ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第7話 疾風のスティングモン!!

 

 

 

波乱の冒険者実習から数日後。

実習の結果は、俺達がデススコーピオンの素材を提出したためにぶっちぎりのトップとなってしまった。

尚、当然ながら真偽を疑う意見も出たが、そこはリティナ王女の一言で全て片が付いた。

流石は王女様と言うべきだろう。

因みに、その実習の後からカイルが物思いに耽る事が多くなった。

上の空と言うか、ポケーっと何かを考えていたと思うと、顔を赤くしたり。

まあ、何を考えているかぐらいは、何となく予想は付くが…………

そして今日の授業が終わり、最近恒例になったエミリアの勧誘合戦が始まる。

クラスメイト達がエミリアを囲んで、相変わらず調子のいい事を言いまくっていた。

エミリアは断り続けているが、クラスメイト達は一向に諦める様子を見せない。

 

「エミリアも大変だね」

 

傍らにいるドルモンがそう零す。

俺はやれやれと眺めていると、ガラッと音がして教室の扉が開いた。

俺はそちらに目をやり―――――固まった。

教室に入って来たのは3人。

その3人は、赤い制服を着ている事から貴族クラスの女子だという事が分かる。

その3人はカツカツと上品な仕草で歩いてくると、その雰囲気に気圧された生徒達が自然と道を開けていく。

そして、エミリアの前で立ち止まると、

 

「ごきげんよう、エミリアさん」

 

困惑するエミリアに声を掛けた。

そのエミリアは、

 

「お、王女殿下!?」

 

思わず声を上げた。

そう、今教室に入って来た3人とは、リティナ王女、クラウディア、アリスの3人。

リティナ王女を先頭に、残り2人が付き従う様な形だ。

その3人を眺めていると、ふとクラウディアの視線がこちらを向く。

 

「ッ!?」

 

俺と目が合ったクラウディアは思わず目を見開き、頬を赤く染めながら慌てて目を逸らした。

多分、あの時の口移しを思い出したんだろうな………

そう意識すると、俺も若干照れる。

すると、

 

「本日は提案があって参りました」

 

「て、提案ですか!?」

 

エミリアは緊張からか声が震えている。

 

「はい。エミリアさん、わたくし達のチームに入ってはいただけませんか?」

 

リティナ王女がそう言った瞬間、ザワッとクラス中が騒めいた。

 

「お、王女様が直々に………!?」

 

「やはりエミリアがグレイモンを育てた事は、貴族クラスでも噂になっているという事は本当だったのか………!」

 

クラスメイト達が、エミリアの返事に注目する。

 

「わ、私を王女殿下のチームにですか………!?」

 

エミリアは驚愕の表情で声を上げる。

 

「ええ。グレイモンを育て上げた類まれなるデジタルナイト。是非ともわたくしのチームに入って頂きたいですわ」

 

「で、ですが、私は平民で………」

 

「わたくしはデジタルナイトの優劣に、貴族かそうでないかは関係が無いと思っております。たとえ平民だとしても、優秀であれば採り上げる。わたくしはそうありたいと思っております」

 

その言葉に、俺は王女様の評価を上方修正しておいた。

すると、リティナ王女はエミリアに改めて向き直り、

 

「エミリアさん。どうかこの提案を受け入れてもらえませんか?」

 

ニッコリと笑ってそう問いかけた。

 

「わ、私は……………」

 

エミリアは困った様に一度俯くと、考え込む様な仕草をしたが、

すぐに目を開けて顔を上げると、

 

「………ッ、すみません! その提案はお受けできません!」

 

頭を勢いよく下げながら、提案を断った。

その言葉に、先程とは違うざわめきが教室中に広がる。

しかし、リティナ王女はその言葉を聞いても驚いてはいなかった。

寧ろ、僅かに口元を吊り上げている。

 

「その理由をお聞きしても?」

 

「私達は今まで、カイル君やエリスさん………それに、タイシさん達と一緒に頑張って来たんです! 私のアグモンだけがグレイモンに進化したからと言って、今まで一緒に頑張って来た皆を捨てるような真似なんて、したくありません!」

 

エミリアは、リティナ王女はの目を真っすぐに見ながらそう言った。

 

「王女殿下からの提案を蹴るなんて無礼であることは分かっています! ですが、皆大切な『仲間』なんです! 本当にごめんなさい!」

 

「そうですか…………」

 

すると、リティナ王女はエミリアの言葉を聞くと頷き、ニッコリと笑みを浮かべ、

 

「それなら、『仲間』の皆さんも一緒ならどうでしょうか?」

 

更なる提案を出した。

 

「「「えっ!?」」」

 

その言葉には、エミリアだけではなく、カイル、エリスも驚愕の声を漏らした。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! エミリアだけならともかく、何で俺達まで………!?」

 

カイルが思わず口を挟んだ。

 

「エミリアさんのグレイモンを味方に引き入れておきたい………と言う理由では不満ですか?」

 

「…………エミリアのグレイモンは確かに強い。でも、成長期を………悪く言えば、足手纏いを3体も増やしてまで引き入れる利があるとは思えない。それにあなたは『王女』。『提案』ではなく『命令』すれば、エミリアの意思は関係無く引き入れる事は可能」

 

エリスがそう発言する。

 

「ではこう言い直しましょう。わたくしは、あなた達にも『期待』しているのですよ」

 

「『期待』………?」

 

「ええ。あなた方は成長期のまま進化させられない所為で、落ち零れと評されていたようですが、成長期のままという事は、文字通り『成長』の可能性が残されているという事に他なりません」

 

すると、王女はエミリアの方を向くと、

 

「現に、同じく落ち零れと言われていたエミリアさんは、グレイモンに進化させるという偉業を成し遂げました。彼女と同じ『可能性』が、あなた達に秘められているという事を『期待』する事は、間違っているでしょうか?」

 

「…………でも、『可能性』は可能性………賭けるにしても分が悪すぎる」

 

「………では、『期待』するもう1つの理由をお教えしましょう。それは、あなた方がデジタルダンジョンの実習で成し遂げた『偉業』です」

 

「『偉業』?」

 

そんな偉業を成し遂げた覚えのない俺は思わず呟く。

 

「ええ。初級のデジタルダンジョンを成長期4体のみでクリアし、レベル2のダンジョンもグレイモンに進化したとはいえ初見で、しかも、成熟期が1体に成長期が3体と言う編成でクリアしたことは、デジタルナイト養成学院始まって以来の偉業です」

 

あれってそんな凄い偉業だったの?

