ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第9話 2日目の事件

 

 

 

 

 

臨海学校2日目。

朝起きてから、葵、優花と合流し、渡り廊下を歩いていると、織斑とオルコットさんが何かを見ていた。

 

「……………おはようさん。2人とも、何見てるんだ?」

 

俺はそう声を掛けると、

 

「大士か………別にどうしたって訳でもないんだが………」

 

織斑が歯切れ悪くそう言いながら視線を地面に落とす。

そこには、『引っ張ってください』と書かれた看板と、何故か地面に埋まっている機械的なウサ耳。

 

「何これ?」

 

葵は思わず声を漏らす。

 

「いや、ちょっとな………」

 

織斑はそう呟いて渡り廊下から降りると、そのウサ耳を掴み、

 

「でぇい!」

 

思い切り引っ張った。

その下から何か出てくるのかと思ったが、実際は何も付いていなく、見事にすっぽ抜け、織斑は尻餅をつく。

 

「おわっ!?」

 

織斑は痛みに顔をしかめるが、

 

――ゴォォォォォォ

 

と、何やら空気を切り裂く音が聞こえてきた。

その瞬間、

 

「ッ!」

 

優花が感知技能で何かを感じ取ったらしく、上を見上げると同時に宝物庫から苦無を取り出すと、そのまま投擲。

 

――ドゴンッ!

 

と、遥か空で小さな爆発が起こり、細長い影が撃墜されたのか、煙の尾を引きながら明後日の方向へ墜ちていった。

 

「…………なんだったのかしら?」

 

優花が撃墜したことを確認すると、ポツリと呟く。

どうやら何かが上空から急速接近してきたために、とりあえず撃墜した様だ。

とりあえず、そのまま待っても何事も起こらなかったので、俺達はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

それから暫くして、海岸に生徒達が集合し、臨海学校の目的である各種装備試験運用及びデータ取りが始まろうとしていた。

専用機持ちは他の生徒とは別の場所に集められ、織斑先生の指示を待つ。

 

「よし、専用機持ちは全員集まったな」

 

織斑先生がそう言うと、

 

「ちょっと待ってください。箒は専用機を持ってないでしょう?」

 

鈴がそう発言する。

 

「そ、それは………」

 

篠ノ之さんは歯切れ悪く呟く。

 

「私から説明しよう。実はだな……」

 

千冬がそう言ったところで、

 

「やっほ~~~~~~~~~~~~~~~~~!」

 

何処からともなく声が聞こえた。

その瞬間嫌な顔をする篠ノ之さんと織斑先生。

見れば誰かが岩の崖とも言える斜面を駆け下りてきていた。

そして、人間離れした跳躍力で飛び上がる。

それは、紫の髪をしたやけにハイテンションな女性だった。

 

「ち~~~~~~~~ちゃ~~~~~~~~ん!!」

 

そのまま一直線に織斑先生に向かって飛びこんできて、

ガシィっと織斑先生が容赦なく右手で顔面を掴んで止めた。

そして、そのまま手に力を込め、アイアンクローへと移行する。

だが、その女性はまるで効いてないと言わんばかりに、

 

「やあやあ、会いたかったよちーちゃん! さあハグハグしよう! 愛を確かめよう!」

 

顔を掴まれたままそうまくし立てる。

 

「うるさいぞ束」

 

織斑先生は手に更に力を込める。

 

「相変わらず容赦のないアイアンクローだね!」

 

すると、その女性はアイアンクローから抜け出し、篠ノ之さんに駆け寄る。

篠ノ之さんは、頭を抱えていた。

 

「じゃじゃ~ん! やあ!」

 

「ど、どうも……」

 

「ふさしぶりだね~! こうして会うのは何年ぶりかな~? 大きくなったね箒ちゃん! 特におっぱ………」

 

そう言いかけた女性を篠ノ之さんは何処からともなく取り出した木刀で殴り飛ばす。

 

「殴りますよ!?」

 

「殴ってから言ったあ! 箒ちゃんひどい~~~! ねえ、いっくん酷いよね~?」

 

「は、はあ……」

 

いきなり振られた織斑は曖昧に返事を返す。

 

「おい束。自己紹介ぐらいしろ!」

 

織斑先生がそう言うと、

 

「え~。めんどくさいなぁ~」

 

その女性はそう言いつつ佇まいを直すと、

 

「私が天才の束さんだよ! ハロー! 終わり!」

 

それだけ言って終了した。

 

「束って……」

 

「ISの開発者にして天才科学者の……」

 

「篠ノ之 束?」

 

それぞれが声を漏らす。

かくいう俺も若干驚いた。

世界各国が総力を挙げても見つけられないISの生みの親、篠ノ之 束博士が、いきなり現れたのだ。

………若干服がボロボロなのが気になったが。

ただ、一瞬だけだが、鋭い視線で俺達の方を睨んだ気がした。

だが、その直後、

 

「さあ! 大空をご覧あれ!」

 

束博士が大げさに空指差す。

すると、空から銀色のクリスタル型のケージが降ってきた。

それは一同の目の前に着陸すると、

 

「じゃじゃ~ん! これぞ箒ちゃん専用機こと、紅椿! すべてのスペックが現行ISを上回る束さんお手製だよ!」

 

ケージが量子分解され、内部のISが露になる。

その名の通り紅に彩られた機体だった。

 

「何て言ったって紅椿は天才束さんが作った第四世代型ISなんだよ~!」

 

何かさらっととんでもないことを言ったような気がするんだが?

