ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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デジモンファンタジー編
第1話 勇者召喚再び


 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

 

 

大士達がハルケギニアから戻って来てから暫く。

ハルケギニアで恋人になったシャルロットとティファニアは、ハジメの協力で大士達と同じクラスに通うことになり、カトレアとシルフィードもといイルククゥは、レミアとティオが所属しているハジメが創設したジュエリーショップに就職した。

最初こそ、全く違う環境に戸惑いこそあったが、シャルロットとティファニアは、美少女でスタイルも良く、性格も良いという事もあって、クラスでも人気が出て難無く溶け込んだ。

カトレアとイルククゥだが、ハルケギニアの魔法の〝錬金〟と〝先住魔法〟が、限定的とはいえ概念魔法クラスの事象を引き起こすので、意外と言うべきか相性が良かった。

特にカトレアは、ティオの〝昇華魔法〟があればスクェアクラスの魔法も使えるようになったため、カトレアが知る金属であればあっという間に生成可能になってしまったのだ。

因みにカトレアは、似たような性格のレミアと仲が良く、イルククゥは、ティオが以前話に聞いた竜に変身する竜人族であることを知り、黒竜の姿を見てあっという間に懐き、『ティオ姉様』と慕っている。

 

 

 

 

そして今日も大士達は学校で授業を受けている。

帰還者達はトータスに召喚された事で留年したため、高校3年生ではあるが19歳だ。

今は担任の愛子が担当している社会科の授業であり、それぞれが真面目に授業を受けていた。

大士は黒板に書かれた内容をノートに書き写している。

カリカリとシャーペンを走らせる音が聞こえる中、大士は視線だけでシャルロットとティファニアの2人を見た。

2人は日本語を理解するため、言語理解を付与したメガネを掛けているが、どちらもかなり高いレベルで日本語を習得しつつある。

言語理解のメガネが要らなくなるのも、そう遠い未来では無いだろう。

すると、余所見をしていた所為か、大士は字を間違えてしまい、消しゴムを取ろうと手を伸ばした。

 

「あっ………」

 

だが、机の端にあった消しゴムは、伸ばした指に弾かれて机の下に落ちてしまう。

大士は屈んで床に落ちた消しゴムに手を伸ばす。

その時だった。

大士の足元に、突然幾何学的な文様が浮かび上がる。

 

「ッ!? 魔法陣!?」

 

大士は思わず叫んだ。

その瞬間、ズザザザザッ!っと、周りの席に居た生徒達が距離を取る。

この教室の生徒達の大半にとって、床に浮かび上がる魔法陣はトラウマものなのだ。

浮かび上がった魔法陣は、幸か不幸か教室中に広がる事は無かった。

だが、魔法陣の真上に居た大士は、魔法陣の外周に沿って自分だけをすっぽりと覆う光の壁の様なものに包まれてしまう。

 

「「大士ッ!!」」

 

「タイシっ!?」

 

「タイシ!」

 

葵と優花、シャルロット、ティファニアが即座に駆け寄る。

 

「大士っ………!」

 

優花が大士に手を伸ばすが、光の壁に阻まれる。

 

「くっ……! こんなものっ………!」

 

優花は神代魔法をフル活用して魔法陣に干渉しようとした。

だが、

 

「ッ!? 干渉できない!?」

 

優花は自分の魔法が大士を覆う魔法陣に干渉できない事に気付く。

すると、

 

「これは魔力じゃない………! これは………『神力』!?」

 

葵が気付いたように叫んだ。

 

「神の力による………『召喚』……!?」

 

女神である葵だから気付けたこと。

大士の足元に現れたのは、紛れもない『神の力』によって構築された、召喚の術式であった。

 

「ふざけるなぁっ!」

 

優花が声を荒げて強引に光の壁に掴みかかった。

 

「大士と私達の間に、壁を作るなぁっ!!」

 

