【Side 三人称】
簪の専用機が完成してから、また少しの時が流れた。
大士には直接関係の無い話だが、イベントの度に襲撃やトラブルが頻発するため、専用機持ちのレベルアップを兼ねた学年合同のタッグマッチが行われることになった。
まあ、大士は専用機持ちではないのでそのタッグマッチに出る事は無いが。
このイベントでも何か襲撃やトラブルが起きないか心配になったのは余談である。
決まったタッグとして、簪は以前決めた通り楯無と組み、一夏は何だかんだで箒と。
鈴音はセシリアと組み、ラウラはシャルロットと組むことになる。
あと、大士達は会ったことは無いが2年のフォルテ・サファイアと3年のダリル・ケイシーという生徒達が組んでいるらしい。
そして、タッグマッチ当日。
抽選の結果、第一試合は、簪、楯無チーム対一夏、箒チームとなった。
そして試合前、簪が楯無と一緒に控室で準備をしていると、
「…………ねえ、お姉ちゃん」
簪が楯無に話しかける。
「何? 簪ちゃん」
楯無が聞き返すと、
「お願いがあるんだけど…………」
少し遠慮がちに言いながら、その内容を話した。
それを聞いた楯無は、
「分かったわ、簪ちゃん。簪ちゃんのしたい様にすればいいわ」
優しく微笑んで簪の話を了承した。
「うん、ありがとう。お姉ちゃん」
簪はそうお礼を言うと、試合開始の時を待った。
一方、反対側のピットでは、
「………まさか、初戦から楯無さんが相手とは………」
「私はあの人の戦っている所は見た事無いが………そこまでなのか?」
箒が一夏に問いかけると、
「ああ………俺が戦ったのは生身でだが、手も足も出なかった。しかも、ロシアの国家代表って話だし………」
「国家代表!? 代表候補生ではなく!?」
「ああ。国家代表だって言ってた………」
「それが本当なら、一筋縄では行かないな………」
「ああ………だけど、負けるつもりは無いぜ!」
一夏はニヤリと笑う。
「俺もあの時よりかは強くなってるんだ! それに、箒も一緒に居るんだ。俺達が力を合わせればきっと勝てるさ!」
「わ、私が一緒だから………そ、そうだな! 私とお前が組めば勝てないわけはないさ!」
一夏の言葉で箒は頬を赤くしながら自信を持ってそう答える。
「ああ! 頼りにしてるぜ、箒!」
一夏たちは打倒楯無を掲げ、試合の時を待った。
やがて時間となり、簪は打鉄・凶鳥を。
楯無はミステリアス・レイディを纏ってピットからアリーナの中央へ飛翔する。
同じように、反対側のピットからも白式を纏った一夏、紅椿を纏った箒が飛翔してくる。
互いにアリーナ中央上空で向き合うことになる2人。
一夏と箒は、楯無に対して警戒心を露にしている。
そんな2人の様子に楯無はクスリと笑みを浮かべた。
「今日は負けませんよ! 楯無さん!」
一夏は雪片を右手に握ると、楯無に剣先を突き付ける。
「あら、凄い自信ね?」
楯無は余裕の表情でそう言った。
「もちろん! 負けっぱなしは性に合いませんから!」
一夏もニヤリと笑みを浮かべて言い返す。
その時、試合開始のカウントダウンが始まる。
それと同時にざわついていた観客達が静まり返っていき………
ゼロを示したと同時に一夏が一気に飛び出した。
「うぉおおおおおおっ!!」
一夏は雪片を振り被って楯無に斬りかかる。
しかし、楯無は予想していたのかひらりとそれを避けた。
「あら、一夏君たら大胆ね。そんなにおねーさんと踊りたかったの?」
楯無は余裕の表情でそう言う。
「ええ! 楽しみにしてましたよ!」
楯無の揶揄い半分の言葉に動じずに言い返す一夏。
「あら、それは嬉しいわね…………けど残念ね。今日の一夏君のダンスパートナーは私じゃないわ!」
楯無はそう言うと、武器を構えないまま後ろへと大きく下がる。
