ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第15話 生まれ変わるハウリア

 

 

 

 

フェアベルゲンに招待された俺達は、アルフレリックの案内でとある一部屋に案内され、そこで【オルクス大迷宮】の奈落で知ったことを話した。

 

「なるほど………この世界は神の遊戯の盤であったと………」

 

アルフレリックは溜息を吐きながらそう呟く。

 

「驚かないんだな?」

 

俺は気になった事を聞いた。

 

「この世界は亜人族(われわれ)に優しくない。今更だ」

 

呆れるように言うと、

 

「あんたは『解放者』について知っていたのか?」

 

ハジメがそう聞く。

 

「詳しくは何も知らんよ。古くから伝わる長老の座についた者への言い伝えだ。『七大迷宮は“解放者”という者達によって創られた』。曰く、『迷宮の紋章を持つ者に敵対しない事』『その者を気に入ったのなら望む場所へ連れて行く事』。お前さんの持っていた指輪はその紋章の一つだった。故に敵対せず案内したのだが…………全ての亜人族がこれを知っているわけでは無い。それに、知っていてもそれを守らない者もいる…………」

 

そう言った瞬間、部屋のドアが蹴破られた。

 

「アルフレリック!! 貴様………どういうつもりだ? 人間と忌み子を招き入れるなど…………!」

 

ドアを蹴破って来たのは大柄の熊の亜人で見て分かるほどに額に青筋が浮かび上がっている。

 

「なに、口伝に従ったまでだ。お前達も各種族の長老の座にあるのだ。事情は理解できるはずだが?」

 

アルフレリックは冷静にそう言い返すが、

 

「こんな人間族の小僧共が資格を持つというのか!? 敵対してはならない強者だと!?」

 

熊の亜人の男はわなわなと拳を握ると、

 

「ふざけるなっ!! ならばこの場で試してやろう!!」

 

一番扉に近かったからか、俺に向かって殴りかかってきた。

熊の亜人というだけあって、その腕の太さは俺よりも二回り以上大きい。

その拳で殴られれば、一般人並みのステータスの俺は確実に大怪我。

下手をすれば死ぬだろう。

だが、俺は何も心配していなかった。

何故なら……………

 

「ッ……………!」

 

「なっ!?」

 

その拳が俺に当たる直前にその熊の亜人の男の手首が俺よりも細い腕に掴まれて止められたからだ。

その男の拳を止めたのは当然ながら優花。

優花は俺が殴られると判断した瞬間に俺の横に移動してその男の手首を掴んだのだ。

まあ、形からそう予想しただけで、俺には全く優花の動きは見えなかったんだがな。

優花は、拳を止められて驚愕する男を敵意を込めた目で睨み付ける。

それから、俺を攻撃されそうになって黙ってられないのは優花だけではない。

 

「メタルキャノン!!」

 

俺の傍らに居たドルモンが即座に反撃した。

放たれた鉄球が、優花に腕を掴まれて身動きが取れない男の額に直撃して吹き飛ばし、そのまま壁に激突して気を失う。

すると、

 

「……………で? 俺の仲間を攻撃したって事は、アンタらは敵って事でいいのか?」

 

ハジメは蹴破られたドアの外にいた者達に声を掛けた。

 

 

 

 

 

亜人たちは近い種族ごとに長老が居るようで、虎人族のゼル、翼人族のマオ、狐人族のルア、土人族のグゼ、そして森人族のアルフレリックが俺達と向かい合うように座っていた。

因みにさっき殴りかかってきた男はジンと言って、戦闘力では亜人たちの中で一,二を争う程の手練だったらしい。

 

「で? あんた達は俺等をどうしたいんだ? 俺は大樹の下へ行きたいだけで、邪魔しなければ敵対することもないんだが……亜人族としての意思を統一してくれないと、いざって時、何処までやっていいかわからないのは不味いだろう? あんた達的に。殺し合いの最中、敵味方の区別に配慮する程、俺はお人好しじゃないぞ」

 

相変わらずのハジメの過激な物言いに俺は内心苦笑する。

 

「こちらの仲間を昏倒させておいて、第一声がそれか……それで友好的になれるとでも?」

 

その物言いには俺が文句を付ける。

 

「昏倒させたのはあくまで自衛だ。ぶっちゃけあのまま俺が熊男のパンチを喰らってたら良くて大怪我。悪ければ殺されてた。で、それを止めるために俺の仲間がその拳を止めて、無力化の為に昏倒させた。しかもこっちはそいつに何もしてないのに出会い頭に拳を振るおうとしてきたんだが?」

