エリスのワームモンがスティングモンに進化し、レベル3のダンジョンをクリアした俺達は、正式に王女様のチームに加入することになった。
それから何日か経った本日、親睦を深めたいというリティナ王女の提案でお茶会が開かれることになり、学院の貴族寮の一室にある専用の部屋に、一同が集まっていた。
丸いテーブルの周りに椅子が置かれ、そこにリティナ王女を始めとして、両側にクラウディアとアリス。
アリスの隣にエリス、俺、カイル、エミリアの順で座っている。
ちなみにドルモンとアグモンは俺とカイルの傍にいて、グレイモンとスティングモンはエミリアとエリスのデジヴァイスの中だ。
リティナ王女、クラウディア、アリス、エリスは、ティーカップに淹れた紅茶を優雅に飲んでいるが、カイルとエミリアはガチガチに固まっている。
まあ、王女(リティナ)、公爵令嬢(クラウディア)、伯爵令嬢(アリス&エリス)に対して、カイルとエミリアは平民だ。
委縮するのも仕方ないだろう。
因みに俺は異世界の庶民だ。
そんなカイルとエミリアの様子を見て、
「カイル様もエミリアさんも、そんなに硬くなる必要はございませんわ。今日は親睦を深める為にこのお茶会を開いたのですから………もっと楽にしてくれて構いません」
リティナ王女がニッコリと笑ってそう言う。
「そ、そう言われましても…………こんな席初めてで………」
「わ、私達が、こんな所に居ていいんでしょうか………?」
2人は如何にも落ち着かない様だ。
平民に取って、貴族のお茶会など一生縁が無いものと思っていても仕方ない。
俺はもう今更なので普通に紅茶に口を付けているが。
「この通り、タイシ殿の様にリラックスしてください」
動じて無い俺の様子を見て、手本にするようにそう言う。
「っていうか、何でタイシさんはそんな普通なんですか………!?」
エミリアが驚き半分でそう聞いてくる。
「経験の賜物」
俺はそう返す。
「経験ってなんですかーッ………!?」
エミリアはある意味泣きそうだ。
すると、
「ふふっ。そう言えばエミリアさんは、異世界の勇者様のお話に興味を持たれていましたね?」
リティナ王女がそう問いかけた。
「あっ………は、はい………」
エミリアは恥ずかしいのか顔を赤くして縮こまる。
「その………故郷の村の村長の家に、いくつか書物があって………その中に、勇者が活躍する英雄譚があったんです」
「確かに、エミリアはよく村長の家に本を読みに行ってたよね?」
カイルがそう言う。
「私………昔は身体が弱かったので、少し運動したり畑仕事をするだけで咳き込んでしまって………本を読むことが、唯一の楽しみでした…………」
「身体が弱かった? 今は大丈夫なのか?」
クラウディアが心配そうに問いかける。
「あ、はい。今はもうすっかり。でも、本を読むことは今でも好きです。なので、実際に勇者様がいると聞いて、つい気になってしまったんです」
「……そうですか…………つかぬ事をお聞きしますが、勇者の物語は幾つかありますが、エミリアさんが好きな物語はなんですか?」
「そうですね………村長の家にも、勇者の物語は幾つかありましたが……………私が好きな勇者の物語は、『カードの勇者様』の物語ですね!」
エミリアは自分の好きな事を語っている所為か、言葉に力が籠る。
それにしてもカードの勇者?
それは一体何だ?
