ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第29話 蘇る闇

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

スコールが部分展開したゴールデン・ドーンの尾に捕らえられた楯無。

 

「………思い通りには………させてあげないわ………!」

 

顔を顰めながらも、そう強がるように言う楯無。

 

「……あなたの学園の生徒が乗っているモノレールをご存じ? そこに爆弾をセットしてあるの」

 

「ッ!?」

 

スコールの言葉に楯無は目を見開く。

 

「全力で阻止してごらんなさい?」

 

スコールは余裕の笑みを浮かべてそう言った。

 

「…………そうね………そうさせてもらうわ………!」

 

楯無も不敵な笑みでそう言い返す。

 

「できるかしら……?」

 

その言葉と共に、楯無の身体が締め付けられる。

 

「ぐっ……がはっ……!?」

 

楯無は思わず苦しむ声を漏らす。

 

「フフッ……これでさよならね………」

 

スコールが止めを刺そうと、拘束している尾の爪に力を入れようと………

 

「ッ!」

 

した瞬間、楯無の身体が弾け飛んだ。

勿論握り潰されたわけではない。

今スコールの前に姿を現した楯無は、ミステリアス・レイディの能力で作り出されたダミーだったのだ。

ダミーの身体を構成していた水がスコールに纏わりつき、爆発を起こす。

シールドバリアで防いだスコールは、楯無が後方上空でISを纏っている事に気付く。

 

亡国機業(ファントム・タスク)さん。あなたとはまた今度」

 

楯無はそう言ってモノレールの方に飛び立つ。

 

「あら、つれないわね……!」

 

スコールはISを完全展開すると、楯無の後を追った。

 

 

 

 

 

 

黒いISによって、モノレールは攻撃を受けた。

しかし、

 

「大丈夫か!? 皆!」

 

千冬が狙われていると分かった一夏が瞬時にISを展開。

モノレールの扉を突き破って、零落白夜のシールドでビームを防いだのだ。

 

「織斑の、あの迷いの無い行動は褒めるべきだな………」

 

大士がそう呟く。

その代わり、ドアが壊されたので凄い風が車内に吹き込んでいるが。

まあモノレールが吹き飛ばされるよりはマシだ。

もし一夏が何もしなくても、黒いISに気付いた時点で既にブレイブシールドのカードを取り出していたので防ぐことは出来た。

 

「…………織斑 一夏…………」

 

「お前は何者だ!? 何故俺達を狙う!?」

 

一夏が雪片を構えながら問いかける。

 

「…………お前は敵ではない………私の目的は唯一つ………織斑 千冬を殺す事だ………!」

 

黒いISを纏った女性……いや、少女はそう呟く。

 

「ッ……!? そんな事、やらせねぇ!」

 

「できるかな!?」

 

2人が同時に突っ込み剣を交えた。

 

 

 

一方、モノレールでは、

 

「更識、メインフレームに侵入して車両を止められないか試してみろ」

 

千冬の指示で簪はシステムへのアクセスを試みていたが、

 

「駄目です! システムごと乗っ取られています!」

 

通常のやり方ではアクセス不能だと悟る。

 

「チッ! 手の込んだことを……!」

 

千冬が顔を顰めた。

簪は、ハッキングによって乗っ取られたシステムの復旧を試みる。

 

「痕跡が、何処かに残っている筈………それを見つければ………!」

 

簪はプログラムに目を通していき、侵入された痕跡を探す。

その時、楯無と通信が繋がった。

 

『簪ちゃん!』

 

「お姉ちゃん!」

 

『皆が乗ってるモノレール、爆弾がセットされているわ! 気を付けて!』

 

「ッ!?」

 

その言葉と共に、残り時間が表示される。

 

「大変です! この車両に爆弾が!」

 

「ッ!」

 

簪の言葉に、千冬は顔を顰める。

と、その時、

 

「一体何の騒ぎだ………?」

 

突然男の声が聞こえた。

大士ではない。

大士は千冬の視界内にいる。

 

「何者だ!?」

 

千冬が振り返ると、そこには長身の男性と、黒い長髪の少女、ビクトール人形と見間違うばかりの美貌を持った金髪の少女、青みがかった白髪の少女、黒髪をポニーテールにした少女が居た。

しかも、それぞれ傍らにデジモンを連れている。

 

「ハジメ」

 

「大士、何があった?」

 

