ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第14話 2学期の始まり

 

 

2学期が始まり9月3日の今日、2学期初の実戦訓練が1、2組合同授業で行われていた。

戦っているのはそれぞれのクラス代表の織斑と鈴。

アリーナの観客席から2人の戦いを見る俺達。

 

「でやぁああああああっ!!」

 

「はぁああああああああっ!!」

 

空中で切り結ぶ織斑と鈴。

距離が開けば鈴は衝撃砲で攻撃するものの、織斑は白式の機動力で回避する。

織斑も負けじと、二次移行《セカンドシフト》の時に追加された左腕の雪麗に装備されている荷電粒子砲で反撃。

 

「くっ!?」

 

咄嗟に回避する鈴。

 

「まだまだぁ!!」

 

そのまま荷電粒子砲をかいくぐり、織斑に斬りかかる。

 

「でやあっ!」

 

だが、それを読んでいたのか織斑は右の雪片で鈴の青龍刀を受け止めた。

鈴の動きが止まったところで一夏は左腕を鈴に向け、至近距離で荷電粒子砲を発射。

 

「きゃぁあああああああああっ!?」

 

直撃を受け、吹き飛ばされる鈴。

 

「おっ………!」

 

「今のはいいタイミングね」

 

その流れを見ていた俺と優花は声を漏らす。

素直に今の織斑の攻撃は上手いと思った。

 

「行けるっ!」

 

ニヤリと笑みを浮かべ追撃に向かう織斑。

 

「ようし! このまま押し切る!」

 

アリーナの地面に叩きつけられた鈴に向かって荷電粒子砲を乱射する織斑。

だが、射撃武器に慣れていない事もあるのか、その命中率は頗る悪い。

 

「何で織斑君、慣れない射撃で押し切ろうとするんだろう? 瞬時加速(イグニッション・ブースト)で近付いて、接近戦に持ち込んだ方が有利に戦えると思うんだけど………」

 

葵が疑問の声を漏らす。

俺も同じ感想を思いつつ、織斑の当たらない射撃を眺める。

やがて、肝心なところで一夏の白式がエネルギー切れとなり、鈴の衝撃砲の直撃を受けて敗北した。

 

 

 

 

 

 

「はあ~………あと少しで勝てたのに………」

 

授業が終わった後、織斑が更衣室で先程の模擬戦の映像を見直している。

俺はISスーツからさっさと制服に着替えたが、織斑はISスーツのままだ。

着替えなくていいんだろうか?

俺がそろそろ忠告してやるかと思った時、織斑の後ろに近付く影に気付いた。

その影は、俺が見ている事に気付くと、口の前に人差し指を立て、黙っているように伝えてくる。

そして、

 

「だ~れだ?」

 

織斑に一切気付かれずに、その両眼を後ろから塞いだ。

 

「えっ? 誰だ?」

 

突然の事に、織斑は困惑しながら声を漏らす。

 

「大士か!? こんな悪ふざけするのは!?」

 

まあ、この部屋に居たのは織斑以外では俺だけだったから疑うのは仕方ないが、

 

「酷いな~。私の声ってそんな男の子の声に聞こえる?」

 

「悪いが俺はそんな高くて綺麗な声は出せないぞ」

 

「へっ?」

 

別の方向から声がしたので、漸く目隠ししているのは俺でないことに気付く織斑。

すると、

 

「はい時間切れ」

 

そう言って、織斑を目隠ししていた人物は手を離した。

織斑は後ろに振り向こうとして。

 

「うっ?」

 

閉じた扇子の先が頬に突き刺さった。

 

「ウフフ! 引っかかったな♪」

 

織斑が振り向くと、そこには1人の女子生徒が居た。

リボンの色は2年生。

水色の髪とルビー色の瞳、整った顔立ち。

ここまで言えば分かると思うが楯無だ。

 

「…………あの~……あなたは………?」

 

とは言え、織斑にとっては初対面なので、見知らぬ女子に話しかけられている状況なので、事態をうまく呑み込めない。

困惑しながら聞き返すと、

 

「それじゃあね~」

 

楯無は何も答えずに立ち去ろうとする。

すると、立ち去り際に、

 

「君達も急がないと、織斑先生に怒られるよ~?」

 

そう言って今度こそ立ち去った。

織斑は楯無に言われた事をに首を傾げながら時計を見て、

 

「…………うおわぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

次の授業の時間が迫っている事に声を漏らした。

因みに俺は着替えは済んでいたので、急いで教室に戻ったらギリギリ間に合った。

着替えていなかった織斑は間に合わなかったが。

そして、授業に遅れてきた織斑が織斑先生に必死に弁明している。

 

