「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
謎のISの襲撃があったその夜。
鈴が俺達の部屋で号泣していた。
その理由は、
「えっと………つまり保健室で検査をした後に、織斑君が唐突にあの約束を正しく思い出して、しかもプロポーズの意味まで正しく把握してくれたのに、恥ずかしさから、プロポーズの意味を自分から否定しちゃったと………」
「ヘタレねぇ」
葵の要約した内容に、優花が痛恨の一刺し。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」
更に泣き声を上げる鈴。
「あの鈍感な織斑が、奇跡的にそこまで気付いてくれたのに…………そこで認めてりゃ、うまくすれば付き合う位は出来てたかもしれないのによ」
俺はそう口に出す。
少なくとも、関係は一歩前進位はしたはずだ。
「だってだって! 何の前触れもなく、唐突に思い出して! しかもそれをさらっと聞いてくるのよ!? 心の準備も出来て無いのに、『はいそうです』なんて言えるわけ無いじゃない!!」
泣きながらそう捲し立てる。
優花は溜息を吐き、
「前も言ったけど、『恥ずかしい』っていう自分の心の壁すら壊せずに、自分の想いを口に出せないのなら、悪いけど私達に出来るアドバイスは無いわ」
遠慮なくそう言った。
鈴は、うっ、とたじろいだが、
「ひ、人の事、散々言ってくれてるけど、あなたは如何なのよ!? 好きな人に対して、『好き』って言えるの!?」
「え? 私?」
負けず嫌いだな、鈴。
だけど、その質問は逆効果だぞ。
すると、優花は俺の方を向き、
「大士、愛してるわ」
「……俺も愛してるぞ」
鈴の前だと言うのに、何の臆面もなく俺に対して愛の言葉を囁く優花。
俺も返すが、流石に人前は多少恥ずい。
「ッ…………………!?」
「これで良いの?」
優花はドヤ顔を鈴に向ける。
鈴はパクパクと口を開けたり閉じたりしていたが、
「こ…………これで勝ったと思わないでよね!?」
そう叫ぶと部屋を出ていってしまった。
「何と言う小物台詞」
俺は率直な感想を零す。
すると、葵が顔を寄せて来る。
「如何した?」
俺が聞くと、
「大士、私も愛してるからね」
俺の耳元でそう囁いた。
「優花に張り合わなくても分かってるって……」
葵の言葉に、俺は思わず苦笑した。
その翌日。
「やっほーくっきー! 遊びに来たよー!」
俺達の部屋にやって来たのは布仏さんだ。
彼女の後ろには、水色の髪のメガネを掛けた内気そうな女の子もいる。
って、どっかで見たような?
「ああ、いらっしゃい………そっちの子は………?」
「この子が前言ったドルドル達に紹介したかった子だよ~! かんちゃんっていうの!」
布仏さんはそう言うが、愛称で呼ばれても本名が分からんのだが?
「えっと、初めまして。知ってると思うが黒騎 大士だ。パートナーはドルモン」
「よろしくね」
俺に続いてドルモンも挨拶する。
「さ、更識 簪です………よろしくお願いします」
その女の子………更識 簪と名乗った女の子は、恥ずかしそうにそう言う。
恥ずかしがり屋なのかね?
「神代 葵だよ。パートナーはリュウダモン」
「園部 優花。パートナーはハックモンよ」
葵と優花も続けて自己紹介する。
「よ、よろしくお願いします………!」
更識さんは頭を下げる。
……というか、更識って。
「えっと………更識さん?」
俺がそう呼ぶと、
「あっ………名前で………呼んでください………苗字で呼ばれるのは好きじゃないので…………」
更識………簪さんは少し俯き気味にそう言う。
「…………わかった。なら、簪さんと呼ばせてもらう」
彼女………簪さんの『更識』という苗字と、彼女の容姿の特徴的な水色の髪とルビー色の瞳。
十中八九簪さんは、楯無の妹だろう。
だが、苗字で呼んで欲しく無いという事は、何かしらの確執があるんだろう。
初対面の間柄で、そこまで踏み込むのは失礼だと思い、そこには触れないようにした。
「あ……あの………!」
そう思っていると、簪さんが声をかけてきた。
「そ、その………昨日は助けてくれて……本当にありがとうございました……!」
そう言って簪さんは頭を下げる。
「昨日………?」
俺は少し思い返すと、
「あっ、君はあの時の………」
正体不明の無人ISに襲われてた女の子だ。
それが簪さんだった事を、たった今思い出した。
「く、黒騎さんのお陰で、私も本音も…………」
「簪さん」
