ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

137 / 298
第42話 ありふれた真意

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

大士が皆と合流した頃、エルフの間で『竜の巣』と呼ばれている沈んだ火山島の上空に、バイオグランクワガーモンが飛んでいた。

その隣には、コンテナを抱えたバイオクロスモンが居る。

バイオグランクワガーモンの背には倉田とワルド。

更に2人の人影が見える。

倉田は手に持ったノートパソコンを操作しながら画面を見つめていた。

そして、

 

「ふうむ………やはりここが『力』が集約している場所ですね………」

 

倉田がそう呟く。

 

「………このエネルギー量………これだけあれば………フフフ………」

 

倉田は小さく、怪しい笑みを浮かべる。

 

「さあ皆さん! 予定通り作業に入りますよ!」

 

倉田がそう言うと、グランクワガーモンとバイオクロスモンは高度を下げ始める。

バイオクロスモンの抱えるコンテナの中には、あらゆる機材の他に、怪しい輝きを放つ、

1個のデジタマがあった。

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

 

4人のエルフを連れてオストラント号の甲板に降り立つと、やはり大騒ぎになった。

動じて無いのは、ドルモン、美姫、マサル、アグモンの異世界組と、シャルロット、カトレアの俺の嫁達ぐらいか?

シャルロットはエルフが相手でも勝てる実力はあるし、カトレアに関しては、後で聞いた話だが、

 

『旦那様が連れてきた方が危険な筈ありません』

 

と、信頼MAXなお言葉を頂いた。

一通り驚いた後、テュリュークはヴィットーリオと対面した。

当然だが、俺達や女王サマ、ウェールズ達も同席している。

 

「そなたがロマリアの教皇殿か?」

 

「はい、わたくしがロマリア教皇、聖エイジス三十二世です。エルフの客人よ」

 

こんな状況でも平静を装うヴィットーリオ。

 

「お初にお目にかかりますな。儂はエルフの統領、テュリュークと申す者」

 

それに対し、礼儀正しく挨拶するテュリューク。

 

「エルフの統領殿が、何故私達のもとに?」

 

「和平交渉の為じゃ」

 

その問いに対して一言で答えるテュリューク。

 

「和平交渉………」

 

ヴィットーリオは考え込むように呟く。

 

「『大いなる意志の更に上に立つ御方』に諭されたのじゃよ。人間もエルフも、『あの御方』の前では上も下も無い『平等な命』なのだとな。とは言え、今までいがみ合って来た我々がはいそうですかと手を取り合えるとは思っておらん。じゃから、人間達に我々エルフと和平を結ぶ意思があるかどうかを確かめに来たのじゃ。それにもし戦争になったとしても、我々が勝つとは思うが、そちらも『悪魔の業』を使う。エルフにも多くの血が流れるじゃろう。それは儂の望む所では無い」

 

テュリュークの言葉を聞くと、

 

「なるほど、あなたのお考えは分かりました、エルフの統領殿。無駄な血を流したくないというのは、わたくしも同じ考えです」

 

「聖下、では………!」

 

ルイズが期待に満ちた表情で顔を上げる。

 

「ですが、和平には1つ、条件があります」

 

「ふむ、条件とは?」

 

「あなたがたの『聖地』を、一時的にせよ、明け渡してもらわねばなりません。それが叶わぬとなれば、我々はどの様な犠牲を払ってでも、聖戦を続けるでしょう」

 

自分の言い分を、さもハルケギニアの人間全体の意見とでも言うようにヴィットーリオは言う。

 

「エルフが6000年間守り続けてきた、『悪魔(シャイターン)の門』を、明け渡せと?」

 

「そう、それだけが必要不可欠な条件です」

 

「……………………」

 

テュリュークはヴィットーリオの目をじっと見据える。

真意を探ろうとしているのだろう。

長い沈黙の後、

 

「………ひとつ、お尋ねしても宜しいかな?」

 

「どうぞ」

 

漸く出てきたテュリュークの言葉に、ヴィットーリオは先を促す。

 