「なっ!? どういうつもりですか!?」
楯無の行動に一夏は驚愕する。
「今言った通りよ。今日の一夏君の相手は、私じゃないわ」
「俺達如き、自分が手を下すまでもないって事ですか!? 舐められたもんですね!」
楯無の言葉を挑発と受け取ったのか、イラつき気味に言い返す一夏。
尚も楯無に向かって行こうとする一夏。
だが、その眼前を黒い閃光が遮った。
「ッ!?」
「一夏っ!」
一夏が驚愕すると同時に箒が声を上げる。
「何だ!?」
一夏が黒い閃光の発射元に視線を向けると、簪が両肩のグラビティ・インパクト・キャノンを向けて立っていた。
「あの子は!?」
一夏が簪を見て驚愕していると、
「簪ちゃん………私の妹よ」
「楯無さんの………妹………?」
「そして一夏君。あなたの相手は私じゃなくてあの子。君には、あの子と向き合わなければいけない借りがある」
「借り…………?」
思い当たるどころか、初対面である筈の簪相手に、『借り』があると言われて一夏は困惑する。
すると、
「…………織斑………一夏…………」
簪が睨み付けるよう目で一夏を見つめながら、その名を呟く。
「ッ………!?」
何故そんな目で見られなければいけないのか分からなかった一夏は、僅かに戸惑った。
「一応聞くけど………君とは初対面だよな?」
一夏はそう尋ねる。
「………そう。私達が直接顔を合わせるのは、これが初めて………」
簪は静かにそう告げる。
一方、一夏は過去に会っていて、自分が忘れているだけという失礼をしたという訳ではないという事が分かってホッとしていた。
「………じゃあ、何で俺をそんな目で見るんだ?」
相変わらず半分睨み付けられるような目で見られている一夏は、率直にそう聞く。
「……………………」
簪は一度目を伏せると、再び目を開き、
「……………あなたは………自分がどれだけ特別待遇を受けているか理解してる?」
そう問いかけた。
「えっ………? ま、まあ、アリーナを優先的に借りれたり、1人部屋を融通してくれたりしてくれてるのは分かってるつもりだけど………」
一夏の答えを聞くと、簪は大きく溜息を吐いた。
「私が言ってるのはそんな小さな事じゃない。その白式………『専用機』を貰うという事が、どれだけ『特別』な事かという事………!」
「それは、俺のデータ取りの為で…………」
「そう………理由はデータ取りの為かもしれない。けど、その『専用機』を1機作ることが、どれだけ大変な事かを、あなたは理解していない………!」
簪は話を続けながら、一夏を睨み付ける。
「『倉持技研』…………聞いた事あるよね………?」
「それって………白式の開発元の…………」
「そう。世界初の男性IS操縦者であるあなたが発見されてすぐ、政府関係者はあなたのデータを取る為に倉持技研に専用機の開発を指示した」
「それが白式…………」
一夏は感慨深そうに呟く。
「そう…………だけど、倉持技研では、既に別の『専用機』の開発が始まっていた所だった…………」
「えっ………?」
「その倉持技研に専用機2機を同時に入学時期に間に合わせられるような技術も人員も無かった。だから倉持技研は、先に始まっていた専用機の開発を無期限で凍結………白式の開発に全ての人員を回した」
「へ、へぇ………?」
一夏は初めて聞く事だったのか、ポカンとしている。
その顔は、だから何?と言いたげな表情だ。
「……………専用機の開発が止められたという事は、その専用機が与えられるはずだった人物が居た事に気付かないの?」
簪は、心底呆れた目を向ける。
「そ、そうか………! それは残念だったな………!」
一夏は今気付いたようにハッとしてそんな事を言う。
だが、その一言は簪にとって許せるものでは無かった。