俺は疑問に思いながら紅茶を口に含む。
「カードを使って、デジモンにあらゆる力を与えて敵を倒す。敵に合わせて色々な力を使う駆け引きのワクワク感が溜まりません!」
「ブッ!?」
エミリアの続けて出てきた言葉に、俺は思わず吹き出してしまった。
「うわっ!? いきなりどうした、タイシ?」
クラウディアが驚いて問いかけてくる。
「な、何でもない……! 紅茶が変な所に入っただけだ………!」
俺は咄嗟にそう言う。
俺は咳き込みながら呼吸を落ち着かせた。
「す、すまない………続けてくれ………」
そして、俺が流れを切った所為か、エミリアがハッとなってハイテンションになっていた事に気付いたのか、顔を真っ赤にして縮こまる。
「す、すみません………! 私ったら、王女様の前でなんてはしたない………!」
さっきまでの勢いが嘘のように小さくなっている。
すると、
「恥ずかしがることは無いさ。その物語は、私も好きだ」
縮こまるエミリアにクラウディアが隣からそう言った。
「えっ?」
エミリアは顔を上げる。
「私の好きな場面はやはりあそこだな。姫の危機に、完全体に立ち向かう勇者。しかし、勇者のデジモンは成熟期、完全体の力の前には歯が立たない………」
その場面を語るクラウディアにエミリアも食い付いた。
「それでも勇者は諦めなかった。そして、その諦めない心が奇跡を生んだ………」
エミリアもクラウディアに続いて語り出す。
「勇者の持つカードの1枚が、青く輝くカードとなった………」
「勇者がそのカードを使うと、勇者のデジモンが完全体へと進化し、敵の完全体を打ち破った………!」
「姫を救った勇者は、姫と結婚し、末永く幸せに暮らしました………だな?」
「わぁあ………!」
エミリアは嬉しそうな表情ででクラウディアを見た。
同じ趣味を持つと知って嬉しかったのだろう。
それはともかく、何だその物凄く覚えのある設定は………!
単なる偶然だろうが、ますます手の内晒しにくくなったんだが?
すると、
「………勇者の物語は、私も好き………」
エリスが口を開く。
「………私が好きなのは…………光を宿す拳で、デジモンを殴り倒す勇者の物語」
「ッ……………ワイルドな勇者様もいたもんだな」
俺はエリスの言葉に再び咳き込みそうになったが、何とか飲み込んでそう言う。
「どんな逆境にも負けず、自分の道を突き進む姿に、私は憧れる…………」
エリスはそう語る。
「その物語に出てくる『究極体』すら殴り倒したところは、とても驚いた………!」
そう言えば、御伽話の中では究極体は出てくるんだったか……………
と、その時、
「フン! バッカじゃないの!」
アリスが口を開く。
「『究極体』? そんな架空の存在を題材にした御伽話でよく盛り上がれるわね。仮に存在したとしても、完全体以上の力を持つデジモンを殴り倒せる人間が居るわけ無いじゃない……!」
エリスを否定する様にそう言う。
まあ、この世界には居なくても、他の世界には居るんだよなぁ。
少なくとも俺が知るだけで1人は。
自分の事は棚に上げておこう。
「そう言えばあなた、昔は勇者様みたいな人と結婚したいって言ってたわよね? フフッ、そんな化け物みたいな人間と結婚したいだなんて、聞いてあきれるわ!」
アリスはエリスを馬鹿にするような声色だった。
だが、
「………………覚えててくれたんだ」
エリスはそれを聞いても落ち込むどころか、むしろ嬉しそうに口元に笑みを浮かべていた。
「………………………どういう理由でそこまでエリスを嫌う振りをするのかは知らないが、お前がエリスを大好きなのはバレバレだぞ」
俺は思わずそう言ってしまった。
「なっ…………!?」
その瞬間アリスは顔を真っ赤にして、
「なっ、何言ってるの!? そんなわけ無いじゃない!!」
慌てた様に否定の言葉を叫ぶ。
同時に、俺を見るアリスの眼は金色に輝いていた。
「おいおい。魔眼が発動してるぞ? 俺に魔眼が通用しないって事は知ってるだろ?」
「ッ!?」
アリスはハッとした様に自分の眼を隠そうとする。
「アリスは感情が昂ると、勝手に魔眼が発動する」
エリスが俺の隣でそう言う。
「完全には制御できていないって訳か」
俺は呟きながらアリスの金色の眼を見つめる。
美しく輝く2つの金眼。
「改めて見ると綺麗だな。お前の魔眼」
ついついそんな言葉が出てしまった。
「なあっ!?」