「お前達の目的は、エルフの住まう『砂漠《サハラ》』では無いのだな?」

 

その言葉にヴィットーリオは即座に頷く。

 

「我々の目的はあくまで………『聖地』の向こうにあるものです」

 

「ふむ、『聖地』の向こう、か………」

 

テュリュークは顎髭を撫でながら考え込む。

 

「それはどういう意味かのう?」

 

テュリュークがそう問うと、ヴィットーリオは立ち上がり、

 

「あなた方に、是非見て貰いたいものがあります」

 

視線をエルフの4人。

そして、俺に移しながらそう言った。

すると、ジュリオが古びた円鏡を持ってくる。

 

「これは『始祖の円鏡』、始祖ブリミルの残せし秘宝の1つです」

 

「始祖の秘宝………『担い手』に悪魔の業を齎すという、マジックアイテムか」

 

その言葉に、ビダーシャルが目を細める。

 

「その通りです。しかし、この円鏡は『虚無』を授けるだけではなく………常に始祖と共に在り、その存在を記録し続けてきたものなのです」

 

ヴィットーリオが『記録(リコード)』の呪文を唱え始めると、円鏡が淡い光に包まれる。

 

「あなた方は、『聖地』の本当の正体をご存知ですか?」

 

ヴィットーリオが問いかける。

 

「何も知らぬ、というのが正直な所じゃ。ただ、6000年前にあの地に現れた悪魔が『大災厄』を引き起こし、エルフの半数が犠牲になったと伝え聞いておる。それ故に、我々はあの場所を『悪魔(シャイターン)の門』と呼んでおるのじゃよ」

 

「では、今ここに6000年の真実をお目に掛けましょう」

 

「何?」

 

ヴィットーリオの言葉に、テュリュークが怪訝な声を漏らした瞬間、俺達の脳裏に見知らぬ景色が映し出された。

荒れ果てた大地に立つ、小柄な金髪の男と、すらりとした容姿のエルフの女だった。

 

「これは………」

 

同じ映像を見ていると思われるテュリュークが呟くと、

 

「始祖ブリミルと初代ガンダールヴのサーシャ、あなた方エルフが『英雄アヌビス』と呼ぶ存在です」

 

「ガンダールヴが、エルフの英雄アヌビス………?」

 

ビダーシャルが意外そうに呟く。

そういや、この世界じゃガンダールヴは現れて無いから、ビダーシャルにも『ガンダールヴ=アヌビス』という構図を予想することが出来なかったか。

 

「しかし、ガンダールヴとアヌビスが同一の存在であるとすれば、矛盾が生じる。エルフの伝承には、アヌビスは悪魔を殺したとあるが」

 

「いえ、その伝承は正しいのです」

 

「まさか、『悪魔の守り手(ガンダールヴ)』が、お前達の神を殺したというのか?」

 

ビダーシャルの答えに、ヴィットーリオは沈黙する。

それは肯定の意だ。

脳裏に映し出された映像の中で、ブリミルとサーシャは共に戦っていた。

『ヴァリヤーグ』と呼ばれる、金属の武具で武装した者達だった。

月日が経ち、ブリミルの軍勢は仲間を増やしていく。

その中にはハルケギニアの人間も、エルフもいた。

その映像の中では、エルフとハルケギニアの人間は、うまく共存しているように見えた。

だが、突如として場面が変わり、広大な砂漠(サハラ)の風景と、呪文を唱えるブリミル。

その足元で苦悶の表情を浮かべながら蹲るサーシャ。

その直後、ブリミルが杖を振り下ろし、白い閃光で視界が埋め尽くされ、砂漠に築かれたエルフの都市が、一瞬で灰燼となった。

テュリュークとビダーシャル、ルクシャナ、アリィーも、その光景を食い入るように見つめていた。

ブリミルの表情には、何の感情も伺えず、その瞳には何も映さず、ただ『虚無』だけがあった。

そのブリミルの胸に、サーシャが剣を突き立てた所で、その光景は消え去った。

 