それはハジメ、香織、ユエ、シア、雫であり、大士に説明を求めた。

 

「簡単に言えば、このモノレールのシステムが犯罪組織によって乗っ取られて暴走中。ご丁寧に爆弾まで仕掛けられていて、あと30分足らずでドカン。って感じ? ついでにあそこにいる黒いISは、犯罪組織の一員っぽい」

 

大士は簡潔に説明する。

 

「なるほど、大体わかった………」

 

ハジメはそう言って一瞬だけ思案顔になると、

 

「シア、車両を止めろ」

 

「はいです!」

 

ハジメの言葉に何の躊躇もなく頷くシアは、先程一夏が壊したドアから外に飛び出す。

 

「お、おい!」

 

千冬が思わず声を掛けるが、

 

「大丈夫ですよ。見ててください」

 

大士がそう言った瞬間、

 

「うりゃりゃりゃりゃりゃ~~~~!! ですぅ!」

 

暴走して猛スピードで走るモノレールの横を、その足で追い抜いていくシア。

 

「はい………?」

 

余りにも非現実的な光景に真耶が素っ頓狂な声を漏らす。

シアはそのままモノレールを追い抜くと、車両の正面に躍り出て、

 

「うぉりゃぁ~~~~~~~~~~!! ですぅ~~~~~~~~!!」

 

モノレールを正面から受け止めた。

ガクン、とモノレールが急減速する。

 

「うおっ?」

 

「きゃぁっ!?」

 

立っていた千冬と真耶がバランスを崩して声を上げる。

見る見るスピードを落としていくモノレール。

 

「ス、スピードが………!」

 

あっという間にスピードが落ちていくモノレールに、鈴音は驚愕の声を漏らす。

そして、程なくして完全に停止した。

 

「…………………………」

 

その事に千冬ですら目を見開いていると、

 

「おい」

 

ハジメが千冬に話しかける。

 

「車両は止まったぞ。早く生徒達を避難させた方がいいんじゃないのか?」

 

不遜な言い方だが、正論な言葉に千冬は若干戸惑いつつも、

 

「あ、あぁ………更識、車両のドアのロックの解除は可能か?」

 

簪にドアを開けられるかを尋ねる。

 

「今すぐには…………時間を掛ければおそらく可能だとは思いますが…………」

 

簪がすぐに無理だと口にする。

すると、

 

「雫」

 

「わかったわ」

 

ハジメが雫に話しかけると、雫は壊れた扉から外に出て、〝宝物庫〟から黒刀を取り出す。

居合の構えを取って目を瞑り、一度深呼吸をすると、

 

「ッ!」

 

目を見開いて駆け出す。

 

「はぁあああああああああああああああっ!!」

 

それと同時に抜刀し、無数の銀閃が煌めく。

そのまま車両最後尾まで駆け抜け、納刀した瞬間、車両の片面がバラバラに切り裂かれた。

 

「………………………………」

 

その光景に、千冬ですら言葉を失う。

 

「ほれ、出口が出来たぞ」

 

ハジメの言葉に、千冬は鋼の精神で気を取り直すと、

 

「…………各自、すぐに避難しろ! モノレールから出来るだけ離れるんだ! 余計な荷物は持つな! 邪魔になる! もし怪我人が居たら手を貸してやれ!」

 

千冬はそう指示を飛ばす。

 

「あ、怪我人が居たら私に言ってね! すぐ治すから!」

 

香織が手を挙げながらそんな事を言った。

 

「………専用機持ちはISを展開後、織斑の援護に向かえ!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

専用機持ち達はISを纏うと、一夏の援護に向かおうとする。

その時、その前をレーザーが遮った。

 

「おっと、そうはいかねえなぁ………!」

 

男勝りな口調でそう言ったのは、蜘蛛のようなIS『アラクネ』を纏ったオータム。

 

「貴様は!?」

 

箒が叫ぶ。

 

「オータム様だよ! 忘れたかぁ!?」

 

「くっ!」

 

オータムは叫びながら装甲脚から無数のレーザーを放ち、専用機持ち達の動きを邪魔しようとする。

だがその前に、簪が前に出てそのレーザーを全てグラビティ・テリトリーで防いだ。

 

「こっちは私に任せて!」

 

簪が、グラビトン・ライフルを向けてオータムを威嚇しながら他の5人に呼びかける。

 

「わかりましたわ!」

 