 

「第四世代!?」

 

「各国で、やっと第三世代の試験機が出来た段階ですわよ……」

 

「なのにもう……」

 

それぞれが声を漏らす。

やはりとんでもないことの様だ。

 

「そこがほれ! 天才束さんだから。じゃあ箒ちゃん。これからフィッティングとパーソナライズを始めようか!」

 

束博士がリモコンを操作すると、紅椿のコクピットが開く。

 

「さあ、篠ノ之」

 

織斑先生の言葉で、篠ノ之さんが紅椿の前に歩いてくる。

篠ノ之さんはまるで圧倒されるようにその機体を見つめた。

そんな専用機持ち達のやり取りを横目に、俺は自分の作業を続けた。

 

 

 

篠ノ之さんが紅椿を装着すると、束博士が操作を始める。

しかもその操作のスピードに全員が再び驚く。

そして、あっという間にフィッティングが終了した。

 

「それじゃ、試運転もかねて飛んでみてよ。箒ちゃんのイメージ通りに動くはずだよ」

 

束博士の言葉に、

 

「ええ、では、試してみます」

 

篠ノ之さんはそう言って意識を集中させると、紅椿は猛スピードで上昇を始めた。

そのスピードにそれぞれが驚く。

 

「どう? 箒ちゃんが思った以上に動くでしょ?」

 

「え、ええ、まあ………」

 

歯切れ悪く返事を返す篠ノ之さん。

どうやら束博士への苦手意識の様なものがあるみたいだな。

その後は武装の試験へと移っていった。

篠ノ之さんは、その武器の威力に満足そう………と言うより、浮かれた子供の様な表情で笑みを浮かべた。

その時、

 

「織斑先生――ッ! 大変ですーーーーっ!」

 

山田先生が端末を片手に慌てた表情で走ってきた。

息を切らせながら織斑先生に端末を渡すと、織斑先生は端末を操作して内容を確認する。

すると、

 

「テスト稼働は中止だ! お前たちにやってもらいことがある」

 

織斑先生はその場のメンバーにそう呼びかける。

その場に不穏な空気が流れ始めた。

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

その後、専用機持ちに集合が掛けられ、それ以外の生徒達には自室待機の指示が出された。

大士達も専用機持ちではないので、自室待機組だ。

自室でデジモン達とまったりしながら暫くすると、どうやら外で動きがあったようだ。

それは、一夏が重傷を負って運び込まれ、意識不明というものだった。

 

 

 

 

旅館の一室に運び込まれた一夏は、布団に寝かせられ、点滴や人工呼吸器などを取り付けられていた。

その横に、箒が俯いたまま座り込んでいる。

何故なら、一夏が重傷を負ったのは、力に溺れた自分の所為であると思っていたからだ。

 

「私は………私は…………!」

 

箒はあらゆる考えが交錯し、悔しそうに声を漏らす事しか出来ない。

そんな時、

 

「なーんか深刻そうにしてるね」

 

場違いな声がその場に響いた。

 

「え…………?」

 

箒が振り向くと、そこに居たのは葵だ。

 

「葵さん………? 待機命令が出ていた筈では………?」

 

箒はふさぎ込んだ表情のまま、何とも見当違いな質問をした。

 

「うん………だから、黙っててね?」

 

葵は人差し指を口の前に立てる。

葵はそのまま箒の隣に座ると、目の前で横になる一夏を見つめる。

 

「…………葵さん………何を………?」

 

「織斑君に魔法を掛けに来たの。すぐに目を覚ます魔法をね」

 

「…………でも………一夏は…………」

 

目の前の一夏は、布団の上からでは分かり辛いが、相当な重傷だ。

身体中に包帯が巻かれ、無数の傷がある。

ハッキリ言えば、何時意識を取り戻すのかすら分からない。

その事実が箒により深い絶望を感じさせる。

 

「ッ………一夏…………!」

 

箒は俯いたまま、瞼を強く閉じる。

その閉じた目からは涙が溢れ出ている。

だから箒は気付かなかった。

葵が一夏の身体に手を触れた時、一夏の身体が淡い光に包まれた事に。

葵は一夏から手を離すと立ち上がる。

 

「何があったかは聞かないけど、織斑君が起きた時にそんな顔してると、もっと心配をかけるよ?」

 

葵はそう言い残すと、そのまま部屋を立ち去った。

 

「………………」

 

残された箒は再び俯こうとした。

その時だった。

 

「………………うっ」

 

一夏が身動ぎをした。

 

「ッ!? 一夏!?」

 

箒は思わず叫ぶ。

すると、閉じていた一夏の瞼がゆっくりと開いた。

 

「……………箒?」

 

「一夏ッ…………!」

 

箒の目から涙が溢れる。

一夏が目を覚ましたことによる、喜びの涙だ。

 

「…………何だこりゃ?」

 

一夏は身体を起こすと、取り付けられていた人工呼吸器や、心電図のパッドを外す。

その行動を見て、箒は慌てた。

 

「む、無理をするな一夏! お前は重傷を………!」

 

「重傷………?」

 

箒の言葉に、一夏は自分の体を確認する。

確かに包帯は巻かれているが、全く痛みが無い。

試しに包帯を解いてみるが、その下は全くの無傷だった。

 

「そんな馬鹿な………!?」

 

思わず声を漏らす箒。

 

「良く分かんねえけど、どうやら平気みたいだな………!」

 

一夏はそう言うと立ち上がると、部屋の出入り口に歩いていく。

 

「ま、待て一夏!? 何処へ行く!?」

 

箒が慌てて呼び止めると、一夏はニッと笑い、

 

「決まってるだろ? リベンジだ!」

 

自信満々にそう言うのだった。

 