 

「いや、でも、あれは…………」

 

カイルも、初級ダンジョンはともかくとして、レベル2のダンジョンは他のチームの漁夫の利を得たうえで、進化と言う偶然に助けられたという認識からか、素直に喜べない。

俺から言わせれば、あの進化は偶然ではなく、パートナーとの絆が起こした必然だと思っているが。

 

「それと、強いて言うなら、あなた達は『信用』出来るからでしょうか」

 

「信用?」

 

俺が思わず呟く。

すると、

 

「我々のチームには私達3人の他にも数名の取り巻きとも言える者達がいたのだが………この前のデススコーピオンの襲撃の時には一目散に逃げだしたよ」

 

クラウディアが呆れた様にそう言った。

ってか、王女様ほっといて逃げんなよ。

下手しなくても、処刑案件じゃないのか?

 

「学生の身でデススコーピオンと戦えと言うのも酷な話です。その事も踏まえ、直接的な罰は与えませんが、わたくしの彼女達に対する『信用』は地に落ちました」

 

俺の疑問に答えるように、リティナ王女がそう言う。

王女からの『信用』を失うって、ある意味終わったな。

 

「それに対し、あなた方は逃げるどころか助けに来てくれました。それだけでも、逃げた取り巻き達よりも『信用』に値します」

 

「きょ、恐縮です………ですが………」

 

王女様に褒められるというのは、カイルも畏れ多いのだろう。

迷っているカイルを見て、

 

「それでは、一度一緒にデジタルダンジョンの実習に参加するというのは如何でしょう? そこであなた達の実力が見合わないと判断すれば、この話は無かったことに………というのは?」

 

「えっ………えっと………そう言う事なら………」

 

これ以上断り続けるのは失礼だと判断したのか、カイルはその案を受け入れた。

まあ、平民のカイル達にとって、王女様と話しているだけでゴリゴリと精神力が削られていく事だろう。

カイルならよっぽどの事が無い限り、あの王女様から罰せられるという事は無いだろうが。

 

「確か平民クラスは明日がデジタルダンジョンの実習日でしたね? 今回はわたくし達がそちらの予定に合わせますわ。それでは、突然の来訪で失礼いたしました」

 

リティナ王女は一度頭を下げると、踵を返して教室の出口へ歩いていく。

その際、アリスがエリスと僅かに目を合わせ、

 

「………フン!」

 

バカにするように視線を切ってそのまま歩いて行った。

 

「アリス………」

 

エリスは悲しそうな表情で俯いた。

………前も思ったが、何かアリスのエリスに対する態度に違和感があるんだよなぁ………

やっぱ訳ありかな?

とは言え、無理にエリスから聞き出すつもりは無い。

いきなりの王女の来訪に、混乱に陥っている教室を眺めながら、そう考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

今日はデジタルダンジョンでの実戦訓練の日なんだが……………

 

「今日はよろしくお願いしますね? カイル様、皆さん」

 

リティナ王女がニッコリと笑みを浮かべながらそう言う。

リティナ王女の傍らには、成長期のデジモンと変わらない体躯の聖獣型デジモンである、テイルモンが居る。

 

「こちらはわたくしのデジモンであるテイルモンです」

 

「テイルモンだ」

 

「よろしくね! 俺はカイル! こっちはアグモン!」

 

カイルがそう挨拶すると、リティナ王女とテイルモンが目を丸くする。

デジモンに挨拶する人間は珍しいという話だし、驚かれるのも仕方ない。

 

「ふう…………いきなりで申し訳ない。今日はよろしく頼む」

 

クラウディアがガルルモンの隣で申し訳なさそうにそう言う。

 

「久し振りだねタイシ、ドルモン。今日はよろしく」

 

「ああ」

 

「よろしくね、ガルルモン」

 

クラウディアとガルルモンの挨拶にそう返す俺達。

 

「………ふん! 精々私達の足を引っ張らない事ね!」

 

「アリス………」

 

アリスは相変わらずわざとらしく罵って来る。

そして、彼女の後ろには青い幻竜型のデジモンであるエクスブイモンが控えていた。

そのエクスブイモンの表情は、少し悲しそうにしているように見える。

 

「エクスブイモンだ」

 

「うん………久しぶり」

 

「久し振り、ブイモン」

 

エリスはアリスのエクスブイモンと言葉を交わす。

すると、リティナ王女はキョロキョロと周りを見渡し、

 

「ところで、エミリアさんのグレイモンが見当たらないようですが………」

 

不思議そうにそう零す。

すると、エミリアはデジヴァイスを取り出すと、

 

「グレイモン、リアライズ!」

 

それを翳しながらそう告げる。

デジヴァイスの画面からデータ粒子の渦が勢い良く出てくると、それがグレイモンの形を成し、瞬く間にグレイモンがその場に現れた。

 

「こ、これは………!」

 

「いきなりグレイモンが現れた………!?」

 

「なっ………!?」

 

その事実に、リティナ王女、クラウディア、アリスが驚いている。

 

「これはデジヴァイスというものらしいです。この機器の中に、デジモンを入れる事が出来るんです。不思議ですよね?」

 

エミリアはそう説明する。

だが、クラウディア達は驚いてはいるものの、その驚きは思ったよりも小さいものだった。

俺は何故と疑問を持ったが、

 

「デジモンを収納できるなんて、まるで、異世界から召喚された勇者様の1人の様ですね………」

 

