ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第39話 ありふれた陰謀

 

 

 

 

ガリアとの戦争が終わって暫くした頃。

何時もの様に葵が『神力』を使って美姫のリーヴスラシルのルーンを解除しようとしていた。

すると、

 

「ん~~~~! ここまで来れば多分…………」

 

葵の様子がいつもと違い、少し考える素振りをすると、突然光に包まれて女神化した。

 

「はわっ!?」

 

美姫が驚いた声を上げると、

 

「許された『神力』をギリギリまで使えば…………!」

 

葵が美姫に翳した手に力を込め、一際強い輝きが美姫を包む。

そして、

 

「これ………でっ…………!」

 

翳した手を握りしめ、何かを引き剥がすような仕草で腕を引く。

その瞬間、美姫を包んでいた光が剝がされるように美姫から離れ、空中に留まる。

すると、程なくしてその光は四散するように消え去った。

 

「……………成功したのか?」

 

少しの沈黙の後、俺がそう聞くと、

 

「うん。美姫ちゃんの魂に貼り付いていたルーンは、完全に引き剥がせたよ」

 

人間の姿に戻りながら葵はそう言った。

美姫は服の前の部分を引っ張って、ルーンがあった場所を確認する。

 

「あっ! ルーンが消えてる!」

 

美姫は嬉しそうに叫んだ。

その言葉を聞いて、俺もホッと息を吐く。

流石に注意していたとはいえ、命を削る要因になるルーンが妹の身体に刻まれていたのは、気が気でなかった。

 

「ありがとう。葵………!」

 

俺は感謝の意を込めて葵に礼を述べる。

 

「あはは! お礼なんて要らないよ。美姫ちゃんは、私にとっても大事な義妹だからね!」

 

葵はそう言って笑った。

用が済んだ俺達が部屋を出ると、

 

「あ…………タイシ…………どうだった………?」

 

テファがいつも通り部屋の前で待っていた。

 

「ああ。成功したよ。美姫に刻まれたリーヴスラシルのルーンを剥がすことに成功した」

 

俺がそう言うと、

 

「そっか…………よかったね、ミキ」

 

そう言って美姫に笑い掛けるテファ。

しかし、その笑みは何処か寂し気に見えた。

 

「テファ………?」

 

俺はそんなテファに声を掛けようとして、

 

「…………でも、これでタイシが私を護る理由は無くなったんだよね………」

 

その前にテファが言葉を続けた。

 

「迷惑をかけて、本当にごめんなさい…………!」

 

テファは一度、深く頭を下げると、踵を返して走り去ってしまった。

 

「テファ!?」

 

俺は思わず呼び掛けたが、テファは止まらずに走って行ってしまう。

すると、

 

「…………………何やってるの! お兄ちゃん!」

 

美姫が叱るような口調でそう言って来た。

 

「早くテファを追いかけないと!」

 

「いや………だが…………」

 

何故テファが走り去ったのかは検討が付いている。

だが、今の俺にテファを追う資格があるとは思えなかった。

 

「テファは私の友達なんだからね! 今追いかけなかったら、私は一生お兄ちゃんを許さないよ!」

 

「いや…………それ、何を意味するか解ってるのか?」

 

俺は遠回しにそう聞くと、

 

「そんなの今更でしょ? 4人も5人も変わりないじゃん!」

 

ぷんすかと言わんばかりに腰に手を当てる。

 

「私は、テファに幸せになって欲しいと思ってる。それが出来るのが、偶々お兄ちゃんだったってだけじゃん」

 

「…………俺が言うのも何だが、お前も大概染まって来たなぁ」

 

「お兄ちゃんの影響だよ」

 

「返す言葉も無い」

 

俺は葵や優花、シャルロット、カトレアに視線を向ける。

彼女達の表情も、早く追えと言わんばかりだ。

俺は覚悟を決めて、テファの後を追った。

 

 

 

 

 

 

テファは、使用人たちの部屋があるこの塔の最上階に居た。

最上階は展望室のようで、特に何も無い広間の八方に窓があるだけだ。

テファは、その内の1つの窓の前で佇んでいた。

外を見つめてはいるが、その後姿には儚さを感じさせる。

 

「………………テファ」

 

「ッ!?」

 

俺が声を掛けると、テファはハッとなって振り返る。

 

「タッ、タイシッ………!? ど、どうしたの………!?」

 

テファは俺が居る事に驚いたのか、慌てながら表情を取り繕った。

 

「いや………テファの事が心配になってな……………」

 

俺がそう言うと、テファは顔を俯かせ、

 