続けようとした簪さんの言葉を、俺は自分の口の前に人差し指を立てて、喋らないように伝える。
「ほえ? どうかしたの、かんちゃん?」
布仏さんが首をかしげている。
布仏さんは、傷を葵の再生魔法で治した際に、記憶も魂魄魔法で改竄されている。
ここで昨日の事を口に出されても混乱してしまうので、俺は喋らないように伝えたのだ。
「何でもないよ。ちょっと昨日簪さんを手助けしてね」
「そうなんだ~。かんちゃんともう会ってたんだね~」
布仏さんは笑いながらそう言う。
「じゃあじゃあ~、親睦を深める為に皆でカードゲームしようよ~!」
布仏さんがそう言って取り出したのは、デジモンのカードデックだった。
「ん? 布仏さんもデジモンカードやるのか?」
「そうだよ~。よくかんちゃんの相手をしてるんだ~」
布仏さんはニコニコと笑いながらそう言った。
「そうか。IS学園に来てからは、カードバトルの相手は葵と優花だけしかいなかったからな。カード仲間が増えるのは嬉しいぞ」
「えへへ~。じゃあ、早速始めよう!」
布仏さんの掛け声でカードバトル大会が開催された。
その結果、
「あぶね。ギリギリ」
1位、俺。
「むぅ………もうちょっとだったのに………」
2位、僅差で簪さん。
「う~~、簪ちゃんにも負けたぁ………」
3位、葵。
「皆強いな~」
4位、布仏さん。
「始めたばかりとは言え、悔しいわね………」
5位、優花。
と言う順位になった。
俺と簪さんの決勝戦はどっちが勝ってもおかしくない程の激戦だった。
引き運が良かったお陰で何とか勝ったが、一手遅れていれば、負けたのは俺だった。
葵と布仏さんについては順当と言うべきだろう。
優花は、デジモンカードを始めたのがトータスから戻ってきてからなので、まだ1ヶ月程度だ。
勝てないのも仕方ないだろう。
久々に楽しい時間を過ごせた。
この2人とはこれ以後も度々遊び合う間柄となった。
それからまた暫くの時が流れた。
6月上旬となり、今月末には学年別トーナメントと言う生徒全員参加のISによる勝ち抜き形式の大会の様な行事がある。
IS学園の1学期では、一番大きな行事だろう。
クラス代表では無い生徒達にとって、これ以上無いアピールの場になる。
俺にとっては如何でもいい事だが。
っていうか、本当に卒業後はどうするべきか?
世界で2人しかいない男性IS操縦者としてIS学園に入った以上、まともな就職は不可能だろうし、最悪実験モルモット行き、何て事にもなりかねん。
まあ、もしそうなったら、そうしようとした相手を全力で潰すがな。
山木さんに頼んで、政府御用達の何でも屋でもやるかな?
ブラックにならない程度の適度な期間で。
そんな事を考えていると、教室の一角で女子生徒達がひそひそと話し合っていた。
「ねえ、あの噂聞いた?」
「聞いた聞いた!」
「何々? 何の話?」
「学年別トーナメントで優勝すると、織斑君か黒騎君と付き合えるんだって」
は?
なんだそりゃ?
「そうなの!?」
「マジ!?」
「黒騎君はともかく、織斑君と付き合えるってマジ!?」
何だその噂は?
つーか、俺はともかくって、地味に心にグサッと来るな。
すると、俺の近くに居た優花が立ち上がり、その集団の方に歩み寄っていくと、
「その話、もっと詳しく教えてもらっていい………?」
ゴゴゴと空気が震える音が聞こえてきそうなほどの〝威圧〟を以って集団に問いかけた。
その女子生徒の集団は、プルプルと震えながら、涙目で何度も頷いた。
優花が話を聞くと、その生徒が聞いたのも人伝の噂であり、真偽は不明との事。
なので、
「織斑は如何か知らないけど、大士については完全なガセだからね。多分、人伝に伝わる途中で尾ひれが付いたんだわ」
と、その集団にハッキリと伝えておいた。
まあ、相手が俺なので、その女子生徒達に落胆は無かった。
落胆が少なかったではなく、落胆が『無かった』事に、やはり俺は地味にグサリと心に刺さるのだった。
理由が分かっていても儘ならないものだ。
とその時、
「おはよう! 何盛り上がってるんだ?」
織斑が教室に現れ、挨拶と共にそう尋ねる。
すると、
「「「「「「「「「「なんでもないよ」」」」」」」」」」
息ピッタリにその集団はそう言った。
すると、SHRの時間になり、山田先生と織斑先生が教室に入ってきた。
最初に織斑先生が今日からISの実践訓練をするという事を伝えると、すぐに山田先生と交代する。
織斑先生が担任なのに、山田先生に雑事を任せ過ぎだと思うのは俺の気の所為だろうか?