セシリアを筆頭に返事を返すと、5人は一夏の方へ急ぐ。

簪の打鉄・凶鳥なら、通常のIS一機ぐらいは相手にならないと分かっているからだ。

 

「いかせるかよぉっ!」

 

オータムが行かせまいと装甲脚のレーザーを放とうとするが、その眼前を黒い閃光が遮る。

 

「よそ見してる暇はないよ……!」

 

簪がグラビトン・ライフルを撃ちながらオータムに向かって行った。

 

 

 

一方、黒いISと何度か切り結んでいた一夏だが、ISの性能と操縦者の技術の差で、劣勢に追い込まれていた。

 

「くっ! こいつ………!」

 

一夏は雪片で斬りかかるも、相手の大剣に弾かれてしまう。

 

「………この程度か」

 

黒いISは槍状のビーム発射口を向けると、即座に発射する。

 

「うわっ!?」

 

一夏は驚愕するも、零落白夜のシールドで何とか防いだ。

 

「チッ! 操縦者は大したことない癖に能力だけは鬱陶しい……!」

 

舌打ちしながらイラついた口調でそう言う。

その時、別方向からレーザーが飛んでくる。

黒いISは即座に避けた。

 

「織斑さん!」

 

セシリアによる狙撃だ。

同時に、セシリア、箒、鈴音、シャルロット、ラウラが救援に駆けつける。

 

「一夏、無事か!?」

 

「皆! 助かったぜ!」

 

一夏は嬉しそうな声を上げる。

 

「雑魚がわらわらと………!」

 

黒いISの操縦者は、6対1になったにも関わらず、余裕の態度を崩さなかった。

 

「雑魚が何人集まろうと、この私と『黒騎士』の敵では無い!」

 

自らのISを『黒騎士』と言った操縦者は、大剣を構えると一気に突っ込んでくる。

 

「させん!」

 

箒が2本の刀をクロスさせながら大剣を受け止めようとする。

しかし、

 

「ぐ、ぐぐ………!」

 

一瞬受け止めたが、明らかに力負けをしていた。

 

「箒!」

 

鈴音が上空から斬りかかろうとすると、黒騎士は箒を弾き飛ばし、鈴音の一撃を往なす。

 

「なっ!?」

 

その事に鈴音が声を漏らした瞬間、鋭い回し蹴りが入って鈴音を吹き飛ばし、箒にぶつけた。

 

「うあっ!?」

 

「きゃあっ!?」

 

2人が悲鳴を上げる。

その2人へ追撃を仕掛けようとした時、無数の弾丸がそれを遮った。

 

「僕達を忘れて貰っちゃ困るよ!」

 

シャルロットがサブマシンガンで牽制すると、

 

「そこですわ!」

 

回避先を読んだセシリアがスナイパーライフルで狙い撃つ。

放たれたレーザーは一直線に黒騎士に向かうが、

 

「ふん……」

 

大剣を盾にしてレーザーを防いだ。

 

「ッ…………!」

 

セシリアが小さく舌打ちする。

その時、

 

「はぁあああああああああっ!!」

 

ラウラがプラズマブレードで斬りかかった。

 

「………………」

 

黒騎士はその一撃を受け止め、簡単に弾き返す。

 

「チッ……何という性能だ………!」

 

明らかに自分達の専用機の性能を上回るISに、ラウラは思わずそう零す。

 

「そこだ!」

 

ラウラが弾かれたタイミングで一夏が切りかかる。

 

「遅い……!」

 

黒騎士は不安定な体勢からでも一夏の一撃を受け止め、同時に槍状のビーム砲を向ける。

 

「ッ!?」

 

至近距離からの攻撃に、一夏は回避も防御も間に合わず、ビームが発射される。

一夏は直撃を受ける事を覚悟していたが、そのビームは一夏を僅かに逸れて外れた。

 

「…………チッ」

 

黒騎士の操縦者は舌打ちすると、ビームの狙いを定めていた左腕を見る。

そこには、連節剣が絡みついており、一夏への標準をズラしていた。

その連節剣を辿っていくと、上空から楯無が連節剣を手にしている。

 

「楯無さん!」

 

その姿を見て、一夏は笑顔になる。

黒騎士は腕を振って連節剣を振りほどくと距離を取った。

楯無は連節剣を剣状に戻して一夏達の元に降りて来る。

 

「こっちは無事だったみたいね」

 

モノレールから避難している生徒達を見て楯無がそう言うと、

 

