ハジメが運転する魔力駆動四輪の前方から双頭ティラノとそれに追いかけられるウサ耳を生やした少女。
「……何だあれ?」
「……兎人族?」
「なんでこんなとこに? 兎人族って谷底が住処なのか?」
「……聞いたことない」
「じゃあ、あれか? 犯罪者として落とされたとか? 処刑の方法としてあったよな?」
「……悪ウサギ?」
ハジメとユエがそう話し合っているが、
「だずげでぐだざ~い! ひっーー、死んじゃう! 死んじゃうよぉ! だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」
そんな声が聞こえてくる。
「何か助けを求めてるようだが?」
俺がそう言うと、
「さ~て、どうすっかねぇ~?」
ハジメはいろんな可能性を考えているのか、簡単には助けたりしない。
「こんな所に如何してと兎人族がいるのか? さっき言った通りこの谷に落とされた犯罪者の可能性も…………」
ハジメがブツブツ呟いていると、
「まっでぇ~、みすでないでぐだざ~い! おねがいですぅ~!!」
ウサミミ少女が更に声を張り上げる。
すると、
「…………ハジメ君」
白崎さんが縋るような目でハジメを見ていた。
流石に白崎さんは見捨てられない様だ。
ハジメはそれに気付くと溜息を吐き、
「……………香織に感謝しろよ」
窓から身を乗り出してドンナーを構えると、ドパンッドパンッ! と2発の銃声が鳴り響いて双頭ティラノのそれぞれの頭を撃ち抜く。
頭を撃ち抜かれた双頭ティラノはそのまま勢い良く体を地面に激突させた。
「ひぃやぁあああああああっ!?」
その際に潰されそうになったウサ耳少女が悲鳴を上げていたが。
ハジメは魔力駆動四輪をそのウサ耳少女の前で停止させる。
それぞれが様子を伺おうと車を降りた所、
「ありがとうございますぅ~~~~~~~~!!!」
そのウサ耳少女が涙や鼻水を撒き散らしながらハジメに向かって飛び込んできた。
その瞬間、
「“聖絶”!」
「へぶぅっ!?」
光の障壁がハジメの前に現れ、ウサ耳少女はその障壁に頭から激突。
そのままずり落ちて地面に倒れる。
白崎さんが無詠唱で展開した聖絶だった。
「……面白い」
ユエがボソッと呟く。
すると、
「な、何するんですかぁ~!? 今の場面はこう、『大丈夫か? もう安心だ!』って優しく抱き留めて慰めてくれる場面でしょう!? しかも聖絶って…………何でそんな上級の魔法使ってまで防ぐんですか!?」
ウサギの少女は起き上がってガーっと捲し立てるが、
「何を言ってるのかな? このウサギさんは?」
にこやかな笑顔でそのウサ耳少女の顔を掴む白崎さん。
「誰の許可を得て私とユエのハジメ君に抱き着こうとしたのかなぁ?」
しかし、その威圧感は半端ない。
「あいだだだだだだだだだだだだっ!? 頭がっ! 頭がわれちゃいますぅっ!?」
所謂アイアンクローを受けて苦しむウサ耳少女。
白崎さんの筋力ステータスは、魔物肉を食べた3人の中では最弱だが、それでも常人からすれば化け物レベル。
ちょっと力をいれれば頭を潰れたトマトに出来る。
暫くそうした後、白崎さんはウサ耳少女の顔から手を離した。
「ふぇ~~~~…………いきなりひどいですぅ~~~~…………助けてくれた感謝の気持ちを全身で表そうとしただけなのに~~~~~~………!」
「その感謝ならそこの香織にするんだな。俺だけだったら面倒ごとに首を突っ込むつもりは無かった」
「へっ?」
ハジメはそう言いながら目の前にいる香織を指差す。
「な、何言ってるんですか!? 見捨てるつもりだったんですか!?」
「当たり前だろう? なぜ、見ず知らずウザウサギを助けなきゃならないんだ」
「そ、即答!? 何が当たり前ですか! あなたにも善意の心はありますでしょう! いたいけな美少女を見捨てて良心は痛まないんですか!」
「そんなもん奈落の底に置いてきたわ。つぅか自分で美少女言うなよ」
「な、なら助けてくれたら……そ、その貴方のお願いを、な、何でも一つ聞きますよ?」
「何言ってやがる? もう助けてやっただろう?」
すると、ウサ耳少女はその場で跪き、
