ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第19話 簪の想い

 

 

簪さんのIS魔改造が始まって暫くの時が経ち………

 

「ついに完成したな………!」

 

ハジメがやり切ったと言わんばかりの清々しい顔をしている。

 

「本当に………ありがとうございます………!」

 

簪さんは万感の思いを込めて感謝を述べる。

 

「……………それにしても」

 

俺は魔改造された簪さんの専用機を眺め、

 

「随分と様変わりしたなぁ………」

 

思わずそう零す。

簪さんの専用機の、本来の計画案は打鉄弐式。

日本製の量産型ISである打鉄をベースに、改良、発展させ、高機動高火力タイプの機体となるはずだった。

計画の完成予定図では、割とスマートな見た目だったのだが、目の前にあるのはまるで違う。

まず目につくのが、両肩背面部に装着された大型の2門の砲身。

戦闘時には肩から前面へと展開し、ショルダーキャノンとなる『グラビティ・インパクト・キャノン』。

その名の通り、重力魔法を応用した重力衝撃砲だ。

更に格納領域には、手持ちの同系統武器『グラビトン・ライフル』が2つあり、合計4門の重力衝撃砲を持っていることになる。

因みに、4門持たせたのは俺の強い要望だ。

その理由は後々分かるだろう。

次に目が行くのは、後腰部に下向きに装着された2つのドリルだろう。

そのドリルには、ハジメの使うメツェライと同じガトリングレールガンが内蔵されており、使用時には腰部の横から前面に展開、ドリルが花が咲くように4つに分かれて開き、内部の砲身が現れる仕様になっている。

勿論、そのままドリルとしても使用可能で、その際には後腰部から分離し、腕部に装着される。

ついでにそこからは俺の口出して、そのドリルをロケットパンチの様に飛ばす『ドリル・ブーストナックル』も使えるようになっている。

何を参考にしているかは分かる奴には分かるだろう。

バックパックからは、パーツが分離して空中でリング状に合体。

最上級の火魔法を重力魔法で圧縮したビーム状の刃が発生し、高速回転しながら遠隔操作で相手を切り裂く武装『リープ・スラッシャー』がある。

スカートアーマーには、同じく最上級の火魔法を重力魔法で圧縮して刃にしたビームサーベルが2振り格納されており、更に2本の柄をドッキングさせると、高出力のバスターソードモードになるというオマケ付き。

そして極めつけは〝限界突破〟を応用した『オーバードライブ』。

一時的に機体能力を3倍まで引き上げる機能。

その際に機体色が赤くなるのはお約束だ。

所謂トラ○ザムなわけだが、この世界にもガ○ダムが存在するので、名前だけは変更した。

何故前世とここまで似通った作品があってスパロボが無いのが不思議だが。

オマケに言っておけば、脚部装甲には熱源追尾式のマイクロミサイルがギッシリと詰まっているし、防御に関しても、重力場を結界とした『グラビティ・テリトリー』があるので生半可な攻撃では、この機体に触れる事すらできない。

更に言えば、ここまで武装を詰め込んだ結果、機体重量や反動は相当なものになるはずなのだが、これも重力魔法を応用して、機動性、運動性能への影響や、使用者に掛かる負担はほぼゼロと言う常識に喧嘩売っている仕様である。

ハジメとしては、空間魔法を応用した空間跳躍武装とかも詰め込みたかったようだが、現状の科学技術では言い訳出来ないので、山木さん達に必要以上の迷惑をかけてしまう可能性があるので、それは我慢して貰った。

自分で遠慮なしで頼むと言っておいて、我慢させてしまったのは反省だ。

あとは、余り武装を詰め込み過ぎても、簪さんが扱いきれなかったら宝の持ち腐れだしな。

何か企んでそうな笑みを浮かべてたから、他に隠し機能とか付けてそうな感じだったが………

そして、セキュリティとして魂魄魔法を使って簪さん以外の人間には使えないようにしておくのも忘れない。

これで簪さん以外の人間には待機状態から展開させることも不可能になる。

そんな規格外の機体となったISだが、現在簪さんはハジメから軽くレクチャーを受けている。

そこでハジメがハッとして、

 