「えぇっとですね。今日は転校生を紹介します! しかも2人!」
「「「「「「えぇええええええええええええっ!!??」」」」」」
山田先生の言葉に、クラス中が声を上げる。
俺はふーん、と思ったぐらいだ。
すると、教室のドアが開いた。
「失礼します」
「……………」
2人の人物が入ってくる。
入ってきた人物の片方を見て、クラスのざわめきがピタリと止まる。
何故なら、
「シャルル・デュノアです。フランスからきました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」
シャルル・デュノアと名乗ったその少年?が挨拶をする。
「お、男…………?」
誰かが呟いた。
「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて、本国より転入を……」
その呟きに頷きながら肯定し、言葉を続けようとした所で、
「きゃ………」
誰かが声を漏らす。
「はい?」
その反応に、シャルルが声を漏らした瞬間、
そして次の瞬間、
「「「「「「「「「「きゃぁあああああああああああああああああああああっ!!」」」」」」」」」
歓喜の叫びが、クラス中に響き渡った。
「うおっ!?」
俺は思わずビクついた。
このパターンは前にもあった気が………
「男子! 3人目の男子!」
「しかもうちのクラス!」
「美形! 守ってあげたくなる系の!」
「地球に生まれて良かった~~~~~!」
等々。
クラス中の大半の女子達が歓喜の声を上げる。
「あー、騒ぐな。静かにしろ」
鬱陶しそうに織斑先生がぼやく。
「み、皆さんお静かに! まだ自己紹介が終わってませんから~!」
山田先生が必死に宥めようとそう言う。
デュノアの他にもう1人いるのだ。
それは長い銀髪を持ち、左目に眼帯をした背の低い少女だ。
俺は、そう言えばハジメの眼帯は右目だったな~と、如何でもいい事を考えていた。
「…………………」
その少女は、先程から一言も喋っていない。
騒ぐクラスメイトを、腕を組んで下らなそうに見ているだけだ。
「……挨拶をしろ、ラウラ」
「はい、教官」
織斑先生の一言で、いきなり佇まいを直した。
教官?
「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私の事は織斑先生と呼べ」
「了解しました」
その少女の織斑先生に対する態度は、軍人の部下が上官に向けるそれだ。
織斑先生にラウラと呼ばれた少女はクラスメイト達に向き直り、
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
それだけ言って黙り込んだ。
「あ、あの………以上ですか?」
山田先生が若干狼狽えながら問いかけると、
「以上だ」
その言葉に冷や汗を流す山田先生。
その時、ボーデヴィッヒさんと織斑の目が合った。
すると、
「ッ! 貴様が……」
ボーデヴィッヒさんがつかつかと一夏の前まで歩いていき、
――バシンッ
と、良い音を立てて、織斑の頬に平手を見舞った。
「う?」
織斑は突然の事態に何が起きたのかわかってなさそうな表情だ。
「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか!」
ボーデヴィッヒさんは、織斑を睨み付けながらそう言い放つ。
「いきなり何しやがる!」
我に返った織斑はそう叫ぶが、
「フン……」
ボーデヴィッヒさんは織斑を無視し、つかつかと歩いて行き、空いている席に座ると、腕を組んで目を閉じ、微動だにしなくなる。
その一連の流れに教室は静まり返っていたが、
「あー………ゴホンゴホン! ではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドへ集合。今日は2組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」
織斑先生がそう言ってHRを終了させたため、織斑の怒りの矛先はどこにも向けられない。
何故ならば、すぐにこの部屋で女子が着替えを始めるからだ。
「おい、織斑、黒騎。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」
織斑先生にそう言われ、織斑がシャルルに近付いて行く。
「君が織斑君? 初めまして。僕は………」
「ああ、いいから。とにかく移動が先だ。女子が着替え始めるから」
デュノアが近くにいた織斑に自己紹介をしようとすると、織斑がそう言って中断させ、デュノアの手を取ると、
「大士、行くぜ」
「……ああ」
俺は返事をして立ち上がると、教室を出る。
織斑は、デュノアに説明を始めた。
「とりあえず男子は空いているアリーナの更衣室で着替え。 これから実習の度にこの移動だから、早めに慣れてくれ」
「う、うん………」
困惑していたデュノアが頷く。
すると、
「ああっ! 転校生発見!」
「しかも織斑君も一緒!」
同学年の他クラスだけでなく、2、3年のクラスからも噂を聞きつけた生徒達がやってきたのだ。
「いたっ! こっちよ!」
「者ども出会え出会えい!」
まるで武家屋敷のような掛け声をする生徒達。
「織斑君の黒髪もいいけど、金髪っていうのもいいわね」
「しかも瞳はエメラルド!」
「きゃああっ! 見て見て! 織斑君とデュノア君! 手繋いでる!」
「日本に生まれてよかった! ありがとうお母さん! 今年の母の日は河原の花以外のをあげるね!」
おい、一番最後の生徒!
せめて母親はもう少し敬え!
叫びながら俺達を追ってくる生徒達。
「な、何? 何で皆騒いでるの?」
状況が飲み込めないデュノアが織斑に尋ねる。
「そりゃ、男子が俺達だけだからだろ」
「………?」
言われたことが理解できないのか、首を傾げるデュノア。
「いや、普通に珍しいだろ。ISを使える男子なんて、今のところ俺達しかいないんだろ?」
「あっ! ……ああ、うん。そうだね」
「それに、ここの女子達って、男子と極端に接触が少ないから、ウーパールーパー状態なんだよ」
「ウー……何?」
「20世紀の珍獣。 昔日本で流行ったんだと」
「ふうん」
例えが分かり辛いぞ織斑。
そこは動物園のパンダで十分通じるだろ?
