ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第6話 シャルルの正体

 

 

 

昼休みに俺が葵と優花の2人と恋人同士であることが知られて以降、織斑は度々納得のいかなそうな表情を俺に向けてくる。

まあ、俺は気にせずにスルーしているが。

あともう1つ、優花がデュノアに関してある事に気付いた。

それは、

 

「そう言えば、デュノアに関してなんだけど、あの子、女ね」

 

その日の放課後、自室に戻った後に優花がそう言った。

とは言え、さほど驚きは無い。

 

「ああ、やっぱり………」

 

俺は逆に納得する。

 

「気付いてたの?」

 

「確証は無かったが、可能性としてはあり得ると思ってたな。何ていうか………所々仕草が女っぽかったし」

 

「ああ、それ、私も思った」

 

葵も同意する様に頷く。

 

「つーか、何の為に男装してるんだ?」

 

男装させてIS学園に入学させるメリットなんて無いと思うが………

 

「さあ、そこまでは分からないわよ」

 

優花は肩を竦めた。

 

「まあ、俺達に関係無ければどうでもいいか」

 

「そうだね」

 

俺の言葉に葵が同意するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまた少しの時が流れ、いつものように放課後の訓練を、美姫に見て貰っている時だった。

突如としてアリーナの一角が騒めく。

 

「ん?」

 

「何?」

 

気になった俺達がそちらを見てみると、

 

「見て見て! 織斑君とデュノア君が模擬戦するみたいよ!」

 

同じアリーナで訓練していた生徒達が注目している先で、織斑とデュノアがISを纏って向かい合っていた。

 

「織斑とデュノアの模擬戦か………」

 

互いの合図で模擬戦が開始されると同時に、織斑が剣を構えて突っ込む。

デュノアは左腕に装備されているシールドで防ぐと、突きで牽制して間合いを空け、その隙に上空へ飛び立つ。

織斑もそれを追うが、反転すると同時に右手にアサルトライフルを展開したデュノアが弾丸の嵐を浴びせる。

織斑はそれを避けることが出来ずに攻撃を受ける。

その後も果敢に攻め込もうとするが、デュノアは上手く距離を取って接近を許さない。

 

「織斑の奴、操縦技術の才能はあっても、戦術の組み立て方が下手糞だな」

 

織斑はほぼ自在にISを動かしてはいるが、その動きはハッキリ言えばお粗末だ。

高機動近接型の白式なのに、相手の攻撃を避けずに突っ込もうとするものだから、簡単にシールドエネルギーが削られていく。

そして、最後の賭けと言うより、ヤケクソ気味の突撃を行うが、あっさりとデュノアには見切られ、止めのスナイパーライフルを受けて敗北した。

 

 

その後に織斑達は射撃武器を使っていたようだが、その途中にボーデヴィッヒさんが現れて織斑に向かって砲弾をいきなりぶっ放すという暴挙を行ったが、デュノアが防いだことで事なきを得た。

 

 

 

その日の自主訓練が終わった後、自室に向かっていた俺達だったが、

 

「あっ、黒騎君! 丁度よかった!」

 

通りかかった山田先生に呼び止められた。

 

「はい?」

 

俺は足を止めて山田先生に向き直る。

 

「お知らせですが、今月下旬から男子も大浴場が使えるようになります。時間別にすると、色々と問題が起きそうだったので、男子は週に2度の使用日を設けることになりました」

 

「お~。それは嬉しいお知らせですね」

 

流石にシャワーだけでは味気ないと思っていた所だ。

週に2度だけでも湯船に浸かれるのはありがたい。

 

「なので、この事を織斑君とデュノア君に伝えておいて頂けますか?」

 

「わかりました。その程度なら構いません」

 

俺は山田先生の要望に頷く。

 

「それではお願いします」

 

山田先生は一度頭を下げると、仕事があるのか少し早足で戻っていった。

 

「織斑君の所に行くの?」

 

葵は少し嫌そうな顔をする。

先日の事を根に持っている様だ。

 

「まあ、先生からの伝言だ。いくら俺からと言っても、無下にはしないだろ?」

 

部屋の入り口で伝言を伝えたらさっさと立ち去れば良いだろう。

俺はそう思って織斑の部屋に向かう事にした。

 

 

 

