ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第41話 ありふれた合流

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

大士がティファニアに召喚されてから数日後。

葵達は、オストラント号で西に向かっていた。

ただ大士の所へ行くだけなら究極体に進化して向かえば1日どころか1時間と掛からずに辿り着けるわけだが、葵達はティファニアに配慮してゆっくり向かう事にしたのだ。

あと、大士から聞いた話では、『聖地』には地球とハルケギニアの間を空間ゲートで繋ぎやすくなっているそうなので、優花が持つ〝空間魔法〟で干渉できないかを試すためでもある。

運が良ければ戻れるだろうという目算だ。

因みにこれは最近思いついた事であり、大士はこれに気付いた時には思わず項垂れていた。

それと『原作』のクライマックスが近いらしいので、ロマリアが如何出るかの最終判断のため、ルイズの他にも、ヴィットーリオとジュリオ、シャルロット女王を名乗るジョゼット、アンリエッタ、ウェールズも同行させている。

実際の所、ロマリアを『敵』認定する事も考えた………というか、敵認定する寸前まで行ったのだが、最終判断を下す前に大士が召喚されたので保留となっている。

それで、隠れた所で暗躍されるよりも、目の届く範囲で監視する方が楽だという理由で、葵達はヴィットーリオを同行させる事にした。

まあ、所謂最後の慈悲と言うべきか。

その慈悲を如何受けるかはヴィットーリオ次第だが。

そんなメンバーを乗せながら、オストラント号は東へ向かって飛んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

まだ日の昇らない早朝。

空が白んできた砂漠を、魔力駆動四輪で俺は走り続けていた。

 

「空が白んできたか…………」

 

俺はフロントガラス越しに空を見上げながらそう呟く。

 

「そろそろテントを立てる場所を探すか……」

 

「う、うん………そうだね………」

 

俺の呟きに、助手席に座っているテファがそう答える。

だが、その表情は、頬を赤くして恥ずかしそうにしつつも、何処か嬉しそうな、何かを期待する表情だ。

ルクシャナのオアシスを出て数日。

テントで休む度に身体を重ねているわけだが、正直俺は、テファは余りそういうことは好きじゃないと思っていた。

テファは世間知らずな点もあるが、恋に恋するお年頃だと勝手に思っていたので、最初こそ勢いで抱いてしまったが、テファが気が進まないのなら、これ以上無理に手を出すつもりはなかった。

しかし、それは全くの思い違いだった。

最初こそ恥ずかしがっては居たが、一度吹っ切れてしまえば、後はもう………凄かった。

寧ろ積極的とも言える位だ。

因みにだが、初めてキスした時に契約が完了してしまったらしく、俺の胸にはリーヴスラシルのルーンが浮かび上がっている。

 

 

閑話休題(それはともかく)

 

 

予定通り今日の寝床を探そうと、スピードを緩めようと思った時、

 

「ッ!?」

 

突然ゾクッと悪寒が奔った。

 

「くっ!」

 

俺は、反射的にハンドルを切る。

 

「きゃっ!?」

 

急ハンドルを切ったため、テファが振り回されそうになって軽く悲鳴を上げる。

その瞬間、魔力駆動四輪のすぐ横の地面の砂が、衝撃波によって巻き上げられた。

 

「チッ! 追手か!?」

 

俺は窓から後ろを確認する。

そこには、コウモリを思わせる形をしたデジモンであった。

 

「あれは確か………ピピスモンだったか? 顔が赤いからバイオデジモンか!」

 

俺が呟くと、バイオピピスモンは口を開き、

 

「クレイジーソニック!!」

 

口から音波による衝撃波を放った。

 

「掴まってろ!!」

 

俺は再びハンドルを思いきり切る。

魔力駆動四輪が方向を変えた直後に、方向転換前の直線状の地面の砂が巻き上がった。

 

「くっ! 何とかして撒かないと………!」

 

とは言え、デジモン相手に魔力による隠蔽は効果が無いことは分かっている。

危険だが、殴って気絶させてから逃げた方がいいかと思っていた時、

 

「ッ!?」

 

バックミラーに、更に2体の影が見えてきた。

1体はフクロウの様なデジモン。

そして、もう1体は、カードスラッシュでも使った事のある昆虫型デジモン。

バイオデジモンになったアウルモンとサーチモンであった。

 

「ッ!? ここにきて索敵が得意なサーチモンか!」

 

これで撒ける可能性はほぼゼロ。

逃げ切るには、バイオサーチモンだけは確実に倒さなければならない。

つーか倉田の奴、いったいどれだけの戦力を用意しやがったんだ?

