ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

180 / 298
第9話 波乱のパーティー

 

 

 

 

自然発生したデジタルダンジョンの攻略から、また少しの時が流れた。

そのデジタルダンジョンがイレギュラーだったことで、ダンジョンを調査した者達や、発案した者達の責任問題とかがあったらしいが、俺の知る所ではない。

そして、既に恒例となりつつある親睦を深める為のお茶会が今日も開かれていた。

最初は緊張していたカイルとエミリアも、回数を重ねるごとに雰囲気に慣れ、今では自然体でお茶を飲み、話せるようになっている。

そんな中、

 

「そう言えば、もうすぐ学院主催の貴族平民合同パーティーの時期ですね」

 

リティナ王女がそんな事を言い出した。

 

「ああ、もうそんな時期なんですね」

 

エミリアが納得したように頷く。

 

「?」

 

俺が何の事だと首を傾げると、

 

「編入してきたタイシは知らないと思うが、この学院には年に数回、貴族も平民も関係無く、デジタルナイトとしての親睦を深める為と言う理由でパーティーが開かれる。とは言え、貴族と平民の隔たりは大きく、その理由はほぼ形骸化しているがな」

 

クラウディアがそう説明してくれる。

 

「俺としては、貴族との関係よりも、最低1回はダンスを踊らなきゃいけないって事に気が重くなるよ。出てくる料理はおいしいけど」

 

「ダンス?」

 

俺は再び首を傾げる。

 

「デジタルナイトになって功績を上げれば、貴族達のパーティーに呼ばれてダンスを踊る機会もある。そう言う時の為の経験を積んでおく意味もあるらしい」

 

エリスが俺の隣でそう説明してくれた。

ちなみに、俺とは反対側のエリスの隣にはアリスが座っており、仲良く寄り添っている。

以前の出来事から、2人の距離感はグッと縮まった。

その時、リティナ王女のめがキュピーン!と光った気がした。

 

「でしたらカイル様。パーティーまでの短い期間ですが、ダンスのレッスンを行いましょう! わたくしが手取り足取り教えて差し上げます!」

 

「ええっ!? リティナ様直々に!?」

 

リティナ王女の言葉にカイルは驚愕する。

 

「ええ。カイル様達は平民とはいえ王女であるわたくしのチームに入っているのです。ダンスぐらい出来なければ、周りから非難の目を向けられてしまいますわ」

 

リティナ王女はもっともらしい理由を口にするが、本心はカイルと踊りたいだけじゃね?

 

「ふむ………それではリアには私が教えよう」

 

「本当ですか、クラウ………!?」

 

クラウディアがそうエミリアに対して言う。

ちなみにこの2人、勇者の物語の話で意気投合したらしく、今ではクラウ、リアと愛称で呼び合う間柄となっている。

って言うかクラウディア。

今、王女の本心を見透かした上での援護射撃っぽいな。

 

「なら、エリスには私が教えるわ。エリスも最近は碌にダンスのレッスンも受ける事ができてないし」

 

「アリス………ありがとう………」

 

アリスとエリスについては、もう仲良しオーラを振りまいている。

って言うか、

 

「見事にハブられてるね、大士」

 

ドルモンからの的確な突っ込みが来る。

 

「言うな。俺もそう思った所だ」

 

あ~も~、葵達に会いたい…………

俺は軽く天井を仰ぎながらそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

それからあっという間に時が経ち、パーティー当日。

学院の一角にあるパーティー会場に、生徒達が集まっている。

平民の殆どは制服姿だが、貴族クラスの生徒は煌びやかな衣装やドレスに身を包んでいた。

そして俺達だが、

 

「わ、私がこんなドレスを着て良いんでしょうか………!?」

 

エミリアがパーティードレスを纏った姿でそう言う。

 

「う、うん………こんな格好は初めてだから緊張する………」

 

カイルもタキシードを着て固まっている。

 

「…………久しぶりに着た…………」

 

