ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第11話 信じる力! ジオグレイモン爆誕!!

 

 

 

 

突然の進化で負けてしまったクラウディアとガルルモン。

静かに涙するクラウディアを他所に、状況は進んでいく。

 

「副将! 前へ!」

 

審判から声がかかる。

 

「…………行こう! アグモン!」

 

「よっしゃ!」

 

カイルはクラウディアを気にする素振りを見せたが、すぐに自分のやるべきことを察したのか、アグモンと共にリングに上がる。

対して、相手側からは王子サマとティラノモンがやって来る。

リング中央で向かい合うと、

 

「フッ………成長期のデジモンとは、平民にはお似合いの僕だな」

 

王子サマはカイルとアグモンを見下しながらそう告げる。

すると、

 

「違う!」

 

カイルは即座にその言葉を否定した。

 

「アグモンは僕なんかじゃない………! アグモンは俺の『仲間』………友達なんだ!」

 

そう言い放つカイル。

 

「デジモンが友達………? はっはっは! これは傑作だ!」

 

王子サマは顔に手を当て、天を仰ぐ様に笑い声をあげる。

 

「貴様は余程友人が乏しいと見える………よりにもよってデジモンが友達とは………」

 

王子サマの口調は、完全にカイルを馬鹿にした口調だ。

 

「そのような甘っちょろい事を言っているから貴様のデジモンは成長期のままなのだ! デジモンは強く鍛え、戦う事にこそ存在意義がある! 弱いデジモンなど何の役にも立たん!」

 

アグモンに指を突き付けながらそう叫ぶ。

 

「勝敗は既に決している。貴様の脆弱な成長期デジモンで、私のティラノモンに勝てるはずがない。だが、弱い者を痛ぶるのは私の趣味ではない。故に貴様にチャンスをやろう」

 

「チャンス?」

 

「今ここで棄権し、頭を垂れて許しを請うのだ。そうすれば私に楯突いた事は不問にしてやろう」

 

「……いらないよ。そんなの。そんな条件を受け入れるぐらいなら、俺は初めからこの場所に立ってない!」

 

カイルは即座にそう言い返した。

すると、王子サマは顎に手を当て、少し考える仕草をすると、

 

「ふむ………ではこういうのは如何だ? 貴様が棄権するなら、お前を特別に私の派閥に加えてやろう。僕のデジモンもそのような脆弱なデジモンではなく、成熟期の強力なデジモンを宛がってやる。平民の身では、一生手が届かない特別待遇だ。悪い話では無いだろう?」

 

まるでカイルを誘うような口ぶりでそう言うが、

 

「それこそお断りだ! 俺のデジモンはアグモンだけだ!」

 

カイルは迷わずにそう言い放った。

アグモンも、カイルの言葉が嬉しかったのか、

 

「おう! 俺だって、俺のデジタルナイトはカイルだけだぜ!」

 

笑みを浮かべながらそう言った。

 

「まったく………理解に苦しむ………」

 

王子サマは、本当に理解できないと言った態度で首を左右に振った。

 

「まあいい。そこまで無様な姿を晒したいというのなら止めはせん。王族である私と平民である貴様の格の違いを思い知らせてやろう………ティラノモン!」

 

王子サマの号令でティラノモンが前に出てくる。

 

「アグモン……! 準備はいい?」

 

「勿論だぜ!」

 

カイルの言葉に、臆さず頷くアグモン。

 

「両者、準備はよろしいか?」

 

「「…………………」」

 

審判の言葉に沈黙する2人。

審判は片手を掲げ、

 

「それでは副将戦………始め!」

 

合図と同時に振り下ろされた。

その直後、

 

「行くよ! アグモン!」

 

「おう!」

 

カイルの呼びかけにアグモンが答えると、カイルは突然アグモンを持ち上げ、肩車をした。

身体強化の魔法を使っているのか、軽々とアグモンを担いでいる。

その瞬間、観客席からドッと笑いが起こった。

 

「あはははは! 平民が何か変な事始めたぞ!?」

 

「デジモンを肩車? 主従逆転してるじゃない!」

 

「何やってんだあいつ!?」

 

カイルを馬鹿にする嘲笑が沸き起こるが、カイルは至って真面目な顔だ。

 

「貴様………ふざけているのか!?」

 

王子サマも額に青筋を浮かび上がらせる。

 