そう叫びながら、無理矢理こじ開けようとする。

優花は無意識のうちに概念魔法を作り出していた。

それは【結ばれた絆は離れない(私達から愛する人を奪うな)】。

優花の手と光の壁の間にスパークが発生する。

 

「だ、駄目だよ優花! 人間が無理矢理『神の力』に干渉しようとしたら………!」

 

葵が慌てながら優花に呼びかけた瞬間、

 

「かはっ!?」

 

「優花!!」

 

大士が思わず叫んだ。

何故なら、優花が大量の血を吐き出し、体の各部からも少なくない量の血が噴き出したからだ。

 

「よせ! やめろ!!」

 

愛する人が傷付くことを見ていられなかった大士が叫ぶ。

だが、

 

「大士…………!」

 

優花は倒れず、尚も光の壁に干渉しようとする。

 

「優花………!」

 

そんな優花を見て、大士も黙って突っ立っているだけには行かなかった。

 

「おぉぉぉらぁあああああああっ!!」

 

拳にデジソウルを宿し、優花の触れている方の光の壁に向かって拳を繰り出す。

 

「優花………大士………!」

 

その姿を見て、葵も覚悟を決めた。

光に包まれて女神化すると、優花の肩に手を添える。

 

「優花、私の『神力』を使って」

 

「助かるわ………!」

 

優花はお礼を言う。

しかし、『神力』は本来神のみが使える力。

女神そのものの生まれ変わりである葵はともかく、人の身である優花に『神力』を使わせるという事は、確実に『命』を削る行為だ。

葵にもそれは分かっていた。

だが、葵は一目見て気付いた。

大士を召喚しようとしている魔法陣は、紛れもない『神』によって行使された術式。

力の大きさからして並の『下級神』だろう。

並の下級神よりも数十倍の力を持つ葵……アルオイスでも、大部分の神力を封じられ、全力の1%も発揮できない現状では、召喚を止める為の干渉は不可能。

優花の概念魔法に賭けるしか無かった。

 

「うぐっ………くぅぅぅ………!」

 

「はぁああああああああっ!!」

 

外からは優花が、内側からは大士が壁を破ろうと必死になる。

その時、

 

「……………ッ!」

 

優花が光の壁の僅かな揺らぎに気付いた。

ほんの僅かだが、術式に綻びが出来てきたのだ。

しかし、それと同時に気付いてしまった。

光の壁を破るよりも早く、召喚が完了してしまう事に。

 

「ッ~~~~~~~~~~!」

 

優花は歯を食いしばりながら思考を巡らせ、今、大士に必要な存在を、思い浮かべる。

そして、

 

「南雲! すぐにドルモンを連れて来て! この時間なら、まだ大士の家に居るはずよ!!」

 

振り向きもせずにその場でそう叫んだ。

 

「………分かった」

 

ハジメは頷くと、クリスタルキーを使ってゲートを作り出す。

ハジメがゲートを潜って1分も経たない内にドルモンが飛び出てきた。

 

「大士!?」

 

ドルモンが光の壁に囲われた大士を見て驚愕する。

すると、

 

「ドルモン………! これからこの光の壁をほんの少しだけ抉じ開けるわ………! その瞬間に飛び込んで………!」

 

優花が光の壁に干渉を続けながらそう言う。

 

「えっ? で、でも………」

 

「言う通りにしなさい! 今の大士に一番必要なのはドルモン、あなたよ!」

 

優花の強い言葉に、

 

「………わかった!」

 

ドルモンは頷く。

 

「……………行くわよ!」

 

優花がそう言った瞬間、光の壁を抉じ開ける為に気合を込める。

 

「はぁあああああああああああああああああああっ!!!」

 

優花の指が光の壁を突き抜け、重い扉を抉じ開けるように両側に広げていく。

それに伴い光の壁に穴が開き、その穴が徐々に大きくなっていく。

 

「ぐぅぅぅ……………!」

 

予想以上の抵抗に、優花は一瞬崩れかけるが、グッと足を踏み締めて目を見開くと、

 

