ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第3話 一夏のセカンド幼馴染

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

クラス代表決定戦後。

整備室で千冬と真耶が、大きく破損した打鉄を前に顔を顰めていた。

 

「どういうことだ………?」

 

千冬が思わず呟く。

目の前にある打鉄は、先程大士が使っていたもので、修理の為に預かっているものだ。

だが、ISの破損状況を調べた所、明らかにおかしい壊れ方をしている事に気付いたのだ。

 

「やはり何度調べても同じです。一番破損が酷い右足、及び左足と右腕は、外部からの攻撃による損傷ではありません。まるで、内側からISの装甲に限界以上の負荷を掛けたような壊れ方です」

 

真耶が破損状況を示したモニターを映し出しながら報告する。

 

「そんな事があり得るのか………!?」

 

千冬は、自分も人並外れた身体能力を持っている事は自覚しているが、生身でISを壊せるほどではない。

 

「…………黒騎………お前は一体………?」

 

千冬の呟きに答えるものは、何もいなかった。

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

「では、1年1組代表は、織斑 一夏君に決定です。あ、1繋がりでいい感じですね」

 

クラス代表決定戦の翌日。

SHRで山田先生が笑顔でそう言った。

クラスの女子達も、大いに盛り上がっている。

織斑は、勝てばクラス代表になることを忘れていたので項垂れていた。

 

「やっぱり世界で2人だけしかいない男子がいるんだから、同じクラスになった以上持ち上げないとね!」

 

そんな言葉が飛び交う。

 

「俺って初心者なんだけど………」

 

織斑が呟くと、

 

「あら? 代表候補生であるこのわたくしに勝った織斑さんが、ただの初心者な訳はありませんわ。知識や操縦技術は確かに未熟な所がありますが、それは逆に言えば、伸びしろがあるという事です。クラス代表ともなれば、実戦には事欠きませんし、才能を伸ばすには丁度良いかと」

 

オルコットさんがそう言う。

 

「いや、でも…………」

 

織斑が尚も渋る。

 

「でしたら、わたくしも代表候補生です。織斑さんに必要な技術や知識を教える事は出来ますわ」

 

「そうか! それは助か………」

 

オルコットさんの言葉に、織斑が快諾しようとした。

だがその時、

 

「生憎だが一夏の教官は足りている。〝私が〟直接頼まれたからな」

 

織斑の言葉を遮って箒が机を叩きながら立ち上がり、そう言った。

 

「…………何故篠ノ之さんが答えるのでしょう? わたくしは織斑さんに聞いたのですが………?」

 

「う、うるさい! 頼まれたのは私だ! 一夏がどうしてもと懇願するからだ!」

 

篠ノ之さんは、まるでオルコットさんに反抗する様に叫んだ。

 

「いや、どうしてもとは………そこを何とかとは言ったけど………」

 

「意味は一緒だ!」

 

織斑の無意味な突っ込みも一蹴する。

 

「……………そこまで言うのなら別に構いませんが………クラス代表として、無様な姿だけは晒さないようにお願いいたしますわ」

 

オルコットさんは、それだけ言うと席に着く。

 

「言いたい事は言い終えたか? とにかくクラス代表は織斑 一夏。 異存はないな?」

 

「「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」」

 

織斑先生の言葉に、クラスの女子生徒達の声が唱和した。

 

 

 

 

 

それから一週間ほど時間が流れ、

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう」

 

俺達のクラスはグラウンドに集まり、授業を受けていた

 

「織斑、オルコット………あと黒騎もだ。試しに飛んで見せろ」

 

俺もか………

まあ量産機とは言え、専用機みたいに俺専用で貸し出されてるからな。

 

「早くしろ。熟練したIS操縦者なら展開に1秒とかからないぞ」

 

おっと、考え事していたら怒られた。

俺は右の腕輪に意識を集中する。

 

「打鉄………!」

 

そして、打鉄の名を呼ぶと、光の粒子が溢れてISが展開された。

一応、美姫に訓練に付き合って貰ってるから、この程度は問題無い。

因みに、訓練に付き合ってもらう対価は、ドルモンへのモフモフ権だ。

念の為に言っておくが、ドルモンには了解を貰っている。

 

「よし、飛べ!」

 

いきなりそう言う織斑先生。

オルコットさんはすぐさま飛び立ち、少し遅れて俺と織斑も飛び上がる。

オルコットさんが先行し、遅れて織斑。

織斑を追随する形で俺となっている。

 

「何をやっている。打鉄の黒騎はともかく、スペック上の出力では、ブルー・ティアーズより白式の方が上だぞ!」

 

織斑先生から織斑へお叱りが飛ぶ。

織斑はそれに困った顔をした。

どうやら飛行のイメージが上手くいかない様だ。

因みに俺のイメージは、アルファモン王竜剣の時に空を飛ぶイメージだ。

何だかんだで、これが一番しっくりくる。

すると、

 