すると、更衣室への最短距離の通路に女子達が陣取っている。
行き先を読んで先回りしていたんだろう。
「げっ!?」
織斑が声を漏らし、手前にあった通路を曲がる。
デュノアも織斑に手を引かれているので、そのまま通路を曲がっていったが、俺はその通路を曲がらず、窓際にヒョイと避けた。
すると女子達は、俺を全く気に留めずに織斑とデュノアを追いかけて通路を曲がっていく。
最短距離の通路に陣取っていた女子達も織斑達を追って行ったので、俺はキョロキョロと辺りを窺う。
誰もいない事を確認すると、俺はガラ空きになった最短距離の通路を進んだ。
俺が更衣室でISスーツに着替えて更衣室を出ようとした時、
「ぜぇ………はぁ…………」
そこには息を切らした織斑とデュノア。
「お疲れさん」
俺はそう声を書ける。
「お、お前……いつの間に消えたんだよ………」
織斑は息を切らせながらそう言ってくる。
「さてね。まあ、もうすぐ時間だから、遅れないように急げよ」
俺はそう言って更衣室を出た。
結局織斑は始業開始には間に合わずに出席簿の一撃を受けた。
「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」
「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」
「まずは戦闘を実演してもらおう。凰! オルコット!」
「はい!」
「はい!」
織斑先生に指名され、鈴とオルコットさんは返事をする。
「専用機持ちならすぐに始められるだろう。前に出ろ!」
織斑先生にそう言われ、
「めんどいなぁ………何で私が………」
「鈴さん、国の代表として、他の生徒の模範となるのも、立派な代表候補生の務めですわ」
面倒くさそうな鈴に対して、オルコットさんはそう言う。
織斑先生の傍を通りすぎるとき、織斑先生に、何やら小声で話しかけられ、織斑に視線を向ける。
「はっ!」
鈴は何かに気付いたようにハッとし、
「実力の違いを見せる良い機会よね。専用機持ちの」
やる気満々にそう言った。
その様子に、
「今、先生なんて言ったの?」
デュノアが織斑に尋ねる。
「俺が知るかよ……」
織斑はそう言うが、俺には何となく予想出来ていた。
十中八九、織斑にいい所を見せられるとか、そういう類の事を言われたんだろう。
「それでお相手は誰でしょうか?」
「フフン。別にセシリアが相手でも構わないわよ?」
「その時には全力でお相手いたしますわ」
そう2人で牽制し合うが、
「慌てるな、馬鹿共。対戦相手は………」
織斑先生がそう言いかけたところで、
――キィィィィィィィィン!
と何処からか、空気を切り裂く音が聞こえた。
「ああああああああああああああああああああああああっ!!」
聞こえてきた悲鳴に空を見上げると、
「ああああああーーーーっ! 退いてくださいーーーーっ!!」
量産型IS『ラファール・リヴァイヴ』を纏った山田先生が一直線に落ちてきた。
しかも、様子を見るに操縦をミスって操作不能らしい。
そして、落下地点にはお約束のように織斑がいた。
ぼうっとしている織斑は現実が把握できていないらしい。
「え? ………ああああああーーーっ!!??」
漸く現実を把握できた織斑だが、あのタイミングでは間に合わないだろう。
下手すりゃ死ぬな。
「やれやれ」
俺は溜息を吐くと、デジソウルで軽く身体能力を強化する。
その直後、山田先生が地面に激突し、砂煙が舞う。
だが、織斑は既にその場には居なかった。
何故なら、激突する寸前に、俺が織斑の首根っこを引っ掴んで退避させたからだ。
「あ、あれ………?」
首根っこ掴まれて引き摺り倒されていた事に気付いた織斑が声を漏らす。
未だに現状をうまく把握していない様だ。
とりあえず俺は、織斑の首根っこから手を離すと、
「山田先生、大丈夫ですか?」
地面に激突した山田先生に声を掛けた。
「は、はい………お恥ずかしい所をお見せしました」
「気を付けてくださいね。墜落したISに生身の人間が直撃したら、常人なら死にますんで」
俺や、葵、優花なら生身でも平気だが。
「は、はい! ごめんなさい!」
山田先生は俺の言葉にハッとして、改めて謝る。
「さて小娘共、さっさと始めるぞ」
オルコットさんと鈴に向かって織斑先生はそう言う。
「2対1でって事? いや、流石にそれは………」
鈴は遠慮しがちにそう言うが、
「安心しろ。山田先生は元代表候補だ。今のお前達ならすぐ負ける」
織斑先生はそう言った。
流石にその言葉にはカチンと来たのか表情を変える。
だが、