エリスもドレス姿だ。

そう言う俺もタキシード姿である。

俺のは自前だが、カイルとエミリアはそれぞれリティナ王女とクラウディアが用意したものだ。

エリスは元々貴族なので、ドレスは持っていたようだ。

リティナ王女の言った通り、貴族、平民関係無く親睦を深めるパーティーという名目だが、貴族は貴族で、平民は平民で完全にグループが分けられてしまっている。

見た感じ、貴族は平民を蔑み、平民は貴族を畏れていた。

これでは親睦を深めることも出来そうにないなぁと呆れながら、並べられている御馳走に舌鼓を打つ。

最近は平民用の味気ない食事ばかりだったので、久々の美味い料理に箸が進む。

使ってるのはフォークやスプーンだが。

とは言え、確かに美味いのだが、やはり恋人の手料理は特別なのか、優花の味が恋しくなる。

パーティーが始まってある程度時間が経ったとき、準備していた楽士達が音楽を奏で始める。

どうやらダンスの時間が始まったようだ。

早速貴族クラスの生徒達が男女でペアを組んで踊り始める。

そんな中、注目を集めていたのがクラウディアと王子サマのペア。

公爵令嬢のクラウディアとこの国の王子サマは婚約関係にある。

その2人が踊るとあっては、注目されるのも当然だろう。

だが、2人のダンスを見ていて、俺は違和感を感じていた。

2人のダンスは淡々とした形だけの…………

いや、クラウディアは王子サマに寄り添おうとしているのだが、肝心の王子サマがクラウディアから距離を取ろうとするのだ。

その王子サマのクラウディアを見る表情も、何処か冷たい雰囲気を思わせる。

 

「……………どうしたんでしょうか? クラウ、何処か寂しそうです………」

 

エミリアはクラウディアの表情から違和感を感じたのか、そう呟く。

まるで、トータスの旅の最中にあった、帝国のバカ皇子とリリアーナ王女のダンスの様だった。

配役は逆だが。

何とも言えない雰囲気のまま曲が終わり、ダンスも終了する。

すると、王子サマは用は済んだとばかりに踵を返し、クラウディアをエスコートすらせずにその場を離れ、中島さんの方へ歩いていく。

クラウディアは、王子サマの背に手を伸ばそうとしたが、全く振り向く気配を見せない王子サマの態度にその手を降ろし、寂しそうに俯いた。

 

「……………………ッ」

 

その様子を見た俺は、いつの間にか握り拳に力が入っていた事に気付く。

俺は拳から力を抜くと、2人のダンスで微妙な雰囲気になったホールに背を向ける。

このままあの王子サマを見てると、殴りたくなってくる気がしたからだ。

それはともかく、

 

「……………最低1回は踊れって事だしなぁ…………」

 

俺は溜息を吐く。

恋人達となら喜んで踊るが、今は居ない。

とすれば…………

エミリアとエリスに視線を向ける。

俺が踊るとすれば、この2人のどちらかだろう。

その時、ザワッとどよめきが起こった。

そちらを見ると、薄桃色の髪を降ろし、一際煌びやかなドレスに身を包んだリティナ王女がゆっくりと歩みを進めていた。

周りの貴族の男達が、我先にと王女をダンスに誘おうとしている。

しかし、リティナ王女はそれらを全て断ると、そのまま歩き出し………

っていうか、こっちに向かって歩み寄ってきている。

そして、

 

「ごきげんよう、カイル様。良くお似合いですよ」

 

「リ、リティナ様っ!」

 

リティナ王女に声を掛けられ、カイルはピンと背筋を伸ばす。

そんな様子を見て、リティナ王女はクスクスと笑い、

 

「そんなに硬くなさらずに、いつも通りで宜しいですよ?」

 

「い、いえ! それで、何か………!?」

 

カイルの言葉にリティナ王女はフフっと笑い、スカートの両裾を持ち上げ、

 

「わたくしと一曲踊って頂けませんか? 紳士(ジェントルマン)

 

恭しくお辞儀をしながらそう言った。

その瞬間、

 

「ええっ!?」

 

カイルは盛大に驚くが、その驚きは周りのざわめきにかき消された。

それもそうだろう。

この国の『王女』ともあろう人間が、同じチームとは言え『平民』にダンスを申し込んでいるのだから。

まあ、色々問題もあるだろうが、リティナ王女はそれも全部わかった上でカイルにダンスを申し込んでるんだろうな。

この王女様のカイルへの愛が大きすぎるだろ?