「……………私には………タイシに心配してもらうような資格なんて無いから………」

 

ポツリとそう呟いた。

 

「…………資格って何だ?」

 

「えっ?」

 

聞き返した俺の言葉に、テファが声を漏らす。

 

「俺が誰かを心配することに、資格が要るのか?」

 

「だ、だって……私はタイシの大切な妹であるミキを召喚して………リーヴスラシルなんてものにしちゃったから…………沢山迷惑をかけて………」

 

「その事については知っての通り解決しただろ。美姫にも特に後遺症は見当たらない。寿命が縮んだとか、取り返しのつかないことになったのならともかく、何も問題無く解決したんだ。召喚云々に関して思う所はもう無いから安心しろ」

 

俺はそう言う。

 

「タイシ………」

 

テファは俯いていた顔を上げた。

それでもまだその表情には不安が伺える。

 

「少なくとも、俺はテファを嫌ってない………って言うか、寧ろ好意的に見てる。正確も素直で優しいし、容姿も綺麗で巨にゅ………ゴホンッ!」

 

「きょにゅ………?」

 

「な、何でもない………! とにかく、俺がテファを嫌う様な要素は何一つ無いって事だ」

 

余計な事を言い掛けたが、俺は何とかその事をテファに伝える。

 

「……………本当に………?」

 

テファは確認する様に問いかけてきた。

 

「ああ」

 

その問いに即頷く。

 

「本当に………私の事は嫌いじゃない?」

 

「ああ」

 

「私………エルフの血が流れてるんだよ?」

 

「前にも言ったが、俺は異世界の人間だ。ブリミル教にとってエルフが神敵だろうと俺には全く関係の無い事だ。むしろそこはプラス要素だな」

 

「…………ミキとの契約が切れた今でも…………私の事を護ってくれるの?」

 

「……………もちろんだ」

 

その問いには、その意味をしっかりと受け止め、自分の思いを確認した上で返事を返した。

すると、テファは何かを決心したような表情をすると、

 

「タイシ………あのね、聞いて欲しいことがあるの………」

 

俺の目を見つめてそう口を開いた。

 

「………何だ?」

 

何となく予想しつつも、俺はそう返す。

 

「私ね………ずっと考えてたの。タイシとミキに迷惑を掛けた私が、『こんな気持ち』を持っちゃいけないって…………」

 

テファは自分の胸に手を当て、目を伏せた。

 

「でも………そう考えれば考えるほど、『この気持ち』が膨れ上がるのを止められないの………! 胸が痛くなって、切なくなって、どうしようもないの………!」

 

胸に当てた手をギュッと握りしめる。

その状態のまま、再び目を見開いて、俺の目を見つめる。

 

「………タイシ………私は……………」

 

テファがその口から決意の言葉を紡ごうとした瞬間だった。

突然その場の空気が重くなったような重圧に晒され、太陽の光が遮られたかのように部屋の中が陰った。

 

「ッ!?」

 

その瞬間俺は目撃した。

テファの後方にある鏡の向こうに、黄金の鎧を纏った巨鳥―――バイオクロスモンの姿を。

俺が目を見開いた瞬間、バイオクロスモンは右腕を突き出して窓を壁ごと突き破ると、テファの身体を握りしめるように捕らえた。

 

「きゃああああっ!?」

 

突然の事に悲鳴を上げるテファ。

 

「ッ!? テファ!!」

 

俺は拳にデジソウルを宿し、咄嗟にテファを助けようとしたが、俺が床を蹴るより早くバイオクロスモンが腕を塔から引き抜く。

バイオクロスモンは即座に背を向けると、そのまま空に向かって飛び上がった。

 

「テファ!!」

 

俺は即座に破壊された窓に駆け寄るが、既にクロスモンは空の彼方。

 

「くっ!」

 

俺が歯噛みした時、

 

「大士!」

 

「一体どうしたの!?」

 

騒ぎを聞きつけたのか、階下からドルモンや葵達が駆けあがって来た。

 

「バイオクロスモンにテファが攫われた! ドルモン!」

 

俺は簡潔に答えると、ドルモンを呼び、

 

「デジソウルチャージ! オーバードライブ!!」

 

Dアークにデジソウルを叩き込んでドルモンを進化させる。

 

「ドルモン進化!」

 

ドルモンが究極体へと進化し、

 

「ドルゴラモン!!」

 

灰銀の獣竜となる。

ドルゴラモンの大きさでは、塔の屋根を吹っ飛ばすことになったが、些細な問題だ。

アルファモンでは空を飛べないため、一刻を争う今はドルゴラモンを選択した。

俺はドルゴラモンの背に飛び乗り、

 