「………そういや名前決めて無かったな」

 

大事な事を思い出したと言わんばかりにそう言った。

打鉄がベースとなっているが、その面影は殆ど無い。

『打鉄弐式』と命名するのはおかしいだろう。

それにしても、俺がアイデア出した所為もあるが、武装が見事にヒュッケバイン寄りだな。

そう言えば、ヒュッケバインの別称って確か………

 

「……………『凶鳥』」

 

「えっ………?」

 

俺のつい零れた言葉を聞いたのか、簪さんが声を漏らす。

 

「今、何て言ったの?」

 

「い、いや、何でもない」

 

その言葉で俺はハッとして、ついつい口に出してしまった事を恥じた。

 

「…………確か、『キョウチョウ』って聞こえた。どういう意味?」

 

「俺も興味あるな。聞かせろよ」

 

簪さんだけでなく、ハジメまで便乗してきやがった。

 

「…………災いを意味する凶と、空を飛ぶ鳥で『凶鳥』…………つまり、災いを呼ぶ鳥って事だな」

 

「災いを呼ぶ鳥………『凶鳥』………」

 

「まあ、この機体を前にする相手にとっては、この機体が災いの象徴と言っても過言ではないが………」

 

「……………………」

 

俺の言葉に、簪さんは考え込む様な表情をする。

すると、

 

「……………決めた」

 

簪さんがそう言って顔を上げる。

 

「この機体の名前………この機体の名は、『打鉄・凶鳥』」

 

「………っておいおい! 自分の乗る機体に『凶』とか不吉な名前付けなくても………!」

 

俺は思わず突っ込む。

俺が口にした言葉だが、それをそのまま名付けるとは思わなかった。

 

「この子は私と一緒………不幸に見舞われ、見捨てられた子…………だから、その不幸も翼にして、私達は飛ぶ………!」

 

簪さんは何かを決意した表情になると、その機体に触れる。

 

「あなたの名は『打鉄・凶鳥』。不幸や災いすら翼にして、飛び越えていく鳥………!」

 

簪さんの言葉に反応したようにその機体が光に包まれて粒子化し、簪さんの右手の中指に指輪として嵌められる。

簪さんはその右手をギュッと握りしめた。

簪さんがそう決めたのなら、これ以上口を出すのは野暮だろう。

 

「んじゃ、俺は満足したからもう帰る」

 

ハジメはそう言ってゲートを開くとさっさと帰ってしまった。

 

「……………簪さん」

 

俺が簪さんを見つめていると、

 

「…………簪……で、いいです」

 

突然簪さんがそう言った。

 

「『さん』……は、いりません………簪、で、いいです………」

 

簪さんは何かを決意したように………それでいて恥ずかしそうに頬を赤くしながらそう言った。

その顔はまるで恋する少女の様な………

 

「ッ…………!?」

 

そこまで思って俺はハッとなる。

おいおい嘘だろ?

俺は思わず一緒に来ていた葵や優花の方を振り返る。

2人はやっと気付いたかと言わんばかりの呆れた表情をしていた。

そう言う反応するって事は、2人とも知ってたのか?