「織斑さん、イメージは所詮イメージ。自分がやり易い方法を模索する方が建設的でしてよ」

 

オルコットさんが一夏にアドバイスをする。

 

「そう言われてもなぁ。大体、空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。何で浮いてるんだ? これ」

 

織斑がそう愚痴る。

 

「説明しても構いませんが、長いですわよ? 反重力力翼と流動波干渉の話になりますもの」

 

「わかった。説明はしてくれなくていい」

 

オルコットさんの言葉に、織斑はゲンナリしたように溜息を吐いた。

すると、織斑は首を回してこちらを向き、

 

「なあ大士。大士はどういうイメージで飛んでるんだ?」

 

そう聞いてきた。

 

「俺のイメージは当てにならんぞ。強いて言うなら、以前にも度々空を飛ぶ機会があったから、その時の経験だ」

 

「は………?」

 

俺の言葉に織斑は素っ頓狂な声を漏らす。

 

「以前に空を飛んだことがあるってどういうことだ?」

 

ああ、基本的に飛行機なんかの乗り物以外じゃ、空を飛ぶなんて出来ないからなぁ。

 

「その辺りは適当に想像してくれ」

 

とは言え、そこまで仲が良い相手ではない織斑に、デジモンとの進化云々を話すつもりは無い。

 

『3人とも! 急降下と完全停止をやって見せろ! 目標は地上から10cmだ!』

 

織斑先生から拡声器を使った指示が飛ぶ。

 

「了解です。 では黒騎さん、織斑さん、お先に」

 

オルコットさんはそう言って迷いなく急降下し、地面スレスレで完全停止する。

停止した高さもほぼ10cmのようだ。

 

「うまいもんだなぁ」

 

織斑が感心した声を漏らす。

 

「次は俺か…………」

 

オルコットさんに倣って急降下を始める。

 

「………ここっ!」

 

タイミングを見計らって急制動を掛けた。

だが、

 

「くっ!」

 

ダンッ、と砂埃を巻き上げるぐらいの勢いで地面に着地してしまった。

 

「タイミングが遅かったか…………」

 

俺は残念だと思いながら呟く。

 

「初心者とは言え、もうすぐ1カ月だ。急停止位はやってみせろ。もっと訓練に励めよ」

 

「………了解」

 

正直、ISに対してそこまで思い入れがある訳でもないので、必要以上に努力する必要も無いわけだが。

そう思っていた直後。

 

―――ドゴォォォォォォォォン!!!

 

と、ド派手な音を立てて、後方の地面に何かが激突した。

 

「うおっ!?」

 

俺は思わずビクつく。

俺が何事だと思いながら振り返ると、そこには直径2~3mほどの穴と、その中央に頭から突っ込んだ織斑の姿だった。

 

「馬鹿者。誰が地上に激突しろと言った。グラウンドに穴をあけてどうする」

 

冷静にそう言う織斑先生。

今の出来事に動じないその精神力は凄いな。

 

「……すみません」

 

穴から無傷で現れた織斑が謝った。

 

「情けないぞ一夏。昨日私が教えてやっただろう」

 

腕を組んで篠ノ之さんが織斑に言う。

 

「貴様、何か失礼なことを考えているだろう」

 

織斑の顔を見た篠ノ之さんがそう言った。

それを聞いて、織斑がギクリとする。

どうやら図星のようだ。

 

「大体だな一夏、お前という奴は昔から………」

 

篠ノ之さんの小言が始まろうとしたその時、

 

「織斑、次だ。武装を展開しろ。それ位は自在に出来るようになっただろう」

 

織斑先生が次の指示を出す。

 

「は、はあ……」

 

「返事は『はい』だ」

 

「は、はいっ」

 

「よし。では始めろ」

 

織斑先生に言われて、織斑は横を向き、右手を突きだして、左手で右手首を握る。

そして、集中して少しすると、掌から光が放出され、それが形を成して剣となった。

いや、態々そんな事しなけりゃ出せないのか?

 

「遅い。0.5秒で出せるようになれ」

 

織斑先生から出た言葉はやはり辛辣だった。

 

「オルコット、武装を展開しろ」

 

「はい」

 

次に織斑先生から言われたオルコットさんは、左手を真横に突出す。

そして、一瞬光ったかと思うと、その手にはスターライトmkⅢが握られていた。

 

「流石だな、代表候補生………ただし、そのポーズはやめろ。横に向かって銃身を展開させて誰を撃つ気だ。正面に展開できるようにしろ」

 

「はい。最近になって、近接武器の展開と並行して矯正しようとはしていますが、まだこちらの方が早かったので………申し訳ありません。引き続き精進いたします」

 

オルコットさんは謝罪する。

 

「最後に黒騎。武装を展開してみろ」

 

「はい」

 

俺は、腰から刀を抜く様な仕草でブレードを展開しつつ、その刃を返すようにして構えを取る。

 

「ふむ、及第点と言った所か………」

 