アリスはますます顔を赤くして後退る。
恥ずかしいのか瞳は金色に輝きっぱなしだ。
すると、
「…………何故タイシはアリスの魔眼を見ても平気なのだ?」
クラウディアが疑問を投げかける。
勿論アリスの魔眼を見ないように気を付けている様だ。
「俺は魔力が完全なゼロだからな。乱される魔力が無いから気分も悪くならないからだと思うぞ?」
俺は仮説を口にする。
「魔力がゼロだと………!?」
俺の言葉にクラウディアが驚いていた。
その時、
「……………あ、そう言えば」
唐突にエリスが口を開く。
「アリス、昔は結婚するなら『私の眼を見つめられる人』が良いって言ってた」
「なっ!? エッ、エリスッ!? 何言って………!?」
エリスの言葉にアリスが動揺する。
「タイシは合格………!」
エリスはグッと親指を立てた。
俺は、ハハハ、と苦笑する。
「バッ! バカ言わないでっ! 確かに昔そんな事を言ったのかもしれないけど、こんな………!」
アリスは顔を真っ赤にしながら俺を指差し、
「こんな平凡で取柄も無さそうな平民と結婚したいなんて思う訳無いでしょう!?」
そう言われるのは仕方ない。
そもそも女性からは好かれないし。
つーか、何だかんだでアリスも馴染んでるな。
「そう言えば、次の訓練日ですが、今回は学院の施設内の訓練用デジタルダンジョンではなく、先日王都内に発生したデジタルダンジョンで行われることになりました」
リティナ王女が口を開く。
デジタルダンジョンは稀に自然に発生し、放っておくとゲート内からデジモンが溢れ出すデジタルハザードが起きてしまう。
自然発生したデジタルダンジョンは、早期に攻略し、ゲートを閉じる事が推奨される。
デジタルダンジョンの難易度は、ゲートが開いてから経た時間に比例するらしく、今回発生したデジタルダンジョンは発見から時間も経っていないため、大した難易度では無いと思われる。
よって、デジタルナイト養成学院の生徒達に経験を積ませるため、学院の生徒達でデジタルダンジョンの攻略を試みることになったらしい。
「勿論、安全を確保する為に、参加資格は訓練用デジタルダンジョンのレベル4に辿り着いた者だけ…………つまり、殆どが貴族クラスのみで編成されることになります」
「レベル4ね…………って事は」
言いたいことに気付いた俺は確認を取る様にリティナ王女を見ると、
「はい、勿論あなた達にも参加資格があります。貴族クラスの者達はいい顔をしないかもしれませんが、わたくしが黙らせますのでご心配なく」
そう言うと、リティナ王女はニッコリと笑った。
その笑顔に、妙な迫力があったのは気の所為では無いだろう。
そして数日後。
デジタルダンジョン攻略当日。
俺達はゲートの現れた場所に来ていた。
貴族達から、何よりあの王子サマから注目されないように隅っこの方に居る訳だが、エミリアのグレイモンがやはり目を引くらしく、向けられる視線は多い。
クラウディア達ともまだ合流できていないので、向けられる視線は、平民とバカにするものばかりだ。
俺は、早く来てくれと内心クラウディア達に願っていると、
「いい加減にしてください! お兄様!!」
リティナ王女の声が聞こえた。
全員の視線が声のした方に振り返る。
そこにはあの王子サマと、召喚されたパチモン勇者君に他2名の姿もあった。
そして、その王子サマに向かって、リティナ王女が何やら物申している様だ。
「お兄様には、クラウディアという婚約者がいるのですよ!? そのクラウディアを放っておいて、召喚された勇者の1人とは言え、他の女性にかまけているとは何事ですか!?」
リティナ王女が怒鳴る王子サマの後ろには、あの時召喚されていた女子がいた。
名前は確か、中島 真里佳だったか?
ついでに言えば、あのパチモン勇者君ともう1人の男子、山口 鉄平の傍には、貴族令嬢が控えている。
懐柔の為に宛がわれたのかね?
「彼女達をこの世界に呼び出したのは私だ。私には、彼女達を支える義務がある」
「それはそうかもしれませんが、最近のお兄様はマリカさんに構い過ぎています! それでは、クラウディア……延いてはフォルダ公爵に失礼です!」
「クラウディアとの婚約は、所詮父上たちが決めた政略結婚に過ぎない。私達の間に、情など存在しない」
「ッ……!?」
王子サマはキッパリとそう言う。
その言葉にクラウディアは俯いた。
って言うか、その発言はヤバくないか?