「ほう? 遅刻の言い訳は以上か?」

 

織斑先生の凄まじく重いお言葉。

 

「いえ、だから、あのですね。見知らぬ女生徒が………」

 

「そうか! お前は初対面の女子との会話を優先して授業に遅れたのか!?」

 

有無を言わさぬ言葉にたじろぐ織斑。

 

「ち、違います!」

 

すると、織斑先生は俺に視線を向けると、

 

「……と、この遅刻者は言っているが、本当の所はどうだ?」

 

俺に質問を投げかけてきた。

 

「まあ、織斑にとっての初対面の相手が話しかけてきた事は確かです。その前に、模擬戦の記録を見直すのに集中し過ぎて着替えてなかった事が原因の大半ですが」

 

「ほう?」

 

「んなっ!? 分かってたなら教えてくれたって………!」

 

「そろそろ忠告しようと思った時に楯無が現れたから、忠告するタイミングを逃しただけだ。まあ、楯無もその辺を狙って割り込んできたのかもしれないが………」

 

一応僅かながらのフォローは入れておく。

 

「んぐっ………!」

 

「更識の奴か…………まああいつの事だからそれもあり得る。織斑、今回は不問にしてやる。次は無いぞ」

 

「は、はいっ!」

 

織斑先生の言葉にホッとする織斑だった。

 

 

 

 

 

翌日。

今日は全校集会が行われる。

半月後に開かれる学園祭の説明の為だ。

何気に全校集会が行われるのは初めてだったりする。

 

『それでは、生徒会長から説明をさせていただきます』

 

アナウンスに伴い、楯無が壇上に上がった。

 

『やあみんな。おはよう』

 

楯無はそう挨拶すると、一呼吸置き、

 

『さてさて、今年は色々と立て込んでいてちゃんとした挨拶がまだだったね。私の名前は更識 楯無。君達生徒の長よ。以後よろしく』

 

新入生を中心に向けただろうその言葉。

それと共に浮かべた微笑みは、同性をも魅了するらしく、あちこちで熱っぽいため息が聞こえた。

簪さんの事で、グサリと傷付いていた奴と同一人物とは思えないな。

 

『では、今月の一大イベント学園祭だけど、今回に限り特別ルールを導入するわ。その内容と言うのは…………』

 

楯無は勿体ぶった様に一拍置き、慣れた手つきで閉じた扇子を取り出すと、パッと開いた。

それと同時に、空間投影ディスプレイが浮かび上がる。

 

『名付けて、『各部対抗織斑 一夏&黒騎 大士争奪戦』!』

 

その言葉と共に、空間ディスプレイに織斑と俺の写真がデカデカと浮かび上がった。

なんですと?

 

「え…………」

 

「「「「「「「「「「ええええええええええ~~~~~~~~~っ!?!?!?!」」」」」」」」」」

 

ホールが驚愕の叫び声に包まれる。

その瞬間、女子生徒達の視線が〝ほぼ〟全て織斑に向けられた。

因みに〝ほぼ〟と現したのは、葵と優花だけ俺に視線を向けていたからだ。

 

『静かに。学園祭では毎年各部活動ごとの催し物を出し、それに対して投票を行って、上位組は部費に特別助成金が出る仕組みでした。しかし、今回はそれではつまらないと思い………』

 

扇子をピシッと俺と織斑に向けると、

 

『織斑 一夏及び黒騎 大士両名を、一位の部活動に強制入部させましょう!』

 

そう言い放った。

一瞬静まり返ると、再び雄叫びが上がる。

 

「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」」」

 

「素晴らしい、素晴らしいわ会長!」

 

「黒騎君はどうでもいいけど織斑君は欲しい!」

 

「こうなったらやってやる………やぁぁぁぁってやるわ!」

 

「一夏君は絶対に手に入れるわよ! 黒騎 大士? 居たっけそんな奴?」

 

「今日からすぐに準備始めるわよ! 秋季大会? ほっとけ、あんなん!」

 

「織斑 一夏を是非我が部の名誉部長に! 黒騎 大士? 雑用でもやらせときなさい!」

 

織斑と俺の温度差が凄まじいな………

まあ、分かってた事だが。

 

「はぁ………」

 

どうしても溜息が出てしまう。

ふと楯無を見ると、少しだが困惑した様子が見て取れた。

だが、

 

「……………………!」

 

優花が鋭い目つきで楯無を睨んでいた事に、俺は気付かなかった。

 

 

 

 

【Side 楯無】

 

 

 

 

