織斑達との戦いを終えた俺達は、山田先生から
その情報では、福音に未だ動きは無いらしい。
「そう言えば………福音の場所まではどうやって行くの?」
「確かにそうだな………IS以上の戦闘力は確認したが、空を飛べるわけではあるまい」
デュノアとラウラが気付いたようにそう言って来た。
「心配ない」
俺はそう言って、葵と共に1枚のデジモンカードを取り出し、Dアークを構える。
「「カードスラッシュ! 超進化プラグインS!!」」
俺達はパートナーを進化させるカードをスラッシュした。
Dアークが光を放ち、ドルモンとリュウダモンが光に包まれた。
「ドルモン進化!」
「リュウダモン進化!」
その輝きの中で、ドルモンとリュウダモンは姿を大きく変化させる。
「ドルガモン!!」
「ギンリュウモン!!」
成熟期に進化した2体が目の前に現れる。
「うわぁ…………」
「これが………進化………」
デュノアとラウラが声を漏らしながら2体を見上げる。
「…………あら? 優花さんのデジモンは進化しないんですの?」
進化していないハックモンに気付いたオルコットさんがそう尋ねる。
「ハックモンは基本陸戦なのよ。まあ、究極体まで進化すれば飛べるけど、今回の相手はそれほどでも無いしね」
優花はそう説明する。
「さあ、乗って!」
ドルガモンの言葉に、俺と優花、ハックモンはドルガモンの背に。
葵はギンリュウモンの背に飛び乗る。
すると、ドルガモンは翼を大きく羽搏かせて宙に浮き、ギンリュウモンは泳ぐ様に空へと昇っていく。
そして俺達は、福音の場所へと向かった。
【Side 三人称】
大士達が砂浜を去った後、
「くそっ!!」
一夏が拳を砂浜に叩きつけていた。
その表情は悔しさが滲み出ている。
そんな一夏を見た千冬は背を向け、
「各自、司令室に戻れ。衛星からの情報で、黒騎達の戦闘の様子を窺う」
それぞれにそう言う。
「「「「はい!」」」」
「………はい」
「…………ッ!」
セシリア、鈴音、シャルロット、ラウラは即座に返事を返し、少し遅れて箒が。
砂浜にうずくまっていた一夏は返事を返さなかった。
千冬はそのまま歩き去って行き、セシリア、シャルロット、ラウラもその後に続く。
鈴音もその後に続こうとしたが、蹲り続けている一夏が目に入った。
「一夏、何時までそうやってるのよ? 行くわよ」
鈴音はそう言葉を掛けるが、
「………………なんで」
一夏がボソリと呟く。
「ん?」
「何でそんな風に平気で居られるんだ………!? 悔しくないのかよ!?」
一夏は悔しさで表情を滲ませながら、叫んで問いかけてきた。
すると、鈴音は困った様に頭を掻き、
「ん~~~………実際悔しい悔しくないのレベルじゃないのよね………もう」
割と平然とした声でそう言った。
「…………えっ?」
「セシリアが言ってたじゃない。あそこまで圧倒的だと、悔しがる気も起きないのよ。それほどまでに完敗だったわ」
鈴音は負けを認める発言をする。
「そんな………そんな事言うなよ、鈴! あいつは俺達を足手纏いって見下したんだぞ!?」
「いや、実際あれだけの差があるならアタシ達程度の実力じゃ、間違いなく足手纏いだし。あと、見下したわけじゃなくて、客観的事実ってだけでしょ?」
「何でそんなにあっさり認められるんだ!? あそこまで言われて………なんで………!?」
「何でも何も、それが事実ってだけじゃない。あそこまでやられて自分の力不足を認められないようじゃ、今以上に強くなることなんて出来っこないし………見てよ、あれだけISの装甲がバラバラにされたのに、私の身体やISのコアには傷一つ無いのよ? 私達にとっては一瞬の出来事だったけど、葵達にはアタシ達を気遣うだけの余裕があったって事でしょ?」
「だ、だけど、大士は女の子を2人も侍らしてる女誑しだ…………そんな奴に………」
「まだ言ってるのそれ? そりゃ気に食わない気持ちは分からなくもないけど、本人達は納得してるのよ? それを部外者が口に出すのは筋違いってもんでしょ? あと、その台詞はブーメランだし………」
「でも、同時に2人の女の子と付き合うなんて不純な事で………法律でも一夫一妻が決められてて…………」
