ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第4話 実戦訓練

 

 

 

 

デジタルナイト養成学院に編入して2日目。

朝起きた後、自室のドアから廊下に出ると、

 

「あ、おはよう、タイシ!」

 

すぐ横から聞き覚えのある声がした。

そちらを向けば、昨日の授業中に俺に声を掛けてきた金髪碧眼の少年。

 

「ああ、おはよう………確か、カイル………だったか………?」

 

俺は確認の為にそう問いかける。

 

「うん、そうだよ」

 

あっている事に内心ホッとした。

すると、俺に続いてドルモンも部屋から出てくる。

カイルと目が合うと、

 

「あ、おはよう!」

 

ドルモンから挨拶をした。

 

「あ、うん………おはよう………」

 

カイルは驚いたように目を丸くし、

 

「ね、ねえタイシ………もしかして、デジモンと一緒に寝てたの?」

 

そんな質問をしてきた。

 

「ああ、そうだけど?」

 

俺は頷く。

 

「へ、へぇ………珍しいね………」

 

こっちの世界の常識からしてみれば、騎馬を自分の部屋に連れ込んで一緒に寝てるようなもんだから、よっぽどの変人にみられるんだろうな。

別にどういう目で見られようと関係無いが。

 

「ところでカイル。今日は実戦訓練らしいが、デジタルダンジョンって何処なんだ?」

 

「あ、タイシは昨日編入してきたばかりだから知らないんだね。じゃあ朝食を食べたら一緒に行こうよ! 案内するよ!」

 

「わかった。よろしく頼む」

 

カイルに案内を頼み、俺達は食堂へ向かった。

 

 

 

 

 

平民用の食堂はバイキング方式であり、並べられた料理を好きなだけ皿にとって食べるというものだ。

この方式はドルモンの分も含めて持ってくる事が出来るので、俺達にとっては行幸だった。

平民用の料理は、パンにハムにサラダといった簡易的なものだ。

特に不味くは無いし、十分に腹も膨れるのだが、1つ不満を言わせてもらえば、米が無いことが不満だ。

基本的に、朝はご飯に味噌汁と言うスタンスなので、なんか調子が狂う。

 

「まあ、贅沢を言ってる状況じゃないのは分かるけどさ…………」

 

ぶっちゃけ〝宝物庫〟の中には非常用の食料の1つとして米が100㎏ほど入ってるので、同じく〝宝物庫〟の中に入っている飯盒で作ろうと思えば作れるのだが。

まあ食べ物に困っていない時に非常用の食料に手を出す馬鹿な真似はしない。

 

「「いただきます」」

 

俺はドルモンと一緒に合掌してそう言う。

すると、

 

「何それ?」

 

隣に居たカイルが不思議そうな声を漏らした。

 

「ん? 今のは俺の故郷の食事をする前の習慣だよ。食べる『命』や料理を作ってくれた人に感謝して、手を合わせて『いただきます』って言ってから食べるのが俺の故郷の習わしなんだ」

 

「へぇ~、この国で言う御祈りみたいなものかな?」

 

「似たようなもんかな」

 

カイルは興味深げに俺の話を聞いている。

カイルと話をしつつ、朝食を食べ終えると、

 

「じゃあ行こうか。案内するよ」

 

カイルがそう言って席を立つ。

 

「頼む」

 

俺とドルモンも後に続いた。

その道すがら、

 

「あっ、デジタルダンジョンに案内する前に厩舎に寄ってもいいかな? 俺のデジモンを連れて行きたいんだ」

 

そうカイルが言う。

 

「ああ、構わない」

 

俺は問題無いと頷く。

 

「ありがとう」

 

カイルは笑みを浮かべると寮から少し離れた所にある大きな体育館のような建物に向かう。

今更だが、この学院の敷地はめちゃめちゃ広い。

生徒の数はあまり多くは無いが、その生徒達全員にデジモンが居る。

しかも殆どが成熟期なので、訓練用の敷地も含めると、相当な広さが必要になるからだろう。

余談だが、模擬戦用のコロシアムのような場所まである。

因みに移動だが、場所が近ければ徒歩だが、距離がある場合は馬車を使うことになっている。

カイルがその建物に入ると、中央に一直線に道が走っており、その両サイドに壁で仕切られたデジモン専用の区画が並んでいる。

窓からは、中に居る成熟期デジモンの顔がチラホラと見える。

 

「………………まんまデッカイ厩舎だな………」

 

デジモン達の扱いが、まんま家畜のような扱いに俺は溜息を吐く。

カイルはその道を進んでいくと、ある一つの区画に近付く。

その区画には、他の区画の様に成熟期デジモンの顔は見えなかった。

カイルは、人間用と思われる扉に近付き、扉を開け、

 

「アグモン!」

 

厩舎の中に呼びかけた。

 

「カイルーーー!」

 

元気のいい声が聞こえ、扉の向こうから黄色い影が飛び出してくる。

それは、黄色い身体の爬虫類型デジモン。

 

「アグモンか………しかも…………」

 

俺は視線をアグモンの腕に移す。

そのアグモンの両腕には、赤いベルトが巻かれていた。

 

「マサルのアグモンと同じタイプのアグモン………」

 

ハルケギニアで出会った喧嘩番長を思い出しながら小さく呟く。

 

「そのアグモンが、カイルのパートナーか?」

 

「うん、そうだよ。これが僕のデジモンのアグモンだよ!」

 

「そうか…………いいパートナーデジモンだな」

 

俺は思った事をそのまま口に出した。

 

「ありがとう。俺のデジモンを褒めてくれて嬉しいよ」

 

カイルの言葉を聞くと、俺はカイルのアグモンに向き直り、

 

「初めましてだな。俺は大士。こっちが俺のパートナーのドルモンだ」

 

「初めまして。ドルモンだよ」

 