 

「き、貴様! ジンはな! ジンは、いつも国のことを思って!」

 

「国を思ってるから、俺はそのまま殺されろと?」

 

俺は鼻で笑ってやる。

 

「もしそうなってた時はハウリア以外の亜人は今日で全滅だな」

 

ハジメが追撃する様にそう言う。

その言葉は冗談でも何でもない。

ハジメだったら確実にやる。

 

「ついでに言っておけば、そいつが殴りかかったのが大士で良かったな。大士達は優しいから殺そうとしてきた相手に昏倒で済ませたんだ。もし俺や香織、ユエに殴りかかってきたら俺は殺す気で反撃してたぞ? 殺そうとしてきたんだ。殺されても文句は言えないだろ?」

 

「そ、それは! しかし!」

 

「勘違いするなよ? こっちが被害者で、あの熊野郎が加害者。長老ってのは罪科の判断も下すんだろ? なら、そこのところ、長老のあんたがはき違えるなよ?」

 

ハジメの言葉にグゼは悔しそうに歯を噛み締める。

 

「グゼ、気持ちはわかるが、そのくらいにしておけ。彼の言い分は正論だ」

 

アルフレリックがグゼを諫めると、グゼはドスンと音を立てて座り込んだ。

 

「確かに、この少年達は、紋章の一つを所持しているし、大迷宮を突破したと言うのは本当だろう。僕は、彼を口伝の資格者と認めるよ」

 

そう言ったのは狐人族の長老ルア。

翼人族のマオ、土人族のグゼも、渋々と言った感じで認める発言をする。

しかし、

 

「俺は認めんぞ!」

 

虎人族のゼルが拒否の意を示した。

 

「口伝には気に入った相手を案内するとあるんだろう? 俺はコイツらが気に入らん! 大樹への案内は拒否させてもらう。ハウリア族に案内してもらえるとは思わない事だな。そいつらは忌み子を匿った罪人たち。すでに長老会議で処刑が決まっている」

 

それを聞いた瞬間、

 

「そんな! どうか………どうか一族の命だけはお助けください!」

 

シアが必死に懇願する。

 

「やめなさいシア。皆、覚悟は出来ている」

 

それを止めたのはカムだ。

 

「でも………でも………!!」

 

「お前には何の落ち度もない。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わん。我らハウリア族はどんな時も一緒だ」

 

カムの言葉に泣き崩れるシア。

 

「大樹に行く方法が無くなった訳だが、どうする? 運よく辿り着く可能性に賭けてみるか?」

 

ゼルがいい気味だと言わんばかりにガハハと笑う。

すると、

 

「バッカじゃないの?」

 

良く通る声で優花が言った。

ゼルの笑いが止まる。

 

「本当ね。私達の覚悟を何一つ理解して無いんだもん」

 

葵も呆れ半分にそう言った。

 

「何だと!?」

 

ゼルが叫びながら言い返す。

 

「俺らはお前らの事情なんて関係ないんだよ。このままコイツらを処刑するって事は、俺の邪魔をするって事だろうが」

 

ハジメはそう言いながらシアの頭に手を乗せ、

 

「俺らの行く道を拒もうって言うのなら、覚悟を決めてもらおうか?」

 

ハジメは微塵の揺らぎも見せずにそう言い切る。

因みにシアの表情がハジメに惚れる秒読み段階って感じなんだが?

 

「本気かね?」

 

アルフレリックの問いかけに、

 

「当然だ」

 

即答するハジメ。

 

「フェアベルゲンから案内を出すと言っても?」

 

「何度も言わせるな。俺の案内人はハウリアだ」

 

「なぜ、彼等にこだわる。大樹に行きたいだけなら案内人は誰でもよかろう。案内人を変えるだけで我々と争わずに済むのだ。問題無かろう」

 

その言葉に俺は口を開いた。

 

「勘違いしている様だから言っておくが、俺達にとってこの国と争う事は面倒な事だとは思っているが、さほど労力を使う事とは思っていない。邪魔をしなければこちらから手を出す気は無いし、邪魔をするなら踏み越えるだけ。多少寄り道をする程度の感覚だ」

 

そう言ってやる。

 

「それに案内するまで助けてやるって約束したんだ。途中でいい条件が出てきたから鞍替えなんざ………格好悪いだろ?」

 