因みに織斑のルームメイトだが、以前は篠ノ之さんだったが、今は部屋割りが変えられて、デュノアがルームメイトだ。

因みに俺達はデジモンが居るので、その事を配慮して1つの部屋に固められたままである。

俺は織斑の部屋のドアをノックする。

 

「織斑! 居るか? 黒騎だが、先生からの伝言がある!」

 

俺がそう言うと、ドアの向こうからドッタンバッタンと忙しない音が聞こえて来て、慌てた様子でドアが開けられた。

 

「た、大士!? な、何の用だよ……!?」

 

織斑の様子が明らかにおかしい。

俺に対して軽蔑の目を向けてくると思っていた。

確かにそれもあるが、今はそれ以上に焦りの感情が大半を占めている。

まるで、俺達がこのタイミングで来たことが非常に拙いと言う感じだ。

 

「先生からの伝言だ。今月末から、男子も週に2回大浴場が使えるようになるそうだ」

 

「そ、そうか! それは嬉しい知らせだな……!」

 

織斑は、焦った感情を隠そうと、無理矢理嬉しそうな笑みを浮かべようとしている。

全く隠せていないが。

 

「おい織斑。挙動が不審すぎるぞ」

 

「ッ!? そ、そんな事は無いぞ……!?」

 

「声が上ずってるぞ……」

 

全く隠せていない織斑に俺は呆れる。

なので、ついつい余計な事を口走ってしまった。

 

「それで? デュノアの奴が女だったとか?」

 

「なっ!? 何でそれを!?」

 

「お前………カマを掛けられただけかもしれないのにハッキリ肯定するなよ………せめてそこは誤魔化し切れよ…………」

 

あっさりと秘密をバラした織斑に大きなため息を吐く。

 

「あっ………!?」

 

織斑は慌てて口を押さえるがもう遅い。

 

「………一夏、もういいよ」

 

織斑の後ろからデュノアの声がした。

だが、以前とは違い、その胸には小さくない膨らみがある。

そして、その表情にも影があった。

俺は、また自分から余計な事に首を突っ込んでしまったと後悔するのだった。

 

 

 

織斑の部屋に通された俺達。

 

「どうして黒騎君達は、僕が女だってわかったの?」

 

「俺は普段の仕草から、女っぽい所があると思って可能性として考えていただけで、ハッキリと見抜いたのは優花だ」

 

デュノアの言葉に俺はそう答える。

 

「私は普通の人より感覚が鋭いのよ。一目見れば、男かそうじゃないか位の判断は付くわ」

 

「そうなんだ…………」

 

すると、

 

「で? どうして男の振りなんかしてたんだ?」

 

織斑がそう切り出す。

 

「それは………その、実家からそうしろって言われて………」

 

「うん? 実家って言うと、デュノア社の………」

 

「そう。僕の父がそこの社長。その人からの直接の命令なんだよ」

 

話の流れからするに、デュノアはデュノア社の社長の御曹司………じゃなくて、社長令嬢って事か。

 

「どうして、って思うよね? それは、僕が愛人の子だからだよ」

 

デュノアがそう言う。

 

「それでね。2年ぐらい前にお母さんが病気で亡くなって…………その時に父の部下がやってきたの。それで色々と検査をする過程でISの適性が高いことが分かって、非公式だけどデュノア社のテストパイロットをやる事になってね…………父に会ったのは2回ぐらい………会話は数回ぐらいかな? 普段は別邸で生活をしてるんだけど、一度だけ本部に呼ばれてね。その時に初めて本妻の人に会ったんだけど、いきなり殴られたよ。『泥棒猫の娘が!』ってね。僕はその時何も聞いてなかったから戸惑ったよ」

 

そう言いながら愛想笑いを零すデュノア。

その表情を見て、織斑は拳を握りしめている。

どうやら猛っているようだ。

 

「それから少し経って、デュノア社が経営危機に陥ったの」

 

「え? だってデュノア社は量産機のシェアが世界第3位だろ?」

 

織斑が疑問の声を漏らす。

 

「そうだけど、結局リヴァイヴは第二世代型なんだよ。ISの開発っていうのは物凄いお金がかかるんだ。殆どの企業は国からの支援があってやっと成り立っている所ばかりだよ。それで、フランスは欧州連合の総合防衛計画『イグニッション・プラン』から除名されているからね。第三世代型の開発は急務なの。国防の為もあるけど、資本力で負ける国が最初のアドバンテージを取れないと悲惨な事になるんだよ」