その言葉に俺はハッとなった。

そう言えば、あのパチモン勇者君のモンスターボックスとやらも、デジモンを収納できるんだったか。

で、そのパチモン勇者君たちも今は貴族クラスに通ってるそうだから、その様子を見る機会があってもおかしくないな。

 

「異世界から召喚された勇者様…………?」

 

エミリアが首を傾げる。

 

「ええ、貴族クラスには、異世界から召喚された3人の勇者様がおられるのです」

 

リティナ王女の言葉に、クラウディアの視線が俺に向く。

俺は軽く肩を竦めた。

 

「勇者様が……………」

 

エミリアは、何処となく憧れを口にするかのようにそう呟いた。

 

「クラウディアには面白くない話かもしれませんが………」

 

リティナ王女の言葉に、俺は、ん?と思いながら視線を向ける。

 

「リティナ様、私の事はお気になさらず」

 

「んっ、こほん! 話が逸れましたね」

 

リティナ王女は咳払いをして話を変える。

 

「とにかく、今日1日はよろしくお願いします」

 

リティナ王女はそう言ってデジタルダンジョンの訓練場へと向かった。

 

 

 

 

俺達が今回挑むダンジョンはレベル3。

平民クラスでは、2チームしか到達していないダンジョンだ。

以前の様に、他のチームの漁夫の利を得る事は出来ないだろう。

そして、このレベル3のダンジョンは、成長期のデジモンがほぼ出現しなくなり、成熟期が殆どを締める。

そして、ボスは3体の成熟期らしい。

この学院に通う平民の殆どはこのレベル3の難易度のデジタルダンジョンがクリアできず、ここを超える者が所謂エリートと言われる区分に入る。

因みに貴族クラスは全員レベル3をクリアしているという話だが、何の事は無く、クラス一丸となって力尽くで攻略しているという。

リティナ王女からの情報である。

因みに例外として、パチモン勇者君を始めとした勇者3人が所属する王子サマのチームは、5人でクリアしたという話だが、パチモン勇者君の持ちデジモンに完全体が居たらしい。

パチモン勇者君のデジモンは6体いると聞いた気がするし、チームのデジモンも含めて、実質は10体でクリアしたことになるんだろうな。

この世界の戦い方では、少数でこのダンジョンをクリアするには完全体の力が必要だろう。

ゲートを潜った俺達は、先に入ったクラスメイト達から軽く睨まれるも、王女様が居るという事で何も言わずに行ってしまった。

因みに今回のフィールドは、広大な湖の畔だ。

湖の向こう岸に島に繋がる橋があり、あの島がボス部屋の様だ。

見るからに水系デジモンが出てきそうなフィールドだな。

 

「それでは参りましょう」

 

リティナ王女の言葉で、俺達も移動を開始する。

すると、

 

「ねえ、最初の敵はあんた達だけで戦いなさいよ」

 

アリスがそう発言した。

 

「アリス………!?」

 

クラウディアが驚愕するが、

 

「今回の探索は、あんた達の力を確認する意味もあるんでしょ? だったらあんた達だけで戦ってみるのが筋ってもんでしょう?」

 

アリスはまるで煽るような口調でそう言う。

 

「別に心配しなくても良いわよ? 無理だと思ったら手を貸してあげる。そうなったら、その程度の実力ってだけでしょ?」

 

なんか本当にワザとらしく煽ってくるな………

 

「アリス。そのような言い方は止めなさい。ですが、共に戦うにしても、あなた方の戦いを見ていないので何とも言えないことは確かです。ここはアリスの言う通り、最初の戦いはあなた方に任せても宜しいでしょうか?」

 

「あ、はい。別に構いませんよ」

 

カイルは何でもない様に言った。

カイルも大分アグモン達の力を信じられるようになっているな。

そんな話をしながら湖の外周に沿って歩いていると、

 

「「「ゲコゲコッ!!」」」

 

3体のゲコモンが現れた。

 

「来たっ!」

 

カイルが警戒する様に叫ぶ。

 

「ゲコモンか………」

 

思わずあのマイクと言うクラスメイトを思い浮かべてしまう。

 

「タイシ! 指示を!」

 

カイルの言葉に、エミリア、エリス共に俺の言葉を待っている。

 

「よし! 俺達の戦闘の要は当然ながらグレイモン! ダンジョンをクリアするためには、最後までグレイモンの力が必要だ。と、いう事は………!」

 

「グレイモンの戦闘の負担を軽くすることが俺達の役目だね!」

 

カイルが全ていう前に俺の指示を理解する。

 

「そういうことだ。敵の気を引いて、グレイモンに集中させることは防げ! グレイモンの力なら、一撃で敵を倒せる!」

 

「「「了解!」」」

 

俺とドルモン、カイルとアグモンが互いにゲコモン達を挟み込む様に移動する。

 

「ドルモン!」

 

「アグモン!」

 

俺とカイルの言葉に、

 

「メタルキャノン!」

 

「ベビーフレイム!」

 

ドルモンとアグモンが鉄球と火球を放って2体のゲコモンに直撃させる。

その2体は、それぞれ俺達を睨み付けた。

しかし、

 

「ゲコォ!!」

 

牽制を喰らわなかった残りの1体が、ジャンプでグレイモンに飛び掛かる。

流石カエルと言うべきか、そのジャンプ力はグレイモンの全高を上回った。

 

「クラッシュシンフォ………!」

 

そのまま空中からゲコモンは破壊音波であるクラッシュシンフォニーを放とうとした。

しかし、

 

「ネバネバネット!」

 

何時の間にがグレイモンの頭の上に乗っていたワームモンが粘着性の糸を吐き、その顔に浴びせかける。

 

「モゴッ!?」

 

口とラッパを塞がれたゲコモンは音を奏でる事が出来ず、

 

「ふんっ!」

 

グレイモンの勢いのついた尾撃に思いきり吹き飛ばされ、湖の中にボチャンと沈む。

 

「グレイモン!」

 

「わかってる!」

 

グレイモンは、続けて俺達に攻撃してきているゲコモンに狙いを定め、

 

