのですね! 良いでしょう! 邪魔者諸共叩き潰して差し上げます!!」

 

倉田が手を振り下ろすと、それを合図に一斉にバイオデジモン達が襲い掛かった。

 

「やれるもんならやってみやがれ! 行くぞアグモン!!」

 

「おう! アニキ!!」

 

マサルが突き出したデジヴァイスバーストの画面に文字が刻まれる。

 

――ULTIMATE

  EVOLUTION――

 

「デジソウルチャージ! オーバードライブ!!」

 

全身に溢れるデジソウルを右手に集中させ、デジヴァイスバーストに叩き込んだ。

そして、デジヴァイスバーストから溢れる光の奔流。

その光の奔流を受け、アグモンは進化する。

 

「アグモン進化!」

 

光の中でアグモンは究極体へと進化する。

 

「シャイングレイモン!!」

 

究極体の光竜型デジモンであるシャイングレイモンとなってその場に現れる。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

向かって来るバイオデジモン達を纏めて殴り飛ばす。

 

「はぁあああああああっ!!」

 

空中から向かって来るプテラノモンを裏拳の様に振るった腕で吹き飛ばした。

 

「どうした!? この程度か!?」

 

マサルが叫ぶ。

 

「ぬうう…………流石はベルフェモンを一度は倒したシャイングレイモン…………この程度では相手になりませんか…………」

 

倉田は忌々しそうにそう言うが、その表情に危機感は浮かんでいなかった。

 

「ワルド子爵!」

 

倉田がワルドに呼びかける。

 

「フッ………私の出番の様だな」

 

ワルドが余裕の表情で前に出るが、俺は怪訝に思った。

バイオサンダーバーモンではシャイングレイモンの相手にはならない筈………

 

「ワルドのあの余裕は一体…………?」

 

俺が呟くと、

 

「大門 マサル、君に面白いものを見せてあげましょう」

 

倉田が嘲笑う様な笑みを浮かべる。

 

「面白いものだと?」

 

マサルが怪訝な声を漏らすと、ワルドが左手を突き出す。

手首に装着されていた特殊デジヴァイスが迫り出して左手に収まる。

 

「ハイパーバイオエクストラエボリューション!!」

 

「何ッ!?」

 

マサルが驚愕の声を漏らした瞬間、ワルドがバイオグリフォモンの背から飛び降りると同時に、光に包まれて巨大化する。

その光が地上に着地した瞬間、光が消え去ってその姿を露にする。

 

「なっ!?」

 

その姿を見たマサルが、目を見開き、驚愕の声を漏らす。

それは、獣の仮面被った巨人で、長い緑の髪を持つデジモン。

素体となったデジモンは、オリュンポス十二神の1体であり、かつてマサル達と戦い、同時に、マサルの仲間であるイクトの父親的存在でもあるデジモン。

 

「バイオメルクリモン!!」

 

その巨人が立ち上がる。

 

「メル……クリ………モン…………!?」

 

マサルは動揺した様子でその名を呟く。

 

「どうですか? 私のサプライズは気に入って頂けましたか?」

 

倉田はニヤリと嫌な笑みを浮かべる。

 

「てめぇ!! どうしてメルクリモンが!?!?」

 

「君達は気付いていないようでしたが、あの時ギズモンがメルクリモンに止めを刺した時、そのデータはしっかりと回収させていただいていたんですよ。今回はその因子をワルド子爵に埋め込みました。正直、その力の大きさから、適合する確率はゼロに近い筈だったのですが………ワルド子爵の執念が勝ったのか、奇跡的に適合したんですよ」

 

「くっ………てめぇっ! よくもメルクリモンをこんな事に利用しやがったな!! 絶対に許さねぇ!!」

 

マサルは猛りながら叫ぶ。

 

「シャイングレイモン!!」

 

「おおっ!!」

 

マサルの呼びかけにシャイングレイモンが応え、バイオメルクリモンへ向かって行く。

だが次の瞬間、シャイングレイモンの懐にバイオメルクリモンが踏み込んでいた。

 

「なっ!?」

 

「速いっ!?」

 

マサルとシャイングレイモンが同時に声を漏らした瞬間、

 

「サウザンドフィスト!!」

 

瞬間的な拳の超連打が浴びせかけられた。

 

「うわぁああああああああああっ!?」

 

それを諸に受けたシャイングレイモンは吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

「シャイングレイモン!?」

 

マサルが叫ぶ。

 

「フフフ………どうです? 素晴らしいでしょう? バイオメルクリモンの強さは」

 

「倉田ぁ…………!」

 

「例えシャイングレイモンがバーストモードになろうとも、バイオメルクリモンとこのバイオグリフォモン。そして、バイオデジモン軍団の力を結集すれば勝てる計算です。そもそもバーストモードとは、おそらく限界を超える力。長時間は使えないでしょう」

 

やはり腐っても天才と言うべきか。

一度の戦いでバーストモードの欠点を見抜いている。

 