「あああああああああああああああああっ!!!」

 

渾身の力で光の壁の穴を抉じ開けた。

そこには、子供が通れるかどうかの小さい穴。

 

「ドルモン!!」

 

優花は即座にドルモンに呼びかけた。

 

「うん!」

 

ドルモンがその穴に飛び込む。

 

「大士!」

 

「ドルモン!」

 

穴が小さく、途中で引っ掛かったドルモンの手を取り、自分に引き寄せる大士。

その瞬間、

 

「きゃあっ!?」

 

「優花!?」

 

優花が光の壁に弾き飛ばされ、葵が受け止める。

 

「優花! 大丈夫か!?」

 

光の壁の中から大士が呼びかける。

 

「………大士………!」

 

優花は力を使い果たした様で、力無く応える。

 

「……………必ず…………迎えに行くから……………!」

 

その言葉を聞き、

 

「ッ……………ああ! 待ってる!」

 

大士はそう言う。

そして、

 

「葵!」

 

「ッ……うん!」

 

「優花!」

 

「…………ええ」

 

「シャルロット!」

 

「タイシ………!」

 

「テファ!」

 

「タイシ!」

 

「………………俺は必ず生き残って見せる! カトレアにも心配かけてすまないと伝えておいてくれ………!」

 

その瞬間、魔法陣の光が強まる。

 

「ッ…………行ってくる…………!」

 

その瞬間、魔法陣から放たれた光が大士とドルモンを覆い隠した。

 

「「「「大士(タイシ)!!」」」」

 

葵達が叫ぶ。

その光が消えた時、大士とドルモンの姿は何処にも無かった。

 

「……………………南雲君?」

 

葵が一縷の望みを込めてハジメに問いかける。

ハジメは〝導越の羅針盤〟を取り出して大士の行方を知ろうとしたが、

 

「…………………」

 

ハジメは無言で首を横に振った。

大士の居場所が特定できなかったのだ。

 

「やっぱり………」

 

葵もダメ元で聞いたのか、そう呟く。

落胆の表情は隠せていないが。

 

「今のは『神力』による召喚………多分、その世界その物に『神力』でジャミングの様なものが掛けられてると思う………今の召喚には紛れもない『神』が関わってる………」

 

葵はそう呟くと、

 

「優花………大丈夫?」

 

抱き起こした優花に声を掛ける。

 

「ええ…………ねえ、葵………」

 

「何? 優花」

 

「私………どれくらい『命』を削った?」

 

「ッ…………!?」

 

優花の言葉に葵は息を呑む。

 

「わかってたの………?」

 

「それは、あれだけ無茶をすれば、唯じゃすまないって事ぐらいは分かってたわよ」

 

優花は何でもないようにそう言う。

 

「で………? どの位減ったの?」

 

「……………今までの優花は、魔物肉を食べた影響で、並の人間よりも、相当長い寿命を持ってたんだけど、それが人並みになったぐらいかな…………肉体への影響はないから、若さは保てると思うけど………」

 

「そう………なら問題無いわね。元々大士が寿命で死んだら、生きてる意味も無いことだし………」

 

優花は寿命が減った事を悲しむどころか、都合が良かったと言わんばかりだ。

 

「なら、早く大士を連れ戻す方法を見つけないと………!」

 

「それはいいけど、さっきみたいな無茶はもうダメだからね! 優花に何かあったら、大士は絶対に悲しむから………!」

 

葵は泣きそうな顔でそう言う。

 

「わかってるわ………さっきは緊急事態だったからああしたまでよ。もうあんな無茶はしないわ」

 

優花はそう言うと、ゆっくりと目を伏せる。

 

「ごめん………ちょっと疲れたわ………少し眠らせて…………」

 

「うん………今はゆっくり休んで…………大士とドルモンが揃っているなら、大概の困難は乗り切れるから………」

 

葵の言葉を聞くと、優花は安心したように眠気に逆らわず、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

 