 

 

 

 

機材が運び込まれた大広間は、臨時の司令室となっていた。

そこに、千冬や真耶、他の教員が情報収集を行っている。

 

「停止していますね………」

 

モニターの地図上に示された『目標』を見ながら、真耶が呟く。

 

「………………………」

 

千冬は何も言わない。

 

「本部はまだ、私達に作戦の継続を………?」

 

真耶がそう問いかけると、

 

「解除命令が出ていない以上、継続だ」

 

「ですが!? これからどのような手を!?」

 

千冬の言葉に真耶は思わず強めの発言をする。

その時、

 

「千冬姉!!」

 

一夏が襖を勢い良く開けて入室してきた。

 

「ッ………! 一夏…………?」

 

「織斑君!? 怪我は………!?」

 

千冬は僅かに目を見開きながら振り返り、真耶も驚愕する。

 

「良く分からねえけど、もうすっかり大丈夫だ!」

 

一夏は力瘤を作る仕草をして、平気な事をアピールする。

そこで気が付いたが、一夏の後ろには箒を含めた専用機持ち達がいた。

彼女達も、不思議そうに一夏を見ている。

 

「…………肉体の修復………? いや、それにしても早すぎる………」

 

千冬は何かボソッと呟いたが、気を取り直し、

 

「何をしに来た? 織斑」

 

すぐに平静を装ってそう問いかけた。

 

「決まってるぜ! 千冬姉、もう一度あいつと戦わせてくれ!!」

 

一夏はそう言い切った。

 

「……………………」

 

千冬は黙って一夏を見つめる。

その沈黙には、迷いがある様にも思えた。

すると、

 

「…………ッ? 織斑先生、通信が入っています!」

 

真耶がそう報告する。

 

「通信………? モニターに出せ」

 

千冬の指示に真耶がキーボードを操作すると、モニターが切り替わって1人の男性が映し出された。

それは金髪にサングラスを掛けた男性だった。

 

「誰だ………?」

 

一夏が怪訝そうに呟く。

すると、

 

『こちらは情報省ネット管理局の者だ。私はネット管理システム「ヒュプノス」の室長、山木 満雄。IS学園のネットワークへの不正アクセスを感知し、それを辿った結果、そちらに行きついたので連絡させてもらった』

 

「不正アクセス………?」

 

「まさか………」

 

千冬は真耶と目を合わせる。

 

『ひとまず、お話を聞かせていただきたい』

 

「は、はい………実は………」

 

山木の言葉に、真耶が説明を始めた。

今朝方に特命が出て、ハワイ沖で試験稼働だったアメリカ、イスラエルの共同開発の第三世代の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走。

監視区域より離脱したことを説明すると、

 

『馬鹿な!? そんな情報は入っていない!』

 

山木は思わず叫んだ。

その様な情報があれば、政府のネットワークを管理する自分の部署には一番に情報が入ってくるはずだからだ。

さらに、学園上層部の通達により、福音が通過する海域の近くで臨海学校を行っていたIS学園の1年生がこの事態に対処することになった。

そして、専用機持ちである一夏と、新しく専用機持ちになった箒の2人で福音の撃破作戦を実行したが失敗したという事を説明した。

 

『何を考えている!!』

 

モニターから山木の怒声が響いた。

 

「ひうっ……!?」

 

真耶が軽い悲鳴を上げた。

 

『軍の関係者でもない経験の乏しい1学年の…………更には代表候補生でもない素人をそんな危険な任務に当たらせるとは如何いうつもりだ!?』

 

「………………………」

 

山木の言葉を黙って聞いている千冬。

 

「待ってくれ! それは俺自身が決めた事で………!」

 

一夏が前に出ながらそう発言すると、

 

『一撃必殺の威力を誇る機体の使い手である君を選ぶことはまだ良しとしよう。だが、そのサポート役すら、機体性能だけで選び、彼と同じく素人同然の者を選んだのは軽率だと言わざるを得ない』

 

山木がサングラスの奥から鋭い眼光を覗かせる。

 

「うっ………」

 

一夏はたじろぎ、その後ろで箒も表情を曇らせた。

 

『それ以前に、IS学園上層部の決定とは言え、命の危険が高い任務にいきなり生徒達を着かせることに、何の疑問も抱かないのか………!?』

 

山木の言葉に、千冬は目を瞑って息を吐くと、

 

「IS学園は治外法権だ。日本政府の人間とは言え、こちらの決定に口出しをする権利は無い」

 

そう言い切った。

 

『……………』

 

それを聞くと、山木は少し口を閉じるが、

 

『…………確かにその通りだ。だが、事は日本国内で起こっている。ならばこちらにも、日本国民の命を守る義務がある。その為に最善を尽くさねばならない』

 

そう言い返した。

すると、

 

「ならば聞こう。敵は『軍用IS』。今は行動を停止しているが、何時動き出すかも不明。そんな一刻を争う事態に、現場近くにいる専用機6機を保有する我々IS学園1年生以外に、適任が居るか?」

 

『………………………………』

 

千冬がそう問うと、山木は黙り込んだ。

 

「それが答えだ」

 

千冬が、話は終わりだと言わんばかりに、真耶に視線で通信を切る様に指示しようとした。

その時、

 

『……………仕方あるまい』

 

山木は軽く溜息を吐くと、顔を上げた。

 

『そちらに黒騎 大士君、神代 葵君、園部 優花君の3名が居るはずだ。彼らを、パートナーデジモンと共にそこに呼んで欲しい』

 

その言葉に、

 

「黒騎達を………だと?」

 

「何で大士達を?」

 