「お兄様! 王家とフォルダ公爵との関係を悪化させるおつもりですか!?」
「ふん! そもそも、落ち目のフォルダ公爵家を立て直すための結婚だろう? 私にはその必要性があるとは思えんが………」
「お兄様!!」
リティナ王女が叱る様に叫ぶが、
「私個人の関係には口を出さないでもらおう。私は私の正しいと思う道を進んでいるだけだ」
王子サマはそう言うと、召喚者達を連れてその場を離れてしまった。
「ふう………」
リティナ王女が溜息を吐くと、俺達に気付いた。
クラウディアとアリスを伴ってこちらに歩いてくると、
「お見苦しい所をお見せしました」
力無く笑いながら、彼女はそう言う。
「いや………貴族や王族のしがらみと言う奴か?」
俺がそう言うと、
「すみません。詳しい事は黙秘させていただきます」
まあ、そう簡単に話す訳にも行かないか。
クラウディアも俯いているし、興味本位で聞いて良い話じゃないな。
「わかった。もう聞かない」
俺はそう言うと、大人しく攻略開始時刻を待った。
やがてデジタルダンジョンの探索が開始され、俺達はゲートを潜る。
ゲートを潜った先は、大きな谷だった。
岩盤がむき出しになっており、植物はほとんど見当たらない。
谷の底には、急流が流れている。
「今までのデジタルダンジョンとは、何か違うね………」
カイルがそう呟く。
カイルの言う通り、この雰囲気はと言うか、訓練用のデジタルダンジョンより、もっとデジタルワールドそのものに近い感じがする。
他のチームは早速と言うべきか移動を開始する。
「わたくし達も参りましょう」
リティナ王女の言葉に俺達は頷き、移動を開始する。
崖沿いにある道を進み、谷を降りていく。
今までの訓練用のデジタルダンジョンとは違い、前情報が何もないので慎重に進む。
すると、大小複数の岩がゴロゴロと転がって来た。
「あれは………!」
明らかに自然では無い動きにクラウディアは警戒する。
すると、小さい岩は訓練用のデジタルダンジョンでも戦った事のあるゴツモンに。
大きな岩は、鉱物型のデジモンであるゴーレモンとなって立ちはだかった。
「ドルモン!」
「うん! メタルキャノン!!」
俺は先手必勝とばかりにゴツモンを攻撃する様に指示。
ドルモンが放った鉄球がゴツモンの頭に当たり、吹き飛ばされた。
ゴツモンは、そのまま谷の底へ真っ逆さまに落ちていく。
それを見て、
「なるほど! 崖の下に落としちゃえば、無駄な戦いは避けられるって事だね!」
カイルは合点が行ったように頷いた。
「アグモン!」
「ベビーバーナー!!」
アグモンが放った熱線の勢いに押されてゴツモンが崖の下へ落下していく。
「グレイモン!」
「おおっ!」
グレイモンがゴーレモンに組み付いて動きを封じると、
「そこよ! エクスブイモン!」
「はぁあああああっ!!」
ゴーレモンの頭に蹴りを放って体勢を崩す。
そして、
「うぉりゃぁっ!!」
グレイモンがゴーレモンを投げ飛ばし、崖の下へ突き落した。
とりあえず目の前の敵を一掃した俺達は、更に先へ進む。
行く先でも、スナリザモンやツチダルモンなど、地属性を持つデジモンが多く出現している。
だが、攻略を進めるにつれ、クラウディアやアリスは神妙な顔をし始めた。
「どうかしたのか?」
俺は2人に問いかける。
「ああ。考え過ぎだと良いんだが………ゲートが出現した期間に対して、ダンジョンのレベルが高すぎる気がしてな…………」
「ええ。ゲートが出現してまだ一週間前後の筈。それなのに、これだけ多くの成熟期が現れるなんて、ちょっとおかしいわ」
2人の話では、まだこの時期では出てくるデジモンは成長期が殆どの筈で、成熟期は多少しか出てこない筈らしい。
「イレギュラーか?」
「可能性はあるわね」
クラウディアの言葉にアリスが頷く。
極稀に、初めからかなり高レベルのデジモンが出現するデジタルダンジョンがあり、それがイレギュラーと呼ばれる。
多少の調査は入ったはずだが、浅い階層のみだったので、イレギュラーとは気付かなかったようだ。