「鈴さん、落ち着いてください。山田先生はああ見えてもIS学園の教師です。生徒達を導くだけの力はあると思いますわ」
「だけどセシリア! 私達代表候補生2人を相手に1人で相手をするって言ってるのよ!? 悔しく無い訳!?」
鈴がそう捲し立てる。
「山田先生は元代表候補と仰っていましたわ。それはわたくしたちもそうですが、わたくし達は代表候補生になったばかりの新人です。逆に、山田先生は、代表になれなかったと言えど、その代表と凌ぎを削った方ですわ。そして、山田先生の現役時代の代表と言えば?」
「……………………………………あ」
オルコットさんの言葉に、鈴は思わず織斑先生に視線を向ける。
「そう、初代ブリュンヒルデの織斑先生その人ですわ」
「そ、それは油断できないわね………」
漸く鈴も山田先生の手強さに気付いたようだ。
すると、千冬は手を上げ、
「では…………始めっ!!」
振り下ろすと共に開始の合図を出した。
上昇する3人。
模擬戦を開始すると、
「デュノア、山田先生が使っているISの解説をして見せろ」
織斑先生がデュノアにそう言う。
「あ、はい。山田先生が使っているISは、デュノア社製『ラファール・リヴァイヴ』です。第2世代開発最後期の機体ですが、そのスペックは、初期第3世代にも劣らない物です。現在配備されている量産ISの中では、最後発でありながら、世界第3位のシェアを持ち、装備によって、格闘、射撃、防御といった、全タイプに切り替えが可能です」
その説明が終わった時、
「くっ! なんて操縦技術………!」
オルコットさんの一斉射撃をヒョイヒョイと避け、
「こんのぉっ!」
鈴の衝撃砲による見えない弾丸も余裕で躱す。
すると、山田先生はライフルを構え、両者に発砲する。
その攻撃は、オルコットさんも鈴も避けた。
だが、
「………あ」
遠くからその戦いを眺めていた俺は気付いた。
オルコットさんと鈴は、山田先生の射撃によって、互いの近くに誘導されている事に。
そしてついに、両者が回避した先で激突し、2人の動きが止まった。
「上手い………!」
俺は思わずそう零した。
ライフルの射撃によって回避先を誘導し、両者を接触させて動きを止め、強烈な一撃を叩き込む!
山田先生が放ったグレネード弾が、接触して動きの止まった2人に直撃。
爆発と共に錐揉み回転しながら地上に落下してきた。
そのまま砂煙を上げながら地面に墜落する。
「………まさか、ここまで実力差があるなんて………!」
「……あんたねえ! 何面白いように回避先読まれてんのよ!?」
「確かにそれはその通りです。ですが、今思えば鈴さんも上手い事誘導されていましたわ」
その時、山田先生がゆっくりと地上に降りてくる。
「これで諸君にも、教員の実力は理解できただろう。以後は敬意をもって接するように」
織斑先生はそう言うと、
「次はグループになって実習を行う。リーダーは専用機持ちがやること。黒騎もリーダー側に入れ! では、別れろ!」
そう号令をかける。
女子生徒達がそれぞれの自由意思でグループに分かれるが……………
「織斑君! 一緒に頑張ろ!」
「デュノア君の操縦技術を見たいなぁ~!」
やはりと言うべきか織斑とデュノアの組に生徒が集中する。
因みに俺の所には葵と優花、それと布仏さんが居た。
しかし、織斑とデュノアにばかり生徒達が集中すれば、千冬の雷が落ちるのも当然であった。
「この馬鹿者どもが………! 出席番号順に1人ずつグループに入れ! 次にもたつくような事があれば、今日はISを背負わせてグラウンドを100周させるからな!」
正に鶴の一声だった。
キャーキャー騒いでいた女子生徒達は、瞬く間に移動し、キッチリとそれぞれの場所に別れた。
だが、残念なことに、出席番号順になった所為で、葵や優花とも別のグループになってしまった。
優花はボーデヴィッヒさんの班。
そして、葵は織斑の班だった。
俺は普通に割り当てられた生徒達にISの操縦方法を教えていく。
まあ、美姫から教えられたことをそのまんま伝えているだけだが。
俺の方はつつがなく進んでいる。
優花のいるボーデヴィッヒさんの班は、ボーデヴィッヒさんの見下すような視線に女子生徒達が怯えて黙り込んでいるが、優花はどこ吹く風と言ったようにリラックスしている。
で、葵のいる織斑の班だが、ここでとある問題が起こっていた。
前の操縦者が立ったままISを降りたため、次の操縦者を織斑が白式を纏って、更にお姫様抱っこでコクピットに乗せた物だからさあ大変。
その次に乗る女子生たちが、無言の圧力で操縦者にプレッシャーを与え、ワザと立ったままコクピットを降りるように促し続けるのだ。
