IS学園に入学した翌日。
食堂は騒然となっていた。
何故なら、
「ねえ大士………本当に俺達がここに来て良かったの………?」
「流石にいきなり現れたら、周りを驚かしてしまうと思うのだが………」
「私達の事なら、気にする事は無いぞ」
俺達がそれぞれパートナーデジモンを連れて食堂に現れたからだ。
「いいさ。いつまでも隠しきれるものじゃないんだ。自己紹介でもパートナーデジモンが居るって言ったしな。下手に隠して変な噂を立てられるより、堂々と姿を見せて、害は無いと教えた方が、まだ良い方に転ぶと思ったんだ」
俺は自分の考えを口にする。
「そうかもしれないけど………」
ドルモンは心配そうに呟く。
ドルモンが心配するのも分かる。
実際に、ドルモン達を連れている俺達の周りからは、恐れるように他の生徒達が距離を取って、不安そうな視線を向けてきている。
まだ初日だから仕方ないと思っていたが、
―――タタタタッ
軽快な足音を響かせながら、何者かが駆け寄ってくる。
そして、
「ドルモンッ!」
遠慮なくドルモンに飛びついた。
それは、
「わっ!? 美姫っ!?」
IS学園の制服を身に纏った俺の妹の美姫だった。
「ふわぁ~! ドルモンのモフモフ~! IS学園でもドルモンのモフモフが堪能できるなんて思ってなかったよ~!」
美姫はドルモンの毛に顔を埋めてスリスリする。
「わわっ!? くすぐったいよ美姫~!」
実は美姫はIS学園の生徒だったりする。
「何やってんだお前は………?」
俺は美姫の様子を見て、呆れた様に声を漏らす。
美姫は顔を上げると、
「むっ? 先輩に向かってそんな口の利き方していいのかな~?」
美姫はニヤニヤと笑みを浮かべる。
リボンの色は2年生の色だ。
俺はそれを聞くと、
「……………そうですね。申し訳ありませんでした。黒騎先輩」
「そうだね。ちゃんと先輩には敬語を使わなきゃいけないね、美姫先輩」
「先輩を敬うのは当然よね。美姫先輩」
姿勢を正して敬語で喋りかけてやった。
「うっ………!?」
その途端狼狽える美姫。
「や、やっぱり今の無し! いつも通りにしてぇ!」
あっさりと屈服した美姫は掌を返したように態度を改めた。
「くくく………」
その様子に、俺は思わず笑いを零す。
「もう! 笑わないでよ~!」
気付けば、いつの間にか周りの空気が和んでいた。
今の一連の様子を見て、ドルモン達への偏見が幾分か緩和した様だ。
計らずとも、美姫のお陰で良い方向へ動いたようだ。
その後、美姫やドルモン達も一緒に楽しく朝食を摂ることになった。
昨日と同じく、何とか理解しながら授業を受けていると、
「ところで織斑、お前のISだが準備まで時間がかかる」
いきなり織斑先生が切り出す。
「へ?」
素っ頓狂な声を漏らす織斑。
「予備機が1機しか無い。その予備機の打鉄が黒騎に支給されることに決まった。だから少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」
「はい?」
俺の名前が出てきたことで、思わず声を漏らした。
「?」
織斑が首を傾げる。
しかし、織斑先生の言葉に教室中がざわつきだす。
「せ、専用機!? 1年の、しかもこの時期に!?」
「つまりそれって政府からの支援が出てるってことで……」
「ああ~。いいなぁ……私も早く専用機欲しいなぁ」
周りがそんなことを言っていると、
「黒騎、今言ったとおりだが、お前に専用の打鉄が貸し出されることになった。後で渡すから取りに来い」
織斑先生のその言葉に、
「………了解です」
俺はそう言って置く。
正直IS貸し出されても、扱いに困るだけなんだよなぁ。
俺達にとっちゃ拘束具みたいなもんだし。
すると、
「専用機って……なんか凄いのか?」
織斑が本当に呆れるぐらいの質問をした。
「織斑、教科書6ページ。音読しろ」
簡単に言えば、ISのコアは全部で467機しかなく、開発者である篠ノ之 束博士しか作れない上に、既に製作を中止している為、ISのコアはその467機が全てだ。
その為、各国は現存のコアを割り振って使用している。
つまりは数に限りがるので、専用機を持つという事は、これ以上ない特別待遇という事だ。
と言うか、姉である織斑先生を誇りに思ってるなら、少し位興味持たないのかね?
