ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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アナザールートと言ってましたが、完全なIFルートとしてお読みください。


IS編(IFルート)
第1話 ありふれた転生者はIS学園に入学する


 

 

 

俺達が地球に帰還した数日後。

山木さん達に情報操作を頼んでいたとはいえ、俺達の帰還はあまり騒がれることは無かった。

何故ならば、この俺達が帰還した時と同じ時期に、俺達が帰還した事と同等の………

いや、それ以上のニュースが日本を、世界を駆け巡っていたからだ。

それは、『男性初のIS操縦者の発見』。

IS―――正式名称『インフィニット・ストラトス』は、今から約10年ほど前に世に現れたパワードスーツだ。

ISが発表された当初は、注目する人は少なかったが、ある日、そのISが一気に注目される事件が起きた。

通称『白騎士事件』と呼ばれるそれは、世界中の軍事施設がハッキングを受け、2000発以上のミサイルが日本に向けて発射され、それを『白騎士』と呼ばれる1機のISが全て撃墜したという事件だ。

この事件により、ISへの注目は一気に高まった。

因みにデ・リーパー事件の時に活躍したという話は聞いていない。

寧ろ、その辺りのISに関しての情報は全く無いと言っていい。

最低でも完全体以上の力を持っていたエージェント・デ・リーパーにISが敵うとは思わんが。

それはともかく。

このISには欠陥とも言うべき特性があった。

それは、『女性にしか動かせない』という事。

そのため、『女尊男卑』の風習が世に広まってきている。

俺達の周りではあまり見ないが、女性が通りすがりの男に命令するなんて事も結構起きているらしい。

そんな中、ISが発明されてから10年、男の中で誰一人として動かすことが出来なかった男が現れたのだ。

世界的ニュースになるのも頷けるだろう。

そのため、世界で2人目が居ないかを探すための検査が各地で行われた。

とは言え、ISのコアの数は467個しか無く、検査に使えるISは各国で精々1機。

多くても数機なので、流石に男全員を検査するわけにもいかず、IS学園に転入する事も含めて高校生前後の年齢の男性に絞って検査が行われた。

で、その検査の対象には、俺達トータスからの帰還者も含まれ、本日がその検査日なのだ。

とある市営の体育館の真ん中辺りに2機のISが置かれている。

日本はIS学園のある国なので、そこから訓練機を借りられたため、複数のISで検査が可能だった。

 

「くぁ………メンドクセェな………」

 

欠伸をしながらハジメがボヤく。

折角日本に帰って来たのに、碌に休む間もなく検査に駆り出されているのだ。

そうボヤきたくなるのも仕方ない。

俺も同意だ。

しかし、

 

「うぉぉぉぉぉぉっ! もしこれでISを動かせたらIS学園………つまり女の園に入学できる!!」

 

一部の男子は興奮気味に咆えている。

いや、周りが女ばっかって逆に居た堪れなくないか?

そう思うのは、俺が女性から好かれない運命を持っているからなんだろうか?

そしていよいよ検査が開始される。

 

「うぉぉぉぉぉっ! 咆えろ! 俺のチートパワー! いざ、夢の女の園(IS学園)へ!!」

 

先程も咆えていた中野 信二が叫びながら突撃するようにISに掴みかかる。

その結果は、

 

「………はい、次の方」

 

当然ながら無反応だった。

 

「何でだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

頭を抱えて嘆く中野。

俺とハジメは深く溜息を吐いた。

俺とハジメは同じ列に並んでおり、順番も一番最後だ。

ぶっちゃけ、ハジメならIS動かせるんじゃないかと密かに思っていたり。

こいつは主人公キャラだし。

そう思っているとハジメの番になった。

ハジメはかったるそうに右手でISに触れる。

俺は若干の期待を持ってハジメを見つめる。

その結果は、

 

「………………………動かねえな」

 

当然だと言わんばかりに無反応だった。

 

「チッ………………」

 

俺は小さく舌打ちする。

流石にラノベ展開にはならんか。

 

「はい、次の方」

 

ハジメがISの前から退くと、俺の番になる。

俺はさっさと終わらそうとISに手を伸ばし、その装甲の表面に触れた。

その瞬間、ピリッと電気のようなものが奔り、俺の中のデジソウルが何かに反応するような感覚がした。

 

「ッ………………!?」

 

俺は目を見開く。

すると、ISが淡い光を放って起動した。

 

「ッ!? まさか………本当に2人目が………!?」

 

検査担当の女性が驚愕の表情を見せる。

 

「報告! 2人目の男性IS操縦者が見つかった!!」

 

大慌てで報告に向かう検査員。

 

「…………………マジかよ」

 

俺はその様子を他人事のように見つめながら、思わず項垂れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

尚、この騒動の裏では、

 

「………………………あの~」

 

俺と同じくデジソウルを発現させていた遠藤も、ちゃっかりISを起動させていたのだが、直前に俺がISを起動させたため、遠藤の方の検査員の意識が俺の方に向けられ、遠藤がISを起動させた事に気付く者は誰も居なかった。

 

「ド畜生っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから俺は再び山木さんの保護下に入っていた。

俺がISを動かしたことは瞬く間に広がり、マスコミが押し寄せてくるためだ。

 

「……………はぁ、こういうのはタカトやハジメの役目だろ?」

 

俺は溜息を吐いてそうボヤく。

すると、山木さんが入室して来て、

 

「大士君、やはり君にはIS学園に入学してもらうことになるだろう」

 

「やっぱりそうなります?」

 

俺は溜息を吐きながら聞き返す。

 

「ああ。こればかりは私達でもどうしようもない」

 

「激動の一年を過ごしたんですから、高校生活ぐらい平穏に過ごしたかったんですけどね」

 

俺がISを動かしたことは、世界中に知られる。

政府の人間とは言え、庇いきれるものではない。

俺が再び溜息を吐くと、

 

「あの、ちょっといいですか?」

 

一緒に居た葵が手を挙げながら質問する。

 

「何だね?」

 

「私と優花もIS学園に行くことは出来ませんか?」

 

「あ、それ私も聞きたかった」

 

葵の言葉に優花も便乗する。

 

「お前ら、何で………?」

 

俺が聞き返すと、

 

「何でって、IS学園って全寮制の学校なんだよ?」

 

「って事は、会えるのは最低でも週一が精々………」

 

「そんなの我慢できるわけ無いよ」

 

2人の言葉に思わず苦笑する。

 

「いや、突然入学させろと言われてもだな………」

 

山木さんは困った表情をする。

流石に難しいだろうか?

