ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

18 / 298
第17話 ブルックと出会いの追憶

 

 

 

 

樹海でシアを仲間に加えた俺達は、ハジメの魔力駆動四輪で近くの街に向かっていた。

次の迷宮である【ライセン大峡谷】に向かう前の準備の為だ。

街が見えてきた所で俺達は車を降り、徒歩で街の入り口まで向かう。

その道すがら、

 

「あ、そう言えばハジメ。あと、優花と白崎さんも。ステータスの隠蔽はしてあるのか?」

 

「そりゃ勿論!」

 

「こんなステータス見せたら大騒ぎになっちゃうよ」

 

俺の言葉に優花と白崎さんは当然の如くそう言うが、

 

「あ……………」

 

ハジメはどうやら忘れていたらしい。

今思い出したという表情をする。

 

「ちゃんと隠蔽しとけよ?」

 

「お、おう………」

 

ハジメは気拙そうに返事をした。

 

「あと、気になったんだけどリュウダモン達は大丈夫かな?」

 

葵が気になったのかそう聞いてくる。

 

「まあ、その辺は俺達がテイマーって事と、ドルモン達に危険が無い事をちゃんと話して分かってもらうしか無いな」

 

「ん…………ちゃんとドルモンとリュウダモンが言葉で話せば分かってくれると思う。この世界に言葉を話す魔物は居ないから」

 

ユエの言葉に、俺達は頷く。

 

「まあ、後は出たとこ勝負だろ」

 

そう言って街の門の前まで辿り着くと、やはり門番に声を掛けられた。

 

「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」

 

そう言いながらステータスプレートを差し出す俺達。

ユエとシアはステータスプレートを持っていないので出せない。

 

「食料の補給がメインだ。旅の途中でな」

 

「ふむ…………錬成師に治癒師に投術師に…………デジモンテイマー? 何だこの天職は?」

 

「こいつらがデジモンって種族なんです」

 

俺は後ろにいるドルモンとリュウダモンを紹介する。

門番は訝しむ様に2匹を眺める。

 

「初めて聞く種族だが…………魔物では無いのか?」

 

「ええ、魔物とは違います。ほら2人共、ご挨拶」

 

俺がそう言うと、

 

「俺、ドルモン!」

 

「某はリュウダモン! お見知りおきを!」

 

「うおっ!? しゃ、喋った!?」

 

驚く門番に俺は畳み掛ける。

 

「ほら、こうやって意思疎通も出来ますし、何も危険はありません」

 

「う、うむ………少なくとも君達には従っている様だし、ビーストテイマーの使役している動物と考えればいいのか…………? しかし、もしその2匹が問題を起こせば責任は主である君達に掛かって来る。気を付けるように」

 

「「はい」」

 

俺と葵は返事を返す。

 

「それで、そっちの2人は………」

 

ステータスプレートを提示してないユエとシアに視線が向く。

 

「あ~、実はこっちの金髪の方は前に魔物に襲われた時に無くしちまってな…………それでこっちの兎人族は………わかるだろ?」

 

そう言うハジメ。

因みにシアの首にはハジメが即興で作った首輪が付けられている。

 

「なるほど………綺麗所を手に入れたな。まぁいい、通っていいぞ。冒険者ギルドは中央の道を真っすぐだ。ようこそ『ブルック』へ」

 

街へ入る事を許された俺達は遠慮なく門を潜る。

街を見回りながら道なりに進む。

王都と比べれば当然ながら小さいが活気がある。

 

「中々活気があっていい街だな」

 

「そうだね」

 

「んっ………」

 

ハジメの言葉に白崎さんとユエが頷く。

すると、その後ろではシアが涙目でハジメを睨んでいた。

 

「………で? お前はいつまでそうしているつもりだ?」

 

やれやれとハジメがシアに振り向く。

 

「うう………だってハジメさん………!」

 

シアは自分の首輪を指差し、

 

「この首輪! これじゃ私が奴隷みたいじゃないですか! 実際、さっきの門番さんにもそう思われたはずです! 無理矢理こんなの付けるなんて酷いですよぉ~~~~~! 私達仲間じゃなかったんですかぁ~~~?」