何とかお叱りは免れたようだ。

 

「だが、まだ上を目指せる。飛行訓練共々精進しろ」

 

「はい」

 

織斑先生の言葉に、俺は返事を返した。

その時、丁度チャイムが鳴る。

 

「時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑、グラウンドを片づけておけよ」

 

織斑先生の指示に、織斑は篠ノ之さんを見る。

箒はフンと顔を逸らす。

すると、俺にも視線を向けようとしてきたので、気付かない振りをして、さっさとこの場を離れるのだった。

 

 

 

 

その夜。

今日は織斑のクラス代表就任パーティーがあるので、早めに放課後の自主練を切り上げて、ドルモン達を連れていくために、葵、優花と共に自室へ向かっている時だった。

 

「本校舎一階総合事務受付………って、だからそれ何処にあんのよ?」

 

聞き慣れない女子の声が聞こえた。

 

「ん?」

 

俺がそちらに顔を向けると、正面ゲートの方から髪型をツインテールにした、やや小柄な女子がブツブツと呟きながら歩いてきた。

 

「こんな時間に正面ゲートから?」

 

「見た事無い子ね」

 

葵と優花が怪訝そうな声を漏らす。

俺達に見られていたことに気付いたのか、その少女は俺達の方を向いた。

すると、その少女は小走りで駆け寄ってきて、

 

「丁度良かった! あなた達ここの生徒よね? 本校舎一階総合事務受付って何処にあるか教えてくれないかしら?」

 

そんな事を言った。

 

「ああ………それなら………」

 

と、俺が答えようとしたところで、

 

「って…………アンタ男!?」

 

遠目からでは気付かなかったのか、今気付いたと言わんばかりにその少女は俺を指差しながら叫んだ。

 

「そうだが………」

 

「じゃあ、アンタが2人目の男性IS操縦者ね」

 

「ああ。それで、総合事務受付だったよな? それならこっちだ」

 

俺が彼女を案内しようとした。

その時、

 

「だから………でだな………」

 

通り掛けにあるISの訓練施設から2人の生徒が出てきた。

片方の少女の声は篠ノ之さんのようだ。

彼女は篠ノ之さんの声には反応を示さなかったが、

 

「だからそのイメージが分からないんだよ」

 

「ッ!?」

 

続けて聞こえてきた『男子生徒』の声に激しく反応した。

 

「ん?」

 

俺は少女の妙な反応を気配で気付いて振り返ると、少女は足を止めてたった今出てきた男子生徒………織斑を見て固まっていた。

 

「…………どうしたの?」

 

葵が少女に声を掛けるが、少女は反応しない。

そして、ふらりと何かに引かれるように織斑の方へ一歩足を進め、

 

「いち…………」

 

やや裏返った声で織斑に声を掛けようとして、

 

「一夏、何時になったらイメージを掴めるのだ。先週からずっと同じところで詰まっているぞ」

 

「あのなあ、お前の説明が独特過ぎるんだよ。なんだよ、『くいって感じ』って?」

 

「…………くいって感じだ」

 

「だからそれがわからないって言って………おい、待てって箒!」

 

何故か足を止め、黙って2人を見送った。

 

「篠ノ之さん、あんな説明で分かるのは、感覚系の天才ぐらいだぞ?」

 

俺は2人の会話を聞いて思った事を口にした。

すると、止まっていた少女から妙な気迫を感じて振り向くと、

 

「ねえ………!」

 

「…………何だ?」

 

声が低くなり、明らかに不機嫌ですと言わんばかりの表情で彼女は口を開く。

 

「今の………一夏と一緒にいた女の子って………誰…………!?」

 

「篠ノ之さんの事か………? 織斑の幼馴染って聞いてるけど………そう聞くって事は、君は織斑の知り合いか?」

 

少女の言葉遣いから、少なくとも唯の知り合い以上の関係だと推測する。

 

「ふぅん……………あの子が………………」

 

俺の質問には答えず不機嫌オーラを出し続ける少女。

その時、

 

「ああ、あなた、織斑君の事が好きなんだ!」

 

葵が納得したような口ぶりで口走った。

 

「にゃっ!? にゃにを言って………!?」

 

その瞬間、その少女は激しく動揺して、言葉を噛みまくりながら後退った。

あ、これ図星だ。

 

「別に言いふらすつもりは無いから、心配しなくても良いわよ。必要なら恋愛相談位乗るけど?」

 

優花がそう付け加える。

でも、俺達の恋愛観が、こっちの世界で通用するとは思えんが…………

俺達の恋愛観が、日本の法律上問題ある事は自覚してるし、世間的にも問題ありなのも分かっている。

それでも尚、俺達は一緒にいる事を決めた。

そう言う俺達だから、恋愛観は世間一般とはかけ離れていると思う。

 

「あうあうあう~~~~~っ!?」

 

少女は顔を真っ赤にしたまま呂律が回らなくなっている。

そんな彼女にほっこりしながら、総合事務受付へ案内していった。

 