俺の言葉に続き、ドルモンがそう名乗る。

 

「俺はカイルのデジモンのアグモンだ」

 

「ああ、よろしく」

 

自己紹介を済ませると、再びデジタルダンジョンへ向かい始める。

訓練用デジタルダンジョンとやらは、デジモンの厩舎から近く、5分ぐらい歩くだけで辿り着いた。

それは古代遺跡を改築しており、古代遺跡のシステムが生きていて、それをそのまま訓練に使っているらしい。

入り口の前には、既にチラホラとクラスメイト達が集まっている。

因みにそのデジモン達は成熟期デジモンだ。

俺達も訓練開始時間まで待っていると、

 

「あ、カイル君! タイシさん!」

 

聞き覚えのある女の子の声が聞こえた。

そちらを向くと、

 

「あっ、エミリア!」

 

カイルがその名を呼ぶ。

クラスメイトのエミリアさんが歩み寄ってきて、その傍らにはアグモンが居た。

どうやらエミリアさんのパートナーもアグモンの様で、こちらは通常のアグモンだ。

 

「おはよう」

 

俺はそう挨拶する。

 

「おはようございます」

 

エミリアさんもそう返してきた。

その時気付いたが、そこに居たのはエミリアさんだけでは無かった。

 

「………おはよう」

 

エミリアさんの斜め後ろに、見覚えのある銀髪のショートカットの少女が居たからだ。

 

「お、おはよう………えっと………君は確か教室の俺の席から、通路を挟んで向こう側に居る…………」

 

「………エリス」

 

短く静かにそう名乗る。

俺は、エリスと名乗った彼女は、シャルロットやユエと同じように、口数の少ない人物なのだろうと判断した。

 

「そうか………昨日も自己紹介で名乗ったが、大士だ」

 

「…………覚えてる。あなたのデジモンと進化と魔力の考察は、とても興味深かった………」

 

エリスさんはそう言う。

 

「あ~、勘違いしないように言っておくが、あれは俺がそう思っているというだけの話だ。絶対に間違って無いとは言わないし、他人に強要もしない。ただ、他人に如何言われようと、その考えを変えるつもりも無いけどな」

 

俺がそう言うと、エリスさんはコクンと頷く。

すると、エリスの足元に緑色の芋虫のようなデジモンが居る事に気が付いた。

 

「………ワームモンか…………」

 

「…………私のデジモン」

 

俺の呟きにエリスさんがそう言う。

俺は、エミリアさんのアグモンと、エリスさんのワームモンに向き直ると、

 

「初めまして、昨日からエミリアさんやエリスさん達のクラスメイトになった大士だ」

 

「…………あれ? 僕に言ってるの………? ああ、えっと………僕はアグモン」

 

「えっ………? あ、うん………よろしく………ワームモンです…………」

 

アグモンとワームモンは俺の自己紹介に一瞬呆けた後、あっと気付いたように名乗り返した。

 

「………どうした?」

 

アグモンとワームモンの様子がおかしかったことに問いかけると、

 

「………普通、デジモンに自己紹介する人はまず居ない」

 

エリスさんがそう答える。

 

「………そうなの?」

 

俺はエミリアさんに訊ねると、

 

「は、はい………とても珍しいんじゃないかと…………」

 

エミリアさんは当たり障りのない答えを言っているが、若干頬が引きつっている。

ああ、これって結構な変わり者を見て、どう反応していいか困ってる状況だな。

 

「………そう言うもんか? 俺にとっては普通の事なんだがな」

 

とは言え、その程度で俺はやり方を変えるつもりは無い。

その時、時間になったのか担任の先生が現れた。

 

「皆さん、揃っていますか? 同じチームの人がちゃんと居るか確認してください!」

 

そう呼びかける先生。

因みに今更だが、先生は女性で名前はアリア。

平民出身の先生だ。

それはともかく、

 

「……チームって?」

 

俺はカイルに訊ねる。

 

「デジタルダンジョンに挑むときは、数人のグループでチームを組むんだよ。人数が多い方が不測の事態に対応できるし、安全の為の措置らしいよ」

 

「ふーん…………って、俺はどうなるんだ?」

 

俺は昨日編入してきたばかりだから、当然ながらどこのチームにも入っていない。

すると、

 

「あ、タイシ君のデジモンは成長期なので、暫定的にカイル君のチームに入ってください」

 

先生もその事に気付いたのかすぐにそう言ってくれた。

 

「………だそうだ。とりあえずよろしく頼む」

 

「あ、うん。よろしく」

 

突然の事にカイルは驚いたようだが、すぐに応えてくれた。

 

「それで、他のチームメイトは?」

 

俺がそう聞くと、

 

「私達ですよ」

 

「ん」

 

すぐ後ろでエミリアさんとエリスさんが笑みを浮かべていた。

 

「そうか。改めてよろしくな」

 

「はい!」

 

「よろしく………」

 

エミリアさんは嬉しそうに。

エリスさんは淡々とそう言った。

先生の先導で建物の中に入る。

外からの見た目は石造りの建物だったが、内部は近代的………

というより、近未来的な作りだった。

通路や壁、天井は金属で出来ており、巨大な成熟期デジモンが優に通れる広さがあり、明かりに至っては電気のような照明だ。

明らかにこの世界の物とは文明レベルが違い過ぎている。

その通路を進むと、広間に出る。

そこは幾つかの壁て区切られており、壁で区切られた区画ごとに、四角い光が集まったような塊が存在していた。

そして、それには俺にも見覚えがある。

 

「………デジタル………ゲート………?」

 

俺の記憶にあるデジタルゲートそのものだった。

すると、

 

「では、これよりチームの成績に合わせたデジタルダンジョンへ入って頂きます」

 

先生がそう言う。

 

「……………もしかして、ゲート毎に難易度が違うのか?」

 