「メガフレイム!!」

 

豪火球を放って、ゲコモン2体を一気に飲み込んだ。

他に敵が居ない事を確認すると、

 

「やったね!」

 

「おう!」

 

カイルとアグモンがハイタッチする。

エミリアやエリスも自分のパートナーを労っている。

ふとクラウディア達を見れば、3人とも意外そうな顔をしていた。

 

「どうした?」

 

俺が尋ねると、

 

「いや………負ける事は無いと思っていたが、無傷で倒すとは思っていなかっただけだ………」

 

クラウディアがそう零す。

クラウディアでもそんな事で驚くのか…………

 

「ふ、ふん! 運が良かったわね!」

 

アリスは相変わらずだし。

 

「なるほど………やはり成長期でダンジョンをクリアしたというのは間違いでは無さそうですね………」

 

リティナ王女は何処かホッとした表情を見せる。

その視線は、相変わらずカイルの方を向いていた。

俺はそれを見て、とある仮説が浮かび上がる。

俺はクラウディアに近付き、

 

「…………なあクラウディア。ちょっと確認したいんだが………」

 

そう小声で話しかける。

 

「な、何だ………!?」

 

いきなり声を掛けた所為か、クラウディアは慌てた様に対応する。

 

「…………もしかして、王女様がエミリアを勧誘したのって、カイルを自分のチームに引き入れるための口実じゃ……?」

 

「うっ……!? 何故それを………!?」

 

ちょっとぐらい誤魔化すかと思ったが、クラウディアは素直に反応してくれた。

 

「いや、まあ、王女様の視線、ずっとカイルに釘付けだし…………」

 

「そ、それは…………」

 

「俺の当てずっぽうだが、カイルに惚れた王女様が、カイルを自分のチームに入れたいと思った。だが、落ち零れで平民のカイルを王族である自分のチームに入れるのは外聞が悪いし、邪推………というより、王女の気持ちに気付く輩が出てくる。そこで目を付けたのが、グレイモンに進化させたエミリアであり、エミリアが仲間思いである事を利用して、エミリアだけを誘うと断られることを前提に、カイルと………おまけで俺とエリスごと取り込んだって所か?」

 

「さ、聡いな………」

 

「あ、合ってた?」

 

俺の言葉に、クラウディアは深く溜息を吐くと、

 

「大方その通りだ。正直、リティナ様の立場をお考えになると、あまり褒められた事では無い………だが、リティナ様は仕えるべき王族である前に、私の友人なのだ………その友人の頼みでは……な………」

 

「なるほどね。ま、如何いう結末が待っているかは本人達次第って所か………」

 

王族と平民の恋。

障害は凄まじいだろうが可能性はゼロでは無いだろう。

実際に王女を嫁にした人物が身近に居るし。

これが一人娘とかだったら可能性は低いだろうが、王族と言えばあの王子サマがいる。

政略結婚に使われるだけで、リティナ王女が王位を継ぐ可能性は低いだろう。

可能性は無いわけじゃない。

カイルも満更じゃなさそうだし。

影ながら応援しておこう。

そんなテンプレな2人の関係はさておき、次のクラウディア達の戦い方はやはり脳筋気味だった。

 

「行け! ガルルモン!!」

 

「フォックスファイヤー!!」

 

湖から出てきたシードラモンのアイスアローを躱してフォックスファイヤーで攻撃する。

 

「そこです! テイルモン!」

 

「ネコパンチ!」

 

ゲコモンの音波攻撃を躱しつつ、殴りつけるテイルモン。

 

「行きなさい! エクスブイモン!」

 

「エクスレイザー!!」

 

ルカモンの超音波攻撃を防御しつつ、反撃のエクスレイザーで仕留める。

何故湖にイルカ型のルカモンが居るのかは知らないが。

3人のデジモンの内、ガルルモンとテイルモンは、どちらかと言えばパワーで押すよりスピードで翻弄するタイプの為、防御より回避を取るので継続戦闘能力はそれなりにある。

エクスブイモンはパワー寄りのバランスタイプと言った所か。

戦術はそこそこあるが、連携がなってない。

完全に個の力頼りの戦い方だ。

とりあえず、俺達は彼女達のデジモンを援護する方針で戦闘を進める事にした。

そんな中、

 

「キシャァアアアアアアアアアアッ!!」

 

「きゃぁっ!?」

 

「うわぁっ!?」

 

湖から奇襲してきたシードラモンがアイスアローを放ち、攻撃を受けそうになって体勢を崩したエリスとワームモン。

 

「エリス!」

 

俺は咄嗟に援護をしようとしたが、

 

「何やってるのよ! この愚図!!」

 

その前にアリスの声と共にエクスブイモンがシードラモンの頭を蹴り付け、

 

「エクスレイザー!!」

 

エクスレイザーを直撃させて湖に沈めた。

 

「あ………アリス………ありがと……」

 

エリスはお礼を言うが、

 

「勘違いしないで! あなたを助けたわけじゃないわ! 早く倒さないとリティナ様に危険が及ぶと思ったからよ!」

 

アリスはエリスを指差しながらそう叫ぶ。

 

「……………………………」

 

俺はそんなアリスをジッと見ていた。

その後も、

 

「とっとと下がりなさい!」

 

「邪魔よ!」

 

「早くしなさい! このノロマ!!」

 

事ある毎にアリスはエリスに罵声を浴びせる。

浴びせてはいるのだが……………

 

「アリスさん、酷いです………何であそこまでエリスさんの事を………」

 

エミリアが前を歩くアリスを見ながら、罵声を浴びせられたエリスを慰めるようにそう言う。

 

「うん………いくら何でも酷いと思う………」

 

カイルもエミリアの言葉に同意する。

 

「姉妹なんですから、あそこまで嫌わなくてもいいのに………」

 

エミリアが俯く。

エリスの事を可哀想だと思っているんだろう。

だが、俺の意見は違う。

 

「………いや、寧ろアリスはエリスの事好きすぎるだろ?」

 