ハジメがそう続いた。

 

「…………何を言っても無駄か………」

 

アルフレリックはそう言って深いため息を吐いた。

 

「ならば、お前さんの奴隷ということにでもしておこう。フェアベルゲンの掟では、樹海の外に出て帰ってこなかった者、奴隷として捕まったことが確定した者は、死んだものとして扱う。樹海の深い霧の中なら我らにも勝機はあるが、外では魔法を扱う者に対して勝機はほぼない。故に、無闇に後を追って被害が拡大せぬように死亡と見なして後追いを禁じているのだ。……既に死亡と見なしたものを処刑はできまい」

 

「アルフレリック! それでは!」

 

ゼルが叫ぶ。

アルフレリックが言った理由は完全に屁理屈だ。

納得できないのは当然だろう。

 

「ゼル。わかっているだろう。この少年が引かないことも、その力の大きさも。ハウリア族を処刑すれば、確実に敵対することになる。その場合、どれだけの犠牲が出るか……下手をすれば、宣言通りに全滅も在り得る。長老の一人として、そのような危険は断じて犯せん」

 

「しかし、それでは示しがつかん! 力に屈して、化物の子やそれに与するものを野放しにしたと噂が広まれば、長老会議の威信は地に落ちるぞ!」

 

「だが……」

 

そんなとき、葵が口を挟んだ。

 

「あのさ、さっきからシアの事を化け物とか言ってるけど、実際の所、シアがあなた達に何かしたの?」

 

「何?」

 

「シアが居ることで、あなた達が直接的な被害を被ったのかって聞いてるのよ?」

 

「何を言う!? そいつは我々を苦しめた人間族と同じく魔力を持ち、更に魔物達と同じく魔力を直接操作している! それが化け物でなくて何だというのだ!?」

 

ゼルがそう叫ぶと、葵は分かり易く溜息を吐いた。

 

「話を聞いて無かったの? 私は『シア』があなた達に何かしたのかって聞いたのよ? それをさっきから魔力を持ってるだの直接操作してるだの。『シア』自身について何も言ってないじゃない」

 

「それは…………」

 

「シアは私達に助けを求めた時、家族達を助けて欲しいとは言っても、あなた達に迫害された復讐をして欲しいなんて一言も言ってないわよ? もしシアが何もしてないのに迫害したとすれば、それは仕返しできない鬱憤をシアにぶつけているだけの単なる『八つ当たり』じゃない。良かったわね、シアが優しくて。私だったら絶対に仕返しなり復讐なりを考えて、もし大士や南雲君達に助けて貰えたら、如何にかしてこの国を滅ぼしてもらえるように頼んでいたわね。だってそうでしょう? 何もしてないのに迫害されたら恨むのが当然だもの」

 

「何を言うか!? そうならないために早々に処刑を………!」

 

「だから話聞いてたの? 私は迫害されたから復讐を考えるのが当然と言ったのよ? つまり迫害されなきゃ復讐なんて考えもしない。つまり、この国を危機的状況に陥らせてるのはあなた達の自業自得。お分かり?」

 

「ぐっ…………!」

 

「そこまでだ! ハウリア族は忌み子シア・ハウリアを筆頭に、南雲 ハジメの身内と見なす。そして、資格者南雲 ハジメに対しては、敵対はしないが、フェアベルゲンや周辺の集落への立ち入りを禁ずる。以降、南雲 ハジメの一族に手を出した場合は全て自己責任とする……以上だ。何かあるか?」

 

アルフレリックがそう結論を出す。

 

「いや、何度も言うが俺は大樹に行ければいいんだ。こいつらの案内でな。文句はねぇよ」

 

「……そうか。ならば、早々に立ち去ってくれるか。ようやく現れた口伝の資格者を歓迎できないのは心苦しいが……」

 

「気にしないでくれ。全部譲れないこととは言え、相当無茶言ってる自覚はあるんだ。むしろ理性的な判断をしてくれて有り難いくらいだよ」

 

ハジメがそう言いながら席を立つ。

俺達もそれに倣って立ち上がるが、シア達ハウリア族は、未だ現実を認識しきれていないのか呆然としたまま立ち上がる気配がない。

 

「おい、何時まで呆けているんだ? さっさと行くぞ」

 

シアが、オロオロしながらハジメに尋ねた。

 

「あ、あの、私達……死ななくていいんですか?」

 