「先程は助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの長の娘、シア・ハウリアといいますです! 取り敢えず私の仲間も助けてください!」
その言葉を聞いてハジメはめんどくさい事になったと溜息を吐いた。
そして現在、俺達はそのウサ耳少女のシアを魔力駆動四輪に同乗させて谷底を走っていた。
そのシアから聞いた話を要約すると、
シアは魔力を持たない亜人族の中に魔力を持ち、更に直接魔力を操る力を持って生まれた上に、未来視という固有魔法まで持った異端児。
家族の情が深い兎人族であるハウリアの一族は他の亜人たちからシアの存在を隠し続けていたが、つい先日それがバレてしまった。
このままではシアが処刑されるため、ハウリアの一族は捕まる前に【ハルツィナ樹海】を出た。
行く宛もない彼等は、一先ず北の山脈地帯を目指すことにした。
山の幸があれば生きていけるかもしれないと考えたからだ。
未開地ではあるが、帝国や奴隷商に捕まり奴隷に堕とされてしまうよりはマシだ。
だが、運悪く帝国の兵士に見つかってしまい、南へと逃れてきたがその際に半数近くが捕まってしまった。
全滅を避けるために必死に逃げ続け、ライセン大峡谷にたどり着いた彼等は、苦肉の策として峡谷へと逃げ込んだ。
流石に、魔法の使えない峡谷にまで帝国兵も追って来ないだろうし、ほとぼりが冷めていなくなるのを待とうとしたのである。
魔物に襲われるのと帝国兵がいなくなるのとどちらが早いかという賭けだった。
しかし、予測に反して帝国兵は一向に撤退しようとはしなかった。
小隊が峡谷の出入り口である階段状に加工された崖の入口に陣取り、兎人族が魔物に襲われ出てくるのを待つことにしたのだ。
そうこうしている内に、案の定、魔物が襲来した。
もう無理だと帝国に投降しようとしたが、峡谷から逃がすものかと魔物が回り込み、ハウリア族は峡谷の奥へと逃げるしかなかった。
そうやって、追い立てられるように峡谷を逃げ惑い、峡谷に逃げ込んだ約60人のハウリア族は、既に40人ほどまで減ってしまったという。
まあここまで聞いてしまえば情に厚い白崎さんが放っておけるわけも無く、その白崎さんにお願いされればハジメも折れるしかない。
ただ、ユエの発案で樹海の案内を条件に、という前置きが付いた。
それなら一応こちらにもメリットがある為、ハジメが危惧していた無償での慈善活動という使い潰されそうな面倒な事態にはならずに済む。
そうしてシアを連れて峡谷を魔力駆動四輪で爆走中なわけだが、その際にこちらの事情も少し話した。
「え、それじゃあ、ハジメさん、ユエさん、カオリさん、ユウカさんも魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると……」
「ああ、そうなるな」
「うん、そうだよ」
「……ん」
「まあね」
しばらく呆然としていたシアだったが、突然何故か泣きべそをかき始めた。
「……いきなり何だ? 騒いだり落ち込んだり泣きべそかいたり……情緒不安定なヤツだな」
「……手遅れ?」
「手遅れって何ですか! 手遅れって! 私は至って正常です! ……ただ、1人じゃなかったんだなっと思ったら……何だか嬉しくなってしまって……」
「「「「「「「……」」」」」」」
その言葉にどれだけの意味が込められているのかは俺には分からない。
それはきっと同じ境遇の者達しか完全に理解できないだろう。
暫く走っていると、遠くで魔物の咆哮が聞こえた。
「! ハジメさん! もう直ぐ皆がいる場所です! あの魔物の声……ち、近いです! 父様達がいる場所に近いです!」
「だぁ~、耳元で怒鳴るな! 聞こえてるわ! 飛ばすからしっかり掴まってろ!」
ハジメはそう言ってスピードを上げる。
「ふむ……………この位の距離なら……………」
俺は魔物の声から大体の距離を予想すると顔を上げる。
「葵!」
「うん、わかった!」
俺が名前を呼ぶだけで何をしようとしているのか理解したのか、葵はDアークと進化カードを取り出す。
「ドルモン!」
「リュウダモン!」
「分かってる!」
「心得た!」
パートナーたちも戸惑うことなく頷くと荷台から飛び出す。