先程からの行動を見ていて俺はそう判断した。

 

「「えっ?」」

 

「タイシ………?」

 

意外そうな顔をする、カイル、エミリア、エリスの3人。

 

「だってさっきから、言葉ではエリスの事を罵ってはいるが、アリスのやってることは、全部エリスを助けるための行動だぞ?」

 

そうなのだ。

さっきからアリスは言葉ではエリスを罵ってはいるが、その行動はエリスとワームモンを助ける行動ばかり。

エリスとワームモンを攻撃しようとしたデジモンをぶっ飛ばしたり、攻撃を受けそうになったエリスを突き飛ばしたりetc…………

 

「「あっ………!」」

 

「ッ………」

 

改めて彼女の行動を思い返したのか、3人がハッとなる。

 

「本当にアリスにとってエリスが如何でもいい存在なら、助けたりはしない筈だ。ま、それが意識しての事か、無意識かまでかは判断できないけどな」

 

俺は肩を竦めておく。

そのまま探索を進めていくと、撤退していくチームと擦れ違う。

彼らは、無傷に近い俺達のデジモンを見ると、忌々し気に睨みながら立ち去っていく。

まあ、王女のヒモ程度に思われてるんだろうな。

 

「今回の探索はスムーズですね。デジモン達も、いつもより余裕がある様に思えます」

 

リティナ王女がそう零す。

余裕があるんじゃなくて、体力の消耗を抑えるように立ち回ってるだけだがな。

ただ、俺達のデジモンの内、アリスのエクスブイモンだけは蓄積ダメージが大きい。

エリスを助ける為に大分無茶をしてるからな。

本人は認めないだろうが。

戦闘を繰り返しつつ、探索開始から3時間ほどしてスタート地点から対岸にあるボスがいる島へ渡る為の橋に辿り着いた。

見た所、デジモン達の残りの体力は、ドルモン、アグモン、ワームモンが大体7割ぐらい。

グレイモン、ガルルモン、テイルモンが5割前後。

エクスブイモンは約2割と言った所か。

なので、

 

「これからボスと戦う訳だが…………エクスブイモンは後ろに下がらせた方がいい」

 

「何でよ!?」

 

俺がそう言うと、当然の様にアリスが食いついてきた。

 

「エクスブイモンは消耗し過ぎている。そんな事にも気付かないのか……!?」

 

「ッ………!」

 

アリスも分かっているのか、俺の言葉に歯噛みする。

 

「だ、大丈夫だ! 俺はまだ戦える……!」

 

エクスブイモンは身体に力を入れながら握り拳を作る。

 

「強がりは止めろ。明らかにお前の攻撃を受ける回数は他のデジモン達よりも上だ。それに、自分の状態は正しく報告しないと作戦を立てた時に致命的な隙を晒すことだってある。それこそ、護るべき者を危険に晒すことだってな………!」

 

俺は、強がりの危険性を示唆する。

 

「ッ………アンタ、知らず知らずの内に仕切ってるけど、あんたにそんな権利あると思ってるの!?」

 

アリスはそう言ってくる。

 

「権利があるとは言わない。俺は、チームの安全を考えて提案しているだけだ」

 

「だったら黙ってなさ………!」

 

アリスが俺の言葉を否定しようとした時、

 

「アリス………!」

 

更なる声がアリスを黙らせた。

 

「リ、リティナ様…………」

 

リティナ王女は、アリスに対して厳しい目を向けている。

 

「あなたのエクスブイモンは明らかに消耗しています。タイシ殿の言う通り、エクスブイモンは後方へ下がらせた方が良いでしょう」

 

「ですが………!」

 

「わたくしはタイシ殿が間違った提案をしているとは思いません。現状を鑑みて、理に適った提案をしていると、わたくしは判断いたします……!」

 

「………………はい」

 

アリスは俯き、気落ちした表情になる。

すると、

 

「アリス、何もあなたが役立たずと申しているわけではありません。テイルモン達の消耗を抑えられたのは、間違いなくエクスブイモンの活躍があったからこそです」

 

「はい…………」

 

「ここからは、わたくし達に任せてください」

 

「…………はい………」

 

アリスは渋々と頷いた。

一先ず話が付いた俺達は、ボスがいるであろう島へ続く橋を渡る。

そこにある島は、芝生の様な草に覆われた円形で平面の島だ。

広さは直径50mぐらいだろうか?

この島の向こうにはこげ茶色をした丸い岩山?が見える。

そして、その前には2体の成熟期デジモン。

 

「…………シェルモンとモリシェルモンか…………」

 

巨大なヤドカリの様な殻にピンク色の軟体の身体を持つシェルモンと、シェルモンの亜種で黒っぽい身体をしたモリシェルモン。

つか、シェルモンとモリシェルモンは生息域が違った事によって別の進化を辿ったんじゃなかったか?

まあ、デジタルダンジョン内だから良く分からん生態系だ。

それはともかく、

 

「2体しか居ない………?」

 

事前情報ではボスは3体の成熟期の筈。

 

「クラウディア、もう1体は何処に………?」

 

俺は一応このレベルのダンジョンをクリアしたことのあるクラウディアに訊ねると、

 

「わからん………! 以前はちゃんと3体いた筈だ………! それに、ボスとして出てきたデジモンも違う………!」

 

「………毎回同じデジモンがボスとして出てくるわけじゃないのか…………」

 

俺は気を取り直すと、

 

「一先ず目の前に居る2体に集中だ。残り1体が何処に居るか分からない。注意を怠るな!」

 

俺は注意を促しながらそう叫ぶ。

 

「どうする? ここは戦力を分散して………」

 

カイルはそう言うが、

 

「いや、それよりも各個撃破した方が被害が少なくて済むと思う。成長期組でシェルモンの気を引き、3体の成熟期で一気にモリシェルモンを倒す。それからシェルモンに集中してからもう1体の成熟期に備える」

 

「なるほど………!」

 

俺の作戦にカイルも納得したように頷く。

 

「皆! タイシの作戦で行こうと思うけど、良いかな!?」

 