今まで異性として意識される事は無いと思って気にせず接していたが、目の前の少女が自分に恋慕を抱いていると認識してしまい、妙に意識してしまう。

 

「あ………その………簪さ………」

 

「簪です………!」

 

何か話そうと思ったが、名前を呼ぼうとした所で訂正させられる。

 

「いや、でも。簪さ………」

 

「簪です!」

 

もう一度さん付けで呼ぼうとしたら、更に強く訂正を受けた。

 

「…………その、簪は…………俺の事………好きなの……?」

 

根負けして呼び捨てで呼ぶことにするが、情けないことに確認を取る。

 

「は………はい………!」

 

恥ずかしそうにしながらも、ハッキリと頷く簪。

 

「念のために確認するけど………『異性』として?」

 

「………はい……!」

 

再び恥ずかしそうにしながらもハッキリと頷く簪。

 

「ッ~~~~~~~~!」

 

勘違いではなく、ハッキリと『異性として好き』と言われ、俺にも今更ながら恥ずかしさが込み上げてくる。

 

「…………あ~、その~………その気持ちは正直嬉しい………だけど、俺には恋人がいる」

 

「知っています」

 

「それも、葵と優花の2人だ」

 

「それも知っています」

 

「恋人を2人も持つような不純な俺は、簪の様な可愛い女の子から好かれるような男じゃないと思うんだが………?」

 

「関係ありません…………それも知っても、私があなたを好きになった事には変わりありませんから……」

 

「俺は2人と別れる気は全く無いぞ?」

 

「わかっています………3人目で構わないので、わ、私を大士さんの………こ、恋人にして下さいっ………!」

 

「ッ…………!?」

 

ストレートに告白された俺は、一瞬ドキリと息が詰まった。

 

「………………………あ………その……………何て言うか………ありがとう?」

 

テンパっていた俺は思わず疑問形で返してしまう。

俺は何度か深呼吸して落ち着き、改めて簪を見た。

簪は、照れたような不安そうな、何とも言えない表情をしている。

俺の答えを待っているんだろう。

正直、簪は可愛い女の子だと思う。

だが、今まで異性として見られる事は無いと思い込んでいたせいで、簪………

正確には、葵と優花以外の女性を『異性』として見ないように無意識にしていたと今になって気付いた。

その為、簪が『異性』として魅力的かどうか、判断に困ってしまったのだ。

このまま黙っていても前へ進まないと思った俺は、今の自分の気持ちを正直に話す事にした。

 

「……………正直に言えば、俺は今まで簪を『異性』として見ていなかった」

 

「ッ………!」

 

俺の言葉に、簪は僅かに震える。

 

「だけど、それは簪だけじゃない。俺にとって、葵と優花以外の女性は『異性』としての対象になり得ない…………いや、俺が葵と優花以外の女性から『異性』としての対象になり得ないと思っていたからだ」

 

「そんなこと…………」

 

「よく考えて見てくれ。俺より織斑の方が格好いいにしても、IS学園の生徒全員が織斑を選ぶという現実が、どれだけ異常な事かを………」

 

「………………ッ! 確かにおかしい………」

 

簪は俺の言葉を聞いてよく考えた結果、その異常性を認識した様だ。

 

「まあ、その異常の原因についてはもうわかってるし、俺が如何こう出来るような事でもない。何より葵と優花さえいれば、別に如何でもいい事だと思っていた」

 

「……………………」

 

簪は俯く。

 

「だが、簪はそれでも俺を好きだと言ってくれた。だから、その想いには誠実に答えたいと思う」

 

「えっ………?」

 

その言葉に、簪は驚いた顔をして顔を上げた。

 

「2人も恋人を持ってる時点で、3人目の恋人を作ることに何の躊躇いがあると思うかもしれないが、葵も優花も、俺の事が好きで、そして、俺も2人の事を本気で愛している。だから、簪が俺を好きだと言っても、俺自身が曖昧な想いのまま簪を受け入れる事は、俺自身も納得できないし、簪にも失礼だと思う」

 

「大士さん…………」

 

「だから、もう少し時間が欲しい」

 

「時間……ですか?」

 

「ああ。今まで、簪を『異性』………女の子としてちゃんと見ていなかった…………だから、これからは、簪を俺の事が好きな『1人の女の子』としてちゃんと見ていきたい………その上で、簪と一緒に居たいと俺自身が思うか、そうでないかを決めたいと思う」