「………これが、6000年前の『大災厄』の真実と言う訳か」

 

ビダーシャルが呆然として呟く。

 

「何という………悲劇じゃ………」

 

掠れた声でテュリュークが言う。

 

「こんな事が………」

 

「ッ……………」

 

この光景を見た者達は、驚愕の表情を浮かべている。

 

「これでご理解いただけたでしょうか? わたくしたちの真の目的が、あなた達の住まう『砂漠(サハラ)』等では無いという事に」

 

「なるほど、お前達の取り戻す聖地と言うのはつまり………」

 

「お察しの通りです。エルフの統領殿」

 

ヴィットーリオは敢えてその先を口にしなかった。

テュリュークは色々と思案を巡らせていたようだが、結局は納得したようで、ヴィットーリオに手を差し出そうとした。

そして、

 

「………相変わらず人をコケにするのが好きなようだな………!」

 

俺はそう言葉を発した。

全員の視線が俺に集中する。

 

「如何いう意味でしょうか?」

 

ヴィットーリオが問いかけてくる。

 

「都合のいい映像を見せて、都合のいいように人を動かす。呆れて物が言えん」

 

「今見えた光景は、嘘という事か!?」

 

ウェールズがそう聞いてくる。

 

「いや、嘘ではないさ。だが、今見えた光景は、『結果』だけを映し出し、そこに至るまでの『過程』が全く描かれていない」

 

「『過程』………?」

 

「物事には必ず順序がある。『結果』に至るまでの『過程』がな。今の光景は、『結果』だけを連続して映し、『過程』に見せかけてはいるが、実際の『過程』は、精々ヴァリヤーグという敵と戦っていた所だけだ」

 

「しかし、大事なのは『結果』です。そこに至るまでの『過程』などさしたるものでは……」

 

「俺の知る昔の偉人の言葉にこんなものがある。『『過程』を経ずして『結果』は出ない。『結果』だけを論ずるのはアホのする事』だってな」

 

ま、正確には前世で読んだ漫画のセリフだが。

 

「『過程』によって『結果』の見方も変わってくる。まあ、お前達がその『過程』を知っているかは知らないがな」

 

俺は肩を竦める。

俺はヴィットーリオを睨むと、

 

「お前達は、人を馬鹿にするのもいい加減にするんだな。ハッキリと言うが、お前達の本当の目的なんて、俺達には殆ど予想出来てるんだよ」

 

「本当の目的とは………?」

 

「……………『約束の地』への帰還」

 

「「ッ!?」」

 

俺の呟きに、ヴィットーリオとジュリオに明らかな動揺が走った。

 

「約束の地………?」

 

ルイズが怪訝な声を漏らす。

 

「ああ。ハルケギニアの伝説じゃ、ブリミルは6000年前に降臨したんだってな?」

 

「え? ええ………」

 

「じゃあ、そのブリミルは何処から来たんだ?」

 

「え………? 始祖ブリミルは、神が天から遣わされたって………」

 

ルイズはそう言うが、

 

「残念だけど、『神』は天から直接『人』を遣わせたりしないよ。そういうのは『天使』の役目だから」

 

葵がそれを否定する。

 

「つまり、ブリミルはハルケギニアとは違う別の場所からこの地に現れた。別の場所からやって来たなんて記述は無いから、空間ゲートを使って現れたんだろう」

 

「それって………」

 

「そのブリミルがハルケギニアに来る前に居た場所………それが『約束の地』。即ち、俺達が元居た世界、『地球』の事だ」

 

「「「「「ッ!?!?」」」」」

 

その言葉には、ヴィットーリオとジュリオだけでは無く、ルイズやアンリエッタ、ウェールズ達も一斉に驚いた声を漏らす。

 

「ど、如何いう事よ!? あんた達のもと居た世界が『約束の地』って……!?」

 

ルイズが驚愕しながらも問いかけてくる。

 