俺は再びハンドルを思いきり切って、魔力駆動四輪の正面をバイオサーチモンに向けた。

そして、運転席の天井に5個ほど取り付けられているトグル式の切り替えスイッチをすべて切り替える。

すると、ボンネット部分が開き、レール砲が展開した。

因みに、何故態々トグル式の切り替えスイッチを5個も切り替えなきゃならないのかと、かつてハジメにツッコんだが、そこは「カッコいいからだ!」という何とも予想通りな答えが返って来た。

 

「これでも喰らえっ!」

 

俺はそう叫びながら、ハンドルの中央………本来ならクラクションを鳴らすためのスイッチを勢い良く押すと、レール砲が電撃を帯び、電磁加速された弾丸が発射された。

 

「ッ!?」

 

バイオサーチモンは、反撃が来るとは思ってなかったのか、戸惑ったような反応を見せ、避ける間もなくレール砲が直撃する。

だが、ガァンとけたたましい音を上げてバイオサーチモンをグラつかせるが、弾丸そのものはバイオサーチモンの装甲に弾かれて明後日の方向へ飛んでいった。

 

「チッ! やっぱりバイオデジモンなだけあって強化されてやがる! 普通のアーマー体なら結構効いてるはずなのによ!」

 

俺は思わず愚痴る。

だが、反撃が来たのが意外だったのか、他の2体もこちらを警戒する様な動きに変わり、迂闊に手を出してこなくなった。

 

「テファ、今のうちに外に出て砂丘の影に隠れるんだ」

 

「タイシ……!? でも………」

 

「安心しろ。俺も死ぬ気は無い。だが、このままでは逃げ切るのは不可能だ。なら、戦うしかない!」

 

「タイシ………うん、気を付けて!」

 

テファは一瞬心配そうな表情をするが、逃げ切れないことはテファも分かっているのか、すぐに頷いて魔力駆動四輪から降りる。

俺もすぐに降りて、魔力駆動四輪を宝物庫にしまうと、バイオデジモン達に向き直った。

車を降りてきた俺に怪訝な視線を向けつつも、

 

「ふん、どうやら観念したようだな」

 

バイオアウルモンが偉そうな口調でそういう。

 

「どうした? 命乞いか? 無駄な事だ。我ら『鉄血団結党』は、貴様ら悪魔の末裔を1人たりとも逃しはしない!」

 

バイオピピスモンの言葉でこのバイオデジモン達は、エルフであることが伺える。

つーか、『鉄血団結党』がよく倉田の実験に協力したな?

まあ力を見せつけられて、その力に誘惑されたっていうのが一番の可能性か?

 

「やはり生かして捕らえておくなどと言う生易しい処遇では足りん! 悪魔の末裔は皆殺しだ!」

 

自分達を高位な存在と言ってる割に、平気で皆殺しとか言ってる時点で、こいつらが崇高な存在とは思えんのだがね。

 

「まずは貴様からだ! 死ね!」

 

バイオアウルモンが、足の爪を光らせて空中から襲い掛かってくる。

その瞬間、俺はデジソウルを爆発させ、地面を蹴って跳躍しようとした。

だが、足場が砂地の為、上手く跳ぶことが出来ず、飛距離を出すことが出来なかった。

その結果、バイオアウルモンの爪は躱すことが出来たが、飛び越えることは出来ず、アウルモンの頭突きを受ける羽目になった。

 

「うぐっ!?」

 

俺はバイオアウルモンの頭に引っかかる状態になる。

 

「ぬおっ!?」

 

ただ、バイオアウルモンにとってもそれは予想外で、驚いた声を漏らす。

俺は咄嗟に気を取り直し、右手を手刀の状態で構えるとデジソウルを集中。

一気に振り下ろす。

 