「そんなこと、一夏に言われなくてもあの3人は分かってるわよ。分かった上で3人で恋人になる事を選んだの。今更誰かに如何こう言われた程度で別れるほど半端な『覚悟』じゃないわよ。もしかしたら、もう1人増えるかもだし………」
「なんでそんな『悪い事』を許容できるんだよ!? あいつは『悪い事』を『悪い』と分かって続けてるんだ! そっちの方が性質悪いじゃないか!」
「まあ否定はしないけど………でも、確かに大士達の関係は、客観的に見れば『悪い事』なのかもしれないけど、それによってあんたは直接的な迷惑を被ったの?」
「えっ………いや、それは…………」
「それに、確かに法律じゃ重婚は認められてないけど、あの3人は実際に結婚してるわけじゃないし。結婚前に何人と付き合おうと、人としてのモラルを問われるだけで、実際に犯罪を犯してるわけじゃないのよ」
「…………でも、だけど…………」
「一夏、あんたの真っ直ぐな所は確かに美点よ。でも、あまり他人の問題に首を突っ込むのは止めなさい。本人達が納得してるなら特にね。本人達が望んでいない善意の押し付けは、有難迷惑、大きなお世話よ」
「………………………………」
「一夏、確かにあんたは『正しい』わ。だけど、『正しい事』が『幸せ』に繋がるとは限らないのよ…………」
鈴音はそう言うと、一夏の頭を冷やさせる為にその場を離れた。
「…………どうしてだ………? 『悪い』事をして『幸せ』になれるはずが無いのに………」
一夏は砂浜の砂を握りしめて呟いたのだった。
また別の場所では、
「まったく………せっかく箒ちゃんの晴れ晴れしいデビュー戦をお膳立てしてあげたのに、余計な事をしてくれるなぁ…………!」
束が空間パネルを展開しながら色々と操作している。
「箒ちゃんの晴れ舞台を邪魔する奴らには、お仕置きが必要だね」
パネルを操作し終え、最後にポチッとエンターキーを押した時、束の秘密の研究所内にある暗闇に、いくつも光が灯るのだった。
【Side Out】
俺達がドルガモンとギンリュウモンに乗り、福音が居るという海域に近付いていく。
「……………見えたわ」
〝遠見〟を持つ優花が福音を目視で確認した。
どうやら福音は、光の膜につつまれて膝を抱くように静止しているらしい。
織斑達との戦いで傷付いた身体の修復を行っているのだろう。
「如何する?」
優花が俺に訊ねてくる。
「………仕留めるだけなら優花がここから〝ニーベルング〟でも放てば終わるんだがな。それだと操縦者の命も無いから却下だ」
「操縦者を傷付けないように、手加減した攻撃でシールドエネルギーを削り切る、か………結構面倒くさいわね」
優花はやれやれと息を吐いた。
「とりあえず優花は先制攻撃で〝豪脚〟でも使ってぶっ飛ばせ。後は福音を逃がさないように牽制を頼みたい」
「オーケー。一発で終わっても恨まないでね」
「それで終わるんなら、それに越した事は無いさ」
優花がそう言って福音に向かって〝空力〟を発動しようとした時だった。
「ッ………!?」
優花が何かに気付いたように福音とは別の方向を向いた。
その瞬間、
「来るわ!」
優花が叫ぶとほぼ同時に、無数の閃光が俺達に向かって降り注ぐ。
「ビーム攻撃!?」
その攻撃は、瞬く間に俺達の視界を埋め尽くした。
【Side 三人称】
気付けば一夏は、一面が水に覆われた不思議な場所にいた。
不思議な事に一夏は水面の上に立っている。
空には青空と雲が半々ぐらいの割合で広がっている。
「ここは……………?」
一夏はキョロキョロと辺りを見渡す。
すると、
『力を欲しますか…………?』
後ろから言葉が投げかけられ、一夏は後ろを振り向く。
そこには、騎士の様な甲冑を纏った女性が立っていた。
『力を欲しますか…………?』
同じ問いが投げかけられる。
「…………ああ」
一夏はその問いに頷いた。
『何のために…………?』
再び問いかけられる一夏。
その問いかけに一夏は、
「えっと…………守る為………かな?」
少し自信無さげに答えた。
『守る………『何』を『何』から守るのですか………?』
更に投げかけられる問いかけ。
「………俺は仲間を……友達を……色んな人を守りたい………道理の無い『暴力』や『不条理』って、結構多いぜ? そんな『暴力』や『不条理』から色んな人を守りたい……………」
『……………………』