 

デュノアが会社が経営危機な理由を説明する。

 

「話を戻すね。それでデュノア社も第三世代型を開発していたんだけど、元々遅れに遅れて第二世代型最後発だからね。圧倒的にデータも時間も不足していて、なかなか形にならなかったんだよ。それで、政府からの通達で予算を大幅にカットされたの。そして、次のトライアルで選ばれなかった場合は援助を全面的にカット、その上でIS開発許可も剥奪するって流れになったの」

 

「何となく話は分かったが、それがどうして男装に繋がるんだ?」

 

「簡単だよ。注目を浴びるための広告塔。それに………同じ男子なら日本で登場した特異ケースと接触しやすい。可能であればその使用機体と本人のデータを取れるだろう………ってね」

 

「それはつまり………」

 

「そう、白式のデータを盗んで来いって言われてるんだよ。僕は、あの人にね」

 

織斑はデュノアの話を納得したように聞いているが、俺はさっきから違和感を感じていた。

 

「とまあ、そんな所かな。でも一夏達にはバレちゃったし、きっと僕は本国に呼び戻されるだろうね。デュノア社は、まあ………潰れるか他企業の傘下に入るか、どのみち今までの様には行かないだろうけど、僕には如何でもいい事かな」

 

「…………………」

 

「ああ、なんだか話したら楽になったよ。聞いてくれてありがとう。それと、今まで嘘吐いててゴメン」

 

デュノアは諦めた表情で頭を下げた。

その時、織斑が何か行動を始めようとした瞬間、

 

「で? お前はどうする気なんだ?」

 

俺はそう問う。

 

「えっ………? どうするって…………?」

 

俺の問いに、デュノアは困惑した声を漏らした。

 

「これからお前はどうしたい? 何がしたい?」

 

俺はもう一度問いかける。

 

「どうって………時間の問題じゃないかな。フランス政府も事の真相を知ったら黙ってないだろうし、僕は代表候補生を降ろされて、良くて牢屋とかじゃないかな」

 

「それでいいのか?」

 

デュノアの言葉に、再度問いかけた。

 

「良いも悪いも無いよ。僕には選ぶ権利が無いから、仕方がないよ」

 

そう言いながら、デュノアは痛々しい笑みを浮かべる。

完全に諦め、『運命』を受け入れた表情だ。

 

「そうか………」

 

俺はそれを見て立ち上がる。

 

「なら、俺達に出来る事は何も無い」

 

俺は踵を返し、葵、優花もそれに続こうとした。

 

「待てよ!!」

 

織斑が俺達を呼び止めた。

 

「何だ?」

 

俺は織斑に向き直る。

 

「何だ、て………お前は今の話を聞いて何とも思わなかったのか!?」

 

織斑は猛る感情を隠さずに俺に叫びながら問いかけてきた。

 

「………可哀想だとは思うし同情もする。だがそれだけだ」

 

俺はそう答える。

 

「それだけ………って、他人事みたいに! 何とかしてやろうって思わないのかよ!?」

 

「実際他人事だしな。別にデュノアとは親しい仲でもないし、助けを乞われたわけでもない。その本人が『運命』を受け入れている以上、赤の他人の俺達が如何こう言うことでもない」

 

俺はデュノアに視線を移す。

 

「そもそも、自分から何もしない奴を助けようとは思わない」

 

「ッ………!?」

 

俺の言葉にデュノアがビクつく。

 

「そ、それは………さっきも言ったけど、僕には選ぶ権利が無いし………」

 

デュノアが弱々しくそう言うが、

 

「選ぶ権利が無いんじゃない。お前は自分で選ぼうとしていないだけだ」

 

「ッ!?」

 

「言われたままに従うだけの『運命』。その『運命』に流されてきたのはお前自身だ。自分から何かしなけりゃ、変わる『運命』も変わらない」

 

「そんなの………無駄だから…………」

 

「確かに何かしても何も変わらない『かもしれない』。だが、何もしなければ何も変わらないのは『確定』だ」

 

「そ、それは…………」

 

「お前は織斑に問われた自分の境遇を話しただけで、自分から何かを訴えたのか? 助けを求めたのか? ただ、自分の境遇に同情して手を差し伸べられるのを『待つ』だけの奴に、俺は手を差し伸べようとは思わない。みっともなくても助けを求めて縋りつき、自分の『運命』に逆らい、変えようとする者にこそ、俺は手を差し伸べようと思えるんだ」