放課後。
織斑先生から『打鉄』の待機状態である腕輪を受け取った後、俺は葵、優花と共に学生寮に向かう歩道を歩いていた。
すると、
「………………………」
優花がピタリと足を止めた。
「優花?」
「どうしたの?」
俺と葵が問いかけると、優花は後ろを振り向き、
「いい加減出てきたらどうかしら?」
後ろに向かってそう声を掛ける。
だが、風が吹き抜けるだけで何も反応は無い。
すると、優花は道端に転がっていた小石を拾い、
「いくら敵意が無いとは言っても、ジロジロ観察されるのはいい気がしないの……よっ!」
一度弄ぶように軽く放り投げた石を、パシッと掴み取ると同時に振り被り、言葉を言い終えると共に投げ付けた。
その石は、歩道の両脇に植えられている木の、とある一本に向かって一直線に突き進み、
―――ドキャァッ!!
絶対に投石では出せない様な衝突音を響かせて幹に激突。
その表面を大きく陥没させて、その木を揺るがせた。
その瞬間、
「ちょ、ストップ! ストーップ!」
その木の影から慌てながら1人の女子生徒が姿を見せた。
その女子生徒は、水色の髪が外向きに跳ねたセミロングの髪型でルビー色の瞳を持った美少女だった。
「何よ今の威力………投石で出せる威力じゃないでしょ………」
その少女は、大きく陥没した木の幹を見ながらそう言った。
「………で、あなた誰?」
優花がそう問いかけると、その少女は佇まいを直し、
「初めまして。私の名前は更識 楯無。この学園の生徒会長よ!」
更識 楯無と名乗った少女は、手に持った扇子をバッと開きながらそう名乗った。
その扇子には『参上』と達筆で書かれている。
と、そこまで考えて、俺はふと思い出した。
「更識………更識って、もしかして山木さんが言ってた………」
IS学園に入学する前に山木さんに伝えられていた事があったのだ。
このIS学園には、政府と繋がりのある対暗部用暗部の家系の生徒がいると。
困った時には相談してくれとも言われた。
「ええ、その通りよ。私が対暗部用暗部『更識家』の17代目当主、『楯無』よ。君達の事は聞いているわ。黒騎 大士さん。神代 葵さん。園部 優花さん」
「自己紹介は必要ないみたいだな。で? 何で俺達を尾行していたんだ?」
「昨日から尾行していたわよね? 敵意が無かったから、昨日はほっといたけど」
俺の言葉に続いて優花がそう言う。
「あらら、バレてたの? 結構気配消すのは自信あったんだけどなぁ………」
残念そうにしながらも、顔は笑っている。
「この世界の人間にしてはやる方だと思うわよ。私には通用しないけど」
優花がそう言い切る。
「『この世界の人間にしては』………か。やっぱり行方不明になってた期間に何かあったのかしら?」
更識さんは、口元を扇子で隠しながらそう言う。
気付けば、その扇子には『謎』と書かれている。
「その事も知ってるんだ?」
葵がそう言うと、
「ええ、約1年前に、とある高校のとある教室にいた生徒達と教師が行方不明になった事件が起きた。だけど、つい最近になって、2名を除き残り全員が帰還した。あなた達も、その『帰還者』の内の3人よね」
「まあ、そこまでして隠す程の事でもないんで、その通りだと言っておきます」
「世界初の男性IS操縦者の発見で、そこまで表沙汰にならなかったけど、その帰還者達は、行方不明の間、何処に居たのかという質問に対しこう答えた。『異世界に召喚されて、邪神や魔物と戦ってました』………ってね。これを聞いた人達は、帰還者達はその間の出来事を口にするつもりは無いと判断したわ。もしくは、洗脳や催眠でそう思わされてるって所かしら?」
「こっちとしては、事実をそのまま伝えただけですがね」
「いきなりそんな創作小説のような話を聞かせられても、信じる要素は何一つないわ」
「ごもっとも」
それは当然だな。
「私もついさっきまではそう思っていた。けど、今の投石を見て考え直したわ」