 

シアが泣きながらそう訴える。

 

「…………あのなぁ、奴隷でもない亜人が普通に街を歩けるわけないだろ? 兎人族の女で容姿もスタイルも抜群なんだ。奴隷だと示してなかったら何回人攫いに狙われるか分からねえよ」

 

今のシアなら全員返り討ちに出来ると思うがな。

 

「そんな面倒くさい事………って、何してんだ?」

 

ハジメが気付くとシアは頬に手を当てながらイヤンイヤンと首を横に振っていた。

 

「も、もう! いきなり何を言い出すんですか? 世界一可愛くて魅力的だなんて………!」

 

ハジメの言葉を誇張して受け取るシア。

その時、

 

「調子に乗らない!」

 

「あひぃいいいいいいいいいっ!?」

 

白崎さんのアイアンクローがシアの頭を締め付けた。

 

 

 

 

「冒険者ギルド。ブルック支部へようこそ! ご用件は何だい?」

 

冒険者ギルドに着くと、受付で出迎えたのは恰幅の良いおばちゃんだった。

いや、ここはテンプレの如く美人の受付嬢じゃないのかよ!?

って言うか、ギルドの顔だから見た目麗しい人物が選ばれるんじゃ………

 

「2人とも両手にとびきりの花を抱えてるのにまだ足りなかったかい? 残念だったね、美人の受付でなくて」

 

と、俺の心の内を見透かしたかのようにそう言うおばちゃん。

 

「いや……そんな事考えてないから………」

 

ハジメがそう言うが俺には分かる。

ハジメも俺と同類だから少なくともテンプレとは違うと思ったはずだ。

 

「それよりも素材の買取をお願いしたい………」

 

「はいよ! 買取だね! じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

 

「ん? 買取にステータスプレートの提示が必要なのか?」

 

「あんた冒険者じゃなかったのかい? 確かに、買取にステータスプレートは不要だけどね、冒険者と確認できれば一割増で売れるんだよ」

 

「そうだったのか」

 

冒険者になれば、色々と特典が付いて来るらしい。

街の外ではいつ魔物に襲われるか分からないので、それに見合った報酬が付くのは当然なんだそうだ。

 

「ならウチで冒険者として登録できるよ。一緒にやっとくかい?」

 

「………せっかくだ。お願いしよう」

 

ステータスプレートを差し出すハジメに倣って、俺、葵、優花、白崎さんも序に登録しておく。

 

「買取はここでやってくれるのか?」

 

「ああ、そこに出してちょうだい」

 

ハジメは予め宝物庫から出しておいて袋に入れておいた素材をカウンターに置く。

因みにこれは樹海で狩った魔物の一割にも満たない。

すると、そのおばちゃんは手に取った素材を見て驚いた顔をした。

 

「なっ!? これは樹海の魔物じゃないかい………!?」

 

「やっぱり珍しいか?」

 

「そりゃあねぇ。樹海なんて並の冒険者じゃ命が幾つあっても足りないよ。 ここでの買取で良いのかい? もっと大きな町なら高く売れそうだけど………」

 

「いや、気遣いはありがたいがここで構わない」

 

ここで売らないと俺達一文無しだからな。

暫くして、

 

「はいお待たせ。全部で487000ルタだよ」

 

「冒険者登録もしておいたからね。あと、街の簡素な地図もサービスで付けとくよ」

 

「ああ、色々と助かるよ」

 

ハジメの受け取った地図を後ろから覗いてみる。

ぶっちゃけ簡単どころか遊園地のパンフレットに書いてある位の立派なガイドマップだった。

印刷機の無いこの世界では十分に金が取れるレベルだろう。

 

「おいおい、いいのか? 十分に金が取れるレベルだぞ?」

 

ハジメも同じ事を思ったのかそう言うが、

 

「いいんだよ。あたしが趣味で書いてるだけなんだから」

 

「感謝する」

 

「ありがとうございます。おば………お姉さん」

 

俺はおばちゃんは失礼だと思い、お姉さんに言い直す。

 