 

「ッ…………………………」

 

俺の言葉を聞くと、デュノアは俯く。

すると、

 

「…………………だったら、助けてよ…………」

 

俯いたまま、デュノアがポツリと呟いた。

そして、顔を上げると、

 

「僕だって、こんなのは嫌だ! こんな『運命』で良い訳無い! お願い! 僕を助けて! 助けてよぉっ!!」

 

涙を流しながら、そう訴えた。

デュノアの本気の懇願。

俺はそれを見ると、元の場所に座り直した。

 

「絶対に助けられるという確約は出来ない。だが、俺達に不都合が起きない範囲での相談や手助けはしよう」

 

俺はそう言う。

 

「………黒騎君」

 

急変した俺の態度に、デュノアは驚いたように目を見開く。

 

「なんだよ………! 結局助ける気なら、最初っからそう言えばいいじゃねえか!」

 

織斑が俺に対して呆れたような口調でそう言ってくる。

 

「勘違いするな。さっきまでは俺は本当にデュノアを助ける気は無かった。だが、デュノアは本気で助けを求めてきた。だから出来る範囲でなら手助けしてやろうと思っただけだ」

 

「ッ…………」

 

「そもそも、お前はどうする気だったんだ?」

 

俺は織斑にそう問いかける。

すると、得意げな顔をして、

 

「特記事項第21に本学園における生徒は、その在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意が無い場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとするって奴がある………つまり、この学園に居れば、少なくとも3年間は大丈夫だろ? それだけ時間があれば、何とかなる方法だって見つけられるさ!」

 

自信満々にそう言った。

 

「………………………はぁ」

 

俺は思いっきり呆れながら溜息を吐いた。

 

「何を言うかと思えば、単なる問題の先延ばしだろうが………で? もし3年間で方法が見つけられなかったらどうするつもりなんだ?」

 

俺はそう問いかける。

 

「えっ? さ、3年もあるんだ。きっといい方法が見つかるさ!」

 

「3年っていうのは、意外と長い様で短いんだぞ。もし方法が見つからなかったら、お前はその先もデュノアを助ける覚悟があるのか?」

 

「そ、それは…………」

 

「お前は人を護るという行為を簡単に考えている様だが、『護る』という事は、とても難しい事だ。デュノアのように、複雑な事情を抱えている奴は特にな。人を護ると言うからには、それ相応の覚悟を以って言え。俺は、その覚悟が無いまま『護る』と言い続けて、多くの物を失った奴を知ってる。そして織斑。お前は、若干の方向性の違いはあれど、そいつによく似ている。お前が『誰かを護りたい』と言うのなら、その『誰か』を明確にするべきだ。でなければ、お前の行く先に待つのは『破滅』だぞ」

 

「うっ…………」

 

俺はデュノアに視線を戻した。

 

「で、デュノアの事だが、これからどうするかを決める前に、これだけは聞いておきたい」

 

俺はデュノアに向き直りながら問いかける。

 

「な、何かな?」

 

俺は一呼吸置き、

 

「…………デュノア社の社長は馬鹿なのか?」

 

一番肝心な事を問いかけた。

 

「…………………はい?」

 

デュノアは素っ頓狂な声を漏らす。

 

「ど、如何いう意味かな?」

 

デュノアは狼狽えながら聞き返してくる。

 

「如何いう意味も何も、そのまんまの意味だ。デュノア社の社長は頭が悪いのかと聞いたんだ」

 

「ええ…………? そ、そんな事無いと思うけどな…………今は経営危機とは言え、シェアが世界第3位まで行ったわけだし………少なくとも、経営者としては、並以上のやり手だと思うけど…………」

 

デュノアは困惑しながらそう答える。

 

「そうなると、やはりデュノアの扱いに違和感が残るな………」

 

「違和感?」

 

「ど、どういうことだよ!?」

 

俺の言葉に、2人が反応する。

 

「まず、デュノアを男装させた事だが、さっきデュノアは注目を浴びるための広告塔と言っていたな?」

 

「う、うん………」

 

「ハッキリ言って、それは素人の俺から見ても愚策だと思うが?」

 

「ぐ、愚策っ!?」

 

「3人目の男性操縦者が現れた。確かにその瞬間は大きな注目を浴びるだろう」

 