「ん?」
「少なくとも、あなた達は、人知を超えた何かに巻き込まれ、何らかの『力』を手にしていると」
「なるほど。で、そうと分かったアンタはどうするんだ?」
俺は僅かに警戒を見せながらそう聞く。
すると、
「…………別にどうもしないわ。山木さんからも、あなた達とは絶対に敵対するなって念を押されてるしね」
更識さんはあっけらかんとそう言った。
俺は思わず毒気を抜かれる。
「それに、あなた達がその気になったら、私なんてあっという間にやられちゃいそうだしね。さっきからそこの優花さんが、ビシビシと威圧飛ばしてきてキツイのよ」
「優花、やめてやれ」
「…………仕方ないわね」
俺がそう言うと、優花がいつの間にか発動していた〝威圧〟を解除する。
「はぁ~……! キツかった……」
更識さんは大きく息を吐く。
「とにかく、私はあなた達の味方だから、困ったことがあれば何でも相談してね!」
更識さんは人懐っこい笑みを浮かべた。
「はぁ? その時はよろしくお願いします………」
「じゃあ、堅苦しい話はここまで! ここからは個人的な話をしたいの」
更識さんはそう言うと、
「個人的な話?」
「そう。これも聞いた話だけど、大士さん。あなたは7年前のデ・リーパー事件に関わったデジモンテイマーなのよね?」
「まあ、そうですが…………」
政府に関わってるならその位の情報は手に入ってもおかしくは無いか。
「それでその…………金色の縁取りをした、黒い鎧の騎士の様なデジモンって知ってる?」
金色の縁取りをした黒い鎧の騎士って言うと………アルファモンの事だよな?
「そのデジモンがどうかしたんですか?」
「どうかしたって言うか………昔、エージェント・デ・リーパーに襲われた時に、簪ちゃん………妹と一緒に助けられたことがあったから、一言お礼を言いたくて…………」
「………………………」
思わず言葉に詰まる。
後ろから葵と優花の、ジーッと見つめる視線を感じる。
すると、
「そうなんだ! 楯無ちゃんも!」
葵がニコニコと笑みを浮かべながら、更識さんに話しかける。
「えっ………? 私『も』って…………」
「私も一緒だよ。私もデ・リーパーに襲われた時に、その黒い騎士様に助けて貰ったの!」
「葵さんも………!?」
更識さんは驚いた顔を見せる。
「あ、あの! それじゃあ、その黒い騎士のデジモンのテイマーの方を知っていますか!?」
更識さんが葵に問いかける。
「え~っと…………知っていると言えば知っているんだけど…………」
葵は含み笑いをしながら俺に流し目を向ける。
「教えてください! 私、是非お礼が言いたくて………!」
更識さんがそう言った所で、
「悪いが、そいつは何と言うか………ちょっとシャイな奴でな? 余り人前には出たがらないんだ。だから、悪いけど教えられない」
「そう………ですか…………」
更識さんは明らかにガッカリした表情を見せる。
「その………更識さんがお礼を言っていたという事は伝えておくから、それで我慢してくれないか?」
「……………はい………わかりました…………どうかお願いします…………」
更識さんは渋々と言った表情だが、何とか頷いてくれた。
暫く俯いていたが、
「………さて! いつまでもくよくよしてても仕方ない! ここは気持ちを切り替えていくとしますか!」
バッと顔を上げると、扇子を広げて見せる。
その扇子には『不屈』と書かれていた。
「今はこれで引きますけど、いつかは教えて貰うからね!」
更識さんはそう言って笑みを浮かべる。
「それと、私に敬語はいいですよ。先輩と言っても私の方が年下ですから」
「はぁ、それでいいならそうさせてもらうが………」
「名前も楯無でいいですからね! たっちゃんでも可! それじゃあ失礼するね!」
更識さん………楯無はそう言って走り去った。
「…………なんかいろんな意味で凄い子だな」
俺はそう呟く。
「…………教えてあげなくて良かったの?」