先生のセリフからそう予想し、カイル達に問いかける。

 

「うん、そうだよ。この部屋の右から左に行くに従って難易度が高くなるんだ」

 

区画は全部で5つ。

つまり、5段階の難易度があるって事か。

 

「へ~」

 

クラスメイト達が我先にとゲート前に並び始める。

俺達の前に並んだ生徒達は、殆どが右から2番目に並び、2チームだけ3番目に並ぶ。

そして、俺が入ったカイル達のチームは、

 

「…………………」

 

一番右。

つまり、一番難易度が低いゲートだった。

すると、

 

「ハハッ! 相変わらず落ちこぼれ達は一番低い難易度すらクリアできてないみたいだぜ!」

 

「この学院に入って1年以上経つのに、1人も成熟期に進化させる事が出来て無いもんな!」

 

俺達に向かってヤジが飛ぶ。

 

「ッ……………!」

 

カイルは悔しそうに俯き、拳を握りしめる。

良く見れば、エミリアさんやエリスさんも気落ちしている。

 

「でも良かったじゃないか! 同じ成長期の仲間が出来て!」

 

どうやら俺の事もヤジの対象に入ったようだ。

とは言え、この程度では別に気にしない。

見た目で判断するだけの小物だ。

 

「…………ごめんカイル………俺達が進化出来ないせいで………」

 

カイルのアグモンが申し訳なさそうにそう言う。

 

「ッ! アグモン達の所為じゃないよ! ただ俺が未熟なだけさ……!」

 

カイルはそう言うが、悔しさは隠せない。

 

「…………だったら見返せばいい」

 

俺はそう言う。

 

「「「えっ?」」」

 

俺の言葉にカイル達3人が声を漏らす。

 

「さっさとこの難易度のダンジョンをクリアして、あいつ等を見返せばいいさ」

 

俺の言葉に、3人はポカンとした。

 

「…………はは。そう簡単に行けば苦労しないんだけどね………」

 

カイルは苦笑しつつそう呟く。

その様子から、どうやら今までに何度も挑んでリタイアしている様だ。

 

「でも、タイシさんの言う通りですよ! 頑張ってクリアすすれば、見返す事だって出来ます!」

 

エミリアさんが明るい声でそう同調する。

 

「わたしも、そう思う………」

 

エリスさんも同意した。

 

「……………うん、そうだね。よぉし! 今日こそこのデジタルダンジョンをクリアして、皆をあっと言わせてあげよう!」

 

「「うん!」」

 

「ああ」

 

カイルの言葉に俺達は頷く。

そして、

 

「クリア条件は最奥に居るボスの撃破。制限時間は4時間。制限時間までには戻るようにしてください。ボスを倒せばデジタルダンジョンから脱出できるゲートが開きますが、ボスを倒せなかった場合は入り口まで自力で戻ってください。制限時間を過ぎた場合、自力での脱出は不可能と見なし、救出部隊が送り込まれます。救出部隊に救助された場合、今回の訓練の評価は0点となるので注意してください。それから分かっているとは思いますが、デジタルダンジョン内では魔法が使えません。その事は忘れないように」

 

先生がルールを説明する。

 

「それでは時間です。訓練、開始してください」

 

先生がそう言うと、

 

「じゃあ皆! 行こう!」

 

カイルを先頭に、そのゲートを潜った。

 

 

 

一瞬光に包まれた後、次の瞬間には石造りの部屋の中に居た。

レンガのようなブロック状の石を組み合わせて作られた、迷宮と言えばこれ、と言うべきものだった。

俺達のすぐ後ろには、今通って来たであろうゲートが輝いている。

 

「ここがデジタルダンジョン…………」

 

一見別の場所に転移してきたようにしか思えないが、俺は試しに〝宝物庫〟を見えないように使おうとして見た。

しかし、うんともすんとも言わない。

 

「……………もしかしてここは、一種のデジタルワールドなのか………?」

 

俺は自分の思った事を小さく呟く。

すると、

 

「タイシ、ここはもうダンジョンの中なんだ。ぼうっとしてると危ないよ!」

 

カイルから考え事をしていた事の注意を受ける。

 

「ああ、すまない………」

 

俺は考えるのを後にして、ダンジョンの攻略に集中する事にした。

通路を進む道すがら、俺はこのダンジョンについて説明を受けていた。

 

「このランクのダンジョンは、一番難易度が低いだけあって、敵として出てくるのは全部成長期なんだ。だけど、複数で襲ってくる時があるから油断は禁物だよ」

 

「了解」

 

カイルの説明に俺は相槌を打つ。

その時、

 

「大士! 何か居る!」

 

前方で警戒していたドルモンが叫ぶ。

 

「ッ!」

 

俺は即座に気を引き締めた。

薄暗い通路の向こう側から現れたのは、3体のデジモン。

1体は両生類型のベタモンによく似ているが、体色が黄緑色のモドキベタモン。

後の2体は、幼虫型のクネモンによく似た見た目だが、体色が緑色のドクネモン。

 

「早速現れたな!」

 

カイルが現れた3体のデジモンを見て気合を入れた声を出す。

 

「ふむ………ここは………」

 

俺は思いついた事を提案する事にした。

 

「カイル! 俺はこのチームでは新参者だ! だから一先ず、お前達の今までの戦い方を見たい!」

 

「えっ? わ、分かった!」

 

突然の事にカイルは困惑したようだが直ぐに頷いてくれた。

 

「そう言う訳だドルモン! ここは一先ず様子見だ」

 

「うん!」

 

ドルモンは迷わず頷く。

 

「よぉし! やるぞ、皆!」

 

「「「「「うん/おう!!」」」」」

 

カイルの号令で皆が頷く。

 

「行け! アグモン!」

 

「アグモン、頑張って!」

 

「お願い……ワームモン……!」

 

それぞれが自分達のデジモンに声を掛ける。

カイルのアグモン、エミリアさんのアグモン、エリスさんのワームモンが前に出た。

その時、モドキベタモンの周りに水が渦巻き、水柱が立つ。

モドキベタモンの必殺技、『アクアタワー』だ。

その水柱をアグモン達に向かって放った。

それに対し、アグモン達は、

 

「「ベビーフレイム!!」」

 

「ネバネバネット!!」

 

正面から迎え撃った。

って、ちょっと待て!