俺としても、2人と一緒に居たいとは思うが………

 

「入学させてくれないと暴れるわよ………!」

 

「優花、そう言う冗談は…………」

 

俺の言葉は途中で止まった。

目がマジだったからだ。

つーか、〝威圧〟発動すんな。

優花の〝威圧〟に山木さんは冷や汗を流しながら考えを巡らせ、

 

「…………そ、そうだ。君達のIS適性が高ければ、特例でIS学園の入学を許可できるかもしれん」

 

山木さんは妥協案を口に出す。

 

「じゃあ早く適性検査して………!」

 

有無を言わさぬ迫力で優花は押し切った。

 

 

 

 

 

 

 

結果だけを言えば、葵、優花共にIS適性ランクSを叩き出した。

これには山木さんも驚いていた。

Sランクと言えば、国家代表どころか、かのブリュンヒルデと同等の適性値だ。

言うまでも無く特例が認められ、2人もIS学園に入学することになった。

しかし、俺はまだ肝心な事を確認していない。

 

「あの、山木さん………ドルモン達を連れて行ったら駄目ですか?」

 

俺の問いかけに、山木さんは驚くことは無かった。

俺がこう言い出すことは予想出来ていたのだろう。

ただ、少し神妙な顔をして、

 

「…………わかっているだろうが、7年前の影響でデジモン達への風当たりは強い………今でも、デ・リーパー事件はデジモンの仕業と思っている人も多いぐらいだ。おそらく……いや、間違いなく奇異の目で見られることだろう」

 

「はい」

 

「それでも連れて行くのかね?」

 

「はい。俺達にとって、パートナーデジモンは半身とも言うべき存在です。どんな時でも共に居るのが当然ですから」

 

「そうか…………わかった。その位なら私の伝手で何とかしよう」

 

「ッ! ありがとうございます。山木さん!」

 

「「ありがとうございます!」」

 

葵と優花も礼を言った。

すると、山木さんは席を立ち、

 

「IS学園への入学は半月後だ。あまり時間は無いが、基本的な専門知識を学ぶために、指導者を用意した。可能な限り勉強した方がいいだろう」

 

「うへぇ………」

 

勉強と聞いて、思わず嫌な声が出た。

 

「私達も一緒に頑張るから、ねっ?」

 

「流石にISの専門知識なんて持ってないしね」

 

葵と優花が、俺を励ますようにそう言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は流れて半月後。

俺は、女子が殆どを占める教室の中に居た。

男子は俺以外では、もう1人、男性初のIS操縦者『織斑 一夏』だけだ。

 

「はぁ…………」

 

分かっていた事だが、溜息が出るのを止められない。

周りの女子達からは、物珍しさからの好奇心の視線がひしひしと伝わってくる。

まあ、唯一の救いは、俺に対する視線はそこまで多く無く、殆どは織斑 一夏に向いている事だろう。

ハッキリ言えば、織斑 一夏はイケメン男子だ。

で、俺はフツメンだ。

葵と優花に言わせれば、普通よりちょい上らしいが。

更に言えば、俺には『女性から異性として好かれない』因果を持っているので、思春期真っ盛りの女子生徒達の俺達に対する第一印象は、織斑 一夏に軍配が上がるからだろう。

……………女性から好かれない事を感謝したのは初めてだな。

その織斑 一夏だが、一番前の列のド真ん中かの席で居心地が悪そうに震えている。

時々、縋るような視線で俺の方をチラチラと見ているが、そんな目で見られてもどうしようもない。

因みに葵と優花も同じクラスだが、残念なことに席は少し離れてしまっている。

様子を伺えば嬉しそうに微笑みながら手を振って来たが。

やがて、教壇に1人のメガネを掛けた女性が立つ。

女性と言っても背が低く、童顔の為、同級生と言われても違和感がない外見をしているが。ただし、胸は大きい。

優花と同じぐらい………もしかしたら、葵クラスはあるかもしれない。

 

「皆さん、入学おめでとうございます。私は副担任の山田 真耶です。よろしくお願いします」

 

どうやら山田先生と言うらしい。

 

「「「よろしくお願いします、先生」」」

 

俺、葵、優花だけの声が響いた。

一瞬、あれ?と思ったが、生徒たちは織斑(と、一応俺)に視線を集中させており、誰も挨拶を返さない。

織斑は言わずもがな奇異の視線に晒され周りの状況に反応できる精神状況ではない。

結果、俺達3人だけが返事を返す形になった。

3人だけしか返事を返さなかったため、山田先生は一瞬狼狽えたが、

 

「きょ、今日から皆さんはこのIS学園の生徒です。この学園は全寮制。学校でも、放課後でも一緒です。仲良く助け合って、楽しい3年間にしましょうね」

 

山田先生はニッコリを笑みを浮かべてそう言う。

 

「「「はい!」」」

 

しかし、やはり返事を返したのは俺達3人だけだった。

せめて最初の挨拶ぐらい返すのがマナーだと思うんだがなぁ………

山田先生が居た堪れない。

 

「は、はい、それでは自己紹介をお願いします」

 

何とか俺達の返事を繋いで話を進める山田先生。

出席番号順で自己紹介が進んでいく中、織斑はソワソワと挙動不審に陥っている。

窓際の席の女子生徒に視線を向けて顔を逸らされていた。

知り合いかね?