カイルが突然の事に戸惑っていると、

 

「…………カイル様、レッスンの通りにやればよろしいのです」

 

リティナ王女が小声でそう言う。

すると、カイルは気を取り直し、

 

「よ、喜んで………淑女(レディ)………?」

 

少し自信無さげな疑問形で手を差し出す。

リティナ王女は自然な動作でその手に手を重ねると、カイルと共にダンスホールに歩いていく。

その後姿を見送るが、カイルは緊張でガチガチだ。

あれでは色々と失敗してしまうだろうと思い、

 

「……………エミリア」

 

「はい?」

 

俺は隣にいるエミリアに声を掛けた。

エミリアが俺の方を向く。

そして、

 

「私と一曲踊って頂けませんか? 淑女(レディ)

 

エミリアにダンスを申し込んだ。

 

「………はいぃっ!?」

 

エミリアは素っ頓狂な声を漏らした。

 

「どうせ1回は踊らなきゃいけないんだ。見知った顔の方がいいだろ?」

 

俺はそう言う。

エミリアは驚いていたが、次第に落ち着いてきて、

 

「そ、そうですね………で、では………喜んで………」

 

エミリアは佇まいを直すと、俺の差し出した手を取った。

エミリアの手を引いて、ダンスホールまでエスコートする。

握った手からは、エミリアが緊張している事が伝わって来た。

 

「そう緊張するな」

 

俺はそう声を掛ける。

 

「そ、そう言われても………こんなドレスで踊るのは初めてですし………もし失敗したら………」

 

「別に失敗したってかまわないさ。俺達は貴族じゃない。潰れる面子も無いんだ。だから、こういうのは思いっきり楽しめばいい」

 

「………楽しむ?」

 

「ああ。折角パーティーでダンスを踊れるんだ。楽しまなきゃ損だろ?」

 

貴族同士のパーティーなんて、腹の探り合いの応酬なんだろうけど、そんなしがらみは俺達には無い。

 

「…………そうですね! 折角のパーティーですもん! 楽しまなきゃ損ですね!」

 

エミリアも開き直ったのか声が明るくなる。

 

「それじゃ、失礼するよ」

 

恋人でない女性に触れる事に、多少の罪悪感は持つものの、授業の一環だと割り切る。

手を繋ぎ、腰を抱くと、ゆっくりとステップを踏み出す。

 

「よっ………ほっ………やっ………」

 

エミリアは頭でクラウディアとのレッスンを思い出しているのか、動きがぎこちない。

 

「…………………………エミリア」

 

「はい…………?」

 

俺はエミリアの名を呼び、エミリアがそれに答えた瞬間、エミリアの手を引いて大きくステップを踏む。

 

「きゃっ……!?」

 

エミリアは引っ張られてバランスを崩しそうになるが、俺はターンを使ってエミリアを強引に立ち直らせる。

 

「な、何を……!?」

 

「言っただろ? こういうのは楽しんだもの勝ちだ。頭で考えて踊ったって、楽しむことは出来やしないさ」

 

俺はもう一度大きくステップを踏む。

 

「あっ」

 

エミリアは一瞬驚くが、何とか付いてくる。

 

「そうそう。その調子」

 

俺はエミリアを振り回すようなターンやスピンをすると、エミリアも置いてかれまいと必死に喰らいつく。

その表情からは、先程の様な緊張で不安な表情は見受けられない。

エミリアもダンスを楽しみ始めたのか、笑みを浮かべ始めた。

そしてその雰囲気は、周りにも伝達する。

ガチガチに緊張していたカイルも、楽しそうに踊る俺達を見て吹っ切れたのか、リティナ王女と楽し気に踊り始めた。

おそらく、貴族達の目から見れば俺達のダンスは滅茶苦茶だろう。

だがそれでも俺達は楽しんでいる。

俺もエミリアも、カイルもリティナ王女も。

全員が笑みを浮かべていた。

やがて曲が終わりと共に、俺達のダンスも終わる。

俺とカイルは、それぞれエミリアとリティナ王女の手を引いてダンスホールから出てきた。

 

「はぁ~………凄い楽しかったです……!」

 

エミリアは少し息を吐いた後、満面の笑みでそう言った。

 

「俺も楽しかったよ。ありがとう」

 

俺はエミリアにお礼を言うと、その手を放す。

 

「あ……………」

 

エミリアは声を漏らした。

ちなみに、カイルとリティナ王女は手を繋ぎながら固まって見つめ合っていた。

その時だった。

 

「いい加減にしろ!!」

 