 

 

 

その後、

 

「というわけでっ! 織斑君クラス代表決定おめでとう!」

 

「「「「「「「「「「おめでと~!」」」」」」」」」」

 

パパパァンというけたたましい音が鳴り響き、クラッカーが乱射される。

先程の少女を案内した後、俺達は織斑のクラス代表就任パーティーに参加していた。

 

「………………………」

 

で、このパーティーの主役である織斑はと言うと、ゲンナリした顔で席に座ってコップを掲げていた。

 

「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるねえ」

 

「ほんとほんと」

 

「ラッキーだったよね~。 同じクラスになれて」

 

「ほんとほんと」

 

そんな事を言うクラスメイト。

因みに先程から相槌を打っている生徒は2組の生徒だったりするんだが?

 

「人気者だな一夏」

 

篠ノ之さんが不機嫌そうに織斑に話しかけている。

…………これって、やっぱり篠ノ之さんが織斑に好意を持ってるって事だよなぁ………?

すると、さっきの少女がライバルになるって事か?

 

「…………本当にそう思うか?」

 

「ふん」

 

「……………………」

 

当の織斑は、そんな篠ノ之さんの好意には、全く気付いた様子も無いし。

それはともかく、

 

「おおっ、ドルドル~、モッフモフだぁ~~!」

 

ドルモンに抱き着いている、袖丈が以上に長い制服を着た、どこかのほほんとした雰囲気をもつ女子生徒。

彼女の名は布仏 本音。

IS学園の生徒の中では、最初からデジモンに嫌忌感を持たなかった珍しい少女だ。

 

「相変わらず人気者だな。ドルモンは」

 

リュウダモンが面白そうに笑う。

 

「ううっ…………」

 

ドルモンは微妙な表情をしている。

ドルモン、リュウダモン、ハックモンの中では、ドルモンが一番手触りがよく、見た目も何処となく可愛い見た目をしているので、3体の中では一番人気がある。

鎧を纏っているリュウダモンと、小竜型であるハックモンの手触りは、当然ながら硬い。

すると、

 

「ねえねえ、くっきー」

 

布仏さんが俺に向かって呼びかける。

『くっきー』とは俺のあだ名らしく、初めて呼ばれた時は驚いたものだ。

 

「何、布仏さん?」

 

俺が聞き返すと、

 

「今度ね~、ドルドル達に紹介したい子が居るんだけど~、いいかな~?」

 

「紹介したい子?」

 

「そうだよ~。かんちゃんもデジモンを嫌ってないから~、大丈夫だよ~」

 

紹介したい子とは『かんちゃん』と言うらしい。

 

「俺達としては、ドルモン達を受け入れてくれる人が増える事は大歓迎だ」

 

「わかった~。今度連れてくね~」

 

間延びした声で布仏さんがそう言った。

その時、

 

「………………………」

 

織斑が微妙な表情でこちらを見ている事に気付いた。

 

「ん? どうした織斑?」

 

俺が声を掛けると、

 

「いや…………そいつらが、自己紹介の時に言ってたデジモンなのか………?」

 

「ああ。結構食堂に連れてってるから、見かけたことはあるだろ?」

 

「まあ、そうなんだけど………こうやって間近で見るのは初めてだったから…………」

 

そう言う織斑だが、おっかなびっくりと言った雰囲気が見て取れる。

 

「一応言っておくが、ドルモン達に危険は無いからな」

 

「…………そうは言うけど、7年前の事があると…………」

 

織斑の言葉を聞いて、俺は溜息を吐く。

 

「お前も勘違いしている様だが、デ・リーパーはデジモンとは別物だぞ」

 

俺が呆れながらそう言うと、

 

「テレビではそう言ってる研究者もいたけどさ、それって結局は、デジモンのシリーズを商品にしている会社が、デジモンのイメージを壊したくなくてでっち上げたプロパガンダだろ?」

 

それを聞いた時、織斑は天之河ほどではないにしろ、デジモンの否定派だという事を認識した。

 

「……………万歩譲って、仮に7年前の事件がデジモンの所為だとしても、ここに居るドルモン達には関係無いだろ」

 

「関係無いって………! 同じ『デジモン』だろ………!」

 

「お前のその考え方は、世界中の『人間』全てを一括りに考える事と同じだ」

 

俺は織斑の言葉に対し、半分睨み付けるような目付きで言い返す。

 

「確かに『デジモン』という種族は、弱肉強食の世界で生き残りを懸けて戦う種族だ。凶暴で好戦的なデジモンが多いことは否定しない」

 

「だったら…………!」

 

「だけど、その厳しい生存競争の中の世界でも、優しく、他者を思いやるデジモンや、弱き者を守ろうとする奴らだっている。そして、人間と共に生きていける『デジモン』だってな…………ここに居るドルモン達がその証明だ」

 

「………………………」

 