「まさか! 俺達は至って真面目だよ! 行くよアグモン!」

 

「おう! 攻撃は任せとけ!」

 

そう言うとカイルは駆け出す。

すると、

 

「ベビーフレイム!!」

 

カイルの頭上でアグモンが火球をティラノモンに向けて放つ。

その火球がティラノモンの顔に当たり、ティラノモンは僅かに怯む。

 

「グァアアアアアアアアッ!!」

 

ティラノモンは唸り声を上げながらカイルに向き直る。

しかし、

 

「はっ!」

 

カイルは即座にその場を離れてティラノモンの側面に回り込んだ。

 

「ベビーフレイム!!」

 

そこですかさずアグモンがベビーフレイムを放ってティラノモンの頬へぶつける。

ティラノモンは僅かに怯み、

 

「グァアアアアアアッ!!」

 

イラついたように唸り声を上げて尻尾を振り回す。

 

「よっ……と!」

 

しかし、カイルはその尻尾を余裕をもって飛び越えた。

 

「ベビーフレイム!!」

 

再びアグモンがベビーフレイムを放ってティラノモンの後頭部に直撃させる。

 

「おのれ……小賢しい真似を………!」

 

カイルとアグモンを見て、忌々しそうに吐き捨てる王子サマ。

一方、俺はカイルとアグモンの戦い方に感心していた。

 

「なるほど………身体強化したカイルの方が機動力は高いから、そのカイルがアグモンを担いで移動と回避に集中。逆にアグモンは攻撃に集中できるという事か………!」

 

一見無茶苦茶に見えるが、適材適所で割と理に適っている戦い方だ。

カイルとアグモンは、そのままティラノモンの周りを駆けまわりながら攻撃を加えていく。

成長期の攻撃なのでダメージは少ないだろうが、全くのノーダメージと言う訳では無い。

問題は、ティラノモンが力尽きるまでに、カイルとアグモンの体力が持つかだ。

 

「ええい! 何をしているティラノモン! さっさと片付けろ!」

 

「ファイヤーブレス!!」

 

王子サマの言葉に、ティラノモンは口から火炎を吐き出す。

 

「わっ……と!?」

 

カイルはその炎を高く跳躍する事で避けた。

だが、

 

「空中では逃げられまい!」

 

王子サマの言葉にティラノモンはカイルを見上げる。

そのまま捕えられたら終わりだ。

しかし、カイルはとんでもない行動に出た。

肩車していたアグモンの胴体を両手で掴むと、

 

「てやっ!!」

 

サッカーのスローインの様に、頭上からアグモンをティラノモンに向かって投げ飛ばした。

 

「グァッ!?」

 

虚を突かれたティラノモンの顔面にアグモンが張り付き、

 

「ベビーバーナー!!」

 

炎を口内で圧縮して一気に放った。

 

「グァアアアアアアアアアアアアッ!?」

 

流石のティラノモンも、成長期の中では最強クラスの攻撃力をもつアグモンのベビーバーナーを至近距離で受けたのは堪らなかったのだろう。

大きく後退り、バランスを崩して転倒した。

 

「どんなもんだ!」

 

アグモンはドヤ顔をしながら地面に降りる。

 

「アグモン!」

 

カイルが再びアグモンを担ごうと駆け寄る。

その時だった。

 

「ッ!?」

 

突如、ティラノモンとは別方向から火炎弾が放たれ、カイルに直撃したのだ。

 

「うわぁっ!?」

 

「カイル!?」

 

カイルが吹き飛ばされ、アグモンが声を上げる。

身体強化を続けていたお陰で酷いダメージでは無いが、不意打ちによって耐える事ができなかったのだ。

そして、その火炎弾を放ったのは勿論、

 

「平民如きが! この私のティラノモンに土を付けるなど……!」

 

王子サマの仕業だった。

 

「ティラノモン! いつまでも無様な姿を晒すな! さっさと立て!!」

 

「グァアアアアアアッ!!」

 

王子サマの怒声にティラノモンは立ち上がると、

 

「グァアアッ!!」

 

「うわぁっ!?」

 

アグモンをその足で踏みつけた。

 

「アグモン!?」

 

身体を起こしたカイルが叫ぶ。

 

