ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第43話 ありふれた復活

 

 

 

 

オストラント号が『聖地』に向けて飛び立って数日。

海上に浮かぶタコの触手のようにうねうねと伸びた数十mはある岩の群島。

 

「あれが『聖地』………?」

 

オストラント号の甲板から、ルイズがその光景を見下ろす。

 

「私達は、『竜の巣』って呼んでるけど…………おかしいわね」

 

ルクシャナが怪訝な声で呟く。

 

「どうしたの………?」

 

シャルロットが尋ねると、

 

「精霊達がざわついてる………いつもは穏やかなはずなのに………」

 

ルクシャナの言葉を肯定するように、空には暗雲が立ち込め、波はうねりを上げる。

 

「どういう事………?」

 

ルイズがそう呟いた時、

 

「皆! あそこを見て!」

 

テファが何かに気付いたように群島の1つを指差した。

その島は他よりもひときわ大きく、皿の様な形をしている。

そして、その島の隅に、大きな水竜がその身を横たえていた。

 

「あれはまさか………!?」

 

ルクシャナがその水竜の姿を捉えた瞬間、弾かれたようにオストラント号に乗せられていた風竜の方へ駆け出す。

 

「ルクシャナ!」

 

アリィーが慌ててその後を追いかけると、ルクシャナは風竜に飛び乗って、風竜を飛び立たせる。

アリィーもギリギリその風竜に乗ることに成功したが。

 

「大士……!」

 

ドルモンが俺を見上げる。

 

「ああ。俺達も行こう」

 

俺は頷く。

 

「シルフィード」

 

「きゅい! 任せるのね!」

 

シャルロットが傍らにいたイルククゥに呼びかけ、イルククゥは元気よく返事をする。

ドルモンをドルガモンに進化させ、シルフィードと共にルクシャナ達を追いかける。

その島に辿り着いていた時、ルクシャナが一目散にその水竜へと駆け寄った。

近くに来て分かったが、その水竜は激しく傷ついている。

 

「海母っ……!」

 

ルクシャナがそう叫びながら、その水竜の頭部へ近付き、手で触れながらその体を見回す。

 

「酷い怪我………! 海母! 海母っ!!」

 

ルクシャナは悲痛な表情で水竜へと呼びかけた。

すると、ゆっくりとその瞼が開く。

 

「…………ああ、長耳のはねっかえりかい…………よく来たね………」

 

その水竜は、弱々しくもそう言葉を発した。

 

「韻竜!?」

 

ルイズが驚いたように叫ぶ。

 

「海母! 一体何があったの!? この怪我は………!?」

 

「数日前に、妾の巣に6人の蛮人が来たのさ………礼儀を知らない奴らだったから、叩き出してやろうと思ったんだけど……………逆にやられてこのザマさ…………」

 

海母と呼ばれた水竜は、自嘲するようにそう言う。

身動ぎすると、体の各部に付けられた傷から血が噴き出す。

 

「動かないで! 傷口が広がっちゃう!」

 

「かまやしないよ………妾の体の事は、妾がよくわかってる。精霊の力を借りても、もう助からないさ………」

 

「そんな……! 海母っ……!」

 

「泣くのはおよし、長耳のはねっかえり………妾の娘。妾は滅びゆく種族………それが今日だったってだけの話さ………」

 

「嫌よ! 諦めないで………!」

 

ルクシャナは涙を流し始める。

その時、葵が歩み寄り、海母の頭に触れる。

 

「あなたは………」

 

ルクシャナが泣きそうな目で葵を見つめ、

 

「諦めないっていうのには賛成かな」

 

葵が〝再生魔法〟を行使。

海母が光に包まれると、身体中の傷が瞬く間に塞がっていく。

 

「これは………!」

 

海母が驚いたように目を見開いた。

光が消えた時には、海母の体に合った傷は、すっかり無くなっていた。

 

「これでもう大丈夫」

 

葵はニッコリと笑みを浮かべてルクシャナに笑い掛ける。

 

「………ッ! ありがとう!」

 

ルクシャナはその場に跪き、頭を下げる。

 

「私の友達を助けてくれて……! ありがとう………!!」

 

ルクシャナは深く頭を下げながらそう言った。

 

「不思議な力を使う娘だね。お前は蛮人………いや、違うね………精霊達や、『大いなる意志』とも違う高位な気配を感じるよ………」

 

「わかるの?」

 