光に包まれた俺は次に気が付いた時、即座に辺りを確認した。

どうやら正方形の石で作られた10m四方のステージのような場所の上に居るようで、そのステージの床に大きな魔法陣が描かれており、そのステージの四隅には円柱状の石柱が立っており、その頂点に炎が灯っている。

正に召喚の祭壇とも言うべきその場所に、俺は立っていた。

そして、俺がまず確認したことは、傍にいるドルモンの無事だ。

 

「ドルモン……無事か………?」

 

俺は小声でドルモンに呼びかける。

 

「う、うん………大士………ここは……?」

 

「わからないが………召喚によって呼び出された事は、間違いなさそうだ………」

 

不安そうなドルモンに、俺は自分の推測を言う。

そして、今気付いたが召喚されてこの場に居たのは俺達だけでは無かった。

 

「うわっ!? 何だここは!?」

 

「何処だここは!?」

 

「な、何っ……!? 一体どうなったの!?」

 

俺達の後ろから少年少女らしき声がした。

後ろを振り向けば、自分と同じく召喚されただろう2人の少年と1人の少女。

1人は、活発そうな雰囲気を持つ、野球帽を被った15歳前後の少年。

もう1人は、どこかお調子者のような雰囲気を持つ、平凡なイメージを持たせる高校生ぐらいの少年。

そして、唯一の少女である、髪を肩口辺りで切り揃えた可愛い系のスレンダーな美少女は、キョロキョロと周りを見回して狼狽えている。

その時、

 

「よくぞ参られた! 異世界より召喚されし勇者達よ!!」

 

その声に再び前を向けば、祭壇の前に少し癖のある赤髪長髪のイケメンな18歳前後と思われる青年がいた。

……………それにしても『勇者』………ね。

以前にも似たような状況に遭遇した事のある俺は、一気に心が冷静になる。

だが、

 

「ゆゆ、勇者ぁっ!?」

 

野球帽を被った少年が自分を指差しながら驚愕し、

 

「異世界召喚のテンプレキタコレ!」

 

もう1人の少年は、大袈裟にガッツポーズをとる。

 

「ううっ………!」

 

女の子は訳が分からず泣きそうだ。

すると、赤髪の青年が壇上に登ってきて、その少女の傍で跪くと、

 

「失礼。そちらからしてみれば、いきなり見ず知らずの場所に呼び出されて困惑しているのだろう…………しかし、今は私を信じて話を聞いて欲しい」

 

様になっているポーズで笑みを浮かべながら、少女の手を取った。

 

「は……はい…………」

 

手を取られた少女はイケメンの笑顔にやられたのか、涙が引っ込んで頬を赤くしていた。

 

「貴殿らも、一先ず私の話を聞いて欲しい」

 

赤髪の青年は俺や他の少年2人を見回しながらそう言う。

 

「わ、分かった………」

 

「いいぞ!」

 

「………………」

 

野球帽を被った少年は、若干困惑した様子で。

もう1人の少年は期待に満ちた表情で返事を返す。

俺は冷めた表情で無言だ。

 

「まずは名乗ろう。私は、この国、『サーバー王国』の第1王子、レオナルド・オメガ・フォン・サーバーと言う。お見知りおきを」

 

レオナルドと名乗った赤髪の青年は、胸に手を当て、礼儀正しく礼をする。

 

「君達の名を訪ねてもいいかな?」

 

「俺はサトジ」

 

「俺は山口(やまぐち) 鉄平(てっぺい)さ!」

 

中島(なかしま) 真里佳(まりか)……………」

 

「………黒騎 大士だ」

 

「サトジ殿、ヤマグチテッペイ殿、ナカシママリカ殿、クロキタイシ殿……だね」

 

俺達の名前を復唱した後、一呼吸置き、

 

「最初に、この世界は『リジアル』と言う………君達からすれば、全く別の世界………異世界というものだ」

 

「異世界!?」

 