なのでそれ以降織斑は女子生徒達をお姫様抱っこし続けている。
その中には篠ノ之さんも居て、大層幸せそうだったが。
まあ、別にそこまでは問題無かった。
織斑の奴が、何人女子生徒をお姫様抱っこをしようが如何でも良かった。
だが、織斑の班には葵が居るのだ。
葵は一番最後に回っていたが、葵が興味無さげにしていたにも関わらず、その直前の生徒はお節介を焼いたのか、立ったままISを降りたのだ。
「最後までどういうつもりだよ………仕方ねえな………」
織斑は呆れたように溜息を吐く。
織斑は、もう慣れてしまったのか、それまでの流れの通りに葵を抱き上げようと近付き、手を差し出した。
「あ゛あ゛っ………!?」
既に自分の班が終わり、その様子を見ていた俺は織斑に殺意を覚える。
思わず授業中だという事を忘れて、織斑を殴り飛ばそうと足に力を込めた。
だが、その時、
「あらっ………?」
織斑の手は空を切った。
葵がヒョイとその手を躱したのだ。
「え……? 神代さん………?」
織斑が怪訝な声を漏らすと、
「別に私は頼んで無いし。大士以外の男に抱かれたくないし。そもそも必要無いし」
葵は据わった目で織斑と、自分の前に勝手に立ったままISを降りた女子生徒を見つめる。
その目に、織斑と、葵の前にISに乗った女子生徒は冷や汗を流した。
「だ、だけどどうするんだ?」
織斑がそう聞くと、
「言ったでしょ? 必要無いって」
葵は立ったままのISに歩み寄る。
すると、
「ふっ……はっ……!」
葵はISの各部を蹴り、更に突起部に捕まって、逆上がりの要領で1回転すると、コクピット部に降り立った。
「「「「「おお~~~っ!」」」」」
それを見ていた織斑や女子生徒達が感心した声を漏らしながら拍手した。
まあ葵なら本当は、そこらを足場にしなくても、一跳びでコクピットまで跳べたんだけどな。
あくまで、運動神経が良いレベルに見せかけたんだろう。
放課後の自主練で、何度かISに乗っていた葵は、問題なく基本動作を終わらせ、授業を終えた。
昼休み。
織斑から昼食に誘われた俺達は、偶にはいいかと了承し、集合場所の屋上へと来た訳だが………
「…………どういうことだ?」
「ん?」
篠ノ之さんが開口一番にそう呟いた。
「天気がいいから屋上で食べるって話だったろ?」
「そうでなくてはな…………」
不満そうな顔の篠ノ之さんと、篠ノ之さんの不満そうな理由が分かってない織斑。
そして屋上には俺達の他にも、オルコットさんに鈴、デュノアの姿もある。
「せっかくの昼飯だし、大勢で食った方がうまいだろ? それにシャルルは転校して来たばっかりで右も左も分からないだろうし…………」
「そ、それはそうだが……………」
ここまでの流れで、俺達は大体の理由を察した。
おそらく、篠ノ之さんが勇気を振り絞って、織斑を昼食に誘ったんだろう。
織斑もそれを快諾した。
しかし、篠ノ之さんは、2人きりで食事をしようという意味で誘ったのだろうが、そこに織斑の鈍感が発動。
織斑は皆で食べた方が楽しいという理由で知り合いを誘いまくったのだ。
そして今に至ると。
「「「はぁ………」」」
俺と葵、優花は同時に溜息を吐いた。
「ん? 何溜息ついてんだよ?」
そう言った織斑の言葉に、
「「「はぁ………」」」
俺達はもう一度溜息を吐いた。
そして、
「篠ノ之さん」
「な、何ですか?」
俺は篠ノ之さんに声を掛ける。
そして、
「すまなかった」
「ごめんね箒ちゃん」
「悪いわね、箒」
俺達は篠ノ之さんに謝罪した。
「……………? 何謝ってんだよ?」
俺達の謝る理由に気付いていない織斑は首を傾げる。
そんな織斑を見て、篠ノ之さんは大きく溜息を吐き、
「別にいいです。黒騎さん達が悪いわけではありませんから………そもそも、自分が悪いと気付いていない奴もいる事ですし………!」
篠ノ之さんはそう言いながらこれ見よがしに織斑を睨む。
だが織斑は、
「それは酷い奴だな! 一体誰だ?」
と、全く分かっていない事を口にする。
流石に他人事とは言え、篠ノ之さんが哀れ過ぎる。
「…………なんでもない」
篠ノ之さんはフイと顔を背けた。
「あの…………本当に僕が同席して良かったのかな?」
そんな様子を見て、デュノアがそう漏らす。
「いやいや、男子同士仲良くしようぜ! 今日から部屋も一緒なんだしさ!」
織斑が笑いながらそう言うと、
「ありがとう………一夏って優しいね!」
デュノアが笑みを浮かべる。
その笑顔に、織斑は顔を赤くした。
つーか、デュノアって本当に男か?