「……………『残念』…………あなたは貰えるはずだった専用機が貰えなくなった事を、『残念』の一言で済ますんだね………!」
一夏を睨む簪の目には、怒りの炎が燃えていた。
「ッ………!?」
予想外の反応に、一夏はたじろぐ。
「確かに何の苦労もなく『専用機』を手にした貴方にとっては、専用機は『残念』の一言で済ませられるものなのかもしれない………! だけど、普通のIS乗りにとって『専用機』は血の滲む努力を経て、その実力が認められた証明! その血の滲む努力を、世界初の男性IS操縦者とは言え、ぽっと出の初心者に無かったことにされた気持ちが、あなたに分かる!?」
大人しそうな簪が、激しく感情を露にした事で、一夏はハッと気づく。
「もしかして………その貰えるはずだった専用機を貰えなかった子って………」
一夏はそう言いながら簪を見つめる。
「…………そう、私だよ………あなたと白式の所為で、今までの努力を無にされたのは………」
簪は静かに告げる。
すると、
「そ、そんなのは一夏の所為ではあるまい!?」
箒が叫んだ。
「一夏はほぼ強制的にIS学園に入学させられた身だ! そんな専用機などの開発には何の関係も無い!」
「……………………」
簪は、叫んだ箒を見て再び溜息を吐く。
「……………そういえば、あなたもISの開発者の肉親と言う理由で、何の苦労もなく専用機を手にする事が出来たんだったね……………」
一夏と箒。
どちらも何の苦労もなく『専用機』を手に入れる事が出来たという事では一緒だ。
そんな箒の言葉など、簪には届かない。
「…………確かに、あなたには直接的な責任は無い……………言うなればこれは私の我儘………八つ当たりに近いね……………」
「そうだろう!? それにお前は今、専用機を持っているではないか! 多少遅れたかもしれんが、専用機を貰うことが出来たのだろう!」
箒が簪の纏う打鉄・凶鳥を指差してそう言った。
「…………………勘違いしないで欲しいな……! 私の専用機の開発は結局は再開されなかった………この機体は、大士さんや南雲さんの協力を得て完成した、私だけの『専用機』! 倉持技研なんて関係無い!」
「大士…………!?」
大士の名が出た事で一夏は目を細める。
「私は、この機体であなたとその白式を倒す。それが、私のケジメ…………!」
簪は両手に『グラビトン・ライフル』を呼び出す。
「ッ!?」
簪が武装を展開したことで、一夏達も思考を一気に戦闘モードに切り替える。
グラビトン・ライフルから放たれた黒い閃光を避ける一夏と箒。
「これは……さっきの攻撃と一緒か!」
色こそ黒いが、唯のビーム系の攻撃と判断した一夏は、左腕の雪羅を構え、
「雪羅! シールドモード!!」
左腕に零落白夜のシールドを展開して、一気に接近する。
エネルギー系統の攻撃には、絶対的な防御を誇る盾。
得意げな表情で、簪に向かって一直線に向かってくる一夏。
「……………………………」
そんな一夏に向かって、簪は無言で引き金を引いた。
銃口から放たれる黒い閃光。
「無駄だ! この零落白夜の盾の前には、どんなエネルギー系統の武器でもっぐあぁぁぁぁぁぁぁっ………!?!?」
その閃光は零落白夜の盾には何の影響も受けずにすり抜け、一夏に直撃して吹き飛ばした。
一夏はそのまま地面に墜落する。
「一夏っ!?」
箒は驚愕しながら一夏の元へ反転する。
「大丈夫か!? 一夏!」
箒が一夏を抱き起こしながらそう呼びかけると、
「うぐぐ………一体何が………? どうして零落白夜が通じなかったんだ………?」
一夏は疑問に思いながら、体を起こす。
すると、
「これはエネルギーを利用した光学兵器じゃない………重力衝撃砲………エネルギーの熱で焼き尽くすんじゃない。重力で圧し潰す武装。エネルギーを無効化するだけの『零落白夜』は、この武器の前には無意味」