「あっはっは! 無理しなくてもおばちゃんで構わないよ!」

 

おばちゃんは豪快に笑いながらそう言う。

ふと思ったが、俺って精神年齢的にはこのおばちゃんとどっこいどっこい位なんだよなぁ…………

 

「……ともかくありがとうございました!」

 

俺は礼を言って皆とギルドを出ようとすると、

 

「それよりもいい宿に泊まりなよ! その女の子達を見て暴走する男連中が出そうだからね!」

 

最後まで忠告をくれるおばちゃんには感謝である。

 

「だそうだ。先に宿探しから始めるか」

 

 

 

 

 

貰ったガイドマップにオススメと書かれていた宿に到着すると、

 

「いらっしゃいませ! ようこそマサカの宿へ!」

 

カウンターらしき場所に行くと、15歳くらい女の子が元気よく挨拶しながら現れた。

 

「本日はお泊りですか? それともお食事だけですか?」

 

「宿泊だ。このガイドブック見て来たんだが、記載されている通りでいいか?」

 

ハジメがそう聞くと、その女の子は納得したと頷き、

 

「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。はい、書いてある通りですよ。何泊のご予定ですか?」

 

あのおばちゃん、『キャサリン』って名前なのか…………

いや、どんな名前であれ、歳は喰うもんだから仕方ないけど………

 

「………一泊でいい」

 

若干返事が遅れたことから、ハジメも少しはショックを受けたようだな。

 

「え、え~と、それでお部屋はどうされますか? 5人部屋と4人部屋と3人部屋が空いてますが……」

 

俺達の人数からどの部屋にするかを聞いてくる。

 

「そうだな…………」

 

ハジメが少し考えると、

 

「3人部屋3つで!」

 

白崎さんがそう答えた。

普通に考えれば、俺、ハジメ、ドルモンで一部屋。

あとは葵とリュウダモンがセットで残りの女子を1人と女子3人で分けるのが普通なのだが、ここ最近で知った白崎さんの性格を考えるとそんな常識的でないことは明白。

 

「因みにその内訳は?」

 

俺がそう聞くと、

 

「もちろんハジメ君、私、ユエで一部屋。黒騎君、葵ちゃん、優花ちゃんで一部屋。後はシアとドルモン君とリュウダモン君で一部屋だよ!」

 

当然とばかりに白崎さんは答える。

俺は予想通りだと頭に手を当てるが、

 

「ちょっと待ってください! 何で私はハジメさんと一緒じゃないんですか!?」

 

シアが異議ありとばかりにそう発言する。

 

「え? だってシアはハジメ君の恋人じゃないでしょ?」

 

「わ、私だってハジメさんと一緒が良いです!」

 

「へぇ~? ハジメ君と一緒の部屋になってどうするの?」

 

「~~~~~っ! ハ、ハジメさんに…………! ハジメさんと、お、大人の階段を~~~~~っ!!」

 

その瞬間、白崎さんの背後が揺らめいて両手に刀を持った般若が浮かび上がった。

 

「覚悟はできてるのかな? かな? この残念ウサギ………!」

 

スッ、スタ◯ド!?

白崎さんの背後に浮かび上がったスタ◯ドに俺はビビる。

更に、

 

「今日がお前の命日…………」

 

ユエも魔力を身体中から噴き上げさせてシアを威嚇する。

しかし、

 

「ううっ………! 今日こそカオリさんとユエさんを倒してハジメさんのヒロインに入ってやるですぅ~!!」

 

シアは気丈にも、そんな白崎さんに立ち向かう事を選んだ。

だが、次の瞬間、白崎さんとユエの頭に軽く拳骨が落とされ、シアの耳が引っ張られた。

 

「迷惑だろうが! 何より俺がハズイ!」

 

それをしたのはハジメだ。

すると俺の横で、

 

「あ、5人部屋と4人部屋1つずつで」

 

葵が女の子にそう言っていた。

 

「因みにその内訳は?」

 

俺が再び聞くと、

 

「あっちの4人で一部屋。私達5人で一部屋」

 

「………まあ、それが落とし所か…………」

 