「? さっきの話聞いてなかったのか?」

 

「い、いえ、聞いてはいましたが……その、何だかトントン拍子で窮地を脱してしまったので実感が湧かないといいますか……信じられない状況といいますか……」

 

周りのハウリア族もシアと同じように困惑している。

すると、

 

「……素直に喜べばいい」

 

ユエがそう呟いた。

 

「ユエさん?」

 

「……あなた達はハジメ達に救われた。それが事実。受け入れて喜べばいい」

 

「……」

 

ユエの言葉に、シアはハジメに視線を向ける。

 

「まぁ、約束だからな」

 

ハジメは背を向けながら軽く肩を竦める。

 

「ッ……」

 

あ、これは確定。

 

「ハジメさ~ん! ありがどうございまずぅ~!」

 

シアが泣きながらハジメに向かって跳び付くように抱き着いた。

 

「どわっ!? いきなり何だ!?」

 

「むっ……」

 

「あぁっ!? シアちゃん!?」

 

ユエがムッとなり、香織が叫ぶ。

 

「ああ、これはシアも南雲君にコロッと行っちゃったわね」

 

葵がニコニコしながらそう言う。

 

「修羅場再びだな」

 

俺が呟く。

 

「大士はこれ以上増やさないでよ?」

 

優花が俺にチクリと刺してくる。

 

「増やさねえって………てか増やせるわけないだろ………」

 

俺は思わず苦笑した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、お前等には戦闘訓練を受けてもらおうと思う」

 

フェアベルゲンを出て、大樹に近い場所に拠点を作ったハジメが唐突に言い出した。

その言葉にハウリア族はポカンとした表情を浮かべている。

 

「え、えっと……ハジメさん。戦闘訓練というのは……」

 

 一族を代表してシアが尋ねると、

 

「そのままの意味だ。どうせ、これから十日間は大樹へはたどり着けないんだろ? ならその間の時間を有効活用して、軟弱で脆弱で負け犬根性が染み付いたお前等を一端の戦闘技能者に育て上げようと思ってな」

 

「な、なぜ、そのようなことを……」

 

「俺達がお前達を護るのは大樹への案内が終わるまでだ。その後の事は考えているのか?」

 

「それはまだ…………」

 

「お前達は弱い………悪意や害意に対しては逃げるか隠れることしかできない。そんなお前等は、遂にフェアベルゲンという隠れ家すら失った。逃げ場のないお前達は人や魔物の恰好の餌だ。このままだと間違いなく全滅。折角拾った命も無駄に散らすことになる。それでいいのか?」

 

ハジメがそう言うとシアは拳を握り、

 

「そんなの………いいわけありません!」

 

ハッキリとそう言った。

その言葉にハジメは笑みを浮かべ、

 

「なら答えは簡単だ。強くなればいい。約束の十日間までなら手助けもしよう………どうする?」

 

ハジメの問いかけにシアやカムを始めとしたハウリア族は顔を見合わせて頷き合うと、

 

「やります! 私達に戦い方を教えてください!」

 

決意の籠った瞳でそう頷いた。

 

 

 

 

 

 

魔力持ちで魔力操作も持つシアは魔力の扱いに長けたユエが指導することになり、残りのハウリア族はハジメが指導することになった。

しかし、ハジメの方は前途多難だった。

何故なら、

 

「ああ、どうか罪深い私をお許しくれぇ~」

 

「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! それでも私はやるしかないのぉ!」

 

「ふっ、これが刃を向けた私への罰というわけか……当然の結果だな……」

 

魔物を1匹殺すたびに号泣し、

 

「うわぁっ!?」

 

「ふう、危ない。危うく虫の行列を踏んでしまう所でした」

 

地面を這う虫たちにすら気を使い、

 

「お花さんを踏みそうになっちゃった……よかった。気がつかなかったら、潰しちゃうところだったよ。こんなに綺麗なのに、踏んじゃったら可哀想だもんね」

 

挙句の果てに花などの植物達を踏むことすら躊躇する始末。

お前らは本当にこの命が安い生きるか死ぬかの世界で生き抜いてきたのかよ!?

今時の日本人でもそこまで気にする奴は稀だぞ!?