女騎士は無言だったが、何処か満足そうな雰囲気を醸し出していた。
だが、
「そして、間違った道に進んでしまった奴を『正す』のにも、『力』は必要だ」
その一言で、再び空気が張り詰めた感覚がした。
『…………『正す』…………?』
「ああ。『悪い』と分かっていながら『悪の道』を進む奴がいる。そんな奴には、『言葉』をいくら重ねたって無駄なんだ。力尽くでも、『正しい道』に連れ戻さなきゃいけない」
『…………『正しい道』とは何ですか?』
「えっ? 『正しい道』は『正しい道』に決まってるだろ?」
一夏は、何を当然なことを言わんばかりにきょとんとした。
『…………………あなたは、ここへ来るのが少し早すぎたようです』
「えっ?」
女騎士は、少しガッカリしたように背を向ける。
「お、おい!?」
『今の様な考えでは、あなた自身も『暴力』を振るう事になりかねません』
「何で!? 俺は間違ったりしない! 絶対に!」
『その言葉が出る時点で、あなたに『力』を得る資格はありません』
そのまま女騎士は姿を消そうとして、
『そんな勝手な事をされちゃあ困るんだよねー♪』
何処からともなく、一夏に聞き覚えのある声が響いた。
『ッ!?』
『いっくんには、ここでヒーローになって貰わなきゃ。資格とかそんなのは必要無いんだよ♪』
『これは………! まさか強制的に次の段階へ…………!?』
女騎士が苦しむ様な仕草を見せる。
『さあいっくん。物語の主人公の様にカッコ良く決めちゃってね♪』
その言葉を最後に、一夏の意識は白く染まっていった。
大士達の様子は、作戦司令部である千冬達も把握していた。
「これは………! 以前クラス対抗戦の時に現れた無人機と同型………いえ、発展型と思われます!」
真耶がそう報告する。
衛星からの情報では、その数は20に上る。
「あれが………20機も…………!?」
鈴音が驚愕し、
「それ以前に、黒騎君達がビーム砲の直撃を………!?」
シャルロットが焦った表情を見せる。
「織斑先生! わたくし達に出撃の許可を……!」
セシリアはそう進言した。
だが、
「駄目だ」
千冬はその言葉を却下する。
「何故ですか!?」
「以前の無人機ですら、1機倒すのに実質3機掛かりだったお前達が、その発展機20機を前にしたところで、何も出来ずにやられるだけだ」
「ッ………ですがこのままでは………!」
セシリアは焦りを隠せないが、千冬は落ち着いていた。
「…………以前無人機が現れた時、腑に落ちなかった事がある」
「えっ………?」
「クラス代表戦の折、アリーナに現れた無人機は『2機』だった」
「そ、そう言えばそうだったわね………」
鈴音も思い出したように頷いた。
「その内1機は、出現からさほど時間を置かずに破壊されていた。織斑と凰がもう1機と戦い始めた直後だ」
「…………まさか、その場には……!」
ラウラがハッとした様に声を上げる。
「2機目の無人機が現れたエリアには、黒騎達が居たことは確認済みだ。そして先程の戦いぶり。十中八九2機目の無人機を倒したのはあいつ等だろう。そして、その無人機を瞬殺したと仮定するなら………」
千冬はモニターを見つめる。
そのモニターには、現れた無人機を示す光点が、次々と消えていく光景だった。
ビームの嵐に呑まれ、爆煙に包まれた大士達。
だが、その煙が晴れていくと、黄金の盾――ブレイブシールドが展開され、攻撃を無傷で防ぎ切ったドルガモン達の姿があった。
「前に出てきた無人機と同じ………? いや、改良型か?」
大士が迫りくる無人機の群れを見る。
その姿は、前に出てきた無人機に通じる所が多々あるが、右腕が巨大なブレードになっている所が一番の違いだろう。
「以前は砲撃や射撃による遠距離戦が主体だったが、近接戦闘にも対応できるように改良されたのか?」
無人機の群れは、大士達が無事だと分かると一気に加速して近付いてくる。
「数はそこそこいる様だけど…………」
優花が呟きながら片手に3本の苦無を指の間に挟み込みながら持つと振り被り、それを投擲する。
その苦無は炎に包まれ、接近してきた無人機3機を正確に貫いた。
一瞬遅れて爆発する無人機。
「操縦者を気にしないで良い分、こっちの方が楽だわ」
ニヤリと笑って優花はそう言った。
更に別方向から近付いてきた無人機には、