葵や優花と同じ部屋で寝るなんて今更だしな。

ドルモンやリュウダモンが居るからアレな事は出来ないが、惜しいとは……………ちょっと思ってる。

女の子が何やら顔を赤くしているが、変な妄想でもしているんだろう。

別に本当の事だから気にはしない。

未だワイワイやっているハジメ達をほっといて部屋に行くと、

 

「それじゃあ、俺は頼まれてた食料の買い出しに行くけど………優花には護衛として付いて来てほしいんだが…………葵は如何する?」

 

俺がそう聞くと、

 

「もちろん付いてくよ! 2人っきりのデートなんて狡いよ!」

 

「いや、買い出しだって…………」

 

「女の子と買い物に行くって事はデートと変わりないよ!」

 

何か拳を握って力説された。

 

「そ、そうか………なら一緒に行くか」

 

「うん!」

 

「ドルモンとリュウダモンは如何する? 多分奇異の目で見られるから、それが嫌ならここで待ってても…………」

 

「もちろん付いてくよ!」

 

「某が葵から離れる事などあり得ん」

 

2人してそう言われた。

結局は全員という事だ。

 

「じゃ、皆で行くか」

 

そうしてブルックの街へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

街を歩いていると、やはりと言うべきかドルモン達に奇異の視線が集中している。

しかし、ドルモン達はそれを気にしていないのかニコニコと俺達の後を付いて来る。

序にその視線の中に、俺に対する殺気の籠った視線が混じっているが、それは俺の両腕に葵と優花が抱き着いているのが理由だ。

そのまま買い出しを終わらせるのも味気ないので途中の露店で鳥の串焼きを買って食べたりしている。

 

「美味いか? ドルモン」

 

「うん! モグモグ………」

 

「リュウダモンも美味しい?」

 

「うむ、悪くない………」

 

そう言えば久しぶりのまともな食事だとふと思い出した。

 

「樹海でも味気ない食事ばっかりだったからなぁ………久々に香辛料を使った料理を食ったよ」

 

「そう言えばそうね…………ねえ、買い出しの時に香辛料も買っていいかな? 今までは塩だけだったから、調味料の種類も増えればレパートリーも増やせるし」

 

「あ、それ賛成! 今まで保存食ばっかりだったし、優花のまともな手料理ってまだ食べた事ないもの!」

 

葵の言葉にそう言えばそうだと俺も頷く。

優花は今まで食事係だったのだが、それは魔物料理ばっかりだった上に、最下層に着く頃には塩ですら切らしていたので、俺や葵、ドルモン、リュウダモンは未だに優花のまともな手料理を味わった事が無いのだ。

 

「優花の手料理か…………楽しみだ………!」

 

俺がそう言うと、優花は顔を赤くしており、

 

「そ、そんなに楽しみにしなくても、これからはいつでも好きな時に作ってあげるわよ………!」

 

少し恥ずかしそうに視線を逸らしながらそう言った。

そんな話をしながら歩いていると、

 

「よう坊主! えれぇ別嬪さんを両手に連れてるじゃねえか! 俺にも貸してくれねえかなぁ?」

 

見た目からして質の悪そうな冒険者の男に絡まれた。

頭がモヒカンで、背中にバトルアックスを背負っている。

何処の世紀末の人間だと俺は思った。

 

「なんつ~テンプレ………」

 

「こんな事本当にあるんだね~…………」

 

「ウザッ……………!」

 

上から俺、葵、優花である。

 

「おいおい、聞いてんのか~? 俺様は天職斧使いの冒険者ランク紫の実力者だぜぇ~!」

 

「ランク紫?」

 

葵が首を傾げたので、

 

「ああ、ランクの高さは色で表されるんだ。青、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金で要はこの世界の貨幣の価値の色と一緒。俺達はさっき登録したばっかりの新人冒険者で、色は青だから、『お前は一ルタ程度の価値しかねぇんだよ』って事だな。因みに非戦闘職の天職や天職無しで上がれるのは黒が限界らしい」

 