千冬と一夏が声を漏らす。

 

『こちらも『最善』を尽くすだけだ』

 

「……………そちらにはこちらに口を出す権利は無い、と言った筈だが?」

 

千冬がそう言うと、

 

『ならば個人的に彼らに連絡を取るだけだ。確かにIS学園は基本的に外的介入は許可されない。だが、それはあくまで本人の同意が無い場合だ。本人が同意すれば、話は別だ』

 

「ッ…………」

 

『そこに呼んで欲しいと言ったのは、これから起こす行動を教えるためだ。こちらで勝手に事を起こされるのは、そちらも迷惑だろう?』

 

「………………………誰か、黒騎達を呼んで来てくれ」

 

千冬は迷ったようだがそう言う。

 

「それでは私が」

 

ラウラが手を挙げて立候補すると、呼びに行くために部屋を出ていった。

 

 

 

 

自室待機命令が出てしばらくすると、ラウラが俺を呼びに来た。

 

「お兄様。申し訳ありませんが、ドルモンと一緒に作戦司令室にお越しください」

 

「俺とドルモンを? 何でまた?」

 

呼ばれた理由が思いつかない俺が首を傾げると、

 

「日本政府の山木と名乗る男が、お兄様達を連れて来るように言ってきました」

 

「山木さんが………? わかった。すぐ行く」

 

如何いう理由かは分からないが、山木さんが呼んでいると言うので、俺はドルモンと一緒にラウラについて行った。

途中、葵と優花、リュウダモン、ハックモンも合流し、ラウラに案内されて作戦司令室に入ると、簪さんを除いた専用機持ち達と織斑先生や山田先生を始めとした教師陣。

そして投影されたメインモニターに山木さんの姿が映っていた。

 

「山木さん!」

 

俺は思わずメインモニターに映っている山木さんに声を掛ける。

 

『久し振りだね大士君。元気そうで何よりだ』

 

「お久しぶりです。それで? 俺達を呼んでいると聞いたのですが?」

 

挨拶を交わした後にそう尋ねると、

 

『うむ。現在、アメリカ、イスラエルの共同開発の第三世代の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走状態に陥り、君達がいる付近の海域に向かっていた』

 

山木さんの言葉を聞いて軽く驚いた。

臨海学校の予定が中止されて自室待機になったからには何かあると思っていたが、そんな事になっていたとは。

 

『一度そちらで撃破を試みたが失敗。銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)は、近くの海域で行動を一時停止している』

 

さっきの大騒ぎはその為か。

となれば、山木さんが俺達を呼んだ理由はおそらく、

 

『そしてここからが本題だ。大士君、葵君、優花君………そしてパートナーデジモン達に、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の撃破、及びパイロットの救出を依頼したい』

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

その言葉に織斑達が息を呑んだのが分かった。

だが、予想出来ていた俺は動じない。

 

『これは私個人からの依頼だ。そこまで多くは無いが報酬も出そう。引き受けてくれないか?』

 

山木さんはそう聞いてくる。

それに対し、

 

「わかりました。引き受けます」

 

俺はあっさりと請け負った。

 

『そうか………では、よろしく頼む』

 

俺が頷こうとした時、

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」

 

織斑が慌てた様に口を出してきた。

 

「あんたはさっき千冬姉に、素人を危険な任務に就かせるのは何事だって文句を言ったばっかじゃねえか!? なのに、何でさらっと大士達に危険な事を頼んでるんだよ!?」

 

『………………』

 

山木さんは織斑の言葉に軽く溜息を吐きつつサングラスの位置を直し、

 

『簡単な話だ。彼らは、戦いにおいては『素人ではない』からだ』

 

「なっ……? そんな筈ないだろ!? 実際に大士達は専用機も持ってないし、ISの操縦だって特別上手い訳でも無いし!」

 

『………確かに『ISの操縦』において、彼らは素人だ。初心者の域を出ていないのは事実だろう』

 

「それを分っててなんで………!」

 

『私が言っているのは、『実戦』において彼らは素人ではないという事だ。決められた『規則(ルール)』に縛られた試合ではなく、『命を懸けた戦い』において、今現在彼ら以上に頼れる存在は居ないだろう………私はそう思っている』

 

「何でそこまで………!」

 

織斑はまだ納得していなさそうな顔をする。

山木さんは溜息を吐き、

 

『…………大士君。話してもいいかね?』

 

そう言いながら俺を見る。

その内容を察した俺は頷いた。

 

「ええ、織斑も納得しそうにないですし」

 

俺の言葉を聞くと、

 

『一言で言うなら、彼らには『実績』に裏付けされた『信用』があるからだ』

 

「は………? 『実績』? 『信用』?」

 

『君達は、7年前の『デ・リーパー事件』を覚えているかね?』

 

「あ、ああ………デジモン達の所為で引き起こされたって言われている事件だろ?」

 

織斑の言葉に俺は軽く睨んでしまう。

織斑は気付いてないが。

 

『……………語弊があるようだが、分かっているなら話を進めよう。率直に聞くが、『デ・リーパー事件』において、ISの活躍を耳にしたことがあるかね?』

 

山木さんの問いかけに、織斑を始めとした専用機持ち達が困惑した表情を見せる。

 

「そ、そう言えば…………」

 

「全く耳にしたことがありませんわね………」

 

「今まで全然疑問に思ってなかったけど、言われてみれば………」

 

デュノア、オルコットさん、鈴が口々に疑問を口にする。

 

『君達が聞いた事が無いのも当然だ。『デ・リーパー事件』において、ISの活躍は徹底的に秘匿された。『活躍』と言っていいかは疑問だがな』

 