「このデジタルダンジョンが本当にイレギュラーなのだとしたら………」
「十中八九、このダンジョンのボスは……………」
2人がそう口にした瞬間、風を切る音が聞こえてきた。
「伏せろ!!」
俺は直感のまま叫んだ。
その直後、何かが物凄い勢いで頭上を通過する。
「何だ!?」
カイルが叫ぶ。
すると、頭上でバサッと翼を羽搏く音がした。
俺が空を見上げると、そこにはまるでカラス天狗の様な姿をしたデジモン。
「あれはっ………カラテンモン! 完全体だ!!」
俺はそう叫ぶ。
「くっ! イレギュラーの上に、徘徊型のボスだったとは………!」
クラウディアが悔しそうに歯噛みする。
授業で習った事だが、ボスには2種類あり、ダンジョンの奥で待ち構える固定型と、ダンジョン内を移動する徘徊型がいる。
そして、今回のダンジョンは徘徊型らしく、俺達はものの見事にそのボスとエンカウントしてしまったようだ。
俺は咄嗟に辺りを見回す。
すると、少し先に岩盤が突きだし、広めの足場が出来ている場所が見えた。
「皆! 一先ずあそこの広場で待ち構えるぞ! 道の途中じゃ狭すぎる! 空を飛べるエクスブイモンとスティングモンは、援護を頼む!」
俺の言葉に、全員が一斉に移動を開始する。
「エクスレイザー!!」
エクスブイモンがカラテンモンに向かってエクスレイザーを放つ。
カラテンモンはそれをひらりと躱し、
「スパイキングフィニッシュ!!」
時間差で突撃してきたスティングモンも後ろを向いたまま身体を横に逸らして最小限の動きで躱すと、
「フンッ!!」
腰に携えた剣を抜き、スティングモンを斬りつけた。
「うわぁっ!?」
その一撃はスティングモンの外骨格を大きく傷つける。
「スティングモン!」
エクスブイモンがスティングモンを受け止める。
「大丈夫か?」
「ああ、すまない……」
ダメージは受けたが、まだまだ平気だと言わんばかりに自分の羽根で飛ぶスティングモン。
広い足場まで辿り着いた俺は、
「エクスブイモン! スティングモン! 合流しろ!」
2体にそう呼びかけた。
2体はこちらに飛んでくると、それを追ってカラテンモンも迫って来る。
「グレイモン!」
「ガルルモン!」
エミリアとクラウディアが自分のパートナーに呼びかけると、
「メガフレイム!!」
「フォックスファイヤー!!」
グレイモンとガルルモンがカラテンモンに向かって必殺技を放つ。
カラテンモンは急旋回でその炎を躱す。
すると、テイルモンが小さな体を生かして崖の上によじ登り、そこからカラテンモンの後ろに回り込んだところで飛び掛かった。
「ネコパンチ!!」
背中を向けているカラテンモンには直撃するかに思われた。
だが、
「なっ!?」
テイルモンが驚愕する。
カラテンモンは、まるで見えているかのようにサッと躱したのだ。
「くっ!」
テイルモンは足場に着地する。
「さっきと同じだ。僕の時も、まるで見えているかのように攻撃を躱された」
スティングモンがそう言う。
その言葉に、カラテンモンには何かがあった事を思い出した。
「ッ! そうか! 『悟り』だ! 気を付けろ! カラテンモンは心を読む技を使う!」
俺がそう叫ぶと、
「何ですって!?」
アリスが驚愕の声を上げた。
「じゃあ、いくら攻撃しても、相手は私達がどのように攻撃するかが分かると言うんですか!?」
エミリアも叫ぶ。
「そう言うことになる………」
「その技を破る方法はあるのか?」
クラウディアがそう問いかけてくる。
「…………心を読まれても回避できないほどのスピード、もしくは手数での攻撃。後は………無心になって戦う事ぐらいか…………」
「どちらも、今の私達には難しい………」
エリスもその方法の難しさを指摘する。
その時、
「衝撃羽!!」
カラテンモンが翼を広げ、そこから羽根を衝撃波と共に撃ち出してくる。
「いけない!」
デジモン達が、自分のパートナーを庇う行動に出る。
次の瞬間、無数の衝撃と共に羽が着弾した。
【Side 三人称】