 

「大士さん………はい、待ちます……! 大士さんが答えをくれるその時まで……!」

 

「すまん。優柔不断なようで悪いと思うが、今の俺にはこれが限界だ」

 

「いえ、ちゃんと私の想いに真剣に向き合ってくれるだけで嬉しいです……!」

 

「……そうか」

 

その話が一段落すると、簪は再び決意したような表情になる。

 

「大士さん……!」

 

真剣な表情で俺の名を呼ぶ簪。

 

「何だ?」

 

「お願いがあります………!」

 

「お願い?」

 

「はい………私には、向き合わなければならない人が居ます」

 

「………もしかして、楯無か?」

 

「………はい。前からずっと、姉さんとは向き合わなければいけないと思っていました………だけど、私1人じゃ勇気が持てなかった………だけど……今なら……大士さんが傍にいてくれれば、姉さんと向き合えると思うんです………! 一緒に………来てくれませんか………?」

 

不安に怯えながら………

それでいて『勇気』を持って楯無と向き合おうとしている簪の真剣な姿に心を動かされた。

 

「………わかった。いいぞ」

 

俺は頷いた。

 

「ッ! ありがとう………!」

 

簪はお礼を言うと、楯無の居る生徒会室へ向かう事にした。

 

 

 

 

 

コンコン、と生徒会室のドアをノックする。

一応生徒会役員の俺が、自然を装って先に入る事にする。

 

「楯無。俺だが入っていいか?」

 

「オレオレ詐欺はお断りでーす!」

 

そんな声が中から聞こえてきた。

俺は溜息を吐く。

 

「入るぞ」

 

俺は構わずにドアを開けて入室する。

楯無は、生徒会長専用の席に座っていた。

 

「あら? 幽霊生徒会役員の黒騎 大士さんじゃないですか? 生徒会室に顔を出すとは珍しい」

 

楯無がそう皮肉る。

ここ最近は簪の専用機に付きっきりだったから、こっちには殆ど顔を出していなかったりする。

 

「別に織斑と違って、俺には貸し出しの申請は来てないから別に良いだろ?」

 

当然ながら、現在織斑は放課後になると、各部活動に派遣されている。

 

「………で? ここ最近放課後になると行方を晦ます幽霊生徒会役員さん。生徒会長である私に何か御用?」

 

今更だが、ハジメがIS学園に居る事がバレると拙いので、人避けと認識阻害の結界を張っていたので、俺達が放課後に整備室に居た事を知る者は居ない。

なので、楯無も俺達の動向を把握できなかったのだろう。

 

「俺は唯の付き添いだ。楯無に用事がある奴を連れて来た」

 

「私に用事? 生徒会長の座を狙う誰かかしら?」

 

人と会う用事が無かった楯無は不思議そうにそう呟く。

俺は、その場を横に避けると、

 

「……………姉さん」

 

その後ろから現れた簪に、楯無は目を見開いた。

 

「か、簪ちゃん………!?」

 

楯無は見るからに狼狽える。

何の心構えも無く、疎遠になっていた妹といきなり会ったからだろうが。

簪は一瞬俺に目を向けた。

俺は、応援する意味を込めて、小さく微笑んでやると、簪も安心したように微笑んだ。

そして、決意した表情になって楯無の前に進み出る。

すると、

 

「………姉さん」

 

「な、何かしら………?」

 

真剣で落ち着いていた簪とは逆で、楯無は狼狽えたまま、驚愕の表情を隠せていない。

それでもそう聞き返すと、

 

「…………私と戦って」

 

「えっ!?」

 

楯無の表情が更に驚愕に包まれる。

 

「ど、如何して…………?」

 

「私はもう………姉さんから逃げたくないから………!」

 