すると、自己紹介が織斑の番になり、山田先生は声を掛けるが、一杯一杯な織斑は声を掛けられている事に気付いていない。

 

「織斑 一夏君!」

 

「は、はい!」

 

大きめの声で呼びかけられて織斑はようやく山田先生に気付く。

その慌てぶりを見て周りの女子からは笑いが零れた。

 

「ごめんね大声出して。『あ』から始まって今『お』なんだよね。自己紹介してくれないかな? 駄目かな?」

 

山田先生は顔の前で手を合わせながら謝り、織斑にお願いする。

 

「いや、あの………そんなに謝らなくても…………」

 

困った反応をする織斑。

すると、気を取り直した織斑は立ち上がり、

 

「織斑 一夏です! よろしくお願いします!」

 

織斑はそう言うが、周りからはもっと喋ってと言わんばかりの視線が集中する。

織斑は何やら苦悶していたが、一息吐いた織斑の口から出た言葉は、

 

「以上です!」

 

それだけだった。

その瞬間、俺達以外の生徒が全員ズッコケる。

皆リアクションがいいなぁ………

まあ織斑の気持ちも分からんでもない。

あれだけ奇異の視線が集中されていれば、並の精神力の持ち主ではまともな自己紹介など不可能だろう。

その時、織斑の背後に人影が近付き、

 

―――スパァァァン!

 

とけたたましい音を立てながら、手に持っていた出席簿で織斑の頭を叩いた。

良い音したなー、と眺めていると、

 

「げえっ! 関羽!?」

 

振り返った織斑が叫んだ。

 

――パァァァァァァン

 

その瞬間にひびく 2度目の打撃音。

 

「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」

 

その人物、黒髪の女性は織斑にそう言うと、

 

「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」

 

山田先生がその女性にそう聞いた。

って、今『織斑』って………

 

「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」

 

「い、いえっ。副担任ですから、これぐらいはしないと……」

 

そうやり取りをする先生達。

すると、織斑先生と呼ばれた先程の女性が生徒たちの方へ向き直り、

 

「諸君、私が織斑 千冬だ。君達新人を、一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聞き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は、弱冠15歳を16歳までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな?」

 

軍隊か、ここは?

いや、ISなんつー実質兵器を取り扱ってる時点で軍隊みたいなものか。

俺がそう納得すると、

 

「キャーーーーーーッ! 千冬様! 本物の千冬様よ!」

 

「ずっとファンでした!」

 

「私、お姉さまに憧れてこの学園に来たんです! 北九州から!」

 

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

 

「私、お姉様のためなら死ねます!」

 

突然、大半の女子から歓声が沸いた。

 

「!?!?!?」

 

俺は思わず吃驚した。

突然の大声なもんだから耳が痛い。

その様子を織斑先生はうっとうしそうな顔で見ると、

 

「………毎年、よくもこれだけの馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か? 私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」

 

これまた教師とは思えない発言が飛び出す。

にも拘らず、

 

「きゃあああああ! お姉様! もっと叱って! 罵って!」

 

「でも時には優しくして!」

 

「そしてつけあがらないように躾をして!」

 

色々とヤバい発言が飛び出しているが、どうやら織斑先生は、よっぽどの有名人………

って言うか、確か初代ブリュンヒルデの名前がたしかそんな名前じゃ………

そうであるなら、これだけの騒ぎも納得だ。

 

「で? 挨拶も満足に出来んのか、お前は?」

 

「いや、千冬姉。俺は……」

 

――パァン!

 

三度快音が響いた。

 

「織斑先生と呼べ」

 

「……はい、織斑先生」

 

つーか、今のやり取りってもしかして、

 

「え………? 織斑君って、あの千冬様の弟?」

 

「それじゃあ、世界で2人だけしかいないIS操縦者っていうのも、それが関係して………」

 

「ああっ、いいなぁ。 代わってほしいなぁ」

 

他の生徒達も気付いたようだが、織斑と織斑先生はどうやら姉弟の様だ。

ただ、今の一連の流れを見て、代わって欲しいとは全く思わんが。

 

「HRを中断させてしまったな。自己紹介を続けろ!」

 

織斑先生の言葉で自己紹介が続いていく。

すると、葵の番になり立ち上がる。

 

「神代 葵です。年齢は18歳ですが、特例でIS学園に入学することになりました。皆より年上だけど、気にせず仲良くしてくれると嬉しいな。趣味はデジモンのカードゲーム。特技は…………一応剣術かな………? それから、私はデジモンのテイマーだから、本物のデジモンがパートナーに居るの。この学園にも連れて来てるから、見かける事があると思うけど、いい子だから安心してね。以上です」

 

葵の自己紹介で、デジモンのパートナーがいると言った所で生徒達がザワザワと騒めく。

 

「静かにしろ! 次の者! 自己紹介を続けろ!」

 

織斑先生の一喝で教室が静まり返り、次のクラスメイトが自己紹介を始める。

その数人の後、

 

「次、黒騎 大士君」

 

「はい」

 

山田先生に名を呼ばれ、俺は立ち上がる。

流石に『男』と言うだけで物珍しいのか、奇異の視線が集中する。

ただ、織斑に対しては少なからず『異性』としての視線が混じっていたが、俺に対しては『好奇心』100%の視線だ。

 

「あ~、黒騎 大士です。何の因果かISを動かしてこの学園に来ることになりました。葵と同じく18歳ですが、あまり気にしないでください。趣味は同じくデジモンカードゲーム。特技は…………特にないな」

 

流石にデジソウルとは言えんな。

 

「それと、俺もデジモンテイマーでパートナーデジモンが居る。見かけたら宜しく」

 