「パワーメタル!!」
不意に放ったドルガモンの巨大な鉄球がぶち当たる。
それによって体勢を崩した無人機に、
「徹甲刃!!」
ギンリュウモンが放った槍が突き刺さる。
その無人機は海面に墜落した後に爆発した。
「数は居るが特に問題はなさそうだ。このまま全滅させるぞ」
大士がそう言った時だった。
別方向から無数の光弾が降り注ぐ。
「うわっ!?」
「チィッ!」
「ぬうっ!?」
「きゃっ!?」
ドルガモンとギンリュウモンは何発か被弾し、ダメージを受ける。
見れば、先程まで静止していた福音が動き出し、翼を広げて光弾を放ってきた。
「このっ!」
ドルガモンでは避け切れないと判断した優花が飛び出して、槍で光弾を打ち払う。
「てやっ!」
葵も同じように二刀で光弾を弾いていた。
だが、別方向から無人機がビームを放ってくる。
「こいつら……! 連携してるのか………!?」
無人機達の動きと福音の動きは、明らかに連携している。
となれば、福音の暴走と、無人機を送り込んできた者には、関係があると予想できるだろう。
とはいえ、今の大士達にとって、福音と無人機が連携したとてさしたる問題は無い。
優花が〝空力〟を使って一気に福音に接近する。
福音も迎撃しようと光弾を放つが、
「遅いわ!」
優花は軽々と光弾の合間を縫って福音のもとに辿り着く。
そして、
「あんたは引っ込んでなさい!」
〝豪脚〟による蹴りが炸裂。
福音は勢い良く蹴り落とされ、海面に高々と水柱を上げて墜落した。
それを見た大士は、
「よし、今のうちに無人機を………」
有人機である福音を後回しにして、無人機を先に片付けようとしていた。
その時、
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
咆哮と共に現れた一夏が、無人機の1機を切り裂いた。
「織斑!?」
「えっ!? 織斑君!?」
「何でここに!?」
大士達は思わず驚く。
一夏のISはエネルギー切れで動けるはずが無いのだ。
だが良く見れば、一夏の白式の形が以前と違うことに気が付いた。
それは、白式が『
白式のシールドエネルギーも、
「俺の新しい力を見せてやる!!」
一夏はそう叫んで無人機の群れに突っ込んでいく。
「待て織斑!」
大士は呼び止めようとしたが、一夏は突っ込んでいく。
そして、
「はぁああああああっ!!」
ズバッと無人機の1機を一刀両断にした。
「えっ?」
予想外の出来事に、大士は思わず声を漏らした。
「でやぁああああああっ!!」
再び雪片を振るう一夏。
後ろから襲い掛かろうとした無人機が上下に分断される。
「どうだ! これでも俺が足手纏いだと言えるのか!?」
一夏は戦いながら大士に向かって叫ぶ。
一夏は次々と襲い掛かってくる無人機を両断していくが、少し離れた所から見ていた大士達は、その無人機の動きの違和感に気付いていた。
「あの無人機………わざと織斑にやられに行ってるな………」
「だね。襲い掛かる様に見せかけてるけど、実際は自分から攻撃に当たりに行ってるようなものだし」
「織斑は気付いてない様だけどね」
一夏はそのまま次々に無人機を撃墜し、残りが5機になった時だった。
先程優花が福音を叩き落した海面に光の球が発生する。
「今度は何だ!?」
次から次へと発生する予想外の事態に、大士は思わず声を上げた。
すると、その光の球の中心には先程優花が叩き落した福音の姿が見える。
その直後、実体翼だった福音の翼が、5対10枚の光の翼に変化した。
「福音も
葵がそう叫ぶ。
その直後、福音が翼を広げると頭上にエネルギーが集約され、砲撃となって放たれた。
「避けろ!」
大士は思わず叫び、ドルガモンとギンリュウモンは退避する。
砲撃はそのまま空へと消えるが、その威力は今までの比ではない。
「今の威力………成熟期の上位クラスに匹敵するな………」
今の攻撃をそう判断する大士。
「それが如何した!?」
だが、それを見ても一夏は怯まずに福音に向かっていく。
福音は再び砲撃を放とうと翼を広げた。
すると、
「雪羅! シールドモード!」
一夏がそう叫んで左腕を構えると、その左腕を中心として防御フィールドが張られる。
次の瞬間、福音から砲撃が放たれた。