その技の相性だと…………

 

「「「うわぁっ!?」」」

 

思った通り、水属性の『アクアタワー』は、火属性の『ベビーフレイム』2発と、攻撃力を持たない『ネバネバネット』を撃ち破り、幾分か威力を減衰させたが、それなりの威力を持ったまま3体に襲い掛かり、吹き飛ばした。

 

「くっそー! 負けるな!」

 

「うぉおおおおおおおっ! ベビーバーナー!!」

 

立ち上がったカイルのアグモンが口の中で炎を溜め、熱線として吐き出す『ベビーバーナー』を放つ。

モドキベタモンはその場を飛び跳ねて熱線を躱すが、その後ろに居たドクネモン1体が巻き込まれた。

 

「よし! まず1体!」

 

カイルはガッツポーズをする。

しかし、その時、飛び跳ねたもう1体のドクネモンがクチバシから毒を撒き散らした。

 

「うわぁっ!?」

 

油断していたカイルのアグモンは、その毒を諸に受けてしまい、その場で倒れる。

 

「ううっ! 体が動かない………!」

 

カイルのアグモンはマヒしたようで動けない。

そのアグモンに向かってドクネモンが飛び掛かり、尾の先に付いている角でアグモンを突き刺そうとする。

だが、

 

「シルクスレッド!!」

 

ワームモンが吐いた針状に硬質化した糸が空中に居たドクネモンに突き刺さって動きを鈍らせ、

 

「ベビーフレイム!!」

 

エミリアさんのアグモンが放ったベビーフレイムがドクネモンを呑み込む。

 

「やりました! これで残り1体です!」

 

エミリアさんが叫ぶ。

しかし、残っていたモドキベタモンがトサカから衝撃波を放つ『ブレードフィン』で攻撃してきた。

 

「うわぁっ!?」

 

「あうっ!?」

 

その衝撃波により、エミリアさんのアグモンとエリスさんのワームモンが吹き飛ばされる。

 

「アグモン!?」

 

「ワームモン……!?」

 

エミリアさんとエリスさんが悲鳴に近い声を上げた。

モドキベタモンは、追撃しようと周囲に水を渦巻かせ、

 

「………ドルモン!」

 

「メタルキャノン!!」

 

ドルモンが放った鉄球の不意打ちを受け、データに分解された。

 

「「…………………………」」

 

突然の事に、エミリアさんとエリスさんは呆けていたが、

 

「………悪いな。見てらんなくてつい………」

 

この戦いは傍観を決め込もうと思っていたが、思った以上に戦い方が下手だったので思わず介入してしまった。

 

「……………ありがとう。お陰で助かった………」

 

エリスさんがそうお礼を言って来た。

 

「は、はい! 助けてくれてありがとうございます!」

 

エミリアさんもハッとなってお礼を言う。

 

「タイシ!」

 

カイルが駆け寄ってくる。

見れば、アグモンもマヒが治って来たのか起き上がっていた。

 

「ありがとう! 助かったよ!」

 

カイルもそう礼を述べる。

 

「…………まあ、様子見のつもりだったんだが、つい、な」

 

自分で言った事を自分で破ってるから、若干後ろめたい気持ちもある。

 

「そんな事ないよ! タイシが助けてくれなかったら危なかった!」

 

カイルは純粋な目で俺を見ながらそう言ってくる。

俺はちょっと照れ臭くなって、頬を掻きながら目を逸らした。

 

「ところで、タイシから見て俺達の戦い方は如何だった?」

 

「………………………」

 

そう言われて俺は言葉に詰まる。

俺は少し考え、

 

「キツイ本音と着飾った世辞。どちらが好みだ?」

 

カイル達に選択させることにした。

3人は一旦顔を見合わせると、神妙な顔をして、

 

「キツイ本音でお願い」

 

「私も同じで」

 

「同意」

 

3人の言葉に、俺は一度息を吐く。

そして、

 

「なら遠慮なく言わせてもらう。俺からすれば今の戦い方は下手糞としか言えない」

 

「「「ッ………!」」」

 

俺の言葉に、3人が息を呑む。

 

「戦術も何もなく、真正面からの正面衝突。それは力の差が諸に出る戦い方だ。『力』が上回っていれば確かに勝てる。だが、力を振り絞る戦い方は消耗が激しく、連続での戦闘には向かない。戦うのがこの一戦だけならいいが、ダンジョンは当然だが戦闘が連続して起こる場所だ。たった1回戦闘しただけでこれほどまでに消耗してしまったら、ダンジョン攻略など無理だ」

 

次の難易度のゲートに並んでいたクラスメイト達のデジモンは、全て成熟期だった。

今思えば、成長期しか現れない最低ランクの難易度でも、正面からの戦いを繰り返していれば、成熟期に進化しないとクリアできないのも納得だ。

 

「それに、必殺技の相性を考えていない所もマイナス評価だ」

 

「必殺技の相性………ですか?」

 

エミリアさんが首を傾げる。

 

「簡単な話だが、火に水をかけるとどうなる?」

 

「消える………」

 

エリスさんが答えた。

 

「その通りだ。さっきはモドキベタモンの『水属性』の必殺技に、アグモン達が『火属性』の必殺技を放った。当然だが火は水に弱い。いくら2体掛かりとは言え、相性の悪い必殺技で立ち向かえば、撃ち負けてしまうのは当然だ」

 

「あっ…………」

 

エミリアさんが気付いたように声を漏らす。

 

「それと、戦闘はデジモン達の自由意思に任せっぱなしっていうのもどうかと思うぞ?」

 

「えっ? でも、デジタルダンジョンじゃ魔法は使えないし、身体強化も発動しないから、出来る事は無いと思うんだけど………」

 

カイルがそう言う。

俺は軽く息を吐き、

 

「別に直接戦う事だけが出来る事じゃない。折角一歩引いた所から戦況を見渡せるんだ。パートナーに有利になる様に指示をする事も立派な戦いだと思うぞ?」

 

「「「?」」」

 

俺の言葉に3人は首を傾げる。

おい、まさかこんなテイマーとして基本的な事すらしていないのか?