今日は学園祭の報告の為の全校集会。

まあ、生徒会に苦情として寄せられる、一夏君が部活動に入らないという問題点を解決する為や、特別助成金を無くしての経費削減など、諸々の理由で学園祭で一位を取った部の景品を、一夏君と大士さんの強制入部にした訳だけど…………

それを発表した時の生徒達の反応は、正直に言って『異常』だった。

一夏君に対する皆の反応はいい意味で予想外。

端から見ていて面白いほど食い付いてくれた。

だけど、大士さんに対する反応は、悪い意味で予想外だった。

私自身、大士さんに対して『異性』としての好意は無いとハッキリ言える。

一目見た時に、『無い』とさえ思ったぐらいだし。

だけど、大士さんを客観的に見て、女の子が10人居れば、1、2人は好意、もしくはそれに準ずる興味を持つんじゃないかと思った。

だけど、女子の割合が例外の2人を除いて100%のこの学園において、一夏君の方が人気がある事は分かっていたけど、大士さんに対しての歓喜の声はゼロだった。

騒いでいる生徒達は気付いていないけど、壇上から生徒達を一望できる私からすれば、それは『異常』だ。

今思えば、以前からおかしな点はあった。

部活動に入らないという理由で寄せられる苦情は、全て一夏君の事ばかりだ。

対して、大士さんに関する苦情は1つも無かった。

まるで、大士さんが居ないかのように生徒達は一夏君だけを持ち上げる。

大士さんを見れば、何処か諦めたような、ガッカリしたような仕草で溜息を吐いていた。

私は大士さんにとても惨めな思いをさせてしまったと思った。

全校集会が終わった後、私は大士さんに謝ろうと彼の所へ向かっていた。

彼らが通るルートに差し掛かろうとした時、

 

「………えっ?」

 

私が次に気付いた時には、胸倉を掴まれ、壁に抑え付けられていた。

 

「かはっ……!?」

 

結構強く壁に押し付けられたせいで、肺の中の空気が押し出される。

その苦しさを我慢して前を見ると、

 

「……………あなた………馬鹿にしているの…………!?」

 

人を殺せそうな目付きで私を睨み付ける、優花さんの姿があった。

 

「ち、違っ………私は………謝りたくて…………!」

 

私は慌てて弁明する。

 

「謝る? 何を謝るの? あれだけ大士に惨めな思いをさせて…………!」

 

「わ、私はそんなつもりじゃ………!」

 

「少人数ならまだ許せるわ。だけどね、あんな大人数の前で、堂々と大士に惨めな思いをさせたあなたを、私は許せない………!」

 

優花さんの、私の胸倉を掴む力が増す。

 

「ぐっ……!?」

 

私は本気で命の危険を感じた。

だけど、

 

「やめろ優花」

 

聞こえてきたその声に、胸倉を掴んでいた手の力が緩んだ。

 

「大士………だけどこいつは……!」

 

「俺は『異性から好かれない』。それは初めから分かっている事だ。楯無の所為じゃない」

 

「それはそうだけど………!」

 

優花さんはどうしても私を許せないのか、中々私を放そうとはしなかった。

 

「優花、頼む」

 

大士さんがそう言うと、優花さんは渋々と溜息を吐き、

 

「………やっぱり大士は優し過ぎるわよ」

 

私の胸倉から手を放した。

私はその場に座り込むけど、すぐに立ち上がって軽く身形を整えると、

 

「えっと………大士さん」

 

改めて大士さんに向き直り、

 

「ごめんなさい」

 

深々と頭を下げた。

彼に惨めな思いをさせてしまった事に対する謝罪。

謝るだけでは許してくれないかもしれないけど、これは私の本心だ。

 

「……………気にしてない………と言えば噓になるが…………まあ、謝罪は受け取ろう」

 

彼はそう言う。

 

「でも……! 私は………!」

 

あっさりと謝罪を受け入れた大士さんに、罵詈雑言を覚悟していた私は拍子抜けする。

 

「自分がした事を悪いと思って謝った。それならそれ以上如何こう言うつもりは無い。ハッキリ言えば、現実を改めて突き付けられただけで、俺自身に実害は無かったからな」

 

彼はそう言う。

 

「ッ…………!」

 

その言葉に、私は何も言えなくなる。

 

「………大士が許したなら、私から何か言う資格は無いけど、あなたも何処となく自信過剰な節があるわね。自分のやることが間違ってない。もしくは予想の範囲内だってね。だから知らず知らずの内に、人の地雷を踏む。簪との不仲も、そう言う所が原因じゃないの?」

 

優花さんから痛い所をグサリと突かれた気がした。

 

「別にあなた達の間に何があったのかなんて興味は無いわ。だけど、大士を傷付ける奴を、私は許さない………!」

 