カイルが皆に呼びかけると、

 

「はい!」

 

「うん……!」

 

エミリアとエリスは今までの信用もあるのか、即座に頷いてくれる。

 

「これまでの戦闘で、彼の指示が的確だったことは確か………わたくしも構いません!」

 

「リティナ様がそう言うのであれば、私に異論はない」

 

リティナ王女とクラウディアも、一応頷いてくれた。

 

「なら、行くぞ!」

 

俺は掛け声を掛ける。

 

「ドルモン!」

 

「メタルキャノン!」

 

「アグモン!」

 

「ベビーフレイム!」

 

「ワームモン!」

 

「シルクスレッド!」

 

鉄球と火の玉と針状の糸をシェルモンの顔にぶつける。

 

「シェルッ!?」

 

シェルモンが僅かに怯み、こちらを向く。

 

「よし、さあこっちだ!」

 

カイルが声を上げてシェルモンを引き付ける。

俺達は、モリシェルモンとは逆方向に回り込んだ。

 

「シェルルルルルッ!」

 

シェルモンは前足を利用してこちらに迫ってくる。

 

「作戦通り………!」

 

シェルモン越しに向こうを見ると、予定通りグレイモン、ガルルモン、テイルモンがモリシェルモンを囲んでいた。

 

「ネコパンチ!!」

 

テイルモンが懐に飛び込み、アッパーカットの様にモリシェルモンの顎を打ち上げる。

 

「フォックスファイヤー!!」

 

状態が浮き上がった所にガルルモンの青い炎が浴びせられ、

 

「メガフレイム!!」

 

更に駄目押しとばかりにグレイモンの豪火球が撃ち込まれた。

 

「ジェェェェェェルッ!?!?!?」

 

成熟期の攻撃の3連撃には流石に耐えきれずにモリシェルモンは消滅する。

 

「よしっ!」

 

それを見ていたカイルがガッツポーズをする。

と、その時、

 

「………………ん?」

 

俺は違和感を感じた。

良くは分からないが、何か変だ。

 

「一体なんだ………?」

 

俺は呟く。

 

「シェェェェェェェルッ!!」

 

その時、シェルモンが前足で攻撃してくる。

 

「っと!」

 

ドルモン達は上手く飛び退いて避けたが、俺は戦闘中に余所見をしていた事を反省し、意識をそっちに持っていく。

そのシェルモンの後方から、グレイモン達がこちらに向かってきている。

そして、それと同時に再び違和感が沸き上がって来た。

 

「………何だ? 何かがおかしい………?」

 

俺は不安を拭えない。

その時だった。

 

「ちょっと! あの岩山動いてるわよ!?」

 

後ろの方からアリスの声が聞こえてきた。

 

「ッ!」

 

その時、俺は漸く違和感の正体に気付いた。

最初、橋の正面に合った筈のこげ茶色の岩山が、戦闘開始時とは別の場所にあったのだ。

その位置は、この島の左側に回り込んだ俺達から見て、11時の方向。

岩山は、戦闘開始時より右に移動していた。

そしてそこは、こちらに向かってくるグレイモン達の丁度死角。

そして同時に、俺は痛恨のミスに気付いた。

 

「しまった!! お前達! 逃げろ!!」

 

俺は出来る限りの声で叫んだ。

 

「「「えっ?」」」

 

グレイモン、ガルルモン、テイルモンの3体は、俺の叫びに呆けた声を漏らす。

次の瞬間、岩山が大きく隆起したと思うと、岩山の頂点辺りから超高圧の水が噴き出し、グレイモン達を飲み込んだ。

 

「「「うわぁああああああああああああっ!?!?」」」

 

突然の不意打ちに、グレイモン達はまともに受けてしまい、吹き飛ばされる。

 

「グレイモン!?」

 

「ガルルモン!?」

 

「テイルモン!?」

 

エミリア、クラウディア、リティナ王女が思わず声を上げた。

 

「な、何だ!? 岩山がグレイモン達に攻撃を!?」

 

目の前の事実に、カイルが驚愕の声を上げる。

 

「違う………! あれは岩山なんかじゃない…………!」

 

このフィールドは水のフィールド。

デジタルダンジョンのフィールドだけあって、普通のデジタルワールドとは違う。

これは、本来湖には生息しないデジモン。

深海に潜む、成熟期の中でも最大級の大きさを誇るであろうデジモン。

 

「…………ホエーモンだ!!」

 

俺はその正体を叫ぶ。

ホエーモンはその場で一度大きく跳び上がると、その巨体を露にする。

クジラの姿をしたホエーモンは、その巨体を水面に叩きつける。

凄まじい水柱と波が押し寄せる。

 

「「「「「「うわぁあああああああああっ!?」」」」」」

 

「「「「きゃぁああああああああああっ!?」」」」

 

俺は咄嗟に傍にいたエリスを庇いつつ、波に攫われないようにその場で耐える。

やがて水が引いていき、

 

「大丈夫か? エリス」

 

「うん………ありがとう、タイシ」

 

水浸しになりながらも、エリスは顔を上げて笑みを浮かべる。

その際、

 

「ッ………!?」

 

俺は思わず息を呑んだ。

何故なら、エリスの服が水に濡れてピッタリと身体に貼り付き、体のラインを浮かび上がらせた。

そこまではいいのだが、いつもの制服の上からでは分からなかったのだが、エリスのスタイルもアリスに負けずにかなり良かった。

シャルロットクラスはあるだろうか?