優花がそう言ってくる。
アルファモンの正体が俺とドルモンという事だろう。
「あの状況で名乗り出れるか………!」
あの空気で自分がそうだと言う勇気はない。
若干疲れつつ、俺達は寮へ向かうのだった。
時は流れて1週間後。
遂にクラス代表決定戦の日を迎えた。
一応この日までに、美姫に頼んでISのコーチをして貰い、出来る限りの訓練は積んでいた。
まあ、それでも素人の域は出て無いと言われたが。
因みにその横では、
「………なあ、箒」
織斑が隣にいる篠ノ之さんに話しかける。
「なんだ、一夏」
応える篠ノ之さん。
「気のせいかもしれないんだが」
「そうか。気のせいだろう」
「ISの事を教えてくれる話はどうなったんだ?」
「…………」
織斑の言葉に目をそらす篠ノ之さん。
「目・を・そ・ら・す・な!」
聞いた話では、織斑はコーチを篠ノ之さんに頼んだ様だが、実際にはISではなく、剣道ばかりしていたらしい。
なんだそりゃ?
すると、織斑先生と山田先生がやって来る。
「千冬姉……」
織斑が呟いた瞬間、
――パァン!
と、織斑の頭に炸裂する出席簿。
「織斑先生と呼べ。学習しろ。さもなくば死ね」
言い方はきついが、公私混同は確かに良くない。
すると、織斑先生が俺の方を向く。
「織斑の専用機の搬入が遅れている。よって黒騎、お前とオルコットの試合を先に行う」
「そうですか」
まあ、予想出来ていた俺は、驚かずに立ち上がる。
因みに葵と優花は、ドルモン、リュウダモン、ハックモン、美姫と共に、観客席で観戦している。
俺はカタパルト前に立ち、打鉄を展開する。
その時、
「勝てよ! 大士!」
織斑が笑みを浮かべてサムズアップしてくる。
「まあ、やるだけはやってくるさ」
俺はそう答えて前を見据える。
「それじゃ、行くか!」
俺はアリーナ内に向かって飛び立った。
俺がピットから出てくると、オルコットさんが専用IS『ブルー・ティアーズ』を纏い、空中で待ち構えていた。
「やっと来ましたのね………って、あら?」
オルコットさんはは疑問の声を漏らす。
「最初は黒騎さんが相手ですの?」
「織斑の専用機の搬入が遅れているから、先に俺が試合することになったんだ」
「そうでしたの……………そう言えば、あなたにはお礼を申し上げなければいけませんね」
「お礼?」
俺は首を傾げる。
「ええ。1週間前のあの時、わたくしの失言に気付かせてくださいました。あのままでしたら、わたくしは取り返しのつかない過ちを犯したままでした。それに気付かせてくれたことに、お礼を申し上げます」
「別にお礼は要らないさ。俺はただ、自分の思った事を言っただけだからな」
「それでも、わたくしはあなたに感謝しております。とは言え、試合で手を抜く気は毛頭ございませんが………」
「それでいいさ。勝負事に手を抜くことは、逆に失礼だ」
「フフッ………同感ですわ」
その時、
『両者とも、準備はいいか?』
織斑先生の声が放送で聞こえる。
俺達は互いに距離を空けて相対した。
『それでは、試合開始!』
「行きますわよ!」
オルコットさんは、スナイパーライフルを構えてレーザーを放ってくる。
それを予想していた俺は、機体を操作してその一撃を避けた。
「あら? 初撃を回避するとはやりますわね」
「試合開始前から、目が狙ってると言っていたからな」
「それは盲点でしたわ」
オルコットさんは、それでも余裕の笑みを浮かべる。
俺はアサルトライフルを呼び出して銃口を向ける。
そのまま引き金を引くが、オルコットさんは、側転するように回避するとそのままの体勢で再びレーザーを放ってきた。
「ッ!?」
俺は咄嗟に回避行動を取るが、僅かに掠る。
「あら? 今のは直撃と思ったのですが………」
「これでも1週間は頑張って来たんだ。早々無様な姿は晒せないさ」
オルコットさんの言葉にそう言い返す。