カラテンモンの『衝撃羽』が撃ち込まれ、煙が巻き上げられる。
そして、その煙が晴れていくと、ボロボロになったデジモン達が倒れ伏していた。
「そんな………たった一回の攻撃だけで………」
リティナがその光景に息を呑む。
「これが………完全体の力…………!」
クラウディアもその力に戦慄を覚える。
「こんなの……どうしろっていうのよ………!」
アリスが悔しそうに吐き捨てる。
「…………勝てない」
エリスは呆然と呟く。
「ここまで………なんですか………?」
エミリアも、
「そんな…………!」
カイルも悲痛な顔をする。
しかし、
「メタルキャノン!!」
1発の鉄球がカラテンモンに向かって放たれる。
だが、カラテンモンは顔は動かさず、手だけを動かしてその鉄球を軽々と掴み取った。
その鉄球を握り砕くと、視線をそちらへ向ける。
そこには、
「さあ、こっちだ!」
諦めの様子など微塵も見せていない大士とドルモンの姿。
「「「「タイシ!」」」」
「タイシさん!」
「タイシ殿!」
その姿に全員が驚く。
だが、カラテンモンはくだらなそうに顔を伏せると、翼を広げて1発の衝撃羽を放った。
その衝撃羽は一直線に2人へ向かう。
大士とドルモンは横にステップしてそれを躱したが、
――ドォンッ!
「「うわぁっ!?」」
着弾時の衝撃波に吹き飛ばされた。
大士とドルモンはそのまま崖の方に吹き飛ばされ――――
「タイシ!?」
「タイシ!」
「タイシさんっ!」
「タイシ……!」
「タイシ殿っ!」
「アンタ!?」
崖の下へと…………消えた。
「あ、ああ…………」
エミリアが絶望的な声を漏らす。
「嘘…………」
エリスも呆然となる。
その時、カラテンモンが地上に降りてくると歩き出し、一番近くにいたエリスとスティングモンに歩み寄って来た。
止めを刺すつもりなのだろう。
「エ、エリス………逃げて………!」
うつ伏せで倒れるスティングモンは何とか身体を起こそうとしているが、ダメージは大きく立ち上がれそうにない。
その間にも近付いてくるカラテンモン。
その手に握る剣が、これから行われる処刑をありありと連想させる。
「は……早く………」
スティングモンはそう言うが、エリスは首を振った。
「………もう逃げられない………だったら、最期はスティングモンと一緒に………」
スティングモンの手に、自分の手を重ねる。
「エリス………!」
自分のパートナーの心に、スティングモンは声を震わせる。
カラテンモンが、遂にエリスとスティングモンの目の前に辿り着き、右手の剣を振り上げた。
エリスは、重ねた手に力を込め、顔を伏せて目を瞑る。
だがその時、
「やらせ……ないっ………!」
そのエリスの前に、誰かが立ちはだかった。
「私の目の前で………エリスは………私の『大切な妹』は殺させないっ…………!」
それはアリスだった。
エリスを庇うように手を横に広げて前に立ち、カラテンモンを睨み付ける。
「アリス………!?」
エリスは思わず顔を上げた。
「……………今までごめんね、エリス。こんな事言う資格が私に無い事は分かってるけど、せめて最期ぐらいあなたを護らせて…………」
そう言って顔だけで振りかえったアリスの表情は、優しい笑みを浮かべていた。
「アリス………!」
エリスの瞳から涙が零れる。
「…………エリス…………大好きよ………」
アリスの正真正銘本心の言葉。
「………私も………! アリスが大好き………!」
その言葉に、エリスも本心で応えた。
アリスは満面の笑みを浮かべ、
「ありがとう…………」
そう呟いた瞬間、カラテンモンの振り上げた剣が振り下ろされた。
「アリスーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
エリスの叫び。
カラテンモンの剣は、真っ直ぐにアリスに振り下ろされ――――――――
―――ガキィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!