織斑は、それでも納得していない様な表情だったが。

俺達の間の微妙な空気がパーティー会場全体に影響し、会場が静まり返る。

微妙な空気で折角のパーティーが台無しになろうとした時、

 

「はいはーい! 新聞部でーす! 話題の新入生、織斑 一夏君と黒騎 大士さんに特別インタビューをしに来ました!」

 

突然明るい声がその場に響き渡った。

 

 

「あ、私は2年の黛 薫子。よろしくね。新聞部副部長やってまーす。はいこれ名刺」

 

差し出された名刺を織斑と俺は流れ的に受け取ってしまう。

 

「ではではずばり織斑君! クラス対抗戦への意気込みを、どうぞ!」

 

ボイスレコーダーを突きだしながら織斑に迫る黛 薫子と名乗った女子生徒。

 

「え~っと………まあ、なんというか、頑張ります」

 

「えー? もっといいコメントちょうだいよ~。俺に触ると火傷するぜ、みたいなキメ台詞とか!」

 

「自分不器用ですから」

 

「うわ、前時代的!」

 

「じゃあ、まあ、適当に捏造しておくから良いとして………」

 

黛さんの視線が俺に向く。

 

「次は黒騎さん! 何かコメントおねがいしまーす!」

 

学年的には下だが、俺の方が年上という事で一応さん付けになっている様だ。

口調も若干敬語寄りだ。

 

「コメントと言われてもな…………」

 

俺は返答に困る。

こんなのは全く想定していなかったし。

俺はふと隣にいるドルモン達が目に入る。

 

「それなら、俺がドルモン達と仲良くしてる所を写真に撮って掲載してくれませんか? ドルモン達が無害だという事を、学園全体に伝えて欲しいんです」

 

俺は自分の要望を口にする。

 

「なるほどなるほど…………そう来たか………いいよ! 私は別にデジモンに思う所は無いし!」

 

黛さんはそう言うとカメラを構える。

 

「じゃあ、そこに並んで」

 

黛さんが促す通りにドルモンの横にしゃがみながら、首に手を回して互いに笑みを向ける。

 

「おおっ! 良い顔! はい、チーズ!」

 

カシャッ、と言う音と共にシャッターが切られる。

その瞬間、俺達の両側に葵とリュウダモン、優花とハックモンが陣取っていた。

 

「あはは、ちょっと予想外だったけど、いい写真が取れたよ! ありがとう!」

 

それでも黛さんは笑顔を浮かべる。

すると、

 

「あ、序にセシリアちゃんもコメント頂戴」

 

「序ってどういうことですの!?」

 

黛さんのセリフにオルコットさんが思わず突っ込む。

 

「コホン。わたくし、こういったコメントはあまり好きではありませんが、仕方ないですね」

 

一度咳払いし、しかし満更でもなさそうな雰囲気のオルコットさん。

 

「ではまず、わたくしがどのように…………」

 

と、オルコットさんが言いかけたところで、

 

「ああ、長そうだからいいや。写真だけちょうだい」

 

そんな理由で中断する黛さん。

 

「さ、最後まで聞きなさい!」

 

オルコットさんは叫ぶが、

 

「いいよ、適当に捏造しておくから。よし、織斑君に惚れちゃったことにしよう」

 

黛さんはとんでもないことを言い出した。

 

「…………いくら捏造でも、それは止めてもらえません?」

 

黛さんの言葉に、オルコットさんが突っ込む。

 

「はいはい、とりあえず3人並んでね。写真撮るから」

 

オルコットさんの言葉を軽く躱すと、黛さんはそう言う。

 

「えっ?」

 

「注目の専用機持ちと男子生徒だからねー。3人一緒にもらうよ」

 

「そ、そうですか………」

 

織斑は勢いに流されて頷く。

 

「まあ、別に構いませんわ」

 

オルコットさんも了承する。

 

「俺はさっき写真撮ったし、専用機持ちでも無いからパス」

 

「私としては入って欲しいけど、本人が嫌なのを無理強いするのはよく無いしね」

 

その間に黛さんはオルコットさんと織斑を握手させ、撮影準備に入る。

 

「それじゃあ撮るよー。 35×51÷24は~?」

 

「え? え~と、………2」

 

「ぶー、74.375でしたー」

 

織斑の答えにそう言いながらシャッターを切る黛さん。

いきなりそんな計算問題を出されて、暗算で答えられる奴は半分も居ないと思う。

因みに俺は暗算は苦手なので無理だ。

 

「何で全員入ってるんだ?」

 

織斑が呟く。

そう、今の瞬間に俺、葵、優花を除くクラスメイトが全員集結していた。

さり気に不機嫌なはずの篠ノ之さんもいる。

凄まじい女子高生の行動力だ。

そして、先程デジモンの話でギスギスした空気がいつの間にか和らいでいた事に、俺は安堵を覚えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

「織斑君、おはよー。ねえ、転校生の噂聞いた?」

 