「なるほど………確かに付け焼刃ですが、基本的な機体の操作は出来ておりますわ。ですが、『代表候補生』の壁は、そんなに低くありませんわ!」
再びレーザーを放ってきたため、俺は回避行動を取る。
だが、
「ぐあっ!?」
回避先で衝撃を受けた。
オルコットさんは得意げに笑みを浮かべている。
「くっ! 回避先を読まれたのか!」
「精密射撃はわたくしの得意分野。むしろ、初心者に当てられなければ、スナイパーとしての名が泣きます」
「そりゃごもっとも」
俺は体勢を立て直しながら言い返す。
すると、
「さて、試合前にも言いました通り、この勝負に手は抜きません! 見せてあげます! これが我がイギリスが誇る第三世代型IS『ブルー・ティアーズ』が誇るBT兵装………その名も同じ、〝ブルー・ティアーズ〟ですわ!」
オルコットさんの背面にあった、4枚のフィン・アーマーが一斉に射出された。
その4枚のフィン・アーマーが縦横無尽に動き回り、その先にある銃口からレーザーが放たれてくる。
「ッ!? フ○ンネルかよ!?」
俺は思わずそう吐き捨てながら回避行動を取るが、流石に躱し切れない。
4発中2発を被弾する。
「くぅっ………!」
「さあ踊って頂きますわ! このわたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる
その言葉と共に、攻撃の激しさは一層増していった。
「…………………ふう」
俺は息を吐く。
「………訓練機で………しかも、ISに関わり始めて1週間の初心者…………それがこのブルー・ティアーズと、代表候補生である、このセシリア・オルコットを前に………しかも初見で15分も持たせるとは………十分驚嘆に値しますわ………」
オルコットさんは、空中から地上にいる俺を見下ろしながら、健闘を称える言葉を述べる。
俺の打鉄は既にボロボロ。
武器も全て破壊された。
あと数発まともに攻撃を受ければ負けるだろう。
「黒騎さん。男がクラス代表など恥晒しと言った事は取り消します。ですから、ここは潔く降参しては如何でしょう? 既に武器はありません………万に一つも勝ち目のない戦いを続けるより、素直に負けを認める方が、恥は少なくて済みますわ」
オルコットさんは、そう言って降参を進めてくる。
だが、
「確かに言いたい事はわかる。勝ち目の無い戦いを無様に続けるより、潔く負けを認めた方が名誉に傷が付かなくて済むだろう………」
「でしたら………」
「だけど、俺は降参はしない! どれだけ無様に思われようと、恥の上塗りを重ねようと、最後まで諦めないのが俺の信条だ! 最後の最後まで足掻き続ける! それは何処に居ようと変わらない!!」
俺はそう言い放つ。
「ッ…………!?」
俺の言葉に、オルコットさんは目を見開く。
「あなたの考えは分かりました…………ですが、わたくしはそれを無様とも悪足掻きとも思いません。あなたが向かって来る以上、全身全霊を以ってお相手いたします!」
オルコットさんは表情を引き締め、〝ブルー・ティアーズ〟に命令を下す。
「行きなさい〝ブルー・ティアーズ〟!」
4つのビットが俺の四方を取り囲む。
………俺は既に、この兵装の弱点を見つけている。
それは、このビットを操作している間、オルコットさんは動けないという事。
先程から観察していたが、このビットを操作している間、オルコットさんは動いていない。
恐らく間違いないだろう。
ここで射撃を狙えば、少なくともダメージは与えられるだろう。
とは言え、既に打鉄の武装は全て破壊されている。
もう武器は無い…………………
が、このまま負けるのも癪だ。
ISが壊れるかもしれんが、あれだけ大口叩いて何も出来ないのも恥ずかしいだろう。
だから俺は、
「………はぁっ!!」
デジソウルで身体能力を強化し、右足で地面を蹴った。
その瞬間、打鉄では到底出せないスピードで身体が押し出される。
だが、
―――バキバキバキッ!