俺がそう言うと、やはりざわめきが起こる。

それからまた数人が自己紹介すると、

 

「園部 優花よ。大士や葵と同じく18歳で、特例でこの学園に入学したわ。趣味は料理………最近ではデジモンのカードゲームも始めたわね。特技はジャグリングかしら? あと、私もデジモンテイマーだからそこの所はよろしく」

 

優花の言葉で再び騒めく生徒達。

そのざわめきの中には、

 

「デジモンがいるの……?」

 

「大丈夫かな? 襲われないかな?」

 

などと、不安の声もある。

微妙な空気の中SHRが終わり、始業前の休み時間になると、廊下に世界で2人だけの男性IS操縦者を見ようと他のクラスの生徒が集まってきていた。

俺は、動物園のパンダはこんな気分なんだろうなと、なるべく気にしないようにした。

とは言っても、大体の視線は織斑に向いているが。

すると、その視線に耐えきれなくなったのか、織斑が席を立つと、俺の方へ歩み寄って来た。

 

「あ、あのさ…………黒騎 大士………だったよな?」

 

織斑が声を掛けてきた。

 

「織斑 一夏だったな」

 

俺もそう返す。

 

「ああ………男は俺以外には大士しかいないからさ、仲良くしようと思って………」

 

織斑はそう言うが、年上だけど気にするなとは自己紹介で言ったが、いきなり呼び捨てにするのは如何かと思うが…………

 

「まあ、確かに肩身が狭いのは同意する」

 

とは言え、その程度で怒っていても仕方がない。

 

「そうだよな! この学園でたった2人だけの男なんだ! 仲良くしようぜ!」

 

織斑はそう言いながら、俺の肩をバシバシと叩く。

良く言えばフレンドリー。

悪く言えば馴れ馴れしい。

 

「まあ、よろしく頼む」

 

俺は一応そう返す。

性格は違うが、何となく天之河を連想させる雰囲気を持つ織斑に、若干の苦手意識を覚えた。

その時、

 

「ちょっといいか……………」

 

黒髪をポニーテールにした女子生徒が話しかけてきた。

 

「箒…………」

 

織斑が呟く。

 

「知り合いか?」

 

「ああ、俺の幼馴染の篠ノ之 箒だ」

 

俺が聞くと、織斑は頷いた。

 

「初めまして、篠ノ之 箒です。黒騎さんですね?」

 

篠ノ之さんはそう言って頭を下げる。

 

「ああ、黒騎 大士だ。そこまで畏まる必要はないぞ」

 

俺がそう言うと、

 

「いいえ、目上の人には礼儀を尽くすのが当然なので…………」

 

篠ノ之さんはそう言って態度を改めたりはしなかった。

それでも、その礼儀正しさには織斑よりも好感を覚える。

 

「そうか、それなら構わないんだが………何か用があったんじゃ?」

 

「はい、一夏をお借りして構いませんか………?」

 

「ああ、幼馴染って言ってたな。積もる話もあるだろうから構わないよ」

 

俺がそう言うと、2人は教室から出ていった。

 

 

尚、2人は始業ベルに間に合わず、織斑先生に出席簿で叩かれる羽目になった。

 

 

 

 

授業日数に余裕がないIS学園は、入学初日から授業があった。

専門用語やら何やらが多くて頭が痛くなるが、ここ半月の猛勉強の成果か、何とかついて行ける。

 

「織斑君、何か分からないところがありますか?」

 

授業を担当していた山田先生が、困っている様子だった織斑に声を掛けた。

織斑は言い出しにくそうにしていたが、

 

「分からないところがあったら聞いてくださいね。 何せ私は先生ですから」

 

山田先生のその言葉で腹を括ったのか、織斑は口を開く。

 

「先生!」

 

「はい! 織斑君!」

 

山田先生がどんと来いといった雰囲気で応える。

だが、

 

「ほとんど全部わかりません!」

 

この一言で山田先生の顔が引きつった。

 

「え………ぜ、全部ですか…………?」

 

唖然とする山田先生。

 

「え、えっと………織斑君以外で、今の段階で分からないっていう人はどれぐらいいますか?」

 

教室を見回しながらそう質問する。

しかし、誰も手を挙げない。

 

「え~っと………黒騎君は大丈夫ですか?」

 

同じ男子生徒の俺にも心配そうに声を掛ける。

 

「まあ、何とか大丈夫です」

 

「そうですか………」

 

「………織斑、入学前に貰った参考書は読んだか?」

 

織斑先生が織斑に質問する。

すると織斑は、

 

「古い電話帳と間違えて捨てました」

 

アホかっ!!

俺は思わず内心ツッコミを入れた。

何であんなもんを電話帳と間違える!?

その瞬間、パァンと乾いた音を立てて出席簿が織斑の頭に炸裂する。

 

「必読と書いてあっただろうが馬鹿者。後で再発行してやるから一週間以内におぼえろ。いいな」

 

「い、いや、一週間であの分厚さはちょっと………」

 

織斑先生の言葉に織斑が抗議するが、

 

「やれと言っている」

 

「………はい。やります」

 

織斑先生の人睨みで織斑は黙らされ、頷くしかなかった。

同情はしない。

自業自得だ。

 

 

 

次の授業の合間の休み時間。

 

「大士。最初の授業はどうだった?」

 

葵と優花が俺の席にやって来た。

 

「まあ、授業中も言った通り、今の所は何とかなってるよ」

 

葵の言葉にそう返すと、

 

「ふーん………で? 女の子に囲まれてる感想は?」

 

優花が少しニヤニヤしながら聞いてくる。

 

「動物園のパンダの気持ちがよくわかった気がする」

 

俺に向けられる視線は、物珍しさからくる視線ばかりだ。

織斑に向けられる、イケメンに対する異性的な目で見られるような視線は1つも無い。

まあ、そういう因果を持ってるからなんだが。

その時、

 