突如として怒声が響く。

思わずそちらを向く俺達。

そこには人だかりが出来ている。

そして、その人だかりの中央に、クラウディアと、クラウディアに相対する王子サマ。

そして、王子サマの後ろには中島さんの姿があった。

 

「貴様がマリカに行った非道の数々! 私が知らぬと思ったか!?」

 

王子サマがクラウディアにそう言い放った。

 

「『非道』?」

 

クラウディアがそんな事をするとは思えないが………

 

「非道など、身に覚えはございません!」

 

クラウディアは否定の言葉を放つ。

 

「まだ惚けるか! 既に調べは付いているのだぞ!」

 

王子サマは更に怒鳴る。

 

「マリカ殿に、殿下の婚約者としてあまり親しくし過ぎないよう苦言を申し上げた事はございます! ですが………!」

 

「王妃の地位が脅かされると思い、マリカに対して私に近付かぬよう嫌がらせを繰り返したのだろう!? 自分の手を汚さぬよう、取り巻き達に命じてな!」

 

その言葉に、周りの貴族達がザワッとどよめく。

口々に公爵令嬢がそんな事を?などと言った言葉を口にしている。

 

「そんな………! クラウがそんな事する筈が………!?」

 

エミリアは王子サマの言葉を信じてはいない様だ。

すると、王子サマは言葉を続けた

 

「そのような者に、王妃の資格など無い! よってこの場を以って宣言する! 私はクラウディア・アルファ・フォン・フォルダとの婚約を破棄する!」

 

「なっ!?」

 

王子サマの言葉にクラウディアは驚愕の声を漏らし、同時にざわめきが広がる。

 

「お兄様! 何を馬鹿な事を!? クラウディアとの婚約はお父様である国王陛下がお決めになった事です! お兄様の独断で婚約を破棄するなど、許される事ではございません!」

 

リティナ王女が即座に発言した。

 

「父上には後て了承を頂く。それに、父上が他国を訪問している現在、権限は私にある」

 

「それにしても限度があります! お考え直し下さい、お兄様!」

 

「黙れ! これはもう決定事項だ!」

 

リティナ王女の言葉にも耳を貸さない王子サマ。

すると、王子サマは中島さんに向き直ると、

 

「私の妃に相応しいのは、やはり君だマリカ………」

 

「レオ…………」

 

ジッと見つめ合う王子サマと中島さん。

何?

2人ってもうそう言う関係だったの?

本気なのか、それとも懐柔策かは判断がつかないが。

その時だった。

パシンッと乾いた音と共に、何かが中島さんに投げつけられた。

 

「きゃっ……!?」

 

中島さんは軽い悲鳴を上げる。

中島さんに投げつけられ、床に落ちたのは白い手袋。

そして、飛んできた方向はクラウディアのいる方向。

その状況だけを鑑みれば、クラウディアが中島さんに白い手袋を投げつけた、と判断できるだろう。

 

「クラウディア!? 何を!?」

 

リティナ王女が驚愕の表情でクラウディアに振り返った。

だが、それが良くなかった。

 

「なっ………!?」

 

クラウディアは驚愕の表情で狼狽えている。

その直後に後ろを振り返った。

その視線の先には、コソコソと人込みに紛れる人影。

 

「ッ…………!」

 

それを見たクラウディアは嵌められたと悟ってその人影を追いかけようと、

 

「……お前には失望したぞ、クラウディア」

 

する前に、王子サマの言葉がクラウディアに投げかけられる。

 

「ッ!? 違います! 今のは私では………!」

 

「一時の激情に任せて決闘を申し込むとは………やはりお前に王妃の資格は無い……!」

 

クラウディアの話を聞かず、話を進める王子サマ。

そして同時に、その場の雰囲気もその流れに支配された。

王子サマと………そして、故意では無かったが、リティナ王女の反応がクラウディアを孤立させてしまった。

 

「マリカ……気にせず拾うと良い。決闘のルールとして、どの様な形式にするかの決定権はこちらにある。チーム戦にすれば、味方を増やす事も可能だ。勿論、私はマリカの味方だ」

 

王子サマは中島さんに優しく語り掛ける。

すると、

 

「水臭いなレオ。1人で格好つけようとするなよ」

 

「テッペイ」

 

召喚者の1人である山口 鉄平が進み出る。

 

「こんな面白そうな決闘イベントを見過ごせるわけ無いだろ!」

 

山口は完全にこの状況を楽しんでいた。

 

「俺も協力するぜ! 2人の仲を引き裂こうとする奴を放っては置けない!」

 

パチモン勇者君も名乗り出る。

 

「やれやれ、殿下のお守りは私の役目。私も協力しますよ」

 

もう1人、見た事のない青髪イケメンがそう言った。

セリフから察するに、王子サマに近い取り巻きかなんかか?