簪は、震える手を握りしめながらそう言い放つ。

過去に何があったのかは知らないが、簪にとって楯無は、とても大きなコンプレックスなのだろう。

そんな楯無に、簪は今にも逃げそうな自分を奮い立たせて楯無と向かい合っている。

そんな『強い』簪を、俺は応援したくなった。

 

「わ、私は………!」

 

楯無が何か言いかけた時、

 

「逃げるなよ楯無」

 

「大士さん……!?」

 

俺が先に口を開く。

 

「簪は『勇気』を持ってお前と向かい合う覚悟をした。ならお前も、逃げずに簪と向かい合う『勇気』をもって応えてやれ」

 

「だ、だけど、簪ちゃんの専用機は………」

 

「専用機なら完成した」

 

「えっ…………!?」

 

やはり何かと言い訳をしてこの場を乗り切ろうと思っていたのか、楯無は言葉に詰まる。

 

「姉さん……!」

 

簪の強い言葉。

 

「…………わ、分かったわ………」

 

楯無は渋々と言った感じで了承する。

だが、このままでは逃げる可能性があると判断した俺は、

 

「優花、楯無の見張りは任せた」

 

扉の向こうにいた優花に呼びかけた。

 

「任せて。逃げようとしたら引き摺ってでも連れてくから」

 

優花が現れながらそう答えた。

 

 

 

 

 

男子生徒である俺の特権を使ってアリーナの使用許可を取ると、楯無と簪がアリーナの中央で向かい合っていた。

俺達は観客席からその様子を見ている。

真剣な簪とは違って、楯無はやや後ろめたそうな顔をしている。

まあ、こうやって向かい合っているだけマシだ。

 

「来て、『打鉄・凶鳥』……!」

 

簪さんが打鉄・凶鳥を纏う。

紺色をベースに水色のラインが彩られたそれは、楯無が想像していた打鉄弐式とはかけ離れているだろう。

 

「簪ちゃん!? そのISは……!?」

 

「この機体は打鉄・凶鳥。見捨てられたあの子が、大士さん達のお陰で新しく生まれ変わった姿………!」

 

俺って言うか9割以上ハジメのお陰だけどな。

 

「ッ……! ミステリアス・レイディ!」

 

楯無もISを纏う。

水色の装甲が各部にあるが、その面積は普通のISに比べて小さく、代わりに水のヴェールの様なものを纏っている。

 

「………ミステリアス・レイディ………姉さんの専用機………姉さんが………自分で組み上げた機体…………!」

 

簪が呟く。

 

「…………行くよ、姉さん」

 

「………いいわよ、簪ちゃん………」

 

簪が楯無に確認を取る。

そして、

 

「『グラビティ・インパクト・キャノン』、セット!」

 

両肩背面部に背負われていた2門の砲身が前面に展開。

 

「ッ!?」

 

「………発射!」

 

楯無が目を見開いた瞬間、その砲身から黒い閃光が放たれた。

楯無はその直前に回避行動を取っており、黒い閃光は楯無が居た場所を通り過ぎ、その地面を抉り取る。

 

「く、黒いビーム!? ううん、違う! 熱量兵器じゃない!?」

 

楯無は、抉り取られた地面が熱も何も持ってないので、唯のエネルギー兵器では無いと判断したようだ。

黒いビームに見えるのは、光が重力で捻じ曲げられて黒く見えるんだろう。

 

「重力衝撃砲………熱で溶解させるんじゃない。重力で『圧し潰す』武装………」

 

簪はそう説明する。

 

「重力兵器………!?」

 

楯無が驚いている間に、簪は楯無に向き直ると、再びグラビティ・インパクト・キャノンを向ける。

 

「くっ!」

 

楯無は発射と同時に回避行動を取り、大きく回り込みながら簪に接近する。

 

「いくら強力な武装でも、当たらなければっ………!」

 

グラビティ・インパクト・キャノンは取り回しが悪いと判断したのか、楯無は機動力で翻弄する作戦に出たようだ。

 

「そんな事は分かってる………」

 