「よっ、大士!」

 

織斑が気軽に片手を上げて声を掛けてくる。

 

「織斑か………」

 

「一夏でいいよ。他人行儀だな?」

 

「初対面の人物をいきなり名前呼びするほど神経図太くないだけだ」

 

まあ、トータスじゃファーストネームで呼ぶのが普通だったが。

 

「そうだよね~。私達の事も名前で呼び捨てするまでに結構時間かかったし」

 

「葵はまだ名前呼びだったからいいじゃない。私はずっと苗字にさん付けだったわよ」

 

葵と優花が俺の言葉にツッコむようにそう言う。

 

「え~っと………君達は………?」

 

織斑が葵と優花を見て声を漏らす。

 

「私は神代 葵。大士と同じ学校からIS学園に入って来たの」

 

「園部 優花よ。右に同じ」

 

「そうか! 俺は織斑 一夏だ! よろしくな!」

 

織斑は満面の笑顔でそう言う。

 

「よろしくね」

 

「よろしく」

 

対して2人は普通に返した。

すると、

 

「ちょっとよろしくて?」

 

金髪碧眼の女子生徒が話しかけてきた。

 

「へ?」

 

「ん?」

 

「何かな?」

 

「誰?」

 

俺達はそれぞれ声を漏らしながらそちらを向く。

 

「まあ! 何ですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

 

「…………………」

 

織斑は呆気に取られて無言であり、

 

「……………ふう」

 

「あ~…………」

 

「面倒そうな奴が来たわね………」

 

俺は溜息を吐き、葵はどういう反応をしていいか分からず、優花はボソッと呟いた。

すると織斑が口を開いた。

 

「悪いな。俺、君が誰だか知らないし」

 

いや、織斑。

正論だがもうちょい聞き方を考えろ。

こういうタイプは………

 

「わたくしを知らない? このセシリア・オルコットを? イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」

 

やはりと言うべきか、織斑の言葉か癇に障ったらしく、そう捲し立てるセシリア・オルコットと名乗った女子生徒。

その時、

 

「あ、質問いいか?」

 

織斑がそう発言する。

 

「ふん、下々の者の要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

「代表候補生って、何?」

 

その言葉に、周りの女子数名がズッコケて、俺、葵、優花も脱力した。

 

「あ、あ、あ、貴方っ! 本気でおっしゃっていますの!?」

 

オルコットさんが驚愕しながら叫ぶ。

 

「おう。 知らん」

 

ハッキリとそう言う織斑。

 

「信じられませんわ! 日本の男性と言うのはこうも知識に乏しいのかしら? 常識ですわよ! 常・識!」

 

「そうなのか? 大士は知ってたか?」

 

何故か俺に振る織斑。

 

「普通に入学前の参考書に載ってたぞ? そもそも、それ以前に知らなかったとしても、その言葉から普通に連想できると思うんだが?」

 

「え? どういうことだ?」

 

俺の言葉が理解できなかったのか、織斑は聞き返してくる。

 

「IS操縦者が『代表』と言ったら基本的に何を指す?」

 

「えっ? 国家代表だろ?」

 

「ああ。それで、『候補』の意味位は分かるよな?」

 

「おう」

 

「つまり『代表』『候補』生とは?」

 

「おお、なるほど………! 国家代表の候補って事か!」

 

ポンと手を打ちながら納得したと言わんばかりにそう言う織斑。

 

「そう! その通り! エリートなのですわ! 本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくする事だけでも奇跡……幸運な事なのですよ。 その現実を、もう少し理解していただける?」

 

「そうか。それはラッキーだ」

 

本当にこいつは言い方をもう少し考えろ!

 

「……馬鹿にしていますの?」

 

これはオルコットさんに同感だ。

 

「あなたISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。世界で2人しかいないISを操縦できると聞いていましたから、少しくらい知的さを感じさせるかと思っていましたけど、期待外れですわね」

 

馬鹿にしたように言うオルコットさん。

 

「俺に何かを期待されても困るんだが」

 

「そもそも俺達は、日常的にISと関わっている君ら『代表候補生』とは違い、ISに関わる事なんて無い一般人だ。そもそもISを動かせないと言われていた『男』だしな。開発に関わっている技術者やパトロン関係以外で、ISに関わっている『男』が居るのならこっちが知りたいぐらいだ」

 

まあ余程のロボット好きなら、趣味で情報を集めている奴位は居ると思うが。

 

「ふ、ふん。まあ、でも? わたくしは優秀ですから、あなたのような人間にも優しくしてあげますわよ。ISの事で分からないことがあれば、まあ、泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ。 何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

 

オルコットさんは、最初言葉に詰まるものの、最後は得意げにそう言う。

すると、

 

「あれ? 俺も倒したぞ。教官」

 

丸く収まりそうだった所に織斑の奴が爆弾を放り投げやがった。

 

「は………?」

 

呆気にとられた声を漏らすオルコットさん。

 

「まあ、倒したというか、突っ込んできたから咄嗟に避けたらそのまま壁にぶつかって動かなくなっただけなんだけど…………」

 

織斑のその言葉にオルコットさんは固まっている。

 

「わ、わたくしだけと聞きましたが?」

 

「女子ではってオチじゃないのか? 大士はどうだった?」

 

またもやいきなり俺に話を振る織斑。

 

「俺は普通に戦って、普通に負けたぞ」

 

そもそも、ISを動かしたのも試験が初めてだ。

動くので精一杯だった。

デジソウルで身体強化したら、ISの方がぶっ壊れかねんし。

因みに葵や優花も一緒だ。

ISに気を使い過ぎて、うまく操縦できずに負けている。

 

「なっ!? あなたも教官を倒したって言うのですか!?」

 

凄い剣幕で織斑に迫るオルコットさん。

 

「お、落ち着けよ………な?」

 

「これが落ち着いていられ…………!」

 