「がっ!?」

 

手刀をバイオアウルモンの脳天に叩き込み、バイオアウルモンを叩き落す。

バイオアウルモンは砂地に叩き落され、半ば埋まる状態になったが、俺は重力に引かれてそのままバイオアウルモンの上に着地する。

そして、バイオデジモンがあんな不安定な状態の手刀一発で倒せるとも思っていない。

故に、俺は両の拳にデジソウルを集中させ、

 

「オラオラオラオラァッ!!!」

 

足元のバイオアウルモンに向かって連続で拳を繰り出し続ける。

 

「うぎゃっ!? あごっ!? やめっ!? ぎゃあぁぁぁぁっ!?!?」

 

砂地が巨大なクレーターになるまで拳を叩き込み続けた俺は、静かになった事を確認して殴るのを止める。

バイオアウルモンは、ピクピクと痙攣してから光に包まれ、元のエルフの男の姿へと戻る。

その本人も気絶しているが。

 

「「………………………!?」」

 

その様子を見て戦慄を覚えたのか、バイオサーチモンとバイオピピスモンがたじろぐ様な反応を見せた。

 

「どうした? 来ないのか?」

 

俺は煽るような口調でそう言う。

だが、正直そこまでの余裕はない。

今のバイオピピスモンは、手に入れたバイオデジモンの力を過信して近寄って来てくれたから如何にかなったが、近付かずに遠距離攻撃を連射されれば、俺に打つ手はない。

とりあえず、余裕の振りでハッタリをかましているが、不利と悟って撤退して貰えるのが一番ありがたい。

 

「「………………………………」」

 

バイオサーチモンと、バイオピピスモンが顔を見合わせてどうするか迷っていると、突然2体の後方の砂丘が爆発するように吹っ飛んだ。

 

「「「ッ!?」」」

 

俺も含めて同時に驚愕すると、

 

「何を手古摺っている? お前達………!」

 

そこには、金色の鎧の様な装甲を纏った、サイのようなデジモンがいた。

 

「あれはライノモン!? いや、顔が赤いからバイオライノモンか!」

 

俺はそう推測すると、

 

「「同志エスマーイル!」」

 

2体のバイオデジモンが同時に叫ぶ。

今言った名前って、『鉄血団結党』の代表格だったか?

 

「蛮人と混ざりもの如きに手間取りおって………! まあいい、この私自ら叩き潰してくれる!」

 

エルフの過激派とも言える『鉄血団結党』の代表なだけあって、人間に対する嫌悪感は一押しの様だ。

だが、それ故に容赦が無い。

 

「アトミックバースト!!」

 

装甲の各所に埋め込まれた宝玉から光を放ち、バリアの様に身体を包むと、こちらに向かって突進してくる。

 

「チッ!」

 

俺は右の拳にデジソウルを集中。

突進を迎え撃つために拳を繰り出す。

光を纏った体当たりと、デジソウルの拳がぶつかり合う。

衝撃が巻き起こり、砂を大量に巻き上げた。

だが、

 

「くっ………!?」

 

足元が砂地の為に上手く踏ん張りが効かず、拳に力が完全に伝わらなかった。

 

「うわっ!?」

 

突進を止める事には成功したが、衝突の反動に耐えきれずに俺は吹き飛ばされ、何度かバウンドして砂の上に倒れる。

 

「タイシ!?」

 

それを見て我慢できなかったのか、テファが心配そうに駆け寄ってきた。

 

「大丈夫?」

 

テファは倒れた俺を抱き起こす。

 

「ああ………」

 

身体の所々は痛むが、動けない程じゃない。

俺は自分の足で立ち上がる。

だが、ライノモンは奇跡のデジメンタルで進化したアーマー体。

ロイヤルナイツであるマグナモンほどでは無いにしろ、奇跡のデジメンタルで進化したデジモンは、普通のアーマー体よりも強力なものが多い。

俺がそう考えていると、俺達の後方の地面が爆発するように噴き上がった。

 

「何だ!?」

 