「ど、どうしてだよ?」

 

山木さんの言葉に、織斑は困惑気味に問いかける。

山木さんは一呼吸置き、

 

『簡単に言えば、ISはデ・リーパー相手に何の成果も挙げられなかった。エージェント・デ・リーパーの前に、尽く敗北を喫したのだよ』

 

「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」

 

教師陣たちを含め、その場の殆どが息を呑んだ。

俺は、まあ当然かと思っていたが。

 

『そんなデ・リーパーとの戦いの中心に居たのが、当時小学生だった8人のデジモンテイマーとそのパートナーデジモン達だった。そして、その内の5組が最大戦力として戦いの最前線に立ち続けた』

 

「そのような事があったのか………」

 

ラウラが驚いたように呟く。

 

「でも、その話と今と何の関係が………!」

 

織斑がそう言いかけた時、

 

『そして、デ・リーパーとの戦いで最前線に立ち続けた最大戦力の5組のデジモンテイマーとパートナーデジモンの内の1組が、そこにいる大士君とドルモン君だ』

 

「なっ………!?」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

山木さんの言葉に、織斑が驚愕しながら俺に振り返り、他の専用機持ち達も意外そうに俺を見てくる。

 

『そして、数ヶ月前に空に謎の大地が映った事があっただろう? こちらはまだ記憶に新しい筈だ』

 

「そうね。私も良く覚えてるわ。何であんなことが起きたのかは未だに分からないらしいけど……」

 

鈴がそう言うと、

 

『詳しい話は省くが、その現象の原因となった存在と戦い、打倒したのが大士君、葵君、優花君を含めたデジモンテイマー達だ』

 

「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」

 

『以上の『実績』から、今回の銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)に対して、十分に対応できる実力があると『信用』して彼らに『依頼』した。何か問題でも?』

 

「え……? あ、いや…………」

 

山木の言葉に織斑は言葉に詰まる。

 

『反論が無ければ黙っていてもらおう』

 

山木さんは俺達に向き直る。

 

『方法や手段は君達に一任する。任せきりになってしまう事が心苦しいが………構わないか?』

 

「ええ。むしろ、そっちの方が俺達にとってもやりやすいんで」

 

『そうか………すまないがよろしく頼む』

 

山木さんがそう言って通信を切ろうとしていたので、

 

「あ、山木さん」

 

『なんだね?』

 

山木さんが聞き返してきたので、

 

「報酬は、山木さんの懐が痛まない程度で構わないんで」

 

俺がそう言うと、山木さんはフッと笑みを浮かべる。

 

『感謝する』

 

そう言って通信が終了した。

すると、

 

「おい大士!」

 

織斑が呼びかけてきた。

俺はデ・リーパー事件で戦っていた事を問われるのかと思った。

だが、

 

「お前、そこは報酬は要らないって言うべきだろ!」

 

想像の斜め上の言葉に、俺は思わず脱力した。

 

「一番最初に出てくる言葉がそれかよ………」

 

俺は呆れつつ呟く。

 

「それとは何だ! 人の弱みに付け込んで金を取るなんて最低だぞ!」

 

「何でそう言う解釈になる…………」

 

一応、言ってることは真面っぽいが、状況が違うだろ?

 

「じゃあ逆に聞くが、お前は山木さんに、『高校生に、無報酬で命の危険のある仕事を任せた』というレッテルを張りたいのか?」

 

「なっ? 何でそんな話になる!?」

 

「何でって………普通にそう言う話になるだろ? 俺が報酬を断ったとして、周りから見れば、山木さんは高校生をタダで働かせたって事だ。それも命の危険がある……な」

 

「そ、それは…………」

 

「だから俺達は報酬を受け取っておくべきなんだ。だから最後に、懐が痛まない程度にって言っておいたんだよ」

 

「…………………」

 

一応納得したのか織斑は黙り込む。

 

「………黒騎、先程の話は本当か?」

 

織斑先生がようやく真面な質問をしてくれた。

 

「それは、俺とドルモンが、『デ・リーパー事件』に関わっていた事が本当かって意味ですよね?」

 

「ああ」

 

俺の確認に織斑先生は頷く。

 

「それは本当ですよ。俺達は7年前にデ・リーパーと戦ってました」

 

「…………なるほど」

 

織斑先生は納得したような表情で軽く俯く。

すると、

 

「それはおかしいだろ!? デ・リーパー事件はデジモンが引き起こしたんだろ!?」

 

織斑がそう叫んできた。

 

「だからデ・リーパーとデジモンは全くの別物だと何度言えば分かる………?」

 

織斑の思い込みの強さには訂正する気も失せてくる。

 

「一夏、少し黙れ………!」

 

「ッ………!」

 

織斑先生が織斑を強い口調で黙らせた。

 

「黒騎、神代、園部。お前達なら銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)を止める事が出来るか?」

 

織斑先生がそう聞いてきたので、

 

「その質問に答えるためにも、今分かっている情報を教えて欲しいんですが?」

 

多分大丈夫だろうが、無責任に返事はしない。

 

「わかった。今分かっている情報を伝える。ただし、決して口外するな。情報が漏洩した場合、査問員会による裁判と最低でも2年の監視がつけられる」

 

「要は他人に暴走したISに関連する事柄を話すなって事ですよね? 了解しました」

 

俺がそう言うと、織斑先生はメインモニターに銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の情報と、織斑と篠ノ之さんが行った撃墜作戦の映し出した。