と、そこまで言った所で始業ベルが鳴る。

 

「っ………! また後で来ますわ! 逃げない事ね! よくって!?」

 

オルコットさんはそう言い残すと自分の席へ戻っていき、織斑も気付いたように慌てて自分の席へと戻っていった。

因みに葵と優花は始業ベルが鳴る前には席に着いていた。

 

 

 

 

次の授業では織斑先生が教壇に立った。

 

「それではこの時間は、実戦で使用する各種装備の特性について説明する」

 

織斑先生はそう言って授業を始めようとしたが、途中で何かを思い出したようにハッとして、

 

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

そんな事を言い出した。

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席………まあ、クラス長だな。因みにクラス対抗戦は入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点で大した差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで。自薦他薦は問わない」

 

織斑先生がそう言い終わると、

 

「はいっ! 織斑君を推薦します!」

 

「私もそれが良いと思います」

 

織斑が推薦される。

っていうか、選ぶ理由が物珍しさか。

別に悪いとは言わんが、クラスの評価に直結しかねんという事は理解してるのかね?

まあ、如何でもいい事だが、

 

「ちょ、ちょっと、待った! 俺そんなのやらな………」

 

「自薦他薦は問わないと言った。他薦されたものに拒否権など無い。選ばれた以上は覚悟を決めろ」

 

「い、いやでも……」

 

事態に気付いた織斑が抗議の声を上げるものの、織斑先生に三言で鎮圧される。

 

「じゃ、じゃあ俺は大士を推薦する!」

 

織斑の奴が俺を推薦しやがった。

 

「俺を巻き込むなよ織斑………」

 

「旅は道連れだ! お前だけ逃げようったってそうはいかないぜ!」

 

逃げるも何も、推薦されたのはお前なんだが。

 

「はぁ………まあいいけど」

 

投票で選ぶにしても、大半は織斑に入れると思うし。

 

「ほう? 織斑よりは潔いな。では追加で黒騎 大士………他には居ないか? 居なければこの2人で投票ということになるが………」

 

織斑先生がそう言いかけた所で、

 

「待ってください! 納得がいきませんわ!」

 

オルコットさんがそう叫びながら立ち上がった。

 

「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

オルコットさんは興奮してきているのか言葉が荒くなっていく。

 

「実力から行けば、わたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスする気は毛頭ございませんわ!」

 

まあ、物珍しさで選ぶのは、確かに問題あると思うが、その発言も問題大ありだぞ。

しかも、代表候補生と言う肩書を持つ人物。

下手をすれば国際問題に発展しかねない。

まあ、問題になったとしても、代表候補生の資格を剥奪されるぐらいだと思うが。

 

「いいですか!? クラス代表は実力のトップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」

 

自信家な事は結構だが、行き過ぎれば『傲慢』だ。

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で…………!」

 

それ以上は流石に拙くないかと思い始めた所で、

 

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ!」

 

「………なっ!?」

 

織斑が馬鹿にされ続ける事に耐えられなかったのか、そう言い返した。

 

「あっ、あっ、あなたねえ! わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

 

「先に日本を侮辱したのはそっちだろうが!」

 

オルコットさんの言葉に、織斑は睨み返しながら言い返す。

すると、オルコットさんは織斑を指差し、

 

「決闘ですわ!」

 

「おう。 良いぜ。 四の五の言うより分かりやすい」

 

「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い……いえ、奴隷にしますわよ」

 

「侮るなよ。 真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」

 

「そう? 何にせよ丁度良いですわ。イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね………!」

 

「男の意地を見せてやろうぜ! 大士!」

 

「は?」

 

なぜ今の流れで自分にも飛び火するのか理解できない。

 

「おい織斑。何で俺を巻き込む?」

 

俺は思わず聞き返した。

 

「そんなの当然だろ!? あれだけ日本を馬鹿にしたんだ! お前だって許せないだろ!?」

 

織斑は、自分の考えがさも正しいと言わんばかりに同意を求めてくる。

 

「……………はぁ」

 

俺は思わず溜息を吐いた。

やはり織斑は、若干方向性が違うだけで天之河と同じ類の人間の様だ。

 

「「何だよ(ですの)その溜息は!?」」

 

怒りを露にして同時に叫ぶ織斑とオルコットさん。

 

「因果応報という言葉を知っているか? 自分の行いは自分に返ってくるという意味だが…………」

 

「だから何だよ………!?」

 

織斑は若干イラつき気味に聞き返してくる。

 

「簡単に言えば、お前がオルコットさんの言葉に対して言い返さなきゃ、オルコットさんは普通にその報いを受けてたって事だ」

 

「えっ?」

 

「ど、如何いう意味ですの!?」

 

2人は意味を理解できていないのか聞き返してくる。

 

「例えばだが………このクラスの誰かがオルコットさんの先程の言葉をSNSなんかに書き込んだらどうなると思う?」

 

「………………………ッ!?」

 

「どうなるって言うんだよ?」

 

オルコットさんはその意味を理解したらしく顔を蒼白にしたが、織斑は意味が解ってないのか首を傾げる。

 

「即行で拡散されて大炎上。真偽の確認はあると思うが、このクラスと言う証人が揃っている以上言い逃れは不可能。オルコットさんはその責任を問われることになる。まあ、最低でも国家代表にあるまじき発言という事で、代表候補生から降ろされる可能性は高いと思うぞ?」

 

「ハハッ! そりゃいいや!」

 

織斑はざまあみろと言わんばかりに笑い声を零すが、

 

「だが、それもお前が言い返した事で無効になった」

 

「何でだよ!?」

 

「言っただろ? お前が何も言い返さなければ、と。お前が言い返した際、お前はオルコットさん個人ではなく、イギリスそのものに対して侮辱し返した。その時点でお前も同罪だ」

 

「えっ?」

 