その気持ちは、安全な現代日本であれば尊ぶべき思考だ。

しかし、それはこの生きるか死ぬかの世界では致命的な隙となる。

そんな彼らの行動に、遂にハジメの堪忍袋の緒が切れた。

ドンナーの弾丸(非致死性のゴム弾)がカムの額に撃ち込まれる。

それを目撃したハウリア族が全員沈黙する。

そして、

 

「貴様らは薄汚い〝ピッー〟共だ。この先、〝ピッー〟されたくなかったら死に物狂いで魔物を殺せ! 今後、花だの虫だのに僅かでも気を逸らしてみろ! 貴様ら全員〝ピッー〟してやる! わかったら、さっさと魔物を狩りに行け! この〝ピッー〟共が!」

 

ハジメがハー○マン軍曹と化した。

躊躇う者には容赦なく発砲し、放送禁止用語を連呼する。

 

「怪我をしても香織が居るからな! 安心して逝ってこい!!」

 

そう言ってハウリア族を追い立てる。

そんな光景が何日も続き、連日悲鳴を上げ続けていたハウリアだったが、訓練開始から八日目辺りで変化が見られた。

何と言うか目がイっているのだ。

そして訓練開始から九日目。

ハジメの目の前には血みどろのハイベリアの尾が大量に積まれていた。

これは、ハジメが訓練の一環としてハイベリアを狩ってくるように言ったものなのだが、

 

「…………俺は一体でいいと言ったと思うんだが……」

 

「ええ、そうなんですがね? 殺っている途中でお仲間がわらわら出てきやして……生意気にも殺意を向けてきやがったので丁重にお出迎えしてやったんですよ」

 

「その結果がこの数でさぁ」

 

「ウザイ奴らだったけど……いい声で鳴いたわね、ふふ」

 

最早以前のハウリアの面影は全く無かった。

危ない発言が連呼されている。

その様子にハジメも若干引いている様だ。

すると、別のハウリア族が現れてハジメの前に跪き、

 

「ボス! 報告します! 大樹へのルートに武装した熊人族の集団を発見! おそらく我々に対する待ち伏せと判断いたします!」

 

ハジメは既にボスなのか………

 

「お、おう………良く見つけられたな………」

 

「はっ………! もったいなきお言葉!」

 

その時、

 

「ボス、宜しければ我々にお任せ願えませんでしょうか?」

 

カムがそう言った。

振り向いたハジメが見たカムは以前の優しそう………というより軟弱そうな雰囲気は全く無く、凄腕の暗殺者の様な風貌を漂わせている。

 

「カム…………なのか…………?」

 

その様子にハジメも一瞬カムなのか疑ったぐらいだ。

 

「ええ、もう生まれ変わった気分ですがね…………我らの力、奴らにどこまで通じるか試させていただきたく…………なに、そうそう無様は見せやしませんよ」

 

「……出来るんだな?」

 

「肯定であります!」

 

ハジメの確認の言葉に即返すカム。

すると、ハジメは一度深呼吸し、

 

「聞け! ハウリア族諸君! 勇猛果敢な戦士諸君! 今日を以て、お前達は糞蛆虫を卒業する! お前達はもう淘汰されるだけの無価値な存在ではない! 力を以て理不尽を粉砕し、知恵を以て敵意を捩じ伏せる! 最高の戦士だ! 私怨に駆られ状況判断も出来ない〝ピッー〟な熊共にそれを教えてやれ! 奴らはもはや唯の踏み台に過ぎん! 唯の〝ピッー〟野郎どもだ! 奴らの屍山血河を築き、その上に証を立ててやれ! 生誕の証だ! ハウリア族が生まれ変わった事をこの樹海の全てに証明してやれ!」

 

お決まりの文句を言い放った。

 

「「「「「「「「「「Sir、yes、sir!!」」」」」」」」」」

 

「答えろ! 諸君! 最強最高の戦士諸君! お前達の望みはなんだ!」

 

「「「「「「「「「「殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!」」」」」」」」」」

 

「お前達の特技は何だ!」

 

「「「「「「「「「「殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!」」」」」」」」」」

 

「敵はどうする!」

 

「「「「「「「「「「殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!」」」」」」」」」」

 

「そうだ! 殺せ! お前達にはそれが出来る! 自らの手で生存の権利を獲得しろ!」

 

「「「「「「「「「「Aye、aye、Sir!!」」」」」」」」」

 

「いい気迫だ! ハウリア族諸君! 俺からの命令は唯一つ! サーチ&デストロイ! 行け!!」

 

「「「「「「「「「「YA―――――――――HA――――――――――――!!!!!」」」」」」」」」」

 

