ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第25話 楯無、陥落

 

 

アルゴモンとの戦いを終えた俺達が、現実世界へ戻って来る。

すると、目の前に織斑先生が仁王立ちしていた。

 

「まずはご苦労だったと言っておこう。良くやった」

 

織斑先生からお褒めの言葉を頂く。

チラッと視線をズラせば、楯無は起き上がっており、簪が泣きながら抱き着いていた。

すると、俺達に気付いたのか立ち上がり、こちらに歩み寄ってくる。

 

「大士さん……葵さん……優花さん……それに、ドルモン、リュウダモン、ハックモンも………助けてくれて、ありがとう………」

 

楯無はそう礼を述べる。

 

「ッ……! あのっ……お姉ちゃんを助けてくれて、本当にありがとうございます!」

 

続けて簪が勢い良く頭を下げる。

 

「礼は要らないさ。言っただろ? 俺が戦う理由は、自分の為。そして、自分の『大切』の為だって…………俺は自分の『大切』の為に戦っただけだ」

 

簪はそれを聞くと何かに気付いたようにハッとした後、徐々に顔を赤くしていく。

多分、俺の言いたいことに気付いたんだろう。

 

「た、大士さん………! それって、もしかして…………!」

 

簪は顔を赤くしたまま期待に満ちた表情を浮かべた。

俺は、少し照れ臭かったが、

 

「簪も…………俺の『大切』の1つになったって事だ」

 

俺の本音を伝える。

 

「ッ……………! はい!」

 

簪は、一瞬嬉し恥ずかしと言った表情を浮かべたが、すぐに満面の笑みを浮かべて返事をした。

 

「………………良かったわね。簪ちゃん………」

 

楯無は優しそうに。

だが、それでいて何処か寂しそうな笑みを浮かべた。

簪が姉離れしていくのが寂しいのかね?

 

「うわ…………まさかの3人目………」

 

鈴が俺達のやり取りの真意に気付いたのかそう漏らす。

でも、思ったよりも驚いて無いのは何でだ?

 

「簪の気持ちは前にも聞いたが……………3人目とはふしだらな…………だ、だが、気持ちが通じたというのであれば…………」

 

篠ノ之さんも何やら唸っている。

俺は、こうなると織斑がまた突っ掛かってくるかと思ったのだが、

 

「……………なあ? 今のやり取りってどういう意味だ?」

 

そんな事を鈴や篠ノ之さんに訊ねており、聞かれた2人はガックリと首を垂れた。

そう言えば織斑は恋愛に関しては唐変木だから、こんな遠回しの告白が分かる訳も無いか。

すると、

 

「んんっ! 互いの絆を深め合うのは結構だが、そう言う事は他所でやれ」

 

織斑先生が咳払いをして、俺達を窘める。

 

「すいません………」

 

確かにその通りなので、俺は謝った。

 

「………さて、一先ず聞きたいことが、奴はデジモンで間違いなかったんだな」

 

「ええ。アルゴモンは、正真正銘のデジモンです」

 

「なるほど。そいつがIS学園のシステムに侵入し、トラブルを引き起こしたという認識で良いのか?」

 

織斑先生がそう確認してくる。

だが、俺の見解は違う。

 

「いえ、それにしてはIS学園のシステム以外でアルゴモンの影響が無いことに疑問が残ります。もしアルゴモンが別の所から侵入してきたのだとしたら、既に相応の被害が出ている筈ですし、アルゴモンのデジタマがIS学園のシステム内に偶々流れ着くにしても、外部から切り離されたIS学園のシステム内に流れ着く可能性は極めて低いと思います」

 

「ふむ………お前の推測は?」

 

「当てずっぽうで言うなら、IS学園のシステムに侵入した何者かがアルゴモンのデジタマを放ち、デジタマから孵ったアルゴモンが活動を開始した。と言うのが一番筋の通る話です。証拠はありませんが」

 

「なるほど…………そうなると、あのデジモンは陽動だった可能性が高いな………」

 

織斑先生がそう言う。

 

「陽動……ですか?」

 

「おそらくだが、あのデジモンがあそこまでの能力を持っていた事は、侵入者にも予想外だったのだろう。ただ、侵入者の目的を果たすまでの時間稼ぎに奴を使おうとした可能性が高い」

 

「…………そう考える理由は?」

 

「……………さてな。お前と同じ当てずっぼうだ」

 

織斑先生はそう言うが、その言葉には何処か確信めいた響きがあった。

 

「…………そうですか」

 

まあ、深く突っ込む理由も無し。

その侵入者が俺の『大切』を傷つけようとするなら、相応の報いをくれてやるだけだ。

すると、

 