「ドルゴラモン! バイオクロスモンを追うんだ!!」

 

「わ、わかった!」

 

俺は僅かに見えるバイオクロスモンを指して叫ぶ。

ドルゴラモンは、突然の事に驚いている様だが、すぐに空へと飛び上がった。

 

「ドルゴラモン! 俺に構うな! 全速で追い掛けろ!!」

 

俺はデジソウルを纏いつつそう叫ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

究極体デジモンの速度は凄まじく、辺りの景色が目まぐるしく変わっていく。

ドルゴラモンのスピードはバイオクロスモンよりも速い様で、その差はグングンと縮まっている。

それでもかなりの長距離を飛行しているのだろうが。

すると、火山が連なる山脈が眼下に見えてきた辺りで、バイオクロスモンは降下を始めた。

 

「ッ!?」

 

ドルゴラモンも後を追って降下すると、見覚えのある白い風竜が飛んでいるのが見えた。

ジュリオのアズーロだ。

すると、バイオクロスモンはアズーロの後方で停止、こちらに振り返る。

ドルゴラモンは一定の距離を開けた所で停止した。

テファは負担が掛かったのか、気を失っている様だ。

すると、俺達の後を追って来たのか、オウリュウモンとシャイングレイモンがドルゴラモンの横に並ぶ。

よく見れば、シャイングレイモンの背にはルイズも乗っていた。

マサルに無理言って乗せて来てもらったんだろう。

ジエスモンが居ないのは、優花とハックモンは、残ったメンバーの護衛に回ったんだと予想した。

すると、アズーロの背に乗っていた2人の人物の内の1人が立ち上がる。

それは、当然と言うべきかヴィットーリオだった。

 

「まずは、手荒な招待をした事をお詫びいたします」

 

ヴィットーリオはそう言って頭を下げる。

毎度思うが、こいつは頭を下げて謝罪すれば良いとでも思っているんだろうか?

 

「弁解があるならさっさとしろ。でなければ、このまま『敵』と見なして消し飛ばす……!」

 

別に問答無用で消し飛ばしてもいいんだが、テファが人質同然に取られているので一応話を聞いてやる事にした。

 

「あなた方をこの場に招いたのは、あなた方に見てもらいたい事があるからです」

 

「見てもらいたいもの………ねぇ?」

 

まあ、『大隆起』の事なんだろうが。

 

「………で? その見てもらいたい事の為に、何故テファを攫う様な真似をする必要がある? 女王サマ経由で頼めば良かったんじゃないのか?」

 

その様な話は一度たりとも聞いていないのでそう聞き返すと、

 

「わたくしからの要請では、あなた方は動かないと判断いたしましたので………」

 

ヴィットーリオは即座にそう言い返してくる。

まあ、それはその通りだ。

あれだけ騙すような真似をしておいて、今更頼みを聞いてくれと言われて俺達が受ける訳はない。

 

「まあ、確かにその通りだ。あんたから要請を受けたとしても、俺達は動かなかっただろう…………」

 

俺は一先ずヴィットーリオの言葉を肯定する。

だが、

 

「それでも話を通そうとするのが『誠意』と言うものだ。俺達に何度も要請し、断られても尚、俺達をこの場に連れてきたいが為にテファを攫ったと言うのなら、まだ理解は出来る。納得できるかは別だがな。お前達は勝手に物事を決めつけ、自分達の独り善がりで他者の迷惑を顧みずに、『始祖ブリミル』を言い訳にして自分達を正当化しようとしているようにしか思えないね」

 

「…………………………………………………」

 

ヴィットーリオは一度目を伏せると、すぐに目を開く。

 

「確かにあなた方から見れば、わたくし達がやっている事は、間違っているように見えるのかもしれません。しかし、これから起こることを目撃しても、同じことが言えるでしょうか?」

 

「どういう意味だ!?」

 

マサルが叫ぶ。

すると突然、ゴゴゴと大きな地鳴りのような音が響く。

 

「何? この音………」

 

ルイズが周りを見渡す。

空気を震わせるような音が鳴り響き続ける。

 

「始まりましたね」

 

ヴィットーリオが呟く。

 

「何がだ!?」

 

「『大隆起』ですよ」

 

ヴィットーリオはそう言いながら火竜山脈に目を向けた。

そして、それは起こった。

 

「…………………ッ」

 

「これが…………」

 