「楯無さんが加わってくれれば、何とかなるかもね!」

 

鈴音が勝機を得たりと言わんばかりに笑みを浮かべる。

だが、

 

「喜んでる所悪いんだけど、そううまいこと行かないのよね………」

 

楯無は油断なく前を見据える。

すると、

 

「あら? 随分と手古摺ってるみたいね、エム」

 

「クッ………!」

 

そう言って黒騎士の隣に降りてきたのは、ゴールデン・ドーンを纏ったスコール。

スコールに『エム』と呼ばれた黒騎士の操縦者は、不機嫌そうに歯を食いしばった。

 

「新手………!」

 

シャルロットが気を引き締める。

 

「オータム! 戻って来なさい!」

 

スコールが、簪と戦っているオータムに声を掛けた。

 

「スコール………くそっ! このガキが………!」

 

目の前の簪に悪態を吐きつつ、スコールの元へ飛翔するオータム。

そのISは、数分の戦いで既にボロボロだった。

 

「無様だな、オータム」

 

オータムの状況を見たエムがそう言うと、

 

「クソが………! 何なんだあのISは、攻撃も防御も桁違いじゃねえか………!」

 

卑怯と言わんばかりにそう言う。

まあ、打鉄・凶鳥が卑怯と言うならその通りだが。

 

「相手は3人………こっちは8人…………簪ちゃんを含めれば、こっちが有利かしらね………?」

 

楯無は彼我の戦力を比較する。

 

「そうね。特にそっちの子のISは規格外だし、まともにやったらこっちが不利ね」

 

スコールが楯無の言葉を肯定する。

しかし、その声には余裕が伺える。

 

「…………随分と余裕ね?」

 

スコールの言葉に、楯無は怪訝な表情で問いかけた。

 

「確かにまともに戦えばこちらが不利。でもね、いくらでもやりようはあるのよ?」

 

スコールはそう言いながら掌を向ける。

だが、その掌が向けられたのは、モノレールから避難していく生徒達。

 

「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」

 

その事に全員が目を見開いた瞬間、スコールは火球を躊躇なく放った。

 

「いけない………!」

 

簪が咄嗟に射線軸上に割り込んでその火球をグラビティ・テリトリーで防ぐ。

 

「そう………当然守るわよね………!」

 

スコールはニイィッと笑みを浮かべると、次々に火球を放つ。

しかも、1ヶ所にではなく広範囲に。

 

「させないよ!」

 

「おのれ! 見境なしか!」

 

防御フィールドを持つシャルロットと、AICを持つラウラを筆頭に、生徒達に放たれる火球を防いでいく。

 

「ハハハ! こりゃいいや!」

 

オータムも、先程の仕返しと言わんばかりにレーザーを連射する。

一夏、箒、鈴音、セシリア、楯無も身体を張って防衛に回る。

 

「…………………フッ」

 

エムがニヤッと笑みを浮かべると、体を張る一夏に急接近し、大剣で斬りかかる。

 

「なっ!? ぐわっ!?」

 

不意打ちの直撃を受ける一夏。

 

「一夏!? このっ!」

 

鈴音が咄嗟に衝撃砲を放つが、エムはあっさりと避けて鈴音に接近。

大剣の薙ぎ払いで鈴音を吹き飛ばした。

 

「きゃぁあああああああああっ!?」

 

「鈴!」

 

箒が咄嗟に援護に行こうとしたが、

 

「ほらぁ! よそ見してる暇は無いわよ!」

 

スコールが出力を落とした火球を連続で放ってくる。

出力を落としたとはいえ、普通の人間が巻き込まれれば即死級の威力だ。

 

「おのれ………! 手も足も出んとは正にこの事か………!」

 

箒はその場に留まり、火球を防ぐ。

だが、それと同時にエムが接近し、大剣の一振りを放つ。

 

「がっ!? し、しまった………!」

 

箒が吹き飛ばされた事により、数発の火球が通り過ぎる。

その火球は、モノレールから避難している生徒達に降り注ぎ、

 

「み、皆――――っ!!」

 

一夏が悲痛な声を上げた。

そして、

 

「聖絶………!」

 

突如として展開された光の結界に全てが防がれた。

 

「なっ!?」

 

「何だ!? あれは!?」

 

スコールとオータムが思わず叫ぶ。

すると、その光の結界の中心に、杖を掲げた香織が佇んでいた。

そしてその直後、

 