っていうか、この状況を見て、何で全部クラウディアが悪いみたいになってるんだろうか?

 

「これでこちらはマリカ含め5人。お前も決闘に参加する者を選ぶが良い。私達に立ち向かう者が居れば………の話だがな」

 

「お待ちください殿下! 手袋を投げ付けたのは私では………!」

 

クラウディアが弁明しようとするが、

 

「おいおい。自分でやっておいて負けそうだから無かったことにするなんて、格好悪いにも程があるな!」

 

山口がクラウディアを煽るような口調でそう言う。

周りの貴族達も、クラウディアを『情けない』とか、『公爵家の娘なのに……』といった非難や中傷と言った陰口が聞いて取れる。

 

「ッ…………!」

 

クラウディアは言葉に詰まる。

例えここで決闘を取りやめたとしても、クラウディアにはいわれのないレッテルが張られる事だろう。

 

「………………………」

 

そして、この国の王子と異世界から召喚された勇者達相手に決闘を挑む様な馬鹿も居るはずが無い。

リティナ王女は立場上、兄である王子サマと表立って対立するわけには行かないだろうし、アリスもおそらく家の立場からクラウディアの味方は出来ない。

味方になってくれる者は居ないとクラウディア自身も分かっているのか、その場で俯いて震えている。

俺はそんなクラウディアを見つめる。

伏せたその瞳には、涙が浮かんでいた。

それを見た瞬間、俺はもう我慢が出来なかった。

足が勝手に前に進み出る。

そして、

 

「俺が立候補しよう」

 

手を軽く上げながら、俺はそう言っていた。

その言葉に、クラウディアはハッと顔を上げ、

 

「タイシ!?」

 

驚愕の声を上げた。

 

「タイシ!?」

 

「タイシさん!?」

 

後ろでカイルとエミリアも驚愕している。

 

「クラウディアの味方として、決闘に参加する」

 

俺はもう一度言い放つ。

 

「タイシ………!? 何を…………!?」

 

クラウディアは驚きからか、言葉が上手く出てこない。

 

「いい加減我慢ならなかったんでな。文句は無いだろう?」

 

「い、いや……気持ちは嬉しいが………!」

 

「それと、決闘するからには、理由があるんだよな? そこはハッキリさせとかないと」

 

俺は王子サマ相手にそう言う。

すると、

 

「こちらからの要求は唯一つ。『私とマリカの関係に口を出すな』、だ」

 

王子サマはそう言い切る。

 

「クラウディアの要求は?」

 

次にクラウディアに訊ねると、

 

「……………殿下に、『王子として節度ある行動』をお願いする」

 

クラウディアは、婚約の取り消しの事には触れず、ただそれだけを言った。

 

「………って事らしいが、序に俺の要求を付け加えて貰いたい」

 

王子サマに向き直りながら俺はそう言う。

 

「何………?」

 

王子サマは怪訝な声を漏らし、

 

「俺達が勝ったら、そのスカした面をぶん殴る」

 

俺は王子サマの顔に指を指しながらそう言い放った。

王子サマは一瞬呆気に取られたように目を見開いたが、

 

「はっはっは! 身の程知らずもここまで来ると滑稽だな!」

 

声を上げて笑った。

その直後、厳しい目で俺を睨み付け、

 

「本気で勝てると思っているのか? この私と、異世界の勇者達を相手に……!?」

 

威圧感を出しながらそう問いかけてきた。

 

「勝てると思ってるから名乗り出たんだけど?」

 

俺はあっけらかんと返す。

 

「…………ん?」

 

王子サマは俺の顔を睨み付けていると、何かに気付いたようにハッとした。

 

「………そうか、貴様は……………」

 

それから納得したように頷くと、

 

「誰かと思えば、貴様は勇者達と共に異世界から召喚された、勇者の成り損ないではないか!」

 