 

「………? どうかした?」

 

エリスが首を傾げる。

 

「いや! 何でもない! 何でもないぞ!?」

 

エリスって着痩せするタイプだったんだな…………

そこまで考えて、戦闘中に何を考えてるんだと自分を叱咤する。

俺は他の皆が波に攫われてないか周りを見渡す。

どうやら流されることは無かったようで、デジモンを含めて全員を確認できた。

だが、ホエーモンの必殺技、ジェットアローを不意打ちで諸に受けたグレイモン、ガルルモン、テイルモンのダメージは大きい。

成長期のデジモン達はまだまだ元気だが、形勢は一気に逆転してしまった。

俺が撤退を考えていた時、

 

「タイシ……!」

 

エリスが切羽詰まった様に叫ぶ。

シェルモンが頭部の触手の集まった部分を俺達に向け、

 

「ハイドロプレッシャー!!」

 

そこから高圧の水を噴出させてきた。

 

「くっ!」

 

俺はエリスを抱きしめながら横に飛ぶ。

高圧の水は、俺のすぐ後ろを通過した。

だが、

 

――ドガァン!

 

と爆発に似た音がして顔を上げると、シェルモンのハイドロプレッシャーによって橋が粉砕されていた。

 

「しまった! 退路が!」

 

俺は思わず叫ぶ。

これで撤退はほぼ不可能になってしまった。

 

「くっ………!」

 

俺は思わず歯噛みする。

これでもう、打てる手は限られている。

 

「………………………………大士」

 

ドルモンもそれは分かっているようで、俺に視線を向ける。

余り手の内は見せたくなかったんだが仕方ない。

こうなったのは俺のミスだ。

自分のミスは自分で挽回する。

俺はDアークに手を伸ばそうとして、

 

「ったく! 見てらんないわよ!」

 

その叫びと共に、青い影が俺の頭上を通過した。

 

 

 

 

 

 

 

【Side エリス】

 

 

 

 

 

「うぉおおおおおおおおおおっ!!」

 

その青い影――エクスブイモンがシェルモンの頭を殴りつける。

 

「シェルッ!?」

 

突然の攻撃にシェルモンは怯み、

 

「エクスレイザー!!」

 

胴部からX字のレーザーを発射する。

 

「シェェェェェルルルッ!?!?」

 

シェルモンは大きく後退した。

でも、エクスブイモンのダメージが大きいせいか、威力が低い。

 

「アリス!? エクスブイモン!?」

 

タイシが驚いたように叫んだ。

 

「フン! あれだけ偉そうな事言っておいて無様なものね!」

 

アリスは相変わらずの口の悪さでそう言う。

 

「ああ………自分でもそう思うよ」

 

タイシからは悔いている様子が伺える。

 

「うぉおおおおおおおっ!!」

 

エクスブイモンが再びシェルモンに殴りかかろうとする。

でもその時、ホエーモンが背中の噴出口から超高圧の水を放ってきた。

 

「なっ!? うわぁああああああああっ!!」

 

エクスブイモンは咄嗟に防御するけど、耐えきれずに吹き飛ばされて地面に倒れる。

 

「シェェェェェェェェルッ!!」

 

そこへシェルモンがエクスブイモンを押しつぶさんと圧し掛かった。

 

「くっ!」

 

エクスブイモンは押しつぶされまいと咄嗟にシェルモンの前足を腕で支えて受け止める。

 

「くぅっ………!」

 

「シェェェェルッ!!」

 

エクスブイモンは押し返そうとしているけど、ダメージがあるせいか徐々に押し込まれていく。

 

「エクスブイモン! 何やってるの!? しっかりしなさい!!」

 

アリスが叫ぶ。

 

「くっ、力がっ………!」

 

でも、エクスブイモンも限界が近い。

 

「エクスブイモンッ………!!」

 

アリスは悔しそうな表情で叫ぶ。

 

「……………アリス」

 

私はその後姿を見つめる。

アリス…………

私のお姉ちゃん…………

昔は今ほど仲が悪い訳じゃなかった。

ううん、寧ろ仲は良かったと思う。

今でこそアリスはファイル伯爵家の娘として持ち上げられてるけど、昔は違った。

それは、アリスが持つ魔眼。

アリスは昔、自分の持つ魔眼を制御できずによく暴走させていた。

意図せずに魔眼が発動し、両親や使用人を昏倒させてしまった時もあった。

そんなアリスは、周りから疎ましく思われていた。

私はそんなアリスに寄り添い続けた。

私とアリスは双子。

同質の魔力を持っているから、アリスの魔眼は私には効果が無かった。

だから私はアリスと色々話をした。

一緒に本も読んだ。

私が、物語に出てくる勇者のような人と結婚したいと言ったら、アリスは、『私の眼を見つめられる人』と言っていたのを覚えている。

だけど、アリスが魔眼を制御できるようになって少しした頃、突然アリスが私を突き放すようになった。

私に罵声を浴びせ、落ち零れと罵った。

だけど、それは本心じゃない。

アリスとずっと一緒にいた私だからわかる。

だって、私に何か言う時はいつも、アリスの眼は辛そうにしているから。

 

『………いや、寧ろアリスはエリスの事好きすぎるだろ?』

 

『だってさっきから、言葉ではエリスの事を罵ってはいるが、アリスのやってることは、全部エリスを助けるための行動だぞ?』

 

タイシがそれに気付いてくれた時、私は嬉しかった。

優しいお姉ちゃんであるアリスが悪く言われるのは辛いから。

今だって必死に私を護ろうとしてくれてる。

 

「アリス…………」

 

今にも押しつぶされそうなエクスブイモンを見て、アリスは涙を浮かべている。

 

「…………助けたい…………」

 

私はアリスを助けたい。

一緒に戦いたい………!