何か時々仕草が女っぽいつーかなんつーか………
まあ、女っぽい男もいないわけじゃないが。
まあ、如何でもいい事か。
「何照れてんのよ?」
一方、そんな織斑の様子を見て不機嫌になる鈴。
「べ、別に照れてないぞ………!」
織斑はそう言うが説得力は全く無い。
すると、鈴が持っていたタッパーの蓋を開けるとその中には、
「おっ! 酢豚だ!」
織斑が嬉しそうに声を上げる。
「そう、今朝作ったのよ。食べたいって言ってたでしょ?」
鈴が自慢げにそう言った。
「………私のはこれだ」
篠ノ之さんが弁当箱の蓋を開くと、その中にはご飯と弁当の代表的なおかずが敷き詰められた見事な料理があった。
「おお! 凄いな! どれも手が込んでそうだ!」
織斑が感心したようにそう言う。
「つ、ついでだついで! あくまで私が自分で食べるために時間を掛けただけだ」
篠ノ之さんは照れ隠しなのかそういう言い方をしてしまう。
「そうだとしても嬉しいぜ。箒、ありがとう」
「フ、フン…………!」
篠ノ之さんは顔を逸らすがその顔は妙に嬉しそうだ。
「そんじゃま、いっただっきまーす!」
織斑はそう言って唐揚げを口に運ぶ。
よく噛んで味わう織斑を、篠ノ之さんは緊張の眼差しで見つめていた。
そして、
「おお! 美味い! これってかなり手間がかかってないか!?」
その口から出た大絶賛に篠ノ之さんは顔を綻ばせ、味付けの説明をしていく。
そんな彼らを他所に、俺達も食事を始める事にした。
俺達の弁当は優花の手作りであり、小分けにされた御飯が入った弁当箱と、1つの大きな弁当箱がある。
優花が大きな弁当箱の蓋を開けると、そこには、オードブルとも言うべき料理の数々が並べられていた。
「まあ! 何と素晴らしいお弁当でしょうか!」
まず、見た目の華やかさにオルコットさんが絶賛の声を上げる。
因みにオルコットさんのお昼ご飯は、購買で買ったサンドイッチだった。
「うおっ!? なんつー本格的な………!」
織斑も驚きの声を上げる。
「まあ、これでも洋食店の娘だからね。料理には多少の自信はあるわ」
優花が何でもないようにそう言う。
「これが多少………?」
「いや、絶対に違うでしょ……?」
篠ノ之さんと鈴はその料理に戦慄している。
「そんじゃ、いただきます」
「「いただきます」」
俺達は手を合わせてからおかずに箸を伸ばす。
俺は唐揚げを摘んで口に運ぶと、
「うん、うまい! やっぱり優花の手料理は美味いな!」
俺は素直な感想を言う。
「そうだよね。日に日に料理の腕も上がってるし」
葵も優花の料理の腕を絶賛する。
「もう、そんなに褒めなくても、手料理なら毎日作ってあげるから、安心しなさい」
「ああ。何度も言うけどよろしくな」
「「ッ!?」」
俺達の言葉に反応するのが鈴と篠ノ之さん。
俺達の言葉の真意に気付いている様だな。
すると、葵がおかずを自分の箸で1つ摘まみ、
「はい、大士。あ~ん」
そう言って俺に差し出してきた。
「あ~…………んっ……!」
俺は躊躇なく口を開いてそのおかずを受け入れた。
「「「なっ………!?」」」
驚愕の声が聞こえるが、俺は構わずに租借し、飲み込む。
そんな俺を葵は嬉しそうに見つめていた。
すると、
「ああ、これってもしかして、日本ではカップルがする『はい、あ~ん』って奴なのかな? 仲睦まじいね~!」
傍で見ていたデュノアはそんな感想を零した。
「もしかして、黒騎君と神代さんって恋人同士なのかな?」
デュノアはニコニコと笑みを浮かべながらそう聞いてきた。
「ああ」
「そうだよ」
俺と葵は間髪入れず頷く。
「「「ええっ!?」」」
織斑、鈴、篠ノ之さんの3人が驚愕の声を上げる。
「まあ、やはりそうでしたの。黒騎さんと、神代さん、園部さんの様子から、どちらかが恋人ではないかと思っておりましたが、神代さんの方だったのですね」
オルコットさんは納得したようにそう漏らすが、
「ちょっと待ちなさい!!」
鈴が一際強く声を上げた。
「あ、あんた! この前は優花の事を愛してるって言ってたじゃない!」
「言ったな」
鈴の言葉に特に取り乱すことなくそう返す。
「その言葉は嘘だったっていうの!?」
「別に嘘じゃない。優花の事を愛しているのは本当だ」
「だ、だったら何で葵と恋人同士なのよ!?」
「そんなのは簡単だ。葵とも恋人同士で、優花とも恋人同士なだけだ」
「んなっ!? そ、それって………!」
「俗にいう二股って奴だな」
鈴の言葉に、俺は一つ一つ返していく。
すると、
「大士っ!!」
織斑が叫びながら俺の胸倉を掴んできた。
「見損なったぞ!! お前がそんな最低な奴だなんて、思いもしなかった!!」
「…………………で?」
「で?………って、お前には罪悪感ってものが無いのか!?」
「………何で?」
「そんなの当然だろ! 隠れて2人の女と付き合うなんて、最低の男だ!!」
「……………だから?」
「だから、って…………」
織斑が尚も言いかけた時、横から手が伸びて来て、俺の胸倉を掴んでいた手首を掴むと、
「いい加減その手を放しなさい………!」
優花の言葉と共に、骨が軋むほどの握力で握られる。
「ぐあぁぁっ!?」
織斑は堪らず俺の胸倉を放した。