俺やオウリュウモンが僅かに声を漏らす。

ルイズやマサルに至っては………

いや、シャイングレイモンですら目を見開いて驚愕している。

それも当然だ。

事前知識がある俺達ですら、驚きを感じているのだから。

何故なら、激しい地鳴りと共に、火竜山脈が空へと浮き上がっていたからだ。

 

「山が………浮いてる」

 

「何だ……これは……」

 

ルイズとマサルが呆然と声を漏らす。

 

「『大隆起』です。徐々に蓄積した『風石』が、周りの地面ごと持ち上がっているのです」

 

ヴィットーリオがそう説明する。

 

「風石が?」

 

「ええ。このハルケギニアの地下には、大量の風石が眠っているのです。平たく言えば、風石とは精霊の力の結晶です。徐々に地中で『精霊の力』の結晶化は進み、数万年に一度、こうやって地面を持ち上げ始めるのです」

 

「持ち上げ〝始める〟?」

 

「そうです。ここだけではありません。今はハルケギニア中に埋まった風石が飽和している状態なのです。いずれハルケギニアの地面の5割は浮き上がり、人の住めない土地となります。そうなったら、残った土地を争う不毛の戦いが始まるでしょう」

 

「なんで黙ってたんですか!?」

 

ルイズが叫ぶ。

 

「頭の固い君たちが僕らの話を素直に信じる訳無いだろう? 現物を見なければ信じる気にもならないだろうさ」

 

その問いに答えたのはアズーロの手綱を持つジュリオだった。

今気付いたが、ジュリオの額にはミョズニトニルンのルーンが輝いている。

 

「それらを食い止めるために、我々は虚無に目覚めたのです。その為に我々は、エルフに奪われし『聖地』を取り戻すのです」

 

「聖地には……何があるんですか?」

 

ルイズが再び問いかけると、

 

「始祖ブリミルが建設した、巨大な魔法装置です。精霊力を打ち消すことが出来るのは、虚無の力のみ。我々は四の四を携え、聖地を奪還する。そして、この地の災厄を祓うのです」

 

「………………」

 

原作通りの言い訳を口にするヴィットーリオに、俺は内心呆れていた。

 

「協力してくれますね?」

 

ヴィットーリオが言った。

本来であれば、全員が沈黙するか、もしくは即決で頷くだろう。

だが、

 

「断る」

 

俺は即断った。

 

「……………今、何と?」

 

流石にこの返事はヴィットーリオも予想して無かったのか聞き返してきた。

 

「断る、と言った」

 

俺は再度同じ答えを返す。

 

「…………理由を窺っても?」

 

ヴィットーリオは平静を装って入るが、動揺しているのが丸わかりだ。

 

「簡単な話だ。お前達は信用できない」

 

俺は理由を口にする。

 

「それは、ハルケギニアの大地が浮き上がる事が信じられない………と言う事でしょうか?」

 

「いいや。『大隆起』の話は信じるさ。実際に目の前で山が浮き上がった訳だしな。俺が信じられないと言っているのは、お前達の自身だ」

 

「…………どういう意味でしょうか?」

 

ヴィットーリオが聞き返してくる。

 

「さっきもルイズが聞いたが、何故『大隆起』の事をずっと黙っていた?」

 

俺はルイズと同じ質問を投げかける。

 

「それはさっき言っただろう? こんな荒唐無稽に聞こえる話、誰が信じるんだ?」

 

ジュリオがそう言ってくる。

 

「ああ。確かに荒唐無稽な話に聞こえるさ。1回2回声を上げた所で、信じる奴なんて極僅かだろう…………」

 

「その通りだ。だから僕達は…………」

 

「ならどうして声を上げ続けなかったんだ?」

 

「えっ…………?」

 

「荒唐無稽な話に聞こえても事実なんだろ? ならば何故信じて貰えるまで声を上げ続けなかったんだ?」

 

「それは………こんな事何度言っても頭のおかしい奴としか思われないだろうから………」

 

「確かにただ叫ぶだけなら頭がおかしいと判断されるだろう。だが、お前達には信じるに足る理由があったんだろう? なら、何故それを世界の有識者や研究者達に公開しなかった? 例え戯言と言われようと、金でも積んで強引にでも証拠を調べさせれば、多少なりとも信じてくれる奴だって出てきたはずだ。そうすれば、もっと別の対抗策だって出てきたかもしれない。それなのに、さっきも言ったが、お前達は勝手に自分達で決めつけ、他者を傷付ける事を、『世界を救う為』という建前の独り善がりで自分達の行いを正当化しているに過ぎない。俺は、そんな奴らを信用する事は出来ない。それに、そこのバイオクロスモンを見るに、お前達は倉田と手を結んだみたいだからな。そんな奴らを信用するなんて無理だな」