デジモンを進化させて、その『力』を正面からぶつけて敵を倒す。

まるで『兵器』みたいな扱い方だと俺は感じた。

俺は一度溜息を吐き、

 

「なら、次の戦闘は俺達に任せてくれ。俺達の戦い方を見せる」

 

「わ、わかった………」

 

カイル達は困惑しつつも頷いた。

 

 

 

俺とドルモンを先頭に通路を進むと、広い部屋の入口が見えた。

 

「ッ…! 止まれ……!」 

 

俺は片手を横に広げてカイル達を制止する。

 

「どうしたの?」

 

カイルが訪ねて来るが、俺は口の前に人差し指を立て、黙る様に伝える。

カイルが驚きつつも自分の口を塞いだ。

俺とドルモンは忍び足で入り口に近付き、物音を立てないように部屋の中を窺う。

部屋の中には、5体の棍棒を持った緑色の小鬼のようなデジモン――ゴブリモンがいた。

 

「……………」

 

様子を伺い、ゴブリモン達が俺達に気付いて無いことを確認すると、俺はドルモンと目を合わせる。

 

「…………」

 

お互いに頷き合うと、俺は右手でゴブリモンの1体を勢い良く指差す。

それを合図として、

 

「メタルキャノン!!」

 

ドルモンが鉄球を放った。

不意打ちの先制で放たれた鉄球は一番近くに居たゴブリモンの後頭部に直撃、

 

「ギッ!?」

 

そのゴブリモンはデータに分解されて消滅する。

残り4体のゴブリモンが驚いたようにこちらに振り向くが、

 

「メタルキャノン!!」

 

ドルモンが放った2発目が、もう1体のゴブリモンの眉間に直撃。

同じく消滅する。

残りの3体が向かって来たので、

 

「ドルモン! ダッシュメタルで牽制しつつ回り込め!」

 

「わかった! ダッシュメタル!!」

 

ドルモンは駆け出し、メタルキャノンよりも一回り小さな鉄球を連続して放つ。

放たれる無数の鉄球に、ゴブリモンの1体は足を止め、棍棒で鉄球を叩き落とした。

しかし、

 

「ギギッ!?」

 

鉄球の1発が、そのゴブリモンの脛に当たり、そのゴブリモンは転ぶ。

 

「ドルモン!」

 

俺はそのゴブリモンを指差す。

 

「メタルキャノン!!」

 

ドルモンは、狙い通りそのゴブリモンにメタルキャノンを発射。

止めを刺す。

 

「ッ! ドルモン! 前に跳べ!」

 

「ッ………!」

 

俺の言葉にドルモンは迷わず前に飛び出す。

その直後、ドルモンの居た場所に棍棒が振り下ろされた。

残り2体の内の1体が隙を狙っていたのだ。

しかし、その動きは俺には丸見えだった。

 

「振り向きざまに…………!」

 

「メタルキャノン!!」

 

俺の指示に合わせてドルモンは鉄球を放つ。

渾身の一振りを外したゴブリモンは隙だらけであり、無防備な所にメタルキャノンを受けて吹き飛び、消滅する。

そして、

 

「ドルモン! 俺に向かって撃て!」

 

俺から見て、向こうを向いていたドルモンにそう指示する。

 

「メタルキャノン!!」

 

ドルモンは迷わず、指示通りに俺に向けて鉄球を放つ。

鉄球は真っ直ぐに俺に向かい、そして、

 

「ギガッ!?」

 

俺に向かってきていた最後のゴブリモンの後頭部に直撃。

ゴブリモンはぱったりと倒れて消滅した。

最後に俺は、他の敵が潜んでいないか辺りをよく確認し、他に敵が居ない事を確認して息を吐いた。

それに伴い、ドルモンが戻って来る。

 

「ドルモン、良くやったぞ………!」

 

「うん!」

 

俺はドルモンの頭を撫でつつ労いの言葉を掛ける。

ドルモンは嬉しそうにその手を受け入れた。

すると、

 

「「「「「「ポカーン……………」」」」」」

 

3人とそのデジモン達が、言葉通りポカーンとした表情で俺達を見つめていた。

俺は皆に向き直ると、

 

「とまあ、俺達の戦い方はこんな感じだ」

 

そう言った。

その言葉でカイルがハッと我を取り戻し、

 

「す、すごいよタイシ! 同じ成長期なのに、5体を相手に無傷で勝つなんて!」

 

俺を称賛する様に叫ぶ。

 

「まあ、負ける気は無かったが、無傷で勝てたのは不意打ちで2体を倒せたのが大きい。見る奴が見れば、卑怯と言われても言い訳出来ない戦い方だしな。だけど、これが俺達の戦い方だ。俺達に取って負ける事は『死』。正々堂々戦って負けるぐらいなら、卑怯と言われようと意地汚く生き残る道を選ぶ」

 

俺は自分の『戦い』を口にする。

 

「別にお前達にそうしろとは言わない。ただ、俺はこの戦い方を変えるつもりは無いとだけ言っておく」

 