「な、何するんだよ!?」
織斑が優花に問いかけると、
「さっきから聞いてれば、大士が最低な男だのなんだの………恋人を最低な男呼ばわりされて、平気なほど、私は大人しくないわよ………!」
ギンッと鋭い眼光で織斑を睨む優花。
「だ、だってそうだろ!? 隠れて別の女と付き合ってたんだぞ!? 園部さんだって酷いと思うだろ!?」
織斑はその眼光に一瞬気圧されるが、感情が高ぶっているのかそう言い返す。
「……………何時知らないって言ったの?」
「えっ………?」
「何時私が大士と葵が恋人同士って事を知らないって言ったのよ………!?」
「え、え……? 如何いう………?」
織斑は困惑した声を漏らす。
「ハッキリ言うけど、大士が私と葵の2人の恋人って事は、最初っから知ってるわ。全部承知の上で、私は大士と恋人になったの」
「えっ………ど、どうして………?」
「どうして? そんなの大士の事がこれ以上無いほど大好きで愛してるからに決まってるじゃない」
「な、なんで………!? 2人の女と恋人になるなんて、最低の事じゃ………!?」
「一方的に大士が全部悪いみたいに言うの、やめて欲しいな………!」
織斑の言葉に答えたのは葵だった。
その声色から、かなり織斑に対して頭に来ている事が伺える。
「か、神代さん…………?」
織斑は困惑した声を漏らすが、
「そもそも、大士に二股をするように勧めたのは私だよ……!」
「えっ…………?」
「複数の女性と付き合うことは、日本の法律や価値観から見れば最低………そんな事、織斑君に言われなくても、大士は全部わかってる………!」
「なっ!?」
「だから大士は最初、私の告白を断ろうとした。私と優花、2人の女性を同時に好きになって、どちらかを選ぶことも出来ない自分は碌な男じゃないから、私と付き合っていいはずが無い、ってね」
「じゃ、じゃあ何で……?」
葵の言葉に、織斑は信じられない様な表情を浮かべる。
「さっきも優花が言ったけど、大士をこれ以上無いほど愛しているから。どんなことをしても、大士と添い遂げたいって思ってるから………! そして同時に、方向性が違うけど、私は優花の事も好き。優花にも幸せになって欲しいって思ってる。だから、私達3人で幸せになる一番いい方法は、私と優花、2人で大士の恋人になる事だった」
「そ、そんな……………」
織斑にとって晴天の霹靂だったのか、困惑したように声を漏らす。
「……………織斑」
そこで俺は口を開く。
「確かに俺達の関係は、日本の法律や価値観から見れば最低だ。批判は受けるだろうし、後ろ指も刺されるだろう。だが、それを全て理解し、承知した上で俺は2人と恋人になった。誰に何と言われようと知った事じゃないし、邪魔するものが立ちはだかるなら、それを全て叩き潰す『覚悟』がある………!」
「ッ………………!?」
「お前が俺を認めないことは構わない。別に理解して欲しい訳じゃないからな。だが、どんな理由であれ、俺達の幸せを壊そうとするのなら、それ相応の『覚悟』を持って立ちはだかれ。立ちはだかる者に容赦をするつもりは無い………!」
俺の最後の言葉と共に睨み付けると、織斑は押し黙ってしまった。
すると、昼休み終了の予鈴が鳴ったため、俺達はその場を立ち去った。
【Side 三人称】
それぞれが教室に戻る中、鈴音は先程の大士達の事を思い出していた。
大士が二股をしていたのにも驚いたが、その全てを理解し、呑み込んだ上で、尚も一緒に添い遂げようとする葵と優花の想いにも衝撃を受けた。
「……………あの3人に比べたら、私の想いはおままごとの様な恋愛ごっこ………か…………ホントにその通りじゃない………」
以前はカッとなって言い返したが、あの3人の覚悟と、愛の深さを知った今では、言い返す気も起きない。
恥ずかしさで一夏に自分の想いすら伝えられない自分とは違い、3人は互いの想いを臆面もなく口にし、そして更に困難な茨の道を迷わず進もうとしている。
「『覚悟』…………か……………」
鈴音は、あの3人の様な『覚悟』が持てる自信が無い。
「だけど…………」
一夏の事を諦める気は毛頭ない。
「見てなさい。私は私のやり方で、一夏を振り向かせてみせるから!」
以前と同じ言葉。
だが、あの時には無かった『覚悟』を持ってそう口にした。
IS編第5話です。
シャルロットとラウラの転入でした。
後は大士が二股してることを一夏が知りました。
多分ああいう反応になるんじゃないかなーっと思いながら書いてます。
さて、本来であれば、次回はシャルロットの秘密がバレる所ですが………
お楽しみに。
後、前回のアンケートですが、選択肢が分かり辛かったようなので、やり直しも含めた決選投票をします。
前回のアンケートの選択肢は、全部一夏が相手です。
大士のヒロインはもう楯無と簪で決定なので。
もしやり直しが1位の投票数の半分を超えればアンケート取り直します。
シャルロットとラウラの扱い決選投票
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シャルロットだけ一夏に好意を持つ
-
どちらも好意を持たない
-
間違えた!アンケートのやり直しを要求する