「………………おい」

 

たった一声。

その一声が響いただけで、この場の空気が一気に重苦しくなった。

その声が聞こえた方に、その場の全員が振り向くと、そこには魔力の足場で空中に立つ、ハジメの姿があった。

その眼光は、スコール、オータム、エムの3人を捉えている。

 

「………………1つだけ聞く。お前達は『敵』か?」

 

ハジメはそう問いかける。

 

「はあ? 何言ってやがる? それ以前に何で空中に立ってやがる!?」

 

オータムが意味が分からないという声でそう聞き返す。

 

「質問しているのはこっちだ。お前達は俺の『敵』か?」

 

オータムの問いかけを無視し、ハジメは再び問いかける。

 

「…………………………」

 

その瞬間、エムが無言でハジメの前に急接近し、

 

「これが答えだ」

 

目の前で大剣を振り被った。

次の瞬間、

 

「なっ!?」

 

エムは驚愕の声を漏らした。

 

「なるほど………『敵』って事でいいんだな?」

 

振り下ろされる大剣を前に、確認する様に呟くハジメ。

ハジメはその左手で、振り下ろされた大剣の刃を掴んで止めていた。

ハジメの左腕は、生身に見えるように偽装されているが、ハジメ特製の義手だ。

ハジメのステータスも相まって、ISの攻撃では傷一つ付かない。

それどころか、ハジメが左手に力を入れると、刀身に罅が入り、砕け散る。

 

「バ、バカな………!」

 

エムが信じられないと声を漏らした瞬間、

 

「おらぁっ!!」

 

ハジメの豪脚による蹴りが炸裂し、エムは勢い良く吹き飛ばされて地面に激突する。

 

「エムっ!? このっ………!!」

 

スコールは余裕の表情を崩して、ハジメに向かって火球を連射する。

その瞬間、ハジメは両手にドンナーとシュラークを呼び出し、電磁加速された弾丸によって全ての火球を撃ち砕く。

 

「なっ!? は、速過ぎ………!」

 

スコールは言葉を言い切る事が出来なかった。

ハジメの早撃ちは、全ての火球を撃ち砕いたばかりか、ゴールデン・ドーンの炎の結界どころか、絶対防御すらも紙の如く貫通し、その左腕を吹き飛ばしていた。

 

「あぐっ………!?」

 

「スコール!? てめぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

激昂したオータムがハジメに向かってエネルギーワイヤーの塊を放つ。

その塊は、ハジメの目の前で蜘蛛の巣の様に広がり、ハジメを捉えようとする。

しかし、ハジメは右腕を振り被ると、

 

「〝風爪〟」

 

生み出された風の刃がエネルギーワイヤーを切り裂き、更にはその先に居たオータムの、アラクネの装甲を大きく切り裂いた。

 

「クソが………! 化け物め……………」

 

オータムは大ダメージを受けて落下していく。

 

「「「「「「「「……………………………」」」」」」」」

 

ハジメが現れた瞬間にあっという間に戦いが終わってしまった事に、その場の全員は声を失った。

 

 

 

 

 

 

その一連の様子を、篠ノ之 束は隠し研究所から窺っていた。

 

「くっそ~! 一体何なんだよぉ~! どいつもこいつもISを玩具みたいにあしらって~!」

 

不機嫌そうにモニターに映るハジメに向かって悪態を吐く。

すると、画面に映っていたハジメがドンナーを向けたかと思うと、次の瞬間にはモニターが映らなくなった。

 

「えっ!? 嘘ッ!? 小型の虫型カメラに気付いたの!?」

 

束は驚愕しながら、何かの間違いだとパネルを操作し始める。

そして、目の前に集中し始めた故に気付かなかった。

束の背後の空間が歪み始めた事に。

そして、その空間から手が伸びてきた事に。

その直後、ガシッと束の頭が掴まれる。

 

「んぎゃっ!?」

 

かなり強く掴まれた所為で、束は思わず変な声を漏らした。

そしてそのまま束は、伸びてきた手に引っ張らっれ、空間のゆがみに引きずり込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメは突然虚空に発砲したかと思うと、〝導越の羅針盤〟で何かを確認したかと思うと、クリスタルキーを取り出してその場にゲートを作り出した。

そして、そのゲートに右手を突っ込んだかと思うと、そのまま何かを引き摺り出した。

その引き摺り出した物とは、

 