俺達はカードをスラッシュする。
「「カードスラッシュ! 超進化プラグインS!!」」
――EVOLUTION
俺達のDアークにその文字が表示され、光を放つ。
「ドルモン進化!」
「リュウダモン進化!」
それと同時にドルモン達も光に包まれ、進化する。
「ドルガモン!!」
「ギンリュウモン!!」
成熟期となって飛び立つドルガモン達。
更に、
「「カードスラッシュ!」」
俺達はもう1枚カードをスラッシュした。
「「高速プラグインH! ハイパーアクセル!!」」
パートナーの高速移動を可能にするカード。
「お前達は先に行って兎人族を助けるんだ!」
「任せて!」
「おおっ!」
俺の言葉に2体は応えて魔力駆動四輪より速く先へ行く。
すると、
「ふぇえええええええっ!? どうなってるんですか!? ドルモンちゃんとリュウダモンちゃんが大きくなっちゃいました!?」
デジモンの進化を初めて見るシアが叫んだ。
「落ち着け残念ウサギ! あれは『進化』だ!」
「シンカ………ですか…………?」
「あいつらは大士と神代の力でより強くなるって事だ!」
ハジメ、それは説明端折り過ぎだ。
間違ってはいないが。
「ふえぇ………あのカワイイドルモンちゃんとリュウダモンちゃんをあんなに強そうにできるなんて、タイシさんとアオイさんって、実は凄かったんですね!」
「何か引っかかる言い方だな…………」
俺はシアの台詞にそう呟く。
少しすると、獲物を追い立てていたような魔物の声が、悲鳴のような鳴き声に変わって聞こえてきた。
そしてドリフトしながら最後の大岩を迂回した先には、ドルガモン達がワイバーンの様な飛竜に似た魔物の群れを相手に無双している光景が映っていた。
【Side カム】
この【ライセン大峡谷】に逃げ込んで3日。
ハイベリアに追い詰められた私達は全滅の危機に瀕していた。
今朝から娘のシアが姿を消し、それを一族総出で探していた所に10匹ほどのハイベリアの群れに運悪く見つかってしまったのだ。
岩場に隠れた私達だったが、ハイベリアは追い詰めた獲物を品定めする様に上空を旋回している。
やがて、獲物を定めたのか急降下してきたと思うと、空中で1回転して尾の先についた硬質な球体を思い切り叩きつける。
その一撃は岩を砕き、隠れていた一族が逃げ惑う。
その時、逃げ遅れた子供と、その子を助けようとした男性に向かって、ハイベリアがその大きな咢を広げた。
私は最悪の光景を予想する。
ああ、また一族の者が…………
次の瞬間には2人の命はあの牙によって噛み砕かれる。
そう思った瞬間、一瞬大きな影が通り過ぎたと思うと、何か大きな存在がハイベリアにぶつかり、そのまま崖に叩きつけた。
ハイベリアは一瞬声を上げたかと思うと、ぐったりとして動かなくなる。
その『何か』は巨大な鉄球だった。
私は何が起きたのか分からず呆然としていると、バサッバサッとハイベリアの羽音とは若干違う羽音が聞こえてきた。
その音に振り向けば、見たことも無い獣にも竜にも見える紺色の体毛を持つ大きな魔物と、同じく獣にも竜にも見える鎧を纏った魔物が食べられそうだった2人の前に降り立った所だった。
その内の紺色の体毛を持つ魔物がその2人に振り向く。
「ひっ…………!」
その男は悲鳴を漏らしながらも子供を護ろうとその前に立つ。
すると、
「…………大丈夫か?」
その声に私は思わず耳を疑った。
今の言葉はあの魔物が喋ったのだろうか?
言葉を話す魔物など聞いた事が無い。
しかし、よく見ればあの魔物の目はハイベリアの様な本能に従順な野生の目では無く、確かな知性の輝きが見えた。
すると、その魔物は前を向き、
「ここは、俺達に任せろ! 君達は早く安全な場所へ!」
そう言った。
「わ、わかった!」
「行くぞ! ギンリュウモン!」
「応!」
どうやらもう一匹の魔物の方も喋れる様だ。
その2匹の魔物はハイベリアの群れに向かって行く。
すると、男は子供を抱えて私達の方に駆け寄って来た。
「族長!」
「おお! 無事か!?」
「はい、何とか……………族長、あの魔物達は…………」
「分からん…………どうやら私達を助けてくれるようだが…………」
しかし、何故魔物が私達を?