いつも通り、俺、葵、優花が揃って教室に入ると、クラスメイトが織斑に話しかけている所だった。

 

「転校生? 今の時期に?」

 

入学してまだ一ヶ月も経っていない。

明らかに時期がおかし過ぎるからな。

織斑のセリフを聞きながら、俺はそう思う。

 

「そう、なんでも中国の代表候補生なんだってさ」

 

「ふーん」

 

織斑は相槌を打っていたが、その転校生ってもしかして………

 

「ねえ大士、もしかして転校生って、昨日の女の子じゃないかな?」

 

葵の言葉に俺も頷く。

 

「俺もそう思ってた所だ。見慣れない顔だったし、その可能性は高いんじゃないか?」

 

俺はそう言う。

 

「このクラスに転入してくるわけではないのだろう? 騒ぐほどの事でもあるまい」

 

「どんな奴なんだろうな?」

 

「む………気になるのか?」

 

「ん? ああ、少しは」

 

「ふん………」

 

「そうだね。頑張ってね織斑君!」

 

「フリーパスの為にもね!」

 

「今の所、専用機持ちのクラス代表って1組と4組だけだから、余裕だよ」

 

楽しそうに話す女子達の話を遠巻きに聞いていると、

 

「その情報、古いよ」

 

教室の入り口から聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「鈴……? お前、鈴か?」

 

織斑が驚いたように呟く。

 

「そうよ。中国代表候補生、凰 鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」

 

そちらを見ると、思った通り昨日の少女―――凰 鈴音が腕を組みながらそう宣言していた。

すると、

 

「何格好つけてるんだ? すげえ似合わないぞ」

 

「んなっ……!? なんてことを言うのよ、アンタは!」

 

織斑は空気をぶち壊す一言を放った。

 

「もう少し空気読めないのかしら?」

 

優花が呆れたように呟く。

すると、

 

「おい」

 

凰さんは後ろから突然声を掛けられたので、不機嫌そうに振り返り、

 

「何よ!?」

 

振り向き様に文句を言おうとした。

だが、文句が口から出る事は無かった。

何故なら、その相手が織斑先生だったからだ。

パァンと言う音と共に、凰さんの頭に出席簿が炸裂する。

 

「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」

 

「ち、千冬さん………」

 

「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入口を塞ぐな。邪魔だ」

 

「す、すみません………」

 

次から次に出る織斑先生の言葉に、流石に逆らえないのか、謝りながらドアの前を退く凰さん。

そして気を取り直して、

 

「また後で来るからね! 逃げないでよ! 一夏!」

 

そう言い残して凰さんは去ろうとするが、

 

「さっさと戻れ!」

 

「は、はいっ!」

 

織斑先生の一喝に、最後まで格好つけることが出来なかった。

因みにこの授業中、織斑と凰さんの関係を気にしていた篠ノ之さんが授業に集中できず、何発も出席簿アタックを喰らっていた。

 

 

 

 

 

 

昼休み。

食堂で昼食を摂る織斑と凰さんの話を聞いていると、どうやら凰さんは織斑の幼馴染の様だ。

それも、篠ノ之さんとは入れ替わりでやって来たらしく、篠ノ之さんをファースト幼馴染。

凰さんをセカンド幼馴染と言っていた。

 

 

 

 

夜。

俺達が放課後の自主練を終えて寮の廊下を自室に向かって歩いていると、

 

「最っっっ低!! 女の子との約束をちゃんと覚えていないなんて、男の風上にも置けない奴! 犬に噛まれて死ねっ!!」

 

織斑の部屋からそんな大声が聞こえたかと思うと、織斑の部屋の扉が勢いよく開いて凰さんが飛び出してくる。

バターンと勢い良く扉が閉められ、凰さんは脇目も振らずに走り出そうとした。

だが、走りだそうとした先に俺達がいたので、

 

「きゃっ!?」

 

凰さんは優花にぶつかって尻餅を着いた。

尚、優花は微動だにしていない。

優花の反応速度なら余裕で躱せたとは思うが、優花が躱すと俺にぶつかりそうだったので、優花はあえて自分の体で受けたんだろう。

 

「大丈夫?」

 

優花は凰さんに手を差し出す。

 

「え、ええ………ありがとう………それと、ぶつかってゴメン…………」

 

凰さんはその手を取って立ち上がり、お礼と謝罪を言うが、その目は俯き気味で視線を下げている。

しかも、その目には涙が浮かんでいた。

先程聞こえたセリフと照らし合わせれば、凰さんは織斑と何か大切な約束をしていて、それを忘れられた様だ。

俺達は顔を見合わせる。

葵と優花は軽く息を吐くと、

 

「えっと……鈴音ちゃんでよかったよね………?」

 

葵が声を掛ける。

 

「グス………鈴で良いわ………」

 

凰さんは涙を拭いながらそう答える。

 

「そっか。なら、鈴ちゃんって呼ばせてもらうね。鈴ちゃん、何があったか話してみる?」

 