「ふん! 何やら小細工で頑張ったようだが、この程度………! 諦めろ。所詮貴様の様な下賤な平民など、王族であるこの私に敵うはずが無いのだ」

 

そう言い放つ王子サマ。

だが、

 

「まだだっ!!」

 

カイルはそう叫ぶと駆け出す。

 

「何ッ……?」

 

カイルが向かう先は、勿論アグモンの所。

アグモンを踏みつけているティラノモンの足元へ辿り着くと、カイルはティラノモンの足の裏に手を差し込み、

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

渾身の力で持ち上げようと試みた。

だが、いくら身体強化とは言え、ティラノモンの巨体を持ち上げるほどの力を発揮する事は出来ない。

 

「カイル………」

 

踏みつけられているアグモンがカイルを見上げる。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

それでもカイルは持ち上げようとすることを止めない。

それを見て、

 

「見苦しい………どうしてこうも平民は無様な姿を晒したがるのか…………?」

 

王子サマは首を振りながらやれやれと言いたげだ。

すると、

 

「貴様に1つ聞きたい。なぜそうも抗おうとする? 仮に万に1つ、億が1つの奇跡が起きて貴様がこの私に勝てたとしよう。たとえそうなったとしても、次に待つのは、6体のデジモンを持つ最強の勇者。対する貴様達は、8年も成長期のまま進化させられない勇者の成り損ない。勝敗は火を見るよりも明らか。貴様たちの敗北は既に決まった事………いわば『運命』だ…………『運命』の流れに身を任せ、受け入れる………神であるデニティス様も仰っている事だ」

 

王子サマがそう言葉を投げかけると、

 

「………………そんな『運命』なんて………知るもんか………!」

 

「何?」

 

カイルの言葉に王子サマが声を漏らす。

 

「俺が諦めないのは、俺が諦めたくないからだ………! それに…………タイシならきっと勝てる………!」

 

「何だと…………?」

 

王子サマは何を言っているんだと言いたげな訝しむ表情を浮かべる。

 

「タイシは………俺達に新しい道を示してくれた………! 落ち零れで燻ってた俺達に、デジモンとの『絆』の大切さを教えてくれた………! タイシは何時だって俺達に諦めない事を教えてくれた! 諦めなければ道を切り開けることを教えてくれた! タイシなら………どんな相手でも勝てると信じてる!!」

 

カイルの言葉に俺は耳を傾ける。

 

「貴様は、奴がやはり勇者だとでも思っているのか?」

 

王子サマがそう聞き返すと、

 

「違う!!」

 

カイルは即座に否定した。

 

「俺がタイシを信じるのは、タイシが勇者だとか………異世界から召喚されたとかじゃない…………!」

 

「……………」

 

「………タイシが『仲間』だからだ!!」

 

カイルはそう言い放った。

 

「ッ………!」

 

「俺は『仲間』であるタイシを信じてる! タイシならきっと勝てるって信じてる! だから、俺がここで諦める訳には行かないんだ!!」

 

「カイル…………」

 

俺はカイルの名を呟く。

 

「ふん、現実逃避も結構だが………そうだな。貴様にどうしようもない現実を教えてやろう」

 

「ッ………!?」

 

王子サマは自信満々に話し出す。

そして、リングの外に待機しているパチモン勇者を指差し、

 

「あそこにいる最強の勇者のサトジだが、彼は合計で6体のデジモンを持っている………」

 

まるで勿体ぶった様に話を伸ばす王子サマ。

そして、指を2本立てると、

 

「そして、そのサトジは完全体を2体保有している………その意味が分かるな?」

 

「………………………」

 

「あの勇者の成り損ないの勝ち目など、『絶対』にありえないという事だ。それこそ決められた『運命』そのものの様にな!」

 

王子サマはそう言い切った。

それに対し、

 

「…………それが如何した………!」

 

「……………何?」

 

「完全体が2体いるから何だ! そんなものに、タイシは負けない!」

 

カイルは臆さずに言い返した。

 

「カイル………!」

 

カイルの『信頼』が俺の心に染みわたる。

だから、

 

「カイル!!」

 

俺はカイルに呼びかけた。

 

「タイシ……!」

 

「カイル! お前が俺を信じるというのなら、俺はその信頼に応えよう! だから勝て! カイル!」

 

「タイシ………! うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

カイルは再びティラノモンの足を持ち上げようと試みる。

 