「ちょ~~~っ!? 一体何が起こったのさ~~~~~!? ここ何処!? 何で束さんはこんな所にいるの~~~~~!?」

 

先程ゲートに引きずり込まれた束その人だった。

 

「姉さん!?」

 

突然現れた束に箒が驚愕する。

監視されている事に気付いたハジメが羅針盤で束の居場所を特定し、クリスタルキーでゲートを繋げて束をこの場に引き摺り出したのだ。

 

「……………てめぇが黒幕か?」

 

ハジメは有無を言わさぬ声色でそう問いかける。

 

「お前、一体何なんだよぉ!? この世界に束さんの理解できないものが存在しちゃいけないんだ~~!」

 

「…………………やれやれ、そう言う人間か………」

 

子供の我儘のような束の言葉に、ハジメは呆れた様に呟く。

 

「テメエが何しようと俺の知った事じゃない。だが、俺に敵対する以上、容赦をするつもりは無い」

 

ハジメは束の頭を掴む手に力を込める。

 

「あ痛たたたたたたたた!? 割れる!? 束さんの超天才の脳みそが潰れちゃう!?」

 

「………………結構余裕だな、お前」

 

常人なら既に気絶するほどの痛みを与えている筈だが、束は『痛い』で済ませている。

ハジメがとりあえず気絶させようと纏雷を発動しようとした時だった。

 

『………ふん。所詮は人間。この程度が限界か…………』

 

目の前の束から突然黒い煙のような物が吹き出たかと思うと、そんな声が響いた。

そして、あろうことかハジメの拘束を振りほどいた。

 

「ッ………!」

 

ただ事では無いと感じたハジメが即座に発砲。

容赦なく束の急所を狙う。

しかし、何かの障壁に阻まれたようにその弾丸は防がれる。

その煙は束の背後で集まると、その黒い闇の中に2つの眼が開いた。

 

「何者だ………?」

 

ハジメはその『何者』かに問いかける。

 

『貴様はこの世界の『選ばれし子供』の1人か…………この世界でも、やはり我が野望の前に立ちはだかるのは『選ばれし子供』と言う訳か…………』

 

束の背後に現れた黒い影の言葉に、ハジメは目を見開く。

 

「『選ばれし子供』だと…………!?」

 

その名はハジメも知っている。

いや、知っているからこそ驚愕した。

すると、その影は一部を手の様に変形させ、背後から束の首筋に伸ばした。

そして、そのまま束の首筋に指を潜り込ませ、そこから何かを取り出した。

それは、棘の付いた黒い球体のようなもの。

 

「そいつは…………!?」

 

『ククク…………これは『暗黒の種』………』

 

「『暗黒の種』だと!?」

 

ハジメは更に驚愕する。

 

『私は別の世界で『選ばれし子供』達に敗れた。だが、僅かなデータの残滓が偶然にもこの世界に流れ着き、その場に居たこの小娘を依り代とすることで生き永らえた…………』

 

「………………」

 

『その際、手元に残されていた最後の『暗黒の種』を小娘に植え付けることで、小娘の持つ欲を増幅………それに合わせて能力も強化された。そして、長い時間を経てこの小娘の持つ欲が暗黒の種に蓄えられ、私を復活させる贄となったのだ!』

 

黒い影は暗黒の種を握り潰す様に吸収する。

すると、黒い影が人型をなしていき、同時にその影からコウモリが飛び立った。

 

「ッ…………! お前は……………!」

 

「私の名は『ヴァンデモン』。アンデットデジモンの王だ…………!」

 

マントを着た紳士のような姿をした、完全体のアンデット型のデジモンが、その姿を現したのだった。

 

 

 

 

 







IS編第29話です。
今日(土曜)も仕事だったんで、遅くなりました。
はい、ハジメ達が大活躍な回でした。
今回で終わるかと思ったが終わらなかった。
まあ、ハジメ無双は当然だが、まさか束にヴァンデモンが取り憑いているとは思わなかったでしょう。
作者も寸前に思いついただけなので、伏線もくそも無かったのですが…………
で、束のあのハイスペックは暗黒の種の所為という事に…………
だが、ヴァンデモンは完全体1体でどのように究極体の上位ランクがごろごろしてる陣営に立ち向かうのか!?
多分次こそ最終話だと思います。



P.S 流石に眠けが限界なので返信はお休みします。
   自分勝手な理由で申し訳ないです。
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