「うん………それが狙いなわけだし………」

 

「だが、そんなものは長くは続かない。すぐに性別の確認が入るだろうし、隠し通せて1年が限界だと思う。その先に待っているのは、悪い意味での注目の的だ。それこそ、最初に得た利益を損なうほどのな」

 

「あっ………!」

 

「こんな明らかにリスクとリターンが釣り合ってない愚策は、馬鹿じゃない限り使わないと思うがな」

 

「そ、そう言われると………確かに………」

 

デュノアは、本気でたった今気付いたと言わんばかりに呟く。

 

「それに男性操縦者の織斑に近付くために男装しろと言うのも可笑しな話だ」

 

「そうなの?」

 

「デュノアが男装の訓練をしたのなんて、精々1カ月位のものだろう?」

 

「う、うん………一夏が見つかってから男の振りを訓練し始めたからね」

 

「そんな付け焼刃の男装で織斑に近付くぐらいなら、普通に女子生徒として織斑に近付き、ハニートラップなんかを仕掛けた方が、もっと成功率が高いと思うけどな」

 

「ハ、ハニートラップ………!?」

 

その言葉に、デュノアが顔を真っ赤にさせる。

 

「まあ、例えそうだったとしても、織斑には通用しないと思うが」

 

「おう! 勿論だぜ! そんな方法に引っかかるもんか!」

 

俺の言葉に織斑は気を良くしたようだ。

織斑は、自分ならそんな見え透いた罠には掛からないと自信を持っているんだろう。

確かに罠には掛からないと思う。

ただし、鈍感と言う意味で。

こいつの場合、モーション掛けられても気付かずにスルーするからな。

とりあえず、いい気になっている織斑はほっといて話を進める。

 

「それで、最後の違和感を感じたのが、織斑の言った特記事項だ」

 

「えっ?」

 

「IS学園にそう言う特記事項がある事はデュノア社の社長も把握している筈だ。そして、今までのデュノアの扱いを鑑みても、デュノアがその特記事項を使ってIS学園に残るという選択肢を取る可能性が高いことも、容易に予想出来ていた筈だ」

 

「それって、ただ知らなかっただけじゃねえのか?」

 

「確かにその可能性も無いわけじゃないが、あらゆる可能性を考慮すべき経営者が、仮にも犯罪の手口でデュノアを送り込む先の規則を把握していないとは考え辛い。となれば、デュノア社の社長は全てを承知の上でデュノアをこのIS学園に送り込んだ可能性が高いと思う」

 

「な、何の為に!?」

 

織斑が叫ぶ。

 

「さて、ここからはかなり希望的観測が込み入った話になるが…………今までの話を踏まえて、デュノアをIS学園に送り込む事によって一番得をするのは誰だ?」

 

「「えっ?」」

 

俺の言葉に、2人は同時に声を漏らす。

 

「え、えっと………デュノア社の社長………じゃねえよな………?」

 

「って言うより、得をする人なんて居ないんじゃ…………」

 

織斑とデュノアは困惑する。

すると、

 

「…………あっ!」

 

俺の横で一緒に考えていた葵が思いついたような声を漏らした。

 

「居た。たった1人だけ、得をする人が………!」

 

その葵の視線を見て、

 

「ああ、確かに………居るわね。1人だけ」

 

優花も納得したように頷いた。

 

「え、え? 一体誰なんだよ?」

 

織斑は全く分からないらしい。

まあ葵と優花は、完全な第三者視点から見てるから気付いたようなもんだな。

 

「IS学園にデュノアを送り込んで一番得をする人物…………それはデュノア。お前自身だ」

 

「………………えっ?」

 

デュノアは一瞬何を言われているのか分からず、呆けた後に声を漏らした。

 

「ぼ、僕…………?」

 

「ああ。IS学園に入ったお前は、特記事項により、3年間は保護されたと言っていい。ハッキリ言って、それ以外のメリットが思い浮かばない」

 

「で、でも………どうして………?」

 

「ここからがさっき言った希望的観測が込み入った話になるが、お前をIS学園に送り込んだのは誰だ?」

 

「えっ? そ、それはさっきも言った通り、僕の父であるデュノア社の社長………」

 

「つまり、デュノアの父親が、何らかの危険からお前を護る為にISに乗せ、IS学園に送り込んだというのが一番筋の通る話だ」

 