 

「おう! その通りだ! どんな理由であれ、倉田なんて碌でもねえ奴と手を結ぶ輩なんざ、間違っても『漢』じゃねえ!!」

 

マサルもそう叫ぶ。

 

「ッ……………では、あなた方はハルケギニアの民がどうなっても良いと?」

 

ヴィットーリオがそう言ってくる。

 

「ハッ………! 最終的にはハルケギニアの人間を盾に取った脅しか?」

 

俺はその言葉を鼻で笑う。

 

「別に目の前で助けを求める奴が居るのなら、助けるのは吝かじゃない。が、少なくともお前のやり方は、多くの他者を容赦なく犠牲にする。そんなやり方に力を貸そうとは思わないだけだ」

 

「………………わ、わたくしたちは……………………」

 

ヴィットーリオが二の句を告げなくなってきた時、

 

「おやおや、その様な若造も言いくるめられないとは、大したことありませんねぇ」

 

別方向から声が響いた。

そちらを見ると、バイオグランクワガーモンの上に立つ倉田の姿があった。

左右には、バイオヴァルキリモンとバイオラフレシモンが護衛の様に浮いている。

 

「倉田!!」

 

マサルが叫んだ。

 

「ドクター・クラタ!?」

 

ヴィットーリオも驚いた声を上げる。

 

「何故あなたがここに居るのです? あなたには兵力の増強を命じていた筈です」

 

ヴィットーリオが倉田にそう言うと、

 

「ああ、その事ですか? すみませんが、その依頼はキャンセルさせていただきます」

 

「ッ!? どういう事です!?」

 

ヴィットーリオが珍しく動揺して叫んだ。

その瞬間、アズーロの後ろに控えていたバイオクロスモンがその場を離れ、倉田の背後に移動した。

 

「何を………!?」

 

「いえ、あなた方の国より研究が捗りそうな所を見つけたので、そちらに移ろうと思いましてね。ですが、その交換条件に『虚無の担い手』、もしくは『使い魔』を1人連れて来ることを条件に出されましてね。丁度いいので彼女を連れて行こうと思った次第ですよ」

 

「ッ! させるか!!」

 

「ドルディーン!!」

 

その言葉に意味に気付いた俺は、即座に合図を出し、ドルゴラモンに攻撃させる。

しかし、予想していたのか、その攻撃は余裕をもって躱されてしまう。

 

「チッ! だが、ここから逃げられる前に倒せば………!」

 

ドルゴラモン、オウリュウモン、シャイングレイモンの3体なら、相手がバイオ究極体デジモンだろうと、逃げられる前に倒せると思っていた。

だが、

 

「それでは、我々は失礼させてもらいましょう」

 

倉田が余裕を持った声色でそう言う。

俺は倉田の余裕な様子を怪訝に思っていたが、懐から取り出した『それ』を見て絶句してしまった。

 

「時空振動爆弾!?」

 

マサルが叫ぶ。

倉田は時空振動爆弾のスイッチを入れると、後方に投げる。

直後に時空振動爆弾は爆発し、その場に空間ゲートを作り出した。

 

「拙い! ドルゴラモン!!」

 

俺は咄嗟にドルゴラモンに呼びかけた。

ドルゴラモンは即座に倉田達に向かう。

だが、4体のバイオデジモンが空間ゲートに消え、俺達も後を追おうとゲートに飛び込もうとした直前、ゲートが閉じてしまう。

 

「しまった………!!」

 

何も無くなった空間を素通りするだけに終わった俺は、みすみすとテファを攫われてしまった自分を呪った。

 

「くそっ! 肝心の時空振動爆弾の存在を忘れてるなんて!!」

 

いくら悔やんでも悔やみきれない。

 

「くそ………くそっ………! テファ…………テファーーーーーーーーーッ!!!」

 

俺は届かない声を上げる事しか出来なかった。

 

 

 

 

 






ゼロ魔クロス第39話です。
1週間経っても、まだ少し首が痛いです。
でも、かなりマシになって来たので執筆出来ました。
さて、やっぱり才人が居ないと起きないイベントばっかりなので相当すっ飛ばしました。
でもって美姫のルーンが解呪出来た直後にティファニア攫われました。
ロマリアマジ噛ませ犬。
倉田の暗躍は続く。
にしても、今回は大士以外が空気。
さて、次回は……………?
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