「思った通り!」

 

サトジと名乗ったの少年が驚愕し、山口 鉄平と名乗った少年は喜んでいる。

 

「貴殿らは、この世界で信仰される至高の運命神『デニティス』様の導きによってこの世界に召喚されたのだ」

 

王子サマはその神を称えるように両手を広げてそう言った。

 

「………………運命神」

 

葵………アルオイスと同じ『運命神』と言う単語に、俺は思わず小さく復唱してしまう。

召喚される寸前の葵の様子から、そのデニティスという神は葵と同じく本物の『神』なんだろう。

 

「この世界には、大きく分けて3つの種族が住んでいる。我々『人間族』。人間族の神敵である『魔族』。そして、デジタルモンスター………『デジモン』だ」

 

「ッ……………」

 

『デジモン』と言う言葉に俺は僅かに声を漏らし、

 

「デジモン!? この世界にもデジモンがいるのか!?」

 

サトジが叫んだ。

 

「なんだそりゃ?」

 

山口は首を傾げる。

 

「わ、私も知らないよ………」

 

中島 真里佳と名乗った少女も不安そうに言う。

 

「どうやら貴殿はデジモンを知っている様だな?」

 

王子サマはサトジに訊ねる。

 

「ああ! 何を隠そうこの俺は、世界一のデジモンマスターを目指してるんだ!!」

 

握り拳を作りながら、力の入った声でそう宣言するサトジ。

っていうか、デジモンマスターって何だ?

 

「そのデジモンマスターと言うのは?」

 

王子サマも気になったのかそれについて聞くと、

 

「俺の世界では、デジモン達を捕まえて、鍛えて戦わせるデジモンバトルが行われているんだ。そして、デジモン達を育成するデジモントレーナが集い、自慢のデジモン達を戦わせ、世界一を決める大会に勝ち残り、優勝したデジモントレーナーがデジモンマスターの称号を得る事が出来るんだ!!」

 

ちょ~~~~~~~~~~~~~~っと待て!!

思わず内心叫んだ。

なんだそのどこかで聞いた事のあるような設定は!?

 

「そのようなものが…………だが、貴殿の話から察するに、君も、そのデジモンとれーなーとやらなのだろうが、君のデジモンは残念ながら召喚されなかったようだな………」

 

王子サマは、若干落胆したようにそう言ったが、

 

「いいや、居るぜ!」

 

サトジは、自信満々にそう言った。

 

「何………?」

 

王子サマが怪訝そうに呟くと、サトジは上着に隠れて見えなかったベルト部分から、赤と白で色分けされた手の平サイズの四角い箱を取り出した。

 

「それは………?」

 

王子サマはが尋ねると、

 

「これはモンスターボックス。この中にデジモンが入ってるんだ」

 

ギリギリ!?

なんか色々とギリギリなものが出てくるんだが!?

 

「その中に………?」

 

王子サマは訝し気な表情だが、

 

「ガジモン! 君の出番だ!!」

 

サトジはアンダースローでその箱を投げる。

すると、箱の中央でパカッと箱が上下に開き、そこからデータ粒子が渦を巻いて飛び出してくる。

すると、そのデータ粒子が集まって形を成し、成長期デジモンのガジモンがその場に現れた。

それから、如何いう理屈かは分からないが、投げたモンスターボックスは、ひとりでにサトジの手に戻っている。

 

「おおっ………!」

 

「何か出てきた!?」

 

「何あれ!?」

 

ガジモンの姿を見て、王子サマは感嘆の声を漏らし、山口と中島さんは驚いた表情だ。

 

「俺には、全部で6匹のデジモンが居るんだ」

 

「おおっ! 1人でデジモンを6匹も………! これは予想以上だ………!」

 

「へへっ………!」

 

王子サマの言葉に、サトジは得意げになった。

 

「ところでさ、さっきから気になってたんだけど、そっちの人が連れてる奴もデジモンじゃないのか?」

 