その瞬間、地面を蹴った右足の装甲に無数の罅が入る。
だが、俺は気にせず、オルコットさんの真下近くまで来た所で、今度は両足で地面を蹴った。
―――バキャァッ!
―――バキバキッ!
右足の装甲が完全に砕け、左足の装甲にも無数の罅が入る。
だが、既に俺はオルコットさんの懐まで飛び込んでいた。
「イ、
オルコットさんが驚愕の声を漏らす。
「うぉおおおおおおおおおおおっ!!」
俺は右の拳を握りしめて振り被る。
握りしめた拳が、纏っていた右腕の装甲に罅を入れ、砕けそうになる。
「くっ………!?」
オルコットさんは咄嗟に腰部に装備されていたスカート状のアーマーを俺に向けるように展開した。
そして、
『そこまで!! 試合終了! 勝者、セシリア・オルコット!』
その言葉が聞こえた瞬間、俺は拳を止めた。
「………………えっ?」
一方、オルコットさんはポカンとしていた。
「耐えきれなかったか………」
だが、俺は何が起きたのかぐらいは理解していた。
ISが俺の動きに耐えきれず、シールドエネルギーをゼロにしてしまったんだろう。
右足は全壊、左足と右腕が半壊。
そうなるのも当然だが。
俺はすぐにピットへと戻る。
打鉄を待機状態に戻すと同時にピット内に着地すると、
「大士。最後、惜しかったな」
白いISを纏った織斑がそう話しかけてきた。
白いと言っても若干灰色っぽいが。
何故負けたのかと聞かない辺り、オルコットさんから何らかの攻撃を受けたと思っているのだろうか?
「まあ、負けは負けだ」
俺はそう言って織斑の横を通り過ぎる。
「見てろよ! お前の仇は俺が取ってやる!」
別に頼んでないが。
勝手にやる気になっている織斑を横目に、織斑先生の横を通り過ぎようとした時、
「おい黒騎。最後、何をした?」
織斑先生が問いかけてくる。
「特に特別な事は何も? ただ、普通より力を入れて動いただけです」
別に嘘は言ってない。
「そうか…………」
織斑先生は怪訝そうな目を向けて来るが、それ以上は何も言わなかった。
【Side セシリア】
試合後の補給をしながら、先程の試合の事を考える。
黒騎 大士さん…………
尊敬に値する男の人でした。
最後は何故彼のISのシールドエネルギーがゼロになったのかは分かりません。
ですが、最後に見えた、右の拳に宿った金色の光。
アレを見た時、本能的に理解しました。
あの拳に当たっていたら、わたくしの負けでした。
『だけど、俺は降参はしない! どれだけ無様に思われようと、恥の上塗りを重ねようと、最後まで諦めないのが俺の信条だ! 最後の最後まで足掻き続ける! それは何処に居ようと変わらない!!』
その言葉には、わたくしでは計り知れない大きな『何か』を背負っている事を感じました。
そして事実、あれ程の窮地から、わたくしをあと一歩の所まで追い込んだ。
「…………あの様な男性も居るのですね…………」
名家に婿入りした父は、母の顔色ばかり窺う情けない人でした。
1週間前に、男性がクラス代表であるなど恥だと言ったのも、父の影響が大きかったのは否定できません。
『将来は情けない男とは結婚しない』という思いを抱き続けていましたが、彼はそうではありませんでした。
不思議と異性としての魅力など欠片も感じませんでしたが…………
それでも、男性の中では尊敬に値する人であるという事は疑いようがありません。
「…………次は、織斑 一夏…………」
あのブリュンヒルデ、織斑 千冬の弟。
「………あなたは、尊敬できる男性でしょうか?」
その時、補給の完了を知らせるアラームが鳴る。