ハウリア族はまるで忍者の集団の様に散り散りに森の中へ姿を消した。

俺は、ちょっと心配事があったので彼らの後を追うことにした。

 

 

 

 

 

その現場は凄惨な光景が広がっていた。

 

「ほらほらほら! 気合入れろや! 刻んじまうぞぉ!」

 

「アハハハハハ、豚のように悲鳴を上げなさい!」

 

「汚物は消毒だぁ! ヒャハハハハッハ!」

 

嘲笑を上げながら熊人族の周囲に身を潜めつつ死角から攻撃し、次々と熊人族の戦士達を倒していくハウリア族。

 

「ちくしょう! 何なんだよ! 誰だよ、お前等!!」

 

「こんなの兎人族じゃないだろっ!」

 

「うわぁああ! 来るなっ! 来るなぁあ!」

 

そんなハウリア族に追い詰められ、悲鳴を上げる熊人族。

そんな中、熊人族を率いている族長のジンは、予想外の事態に混乱していた。

ジンは俺に問答無用で殴りかかってきた男で、昏倒させられたことの仕返しに襲撃を考えていたのだろう。

それが今まで格下に見ていたハウリア族………というより兎人族に言い様にやられているのが信じられない様だ。

 

「どうした〝ピッー〟野郎共! この程度か! この根性なしが!」

 

「最強種が聞いて呆れるぞ! この〝ピッー〟共が! それでも〝ピッー〟付いてるのか!」

 

「さっさと武器を構えろ! 貴様ら足腰の弱った〝ピッー〟か!」

 

煽りまくるハウリア族。

ボロボロのジンは、立っているのがやっとの満身創痍。

俺から見ても完全に大勢は決していた。

ジンの前にカムが現れる。

 

「何か言い残す事はあるかね? 最強種殿………?」

 

皮肉を利かせたカムの言葉。

ジンは歯を食いしばって地面に手を着き、

 

「俺はどうなってもいい………兎人………いや、ハウリアの長よ。すべては同族を駆り立てた俺の責任だ。部下だけは見逃してくれ、頼む………!」

 

最強種の誇りもかなぐり捨て、部下の命を救おうとした長としての断腸の決断だったのだろう言葉。

それをカムは、

 

「断る!」

 

切って捨てた。

 

「お前達は『敵』なのだ。『敵は殺す』。それがボスの教え」

 

まあ俺達からしてみれば、あいつらは俺達を殺す気でここに居たのだ。

全員同罪だし、これだけなら俺も止めるつもりは無かった。

だが、

 

「何より…………」

 

カムがナイフを振り上げる。

 

「貴様らを嬲るのは、『楽しい』! ハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

「ッ…………! ドルガモン!」

 

その言葉を聞いた瞬間、俺は危惧していた事が起きたと判断し、俺が背に乗っているドルガモンに合図を送る。

その瞬間、

 

「パワーメタル!!」

 

ドルガモンが俺達が居る空中から鉄球を放ち、カムのすぐ横に着弾させる。

そしてそのままドルガモンをゆっくりと降下させた。

 

「…………どういうおつもりですかな? タイシ殿…………」

 

カムの言葉に俺はドルガモンの背から降りると、

 

「それ以上は駄目だ。カム」

 

「駄目? まさかそ奴らに与するつもりなのですかな? そう言う事であれば、いくらボスの盟友である其方と言えど…………」

 

カムにそう言われたので、先に誤解を解くことにした。

 

「いや、別にこいつらがどうなろうと知ったこっちゃないぞ?」

 

「「「「いいのかよっ!?」」」」

 

俺が虐殺を止めるために出てきたと勘違いしていたのか、熊人族から猛烈なツッコミが入る。

だが、

 

「お前達は以前シアが自分1人の命で勘弁してくれと言った時、それを聞かずにハウリア族全員を処刑しようとしていたな? シアの時は話を聞かずに自分達だけ自分1人の命で勘弁してくれって言うのはムシが良すぎるんじゃないのか?」

 

まあ、あの時ジンは昏倒していたが、長老会議で決まった事と言っていたのでこいつも知っているだろう。

 

「そ、それは…………!」

 

ジンが項垂れる。

 

「では何故………?」

 

カムがそう問いかけてきたので、

 

「お前達が、『殺しを楽しもう』としていたからだ」

 