だが、砲撃が一夏の展開した防御フィールドに触れると、分解されるように四散していく。
「あれは………零落白夜………? 零落白夜をシールド状にして展開してるのか?」
白式の『
それをシールドに出来るという事は、エネルギー関係の攻撃に対しては、絶対的な優位性を持つ事が出来る。
「とは言え…………」
大士は零落白夜の欠点を思い浮かべる。
元々零落白夜は自機のシールドエネルギーを消費して発動する諸刃の剣だ。
今の白式は、それを剣だけではなく盾にも使用している。
特に、剣と盾を同時に使用する場合は、消費するシールドエネルギーの量も倍増しているだろう。
そして、先程から一夏は無人機と戦っていた。
つまり、白式の残りシールドエネルギーは残り少ないという事に他ならない。
そして一夏は、ペース配分が悪いので無駄にエネルギーを使用している。
それは即ち、
「………ッ!? しまった!? シールドエネルギーが!?」
エネルギーが尽きるのも時間の問題であった。
一夏の言葉通り、雪片から零落白夜の輝きが消え、普通のブレードに戻ってしまう。
その瞬間、福音が翼を広げて、無数の光弾を放とうとしていた。
「やべっ………!?」
一夏が声を漏らす。
その瞬間、
「あの馬鹿ッ………!」
大士が思わずデジソウルで身体強化して跳び出した。
福音に狙われているにもかかわらず、シールドエネルギーが付きかけている事で成す術の無くなった一夏は棒立ち状態となっていた。
だが、福音から光弾が放たれる寸前、棒立ちになっていた一夏を大士が蹴り飛ばした。
「うわっ!?」
吹き飛ばされる一夏。
「大士! 何しやが…………!?」
蹴り飛ばされた事に文句を言おうとした一夏の言葉が途切れる。
何故なら、一夏の目の前で大士が光弾の直撃を受け、爆発に呑まれたからだ。
「………………え?」
一夏は目の前の光景が信じられずに声を漏らす。
爆煙の中から落下していく大士。
それがチャンスとばかりに、残っていた無人機が次々と大士に向かってビームを放つ。
無数の閃光に呑み込まれる大士。
更に、駄目押しとばかりに福音が翼を広げ、特大の砲撃を放った。
大士がビーム砲で海面に叩き落された場所に福音の砲撃が着弾。
爆発を起こした。
「え…………? た、大士……………?」
一夏は目の前の光景を現実感無く受け止めていた。
「「「「「大士!」」」」」」
葵、優花、ドルガモン、ギンリュウモン、ハックモンが叫ぶ。
無人機は、それでも尚ビーム砲を海面に向かって打ち続けている。
「………………ッ!」
優花がギリッと歯を食いしばると、
「……………〝限界突破〟!」
小さく呟き、〝限界突破〟を発動させた。
今まで以上のスピードで無人機の傍を通り抜けると、無人機は全て両断される。
福音が危険を察知したのか、距離を取ろうと上昇を始めたが、それよりも速く優花が福音のもとに辿り着き、右手で福音の首を掴み取った。
「最初からこうすれば早かったわ……………」
福音は脱出しようと暴れているが、優花は振り回される腕で殴られようと、至近距離で光弾の直撃を受けようともビクともせず、福音の首を掴み続けていた。
そして次の瞬間、
「〝纏雷〟…………!」
優花の身体中から放たれた電撃が瞬く間に福音のシールドエネルギーを削り、強制解除させた。
福音の操縦者だった女性も気を失っていたが生きている。
優花はその女性を葵に任せ、大士を助けに行くように言うと、〝空力〟の足場に立ち、一夏に向き直った。
「……………で? あんたは一体何しに来たの…………!?」
優花は〝威圧〟を発動させながら一夏に問いかけた。
「えっ………? 俺はただ………何か力になりたくて…………」
「足手纏いって言った事、もう忘れたの?」
「も、もう足手纏いじゃ無いだろ!? 白式も
優花の言葉にそう返す一夏。
すると、
「………………バッカじゃないの?」
心底呆れた声で優花は言った。
「『強さ』っていうのは、地道な努力の果てや、大きな『壁』を乗り越えた時に手に入るものよ。あなたは強い武器を手に入れて自分が強くなったと勘違いしている唯の子供じゃない」
「そ、そんな事は無い! 見てただろ!? 以前あれだけ苦労した無人機を、今回はあんなに………」
「ああ。何でか知らないけど、自分から攻撃に当たりに行ってた奴ね。そんな事にも気付かず調子に乗ってこのザマ? 大した『強さ』ね」