「デジモンは危険極まりない生物だが、人間と融合させ、人間の意志によって完璧にコントロールできればこれ以上無いほどの力となる! 人とデジモンが1つになったバイオデジモンこそ、人もデジモンも超えた、究極の兵器なのだ!!」

 

「兵器だと!? ふざけんな! デジモンはなぁ! 人間と一緒に進化していく存在だ! 間違っても兵器なんかじゃねえっ!!」

 

マサルが叫ぶ。

 

「……………けどまあ、倉田の言う事にも極一部だが共感できる部分はある」

 

俺は口を開いた。

 

「何言ってんだ大士!?」

 

マサルがこちらを振り向いて叫ぶ。

 

「ほう? 君には私の研究の素晴らしさが理解できるというのですね?」

 

倉田が意外そうにそう言ってくる。

だが、

 

「勘違いするな。俺が共感できると言った部分は、人とデジモンが1つになるという所だ。そもそも、お前は人とデジモンを1つにしてるんじゃない。ただ、デジモンの力を人に植え付けることによって増幅しているだけだ。そんなんじゃ、真の力は引き出せない」

 

「何を言ってるのですか? あなたは? 人とデジモンが1つになる方法が、私のバイオデジモンの研究以外にあるなら見せて欲しいものですよ」

 

俺の言葉が理解できなかったのか、倉田は声を漏らす。

俺はそんな倉田を鼻で笑い、

 

「なら見せてやる。人とデジモンが、1つになるという事を!」

 

俺はDアークを取り出す。

同時に、葵と優花もDアークを取り出した。

 

「ドルモン!!」

 

「おう!」

 

俺の声にドルモンが、

 

「リュウダモン!!」

 

「うむ!」

 

葵の声にリュウダモンが、

 

「ハックモン!!」

 

「ああ!」

 

優花の声にハックモンが応える。

 

「進化だ!!」

 

俺達がDアークを掲げた。

 

――MATRIX

  EVOLUTION――

 

「「「マトリックスエボリューション!!」」」

 

俺達の身体がデータとなり、自分のパートナー達と1つになる。

 

「ドルモン進化!」

 

「リュウダモン進化!」

 

「ハックモン進化!」

 

それぞれの成長期の身体が分解され、究極体の姿として再構成される。

ドルモンは黒き聖騎士へ。

リュウダモンは鎧を纏った龍へ。

ハックモンは剣の聖騎士へと進化する。

 

「アルファモン!!」

 

「オウリュウモン!!」

 

「ジエスモン!!」

 

3体の究極体デジモンとなって、その場に降り立った。

 

「何が!? 何が起こったのです!?」

 

倉田が狼狽え、

 

「人と………デジモンが………1つに…………!」

 

マサルが呆然とこちらを見つめる。

 

「ッ…………!」

 

シャイングレイモンも目を見開いて驚きを露にしている。

 

「えっ? えっ? 何が起こったの?」

 

ルイズが何が起こったのか理解できず、美姫やテファ達も驚きで声を失っていた。

 

「これが俺達の究極進化。テイマーとパートナーが1つとなって進化する、マトリックスエボリューションだ!!」

 

アルファモン()がそう言い放つ。

 

「すげえじゃねえか………! 漢だぜ、大士!!」

 

マサルは人間とデジモンの新たな可能性を見た所為か、嬉しそうにそう叫ぶ。

 

「くっ………何がマトリックスエボリューションですか!? 私のバイオデジモンに敵うはずがありません!!」

 

倉田が合図を出すと、バイオデジモン達が動き出す。

 

『オウリュウモンは空を! ジエスモンは地上のバイオデジモン達を頼む!』

 

俺はそう指示を出す。

 

「承知!」

 

「任せよ!」

 

オウリュウモンは空へ飛翔し、ジエスモンは地を駆ける。

空中のバイオプテラノモンが無数のミサイルを放って来た。

それに対し、

 

「黄鎧!!」

 

オウリュウモンは背部の翼の刃、『鎧馬大名刃』を広げ、荒れ狂うように全てを斬り裂きながら突進する。

ミサイルの直撃を受けようともオウリュウモンの鎧はビクともせず、バイオプテラノモン達は次々と切り裂かれていく。

地上のバイオデジモン達は向かって来るジエスモンに、一斉に必殺技を放つ。

嵐のように放たれる必殺技に、ジエスモンが晒されようとした時、

 

「アウスジェネリクス!」

 

その場から瞬間的にジエスモンが消えた。

いや、超高速移動で躱したのだ。

そのジエスモンは、バイオデジモン達のド真ん中にいた。

突然現れたジエスモンに、バイオデジモン達は固まるが、

 

「轍剣………成敗!!」

 

一瞬にして振り抜かれた剣の一閃がバイオデジモンの全てを切り裂いた。

 

「そ、そんな………こんな事………こんな事認めませんよぉ! ワルド子爵!!」

 

倉田が現実を認めるのを拒否したのかバイオメルクリモンとなったワルドへ指示を出す。

バイオメルクリモンが構えを取る。

 

「気を付けろ! そいつ、すげえ速いぞ!!」

 

マサルが警戒するように叫ぶ。

だが、1対1であるなら、アルファモン()に勝てる存在などそうそう居ない。

 