俺はそう答えてやる。

『敵は殺す』、『殺られる前に殺る』。

そういう考え方は別に否定しない。

正しいかどうかは知らないが、間違っているとは言えないからだ。

だが、『殺しを楽しむ』事は俺の中で許せる事では無い。

『生きるために殺す』、『守るために殺す』のではなく、自分の『快楽の為だけに殺す』事は決して見過ごすことは出来ない。

 

「わ、我々は決して楽しんでなど…………」

 

カムが認めようとしなかったので、

 

「なら、鏡で今の自分の顔を見て見ろよ。今のお前ら、お前達を襲った帝国兵と同じ顔をしてるぞ」

 

俺はそう言ってやる。

 

「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」」

 

その瞬間、ハウリア族全員が息を呑むのが分かった。

カムの手からナイフが滑り落ちる。

 

「タ、タイシ殿…………我々は一体何を…………?」

 

正気を取り戻したのか、カムが狼狽えた表情をする。

 

「どうやらちゃんと戻ってこれたみたいだな。今気付けたなら大丈夫だろう。あと、お前ら、どさくさに紛れて逃げようとしてんじゃねえよ!」

 

熊人族が逃げようとしていたのでドルガモンに指示して逃げようとしていた熊人族の目の前にパワーメタルを撃ち込ませる。

そして、

 

「ハジメ、出て来いよ!」

 

俺は近くに居るだろうハジメに声を掛けた。

すると、ハジメは少し気まずそうな顔をして出てくる。

 

「あ~、まぁ、何だ、悪かったな。自分が平気だったもんで、すっかり殺人の衝撃ってのを失念してた。俺のミスだ。うん、ホントすまん」

 

ハジメは謝罪の言葉を口にする。

 

「ボ、ボス!? 正気ですか!? 頭打ったんじゃ!?」

 

「メディーック! メディーーク! 重傷者一名!」

 

「ボス! しっかりして下さい!」

 

ハウリア族の反応にハジメは口元をヒクつかせるが、そういう反応になるのもしょうがない。

 

「ハジメ、自業自得」

 

「ぐぅっ………!」

 

「調子こいてハー○マン軍曹式訓練なんてするからだ」

 

「がはっ!?」

 

「前から思ってたが、昔と比べるとハジメ、見た目も含めて厨二病が加速してるぞ」

 

「がっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」

 

俺の一言はハジメにとってクリティカルヒットだったらしい。

暫く復活しそうに無かったので俺が話を進めることにした。

 

「そこのお前ら、今なら見逃してやるぞ」

 

俺の言葉にジンが驚いた顔をする。

 

「ただし、長老衆にこう言え。“貸し一つ”ってな」

 

「ッ!?」

 

その言葉はジンにとってどれほど重い貸しなのかを本能的に理解した。

 

「…………わ、わかった」

 

しかし、ジンはそれに頷くことしか出来ない。

ここで断ったら、ここにいる熊人族は全滅確定だからな。

 

「ちゃんと言えよ? もし返して貰いに行った時にとぼけでもしたら……………」

 

その言葉にジンはゴクリと唾をのみ込み、

 

「フェアベルゲンが樹海ごと消えてなくなると思え…………!」

 

俺はなるべく凄みを見せながらそう言った。

アルファモンならこの樹海ごと吹き飛ばすのは簡単だし、出来ることは嘘ではない。

やるかどうかはコイツらの出方次第だけど。

 

「………肝に命じておく」

 

ジンは屈する様に頷くと、部下を引き連れて去っていった。

これだけ脅しておけば大丈夫だろう。

俺は内心ホッとしながら隣のハジメを見ると、

 

「……………………………」

 

ハジメは未だに打ちひしがれていた。

どうやら俺の言葉は思った以上にハジメの心を抉ったようだ。

ハジメが復活したのは今しばらくの時間が経ってからだった。

 

 

 

 

 

 






第15話です。
う~ん、正直この辺りは原作とほぼ変わりが無いので飛ばしても良かったんですが、それだとあまりにも手抜きなので…………
変にデジモン出すと話の流れに違和感出ますし。(クロスオーバーなので仕方ないかもしれませんが)
さて、フェアベルゲンでの話とハウリアの変貌でした。
原作とほぼ変わりないので、追加キャラの台詞がちょっと入った程度ですね。
次回はシアの特訓から旅立ちまで。
お楽しみに。




PS.仕事の予定が変わったので、もうしばらく速いペースで更新出来そうです。(調子が続けば)
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