「何だと………!」
千冬と同じ
その零落白夜を『無意味』と言われた事が、遠回しに千冬を馬鹿にしているように聞こえた一夏は怒りを覚える。
怒りを感じながらも、一夏は今のダメージを確認する。
そして、それと同時に驚愕した。
「今の一撃で、シールドエネルギーが半分以上減ってる!?」
「何だと!?」
予想以上のダメージに一夏も箒も驚愕の声を漏らす。
「くっ……! 迂闊に近付くのは危険だ。こっちも遠距離攻撃で………!」
一夏はそう判断すると、左手の雪羅の掌を簪に向けると、そこから荷電粒子砲を発射する。
「うぉおおおおおおおっ!!」
荷電粒子砲を連射する一夏。
だが、元々射撃が得意なわけではない一夏の命中率は非常に悪い。
簪は先程から動いていないのだが、一夏の射撃は逸れていくばかりで当たらない。
「………………………下手な射撃」
簪は呆れた様に呟く。
と、その時、漸く1発が簪の直撃コースに乗る。
「…………………………」
だが、それに気付いても簪は動こうとはしない。
何故なら、『グラビティ・テリトリー』の重力結界によって荷電粒子砲はあっさりと四散し、簪に届くことは無かった。
「なっ!?」
「この機体には重力の結界による防御機能がある。その程度の荷電粒子砲の出力じゃ破れないよ」
簪は静かにそう言う。
「それならば!」
箒が叫ぶと紅椿のパーツの一部が分離。
2つの自立機動兵装となってエネルギーの刃を放出しながら簪に向かう。
「………『リープ・スラッシャー』………!」
簪はバックパックから複数のパーツを分離。
空中で合体させることで円形となり、炎の刃を発生させる。
リープ・スラッシャーは箒の放ったエネルギーの刃に向かっていき、交差する。
そして、箒の放った自立機動兵装が2つとも真っ二つに切り裂かれ、爆発した。
「なっ……!?」
箒が驚愕の声を上げる。
だが、驚いている暇はなかった。
自立機動兵装を切り裂いたリープ・スラッシャーは、そのまま箒に襲い掛かって来たのだ。
「ッ!?」
それに気付いた箒はすぐに気を取り直して飛び立つ。
何度か躱すが、執拗に追ってくるリープ・スラッシャーに業を煮やしたのか、2本の刀を出してそれを握ると、
「このような物、叩き切ってくれる!」
リープ・スラッシャーに向かって刀を振り下ろした。
その結果は、
「なっ…………!?」
箒は呆けた声を漏らす。
何故なら紅椿の2本の刀は、根元からポッキリと断ち切られたからだ。
そして、
「ぐぁああああああああああああああああっ!?!?!?」
箒はリープ・スラッシャーの刃の直撃を受けた。
シールドバリアを貫通し、装甲を深く切り裂き、絶対防御を発動させる。
「箒ッ!?」
一夏は慌てて箒の元へ飛ぶ。
リープ・スラッシャーが後方に抜けた時、箒は力無く墜落しそうになっており、一夏はその箒を受け止める。
「箒………! なっ!?」
箒を受け止めた一夏は驚愕する。
篠ノ之 束が作った第四世代型ISである紅椿の装甲が大きく切り裂かれ、その傷跡を晒していたからだ。
「箒! 大丈夫か!?」
一夏が箒に声を掛ける。
「う、ううっ………何とか…………だが、今のでシールドエネルギーがレッドゾーンに突入してしまった………」
箒は何とかそう言う。
一夏は箒を地面に下ろすと、
「くそっ! このまま黙ってやられるかよ!」
一夏は雪片を握りしめると簪に向かって飛び立つ。
「一夏!」
箒は手を伸ばすが一夏は飛んでいってしまう。
「一夏…………」
箒はその背を見つめる。
その時、簪の脚部装甲から放たれた無数のミサイルが一夏を襲う。
多少は斬り払うも、多くの攻撃を受け、シールドエネルギーを削られる一夏。
「くっ………! うぉおおおっ! 負けるかぁっ!!」