 

「エリス………僕は戦うよ!」

 

ワームモンの言葉に、私は目を見開く。

 

「ワームモン………!」

 

私は、ワームモンを見る。

 

「エリスが望むなら、僕は戦う…………! 優しいエリスの心に応えたいから………!」

 

ワームモンの真剣な眼。

その言葉に、私は自然と手を伸ばす。

 

「ワームモン…………」

 

ワームモンの頬に手を添える。

 

「私は………アリスを助けたい………!」

 

「うん…………!」

 

「私に力を貸して? ワームモン………!」

 

「エリスの為なら、僕は戦う。僕は、エリスのパートナーだから!」

 

ワームモンがそう告げた瞬間、ワームモンの身体から緑の光が放たれる。

そして同時に、添えていた手に、何かが握られるのが分かった。

その手を見ると、逆向きの卵の形をしたような、エミリアの持つデジヴァイスと同種であると思われるものが握られていた。

 

「これは………私のデジヴァイス………?」

 

私はそれを見て呟く。

すると、

 

「それは………D-3!?」

 

タイシがそう叫ぶ。

よくわからないけど、でぃーすりーと言うのがこのデジヴァイスの名前みたい。

 

「……………ワームモン!」

 

私は思うがままにそのデジヴァイスを掲げる。

 

「行くよ………! エリス!」

 

ワームモンが光に包まれながら飛び出した。

その瞬間、ワームモンが更なる強い輝きを放つ。

 

「ワームモン進化ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ワームモンの身体が大きくなり、背中から脱皮する様に中から人型の姿となって飛び出してくる。

緑色の外骨格と背中には4枚の昆虫の羽根を持ち、鋭い爪を持つ昆虫型のデジモン。

 

「スティングモン!!」

 

私はその姿を見て、

 

「ワームモンが………進化した………」

 

呆然と呟いた。

スティングモンは4枚の羽根を羽搏かせ、

 

「はぁあああああああああっ!!」

 

一直線にシェルモンの頭に接近。

脚が分身して見えるほどの連続蹴りを繰り出す。

 

「シェ、シェルルルルルルッ!?!?」

 

シェルモンは堪らずに後退する。

それによって解放されたエクスブイモン。

 

「ッ………! お前はッ!?」

 

「大丈夫か? エクスブイモン?」

 

スティングモンはシェルモンから目を放さずにそう言う。

 

「あれは………?」

 

アリスも呆然とスティングモンを見る。

 

「お願い……! スティングモン!」

 

「ッ………エリス!? まさかっ………!?」

 

アリスが驚愕の表情でスティングモンを見上げる。

デジヴァイスを握る私の手に力がこもると共に、デジヴァイスの輝きが増す。

スティングモンは一度シェルモンから距離を取った。

そして、右腕を振り被る。

 

「スパイキング…………!」

 

スティングモンの右腕の甲から鋭い突起が飛び出す。

その瞬間、シェルモンが頭部から高圧の水を噴出した。

だけど、

 

「…………フィニッシュ!!」

 

スティングモンはその右手を突き出しながら一気に突っ込んだ。

噴出された水を貫きながら弾いて行く。

そして、そのままシェルモンの頭部に突起が突き刺さった。

 

「シェェェェェェルゥゥゥゥゥゥゥッ!?!?!?」

 

シェルモンは叫び声を上げながら消滅する。

その時、ホエーモンから再びジェットアローが放たれた。

だけど、スティングモンは予想していたのか、羽根を羽ばたかせて軽やかに躱す。

 

「ッ! ホエーモンはデカいだけあってタフだ! 全員での一斉攻撃で一気に決めろ!!」

 

ハッとなったタイシから指示が飛ぶ。

 

「グレイモン! もう少し頑張って!!」

 

「ああ!」

 

「ガルルモン! 最後の力を振り絞れ!」

 

「おう!」

 

「テイルモン! もう一息です!」

 

「わかってる!」

 

「エクスブイモン! あなたならやれるはずよ!」

 

「勿論さ!」

 

「スティングモン!」

 

「任せて、エリス!」

 

傷付いたデジモン達が力を振り絞って立ち上がる。

 

「メガフレイム!!」

 

グレイモンが豪火球を放つ。

 

「フォックスファイヤー!!」

 

ガルルモンが青い炎を吐く。

 

「ネコパンチ!!」

 

テイルモンが渾身のパンチを繰り出す。

 

「エクスレイザー!!」

 

エクスブイモンが胴から光線を放つ。

一斉に放たれた必殺技は大爆発を起こし、ホエーモンの巨体を水面から大きく跳ね上げさせた。

その瞬間、

 

「スティングモン! 今!!」

 

私の叫びと同時に、スティングモンの身体に緑の光が纏われる。

 

「うぉおおおおおおおおおっ!!」

 

スティングモンは両腕を振り被る。

その両腕の甲から再び鋭い突起が飛び出した。

 

「スパイキングッ………フィニッシュ!!!」

 

両腕を突き出しながら突撃する。

まるで緑の流星のようになったスティングモンはホエーモンの身体を貫通した。

貫通したスティングモンは、ホエーモンの後方で両腕の突起を戻す。

それと同時に、ホエーモンの身体が消滅した。

 

「やった!」

 

カイルが声を上げる。

そして、スティングモンが私の元に戻って来た。

 

「進化出来たよ………エリス」

 

「うん………スティングモン…………」

 

私はスティングモンを見上げる。

すると、

 

「おめでとう」

 

タイシが声を掛けてきた。

 

「うん…………」

 

私は彼に笑い掛けた。

ワームモンが進化できたのは、きっと彼のお陰。

彼がデジモンとの………ワームモンとの付き合い方を変えてくれたから………

彼には感謝してもしきれない。

だけど、それと同時に疑問も浮かぶ。

何故彼のドルモンは成長期のままなんだろう?

エミリアも私も、パートナーとの絆を少し深めただけで進化させる事が出来た。

タイシとドルモンの絆は、少なくとも私達以上なのは間違いない。

それなら、何故進化しないんだろう?

 

「…………………」

 

ドルモンと笑い合う彼を見る。

きっと彼にとって、進化するしないは些細な事なのかもしれない。

彼らを見て、私はそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

そして私は気付かなかった。

 

「……………何で………何で進化しちゃうのよ……………」

 

アリスが辛そうな表情で、そう呟いた事に。

 

 

 

 

 





オリジナル異世界編第7話です。
今回はワームモンの進化でした。
序に珍しく大士の失敗です。
ドルモンを進化させようとしたら、ワームモンが先に進化した件。
でもって、アリスとエリスの関係も少し。
一応ちょいとした伏線の様なものも………
今日は偶々早く更新出来ましたが、明日も出来るか分かりません。
では、次も頑張ります。
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