葵がきょとんとして問い掛ける。

 

「まあ、伊達に長く生きてないさ」

 

その時だった。

 

「ドゥドゥー兄さま。あの水竜生きてるわ」

 

背後から声が聞こえた。

 

「本当だ。おかしいね、あれだけ深く切り裂いたというのに………」

 

そこには5人の人影があった。

1人はワルドだが、他の4人は初めて会う。

人形を思わせるような整った容姿をした少女。

黒い羽根帽子を被った飄々とした雰囲気をした青年。

筋骨たくましい大男。

10歳前後の背丈の金髪の少年。

だが、ワルドを除けば、一番幼い金髪の少年が油断ならない気がする。

俺はふと、原作の記憶に彼らの特徴と一致する者達がいる事を思い出した。

 

「元素の兄弟………」

 

俺は思わず呟く。

 

「おや? 僕達の事を知っていたのかい?」

 

羽根帽子を被った青年がこちらに意識を向けた。

 

「さてな」

 

俺は口を噤む。

 

「そんな事は如何でもいい。我々は我々の役目を果たすだけだ」

 

大男が興味無さげにそう言うと、

 

「ジャックの言う通りだ。ドクター・クラタの研究は最終段階に入っている。僕達の役目はそれまでの時間稼ぎだ」

 

金髪の少年がそう言うと、

 

「倉田!? 倉田がここに居るのか!? 答えろ! 倉田は何処に居やがる!?」

 

マサルが倉田の名に声を上げる。

 

「それに答えるつもりはないよ。僕達は、彼に雇われている立場だからね」

 

「そうかよ………! だったら、力尽くで聞き出してやるぜ!!」

 

マサルはそう叫ぶと駆け出す。

 

「うぉおおおおおおおおおおっ!!」

 

マサルは右腕を振り被る。

 

「させん!」

 

大男が金髪の少年の前に立ちはだかると、同じように拳を振り被る。

 

「ふんっ!!」

 

互いに繰り出した拳が激突する。

そして、

 

「何ッ!?」

 

マサルが驚愕の声を漏らす。

マサルの右の拳には、デジソウルが発生したからだ。

 

「デジソウルが………まさかお前ら!?」

 

マサルが気付いたように顔を上げると、全員が左腕を突き出す。

手首に装着されていた特殊デジヴァイスが迫り出し、掌に収まる。

 

「「「「「ハイパーバイオエクストラエボリューション!!」」」」」

 

それぞれが光に包まれ、その姿を変える。

 

「バイオメルクリモン!!」

 

ワルドはバイオメルクリモンへ。

 

「バイオクロスモン!!」

 

金髪の少年はバイオクロスモンへ。

 

「バイオグランクワガーモン!!」

 

大男はバイオグランクワガーモンへ。

 

「バイオヴァルキリモン!!」

 

羽根帽子の青年はバイオヴァルキリモンへ。

 

「バイオラフレシモン!!」

 

少女はバイオラフレシモンへと進化した。

 

「ッ!? 元素の兄弟が残りの究極体のバイオデジモンだったのか!」

 

俺は思わず叫ぶ。

 

「チッ! そういう事ならこっちも遠慮しねぇ! 行くぞアグモン!!」

 

「おう!」

 

マサルはアグモンに呼びかけ、デジソウルを熱く燃え上がらせる。

 

――ULTIMATE

 

  EVOLUTION――

 

マサルのデジヴァイスバーストにそう表示される。

 

「デジソウルチャージ! オーバードライブ!!」

 

デジソウルを右手に集中させ、デジヴァイスバーストに叩き込む。

 

「アグモン進化!」

 

デジヴァイスバーストから放たれた光を受け、アグモンが究極体へと進化する。

 

「シャイングレイモン!!」

 

シャイングレイモンが光の中から現れた。

 

「俺達も行くぞ!」

 

俺の呼びかけに、Dアークを構える葵と優花。

 

――MATRIX

  EVOLUTION――

 

「「「マトリックスエボリューション!!」」」

 

俺達の身体がデータとなり、自分のパートナー達と1つになる。

 

「ドルモン進化!」

 

「リュウダモン進化!」

 

「ハックモン進化!」

 

それぞれの成長期の身体が分解され、究極体の姿として再構成される。

 

「アルファモン!!」

 

「オウリュウモン!!」

 

「ジエスモン!!」

 

究極体となった俺達はその場に降り立つ。

 