先程の換金時の待ち時間に、元々冒険者ギルドに興味があった俺は大まかに調べておいた。

その中で知ったのだが、この世界の通貨ルタは貨幣なのだが色は先程言った通り青、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金の9種類でそれぞれ、1、5、10、50、100、500、1000、5000、10000と日本円と全く同じなのだ。

 

「ふーん………じゃあ、この男は戦闘の天職を持ってるのに『俺は50ルタ程度の実力しかありませんよ~』って威張り散らしてるわけね」

 

優花が呆れながらそう言う。

 

「非戦闘職で黒まで行けるのに、戦闘の天職を持ってるのに下から数えた方が早いランクで威張り散らされてもね~?」

 

葵がやれやれと首を振る。

 

「んなっ!? さっきから聞いてれば舐め腐りやがって!! だがさっき言ったな? てめえらは新人の青ランクだと! 青ランクが紫の俺に敵うと思ってのか!?」

 

そう叫ぶとその男は背中に背負っているバトルアックスを掴むと、

 

「坊主! てめえは殺す! 他の嬢ちゃんは散々犯した後に奴隷にして売ってやるよ!!」

 

その言葉と共にバトルアックスを俺に向かって振り下ろしてきた。

俺の脳天に向かって振り下ろされる刃。

それは真っ直ぐに振り下ろされ……………

俺に触れる直前で止まっていた。

 

「なあっ!?」

 

目の前の男は声を上げる。

何故なら、振り下ろされた戦斧は優花の細い右手が刃の部分を素手で掴み、止めていたからだ。

 

「何かデジャヴ………」

 

俺は呆れた様に声を漏らした。

 

「悪いけど、アンタに犯されるなんて死んでもゴメンよ…………それに………」

 

優花は戦斧を掴んだまま左手を顔の前に持ってきて、薬指に付けている指輪を見せつけると、

 

「私にはもう心に決めた人が居るから!」

 

そのまま相手の腹部に蹴りを放つ。

そのまま吹っ飛んだ男は建物の壁に激突。

 

「ガハッ!?」

 

優花が手加減したのか、壁をぶち破ることは無かった。

だが、優花が手を振ると、カカカカッと細いものが壁に叩きつけられた男の脳天、両耳、首の両端すれすれに突き刺さる。

 

「ひっ…………!?」

 

それは先程まで俺達が食べていた串焼きの串だった。

しかも、木製であるにも関わらず、石材で出来ている建物の壁に串の半分以上深く突き刺さっている。

まあ、これでも手加減したんだろう。

優花が本気を出せば、木製の串ですら普通の建物を破壊するぐらいは出来るだろうし。

 

「お、お前っ………ランク青の筈じゃ…………」

 

男は怯えながらそう問いかける。

 

「聞いて無かった? 私達はついさっき登録したばかりよ? いくら実力があっても最初は青に決まってるじゃない」

 

優花は得意げにそう言う。

 

「それでまだやる? 次はあんたの額に当てるけど?」

 

「ひっ! ひぃいいいいいいいいっ!!」

 

それで完全に腰を抜かしたその男は情けなく立ち去っていった。

その瞬間、わぁあああああああああっ!と周りから歓声が沸き起こった。

 

「えっ!? 何? 何なの!?」

 

優花が戸惑いながら周りを伺うと、

 

「やるなぁ嬢ちゃん!」

 

「アイツ乱暴な奴で最近困ってたんだよ!」

 

「いやぁ、スカッとしたぜぇ!」

 

街の人々から称賛を受ける優花。

 

「えっ? いや………あの…………」

 

優花は照れ臭くなったのか小さくなりながら俺の腕を掴む。

 

「おやおや、その子の彼氏かい?」

 

「ええ、まあ………」

 

「そんな勇敢でいい子を彼女にするなんて幸せ者だね! ちゃんと大事にしてやらなきゃだめだよ!」

 

「そ、それはもう!」

 

なんか俺にも飛び火してきた!?