織斑の初撃が回避されると、福音は迎撃を行って来た。

2人は苦戦するが、ある時、篠ノ之さんが福音の動きを止め、チャンスを作り出す。

織斑は渾身の一撃を見舞おうとしたが、何かに気付いたように福音を素通り。

福音から撃ち出された光弾を切り払う。

その織斑の後方には、密漁船と思わしき漁船が見えた。

その事について篠ノ之さんが文句を言い、織斑も諭すような言葉を返す。

すると、篠ノ之さんが戦意を失ったように剣を手放してしまい、その隙に福音が篠ノ之さんに無数の光弾を発射。

それを庇って織斑が撃墜され、それを支えようとした篠ノ之さん諸共海に墜ちた。

それを見て、篠ノ之さんは辛そうに顔を背ける。

そうして作戦が失敗した所で映像が終わった。

 

「………………………」

 

俺は思わず織斑を見てしまう。

 

「………何だよ?」

 

織斑は不服そうにそう聞いてきた。

 

「いや…………運が良かったな………」

 

俺はそう言う。

 

「何だよ? 嫌味か……? どうせ俺の行動は間違ってる。密漁船を見捨てても福音を倒すべきだった、って言うつもりなんだろ?」

 

織斑は投げ遣りにそう言ってくる。

 

「…………………別に間違ってるとは言わない。お前の行動は『正しい』さ。10人の人間に聞けば、9人が正しいと答える『格好の良い正しさ』だ」

 

「お……? おう! そうだろ………!」

 

俺が『正しい』と言ったのが意外だったのだろう。

織斑は気を良くしたように声を上げる。

 

「………だが、その行動のリスクもちゃんと理解していれば、もっと良かったんだがな………」

 

織斑は、『密漁船を助けた』。

それだけで考えを止めてしまっている。

 

「リスクって何だよ?」

 

やはり分かってないのか、織斑はそう聞いてきた。

俺は軽く溜息を吐き、

 

「先に言っておくが、俺は織斑の行動が間違ってるとは言わないし、自分の考えが絶対に正しいとも思ってない。その上で言うが、俺が織斑の立場で、篠ノ之さんの立場にいるのが葵や優花、友達なんかの俺に近しい人物で、実力も篠ノ之さんと同等だった場合、やはり俺は密漁船の人間を見捨ててでも敵を倒す事を選択しただろう」

 

「ッ………! やっぱり俺が間違ってるって言いたいのか!?」

 

織斑は俺の言葉に激しく反応したように叫んでくる。

 

「だから最初に言っただろう。別にお前の行動は間違ってるとは言わないって………それに自分の選択が絶対に正しいとも思ってない。ただ、俺だったらきっとこうするという事を例え話として話しているだけだ」

 

俺は宥めるようにそう言う。

 

「…………じゃあ、何で密漁船の人間を見捨てるなんて言うんだ? お前も弱い奴はどうなっても良いと………密漁をしていた方が悪いから、助ける価値は無いと言いたいのか………!?」

 

何でこいつはこうも悲観的な考えしか出来ないんだ?

 

「そう言う訳じゃない。これでも『命』の重さはよく分かってるつもりだ」

 

「だったら何で………!」

 

「簡単だ。そこで倒さなければ、俺が『大切』に思っている人間が『死』ぬ可能性が高いからだ」

 

「えっ………?」

 

「言っただろう? 篠ノ之さんの立場にいるのが葵や優花、友達だったとして、実力も篠ノ之さんと同等だった場合と………先程の映像を見るに、福音は2人掛かりで攻めても押されるほどの力を持っていた筈だ。それなのに、お前は数少ないチャンスを捨てて、密漁船を護り、その結果篠ノ之さんを庇って撃墜されることになった。まあ、別にその行動自体を責める気はない。それがお前が『正しい』と思って起こした結果だ。俺が如何こう言う必要はない」

 

「だ、だから何だよ?」

 

「さっきも言ったな? 『運が良かった』と。お前が撃墜され戦闘不能になった。そこまではいい。だが、そうなると残された篠ノ之さんは如何なる?」

 

「そ、それは…………」

 

「今回は、福音がそのまま追撃してこなかったから助かっただけだ。だが、もし追撃してきた場合、篠ノ之さんは1人で福音と戦わなければならない。だが、2対1でも押されていた状況。1対1では負ける可能性が限りなく高い。そうなれば、篠ノ之さんは成す術無くやられ、『死』んでいた可能性が高い。当然だがお前もな。ついでに言えば、お前が庇った密漁船も巻き込まれたかもな」

 

「うっ…………」

 

「だから言ったんだ『運が良かったな』ってな」

 

「……………………」

 

一歩間違えれば、取り返しのつかない事態になっていた事に気付いたのだろう。

織斑は項垂れる。

 

「だから俺は密漁船を見捨てても福音を倒す事を選択する。自分の『大切』を護る為に。その為に、弱者を見捨てた卑怯者と罵られようとも構わない。それはその選択を選んだ俺が受けるべき贖罪なんだからな」

 

俺は最後までそう言い切ると、織斑先生に視線を向ける。

 

「織斑先生。福音の居場所を教えてください。話を聞く限り、俺達なら問題なく対処できます」

 

織斑先生にそう言うと、

 

「自信はあるのか?」

 

「あります」

 

俺は即答する。

 

「……………正直、全てを信じたわけではないが、他に頼るものも無い………か」

 

織斑先生は溜息を吐きつつ、

 

「いいだろう。山田先生、福音の詳しい位置を」

 

「は、はい………」

 

山田先生がキーボードを操作する。

その間に、

 

「情報提供料として、受け取った報酬の何割かは渡しましょうか?」

 