「お前達は避難していろ」

 

後ろにいるシャルロット達にそう呼びかけた。

その言葉にシャルロットは頷くと、全員をシルフィードと風竜に乗せ、海母は海へと飛び込む。

 

「小僧! お前は俺が相手をしてやる!」

 

バイオグランクワガーモンが低空で飛行しながら突っ込んで来てシャイングレイモンに組み付く。

 

「くっ!」

 

シャイングレイモンは組み付かれつつも、空中に飛び、

 

「こいつは俺に任せろ!」

 

グランクワガーモンを1対1で相手する為に、その勢いを利用して距離を取る。

 

「僕の相手は君かい?」

 

空中に浮くバイオクロスモンの前に、オウリュウモンが立ちはだかる。

 

「一戦お相手願おうか!」

 

オウリュウモンは両手の大刀を構える。

 

「1人で僕達2人を相手にする気かい?」

 

「舐められたものね」

 

バイオヴァルキリモンとバイオラフレシモンの前に立つのはジエスモン。

ジエスモンは静かに両腕の剣と尾の先の刃を煌めかせる。

そしてアルファモン()は、バイオメルクリモンと向かい合う。

 

「ルイズの使い魔………! 今日こそ決着をつける!!」

 

「……………………」

 

バイオメルクリモンの言葉に沈黙を以って応える。

互いに身構えつつ、相手の様子を伺う。

そして……………

一瞬の静寂の後、一斉に激突するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

聖地の最奥。

多くの機材に囲まれた場所で、倉田は最後の仕上げに入っていた。

外の戦闘の余波により、振動がこの場所にも響く。

 

「始まったようですね。ですが、少し遅かったようです…………」

 

倉田はキーボードを叩きながらニヤリと笑みを浮かべ、最後のエンターキーを押すのだった。

 

 

 

 

 

一方、外の戦いは、アルファモン達が終始有利に戦いを進めていた。

 

「ぬぉおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

「はぁああああああああああああっ!!」

 

グランクワガーモンとシャイングレイモンが空中で組み合う。

両者は拮抗しているように思えたが、

 

「はぁあああっ!!!」

 

「ぬぐっ!?」

 

シャイングレイモンが力を込めると押し出す。

更に、

 

「うぉおおおおおっ!!」

 

シャイングレイモンの肩からマサルが飛び出し、

 

「うぉりゃぁあああああああっ!!!」

 

バイオグランクワガーモンの頭部を上から殴りつけた。

 

「ぐぁあああああっ!?」

 

バイオグランクワガーモンは一瞬高度を落とすが、すぐに羽を羽搏かせて持ち直す。

だが、

 

「はぁ………はぁ………」

 

明らかにダメージはあった。

 

「おのれぇぇぇぇぇっ!!」

 

グランクワガーモンは尚もシャイングレイモンに向かって行く。

だが、その結果は火を見るよりも明らかだった。

 

 

 

空中ではオウリュウモンとバイオクロスモンが戦っていた。

 

「ミスティックブレイク!!」

 

「永世竜王刃!!」

 

バイオクロスモンが放つ光線を、オウリュウモンが放つ斬撃が切り裂いていく。

バイオクロスモンは、斬撃が届く前に回避し、回り込む様にオウリュウモンに向かって行く。

そのまま身体が輝きに包まれ、

 

「カイザーフェニックス!!」

 

オウリュウモンに体当たりを仕掛けた。

だが、

 

「黄鎧!!」

 

オウリュウモンも刃の翼を広げ、バイオクロスモンに向かい、そのまま両者が交差した。

その結果は、バイオクロスモンが纏う黄金の装甲に大きな傷が付いた上に、クロスモンの片側の翼が両断されている。

 

「ッ!?」

 

バイオクロスモンはそのままバランスを崩し、落下していった。

 

 

 

地上では、バイオヴァルキリモンがジエスモンに斬りかかっている所だった。

 

「フェンリルソード!!」

 

バイオヴァルキリモンが持つ剣がジエスモンに迫る。

だが、ジエスモンは片手の剣で軽々とその一撃を受け止めた。

 

「ッ!?」

 

バイオヴァルキリモンは一瞬驚く。

だが、バイオヴァルキリモンの上方からバイオラフレシモンが姿を現し、

 

「バレエガン!!」

 