「え………?」

 

葵の言葉に凰さんが声を漏らす。

 

「まあ、恋愛相談には乗るって言っちゃったしね。自分で言った事ぐらいは守る気でいるわ」

 

優花も続けてそう言った。

こんなに早く相談に乗るとは思ってなかったと思うが。

 

「……………いいの?」

 

凰さんは、葵、優花と来て、俺に視線を向ける。

 

「まあ、ここでほっとくのも後味悪いしな」

 

2人がその気なら、俺に反対する理由も無し。

俺達は、凰さんを自室に招き入れる事にした。

 

 

 

 

「あ、お帰り!」

 

自室の扉を開けるとドルモン達が出迎える。

 

「ただいま」

 

ドルモン達にそう言って振り向くと、凰さんが目を丸くしていた。

ああ、そう言えば、凰さんは転校生だから、ドルモン達の存在は知らないか。

 

「な、何? その生き物…………」

 

凰さんは呆然とドルモン達を指差す。

 

「こいつらは俺達のパートナーデジモンで、ドルモン、リュウダモン、ハックモンだ」

 

「デ、デジモン!?」

 

凰さんは目を見開く。

 

「初めまして、俺は大士のパートナーのドルモン!」

 

「某はリュウダモン。葵のパートナーだ」

 

「私は優花のパートナーのハックモンと言う」

 

それぞれが自己紹介すると、

 

「え、ええ………私は凰 鈴音よ………鈴って呼んで………」

 

凰さんは呆然としながらも自己紹介を返す。

 

「おーい、そろそろ戻ってこーい!」

 

俺が声を掛けると、

 

「ハッ!」

 

凰さんがようやく気を取り直す。

 

「…………デジモンが怖いか?」

 

俺は単刀直入に質問する。

 

「…………いいえ、少なくとも、この子達からは敵意は感じない………だったら怖がるのは失礼ってもんでしょう?」

 

凰さんは、ちょっと気張ってはいるが、真っ直ぐにドルモン達を見つめ返す。

 

「…………ありがとう」

 

俺は、ドルモン達をありのまま受け止めてくれた凰さんに感謝を伝えた。

 

「べっ、別にお礼なんて要らないわよ! それよりも、私の相談に乗ってくれるんでしょ!?」

 

凰さんは照れたのか、無理矢理話を勧めた。

俺達はそれぞれ座ると、

 

「それで、鈴ちゃんは何で廊下に聞こえるほどの大声で叫んで泣きながら飛び出してきたの?」

 

葵がそう切り出す。

 

「それはその………少し長くなるんだけど…………」

 

凰さんは話し出した。

凰さんと織斑の出会いは小学5年生の時。

それから中学2年まで一緒だったのだが、親の都合で中国に引っ越さなければならなくなった。

その時には既に織斑の事が好きだった。

と言うか、小学6年の時にこんな約束をしていたのだ。

 

『料理が上達したら、毎日アタシの酢豚を食べてくれる?』

 

と。

それで先程、その話を持ち出したら、織斑はあろうことか、毎日酢豚を奢ってくれると思っていたので、思わず引っぱたいて飛び出してきてしまったらしい。

 

「…………………ん?」

 

その約束に引っ掛かりを覚えた俺は、よ~くその言葉を考えてみる。

ポク、ポク、ポク、ポクと脳裏に木魚の音が木霊する。

たっぷり10秒ほど考えて、チーン!と閃いた。

 

「…………………………もしかしてそれって、プロポーズだったりとか?」

 

俺は出した結論を口に出す。

 

「………………!」

 

凰さんの顔は真っ赤になっているので、おそらく正解だろう。

 

「ううっ…………ま、間違ってないけど、何だったのよ今の間は……!?」

 

どうやら俺が答えを出すのに時間を要したことが不満の様だ。

 

「あ~、悪い。言っちゃ悪いとは思うんだが、普通にわかり辛かった」

 

俺は片手を立てて謝罪を表現する。

 

「何ですってぇ!?」

 

凰さんが猛るが、

 

「ごめん。私も大士が言うまで気付かなかった」

 

葵が謝り、

 

「悪いとは思うけど、私も気付かなかったわ」

 

優花も同意する。

 

「なんでよぉっ!?」

 

同じ女性である葵と優花にも気付かれなかった事にショックを受けている。

 

「お前のプロポーズは、『毎日味噌汁を~』のアレンジだと思うんだが、これは、日本人の多くが毎日味噌汁を飲んでいるから伝わるのであって、酢豚は毎日食べるものじゃないって事が一番の理由だな。というより、『毎日私の味噌汁を飲んでくれる』って言うプロポーズ自体、かなり古いもんだし」

 

確か、昭和時代のプロポーズじゃなかったか?