堂々と、周りに聞こえるように大きな声でそう言った。

 

「ッ!?………タイシが勇者の成り損ない?」

 

「ど、どういうことですか………?」

 

「ッ…………!?」

 

カイル、エミリア、エリスの3人がその言葉に、驚きの表情を見せる。

 

「勇者召喚で異世界から呼び出されたにも関わらず、魔力はゼロ。連れているデジモンも、8年かかっても成長期のまま進化させる事の出来ない、勇者の名に相応しくない勇者の成り損ない………それが貴様だ!」

 

王子サマは更に言い放った。

 

「タイシが…………勇者達と一緒に異世界から召喚された………!?」

 

カイルが驚愕の表情のままそう口にした。

 

「………タイシは、今まで何処かズレてると思ってた…………それは、異世界の人間だったから…………!」

 

エリスは驚愕しつつも、何処か納得した様子だ。

 

「………………その通りだが………だから何だ?」

 

俺は王子サマにそう言い返す。

 

「何………?」

 

「俺が異世界から召喚された事は本当だし、勇者に相応しくないって事も同意する…………で? それが、俺がクラウディアの味方として決闘に参加する事と、何か関係があるのか?」

 

「貴様………!」

 

平然としている俺に、思惑が外れたのか王子サマは不機嫌そうに歯を食いしばった。

 

「本気で私達に楯突く気か………!? 落ち目のフォルダ公爵家に取り入ろうとしても無駄な事だぞ」

 

「別にそんなつもりは無い。俺はアンタが嫌いだからな。この決闘を利用すれば、あんたを後腐れ無く殴れると思っただけだ」

 

ま、例え勝って殴っても、面倒なことになる可能性は高いだろうが。

 

「お前は救いようのない馬鹿の様だな?」

 

「どう捉えるかはご自由に」

 

「………そこまで言うなら良いだろう。ならば試合形式は………」

 

王子サマが試合形式を決めようとした時、

 

「わ、私もっ………!」

 

突如エミリアが声を上げた。

そして、

 

「私もっ………クラウの味方として、決闘に出ます!」

 

驚愕の一言を言い放った。

 

「リア!?」

 

クラウディアが驚愕する。

 

「待て、リア! お前まで巻き込むわけには………!」

 

「このままクラウを放っては置けません!」

 

やめるよう説得しようとするクラウディアの言葉を、エミリアの真っ直ぐな言葉が止める。

 

「リア…………」

 

「決闘に参加して、もしかしたら後悔するかもしれません………でも、このまま何もしなかったら、絶対に後悔する事は間違いないです!」

 

「ッ………………!」

 

クラウディアは感極まったのか、目が潤む。

 

「だったら、俺も出ないわけには行かないね!」

 

カイルもそう言い出す。

 

「エミリア程役に立つかは分からないけど、俺に出来る事はやるつもりだ!」

 

「カイル………」

 

そして、

 

「……私も出る」

 

エリスもそう申し出た。

 

「……皆を放っては置けない」

 

「………エリス………すまない…………」

 

クラウディアは涙を浮かべながら皆に頭を下げた。

 

「滑稽だな。公爵家の娘であろうお前が最後に縋るのが、平民クラスの人間とは………」

 

王子サマは馬鹿にしたように言う。

 

「…………あんまり油断が過ぎると、足元救われるぜ。王子サマ?」

 

俺はそう言い返す。

 

「ッ! 良いだろう! 試合形式はデジタルナイトによる5対5の団体戦。それぞれ1対1で戦い、先に3勝した側の勝利とする。日時は3日後。場所は学院内の闘技場で行う!」

 

「いいだろう」

 

俺達はそれを了承する。

 

「精々首を洗って待っているがいい………!」

 

王子サマはそう言うと、勇者達を伴って立ち去る。

こうして、俺達は王子サマや勇者達と決闘する事になったのだった。

 

 

 






オリジナル異世界編第9話です。
今回はデジモンがほとんど出ませんでした。
まあ、決闘する為の前準備な回です。
因みに当初はアリスも王子サマ側で決闘に参加させるつもりだったんですが、ストーリー上おかしいと思ったので、モブな取り巻きに参加してもらいました。
正直決闘への持って行き方が強引だった気がしないでもない。
気になってもスルーしていただけるとありがたいです。
次回はいよいよ決闘です。
お楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。