甲高い音と共に、横から伸びてきた剣に止められた。
「えっ…………?」
アリスは反射的に顔を上げた。
バサッと、アリスの目の前で青いマントが翻る。
そこには、青いマントを纏った金色の身体を持つ竜人がそこにいた。
「ッ!?」
カラテンモンは一旦飛び退く。
「金色の………デジモン………?」
アリスは呆然と呟く。
その時、
「アリス!」
後ろからエリスが抱き着いてきた。
「アリス………! アリス………!」
エリスは、アリスに抱き着きながら泣きじゃくる。
「エリス…………」
アリスは少し躊躇したが、エリスを優しく抱きしめる。
すると、金色のデジモンが一歩踏み出し、剣を構えた。
カラテンモンも金色のデジモンに警戒しているのか、隙を伺う様な仕草を見せる。
そして、カラテンモンが羽搏き、一気に突っ込んできた。
カラテンモンの剣を金色のデジモンの剣が受け止める。
その際に衝撃が巻き起こり、アリスとエリスは互いに抱きしめ合いながらその衝撃波に耐える。
次の瞬間、カラテンモンがもう1本の剣を抜いて金色のデジモンの胴を薙ぎ払うように斬りつける。
だが、それと同時に金色のデジモンも、もう1本の剣を抜いており、逆手に握ってその薙ぎ払いを受け止めていた。
「ッ!?」
次の瞬間、金色のデジモンが勢い良く剣を広げるように振り上げ、カラテンモンを弾き飛ばす。
カラテンモンは翼を広げて空中で制動を取ると、
「衝撃羽!!」
無数の衝撃羽を放ってきた。
先程、グレイモン達を戦闘不能に陥れた技。
次にまともに喰らえばグレイモン達も危ないだろう。
しかし、
「はぁあああああああああああああっ!!!」
金色のデジモンが次々と剣を振り回し、カラテンモンの衝撃羽を1つ残らず切り裂いていく。
「す、凄い…………」
その様子をカイルは呆然と見ていた。
やがて衝撃羽が途切れると、カラテンモンは忌々しそうに金色のデジモンを睨み付けた。
カラテンモンは、急降下で金色のデジモンに斬りかかるが、剣をクロスした金色のデジモンに軽々と受け止められた。
そして、
「はぁっ!!」
クロス状態から勢い良く広げられた事で、カラテンモンの両手から剣が弾かれる。
「ッ!?」
カラテンモンは目を見開く。
その目の前で金色のデジモンは右手の剣を縦に、左手の剣を横に振りかぶっていた。
そして、
「クロスブレード!!」
二刀による十文字斬りが、カラテンモンに炸裂した。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?!?!?」
カラテンモンは悔しそうな声を上げて消滅する。
それを確認した金色のデジモンは、双剣を鞘に納めた。
その金色のデジモンは様子を窺うように皆を一度見回すと、
「あっ、ま、待って………!」
アリスが制止の声を掛けるも、崖から飛び降りて行ってしまった。
「………行っちゃった…………」
エリスも残念そうに声を漏らす。
すると、
「大丈夫だったか………?」
クラウディアがリティナと共に歩み寄って来る。
「エリスさん、アリスさん!」
エミリアもカイルと一緒にやって来た。
「ええ、私達は大丈夫よ……………だけど、あいつは……………」
「「「「「「…………………………………………」」」」」」
崖から落ちた大士の事を思い出し、一同は俯く。
その時だった。
「……………おーい!」
僅かに声が聞こえた。
「「「「「「ッ!?」」」」」」
一同は、慌てて大士が落ちた崖の橋へ向かう。
「おーい!」
さっきよりも声が近くなる。
全員で崖下を覗くと、
「おーい! 助けてくれぇ~!」
崖の途中にある岩の出っ張りの上で声を上げる大士の姿を見つけた。
「「「「「「タイシ(さん)(殿)!!」」」」」」
その姿を見た全員が一斉に大士の名を叫んだ。
そして同時に、心からホッとするのだった。
オリジナル異世界編第8話です。
何だかんだで書けてしまいました。
今回はカイルの進化だと思いました?
残念、まだでした。
とりあえずお茶会で親睦を深めたり、訓練じゃないデジタルダンジョンに挑んだりです。
完全体の襲撃を受けた一同でしたが、謎の金色のデジモンのお陰で助かりました!(超すっとぼけ)
さて、もうすぐ序盤で書きたい所が近付いてきました。
楽しみにしててください。
では、次回も頑張ります。