「どういう事も何も、そのまんまの意味だ。ブリミルは元々俺達の世界の住人だったってことだ」

 

「始祖ブリミルが………異世界の人間………!?」

 

「そう。そして、ブリミルの一族には、他の人間には無い力があった。それが『魔法』だ。だが、その力は他の人間からすれば脅威になる。だから迫害を受けた。それがヴァリヤーグと呼ばれた、まあ、俺達の、遠い遠い先祖って事になるのか?」

 

その辺はよく分からん。

ブリミルの一族を迫害した者達が、そのまま繫栄して俺達の先祖になったのか、それとも全滅して、他の部族になり代わられたのか。

如何でもいい事だが。

 

「それは置いておくが、ともかく、ブリミルの一族は迫害を逃れる為に、ブリミルの『虚無』の力で空間ゲートを開き、この世界の『聖地』に現れた。それが6000年前だ。そしてその場所は、今も尚地球とハルケギニアに繋がりを残している。『場違いの工芸品』と呼ばれる地球の武器がその証拠だ。そして、その場所は小さい力でも地球へのゲートが開けるようになってるんだろう。教皇サマは、それを利用して、地球への空間ゲートを開こうとしているのさ」

 

「で、でも、何の為に………!?」

 

「ハルケギニアの人間を、地球へ移住させるためだ」

 

「ッ!?」

 

「『大隆起』で滅びるハルケギニアの地を捨て、『約束の地』、地球への移住計画。それが教皇サマの目的なんだよ」

 

「「「「「ッ!?」」」」」」

 

その言葉に再び驚愕する一同。

 

「だが、当然だが問題もある。今の地球には、ハルケギニアの人間を受け入れる余裕など無いという事だ。人が住める場所は、必ずどこかの国の領土になっているし、1000万を超える人間をいきなり受け入れる国などありはしない」

 

「じゃ、じゃあどうするのよ!?」

 

「そんなの決まってるだろ? …………侵略だ」

 

「「「「「ッ!?」」」」」」

 

「まあ、教皇サマに言わせれば、6000年前に地球に住んでいた者の子孫だから地球に帰還する『正当な権利』を主張する、『再征服(レコン・キスタ)』なんだろうが………」

 

俺はそう言いながらヴィットーリオを見据える。

そのヴィットーリオは、ただ目を伏せて佇んでいた。

 

「聖下! 今のタイシ殿の言葉は本当なのですか!?」

 

ウェールズがヴィットーリオに向かって問いかける。

 

「……………………」

 

ヴィットーリオは沈黙していたが、

 

「聖下!!」

 

ウェールズの更なる強い声による呼びかけに、ゆっくりと瞼を開き、

 

「…………はい」

 

そう肯定した。

 

「わたくしは、ハルケギニアの民を、『約束の地』へ移住させるつもりです。その為の『力』を神と始祖ブリミルは、我らにお授けになられたのです。それこそ、四の四が揃った時に目覚める『最後の虚無』」

 

「聖下! あなたは、ハルケギニアの民に、また多くの血を流せと仰るのですか!?」

 

女王サマが叫ぶ。

 

「ではお尋ねしますが、このまま滅びを受け入れよと?」

 

「それは…………」

 

女王サマがヴィットーリオの言葉に言い淀んだ時、

 

「……………アルビオン王国国王として、ウェールズ・テューダーが教皇聖下に申し上げる!」

 

ウェールズが声を張り上げた。

 

「何でしょう?」

 

「我が国は、その様な『愚策』に協力は致しかねます」

 

その言葉に、一瞬静寂が訪れる。

 

「…………『愚策』とはどういう事でしょう?」

 

ヴィットーリオが問い返すと、

 

「言葉の通りです。聖下がお考えになられている策を実行することは、ハルケギニアの民を救うどころか、滅びを早めるだけです」

 

ウェールズはハッキリとそう言った。

 

「なぜそのような結論に?」

 

ヴィットーリオは言葉の趣旨を理解できていないのか、もう一度聞き返した。

 