「アルファインフォース………!」

 

アルファモン()は、アルファインフォースを発動させる。

次の瞬間、翳した右の掌から放たれた光弾がバイオメルクリモンを撃ち抜く。

 

「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

その場で倒れるバイオメルクリモン。

その体には、一撃ではあり得ない筈の、無数の傷があった。

 

「何が!? 何が起こったのです!?」

 

倉田はわなわなと震え、

 

「撤退! 撤退するのです! ワルド子爵!」

 

「ぐぬ……!」

 

バイオメルクリモンはワルドに戻ると、バイオグリフォモンに飛び乗った。

 

「スーパーソニックボイス!!」

 

バイオグリフォモンは口から吐いた超音波で辺り一帯を無差別に破壊する。

 

「チッ!」

 

アルファモン()はシャルロット達の前で防御用の魔法陣を張って彼女達を護った。

 

攻撃が止んだ時、バイオグリフォモンは空の彼方へと飛んでいってしまっていた。

 

「逃げたか…………!」

 

アルファモン()が呟いた時、様子を伺っていたのか聖堂騎士達が戻って来た。

 

「見よ!おごり高ぶるガリアの化け物共は殲滅したぞ! 始祖の加護は我らにあり!」

 

すると、馬に跨ってやって来た1人の聖堂騎士がアルファモン()に呼びかけた。

 

「援軍感謝! あの化物共を殲滅するなんて………お頼み申す! 旗が無くては士気に関わる! これを掲げられよ!」

 

聖堂騎士が黒字に白抜きで聖具が描かれた聖戦旗と呼ばれる旗だ。

その聖戦旗をアルファモン()が掲げれば、ブリミル教徒である者達にはこれ以上無い士気高揚となる。

だが、それは同時に、アルファモン()達が始祖の使いとして扱われることになるだろう。

よって、

 

「断る」

 

アルファモン()はキッパリと断った。

 

「な、何ですと!?」

 

聖堂騎士は驚愕する。

 

「今ここでハッキリとさせておこう。我々は、始祖ブリミルなどの使いでは無い! 我らは運命の女神アルオイスの騎士!」

 

その言葉と同時に、最後までフードを被っていた人物がローブを脱ぎ捨てる。

そこに居たのは、巫女装束を着たカトレアであった。

アルファモン()はカトレアの背後に立つ。

 

「女神アルオイスは、己が巫女であるカトレアの、『妹を助けて欲しい』という無垢なる願いを聞き届け、我々を遣わされた! 間違っても始祖の名を利用し、己が利益を守らんとする輩の為などでは無い!」

 

「なっ!? 我々聖堂騎士を愚弄するか!?」

 

「ならば、何故護るべき『聖女』を放って我先にと逃げ出した? 逃げる事が悪とは言わん。だが、少なくとも、護るべき者を放って逃げ出すものを『騎士』とは呼ばん」

 

「うっ………!」

 

アルファモン()の言葉に聖堂騎士は黙り込む。

 

「忘れるな! 我らの功績を始祖の名声を高める事に利用する、もしくは女神アルオイスの名を汚すような事があれば、我らの矛先はお前達の方を向くと知れ!!」

 

アルファモン()はエネルギーを溜めた右手を聖堂騎士達に向けて警告する。

その姿を見た聖堂騎士達はすっかり委縮する。

…………まあ、これだけ言っておけば俺達を利用する気など失せるだろう。

カトレアを女神アルオイスの巫女とし、カトレアの願いによって俺達が力を貸した。

こういう筋書きにしておけば、下手にロマリアの威厳を高めることは無いだろう。

別に何一つ嘘は言ってない。

カトレアは、間違いなくアルオイスの巫女だし、カトレアは妹のルイズを助けて欲しいと願っていたし、カトレアが頼むのなら、俺は間違いなく力を貸すし。

カトレアを利用するとはこういう事だ。

まあ、余りいい気はしないが。

この作戦は功を奏し、俺達は女神アルオイスの使いとして認知されるようになる。

 

 

 

 

 

 

余談だが、この1戦が女神アルオイスの奇跡の1つとしてアルオイス教によって後世まで語り継がれることになろうとは、今の俺達には知る由もない。

 

 

 

 

 

 






ゼロ魔クロス第35話です。
いやー、やっぱりデジモンのバトルは燃えるね。
で、バイオデジモンにも遂に究極体が出てきましたが、メルクリモンが素体になっていたとはだれが予想したでしょうか?
自分も最近思いついたネタだったりします。
メルクリモンはギズモンにやられてデジタマまで消滅してましたが、データは回収されていたって事で如何か1つ。
オリュンポス十二神なので並の究極体デジモンよりも強いです。
なので、バイオデジモンとなれば、ロイヤルナイツと同等以上だと思います。
でも、ロイヤルナイツ最強のアルファモンには敵いませんが。
アルファインフォースはやはりチート。
次回は流れで言えばタバサ(シャルロット)に対する謀略とリネン川での決闘だけど、どうなる事やら?
次回もお楽しみに。

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