大きな袖からエネルギー弾を放つ。

バイオヴァルキリモンの剣を受け止めていたジエスモンは、そのエネルギー弾に直撃すると思われたが、瞬時に現れたアト、ルネ、ポルが張った結界により、それは防がれる。

 

「嘘っ!?」

 

バイオラフレシモンが驚愕した瞬間、

 

「はっ!」

 

ジエスモンの尾の先の刃がバイオヴァルキリモンに振るわれ、吹き飛ばした。

 

「うわぁっ!?」

 

「ドゥドゥー兄さま!?」

 

吹き飛ばされたバイオヴァルキリモンにバイオラフレシモンが意識を向けた瞬間、アト、ルネ、ポルが結界を解除し、バイオラフレシモンに剣を振るう。

 

「きゃっ!? このっ………!」

 

バイオラフレシモンも反撃するが、アト、ルネ、ポルのコンビネーションの前に翻弄されていた。

 

 

 

そして、アルファモンとバイオメルクリモンの戦いだが、

 

「ぐぬ………またか………気付けばやられている………何故だ………!?」

 

バイオメルクリモンは無数のダメージを受けて膝を着いていた。

対するアルファモンは無傷である。

アルファモンは、戦いが始まった瞬間に『アルファインフォース』を発動し、バイオメルクリモンが知覚できぬまま勝負は決した。

 

「何故だ!? なぜ勝てない!?」

 

バイオメルクリモンが悔しそうな声を上げる。

だが、それも当然だ。

バイオデジモンは、並の究極体より強化されており、その戦闘力は、通常の究極体の1.5倍はあるだろう。

しかし、マサルのデジソウルで進化したシャイングレイモンは元より、ジエスモンは並の究極体4体を歯牙にかけない『ロイヤルナイツ』の1人であり、オウリュウモンは、ロイヤルナイツほどでは無くとも、融合進化した存在の上にX抗体を持ち、並の究極体の3倍近いパワーを持つ。

バイオメルクリモンは、素体となったメルクリモンが『オリュンポス十二神』の1人であり、バイオデジモンとなった今では、ロイヤルナイツに匹敵するパワーを持つと言っても過言では無いだろう。

しかし、ロイヤルナイツの抑止力とも呼ばれ、最強の座に位置するアルファモンの前では、敵では無かった。

 

「倉田の居場所は何処だ?」

 

アルファモンがバイオメルクリモンに問いかける。

だが、

 

「フッ………それを知った所でもう遅い」

 

バイオメルクリモンは、不敵な笑みを浮かべた。

 

「何だと?」

 

アルファモンが怪訝な声を漏らした瞬間、突如として地面が揺れ始めた。

 

「何だ!?」

 

アルファモンが思わず顔を上げ、震源と思わしき方に顔を向ける。

すると、目の前で海が割れ、巨大な、淡く輝く水晶のような岩が浮き上がって来た。

 

『あれは………まさか精霊石か!?』

 

大士は思わず声を上げる。

その時、精霊石の四方に、妙な機械が設置されており、電流の様な物で精霊石を取り囲んでいる事に気付いた。

そして、正面の機械が設置されていた場所に、倉田が立っている。

 

「ワルド子爵………そして元素の兄弟の皆さま。ご苦労様でした。お陰で十分に時間は稼げました………」

 

倉田はそう言い出す。

 

「おお………これで我らは更なる『力』を…………!」

 

バイオメルクリモンが感動に打ち震えた声を漏らす。

 

「ええ………これで『究極』の『力』…………ベルフェモン復活の準備は整いました!!」

 

「何ッ!?」

 

「どういうことだ?」

 

倉田の言葉に、バイオメルクリモンや元素の兄弟の間に動揺が走る。

 

「ベルフェモンだと!?」

 

マサルも驚愕の声を上げた。

よく見れば、倉田の横にある機械の中には怪しい輝きを放つデジタマの存在が確認できる。

 

「この世界では、デジモンを引き込むことも簡単ではありませんからね………ベルフェモン復活のエネルギーを集めることも、困難を極めました…………」

 

『…………まさか、精霊石に集まった『力』をベルフェモン復活に使うつもりか………!?』

 

「その通りです」

 

大士の言葉を、倉田は自信あり気に肯定する。

だが、

 

『無駄な事だ。精霊石に集まる力は『魔力』に属する力だ。デジタル物質で構成されるデジモンとは相性が悪すぎる。ベルフェモン復活のエネルギーに出来るとは思えない』

 