 

「いいもんを見せてもらったぜ! ほれ、こいつを持っていきな! サービスだ!」

 

「こっちもだ! いやぁ………羨ましいねえ!」

 

次々と貰う称賛に俺は苦笑し、優花は益々恥ずかしさから縮こまる。

 

「も、もう行こ! 大士、葵!」

 

優花は遂に耐えきれなくなったのか俺達を引っ張ってこの場を離れる。

 

「ヒューヒュー! お幸せに!」

 

「坊主! 爆発しろよ!」

 

「羨ましいなこん畜生!」

 

そんな声が俺達に届いた。

 

 

 

 

そんなこんなで必要な物を補充した俺達は、大迷宮があるという【ライセン大峡谷】に再び足を踏み入れていた。

とは言え、詳細な場所は分からないので自力で調べなければならないのだが。

言葉にすれば簡単かもしれないが【ライセン大峡谷】はすさまじく広大だ。

その中で何処にあるかもわからない大迷宮の入り口を探すのは骨が折れる。

現に3日たった現在でもまだ見つけることが出来ていない。

結局今日も野宿することになり、俺はドルモンと一緒に見張りを行っている。

すると、

 

「ん?」

 

2つあるテントの片方から誰かが出てくる。

それは、

 

「大士…………」

 

「葵?」

 

葵だった。

 

「どうした? 眠れないのか?」

 

俺がそう聞くと、葵は俺の隣に腰を下ろす。

 

「ん~、そう言う訳じゃないけど、ちょっと大士とお話したいな~って…………」

 

「話………?」

 

「うん。別に何か話したいことがあるわけじゃないけど、何となくね…………」

 

そう言いながら俺の肩に頭を預けてくる葵。

 

「そうか…………何が聞きたい?」

 

「そうだね…………あっ、大士とドルモンの出会いが聞きたい!」

 

葵は思いついたようにそう言う。

 

「ドルモンとの出会いか……………」

 

俺は焚き火を眺めながら懐かしさに目を細める。

 

「そうだな……………あれは俺が小学5年生になったばかりの頃だ。俺の友達に松田 タカトって言う同じデジモン好きの奴が居たんだけど、そいつがある時テイマーになったんだ」

 

「それって、前に言ってた仲間の?」

 

「ああ、デ・リーパーと一緒に戦ってたテイマーだ。特にタカトは仲間の中でも、ちょっと弱気だったが、リーダーと言っても差し支えない奴だった。そのタカトにある時パートナーであるギルモンを紹介されてな…………」

 

「ギルモン? 聞いた事ないデジモンだね…………」

 

「ああ、それは当然さ。ギルモンは『タカトが考えた』オリジナルのデジモンだったんだから」

 

「えっ? オリジナル!?」

 

葵は驚いた表情をする。

 

「ああ、あいつのDアークがタカトの描いていたギルモンの設定を読み取ってな……………まあ、その辺りはデジタルワールドのデジノームとかいろいろ理由があるんだが説明が長くなるから省くけど、まあ、奇跡が起きてタカトの考えたデジモンが生まれたって事にしてくれ。で、当然ながら本物のテイマーになったタカトに俺は憧れたよ。俺もテイマーになりたいって強く思った。すぐ近くに本物のテイマーになった奴が居たんだ。俺もなりたいって今まで以上に強く思ったよ」

 

神様に転生特典としてテイマーになれると言われていたが、本当になれるかずっと不安だった。

それがギルモンをパートナーにしたタカトを見て、今までよりずっと強くテイマーになりたいと願うようになったんだ。

 

「そんなある日、俺は自分持ってたカードの中に、ブルーカードが混じってるのを見つけたんだ」

 

「ブルーカードが………」

 

「俺はそれを当時持ってたカードリーダーに通してみた。そしたら、カードリーダーがこのDアークに変化したんだ………」

 

俺はDアークを手に持ちながらそう言う。

 

「それで、Dアークに指し示された座標に従ってそこに行った時、ドルモンがリアライズしたんだ」

 

「そうだったんだ…………そう言えば、ドルモンも見た事ないデジモンだよね? リュウダモンもだけど………」

 

テイマーズ以降のシリーズに出てきたデジモンだからな………

こっちの地球だと6年前の事件で世間に配慮してるのか、新しいデジモンが中々出てこない。

 