 

「だ、だって………一夏って結構古風なところあるし……………」

 

「古風って言うか、爺臭いと思うことは偶にあるな」

 

「ひ、否定は出来ないけど…………」

 

「それ以前に、俺の印象では織斑は鈍感だ!」

 

「うっ………!」

 

「そんな鈍感な織斑に、遠回しなプロポーズが伝わると思ってんのか!?」

 

「くぅっ………!」

 

「つーか、そもそも織斑の言動を聞いていると、精神年齢が小学生高学年前後で止まっていると思えるほどに、言葉にデリカシーが無い! 思春期の女子の気持ちを理解しろと言ってもおそらく無理だ!」

 

「ぐはっ………!」

 

俺の一言一言に、凰さんは胸を押さえながら声を漏らす。

 

「…………ってことは、一夏にアタシの気持ちは…………」

 

「欠片も伝わって無いと思うぞ」

 

「ぐふっ!?」

 

凰さんは床に崩れ落ちる。

 

「一応、知識としての男女の区別と羞恥心はあると思うが、あいつの他者へと態度は、すべて友達としてのそれだ。未だに俺に対する態度と、女子生徒達に対する態度の違いが見受けられない。同じ言動でも、女子小学生が受ける印象と、女子高生が受ける印象を同じで考えているように思う」

 

「い、1年経っても変わらないのね………一夏」

 

凰さんはよろよろと顔を上げる。

その辺りは昔から変わらない様だ。

 

「あいつを見てると、ホント天之河を思い出すな…………今の所あいつよりはマシだとは思うが…………」

 

俺は小声でボソッと呟いた。

すると、

 

「そもそも、あなたはどうしたい訳?」

 

優花がそう質問する。

 

「えっ?」

 

「あなたは織斑が好きなのよね? それは理解したわ。なら、その先はどうしたいの? 恋人になりたいの? 将来的に結婚したいの?」

 

「こ、恋人っ………け、けっこ……………!?」

 

凰さんは顔を真っ赤にしてアワアワと狼狽えている。

 

「だって、伝わらなかったけどプロポーズまでしたんだよね? それは結婚したいって事じゃないの?」

 

葵が追い打ちをかけた。

 

「い、いきなりそんな事言われても………!」

 

凰さんは耳まで赤くなっている。

 

「この程度で恥ずかしがってたら、進展しないよ?」

 

「この程度って………いきなり恋人とか結婚とか言われたら、恥ずかしいに決まってるじゃない!!」

 

「そこで恥ずかしがって何もしなかったら、織斑と結ばれるのは不可能だと思うわよ?」

 

「そ、それは…………」

 

「恥ずかしいから何もしない。あなたの織斑への想いはその程度?」

 

優花がまるで挑発するような言動でそう言った。

 

「なっ………!?」

 

「悪いけど、恥ずかしい程度で踏みとどまる位の気持ちなら、諦めた方が手っ取り早いわ。その程度のおままごとの様な恋愛ごっこには付き合えないから」

 

「れ、恋愛ごっこですってぇ!?」

 

「私達に言わせれば恋愛ごっこよ。ただ『恥ずかしい』っていう自分の心の壁すら壊せない程度の小さな想いは、私達にとっては無いも同然。その程度の恋の悩みで躓いているようじゃ、アドバイスも何も無いわ」

 

「い………言ってくれるじゃない…………!」

 

凰さんはわなわなと震える。

 

「そう言うセリフは、好きな人に『好き』と言えるようになってから吐きなさい」

 

すると、凰さんはがばっと立ち上がると、

 

「あったま来た!! 見てなさい! アタシはアタシのやり方で一夏をモノにしてみせるから!!」

 

凰さんはしう言い残すと、ズカズカと部屋を出ていった。

 

「……………………あそこまで煽る必要があったのか?」

 

俺は優花に向き直ってそう聞く。

 

「ああいう単純な性格の子は、難しい話をするより、感情を煽った方が効果的だと思っただけよ」

 

「まあ、それは否定しないが…………」

 

凰さんは、おそらく感情で突き進むタイプだ。

だから、感情が高ぶっている時は割と怖いもの知らずになるが、一旦止まって弱気になってしまうと、ズルズルと引き摺ってしまう。

だから優花はわざと怒らせるような言動で凰さんを煽ったんだろう。

 

「まあ、煽ったと言っても、言った言葉に嘘は無いけどね」

 

「………………………」

 

最後にそう付け足した優花に、俺は否定できる材料を見つける事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 






IS編第3話です。
基本的な流れは原作通り、でも、セシリアが一夏に惚れてないので、ちょくちょく変わってます。
そんでセカンド幼馴染こと鈴の登場。
登場初っ端から葵や優花に翻弄されております。
直情的な割に恋愛に奥手なので、葵や優花にとってはお子様扱いです。
とりあえず、過去作と違いを出そうとしてこんな感じに。
次はクラス代表戦。
漸く大士達の本領発揮が…………
お楽しみに。

IS編のヒロイン決選投票

  • ヒロインは増やさない
  • 楯無&簪
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