「さて、聞きたいことはまだある。先程の黒い騎士の様な姿は一体なんだ?」

 

織斑先生がそう聞いてくる。

まあ、聞かれるだろうという事は予想していた。

 

「先程の姿は、俺とドルモンが1つとなって究極体に進化した『アルファモン』です」

 

「アルファモン…………」

 

「まあ、簡単に言えば、俺とドルモンの『切り札』ですね。『強すぎる力』だと思ってますので、いざと言う時以外には使わないようにしていますが」

 

すると、楯無が俺をジッと見ている事に気付いた。

 

「……………何だ?」

 

「………いえ、7年前に私達を助けてくれたのは、大士さんだったんですね、って」

 

俺は、楯無と最初に会った時に、黒い騎士のテイマーの事を教えて欲しいと言われた事を思い出した。

 

「…………いや、黙っていたのは悪いと思うが、お礼を言いたいからその人に会わせて欲しいと本人に言われて、その場で俺だと言えるほど神経が図太くなかっただけだ」

 

「………まあ、大士さんがそこで名乗り出る性格じゃないって事は、分かってますけど………」

 

楯無は少し呆れた様に溜息を吐いた後、俺の目を見て、

 

「その事についてもお礼を言わせてください。あの時、私と簪ちゃんを助けてくれて、ありがとうございます」

 

もう一度頭を下げた。

 

「あれは俺が俺の家族を護る為に勝手にやっていた事だ。『ついで』に助かっただけだから気にしなくていい」

 

「もう……! こう言う時位素直にお礼を受け取ってください……! 理由は如何あれ、私と簪ちゃんは大士さん達に命を救われたんです……! 相手に気負わせないようにするその気持ちは美徳と言えますけど、逆にしっかりとお礼を受け取って貰った方が嬉しい時もあるんです!」

 

楯無はプンスカと言わんばかりに腰に片手を当て、反対の手の指を立てて、軽く叱るような仕草で俺に言い聞かせる。

 

「お、おう………?」

 

楯無の押しに、何故か逆らえなかった。

それに、何となくだが、距離感が今までよりも近く感じた。

 

「あはは。一本取られたね、大士」

 

ドルモンが笑いながらそう言う。

 

「さて、これで任務は完了だ。言うまでも無いが、任務内容については他言はするなよ。デジモンの事についてもだ。更識姉と黒騎は、念の為に医療室で検査を受けろ」

 

「楯無はともかく………俺もですか?」

 

「そうだ。あれ程の攻撃の直撃を受けてボロボロになったのだ。検査の1つ位受けておけ」

 

「いや、その時のダメージはもう葵の〝再生魔法〟で治ってますから………」

 

「ほう? お前は私達教師に、『本来なら塵も残らない程の攻撃を受けたのに、何もせずに放っておいた』というレッテルを張りたいのか?」

 

「…………………」

 

似たような事を、以前自分が言ったので、それを否定することは出来ない。

 

「………了解しました」

 

俺は大人しく頷いておいた。

 

 

 

 

 

 

【Side 楯無】

 

 

 

 

 

織斑先生の指示で、医療室で精密検査を受けた私は、特に問題無しとの診断結果が出た。

念のために、今日はこの医療室のベッドでお世話になる事が決まっている。

だけど、私は自分自身の身体に異常を感じていた。

胸のドキドキが収まらず、『彼』の事を考えるだけで顔が熱くなる。

 

「ううっ…………なんでかなぁ…………?」

 

そんな風に呟いてしまうけど、その理由については分かっている。

私は、『大士さんに惚れてしまった』のだ。

 

「そりゃ7年前に助けてくれた騎士様だったし、今回も命を救われたけどさぁ………」

 

昨日まで…………

ううん、大士さんがアルファモンに進化する直前まで、彼の事を『無い』と思い続けていたのに……………

大士さんがアルファモンに進化した瞬間に全てを察してしまった。

それと同時に、心の中で何かが砕けた様な音が聞こえたかと思うと、『無い』が『有り』に変わった。

そして、今までの大士さんの行動や、言動が改めて脳内を駆け巡った。

まるで、『有り』の状態でもう一度大士さんとのやりとりを行ったかのような感覚に陥り、駄目押しとばかりに直前に言われたセリフ、『俺は『世界』を救いに来たんじゃない………俺は、『お前』を助けに来たんだ………!』が止めとなった。

今までダムに塞き止められていて、溜まりに溜まった大士さんへの好意と言う感情が、限界を超えてダムを崩壊させ、一気に心に流れ込んできたような感覚だった。

私はそれに耐えられずに、一気に『好き』になってしまったのだ。

 

「………………簪ちゃんも居るのに…………」

 

私はベッドの掛布団を顔まで被る。

 