俺がそう聞くと、

 

「馬鹿者。教師として生徒から金を受け取れるか………!」

 

頭を軽く叩かれる。

まあ、そう言われると思ったが。

 

「では、準備してきます」

 

そう言って部屋を出ようとした時、

 

「待ってくれ!」

 

織斑に呼び止められた。

 

「何だ?」

 

「俺にも何か手伝わせてくれ!」

 

俺が聞き返すとそう言ってくる。

正直足手纏いでしかないんだが………

 

「気持ちだけ受け取っておく。撃墜されてまだ半日程度しか経ってないだろう? 今回は俺達に任せてゆっくり休め」

 

俺はそう言ってやんわりと断ろうとするが、

 

「大丈夫だ! 何でか知らないけど怪我はもうすっかり治ってる! むしろ調子が良いぐらいだ!」

 

そりゃ葵が再生魔法で治したからな。

戦闘の影響なんてあるわけ無いし。

 

「それなら尚の事精密検査を受けるべきだ。何か問題があったらどうする?」

 

俺は尚も断ろうとしたが、

 

「俺も何かしたいんだ! お前達も、少しでも人手があった方が助かるだろう?」

 

織斑は尚も食い下がってくる。

いや、正直邪魔でしかないんだが。

流石に鈍感なだけあって、遠回しに断ろうとする俺の本心に気付いてくれない。

俺は織斑先生に視線を向けるが、織斑先生はやれやれと言わんばかりに首を振る。

 

「………………………はぁ~」

 

俺は頭を抱えて深く溜息を吐く。

 

「わかってくれないなら率直に言うぞ。一緒に来られると邪魔なんだ。足手纏いでしかない」

 

俺は本音でそう言う。

 

「なっ!?」

 

「お前が力になりたい気持ちは理解する。だが、それでも自分の力を過信するな。俺達からすればお前は弱い。『力』だけじゃなく、『精神面』もな。戦いに無縁だったお前にそこまで求めるのは酷だが、だからこそ戦いの危険性をよく考えるんだ。お前は良かれと思って行動するのかもしれないが、勝手な行動は必ず他の誰かに程度はあれど迷惑をかける。そして、実戦に置いてその『迷惑』は危険に直結するんだ。だからこそ、『不安要素』は可能な限り排除しておきたい」

 

「……………俺はその『不安要素』に入るって言うのか………!」

 

「そうだ」

 

「ッ!?」

 

ハッキリ言われたのがショックだったのか、織斑は目を見開く。

 

「…………………………」

 

織斑は黙って俯いていたが、

 

「だったら…………証明しろよ」

 

「は?」

 

「だったら、俺が足手纏いって事を証明しろって言ったんだ!」

 

「つまり、勝負をしろという事か?」

 

「そうだ!」

 

俺の確認の言葉に織斑は肯定する。

 

「おい織斑。そのような時間は………」

 

織斑先生が止めようとしたが、

 

「構いませんよ。時間は掛からないので」

 

俺はそう言って織斑との勝負を了承する。

 

「ッ!?」

 

その言葉を挑発と受け取ったのか、織斑が俺を睨み付ける。

すると、

 

「だったらアタシも参加するわ!」

 

鈴が手を挙げながらそう叫んだ。

 

「足手纏いと言われて、はいそうですかと引き下がるなんて、アタシの代表候補生としてのプライドが許さないわ!」

 

更に、

 

「それなら、わたくしも参加させてください」

 

オルコットさんも挙手をしながらそう発言した。

 

「勘違いしないで欲しいのですが、戦力外と言われた事が不服なわけではありません。黒騎さん達も3人ですし、こちらも3人になれば、丁度3対3です。それに、わたくし達を『戦力外』と言った実力がどれほどの物か、体感してみたいと思っただけです………」

 

オルコットさんの言葉使いは丁寧だが、言葉の各所に棘を感じる。

どうやらオルコットさんもプライドに触ったようだ。

まあ、それでも決定には従うようだが。

 

「やれやれ…………」

 

生徒達の勝手な行動に頭を悩ませる織斑先生の溜息が、やけに響くのだった。

 

 

 

 

トータスの旅の時に着ていた戦闘服に着替えた俺達は、パートナー達と砂浜にやって来た。

織斑達は既に砂浜に待機している。

織斑達が俺達が来たことを確認すると、

 

「白式!」

 

織斑が白式を、

 

「甲龍!」

 

鈴が甲龍を、

 

「ブルー・ティアーズ!」

 

オルコットさんがブルー・ティアーズを纏う。

3機のIS専用機が並ぶと、

 

「さあ、早くISを纏え!」

 

織斑がそう言ってくる。

 

「何で?」

 

俺は首を傾げた。

 

「何で……って、こっちはISを使ってるんだぞ!?」

 

「話を聞いて無かったのか? 俺達はISを使わない。使ったら実力を出せないからな」

 

俺はそう言う。

 

「何を言って………!?」

 

織斑が何かを言いかけた時、

 

「そこまでだ! 黒騎、神代、園部。構わんのだな?」

 

織斑先生が織斑の言葉を止め、俺達に問いかけてくる。

 

「はい」

 

「勿論」

 

「構わないわ」

 

それぞれの返事を返す。

 

「ならば始めろ。時間も惜しい。織斑、文句があるなら勝った後に言え」

 

「そう言っても…………」

 

織斑は、近接ブレードを構えるが、生身の人間相手に気乗りしないのか、躊躇が伺える。

 

「織斑、お前から来ないのなら、こっちから行くぞ………!」

 

右手を軽く上げると拳を握りしめ、デジソウルを宿す。

 