俺が思わず振り返ると、そこには、黄色い甲殻を持ち、両手と鼻先に合計5本のドリルを装備した昆虫型デジモンである、ディグモンが現れた。

性格にはバイオディグモンだろうが………

地中を移動して来て俺達の後ろに回り込んだんだろう。

 

「逃がさんぞ! 悪魔の末裔め!」

 

声からして、女のエルフの様だ。

 

「同志ファーティマ。決して蛮人と悪魔を逃がしてはならんぞ」

 

「ハッ! 同志エスマーイル!」

 

ファーティマと呼ばれたバイオディグモンは、バイオライノモンの言葉に軍人口調で答える。

バイオディグモンがこちらを向いて目を光らせると、

 

「ゴールドラッシュ!!」

 

両手と鼻先のドリルを一斉に射出してきた。

 

「テファ! 掴まれ!!」

 

俺は咄嗟にテファを抱き上げると、その場を跳んで射出されたドリルを躱す。

だが、

 

「終わりだ! 蛮人! アトミックバースト!!」

 

着地地点を狙ってバイオライノモンが光を纏って突っ込んでくる。

 

「ぐっ……! 逃げきれない……!」

 

俺はそう判断すると、デジソウルを全開にして自分とテファを包み込む。

 

「相手の力は究極体に近い……! 耐えられるか………!?」

 

最低でも骨の何本かは覚悟しながら、俺はテファを護ろうと抱きしめる。

 

「タイシ………!」

 

「心配するな、必ず護る……!」

 

その想いを糧に、俺はデジソウルを強く輝かせた。

俺の足が地面に着地する。

そして、その一瞬後にバイオライノモンが突っ込んでくる………………!

その瞬間に備えてテファを抱きしめながら、自分の背をバイオライノモンの方に向けて、俺は全身に力を込める。

そして…………………………

 

―――ドゴォォォォォォォォォン!!

 

凄まじい衝撃が響いた。

 

「………………………?」

 

だが、俺の身体に直接衝撃が来たわけでは無い。

空気を震わせるような音が響いたが、俺の身体は撥ね飛ばされていたりはしなかった。

 

「…………なんだ?」

 

俺は怪訝に思いつつも、目を開いて後ろを振り返ると、

 

「ッ………これは!」

 

俺は目を見開く。

そこには、火の玉の様な存在が3方向に点在し、それらを起点に三角形の結界を作り出し、バイオライノモンの突進を受け止めていたからだ。

そして、その火の玉の様な存在とは、

 

「アト! ルネ! ポル! という事は………!」

 

俺は思わず天を見上げる。

丁度日が昇り、朝日と共に舞い降りるのは、赤いマントを翻した剣の聖騎士。

 

「ジエスモン!! 優花……!」

 

ジエスモンが俺達の前に降り立つ。

 

「な、何者だ……!?」

 

バイオライノモンが結界に突進を止められつつも問いかける。

 

「…………………………」

 

だが、ジエスモンはその問いに答えることは無く、結界を消すと同時にその長い尾の先にある刃で打ち据えた。

 

「ぐはぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

装甲に大きな傷を付け、派手に吹っ飛んでいくバイオライノモン。

 

「同志エスマーイル!? おのれ………!」

 

バイオディグモンがドリルを回転させながらジエスモンに向かって行くが、

 

「…………………」

 

ジエスモンはバイオディグモンを一瞥すらしなかった。

何故なら、

 

「永世竜王刃!!」

 

空中から巨大な斬撃が飛んできて、バイオディグモンを切り裂いたからだ。

 

「ぐぁああああああああああああっ!?!?」

 

バイオディグモンは悲鳴を上げると、光に包まれ、デジタマと金髪のエルフの少女に分離し、少女は気を失っているのかそのまま砂地の上に倒れた。

俺が再び空を見上げると、鎧を纏った武者龍が悠然と宙を泳いでいた。

 

「オウリュウモン!」

 

オウリュウモンは俺達の傍までやってくると、俺達を囲うようにとぐろを巻き、バイオライノモン達に向かって大刀を構えた。

 

「ど、同志エスマーイル………!」

 

バイオピピスモンと、バイオサーチモンが、バイオライノモンへと指示を仰ごうと視線を向ける。

 