おそらくこの世界のデジタルナイトの戦いは、騎士らしく正々堂々が主流なんだろう。

そんな奴らからすれば、俺達の戦い方は正に邪道だ。

 

「それに………俺は『デジタルナイト』じゃなく、『デジモンテイマー』だしな…………」

 

デジモンと絆を育み、共に戦い、勝利に導き、何が何でも生き残る。

それが俺の『デジモンテイマー』としての戦いだ。

 

「……………タイシ」

 

カイルが話しかけてきた。

 

「………何だ?」

 

俺がそう返すと、

 

「……………タイシの戦い方を、俺達に教えて欲しい」

 

カイルは驚くべき一言を言い放った。

 

「………いいのか? 俺の戦い方は、『邪道』だぞ」

 

「今のままじゃ、俺達は前に進めないと思う。だから、どんな方法でも試してみたいんだ!」

 

カイルからは、強くなりたいという意志が感じられた。

そして、それはエミリアさんやエリスさんも一緒だった。

 

「「………………」」

 

2人は真剣な眼で俺を見つめる。

 

「…………まあ、その位なら別に構わないが」

 

俺は了承する。

そして、ダンジョンの探索を進めながら、俺はアドバイスをする事にした。

 

 

 

 

 

 

――約3時間後

 

 

大部屋の中には、ゴブリモンやモドキベタモンなど、10体ほどの成長期デジモンが屯していた。

そこへ、

 

「ベビーフレイム!!」

 

1発の火球が飛来し、ゴブリモンの1体を丸焦げにする。

部屋の中のデジモン達が一斉に振り向くと、

 

「やーい! こっちこっち!」

 

「こっこまでおいでー!」

 

大部屋の入り口の前で、カイルとアグモンが大袈裟に挑発していた。

部屋の中のデジモン達が一斉にカイルとアグモンに向かって殺到する。

 

「来た来たー!」

 

「逃げろー!」

 

カイルとアグモンは一目散に逃げだす。

入り口から通路に入り、デジモン達もそれを追って外に出た。

デジモン達の視線の先には、背を向けて逃げるカイルとアグモンの姿が映っている。

自分達が有利だと判断したデジモン達は、一斉に追いかけだし、

 

「「「ギャブッ!?」」」

 

「「「グゲッ!?」」」

 

「「「ゴブッ!?」」」

 

一斉に転倒した。

何故なら、部屋の入り口の外の床には、粘着性の糸が張り巡らされており、デジモン達はそれに足を取られて転倒したのだ。

それは、ワームモンのネバネバネット。

少し使い方を変えれば、この通り簡単な罠に早変わりだ。

 

「今だ!」

 

俺は合図を出す。

 

「メタルキャノン!!」

 

「ベビーフレイム!!」

 

「シルクスレッド!!」

 

「ベビーバーナー!!」

 

物陰に隠れていた俺達と、振り向いたカイル達が、一斉に必殺技の集中砲火を浴びせる。

ネバネバネットに足を取られて動けなかったデジモン達は、為す術無く攻撃を受け、消滅していった。

全てのデジモンを倒し終えると、

 

「……………凄いや………あれだけ居たのに、無傷で勝っちゃうなんて…………」

 

カイルは自分達でやった事なのに、信じられない様な声でそう言う。

 

「す、すごいです………! 少し戦い方を変えるだけで、こんなにも簡単に進めるなんて………!」

 

「信じられない………」

 

エミリアさんやエリスさんも驚愕の声を漏らしている。

いや、俺が教えたのは基本的な戦術だけなんだけどな………

 

「お疲れ、ドルモン」

 

「うん! やったね、大士!」

 

俺はドルモンと手を叩き合う。

すると、

 

「………………」

 

エリスさんが俺をジッと見ている事に気付いた。

 

「………どうかしたか?」

 

「…………………………」

 

エリスさんは何も言わずにジッと俺達を見つめた後、ワームモンに歩み寄った。

 

「エリス……?」

 

ワームモンがエリスを見上げて声を漏らす。

すると、エリスさんはしゃがみ込み、

 

「お疲れ様、ワームモン」

 

ワームモンに労いの言葉をかけ、その頭を撫でた。

 

「………………ッ! うん!」

 

ワームモンは一瞬呆けたが、感極まった様にハッとなると、嬉しそうに頷いた。

 

「エリスさん…………」

 

エミリアさんがエリスさんを見て、何かを決意したような表情になると、

 

「アグモン………」

 

エミリアさんも、アグモンに歩み寄り、

 

「いつもありがとう、アグモン」

 

お礼を言いながら、その頭を撫でた。

 

「…………エミリア………!」

 

アグモンは嬉しそうにエミリアさんの名を呼ぶ。

そして、俺はジッとカイルを見た。

カイルは2人の様子を見て驚いていたが、足元にアグモンが居る事に気付く。

そのアグモンは、何かを期待するような眼差してカイルを見ていた。

 

「え、あ……う………」

 

すると、カイルは照れ臭そうにして、

 

「その………いつも助かってるよ、アグモン………」

 

「カイル―ーーーー!!」

 

その言葉を聞くと、カイルのアグモンはカイルへと飛びつく。

その様子を見て、俺は自然と口元が綻んだ。

デジモンとパートナーの絆が深まる所は、傍から見ていても良いものだと思う。

デジモン達との絆を深めた俺達は、先へ進むことにした。

そして、明らかにボス部屋だと思われる立派な門構えをした部屋の前に辿り着く。

 

「いよいよボスだね………」

 

カイルが緊張した面持ちでそう言う。

 

「ここは難易度が一番低いダンジョンだから、ボスも成長期の筈。だけど、ボスは今まで出てきた成長期よりも強いと言われている」

 

エリスさんがそう説明した。

 

「了解した。油断なく行こう」

 