大士はそう指摘するが、

 

「フッ………その程度の事、この私が気付いて無いとでもお思いですか?」

 

倉田はメガネの位置を手で直しながら、ニヤリと怪しい笑みを浮かべる。

 

『何ッ!?』

 

「確かにデジタル物質は、この世界に満ちる『魔法の力の素』と呼ぶべきモノとの相性は最悪です。これには私も難儀しました。この世界で一番使われるエネルギーが、デジモンには使えないというのですから…………」

 

倉田は一度ガッカリしたように溜息を吐いた。

だが、すぐに顔を上げ、

 

「しかし、その状況を打破するためのヒントをくれたのが、他ならぬあなた達なのですよ!」

 

倉田はアルファモンを指差す。

 

「どういう意味だ!?」

 

アルファモンが言い返すと、

 

「あなたのお仲間に、『魔法』と『デジソウル』を両方使える方がいらっしゃいましたね?」

 

「ッ!」

 

アルファモンは、すぐにシャルロットの事だと察する。

 

「彼女の使った『魔法』は、『デジソウル』により大幅に強化されました。つまり、『デジソウル』は『魔力』と親和性を持つという事です。そして、ご存じの通り『デジソウル』は『デジモン』とも高い親和性を持っています」

 

『ま、まさか…………!』

 

「即ち、『魔力』を『デジソウル』に近いエネルギーに変換できれば、デジモンのエネルギーとして利用できるという事です! それは『バイオデジモン』で使う疑似デジソウルでも同じこと!! 私は研究の末、『魔力』を『疑似デジソウル』へと変換する術を見つけたのです!!」

 

その言葉と共に、『精霊石』の………そして世界中の『風石』のエネルギーがベルフェモンのデジタマへと流れ込んでいく。

 

「そして、私の研究の成果はこれだけではありません! 私はかつて、ベルフェモンと一体化した時に、その破壊の意志に呑み込まれかけました。ですが………!」

 

倉田は機械の横に設置されていたカプセルへと入ると、倉田自身がデジソウルの様なエネルギーに変換され、ベルフェモンのデジタマへと注入される。

その瞬間、デジタマにビキリッと罅が入り、それが孵る。

それと共に巨大な闇が広がっていく。

 

『初めから私の意志をベルフェモンの意志としてしまえば、呑み込まれる心配はありません!!』

 

その闇が形を変え、巨大な悪魔の姿を形作っていく。

だが、それは唯のベルフェモンでは無かった。

 

『そして、最後の1つ! これこそが私の最高の研究成果!!』

 

そのベルフェモンの姿は、両腕と両足に金色の鎧の様な物を付けており、そこから伸びる爪や角は血を固めたような紅の色をしていた。

2本だった山羊のような角は4本に増え、まるで冠のように広がって伸びている。

背中の翼も、その姿により相応しいよう形を変え、その存在感を主張している。

 

「何だ………? 以前のベルフェモンとは違う…………!」

 

マサルがその姿に目を見開いて驚愕の声を漏らす。

 

『馬鹿な………! その姿は………!』

 

しかし、アルファモンと融合している大士には、その姿に見覚えがあった。

何故なら、前世の記憶にその正体があったからだ。

 

『ベルフェモン…………X抗体だと…………!?』

 

大士はその名を呟く。

 

「知っているのか!?」

 

「確かにミュウのパートナーのベルフェモンとは姿が違うが………」

 

オウリュウモンとジエスモンがアルファモンの近くに集まって問いかける。

 

『ああ………あの姿は、ベルフェモンがX抗体と呼ぶ特殊な抗体を宿した姿だ………』

 

「X抗体?」

 

『詳しい話は省くが、デジモン達を消滅(デリート)させる力を持つ『Xプログラム』に対する抗体が『X抗体』だ。そのX抗体を手に入れたデジモンは、その潜在能力を高く引き出され、『X-進化(ゼヴォリューション)』を遂げ、本来のデジモンとは、姿もその力も大きく変化する』

 

「『X-進化(ゼヴォリューション)』…………」

 

『だが、『Xプログラム』が存在しない世界に、何故X抗体デジモンが…………ッ!』

 

その瞬間、大士は一番肝心な事を思い出した。

 

『…………いや、居たな…………とても身近な所に『X抗体』を持つデジモンが………』

 

大士は自嘲するように呟いた。

 

『『えっ?』』

 

葵と優花が声を漏らした。

 