「世界初のIS男性操縦者が言い返しただけとは言え、イギリスを馬鹿にする発言をした。それだけでも全世界の注目の的だ」

 

「そ、そんな………俺なんかにそんな事…………」

 

「お前は………ここは俺もだが、お前が考えている以上に世界から注目されてるんだよ。一挙一動、発言の1つ1つまで注目されてると言っても過言じゃない」

 

「で、でも、俺には下がる評価なんて…………」

 

「お前には無いだろうな。だが、織斑先生に飛び火する可能性はある」

 

「なっ!? 何で千冬姉に!?」

 

「世界最初のブリュンヒルデの弟である世界初のIS男性操縦者が、問題発言をした。マスコミにとってはこれ以上無いスキャンダルだ」

 

「千冬姉は関係無いだろ!?」

 

「世間っていうのはそう言うものだ。オルコットさんの方も問題にはなるだろうが、一国の代表候補生の1人に過ぎないオルコットさんの問題発言と、初代ブリュンヒルデの弟で世界初のIS男性操縦者である織斑の問題発言。どっちに注目が集まるかは言わなくても分かるだろう? まあ、どっちも報いを受ける可能性が一番高いか?」

 

「そ、それは……………」

 

その時、ずっと俯いていたオルコットさんが顔を上げた。

 

「…………皆さん! 先ほどわたくしが日本を乏しめてしまった事を取り消させていただくと共に謝罪いたします。本当に申し訳ありませんでした!」

 

オルコットさんは深く頭を下げながら謝罪の言葉を口にした。

ちゃんと自分の非を認めて謝罪できるところは評価できるな。

 

「しかし、これだけは取り消す訳にはまいりません。クラス代表に相応しいのはこのわたくしだと!」

 

オルコットさんは、胸に手を当て凛とした態度でそう言い放った。

素直にその姿は格好いいと思う。

 

「望むところだ! 受けてやる!」

 

織斑はそんなオルコットさんに対抗するようにそう言うが、

 

「……………織斑」

 

一つ気になった事があった俺は織斑に声を掛けた。

 

「何だよ………?」

 

「お前は謝らないのか?」

 

「えっ?」

 

「オルコットさんは自分の非を認めて謝罪した。なら、お前もイギリスを馬鹿にした発言をした事を謝罪するべきだと思うが?」

 

「うっ………!」

 

その言葉に織斑はハッとなる。

 

「あ、う、その…………イギリスの料理を馬鹿にして………悪かった!」

 

オルコットさんが誠心誠意謝ったのに対して、織斑は渋々と言った感じだな。

それでも、

 

「その謝罪は受け入れます。以後、その話題を問題にしない事をお約束いたします」

 

オルコットさんはそう言って織斑の謝罪を受け入れた。

すると、

 

「さて、話はまとまったな。織斑、オルコット、黒騎で勝負を行う。日時と場所は一週間後の月曜の放課後、第三アリーナ。3人はそれぞれ用意をしておくように」

 

結局俺も入ってるのな。

 

「それでは授業を始める!」

 

織斑先生の号令で授業が始まった。

 

 

 

 

 

 

放課後、教室で机にぐったりと倒れていた織斑を置いて、俺、葵、優花は自室に向かっていた。

俺達はとある理由で既に部屋は決まっている。

学生寮の指定された部屋の前に辿り着き、扉を開けると、

 

「あっ! お帰り大士!」

 

扉の中に居たドルモンが嬉しそうに声に出しながら俺に歩み寄ってくる。

 

「ああ、ただいまドルモン。リュウダモンとハックモンもな」

 

「ただいま」

 

「ただいま」

 

「戻ったか、葵」

 

「優花、お帰り」

 

俺に続いて葵と優花も部屋に入る。

部屋の中には、ドルモン、リュウダモン、ハックモンが居た。

パートナーデジモンを持つ俺達を、他の誰かとペアにさせる訳には行かないので、山木さんの権限で3人とも同じ部屋にして貰ったのだ。

IS学園側は渋ったようだが、結局は3人を纏めておいた方が問題は少ないだろうという事でこうなっている。

 

「1日中閉じ込めるような羽目になって悪いな」

 

「ううん。一緒に居るためだもん。この位我慢するよ!」

 

そう言ってドルモンは笑って見せる。

 

「もう少しして、ドルモン達の存在が受け入れられたら、少し位自由行動を取れるように掛け合ってみるから、それまで我慢してくれな?」

 

俺はドルモンの頭を撫でながらそう言う。

ドルモンはその手を気持ちよさそうに受け入れた。

そんな風に和んでいた時、

 

―――ズドンッ!

 

と、何かを貫く様な衝撃音が響いた。

更に、何やら廊下が騒がしくなっている。

 

「何だ?」

 

ドアを開けて様子を伺うと、織斑がドアの前で何やら慌てている様子が目に入った。

次の瞬間、

 

―――ズドンッ!

 

と、先程まで織斑の頭があった場所に、棒のような物が突き出る。

 

「って、本気で殺す気か!? 今の躱さなかったら死んでるぞ!?」

 

織斑が扉に向かって叫ぶ。

 

「何やってんだお前………?」

 

俺は織斑に歩み寄って声を掛ける。

 

「た、大士! 助けてくれ!」

 

俺に縋り付くように助けを乞う織斑。

 

「落ち着け。一体何があった?」

 

俺がそう聞くと、

 

「そ、その………指定された部屋に入ったら、ルームメイトが箒で………しかもシャワーから出てきた所で………」

 

織斑の説明はたどたどしかったが、

 

「おけ、把握」

 

こいつは何ともテンプレなラッキースケベをかましたらしい。

 

「た、頼む大士! 何とか取り成してくれ!!」

 

頭の上で手を合わせながら、頭を下げる織斑。

まあ、関係無いと放っておいても良かったんだが、その姿が余りにも哀れな事と、周りに他の生徒達が集まって来たことで、俺まで変な噂が立てられたら堪らないという理由で、やれやれと承諾した。

俺は穴が2つ空いた扉に近付き、ノックしようとした瞬間、

 

―――ズドッ!