「ぐぐぐ…………撤退だ………!」

 

苦虫を嚙みつぶしたような声で、バイオライノモンは言う。

 

「同志ファーティマはどうしますか?」

 

バイオディグモンだった少女は、俺達を挟んで反対側の位置にいる。

 

「放っておけ。所詮裏切者の一族の出身。結局使い物にならん役立たずだ」

 

バイオライノモンがそう言うと、背を向けて走り出す。

残った2体は顔を見合わせるが、先程俺が気絶させたエルフを拾うと、飛び去って行った。

 

「薄情な奴だな………」

 

俺は呆れた声を漏らす。

すると、

 

『大士! 怪我は無い?』

 

ジエスモンの中の優花が問いかけてくる。

 

「ああ。優花のお陰で助かったよ。ありがとう」

 

『無事でよかったわ………それよりも、ティファニアの所に向かうのはいいけど、せめてドルモンは連れて行きなさいよ! 万が一の事があったらどうするの!!』

 

「う………すまん………」

 

実際ピンチだったので、何も反論ができない。

 

『でも、そのお陰でティファニアとの関係は進展したみたいだけどね』

 

オウリュウモンと同化している葵が、俺とテファの様子を見ながらそう零した。

 

「ッ……! そ、それは…………」

 

テファが図星を突かれて、顔を赤くしながらモジモジしたと思うと、

 

「え、えっと………ごめんなさい!」

 

突然ジエスモンとオウリュウモンに向かって頭を下げた。

 

『どうして謝るの?』

 

葵がそう聞くと、

 

「その………私も、タイシを好きになっちゃったから…………」

 

テファのその言葉を聞くと、

 

『それは別に謝る事じゃないよ』

 

『それに、大士を好きになることは、ある意味当然の事だし』

 

「えっ………?」

 

2人の言葉に、テファは驚いて声を漏らす。

 

『って言うか、本来なら大士に大なり小なり惚れなきゃ女としておかしいのよ』

 

いや、優花。

それは言い過ぎ。

優花は俺の『女性に好かれない因果』の綻びが少ない時に俺に惚れた所為か、好感度が限界を突破し過ぎている。

俺としてはそこまで好いてくれるのは嬉しいんだが、その所為で俺に対する好意に関しては、若干ポンコツっぽい所が偶に入る。

その時、俺達に影が掛かり、見上げればオストラント号が大分低い高度まで降りて来ていた。

 

「オストラント号………」

 

その甲板にはドルモンにシャルロット、カトレア、美姫。

他にはマサルやルイズ達の姿も見える。

 

「随分な大所帯で来たんだな?」

 

俺はそう呟く。

とりあえず、詳しい話はオストラント号で聞こうと思ったその時、バサッバサッと竜の羽音が聞こえてきた。

その音がする方に目を向ければ、2匹の竜がこちらに向かってきていた。

 

「新手か?」

 

ジエスモンがそう呟きながら、刃を構えるが、

 

「ああーーーーーーっ!! 居た居た! 私よ私!」

 

竜の背には、それぞれ2人ずつ乗っており、その片方の竜に乗っている1人が声を上げながら手を振っていた。

そしてそれは、俺にも見覚えのある人物だ。

 

「ルクシャナ!?」

 

それは、俺達を逃がしてくれたエルフの女性であるルクシャナ。

ルクシャナの乗る竜の手綱を握るのはエルフの男性だ。

そしてもう片方の竜には、これまた見覚えのあるエルフの男性のビダーシャル。

そして、ビダーシャルの後ろに乗る年老いたエルフの男だった。

 

「待て、ジエスモン。彼女は俺達の脱出を手引きしてくれたエルフだ。一先ず話を聞くぐらいはしてやりたい」

 

警戒するジエスモンにそう声を掛け、警戒を解かせる。

進化も解くように促し、ジエスモンとオウリュウモンはそれぞれ退化し、優花とハックモン、葵とリュウダモンに分離した。

竜が俺達の近くに着陸すると、

 

「どうやら無事だったみたいね!」

 

ルクシャナがフレンドリーに声を掛けてくる。

 