「僕を………護る為に…………?」

 

「で、でも、危険ってなんだよ!?」

 

「俺の当てずっぽうで言うなら、デュノア社を乗っ取ろうとする派閥とか、ライバル会社とかだろう。単純に考えれば、会社を継ぐのは社長の子供だしな。デュノアを排除すれば、デュノア社を継ぐのはそう言う派閥やライバル会社の息が掛かった親族の誰かになるって寸法だろ」

 

「は、排除って…………」

 

「手っ取り早いのは暗殺じゃないか?」

 

「暗殺ッ…………!?」

 

デュノアは顔を青くする。

 

「じゃあ………あの人が僕を突き放しているのは………」

 

「自分から離れた場所に居た方が、デュノアは安全だと考えたんだろ?」

 

「ふ、ふざけるな! シャルルを護る為にシャルルを傷付ける!? そんなの護ってるって言えるのかよ!?」

 

織斑は頭に血が上ったようでそう吐き捨てる。

 

「『大切』の護り方は人それぞれだ。他人が口出す事じゃない」

 

「ッ………認めねぇ………! 俺はそんなの、絶対に認めねぇっ!! そんなのが『護る』だなんて、俺は認めない!!」

 

「ハイテンションになってる所悪いが、今言った事は、全て希望的観測が多分に込み入った推測の話だという事を忘れないでくれ。実際には、デュノア社の社長が馬鹿で言葉通りの狙いだという可能性も否定できないからな」

 

俺は最後にそう言っておく。

 

「何を信じるかはデュノア次第だ。父親を信じるも良し、織斑に縋るも良し。自分の『運命』を決めるのは自分だ」

 

「僕の………『運命』…………」

 

デュノアは胸に手を当てて目を瞑る。

そして、

 

「僕は………僕はお父さんを信じてみたい………」

 

「シャルル!?」

 

デュノアの言葉に織斑が驚愕する。

 

「シャルル! どうして!? 仮に大士の言った通りだったとしても、デュノア社長はお前を傷付けて…………!」

 

織斑が問いかけるように叫ぶと、

 

「もし黒騎君の推測が本当だったら…………お父さんが僕を本気で護ろうとしてくれたのは、事実だから…………」

 

「だけど!」

 

織斑が尚も口を出そうとしていたので、

 

「織斑。デュノアは自分の答えを出した。それ以上口を出すのは野暮だ」

 

俺はそう言って織斑の言葉を止める。

 

「お前がデュノア社長のやり方を認められないのはお前の自由だ。だからと言って、お前にデュノアの出した答えを否定する権利は無い」

 

「そんな………! 俺はシャルルの為を思って………!」

 

「シャルルの出した答えによって、お前に不利益が被らない以上、お前が口を出すのは筋違い。大きなお世話って奴だ」

 

「何だと!?」

 

「お前がお前の『正義』を貫くのは構わない。だが、その『正義』を他人に押し付けるな。お前の『正義』が押し付けた相手にとっての『正義』とは限らないんだからな」

 

 

「何だよそれ? 意味分かんねぇ!?」

 

やはりこいつも天之河タイプか…………

まだ取り返しがつかないわけじゃなさそうだが。

 

「別に分からないならこれから知ればいい。『正義』は1つじゃないという事を」

 

俺は立ち上がる。

 

「長居し過ぎたな。俺達はもう行く。俺の言葉をどう受け取るかはお前次第だ」

 

そう言って俺は織斑達の部屋を出て、葵と優花も後に続く。

ただ、大浴場が使えるようになることを伝えに来ただけなのに、変な事に巻き込まれたもんだ。

織斑は根っからのトラブルメーカーらしい。

ボーデヴィッヒさんとも何か因縁があるようだから、また何か問題を起こさなきゃいいんだが…………

異世界から戻って来たのに波乱万丈な学校生活が続く日常に、俺は溜息を吐くのだった。

 

 

 

 

 







IS編第6話です。
シャルロットの性別バレの回でした。
前回の流れから、どんなふうに大士達を絡ませようと悩んだ結果、こんな感じに。
大士達のシャルロットに対する反応はこんな感じでいいかなぁ?
一見冷たいようですが、本気で助けを求めれば手を差し伸べます。
次回は学年別トーナメントの予定。
お楽しみに。


シャルロットとラウラの扱い決選投票

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