サトジはこちらを指差す。

その場の全員が俺とドルモンに視線を集中させた。

俺は軽く肩を竦め、

 

「お察しの通り、ドルモンはデジモンだが?」

 

だから何だと言いたい。

 

「やっぱり!」

 

当たった事が嬉しかったのか、サトジは嬉しそうな顔をする。

すると、懐から手帳のような物を取り出した。

それを開いて上側をドルモンに向けると、

 

『ドルモン、獣型デジモン、成長期、データ種。額に旧式なインターフェースをもつ為、デジモンが発見される以前の実験用の“プロトタイプデジモン”ではないかと推測されている獣型デジモン。必殺技は、口から鉄球を吐き出す『メタルキャノン』』

 

電子音声でそんな声が聞こえた。

 

「な、何だ!? いきなり声が!?」

 

王子サマは突然の声に驚いている。

 

「ああ、驚かせてごめん。これは『デジモン図鑑』さ。色んなデジモンの情報が入っていて、こうやってデジモンに向ければ、そのデジモンの情報を教えてくれるんだ」

 

だから、何でこうギリギリを責めるのが好きかなぁ?

前世の国民的子供向けアニメの主人公に怒られるぞ。

まあ、俺はデジモンの主人公たちの方が好きだがな。

つーかもうアウトじゃね?

もうお前のあだ名はパチモン勇者に決定だな。

俺は思わず溜息を吐く。

 

「それにしても………成長期か……………」

 

王子サマの俺を見てくる視線が、一段階冷たくなったような気がした。

すると、

 

「っていうか、レオナルドの話が途中じゃん! そっちのデジモンとか言うのも興味あるけど、まずは話の続きを聞かせてくれよ!」

 

山口が王子サマに話の続きを促す。

 

「ああ、すまない。話が逸れたな………。ゴホン……!」

 

王子サマは咳払いをして話を切り替える。

 

「先程話した我々『人間族』は、長い間神敵である『魔族』と戦争を続けている。『魔族』とは我々『人間族』を襲い、血肉を喰らう悪魔のような存在だ。この魔族を滅ぼさない限り、この世界に住む人間族に、安寧の時は訪れない………! 我々も必死になって戦い続けていたが…………戦況は膠着状態………! このままでは疲弊していくばかりであった。だがその時、我らが主たるデニティス様より神託があったのだ。『運命によって選ばれた勇者達を、異世界より召喚する』と………!」

 

力の入った演説の様に言葉を続ける王子サマ。

 

「そして神託に従い、この召喚の祭壇にて召喚魔法を行使した結果、貴殿らが選ばれたのだ! この世界を救う勇者として!!」

 

その演説が最高潮に達した時、そう言い放った。

すると、

 

「俺達が………選ばれた勇者………!」

 

「異世界を救う為に呼ばれた………勇者………!」

 

パチモン勇者と山口の琴線に触れたのか、感極まったような表情をしている。

 

「だ、だけど………いきなり世界を救って欲しいなんて言われても…………そんな力、私には…………」

 

中島さんは現実を見ているのか、不安そうにそう呟く。

すると、

 

「その事については心配しなくていい。君達には、デニティス様の加護があるはずだ」

 

「加護…………?」

 

「チートキタ!」

 

「お前達! アレをここに!」

 

王子サマが、祭壇の下に居た兵士に呼びかけた。

鎧を着た兵士が水晶玉のような、透明な球体を手に持ってくる。

 

「これは触れた者の魔力を計るものだ。使用者の魔力量に比例し、光を放つようになっている…………このようにな」

 

王子サマが手本とばかりにその水晶玉に触れると、水晶全体が淡く輝き出した。

 

「自慢では無いが、私はこれでもこの国有数の魔力保持者だ………このように水晶全体を光らせる事が可能な者は、この国でもほんの1%程度だ」

 

如何聞いても自慢だな。

 

「さあ、試してみたまえ」

 

「よっしゃ!」

 