そう思っていると、
「パワーメタル!!」
紺色の魔物が口から吐いた鉄球が魔物の頭に直撃して頭蓋を潰し、
「徹甲刃!!」
鎧を纏う魔物が放つ槍が魔物の胴体を貫く。
10匹近くいたハイベリアの群れがバタバタと落ちていく。
「ハ、ハイベリアの群れをあんなにあっさりと…………」
すると、また後方からドォンドォンドォンとけたたましい音が3回鳴り響き、ハイベリアの3匹が地に落ちる。
その音に振り向けば
「みんな~、助けを呼んできましたよぉ~!」
今朝から姿の見えなかったシアが、馬の無い馬車の様な乗物から身を乗り出して手を振っていた。
「「「「「「「「「「シア!?」」」」」」」」」」
シアの乗った馬車の様な乗物は猛スピードで横滑りしながら私達の前で止まる。
すると、その乗物から複数の人物が降りてきた。
シア以外では、白髪の少年と黒髪の少年。
更に白髪の少女が2人と金髪の少女が1人。
あとは黒髪の少女が1人だった。
「父様!」
「シア! 無事だったのか!?」
私はシアに駆け寄る。
「はい、心配かけてごめんなさい…………でも、もう大丈夫ですぅ~! 強力な助けを呼んできましたから!」
シアはニッコリと笑ってそう言う。
「助け………?」
その瞬間、最後のハイベリアが得体の知れない2体の魔物によって全滅した所だった。
その2体がこちらに向かって降りてくる。
しかし、シアが呼んできたその者達は、特に警戒した素振りを見せない。
私が何故と思っていると、その2体の魔物は少年たちの前に着地する。
すると、黒髪の少年と少女がその魔物の前に歩み出ると、
「よくやった、ドルガモン」
「お疲れ様、ギンリュウモン」
2人の少年少女は恐れる素振りすら見せずに頭を垂れてきた魔物の鼻先を撫でている。
ま、まさかこの少年と少女があのハイベリアの群れを蹴散らした魔物を使役しているというのか!?
私が驚いていると、その2体が光に包まれ、小さくなったことに私達は再び驚愕するのだった。
【Side Out】
その後、シアの父であり族長であるカムに事情を説明し、俺達は【ハルツィナ樹海】に向けて移動を開始していた。
そして、間もなく【ライセン大峡谷】の出口に差し掛かるという時、
「帝国兵はまだいるでしょか?」
シアがハジメにそう話しかけた。
「ん? どうだろうな。もう全滅したと諦めて帰ってる可能性も高いが……」
「そ、その、もし、まだ帝国兵がいたら……ハジメさん……どうするのですか?」
「? どうするって何が?」
シアの質問の意味が分からなかったのか、ハジメはそう返す。
「今まで倒した魔物と違って、相手は帝国兵……人間族です。ハジメさんと同じ。……敵対できますか?」
「残念ウサギ、お前、未来が見えていたんじゃないのか?」
「はい、見ました。帝国兵と相対するハジメさんを……」
「だったら……何が疑問なんだ?」
「疑問というより確認です。帝国兵から私達を守るということは、人間族と敵対することと言っても過言じゃありません。同族と敵対しても本当にいいのかと……」
「それがどうかしたのか?」
「えっ?」
「だから、人間族と敵対することが何か問題なのかって言ってるんだ」
「そ、それは、だって同族じゃないですか……」
「お前らだって、同族に追い出されてるじゃねぇか」
「それは、まぁ、そうなんですが……」
「大体、根本が間違っている」
「根本?」
「いいか? 香織達はともかく、俺はお前等が樹海探索に便利だから雇った。んで、それまで死なれちゃ困るから守っているだけ。断じて、お前等に同情してとか、義侠心に駆られて助けているわけじゃない。まして、今後ずっと守ってやるつもりなんて毛頭ない。忘れたわけじゃないだろう?」
「うっ、はい……覚えてます……」
「だから、樹海案内の仕事が終わるまでは守る。自分のためにな。それを邪魔するヤツは魔物だろうが人間族だろうが関係ない。道を阻むものは敵、敵は殺す。それだけのことだ」
「な、なるほど……」
あのハジメが大分過激な思考をするようになったなぁと、俺は少しズレたことを考えていた。
そんな話をしながら峡谷の出口である階段を登っていく。
そしてそれを登り切ると、
「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」
30人ほどの帝国兵が屯していた。
しかし、その口から出てくる言葉でどういう人間達なのかは大体把握した。
「小隊長! 白髪の兎人もいますよ! 隊長が欲しがってましたよね?」
「おお、ますますツイテルな。年寄りは別にいいが、あれは絶対殺すなよ?」