簪が両手を突き出すと、その手に長大なライフルが2つ握られた。

 

「『グラビトン・ライフル』………」

 

そのライフルからグラビティ・インパクト・キャノンほどではないにしろ、同じような黒い閃光が放たれる。

これも原理は同じだが、グラビティ・インパクト・キャノンよりも取り回しを良くした武装だ。

まあ、最大出力で放てば、グラビティ・インパクト・キャノンと同等の威力は出る。

簪は出力を落として、連射が利く状態で次々と黒い閃光を放つ。

それでも当たれば大ダメージは必須だろが。

楯無もそれを分っているのか、黒い閃光を必死に回避していく。

 

「このっ!」

 

逃げ回るだけでは埒が明かないと思ったのか、楯無は円錐状のランスを呼び出すと簪に向ける。

すると、ガトリングが内蔵されていたようで、そこから無数の弾丸が放たれた。

しかし、

 

「……………………」

 

簪はそれを見ても動こうとはしなかった。

何故なら、弾丸が簪に届く前に見えない壁の様なものに遮られ、届かなかったからだ。

 

「バリア!?」

 

「『グラビティ・テリトリー』………重力結界だよ。ガトリング程度じゃ突破は出来ない」

 

「そんなものが…………」

 

楯無は見た事のない武装が次から次に出て来るので驚愕しているのか声を漏らす。

 

「勿論武器はこれだけじゃない」

 

簪の背中に装着されていたバックパックから、いくつかのパーツが分離。

空中で組み合わさって円形を形作る。

 

「『リープ・スラッシャー』……!」

 

その円形の外周に沿って火魔法が圧縮された刃を形成し、高速回転すると共に飛翔した。

それは不規則な動きで楯無に迫る。

 

「ッ!?」

 

楯無は何とか初撃を避けるが、水のヴェールに掠り、そのヴェールを軽々と切り裂いた。

 

「何て切れ味……!?」

 

だが、驚いている暇はなかった。

通り過ぎたリープ・スラッシャーが弧を描いてUターンしてくると、再び楯無に襲い掛かって来たのだ。

 

「これって……遠隔操作!? BT兵装なの!?」

 

驚愕する楯無。

幾度も襲い掛かってくるリープ・スラッシャーを躱していると、

 

「そっちにばかり気を取られている暇はないよ………!」

 

簪が楯無に接近し、サイドスカートに格納されているビームサーベルを引き抜く。

 

「たあぁぁぁっ!!」

 

ビームサーベルで斬りかかる簪。

 

「ッ!」

 

その一撃を飛び退く事で避ける。

楯無は左手に片手剣を呼び出すと、一振りする。

すると、普通の剣の様に見えたそれは、連節剣となって蛇の様に簪を襲う。

だが、バチンと弾かれる音と共に、グラビティ・テリトリーに弾かれた。

 

「これもっ!?」

 

楯無は連節剣を一振りすると剣状に戻す。

向かって来た簪のビームサーベルを受け止めようと剣を構えるが、一瞬ぶつかり合ったかと思うと、見る見るうちにビームサーベルに接触した楯無の剣が溶けていき、一瞬で溶断された。

 

「何て高出力…………!」

 

まあ最上級の火魔法が圧縮された剣だからなぁ。

楯無は一瞬でそのビームサーベルの危険性を認識すると、ランスに水を纏わせ、ドリルの様に回転させてビームサーベルを弾く。

 

「これなら何とか弾ける………!」

 

楯無がそう思った時、簪が先程とは反対のサイドスカートからもう1本のビームサーベルの柄を抜く。

そして、先程のビームサーベルの柄とドッキングさせると、ビームサーベルの刃が太く大きく変化した。

 

「…………あ、明らかに出力が上がってるわね………」

 

楯無は上ずった声でそう呟いた。

 

「はぁああああああっ!!」

 