「ルクシャナさん!」

 

テファが驚いたように彼女の名を呼ぶ。

 

「お前、どうしてここに?」

 

「用があるのは私じゃなくて叔父様達よ。私は面白そうだから付いてきただけ」

 

何とも自由なエルフだな。

すると、ビダーシャルが老エルフと共に俺達の前に歩いてくると、

 

「お久しぶりです。大いなる御方………」

 

ビダーシャルが葵の前に跪いた。

 

「ビッ、ビダーシャル卿!?」

 

「叔父様!?」

 

エルフの男性とルクシャナが驚愕の声を上げた。

 

「あ~~………あはは………」

 

葵はどういう反応をしていいか分からず苦笑している。

すると、ビダーシャルの後ろにいた老エルフが歩み寄り、

 

「ビダーシャル殿、その娘っ子が『そう』なのかの?」

 

「はい、統領閣下」

 

「ふぅむ………ただの蛮人の娘っ子にしか見えんが……………それはともかく、もう1人の娘っ子よ、その威圧を引っ込めてくれんかの? この老骨にその威圧はちときついんじゃが…………?」

 

老エルフは優花へ視線を向ける。

 

「まあ、ついさっきまで『鉄血団結党』だったか? そのエルフの一味に襲われてたんで、エルフを警戒するのは当然だと思うが?」

 

「あ~、儂はエスマーイルの様な強硬派では無く、どちらかと言えば穏健派に属しておる。じゃから、安心せいとまでは言わんが、警戒はせんでいい」

 

「…………優花」

 

俺が呼びかけると、優花が〝威圧〟を解除する。

 

「助かるわい」

 

老エルフは一言礼を言う。

 

「って、それよりも! ビダーシャル卿! どうして蛮人の娘などに頭を下げるのですか!?」

 

エルフの青年がビダーシャルに叫ぶ。

 

「口を慎めアリィー。この御方は唯の蛮人などではない」

 

ビダーシャルはアリィーと呼んだエルフの青年を諫めるようにそう言った。

ビダーシャルは再び葵に向き直ると、

 

「大いなる御方。今一度、あの御姿を見せていただきたく存じます」

 

ビダーシャルの言葉に、葵が如何しよう?と視線を向けてくる。

俺は肩を竦めつつも、そうした方が話が早そうだと思い、頷いた。

葵は光に包まれ、女神アルオイスの姿となる。

 

「『これで宜しいですか?』」

 

アルオイスとなった葵がそう聞き返すと、

 

「おお………なんと…………!」

 

老エルフが打ち震えた様子で声を漏らし、その場に跪く。

更に、

 

「な……な………な………!?」

 

アリィーは『神』の存在感に中てられたのか、口を開いたまま固まり、

 

「ちょっ…………!?」

 

ルクシャナも絶句している。

 

「お前達、頭が高いぞ」

 

ビダーシャルの言葉に、2人は即座に跪いた。

 

「も、申し訳ありません………!」

 

「何て存在と一緒に居るのよ………あなた達………!」

 

平服しながら震える声を漏らす。

 

「『…………面を上げてください。私は今は人間に転生している身………そのような態度は不要です』」

 

アルオイスはそう言うと、人間の姿に戻り、

 

「そう言う訳だから、普通に話してね」

 

元の口調でそう言った。

すると、ビダーシャルが立ち上がり、

 

「感謝します」

 

そう口にした。

 

「それで? 俺達に会いに来た理由は何だ?」

 

俺がそう聞くと、老エルフが立ち上がり、

 

「お初にお目にかかる。儂は、テュリューク。ネフテス………エルフの国の統領じゃ」

 

老エルフ――テュリュークはそう名乗る。

 

「儂がここに来た理由じゃが、1つはビダーシャル殿の『大いなる意志の上に立つ御方』という言葉が真実か確かめる事じゃ。まあ、こちらはたった今身を以って実感したわい」

 

葵に目を向けながら呟く。

 