俺はそう言ってボス部屋の入り口を潜る。

すると、ボス部屋の中央には、1体のデジモンが居た。

身体が鉱石で出来たそのデジモンは、

 

「ゴツモンか………!」

 

鉱石型デジモンであるゴツモン。

すると、ゴツモンは俺達を認識したのか、一気に襲い掛かって来る。

こちらに駆けだしてきたかと思うと、直前で高く跳び上がった。

ゴツモンはその堅い身体と重量による落下攻撃を仕掛けてきたが、

 

「散れ!」

 

俺が叫ぶと、それぞれが四方に散らばる。

ゴツモンの落下攻撃は床を砕いて小さなクレーターを作るが、俺達4組のコンビの丁度中央にくる形になった。

 

「集中攻撃!」

 

俺はゴツモンを指差しながら叫ぶ。

 

「メタルキャノン!!」

 

「「ベビーフレイム!!」」

 

「シルクスレッド!!」

 

四方からの攻撃がゴツモンに殺到する。

爆発が起きてゴツモンの姿が覆い隠された。

 

「やった!」

 

カイルがガッツポーズをする。

しかし、それはフラグだ。

俺は爆煙の中に動く影を見つけた。

 

「いいや! まだだ!」

 

俺は叫ぶ。

 

「アングリーロック!!」

 

「伏せろ!!」

 

必殺技の叫びと俺の叫びはほぼ同時だった。

慌てて伏せたカイルとアグモンの頭上を超硬度の鉱石が通過する。

それは後ろの壁に当たり、大きく砕いて凹みを作った。

 

「あ、あぶなっ………!?」

 

カイルは冷や汗を流す。

 

「油断するな! 相手はボスだぞ!」

 

「ご、ごめん!」

 

カイルは謝りながら気を取り直す。

俺は改めてゴツモンを見る。

まだ動きに違和感はないが、無傷と言う訳ではなく所々にダメージが見て取れる。

 

「ドルモン!」

 

「メタルキャノン!!」

 

ドルモンの放った鉄球がゴツモンの頭に当たる。

ゴツモンはよろめいたが、鉄球は弾かれて明後日の方向へ飛んでいった。

しかし、良く見れば鉄球が当たった部分の鉱石にはひびが入っている。

 

「攻撃は通じている………!」

 

俺は一瞬考えると、

 

「エリスさん! ワームモンのネバネバネットだ!」

 

「………そっちで良いの?」

 

俺の言葉にそう問いかけてくる。

 

「ゴツモンは身体が鉱石で出来ているから防御力が高い! だけど、その重量の所為で動きは遅い! ネバネバネットで動けなくするんだ!」

 

俺の言葉にエリスさんは頷き、

 

「わかった………ワームモン……!」

 

「ネバネバネット!!」

 

ワームモンが口から粘着性の糸を吐き出す。

その糸がゴツモンに振りかかる。

ゴツモンは最初その糸を気にしては居なかったが、

 

「ネバネバネット!!」

 

次々に振りかかる粘着性の糸に、自分の動きが鈍り始めている事に気付いた。

すると、ワームモンに狙いを定め、襲い掛かって来る。

 

「ああっ……!?」

 

ワームモンは幼虫型の為、余り素早い動きは得意ではない。

ゴツモンはワームモンに飛び掛かり、

 

「させるか!」

 

横からドルモンが体当たりをしてゴツモンを吹き飛ばした。

 

「大丈夫?」

 

「あ、ありがとう………」

 

ゴツモンは壁に激突したが、平然と起き上がって来る。

おそらく、これからもワームモンを狙ってくるだろう。

それなら、

 

「ドルモン! ワームモンを背負うんだ!」

 

俺はそう指示する。

 

「ッ! そうか!」

 

ドルモンは身を屈め、

 

「乗って!」

 

「う、うん……!」

 

ワームモンは一瞬困惑したが、ドルモンの背に乗る。

 

「アングリーロック!」

 

ゴツモンが鉱石を飛ばしてきたが、その直前でドルモンが駆け出し、その攻撃から逃れた。

 

「ダッシュメタル!」

 

ドルモンが駆け回りながら鉄球で牽制する。

 

「ワームモン!」

 

俺はワームモンに呼びかける。

 

「う、うん! ネバネバネット!!」

 

ワームモンがドルモンの背から粘着性の糸を吐きかける。

ゴツモンはその糸から逃れようとしたが、

 

「てやっ!」

 

「おりゃぁっ!!」

 

2体のアグモンがそうはさせないとゴツモンに攻撃してその足を止めさせる。

 

「ネバネバネット!!」

 

次々と糸を吹き掛けるワームモン。

やがて、

 

「ウゴ……………!」

 

身体中が糸塗れになり、最早まともに動く事も叶わなくなったゴツモン。

俺は頃合いかと判断し、

 

「今だ! 叩き込め!!」

 

全力攻撃の指示を出した。

 

「メタルキャノン!!」

 

「ベビーバーナー!!」

 

「ベビーフレイム!!」

 

「シルクスレッド!!」

 

4体のデジモン達の必殺技の一斉攻撃。

今度は一撃では終わらず、次々に必殺技を放つ。

やがて、

 

「ウゴァーーーーッ!?」

 

ゴツモンが叫び声をあげてデータ粒子に分解された。

それを見たカイル達は、

 

「……………やった?」

 

「………今度こそ?」

 

「…………倒した?」

 

実感が湧かないのか、少し呆けた様子でそう呟く。

俺は頷き、

 

「ああ。今度こそ確実に倒したよ」

 

その事実を口にする。

 

「いやったぁーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

「やったやった!」

 

「クリア出来た………!」

 

それぞれが喜びを表現する。

そして、

 

「やったぞアグモン!!」

 

カイルがアグモンに抱き着く。

 

「ありがとう! アグモン!」

 