「このわたくしが、見定めてあげましょう!」
わたくしは再びブルー・ティアーズと共に、空へと舞い上がった。
「待っていましたわ!」
ピットから出てきた織斑さんに向かってそう言い放つ。
「待たせたようだな………!」
織斑さんはニヤリと不敵に笑う。
「以前言った通り、ここで証明してみせますわ。クラス代表に相応しいのはこのわたくしだと!」
「そう簡単に行くと思うなよ!」
織斑さんはそう言い返してきます。
『両者、準備はいいか?』
織斑先生の言葉に、私はスナイパーライフルを展開する事で応えます。
一方、織斑さんはただ身構えるだけでした。
『それでは、試合開始!』
わたくしは合図と同時に銃口を向けます。
「まずは小手調べですわ!」
レーザーが放たれますが、織斑さんは回避行動を取っていました。
「思った通り! さっきと同じパターンだ!」
織斑さんは得意げにそう言います。
いえ、その程度で得意げにされても困りますが………
わたくしは回避先を狙ってレーザーを撃ち込みます。
「ぐおっ!?」
これには直撃し、左肩の装甲が吹き飛びました。
「一回回避したからと言って、得意げになるのはどうかと思いますわ」
「くっ、油断した!」
油断ですか………?
このわたくしを相手に…………
初心者が………
「………舐められたものですわね………!」
わたくしは〝ブルー・ティアーズ〟を射出する。
レーザーの雨が、織斑さんを襲います。
「くっ! ぐあっ!?」
「確かにわたくしは、男性を見下していました。あなたがわたくしに対して猛っているのも今では理解できます。ですが、わたくしが『代表候補生』という肩書を持つという事実と、それに付随した努力と実力があるという事は、覆すことはできませんわ!」
わたくしは攻撃の手を緩めない。
次々とレーザーが着弾する。
ですが、
「……………えっ?」
少しして、わたくしはおかしいことに気付きました。
明らかに織斑さんの被弾率が減少してきているのです。
これは…………
「まさか……! この短時間で成長しているというのですか!?」
何ていう才能と成長速度。
既にレーザーの被弾率は10%を切っている。
専用機とは言え、動きそのものは素人だと言うのに………
努力の痕跡など、何一つ感じられないというのに………!
「才能だけで、
その時、〝ブルー・ティアーズ〟の1機が破壊される。
「ッ!?」
「わかったぜ! この兵器は、お前が毎回命令を送らないと動かない!」
続いて2機目が破壊される。
「しかもその時! お前はそれ以外の攻撃が出来ない。制御に意識を集中させてるからだ。そうだろ!?」
何を自信満々に語っていますのこの人は………?
多少勘の鋭い人ならすぐに見抜く弱点です。
その程度の事は黒騎さんも見抜いていました。
ですが、見抜いた事を最後までわたくしに悟らせなかった事で、わたくしをあと一歩の所まで追い込む奇襲を成功させたんです。
とは言え、見るからに調子に乗っているようですから…………
あの手で行きましょう。
「残り2機!」
わたくしはあえて今まで通りのビットの操作で織斑さんを攻撃します。
思った通り、織斑さんは軽々と2機のビットを破壊しました。
「距離を詰めればこっちが有利だ!」
連続でビットを破壊した織斑さんは、思った通りそのままの勢いでこちらに向かってきます。
そう、わたくしの狙い通りに。
わたくしは黒騎さんとの試合では、間に合いそうになかった兵装を起動させます。
腰のスカートアーマーが前方へ展開されました。
「ッ!?」
織斑さんの顔色が変わりますが、もう遅いですわ!