山口が我先にと水晶に触れる。

すると、カッと部屋全体が照らされるほどに強い輝きを放った。

 

「な、なんと!? これほどの輝きを放つとは!?」

 

王子サマが驚いた声を上げる。

続いてパチモン勇者と中島さんも手を触れると、同じぐらいの光を放った。

 

「おお! やはり君達は神に選ばれた勇者だ……!」

 

王子サマは満足気に笑う。

そして、最後に俺の前にやって来た。

 

「さあ、最後は君の番だ」

 

王子サマは期待に満ちた表情でそう言う。

さっきの冷たい視線は何だったんだか………

俺は呆れから軽く溜息を吐く。

 

「………最初に言っておくが、俺は魔力ゼロだぞ?」

 

計測するまでも無い。

俺が魔力を全く持たない事は既に証明されている。

 

「そんな事は無いさ! 君は神に選ばれた勇者なんだ! 君にも彼らに負けないぐらいの力を持っている筈さ!」

 

無駄にキラキラした笑顔を向けて来るな。

まあ、俺にやる気を出させる為にこう言ってるんだろうが………

 

「はぁ………」

 

俺は再び溜息を吐きつつ、水晶に手を伸ばした。

そのまま水晶に手を触れる。

すると、

 

「…………………………………」

 

思った通り何も変化は無かった。

 

「なっ!? 何だと!?」

 

王子サマは予想外だったのか狼狽えている。

俺は予想通りなので別にどうという事は無いが。

すると、王子サマは兵士達とコソコソと話し出した。

 

「…………どういうことだ? 魔力が全く無いだと………クッ………役立たずではないか………」

 

「落ち着いてください殿下………! まだ分かりません…………デジモンを連れている事から、デジタルナイトとしての資質はあるのかもしれません」

 

「だが、成長期だぞ……!?」

 

「もしかしたら、まだデジモンとあったばかりという可能性も…………」

 

なんかコソコソ話しているが、普通に聞こえてるぞ。

すると、兵士が俺に近付いてきて、

 

「失礼。つかぬ事をお聞きしますが、あなたはそちらのデジモンと出会ってどの程度なのですか?」

 

そう聞いてきた。

 

「………ドルモンと初めて出会ったのは8年前だが?」

 

だから普通に答えてやる。

実際には、6年の空白があるから、実質一緒に居たのは2年位なんだがな。

 

「は、8年…………」

 

兵士は驚愕したように狼狽えると、再び王子サマと話し出し、

 

「8年経っても成長期のままとは……………やはりこいつはハズレか………」

 

「残念ながらその様です………おそらく、召喚の際に何らかの不手際があり、勇者に相応しく無いモノが間違って召喚されてしまったのだと………」

 

だから聞こえてるっての。

 

「仕方ない………私は勇者である3人を連れて行く。お前はこの役立たずに然るべき処置をしておけ………」

 

「了解しました………!」

 

然るべき『処置』ね。

そう聞こえた瞬間、兵士の剣の鞘を握る手に僅かに力が籠ったみたいだから、つまりそう言う事なんだろう。

どうやらこの『召喚』も良くないパターンの様だな。

まあ敵対するなら容赦する気はない。

俺は拳を握ろうとして、

 

「殿下!! 何を為されているのですか!?」

 

バンッ、という音と共に、扉が壊れると思う位勢い良く押し開けられ、その向こうから4、50代と思われる年齢のダンディーな金髪のおじさんが現れた。

 

「チッ…………フォルダ公爵か…………!」

 

王子サマは舌打ちをしつつ顔を顰めた。

突然状況が変わった俺は、握ろうとした拳を緩める。

一先ず静観する事にした。

フォルダ公爵と呼ばれたダンディーなおっさんは、カッカッカッ、と早歩きで王子サマに歩み寄ると共に、俺達召喚された者達を見回すと、悲観そうな顔をした。

そして、王子サマに向き直ると、

 