「簡単な事です。その世界は、タイシ殿達の故郷。その世界へ攻め入るという事は、タイシ殿達を『敵』に回すという事です。タイシ殿達を『敵』に回した瞬間、我々は全滅です」

 

「わたくしも同じ答えです。何より、今まで幾度もトリステインやアルビオンを救ってくれたタイシ殿達に対し、恩を仇で返すような真似など、出来ようはずがありません」

 

「先程も言いましたが、その為にこのまま滅びを受け入れよと?」

 

「タイシ殿達がいなければ、トリステインはとっくの昔に滅んでいました」

 

女王サマは真っ直ぐにそう言い返す。

 

「しかし、その為に民を見捨てる事は、一国の王としては間違いでは無いでしょうか?」

 

「先程ウェールズ様が仰いました。彼らを『敵』に回した時点で、我々の『破滅』は確定します。ならば、僅かな可能性でも別の『道』を探す方が得策だと判断いたします」

 

「ッ…………!?」

 

旗色が悪くなってきたのか、ヴィットーリオの口数が少なくなってくる。

 

「さて、俺が言うべきことはウェールズと女王サマが言ってくれたから簡単に言う。教皇サマ、あんた達は俺達の『敵』か?」

 

「………………それは」

 

「『敵』だと言うのなら、その瞬間容赦はしない………!」

 

「ッ………………!」

 

俺は拳にデジソウルを宿しながら言い放った。

 

「…………………………」

 

ヴィットーリオは沈黙する。

 

「沈黙か………それもいいだろう」

 

俺はデジソウルを消すと、ヴィットーリオから視線を外す。

 

「さて、教皇サマの方針を蹴ったはいいが、何か方法はあるのか?」

 

俺はウェールズ達に問いかける。

 

「正直我々には無い。だが、君にはあるんだろう?」

 

ウェールズが、確信を持ったような声でそう言った。

 

「何故そう思う?」

 

「君は、自分の『大切』を見捨てない。そうだね?」

 

「ああ」

 

「既に君の『大切』には、シャルロット嬢やカトレア嬢が居る。彼女達の家族がいるこのハルケギニアを、君が見捨てるとは思わないからだ」

 

「それなら、彼女達の家族を連れて地球に帰れば済む事では?」

 

「確かにそれ以外に方法が無くなったら君はそうするだろう。君はいざという時には非情な判断も厭わないだろう。しかし、だからと言って、命を蔑ろにするような輩とも違うからね」

 

「………………………ふう」

 

俺は、溜息を吐いた。

 

「まあ、方法はある」

 

「本当なの!?」

 

俺の言葉にルイズが叫ぶ。

 

「さっきの話の続きだが、『結果』に至る為には『過程』があると言ったな?」

 

「ええ」

 

「なら、『大隆起』という結果に至る為の『過程』とは何だと思う?」

 

「それって、前に聖下が言ってた、風石の暴走が原因じゃないの?」

 

「それも間違いじゃない。それなら、風石の暴走を引き起こす原因とは一体なんだ?」

 

「それは……………」

 

「それは、『聖地』の地下に眠る巨大な『精霊石』だ。そしてその『精霊石』は地下鉱脈を通じてハルケギニア中の『風石』と繋がっている。そして数万年に一度、『精霊石』に蓄積された『力』が逃げ場を求めて大陸中に伝播。それが『風石』を暴走させてしまい、地面を持ち上げることになる」

 

「それが、『大隆起』の本当の原因………」

 

「そしてそれは、ブリミルも気付いていた」

 

「えっ?」

 

「さっき見せられた映像に映ってただろう? ブリミルがエルフの都市を吹き飛ばしたのを。あれは正確には、都市を滅ぼしたかったんじゃない。その地下に眠る『精霊石』を破壊したかったんだ。『大隆起』を止める為に」

 

「だ、だったらエルフ達ごとやる必要はなかった筈だ!」

 

アリィーが叫ぶ。

 