「小隊長ぉ~、女も結構いますし、ちょっとくらい味見してもいいっすよねぇ? こちとら、何もないとこで三日も待たされたんだ。役得の一つや二つ大目に見てくださいよぉ~」
「ったく。全部はやめとけ。二、三人なら好きにしろ」
「ひゃっほ~、流石、小隊長! 話がわかる!」
コイツらは兎人族………というより亜人を人間扱いして無いな。
教会から話を聞いた時にも思ったけど、胸糞悪い。
すると、ハジメが1人で前に進み出る。
「あぁ? お前誰だ? 兎人族……じゃあねぇよな?」
「ああ、人間だ」
「はぁ~? なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ? しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か? 情報掴んで追っかけたとか? そいつぁまた商売魂がたくましいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、国で引き取るから置いていけ」
命令口調でそう言う帝国兵の小隊長らしい男。
「断る」
流石ハジメ。
清々しいほどの一刀両断。
「……今、何て言った?」
「断ると言ったんだ。こいつらは今は俺のもの。あんたらには一人として渡すつもりはない。諦めてさっさと国に帰ることをオススメする」
「……小僧、口の利き方には気をつけろ。俺達が誰かわからないほど頭が悪いのか?」
「十全に理解している。あんたらに頭が悪いとは誰も言われたくないだろうな」
ハジメの言葉も悪いが、俺も同意。
こっちの視点からすれば、滑稽にも程がある。
すると、小隊長の視線がこっちに………
というより、こちらの女性メンバーに向いて下品な笑みを浮かべた。
「あぁ~なるほど、よぉ~くわかった。てめぇが唯の世間知らずな糞ガキだってことがな。ちょいと世の中の厳しさってヤツを教えてやる。くっくっく、そっちの嬢ちゃんたちはえらい別嬪じゃねぇか。てめぇの四肢を切り落とした後、目の前で犯して、奴隷商に売っぱらってやるよ」
その言葉を聞いた瞬間、俺の心が冷たく冷えるのを感じた。
コイツは兎人族だけでは無く、葵や優花も犯すと抜かした。
俺の大切な奴らも…………
もっとも、それが出来るとは思わないが。
それはハジメも同じだったらしい。
「つまり敵ってことでいいよな?」
「あぁ!? まだ状況が理解できてねぇのか! てめぇは、震えながら許しをこッ!?」
小隊長の言葉は最後まで続かなかった。
ハジメによって眉間を撃ち抜かれ、その命を散らしたからだ。
人死を見たのは初めてだが特に何とも思わなかった。
その間にも、ハジメは次々と撃ち殺していく。
葵や優花、ユエも冷めた目でそれを見つめており、白崎さんは多少瞳が揺れているが、目を逸らさず、そしてハジメを止めようとはしなかった。
最後の1人になった兵士から残りの兎人族からどうなったかを聞けば、既に人数を絞って帝国に移送済みらしい。
その後、用は無いとばかりに最後の兵士を撃ち殺したハジメ。
その最後の命乞いを見て、若干可哀そうと思わないでもないが、別にハジメを責める気は無い。
あちらの兵士は先程の小隊長の言葉に反論しなかった。
つまり、相手が強く無ければその気があったという事。
反論なりなんなりしてれば庇う事も考えたが、誰一人として反対もしなければ忠言もしなかった。
つまりは全員同罪だ。
命を脅かしてきた相手に手心を加えるのは個人の自由だが、ハジメは殺す事を選んだ。
それだけの話だ。
ここまで考えて、俺も奈落の空気に染まったかなとふと思った。
その後、帝国の兵が使っていた馬車に兎人族を乗せ、魔力駆動四輪で引っ張るという運び方で樹海へ向かうことにした。
ハウリアの樹海に入った俺達だったが、運悪く即行で他の亜人に見つかり、これまた即行でハジメが制圧したわけだが、長老の1人であるアルフレリックという森人族のが言うには、大迷宮の入り口かもしれない大樹には今は近付けず、次に行けるのは10日後ぐらいになるらしい。
その事を忘れていたカム達に制裁を加えた後、俺達はフェアベルゲンに招かれることになった。
第14話の完成。
とりあえずシア登場。
原作よりもハジメが丸いせいでそこまで残念さが際立ってないかも?
香織が居るのでハジメはある程度妥協してくれます。
それでも帝国兵は皆殺しの刑に遭いましたが。
樹海についてからは結構端折った。
原作とあんまり変わらないんで。
さて、次回はハウリアの特訓?
どうするか……………
お楽しみに。