簪は大剣となったビームソードを振るう。

楯無は先程と同じように水を纏ったランスで弾こうとするが、ビームソードとの接触部分の水が目に見えてわかるほどに蒸発していく。

 

「嘘っ!? ここまで!?」

 

楯無は一瞬で後ろに飛び退くと、間合いを開ける。

 

「………なんて………機体性能…………!」

 

楯無がその事に戦慄していると、

 

「……………本気を出して! 姉さん!」

 

簪が叫ぶ。

 

「えっ………?」

 

「そこまで私が頼りない!? 本気を出すに値しない!?」

 

「な、何言ってるの………? 私は本気で……」

 

「出してない! だって、姉さんが本気を出してるなら、いくら機体性能差があっても、ここまで一方的に押し込まれるはずが無い!」

 

簪はそう叫ぶ。

 

「確かに私は姉さんに比べれば頼りないかもしれない! だけど、何時までも何も出来ない存在じゃない!」

 

真剣な表情で簪は楯無を見つめる。

 

「ッ…………簪ちゃんが………あんな顔を…………」

 

楯無は何かに気付かされたように目を見開いた後、顔を伏せた。

 

「…………そうだね………私は簪ちゃんを頼りなく思っていた………ううん、違う。頼りなく『思うように』していたのね………簪ちゃんの『姉』でいたいが為に…………」

 

少しそうしていると、楯無は顔を上げた。

その目は、今までとは違う、迷いが無くなった目だ。

 

「…………来なさい簪ちゃん! あなたの『無敵のお姉ちゃん』が相手になるわ!」

 

楯無はそう言い放った。

 

「行くよ! 姉さん!」

 

簪は、脚部に装備されているマイクロミサイルを発射。

無数のミサイルが楯無に向かう。

 

「はっ!」

 

楯無が右手を前に突き出すと、水が壁の様になり、その水の壁に阻まれてミサイルが爆発する。

一瞬煙で覆い隠されるが楯無はすぐに飛び出してくる。

だが、それは1人では無かった。

合計で10人もの楯無が飛び出してきたのだ。

 

「アクア・ナノマシンの水で作ったダミー!」

 

「「「「「「「「「「そうよ、簪ちゃん。本物の私が分かるかしら?」」」」」」」」」」

 

10人の楯無は声を揃えてそう言う。

 

「ッ……! それならっ……!」

 

簪は両腰からドリルが前面に展開、更に開くことでドリルの内部からガトリング砲が顔を出す。

 

「これでっ!」

 

簪が叫ぶと同時に電磁加速された弾丸が次々と放たれる。

簪は薙ぎ払うようにそれを放ち、10人の楯無を次々に撃ち抜いていく。

すると、1人だけガトリングを水の壁で防いだ楯無が居た。

 

「防いだ……! あれが本物………!」

 

「そんな武器もあるなんて………お姉ちゃんビックリよ」

 

そう言う楯無だが、水の壁は強固でガトリングでは突破できない様だ。

すると、ガトリングの射撃を止め、ドリルの状態に戻し、片方を右手に装着した。

そしてドリルを回転させながら、楯無に突っ込んでいく。

 

「あの水の壁を抜く!」

 

高速回転するドリルが水の壁を穿ち、徐々に食い込んでいく。

ドリルの頭が水の壁を突破した時、

 

「ここでっ…………『ドリル・ブーストナックル』!!」

 

簪の右手からドリルが射出され、至近距離から楯無を襲う。

 

「ッ!?」

 

楯無は目を見開き、成す術無くそのドリルの直撃を受け…………

貫かれた。

 

「えっ!?」

 

簪は思わず声を漏らした。

そう、貫かれたのだ。

何の抵抗もなく、あっさりと。

それが意味する所は、

 

「これも、ダミー………!」

 

簪がそれに気付いた瞬間、楯無のダミーが爆発を起こした。

爆発自体はグラビティ・テリトリーが防いだが、視界が塞がれる。

 