優花は思いっきり皮肉をきかせる。
「えっ? そ、そんな筈………」
「信じられないなら、後でデータをゆっくりと見直してみなさい。誰が見てもそう判断するわ」
「………………………」
「まあ、それは如何でもいい事だわ。私には関係無いことだし…………だけどね」
優花はキッと一夏を睨む。
「あの程度の攻撃じゃ、大士は死なないと分かっていても、大士が攻撃を受ける瞬間を見たときは、胸が張り裂けそうだったわ。そして、そうなった原因は、あれだけ足手纏いと言われた上に、実力差も思い知らしたはずなのに、ノコノコと戦場に出てきたあなたにある。その今の私の気持ちが、あなたに分かる?」
「そ、それは………」
「正直、今回の『敵』がさっきの様な雑魚じゃなくて、命にかかわるような相手だったら、私はあなたを『殺』していたかもね。余計な『善意』はある意味『悪意』よりも性質が悪い。あなたは正にそれよ。まあ、一言で言うなら…………身の程を知れって事よ!」
優花は一瞬で近付いて一夏の首に槍を突き付ける。
「ッ……!?」
「これは警告よ。次に同じことをしたら、本気で『殺』すわよ………!」
「ッ!?!?!?」
本気の殺気を叩きつけられた一夏は自分の死すらを幻視した。
優花はそれを見ると、背を向けて大士の元へと駆けていった。
攻撃に晒された大士だが、デジソウルで防御したこともあり、ほぼ無傷と言っても差し支えない程のダメージだった。
とは言え、海に落ちた所為で水浸しとなり、更に結構深い所まで沈んだので、少し水も飲んでしまった。
意気消沈する一夏を連れて、旅館へ帰還すると、
「織斑、何故無断で出撃した?」
千冬から出てきた開口一番の言葉はそれだった。
「いや……千冬姉………俺も何か力になれると思って…………」
一夏はぼそぼそとそう言うが、
「あれだけの差を見せつけられて、何故お前は力になれるという判断が出来た? 大方、『足手纏い』と言われた事が我慢ならなかっただけだろう?」
「ッ………!?」
「黒騎達は、お前を見下したり、嫌がらせとして『足手纏い』と言ったわけではない。純然たる事実としてそう言ったに過ぎん。お前はそれを勝手に馬鹿にされたと解釈して飛び出しただけだ」
「だ、だけど、それなら言い方ってものが………」
「黒騎は気を使って遠回しに伝えようとしていたぞ。お前がそれに気付かなかったから、直接言う羽目になったがな」
「うっ…………」
一夏は千冬の言葉に声を詰まらせる。
「とにかく、お前は命令無視の無断出撃だ。後で懲罰トレーニングを用意してやる。しっかりと反省しろ」
千冬はそう言うと、大士達に向き直る。
「お前達、ご苦労だった。それから、愚弟が迷惑をかけて済まなかった」
千冬はそう言って頭を下げた。
「まあ、別に大事は無かったんでこれ以上問題にする気は無いんですけど、もう少し自分の力量を見極めて欲しかったですね」
「面目ない………」
千冬は申し訳なさそうに俯く。
「待てよ! 千冬姉は関係無いだろ!」
余計な事を突っ込む一夏に、大士は溜息を吐く。
「織斑先生はお前の保護者に当たる。未成年であるお前の責任は保護者である織斑先生の責任とも言える。当然の事だぞ。だからお前に代わって頭を下げてるんだろうが」
「ッ…………」
「お前は、もう少し自分が未熟者だという事を理解しろ。身体的にも精神的にもな」
一夏は黙り込むが、
「後の後始末は教師達で行う。お前達はゆっくり休め」
千冬がそう言ってこの場の話を終わらせる。
大士達はその言葉通り、自分の部屋に向かったが、一夏は暫くその場に残り続けた。
「………………俺は、間違っていたのか…………?」
その問いに答えるものは、誰もいなかった。
IS編第10話です。
ぶっちゃけ今回はまとまりが無かった。
何か微妙にスランプ突っ込んだっぽい様な………
とりあえず無人機の大群はゴーレムⅠとゴーレムⅢの間。
ゴーレムⅡと言うべきものです。
福音だけだと瞬殺で終わってしまうのでこうなった。
あと、今日の返信はお休みします。
勝手を言って申し訳ない。
打鉄弐型は如何するか?
-
原作通り。シンプルイズベスト
-
ワイルドバンチを呼んでデジモン的魔改造
-
ハジメを呼んで魔法的魔改造