『………………アルファモンとオウリュウモンは、X抗体デジモンだ』

 

「「ッ!?」」

 

アルファモンとオウリュウモンが、大士の言葉に目を見開く。

 

『それから、ジエスモンGXや、八重樫さんとコテモンが進化したガイオウモンもX抗体デジモンだが、倉田の前には現れていない。おそらく、アルファモンとオウリュウモンのデータを調べ上げて、『X抗体』を複製……もしくは限りなくそれに近い物を作り出したんだ』

 

大士が推測を口にすると、

 

『ご明察………正にその通りですよ!』

 

倉田は堂々と大士の推理を肯定する。

 

『そこの2匹のデジモンは、他のデジモンとは何かが違うとすぐに気付きました。そのデジモンのデータを徹底的にスキャンし、調べ上げることで、特殊なデータが存在する事を突き止めたのですよ!』

 

「それが、『X抗体』………」

 

『ええ! そのお陰でこの身体にはパワーが満ち溢れています! 以前のベルフェモンが、まるで子供に思えるような底無しの『力』が溢れてきますよ!!』

 

テンションが上がっていくのか、その声には狂喜が混じる。

すると、ベルフェモンの冠の様な角に、エネルギーが集められていくのに気付いた。

 

『ッ!? 避けろ!!』

 

大士が叫び、アルファモン、オウリュウモン、ジエスモンは咄嗟にその場を離脱する。

 

『セブンス・ペネトレートォッ!!!』

 

倉田が叫んだ瞬間、ベルフェモンXの爪から、真紅のエネルギー波が最大出力で放たれた。

そのエネルギー波は、衝撃波で海を割りながら突き進み、島に居たバイオメルクリモン、バイオクロスモン、バイオヴァルキリモン、バイオラフレシモンを容赦なく飲み込んだ。

 

「「「ッ!?」」」

 

その瞬間を目撃して、目を見開くアルファモン、オウリュウモン、ジエスモンの3体。

そのエネルギー波はそのまま突き進み、水平線の彼方に着弾すると、水平線を埋め尽くすほどのエネルギーが解放され、大爆発を起こした。

 

「ッ………何て威力だ………以前のベルフェモンとは桁違いじゃねえか…………」

 

その光景を見て、別の場所で戦っていたマサルも戦慄を感じた。

その時、

 

「う、うぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!?!?!?」

 

バイオグランクワガーモンが叫び声を上げた。

シャイングレイモンと共に、別の場所で戦っていたグランクワガーモンも、今の攻撃からは逃れていた。

バイオグランクワガーモンは、なりふり構わずベルフェモンXヘ向かって行く。

 

「キサマァァァァァァッ!! よくも兄者達をぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

憤怒の声を上げながらベルフェモンXに突撃する。

 

「ディメンションシザァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

空間をも切り裂く一撃。

それがベルフェモンXの胸部へと突き刺さる。

だが、

 

『……………今、何かしましたか?』

 

ベルフェモンXは………倉田は平然と聞き返した。

驚くことに、今の一撃はベルフェモンXに何ら傷を負わすことは叶わなかった。

 

『君達には感謝していますよ。君達のお陰でこうして私は『究極を超えた力』を手にすることが出来ました………ですが、その『力』を手にした今、既に君達は用済みです!』

 

「お、おのれぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

ベルフェモンXは、真紅の爪にエネルギーを纏わせる。

 

『ギフトオブダークネス!!』

 

エネルギーを纏った爪により、バイオグランクワガーモンはその体を切り裂かれる。

 

「おのれ……!  おのれぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

怨嗟の声を上げながらバイオグランクワガーモンは海に沈み、データ分解と共に消えた。

 

「倉田ぁっ! きっさまぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

ベルフェモンXの非道な行いに、マサルが怒りの声を上げる。

 

『次は君達です。特に大門 マサル! 私を見下した大門 スグルの息子! あなたは楽には死なせませんよ!!』

 

倉田の言葉と共に、ベルフェモンXが咆哮を上げる。

ハルケギニアの存亡をかけた戦いが、今、始まろうとしていた。

 

 

 

 






ゼロ魔クロス第43話です。
何だかんだ理由を付けて、ベルフェモンがX抗体バージョンで復活。
いよいよラストバトルが開始されます。
バイオデジモンの正体は元素の兄弟でした。
でも、ワルドこと消された?
次回をお楽しみに。
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