「…………違う………私、簪ちゃんに嫉妬してるんだ…………」

 

大士さんに受け入れられた簪ちゃんに。

大士さんの『大切』になる事が出来た簪ちゃんに…………

 

「………………いいなぁ…………」

 

そう呟いてハッとなった。

無意識に言葉が漏れてしまうほど、私は大士さんを『好き』だという事を自覚する。

 

「ううっ………!」

 

誰も見てない筈なのに、私は恥ずかしくなって枕に顔を埋める。

と、その時扉が開き、

 

「はぁ………葵の〝再生魔法〟で治してもらったから、大丈夫だって言ってるのに……」

 

その声を聞いて、私の心臓は飛び跳ねたかと思うほどに高鳴った。

大士さんの声だ。

 

「一晩はここのベッドで寝てろ……か」

 

どうやら大士さんも、私と似たような理由でこの医療室に泊まる事になったみたい。

大士さんは、私が居る事に気付いてないのか、隣のベッドに潜り込んだ。

隣に大士さんが居ると考えただけで、心臓のドキドキが止まらない。

 

「…………………つっても退屈だな…………」

 

大士さんは独り言を呟く。

でも、ここまで大きな声で喋ってるのに、何も反応しないのは変だと思い、私は声を掛ける事にした。

 

「たっ、大士さん…………!」

 

上手く話し始める事が出来ずにどもってしまった。

 

「ん……? 今の声………楯無か?」

 

「は、はい……」

 

大士さんの反応に、私は肯定する。

 

「カーテン開けても大丈夫か?」

 

「あ、だ、大丈夫です………」

 

私が頷くと、私の使っているベッドと隣のベッドを遮っていたカーテンがシャッと開く。

すると、カーテンの向こうに大士さんの姿が見えた。

その姿が見えただけで、私は嬉しさを感じている。

 

「楯無も居たのか」

 

「は、はい………念のために………」

 

「そうか、俺もだ」

 

大士さんはフッと笑みを浮かべる。

その笑みに、顔が更に熱くなった。

ううっ、私ってこんなにチョロかったの?

私は赤くなっているであろう顔を隠すために、掛布団で顔の下半分を隠す。

でも、その行動を怪訝に思ったのか、

 

「如何した? 何処か調子でも悪いのか?」

 

「い、いえ………そう言う訳では…………」

 

そこで一旦会話が途切れてしまう。

 

「…………………」

 

「…………………」

 

少しの沈黙の後、

 

「た、大士さん………!」

 

私は思い切って話しかける。

 

「ん………?」

 

「重ねて言いますが、助けてくれて、本当にありがとうございます」

 

私は本心からのお礼を述べる。

 

「気にするな………って言うべきじゃないな。どういたしまして」

 

大士さんは、さっきの私の言った事を覚えていたのか、あっさりと感謝の言葉を受け取った。

 

「あの………どうしてあそこまで傷付いても、私を助けてくれたんですか?」

 

「言っただろ? お前が死ねば、簪が悲しむ」

 

その言葉を聞くと、やっぱり『簪ちゃんの為』と言う理由で私を助けたんだと寂しく思ってしまう。

 

「それに、これも言ったがお前の事は嫌いじゃない。変な意味じゃないが、十分『好き』な部類に入ってるんだ。あの程度で見捨てる事はしない」

 

でも、続けて言われた言葉に私はキュンとしてしまう。

『特別』な意味は無くても、『好き』と言われた私は嬉しくてたまらなかった。

だから、私は更に聞いてしまう。

 

「だったら、どの位の相手だったら見捨ててました?」

 

私は意地悪な質問だ、と自分でも思った。

『アルファモンでも勝てないぐらいの相手だったら』、という答えを勝手に予想して、その位の答えが聞ければ私は満足だった。

そんな私の意地悪な質問に対する大士さんの答えは、

 

「…………………そうだな。あの状況であれば、例え『神』が相手だろうと見捨てる事は無かった、と言っておこう」

 

「ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?!?」

 

私の予想を遥かにぶっちぎった物だった。

何処まで本気か分からない。

だけど、私の経験上からも、大士さんの言葉に嘘は感じられない。

その事実が、『大士さんが好き』という感情を溢れさせる。

これ以上我慢出来そうに無かった。

 

「楯無………? どうかしたか?」

 

「……………………………………刀奈」

 

「はい?」

 

「更識 刀奈…………………それが、私の名前です」

 

だから教えてしまった。

『家族』にしか教えてはいけない、私の真名を………

 

「それなら『楯無』と言う名は………」

 

「『楯無』は、更識家の当主が代々受け継ぐ世襲名です」

 

「なるほど…………」

 

大士さんは納得したように呟くと。

 

「………………………刀奈」

 