「そして、その『大いなる意志の上に立つ御方』の言葉に従い、『人間もエルフも平等な1つの命』という考えを蛮人………いや、人間と呼ぼうかの………人間の方にもその考えを受け入れる意思があるかどうかの確かめるためじゃよ。まあ、ビダーシャル殿は評議会において、その考えを述べた結果、他の評議会議員………特に『鉄血団結党』の連中からつるし上げを喰らっておるがの」

 

「私の考えは、変えるつもりはありません」

 

「その様じゃの。まあ、その言葉が正しいとたった今証明されたわけじゃが」

 

穏健派と言うだけあって、人間とエルフが平等という考えに、余り嫌悪感を示していない様だ。

 

「そういうことなら丁度いいわ。今、オストラント号には各国の首脳陣が揃ってるから」

 

優花が空のオストラント号を指差しながらそう言う。

って言うかいるのかよ!?

 

「和平の使者っていうのなら、別に突っぱねる理由は無い。ただ、ハルケギニアの人間にとって、エルフは恐怖の対象だから変な目で見られることは覚悟しといてくれ。まあ、エルフも人間を蛮人と見下してるからお相子だと思うが」

 

俺は皮肉交じりにそう言っておく。

 

「一先ずオストラント号に移ろう。日も昇って来たから暑くなってきた」

 

砂漠は昼と夜の気温差が激しいから、日が昇っただけでどんどんと気温が上昇していく。

それぞれの方法でオストラント号に乗り移ろうとした時、テファがバイオディグモンだった倒れているエルフの少女に目をやった。

 

「…………ねえ大士。彼女も助けてあげて………」

 

「こっちの命を狙ってきた相手だぞ?」

 

「わかってる………だけど、このまま放っておいたら死んでしまうわ……!」

 

まあ、テファは優しいからこう言い出すのは承知の上だ。

俺自身はあまり気が進まないが、テファが望むのなら話は別。

俺が頷こうとした時、

 

「…………ハーフエルフの娘。シャジャルと言う名に聞き覚えは無いか?」

 

ビダーシャルがテファにそう問いかけた。

 

「ッ!? どうして母の名を!?」

 

テファが驚きながら聞き返す。

 

「なるほど………やはりか…………」

 

すると、ビダーシャルが倒れているエルフの少女に目を向け、

 

「彼女の名はファーティマ。シャジャルの一族であり、裏切者の一族としてエルフ全体から疎まれてきた者だ」

 

その言葉にテファが青褪める。

 

「母の………一族…………!? 裏切り………?」

 

「選民意識の高いエルフにとって、蛮人と見下していた人間と情を交わしたテファの母親は、エルフにとって裏切者と言う訳か…………」

 

俺はそう呟くと、ビダーシャルは頷く。

 

「くだらない考え方だ」

 

俺はそう吐き捨てた。

それから青褪めるテファを抱き寄せ、

 

「テファ。お前は彼女や彼女の一族に対して罪悪感を感じているかもしれないが、それはお門違いだ。確かにテファの母親が父親と情を交わしたことが迫害の切っ掛けになったのかもしれない。だが、彼女を迫害したのはエルフ達であり、その事でテファやテファの母親を責める謂れは全く無い!」

 

俺はそう言い切る。

 

「タイシ………」

 

「とは言うが、肝心の彼女自身は、テファの母親やテファに対して憎しみを抱いているだろう。それでも彼女を助けたいのか?」

 

俺は再度問いかけると、

 

「…………うん、彼女を助けて。それで、ちゃんと話し合いたい!」

 

テファは迷いなくそう言った。

 

「…………ふう、わかった。だが、話し合う時には同席させてもらうぞ。目が覚めた瞬間にテファを殺しにかかる可能性だってあるしな」

 

「うん………わかった………」

 

テファは頷く。

結局はファーティマも連れて行くことになり、俺達はオストラント号を見上げるのだった。

 

 

 







ゼロ魔クロス第41話です。
ちょいと色々強引過ぎた気がしないでもない。
テファとファーティマの話は入れといたほうがいいかなと思いましたので、ここで突っ込みました。
そしてビダーシャルはアルオイス様の僕化が進行。
エルフ3名も引きずり込みました。
こっからクライマックスまで強引と思われる展開が続くかもしれませんがご容赦ください。
では、次も頑張ります。


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