 

3発目の突きが繰り出される。

その軌道は俺の眉間に一直線。

常人なら良くて昏倒。

当たり所が悪ければ、失明や、最悪死ぬこともあり得る威力。

とまあ、こんな説明をしている余裕がある時点で分かっていると思うが、俺の目には木刀が扉を突き破る瞬間からハッキリと見切っている。

周りにバレない程度にデジソウルを使って身体能力を強化しているからだ。

念の為に使っておいてよかった。

俺は、眉間に向かって突き進んでくる木刀の切っ先を右手で掴む。

そして、

 

「落ち着け篠ノ之さん。俺は黒騎だ」

 

俺がそう声を掛けると、ガタガタッと慌てるような音が響いて、

 

「くっ、黒騎さんっ!? わ、私は何という事を!? だ、大丈夫でしたか!?」

 

「安心しろ、怪我は無い。それよりも、何があったのかは聞いたが、一先ず織斑を部屋に入れてやってくれ。このままだと色々騒ぎになるぞ」

 

「しょ、少々お待ちを!」

 

時折慌てるような音が響き、大よそ1分後。

ガチャリと扉が開く。

現れた篠ノ之さんは、剣道着を身に纏っていた。

この子も剣の使い手か。

あの突きの威力にも納得だな。

 

「…………入れ」

 

織斑に向かってそう言う篠ノ之さん。

織斑は助かったと言わんばかりに部屋に入ろうとしたので、俺は自分の部屋に戻ろうとして、

 

「待ってくれ!」

 

織斑に手を掴まれて止められた。

 

「何だよ?」

 

「頼む! もう少し居てくれ! まだ箒の機嫌は直ってないんだ!」

 

「……………はぁ~」

 

俺は深く溜息を吐いた。

仕方なく織斑と一緒に部屋に入る。

あのまま断ると、更に縋りついて来て、周りの女子の恰好の噂の的になると思ったからだ。

篠ノ之さんが窓側のベッドにどすっと座り、その様子を織斑が何か言いたげに見ている。

まるで、『奥側は俺が狙ってたんだぞ』と言わんばかりだな。

お前、結構余裕だろ?

 

「…………で? 織斑から話は少し聞いたが、何でこうなった?」

 

「いや、その………俺は部屋の鍵の番号に従ってこの部屋に来たんだが………その時に箒がシャワー室から出て来て……………」

 

「反射的に木刀で織斑を攻撃したと………?」

 

俺は篠ノ之さんに視線を移しながらそう聞く。

 

「は、はい………咄嗟の事だったのでつい………」

 

篠ノ之さんは恥じるように頷いた。

 

「ふう…………」

 

俺は一度息を吐くと、

 

「まず篠ノ之さん」

 

「は、はい………」

 

「男に裸を見られて反射的に攻撃するのは仕方ない。だけど、木刀で殴りかかるのはやり過ぎだ。見るからに篠ノ之さんは剣士なんだろう? それもかなりの熟練者。そんな篠ノ之さんの剣は、木刀と言えど十分な凶器だ。下手をすれば怪我じゃすまない。せめて平手にしておくべきだ」

 

「う………その通りです………」

 

「剣の修業は、精神を鍛える意味もあるだろう? 感情のままに剣を振ってちゃ、まだまだ未熟な証拠だぞ」

 

「ううっ………お、仰る通りです………」

 

篠ノ之さんは明らかに気落ちする。

 

「そ、そうだぞ箒! まだまだ修行が足らんぞ!」

 

織斑が俺の言葉に便乗する。

篠ノ之さんはギロッと織斑を睨んだ。

 

「…………一応聞くが、織斑。お前は篠ノ之さんがシャワー室から出てくると気付いてから実際に出てくるまでに、声の1つでも掛けたのか?」

 

「え? え~と、それは………」

 

俺の質問に織斑は答えを濁したが、

 

「いいえ。少なくとも、私が脱衣所から部屋の中に誰かが居ると気付き、私から声を掛けて脱衣所を出るまでに何秒かありましたが、何も言いませんでした」

 

「そ、それは………余りにもテンパってて………」

 

「…………で、篠ノ之さんが裸だと気付いた時点で後ろを向くなり目を逸らしたりしたのか?」

 

「いいえ、少なくとも5秒はじっくりと見られました」

 

「はい、織斑もアウト」

 

俺の言葉に織斑は項垂れる。

俺はそこで手を叩き、

 

「と言う訳でどっちも悪い! お相子って事でこの話はここまで!」

 

若干強引だがそう言って話を終わらせる。

 

「俺が出来るのはここまでだ。後は当人同士で話し合え」

 

俺はそう言って部屋を出た。

そのまま自分の部屋に戻ってくると、

 

「お帰り~」

 

葵が寝っ転がりながら出迎える。

ベッドを一つ増やしているので、織斑たちの部屋と比べると狭く感じるな。

まあ仕方ないが。

そうして、IS学園で初めての夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 






はい、IS編第1話です。
アンケートの結果、IS編を先にやることになりました。
まあ、アナザールートだとおかしなことになりそうだったので、完全なIFルートでやって行こうと思います。
それはともかく、結構詰め込んだ感がありますね。
原作と同じような流れながらも、ちょくちょく大士らしいツッコミを入れてみました。
まあ、入学初日なので、あまり変わってはいませんが…………
で、まあ、いきなりですが、ヒロインに関するアンケートを↓でとります。
感想で色んな意見が出てきたので。
と言う訳で投票お願いします。

IS編の大士のヒロインについて

  • 追加しない。葵と優花で十分
  • 楯無&簪
  • 寧ろ全員
  • 楯無&簪+各自アンケート
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