その名を呼ばれた瞬間、ドキィッと痛いほどに心臓が高鳴る。

 

「なっ……! なんですか………!?」

 

私は何とかそう返した。

 

「これからはそう呼べばいいのか?」

 

「ッ……! い、いえ………普段は楯無でお願いします。『刀奈』と言う名は………その………2人きりの時に…………」

 

私は思わず尻すぼみになってしまう。

すると、

 

「………そう言う名前って、俺に教えてよかったのか? 限られた人にしか教えちゃいけない類の名前じゃないのか?」

 

大士さんの質問は、余りにも的を射た質問だった。

 

「どっ、如何してそう思ったんですか………!?」

 

私は咄嗟に聞き返した。

その質問に対する大士さんの答えは、

 

「まあ…………………割と在りがちな『設定』だし」

 

「ウチの仕来たりを『設定』とか言わないでくださーい!」

 

私は思わず苦笑しながら叫んでしまった。

いや、確かに否定はできませんけど!

 

「『仕来たり』って事は、やっぱりそうなんだな…………?」

 

「ッ……………!?」

 

私は言葉に詰まる。

 

「………………………………………………」

 

大士さんは暫く沈黙した後、

 

「なあ刀奈」

 

真名で私を呼ぶ。

 

「は、はい!?」

 

思わず声が裏返った。

 

「俺は織斑程鈍感じゃないつもりだし…………そんな大事な名前を、唯の『お礼』として教えられたと思うほど短絡的な考えは持ってないつもりだ………」

 

「は、はい…………」

 

「だから、自惚れを承知で聞くが………………もしかしなくても………刀奈も俺の事が『好き』なのか? 勿論『異性』として……」

 

「ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?!?」

 

私の気持ちを一瞬で見抜かれた事に、私は声にならない声を上げた。

多分顔は真っ赤だろう。

 

「…………………………………そう言う反応するって事は、図星か…………」

 

大士さんは、何処か呆れる様な雰囲気で、寝転がったまま額に手を当てる。

 

「……………俺の『異性から好かれない因果』は何処行ったんだよ……………?」

 

そのままボソッと何かを呟く。

良く聞き取れなかったけど。

 

「念のために言っておくが、俺には恋人が居るんだぞ?」

 

「はい…………」

 

「それも、葵と優花だけじゃない。簪も恋人にすると今日決めた」

 

「……………知ってます」

 

「……………3人も女を侍らす俺は、妹を誑かした糞野郎って罵詈雑言受けても仕方ないって思ってたんだが………?」

 

「……………何て言うか…………そんな事が気にならなくなるぐらい……大士さんの事が…………その、『好き』になったんです…………!」

 

「ッ~~~~~~~~~~~~~!」

 

私の『好き』と言う言葉に照れたのか、大士さんは片手で顔を覆う。

 

「はぁ~~~~~~~。何で俺なんかを好きになるんだか……………」

 

「『なんか』じゃありません! 大士さん『だから』好きになったんです!」

 

そこだけはハッキリと否定する。

大士さんは恋愛関係に関しては、物凄く自己評価が低い。

まあ、葵さんと優花さんを恋人にしてたから、自己評価が低いのはさして気にして無かったけど。

 

「………………ありがとう」

 

大士さんはそう呟く。

 

「…………それでも、俺も結構困惑してる。今すぐには返事を返せないが………いいか?」

 

「フフッ………いいですよ。時間があれば、ある分だけ大士さんにアピールできますから」

 

いつの間にか、私の緊張感はほぐれていた。

いつもの調子を取り戻した私は、自分のベッドから抜け出す。

そして、大士さんのベッドに潜り込んだ。

 

「お、おい……!?」

 

大士さんが焦った顔をする。

 

「言いましたよ? 時間があるだけ大士さんにアピールすると………」

 

「だからってこれは…………!」

 

いつもクールな雰囲気の大士さんが慌てた表情を見せる。

そんなギャップを可愛いと思ってしまう。

大士さんは慌てて後ろを向く。

でも逃がさない。

私はそのまま大士さんの背中に抱き着き、胸も押し付ける。

 

「フフッ………覚悟してください…………私を本気にさせた事を、しっかりと思い知らせてあげます」

 

私は、宣戦布告をするように、そう耳元で告げたのだった。

 

 

 

 

 

 




IS編第25話です。
今回は事後処理と楯無陥落の回。
楯無サイドで内心書いてみました。
こんな感じで納得できますかねぇ?
次回、如何しましょう?
運動会をやるか、それとも戦艦潜入をやるか………
運動会だと大士達の独壇場ですし、戦艦も大士なら素手で叩き割れそうなんですけどね………
ともかく、次もお楽しみに。
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