「な、なんだその光………!?」

 

織斑は突然宿ったデジソウルに目を丸くするが、俺は構わず行動に移す。

地面を蹴って一足跳びに織斑の懐に飛び込む。

 

「…………え?」

 

織斑は一瞬で飛び込んできた俺に数瞬おいて気付くと、呆けた声を漏らす。

俺は左手で織斑の右手を掴み、横に広げて懐をガラ空きにすると、

 

「はぁああああああっ!!」

 

デジソウルが宿った右の拳を腹に叩き込んだ。

 

「ぐっ………はぁぁぁぁぁっ……………!?」

 

織斑の身体がくの字に折れ曲がり、吹き飛ぼうとしたが掴んでいる俺の左手がそれを防ぐ。

浮き上がった足がそのまま地面に着くが、一撃でシールドエネルギーがゼロとなり、白式が強制解除される。

織斑は自分の足が砂浜に着くが、立っていられずに膝を着き、

 

「うっ……おぇぇぇぇっ!?」

 

耐えられずに嘔吐した。

 

「い、一夏っ!?」

 

それに気付いた鈴が思わず駆け寄ろうとしたが、

 

「何処を見ているのかな?」

 

空中に跳び上がった葵が二刀を構えて鈴に斬りかかった。

 

「ッ!」

 

鈴は咄嗟に2本の青龍刀を呼び出してそれを受け止めたが、

 

「がっ!? お、重いっ………!?」

 

ISのパワーアシストを超える重みが鈴の腕に伝わり、鈴は膝を着く。

俺は、何で青龍刀が切断されてないんだろうと首を傾げたが、良く見れば葵を刀を返して峰を向けていた。

その直後、葵は再び刀を返して刃の方を向かせると、

 

「フッ………!」

 

鈴の脇を駆け抜けると同時に銀閃が煌めく。

そして、

 

「う、嘘…………」

 

甲龍の装甲はバラバラに切り裂かれて砂浜に落ちた。

 

「ッ!?」

 

織斑と鈴の結果を見て、危機感を覚えたオルコットさんは、即座に空中に跳び上がる。

攻撃の届かない空中へと退避したつもりなんだろう。

だが、

 

「ブルー・ティアーズ!!」

 

オルコットさんはビット兵器を射出する。

その直後、4つのビット兵器がほぼ同時に爆散した。

 

「ブルー・ティアーズがっ………!?」

 

何が起こったのかは簡単だ。

優花が苦無を宝物庫から4つ取り出し、同時に投擲しただけの事だ。

その速度が余りにも早く、オルコットさんには認識できなかった。

そして、ビット兵器の爆発に気を取られてしまった事で、もう勝負は決した。

〝空力〟による足場を蹴って、優花は空中を駆けあがり、オルコットさんの上を取る。

 

「えっ…………?」

 

オルコットさんが優花に気付いた瞬間、

 

「はぁああああああああああっ!!」

 

〝豪脚〟による踵落としが炸裂した。

 

「きゃぁあああああああああああっ!?」

 

オルコットさんは勢い良く蹴り落とされ、砂浜に激突する。

 

「ううっ………!」

 

オルコットさんは蹴りによるダメージで、一瞬意識が朦朧としたが、すぐに起き上がろうとして、その目の前に槍の矛先が付きつけられた。

 

「まだやる?」

 

槍を向けた優花が問いかける。

 

「…………………はぁ。参りましたわ」

 

オルコットさんは身体中の力を抜いて砂浜に大の字に倒れた。

 

「ここまで圧倒的だと、悔しがる気も起きませんわ」

 

そう言って潔く負けを受け入れる。

 

「言っておくが、俺達はパートナーデジモンと一緒に戦ってこそ真の力を発揮する。故に、俺達単独で戦った今回は、俺達の本領とは程遠いという事だ」

 

俺はそう言っておく。

それから織斑先生に向き直ると、

 

「それでは織斑先生。俺達はこのまま福音の撃破に向かいます」

 

「…………わかった。今の戦いを見れば心配ないと思うが………油断はするなよ」

 

「わかっています」

 

俺達はそう言って、福音が居るであろう水平線の向こうを見つめた。

 

 

 

 

 

 

 







IS編第9話です。
あっれぇ~~~~~~?
今回の話で福音撃墜まで行くつもりだったんだけどなぁ………?
一夏が話を拗らせまくって何故か大士達に喧嘩売ってしまった。
もっとさらっと終わらせるはずだったのに、書いてると一夏が勝手な行動を起こしまくって…………
こんな風に書いてるから、一夏を悪く書いてるみたいなこと言われてるんですけどねぇ……
これでも悪く書いてるつもりは無いんです。
原作の一夏のまま書いてるつもりなんです………
それが何故こうなる!?
ほんと何でだ………?
それはとりあえず置いといて………
束の反応が薄いと思われるかもしれませんが、千冬や一夏、箒と言った束本人の興味対象が目の前にいる状態で、大士達に意識を向けるとは思えなかったからっていうのが理由です。
その他大勢よりかは興味は持ってます。
あと前回の話で簪のアタックを期待している方がいたかもしれませんが、今回はまだ一夏と絡ませたくないという理由で今回は欠場とさせていただきました。
さて次はどうしよう。



P.S 本日コロナワクチン一回目を打ちました。
副反応の状況にもよりますが、もしかしたら明日の更新はお休みするかもしれません。

打鉄弐型は如何するか?

  • 原作通り。シンプルイズベスト
  • ワイルドバンチを呼んでデジモン的魔改造
  • ハジメを呼んで魔法的魔改造
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