「勿論ブリミルも、サーシャと一緒に説得したさ。だけど、それは当時のエルフ達には聞き入れられなかった。世界が滅びるのも『大いなる意志』の思し召しだってね。それに、あのエルフの都市があった場所は、『風石』の暴走の影響を受けない場所だった」

 

「うっ………!」

 

「それから、ブリミルがそうすることに至った経緯はもう1つある。それは、ブリミルの氏族が住む村が、エルフに攻め滅ぼされたからだ」

 

「なっ………!?」

 

「何度も説得に来るブリミルを煩わしく思う一派が居たんだろうな。ブリミルの留守を狙って村を滅ぼしたんだ」

 

「う、嘘だ! 我々の先祖がそんな非道な真似…………」

 

「蛮人は獣と一緒なんだろ? 危険な獣の巣を排除した。その程度の気持ちだったんじゃないか?」

 

「ッ……………………」

 

アリィーは言葉に詰まる。

その時、

 

「あれ? でもおかしくない? 『大隆起』の原因になる『精霊石』は、そのブリミルが破壊したんでしょ? もう一度精霊の力が貯まるにしても、6000年は短すぎると思うんだけど………?」

 

ルクシャナが話の矛盾点に気付いたのか、そう指摘する。

 

「ああ、それは、ブリミルが破壊したのは『精霊石』の一部だったからだ」

 

「一部? 全部は破壊出来なかったって事?」

 

「破壊出来なかったというより、破壊しなかったと言った方が正確だな」

 

「破壊しなかった? どうして?」

 

「悪い言い方になるが、もしあの時、ブリミルが本気で魔法を放っていれば、『精霊石』は完全に破壊。エルフも全滅して『今』に遺恨は残さなかっただろう」

 

「ッ…………!」

 

俺の言葉に、微妙な顔をするルクシャナ。

 

「だが、ブリミルはそれをしなかった。何故なら、それをしてしまえば、リーヴスラシルとなっていたサーシャの命を奪っていたからだ。ブリミルは、サーシャを愛するが故に『精霊石』の破壊を一部に留め、サーシャの命を救う為に何も言わずにサーシャに殺されることを選んだ」

 

「それが………英雄アヌビスと悪魔(シャイターン)の真相…………」

 

ビダーシャルが呟く。

 

「待って! って事は、残った『精霊石』を破壊すれば!」

 

ルイズが気付いたように叫ぶ。

 

「少なくとも、数万年は『大隆起』は来ないということになるな」

 

「…………馬鹿な………そんな方法が………!?」

 

ヴィットーリオが驚愕した表情で呟いた。

 

「何故………? そのような事は、始祖の円鏡の記憶にも無かった………」

 

「俺達には、過去を覗き見る方法はいくつかあるんだよ」

 

過去再生を知るルイズはそれで納得したと思うが、実際には俺の前世の記憶だが。

そもそも、自分の当てずっぽうだが、ブリミル教は当然だが虚無の秘宝や虚無のルビーもブリミルが遺した物じゃないと思ってるしな。

おそらく、ブリミルの子孫や弟子が、復讐の為かどうかは知らないが、何らかの方法で『虚無』と言う魔法そのものを、システムの様に血筋に組み込んだ様に思えてならない。

真実は知らないがな。

まあ、それは如何でもいい事だ。

 

「それで? どうするんだ?」

 

俺はルイズに向かって問いかける。

 

「決まってるわ!」

 

ルイズは顔を上げると決意を込めた声で叫んだ。

 

「今から『聖地』に向かって、『精霊石』をぶっ壊すわ!!」

 

ルイズのその言葉と共に、オストラント号は聖地へ向かって飛び立った。

 

 

 

 

 

 






ゼロ魔クロス第42話です。
昨夜は大雨で消防団として出動したので眠いです。
とりあえず哀れヴィットーリオな回。
大士達どころかウェールズやアンリエッタにすら見捨てられました。
そして一言も喋らないジョゼット。(爆)
さて、物語もいよいよ佳境に。
お楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。