それでも尚簪に向かっていき、零落白夜の刃を振り下ろした。
だが、その一撃もグラビティ・テリトリーの前に止められる。
「なっ!?」
「さっきも言った筈。この機体の防御機能は重力場による結界。エネルギー無効化能力の零落白夜は通用しない………!」
簪がそう言った瞬間、後腰部のドリルが前面に展開。
そのドリルが開くと内部のガトリングレールガンが露になる。
「ッ!?」
一夏が目を見開いた瞬間、ガトリング砲が火を噴いた。
「ぐあぁあああああああああっ!?」
至近距離から無数の弾丸を受け、シールドエネルギーがガリガリと削られていく。
その攻撃が終わった時、白式のシールドエネルギーはほんの僅かしか残ってなかった。
「一夏!」
箒は思わず叫ぶ。
だが、
「…………俺は……負けない………!」
一夏は尚も剣を構える。
「一夏…………?」
「俺は…………諦めない…………!」
箒にはそう言う一夏の背が大きく見えていた。
その背中を見ていた箒にはある願いが強くなった。
(私は…………共に戦いたい…………!)
強く、強く願う。
(あの背中を守りたい!)
その時、紅椿から淡い黄金の光が放たれる。
「これは…………!?」
ハイパーセンサーからの情報で、シールドエネルギーが急激に回復していく。
「エネルギーが………回復………?」
そして、箒の目の前にメッセージが映し出される。
「『絢爛舞踏』…………これが紅椿の………
その能力を目にした箒は、立ち上がって一夏を見つめる。
「行くぞ………紅椿!」
一夏に向かって飛び立つ。
「一夏ぁっ!」
一夏に向かって呼びかける箒。
「箒!?」
黄金の光を放ちながら自分に近付いてくる箒に、一夏は驚愕する。
「一夏! これを受け取れ!」
箒が差し出した右手に、自分の手を重ねる。
すると、紅椿の黄金の光が一夏の白式も覆い、尽き掛けたシールドエネルギーを回復させていく。
「これは………! エネルギーが………!?」
その事実に一夏は思わず箒を見る。
「一夏………勝つぞ………!」
「…………おう!」
エネルギーが回復したことで、自信を取り戻したのか、笑みを浮かべる一夏。
それを見ていた簪は、
「紅椿の能力はエネルギーの増幅能力………白式のエネルギー消滅能力とはまるで逆………白式の能力はエネルギー消費が激し過ぎると思ってたけど、この紅椿との同時運用を想定していたのなら、辻褄は合う………?」
その能力を見て、白式との相性を踏まえて分析していた。
一夏達が簪に向き直ると、
「勝負はここからだぜ!」
「……………いいよ。気が済むまで相手してあげる」
一夏の言葉に、静かに返す簪。
「うぉおおおおおおおおおおおおっ!!」
一夏が簪に向かって零落白夜の刃を振り被って突っ込んでくるのだった。
―――30分後。
「ぐあぁぁぁっ!?」
何度目になるかも分からない悲鳴を上げて、白式を纏った一夏が吹き飛ばされ、地面を転がる。
「一夏!」
そんな一夏に箒が駆け寄り、能力によって白式のエネルギーを回復させる。
「サンキュー箒………これでまだ戦える………!」
一夏はそう言いながら立ち上がる。
そんな一夏を見て、
「…………まだやるの?」
簪は半ば呆れたような声色で問いかけた。
「当たり前だ! 俺は何度だって立ち上がるぜ!」
一夏は威勢良くそう言う。
「………………………」
簪は溜息を吐く。
一夏は先程から同じことを繰り返すだけだ。
箒に回復して貰い、真っ直ぐ突っ込んで来て簪に返り討ちに合う。
そしてまた回復。
その繰り返しだった。
簪は、一夏がどの様な策を講じて来るかを慎重に見極めていた。
だが、一夏は先程からがむしゃらに突っ込んでくるだけで、何か仕掛けてくるような気配が感じられない。