「お生憎様! 〝ブルー・ティアーズ〟は6機あってよ!」
ミサイル型のビットを発射しました。
織斑さんは反撃が来るとは思っていなかったのか、無防備にそのミサイルに接触し、爆炎に包まれました。
ですが、あちらのシールドエネルギーは半分近く残っていた筈です。
ミサイル2発では削り切れたか微妙な所です。
わたくしは油断なくスナイパーライフルを構えました。
やがて、爆煙が晴れていき、彼の姿が露になりました。
ですが、その姿はわたくしが予想していたモノと違います。
織斑さんのISの形状が、先程とは違っていたのです。
ISの形状が変わったという事は、
「ま、まさか……
恐らく爆発と同時に形態変化が起こったと推測します。
そうであれば、おそらくミサイルビットのダメージはゼロ。
まさか、そんな強運に救われるとは………
すると、
「俺は世界で最高の姉さんを持ったよ」
織斑さんが突然、感慨深そうに呟く。
「俺も、俺の家族を守る」
「……は? あなた、何を言って………」
突然語り出した織斑さんに思わず聞き返してしまいます。
「とりあえずは、千冬姉の名前を守るさ!」
ですが、織斑さんはわたくしの言葉を無視し、自分の中で納得したように言葉を続けます。
「というか、逆に笑われるだろ」
意味が分かりませんわ!
というより、何か気持ち悪いです!
「いい加減にしなさい!」
私は反射的にミサイルビットを放ちました。
ですが、織斑さんの持つ近接ブレードが展開し、その間からエネルギーブレードが発生します。
そして次の瞬間、ミサイルビットが両断されました。
そのまま織斑さんは今まで以上のスピードでわたくしに接近し、手に持ったエネルギーブレードを一閃しました。
「くあっ!?」
わたくしは自分の残りシールドエネルギー量を見て驚愕しました。
先程まで一撃も受けていなかった筈のシールドエネルギーが、たった一撃で半分以上削られていたのです。
「こ、この攻撃力は………!?」
織斑さんの持つブレードを見て目を見開きます。
それは、映像資料で幾度も見た、初代ブリュンヒルデの『
「まさか………! 『零落白夜』!?」
そんな!
全く同じ『
その事に驚愕したのが命取りでした。
「うぉおおおおおおおおっ!!」
切り返してきた織斑さんの第2撃目を受け、わたくしのシールドエネルギーは呆気なくゼロになりました。
『試合終了! 勝者、織斑 一夏!!』
負けた…………
このわたくしが、素人相手に…………
あの時
初代ブリュンヒルデの『
「……………いえ、運も実力の内………負けは負けですわね…………」
正直織斑さんは、黒騎さんほど尊敬の念が感じられる男性ではありませんでした。
ですが、その才能は目を見張るものがあります。
「どうだ!? 思い知ったか!?」
織斑さんは優越感を浮かべた笑みでわたくしにそう言います。
子供ですかこの人は?
「そうですわね。今回はわたくしの負けです」
わたくしは潔く負けを認める。
言い訳はしません。
どの様な理由であれ、勝者は織斑さんなのですから。
「…………なんか調子狂うな………一体どうしたんだよ?」
「如何したも何も、わたくしはあなたに負けた。それが全てですわ」
既に黒騎さんと戦ったことで、男性の事は見直したつもりですから。
「それでは織斑さん。クラス代表として恥じぬ戦いを期待いたしますわ。頑張ってください」
わたくしが社交辞令でそう伝えると、
「……………しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!?」
頭を抱えて叫ぶ織斑さんの姿がありました。
IS編第2話です。
チョロイン筆頭のセシリアをチョロくなくしてみた。
オリ主贔屓に思われますかね?
後、最初に美姫を出したが、これはその場の思い付きだったり。
あの空気を緩和する方法を考えていたら、何故か電波を受信してあんな感じになった。
もしかしたら今後も度々美姫が出てくるかもしれません。
そんで、楯無も出てきました。
過去作の設定を流用して、デ・リーパー事件の時に、アルファモンに助けられてた設定に。
バレる時は来るのやら?
あと、1日で結構票が集まったので、このまま決選投票に行きます。
ISヒロイン無しか、楯無&簪かで行います。
IS編のヒロイン決選投票
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ヒロインは増やさない
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楯無&簪