「殿下………! あなたは御自分が何をされたのか理解しているのですか!?」

 

フォルダ公爵は、王子サマを叱る様にそう叫ぶ。

 

「私は国の為に為すべきことを為しただけだ」

 

王子サマは自分は正しい事をしたと言わんばかりにそう言い切る。

 

「この世界とは関係の無い者達を召喚し、無理矢理戦わせることが為すべき事ですか!?」

 

「無理矢理とは人聞きの悪い。彼らは運命神デニティス様の導きによって召喚された者達だ。この世界を救う事は、彼らの『運命』なのだよ」

 

「くっ………!」

 

「まあ、そちらの男はどうやら手違いで召喚された様だがね」

 

王子サマは、見下すような視線で俺を見る。

 

「そちらの男はここに残り然るべき『処置』を受けていただく! 勇者の3名は私と共について来て頂こう!」

 

王子サマは、召喚された俺以外の3人を促し、この部屋を出て行こうとする。

すると、

 

「待たれよ!」

 

フォルダ公爵が呼び止める。

 

「この者は、我がフォルダ公爵家で『保護』させて頂く」

 

その言葉に、俺は軽く目を見開いた。

 

「………フン、好きにするが良い」

 

王子サマは、もう俺に興味は無いのか、そう吐き捨てるようにそう言うと、3人と兵士達を伴って部屋を出て行った。

フォルダ公爵が俺に向き直ると、最初に頭を下げた。

 

「我が国の王子が失礼した」

 

フォルダ公爵は頭を上げると、

 

「私は、ロレンツォ・アルファ・フォン・フォルダ。このサーバー王国のフォルダ公爵家の当主だ」

 

「……………黒騎 大士。こっちは相棒のドルモン」

 

礼儀正しく自己紹介をしてきたのでこちらからも名乗る。

 

「君達には詫びねばならない。神託とは言え、この世界に関係の無い者を強制的に呼び出してしまった事………謝って済む問題ではないが、申し訳なかった」

 

「…………その謝罪は受け取りましょう。とりあえず、俺が今知りたいことは、元の世界に帰る方法はあるのかということなんですが?」

 

「申し訳ない。召喚の術式も神託によって齎されたものだ。我々では未解明な部分も多い。現時点で送還の方法は分からないのだ」

 

フォルダ公爵は申し訳なさそうに頭を下げる。

そんなあやふやなモノを良く使う気になったものだ。

まあ、この世界も『神』の信仰がかなり高いようだが。

トータスでいうエヒト位はあるのか?

召喚に『神』が関わってるとなると、ハジメでもそう簡単にこの世界に来ることは出来ないだろう。

目の前のフォルダ公爵は、どうやら召喚には反対派だったようだが。

 

「………それで、俺はこれからどうなるんでしょう?」

 

俺がそう尋ねると、

 

「先程も言った通り、我がフォルダ公爵家で保護する。そこで君の身の振り方を決めたいと思う」

 

「…………わかりました」

 

そう言われ、俺はフォルダ公爵の後について部屋を出た。

 

「……………………4度目の異世界召喚………か……………」

 

俺は小さくそう呟き、また面倒くさい事となったと溜息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 






はい、オリジナル異世界編第1話です。
オリジナリティーの欠片も無いと言われればそれまでですが。
多分一番のツッコミどころは、あのパチモン勇者君だと思います。
まあ、あの国民的アニメを馬鹿にするつもりはありません。
ただ、設定的に便利だっただけであって。
因みにキャラの名前についてはパチモン勇者君以外は適当に決めました。
王子様と公爵のファミリーネームについては、まあ、少し考えましたが。
物語オリジナルは初挑戦なので皆さまからの反応に戦々恐々です。
設定グダグダですが、生暖かい目で見ていただければ幸いです。
それでは、次も頑張ります。


P.S 来週は仕事が忙しく、休日出勤の可能性もあるので更新できないかもしれません。
   ご了承ください。
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