「ッ………!? 本物は………!?」

 

簪は慌てて本物を探す。

その時、

 

「はぁああああああああっ!!」

 

直上から楯無がランスを構えて突っ込んできた。

 

「それならっ……!」

 

簪は迎撃の為にグラビティ・インパクト・キャノンを楯無に向け、発射する。

その瞬間、

 

「掛かったわね!」

 

「ッ!?」

 

楯無はそのまま急加速し、黒い閃光を紙一重で避けながら簪に接近する。

グラビティ・インパクト・キャノンの射線を完全に読み切った、達人級の見切りだ。

そして、グラビティ・インパクト・キャノンの放出が終わらない内に、楯無がランスを簪に突き立てた。

楯無は、攻撃の最中ならグラビティ・テリトリーは働かないと睨み、そしてそれは的中した。

楯無のランスの切っ先は、確かに簪の機体に届いた。

まあ、あの機体の装甲はアザンチウムでコーティングされているので、生半可な攻撃では抜けないが。

それでも、楯無の攻撃は終わらなかった。

楯無の水がランスを伝って簪の身体に巻き付く。

 

「姉さんっ………!」

 

「ただで負けるのも、カッコ悪いしねっ………!」

 

楯無はそう言うと、指をパチンと弾いた。

その瞬間、簪に巻き付いていた水が爆発を起こす。

当然だが、簪に接触していた楯無も爆発に巻き込まれる。

 

「………大丈夫か? あいつ………」

 

爆発に呑まれた楯無が心配になる。

やがて爆発の煙が晴れていくと、クレーターとなった爆心地の中央で、楯無と簪の2人が、ISを纏っていない状態で並んで倒れていた。

楯無の方は強制解除されたのかもしれないが、簪の方は自分で消しただけだろう。

すると、

 

「あ~あ! 負けちゃったか………!」

 

楯無は残念そうに。

それでも何処か清々しい声で倒れたままそう言った。

だが、

 

「ううん、違う………負けたのは私………」

 

簪は自分が負けだと言う。

 

「あれだけの機体性能差があるのなら、いくら姉さんが相手でも、無傷で勝てなきゃおかしい。それなのに、姉さんは私に軽々と攻撃を当ててきた………やっぱり姉さんは凄い……!」

 

簪は、本当に尊敬の念を込めてそう呟く。

 

「簪ちゃんも凄かったわ…………流石は私の自慢の妹ね………」

 

「……………お姉ちゃん…………」

 

「あは………そう呼ばれるの、何年ぶりかしら?」

 

楯無は嬉しそうに笑う。

 

「………ねえ、お姉ちゃん」

 

「何? 簪ちゃん」

 

「今度のタッグマッチ、私と組んで?」

 

「………もちろんOKよ。簪ちゃんならパートナーとして文句無しよ」

 

その言葉を聞くと、簪は寝ころんだまま右手を挙げて、隣で寝ころぶ楯無に見えるように差し出す。

それに気付いた楯無は嬉しそうに微笑むと、その手に自分の左手を重ね、しっかりと握りしめた。

もう2度と離れない。

そう誓うように、2人の手は互いにしっかりと握りしめ合っていた。

 

 

 

 

 

 







IS編第19話の完成です。
簪の専用機完成。
大士への告白。
楯無と簪の和解。
の3本でお送りいたしました。
やー、簪の専用機が物の見事にヒュッケバイン寄りに。
名前も安直過ぎたかな?
最初の餌食は一夏と考えていた人もいるかもしれませんが、最初の相手は学園最強の楯無に。
で、その楯無を歯牙にもかけない強さを発揮したこのISは規格外ですはい。
そんで勿論?一夏も餌食になりますよ。
次回をお楽しみに。

一夏の今後の扱いをどうするか?

  • アンチ路線を突っ切れ!
  • いやいや、矯正しましょう!
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