エミリアさんも涙を潤ませながらアグモンを抱きしめる。

 

「ん、ありがとうワームモン………」

 

エリスさんはワームモンを抱き上げた。

それぞれが感動に浸る中、ボス部屋の奥にあった階段の上に光るゲートが出現した。

 

「………あれが出口か…………」

 

俺は少し空気読んで無い事を自覚しつつ、声を掛ける事にした。

 

「皆、喜んでる所悪いけど、タイムリミットが近い。折角クリアしたのに不合格になったら残念だろう?」

 

俺の言葉に皆がハッとなる。

 

「そ、そうだね! 皆、ダンジョンから脱出するまでが訓練だ! 行こう!」

 

カイルの号令に皆が頷き、出口のゲートに向かって歩き出した。

その足取りは、疲れているだろうにも関わらず、力強くしっかりとしている。

そして、その歩みのまま出口のゲートを潜り抜けた。

 

 

 

 

光に包まれた視界が戻ってくると、元の訓練場に居た。

そこで、

 

「カッ、カイル君達!?」

 

先生が大層驚いた表情で俺達を見ていた。

 

「えっ!? 出口専用のゲートから現れたって事は………!」

 

「はい! ダンジョンクリア、完了しました!」

 

カイルはそうはっきりと言い切った。

先生は心底信じられない様な表情で俺達のデジモン達を見回す。

 

「嘘………誰のデジモンも成熟期に進化して無いのにクリアするなんて…………」

 

先生はそう呟く。

すると、すぐに気を取り直し、

 

「とにかく、初級とは言えデジタルダンジョンのクリア、おめでとう。これで次からもう一段高い難易度のデジタルダンジョンに挑む資格を持てたわ」

 

俺達を称賛してくれる。

 

「今日はお疲れ様。今日の授業は終わりだから、あとは自由に解散して貰って構わないわ」

 

「「「「はい!」」」」

 

先生の言葉に俺達は返事を返した。

 

「さて、腹も減って来たことだし、飯にするか。ドルモン」

 

「うん!」

 

俺はドルモンを伴って歩き出す。

すると、

 

「タイシ! 一緒に行こうよ!」

 

カイル達が付いてきた。

 

「別に構わないが?」

 

俺は了承する。

そのまま俺達は歩いていき、食堂への道と、デジモンの厩舎への分かれ道に差し掛かった時だった。

俺はドルモンと共に食堂への道へ曲がる。

カイルとエミリアさんは互いのアグモンと別れ、アグモンたちは厩舎への道へ。

2人は食堂への道に曲がる。

そして、ワームモンを抱いていたエリスさんは………

 

「あれ? エリス、こっちは厩舎じゃないよ?」

 

抱かれていたワームモンがエリスさんにそう言う。

すると、

 

「………いい。一緒に行く」

 

エリスさんは驚くべきことを口にした。

 

「エリス!?」

 

「エリスさん!?」

 

カイルとエミリアさんが驚愕の声を上げる。

すると、エリスさんは俺を見て、

 

「………私はタイシを見習う事にした」

 

静かにそう言う。

 

「………別に無理して真似る必要は無いぞ?」

 

「無理はしていない。私がしたいからそうするだけ」

 

言い切るエリスさん。

 

「そう言うなら別に止めはしないが………」

 

「今日、デジタルダンジョンをクリアできたのは間違いなくタイシのおかげ………今まで立ち止まってた私達が、前に進むことが出来たのもタイシのおかげ。だから、あなたを見習えば、もっと先へ進める気がした」

 

「「………………………」」

 

エリスさんのその言葉を聞くと、カイルとエミリアさんは顔を見合わせた。

そして、互いに頷くと、

 

「アグモン! お前も来い!」

 

「アグモン! 一緒に行こう!」

 

それぞれのアグモンへ呼びかけた。

互いのアグモンは一瞬顔を見合わせるが、

 

「「うん!」」

 

すぐに嬉しそうな顔になって俺達の後を追って来た。

 

 

尚、その後の食堂でカイル達と話し合い、正式にカイル達のチームに入ることになった。

それと、同じチームになった事で、エミリアさんとエリスさんからは呼び捨てで良いと言われ、それぞれエミリア、エリスと呼ぶようになった。

 

 

 

 

 

 

・デジタルダンジョンの設定

 

 

 

古代文明の遺産。

古代に存在した超文明が開発したデジモンの訓練施設。

ゲートの内部は人工的に作り出された小さなデジタルワールドになっており、倒されたデジモンのデータはその内部で循環、再びデジモンとなって生み出される。

現代ではそのシステムは解明されていないが、システムは生きており、デジタルナイト養成学院の戦闘訓練に使われている。

 

 

 






オリジナル編4第話です。
珍しくドルモン無双を披露してみた。
流石に戦術もくそも無いのはやり過ぎましたかね?
でもって、大士の教えで皆さんレベルアップ。
今までクリアできなかったダンジョンをクリアしました。
さて、大士の存在は何処まで影響を与えるのでしょうか?
乞うご期待。



所で話は変わりますが、異世界編でのヒロインその1のクラウディアなんですが、書いてる最中で思い出したんですけど、クラウディアと言う名前は深淵卿の嫁の1人に居ました。
そこで相談なんですが、名前変えた方がいいですか?
先に言っておきますが、この小説では深淵卿の嫁のクラウディアは直接出てくる予定はないです。
出てきたとしても精々名前だけです。
実際には嫁にいますからお間違えの無いように。
自分なりにはクラウディアと言う名は気に入っているので出来る事なら変えたくは無いのですが、ややこしいと思う人が多いなら変えます。
↓にアンケート取るので、皆様の声をお聞かせください。

クラウディアの名前を変えるべきか?

  • ややこしいので変えるべき
  • ファミリーネーム違うし、問題ない
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