一夏が再び剣を構えた時、
「………………………もういい」
簪は呟いた。
「………何だって?」
簪の言葉の意味が理解できなかったのか、一夏は聞き返す。
「もういいと言った。もう、あなたの底は知れた………」
「ッ!? どういう意味だ………!?」
一夏がムッとなって言い返す。
「そのままの意味。あなたはさっきからがむしゃらに突っ込んでくるだけ。何の策も講じない猪突猛進…………あなたはその程度だったという事」
「言ってくれるじゃねえか………!」
「その何度も立ち上がる根性だけは褒めてあげる。だけど、それだけじゃ意味はない」
「何だと!?」
「諦めずに立ち上がる。確かにそれは大事な事…………だけど、あなたはその先がなっていない」
簪は一夏を見据える。
「『諦めない』………そんなのは当然の事。諦めない上であらゆる策を講じ、一筋の光明を見つけ出してその光明を掴む為に持てる力の全てを尽くす。それが最善を尽くすという事。それなのに、あなたは同じことを何度も繰り返し、何の策も見出さず、唯無暗矢鱈に突っ込むだけ。単なる根性論だけで勝てるほど、『勝負』の世界は甘くないよ」
「ッ…………! だったら、俺達を倒してみろよ……! 言っておくが、俺は何度やられようと、何度だって立ち上がるぜ………! 何度だってな!」
一夏はそう言い放つ。
「…………………言った筈。根性論だけで勝てるほど、『勝負』の世界は甘く無いと」
そして、簪は静かに告げた。
「…………『オーバードライブ』…………!」
その瞬間、打鉄・凶鳥の機体が赤く染まる。
「なっ!? それは………!?」
一夏が言葉を言い切る事は出来なかった。
一瞬で消えたかと思うほどのスピードで簪が上空に移動したのだ。
簪はそこで2門のグラビトン・ライフルを向け、放つ。
しかし、一夏達に直撃はさせず、その近くに撃ち込むことで一夏の動きを阻害する事が目的だ。
更に脚部のマイクロミサイルを無数に放ち、これも一夏を囲む様に着弾させる。
それによって一夏達はアリーナの中央に固められる形になる。
「通常では、この機体でも重力衝撃砲は2門同時斉射が限界………だけど、この状態なら………!」
簪は両肩のグラビティ・インパクト・キャノン。
そして、両手のグラビトン・ライフルを上空から一夏に向ける。
「これが………打鉄・凶鳥の最大威力砲撃…………!」
4門の重力衝撃砲の砲口に、黒い光が集中する。
「なっ………………!?」
一夏はその光景を呆然と見ている事しか出来ない。
そして次の瞬間、
「『フル・インパクト・キャノン』!!」
4条の黒い閃光が一夏に襲い掛かる。
「う、うわぁああああああああああああああっ!?!?!?」
一夏はその黒い閃光に成す術無く呑み込まれた。
そして、白式のシールドエネルギーは、一撃でゼロとなった。
IS編第20話です。
本当ならゴーレムⅢの襲撃まで書きたかったけど、書ききれなかった。
何か簪が悪役っぽくなってしまった気が………
まあ、フル・インパクト・キャノン撃てたから良しとしておこう。
因みに次回は、打鉄・凶鳥にハジメが組み込んだ隠された能力が明らかに………
まあとある、感想読んでて思いついたネタなんで、多分同じような事を考える人は出て来るんじゃないかなぁ、位のネタです。
予想出来なかったら多分驚くだろうと思いますけど。
言っておきますが、スパロボ関係無しです。
まあ次回をお楽しみに。
一夏の今後の扱いをどうするか?
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アンチ路線を突っ切れ!
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いやいや、矯正しましょう!