「多分だけど、ドルモンは俺が望んだデジモンなんだと思う………」

 

「大士が望んだデジモン………?」

 

「ああ。タカトがオリジナルのギルモンを求めた様に、俺が無意識下で求めていたデジモン…………それがドルモンだったんだ」

 

俺が好きなデジモンは沢山いる。

アドベンチャーに出てきたアグモンやガブモンが進化したウォーグレイモンやメタルガルルモンに、その2体が合体したオメガモン。

02に出てきたインペリアルドラモン。

タカトのギルモンが進化したデュークモンもそうだし、フロンティアのスサノオモン、セイバーズのシャイングレイモンなど、アニメの主役級のデジモンによく憧れていた。

だけど、そのデジモン達には俺とは比べ物にならない立派な『パートナー』がいる。(スサノオモンはちょっと違うが)

そう思っていたからこそ、そのデジモン達は俺の前に現れなかった。

でも、そんなデジモンシリーズ中で人間のパートナーが居ないシリーズ。

つまり、『ゼヴォリューション』の主人公であるドルモンに俺は強く惹かれていたのだと思う。

そんな俺の無意識下の強い想いがブルーカードを通してデジノームに伝わり、ドルモンを俺の前にリアライズさせてくれたのではないかと俺は思っている。

でも、今はそんな事は関係なく、『俺のパートナー』は『ドルモン』以外にはいない。

そう思っている。

 

「そうなんだ…………じゃあ、私の前にリュウダモンが現れたことも、私が望んでいた事なのかな…………?」

 

「…………そうかもな」

 

俺はそう笑って見せる。

 

「だけど、何で出会ったのかは関係ない。大切なのは『今』どう思っているかだ。葵にとって、リュウダモンはどんな存在なんだ?」

 

「もちろん、大士と同じぐらい私には無くてはならない存在だよ。私の最高の『友達でパートナー』………それがリュウダモン」

 

「ああ…………それが分かっているなら大丈夫だ………」

 

俺と葵は自然と見つめ合い、どちらからともなく顔を近付ける。

そしてそのまま俺達の影が一つになろうと……………

 

「ふわぁ…………」

 

した瞬間に葵が出てきたテントとは反対のテントからシアが眠そうな顔で這い出てきたので、俺達は反射的に離れた。

 

「ど、如何したシア!? 見張りの交代にはまだ早いぞ!?」

 

俺は慌てながらシアに問いかける。

すると、シアは恥ずかしそうに、

 

「ちょ、ちょっとお花を摘みに…………」

 

ああ、トイレか。

俺は心の中で思いながら動揺を悟られないように落ち着こうとする。

 

「そ、そうなの? 暗いから気を付けてね!」

 

葵も少し慌てている様だ。

シアはそのまま岩陰の亀裂に入っていった。

シアの姿が見えなくなると、

 

「「ほっ………」」

 

俺達は思わず息を吐いた。

その瞬間、

 

「た、大変ですぅ~~~~~!!」

 

いきなり聞こえたシアの大声に俺達は思わずビクついた。

 

「皆さ~ん!! こっちです!! こっちに来て下さぁ~い!!」

 

シアの皆を呼ぶ声に、テントから寝ていたメンバーがもぞもぞと起き出してくる。

 

「なんだなんだ?」

 

眠そうな目でハジメが呟く。

そのまま俺達は呼ばれるままにシアが入っていった亀裂を覗く。

 

「どうしたんだ一体………?」

 

ハジメがダルそうな声で聞くと、

 

「これです! これを見てください!!」

 

シアが壁を指差す。

指し示された場所には、

 

『おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪』

 

そんな看板が設置されていた。

 

「「「「「…………何だこれ?」」」」」

 

俺達は思わず呟いた。

 

 

 

 

 







第17話です。
ブルック編です。
特に特筆は無し。
ハジメ達は原作通りに動いているという事で大士達の行動でした。
でもそれだけでは物足りなかったので、何となくドルモンとの出会いを簡単に。
次回はライセン大迷宮の攻略です。
お楽しみに。




………………そこ、アルファモンで全て吹っ飛ばせばいいんじゃとか思わない!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。