釘を刺すように優花さんはそう言うと、大士さん、葵さんと一緒に、その場を去って行った。

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

その日の放課後。

 

「え~、今度の学園祭の出し物についてですが…………」

 

クラス代表でありクラス委員の役割を持っている織斑がHRで進行を務めていたが、その黒板に書かれていた出し物の内容が、

 

―――『織斑 一夏のホストクラブ』、『織斑 一夏とツイスター』、『織斑 一夏とポッキー遊び』、『織斑 一夏と王様ゲーム』―――

 

という女子の欲望丸出しの物しか無かった。

 

「全部却下!」

 

当然ながら織斑は全て却下する。

その瞬間、クラス中からブーイングが響く。

 

「あ、アホか! 誰が嬉しいんだ、こんなもん!」

 

「私は嬉しいわね。断言する!」

 

「そうだそうだ! 女子を喜ばせる義務を全うせよ!」

 

「織斑 一夏は共有財産である!」

 

「他のクラスからいろいろ言われてるんだってば。うちの部の先輩もうるさいし」

 

「助けると思って!」

 

「メシア気取りで!」

 

クラスメイト達は次々と理由を口にする。

その理由も凄いもんだが。

 

「っていうか! 何で俺だけ名指しなんだよ!? 物珍しいって言うなら大士だって一緒だろ!?」

 

流石に織斑も自分だけに集中している事に気付いたのか、俺の事を口に出す。

 

「え? 黒騎君は別にいいや」

 

「うんうん、織斑君だけで充分!」

 

サクッと胸に言葉が刺さる。

 

「何でだよ!?」

 

やはり織斑は自分に異性としての魅力がある事に気付いていない。

 

「とにかく、もっと普通な意見をだな!」

 

織斑は懇願する様に叫ぶ。

すると、

 

「メイド喫茶は如何だ?」

 

突然挙がった意見にクラスの視線がその人物に集中する。

その意見を上げたのは、なんとラウラだった。

 

「客受けはいいだろう。それに、飲食店は経費の回収が行える。確か、招待券制で外部からも入れるのだろう? それなら、休憩所としての需要も少なからずあるはずだ」

 

意見も理由も真っ当なものだったが、いかんせんその人物がラウラという事で、クラス中が静まり返る。

 

「えーっと………皆はどう思う?」

 

織斑が何とか我に返ってクラスの反応を窺う。

 

「いいんじゃないかな? 男子には執事や厨房を担当して貰えばオーケーだよね」

 

デュノアが一番に同意した。

しかも、その時に出した『執事』と言う言葉が女子達にクリティカルヒットしたらしく、

 

「織斑君、執事………いい!」

 

「それでそれで!」

 

女子達が次々と賛成する。

すると、

 

「別にメイド喫茶そのものに反対は無いけど……」

 

葵が良く通る声で言葉を発した。

 

「もしメイド喫茶をやるんだったら、私は裏方に回らせてもらうね。役目とは言え、大士以外を『ご主人様』呼ばわりする気は無いから…………!」

 

「同じく」

 

葵の言葉に優花が同意する。

一見惚気とも取れる発言だが、その言葉には、有無を言わさぬ迫力があった。

無条件でコクコクと頷くクラスメイト達。

だが、俺は葵の発言に幸せを感じていた。

 

「そ、それでメイド服と執事服は如何する? 私、演劇部衣装係だから縫えるけど!」

 

クラスメイトの1人が話を変えようとそう発言する。

すると、

 

「メイド服なら伝手がある。執事服も含めて貸して貰えるか聞いてみよう…………シャルロットが、な」

 

そう言っていたラウラがいきなりデュノアに話を振った。

 

「え、えっと、ラウラ? それって先月の………?」

 

「うむ」

 

ああ、もしかしてあの店か。

思い当たる節があった俺は納得する。

 

「き、聞いてみるだけ聞いてみるけど、無理でも怒らないでね?」

 

瞬く間に意見がまとまり、メイド喫茶改め『御奉仕喫茶』として、1年1組の出し物が決定した。

 

 

 

 






IS編第14話です。
大体は原作通りの流れだけど、楯無との絡みを少々。
漸くヒロインとして楯無が活躍する?
次回は学園祭。
さて、大士達は誰に招待券を送るのか?
お楽しみに。


PS・本日2回目のコロナワクチンを接種したので、おそらく今週はもう更新できないと思います。

打鉄弐型は如何するか?

  • 原作通り。シンプルイズベスト
  • ワイルドバンチを呼んでデジモン的魔改造
  • ハジメを呼んで魔法的魔改造
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