「見苦しい………」

 

王子サマはゴミを見るような目でカイルや俺を見て来るが、そんな事は如何でもいい。

 

「カイル! お前の思いを……! 魂を燃やせ! お前のデジソウルを………!」

 

「俺の………思い…………!」

 

カイルの手にデジソウルの輝きが宿る。

 

「俺は信じている………! タイシを………『仲間』を…………そして何よりも、アグモン! お前を!!」

 

「カイルッ………!」

 

カイルの言葉にアグモンも叫ぶ。

 

「だから俺はっ………負けられないんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

咆哮の様な叫びと共に、カイルの手からデジソウルが溢れ、ティラノモンの足が持ち上がっていく。

 

「うぁああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」

 

カイルが勢いよく腕を振り上げると同時に、ティラノモンの足が押し戻されてたたらを踏む様に後退する。

 

「ばっ!? 馬鹿な!?」

 

王子サマは目の前で起こった事に目を見開いて驚愕する。

 

「はぁ……はぁ……アグモン……大丈夫?」

 

「へへっ………凄かったぜ、カイル………」

 

アグモンは笑みを浮かべてカイルを見上げる。

 

「アグモン………」

 

カイルも笑みを浮かべながら、デジソウルを纏った右手をアグモンの手に重ねる。

その瞬間、真紅の強い光がその手の隙間から漏れだした。

 

「これは…………!」

 

カイルがその手を確認すると、その手に長方形のデジヴァイス―――デジヴァイスicが存在していた。

 

「デジヴァイス………? これが俺の………俺達のデジヴァイス…………!」

 

カイルが半ば驚愕しながら呟く。

そして、俺はそのデジヴァイスicを見た瞬間叫んだ。

 

「カイル! そのデジヴァイスにお前のデジソウルを叩き込め!!」

 

「えっ………?」

 

「そのデジヴァイスにお前のデジソウルをチャージするんだ! そうすれば………お前のアグモンは『進化』する………!」

 

「進化………!?」

 

カイルが俺の言葉に驚愕していると、

 

「何を馬鹿な。デジモンの進化とは、十分に鍛え、幾度も戦闘を経験したその上で、何時進化するかも分からないものだ。その進化を今ここでする? 与太話も大概にしろ!」

 

王子サマは俺の言葉を全く信じてはいなかったが、

 

「………タイシの……『仲間』の言葉だ………! 疑う余地なんかない! やろう! アグモン!!」

 

「おう!」

 

アグモンも立ち上がる。

カイルはデジヴァイスicを左手に持つ。

そして、

 

―――EVOLUTION

 

その文字がデジヴァイスicの画面に刻まれる。

 

「デジソウル………チャージ!!」

 

カイルはデジソウルの宿った右手をデジヴァイスicに翳す。

カイルのデジソウルがデジヴァイスicに吸い込まれ、その画面から眩い光を放った。

 

「力が………漲る………!」

 

その光を受けたアグモンが真紅の光を放つ。

 

「アグモン進化ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

アグモンの身体が巨大化。

ティラノモンと同じぐらいの大きさになると、身体の各部に青いラインが刻まれていき、頭部の皮膚は硬質化。

更に両側頭部と鼻先から、合計3本の角が生える。

 

「あっ………! カイル君のアグモンもグレイモンに………!」

 

その進化の仕方に見覚えのあったエミリアがそう言うが、

 

「………………いや」

 

俺はそれを否定した。

何故なら、カイルのアグモンは、両肩と硬質化した頭部の外周部に棘上の突起が生まれ、更に頭部には赤いラインが刻まれる。

その身体はグレイモンよりも筋肉質であり、両腕にはアグモンの時と同じようにベルトが巻かれた、戦闘能力により特化したグレイモンの亜種。

 

「ジオグレイモン!!」

 

名乗りを上げるジオグレイモン。

 

「ジオ……グレイモン………?」

 

カイルがジオグレイモンを見上げながら呆然と呟く。

 

「グレイモンじゃない………?」

 

エリスが疑問の声を漏らす。

 

「ジオグレイモン。通常のグレイモンより、更に戦闘能力に特化したグレイモン亜種だ」

 

俺はそう説明する。

 

「な、何だと!? 本当に進化した………!? そんな馬鹿な事が………!?」

 

王子サマは狼狽えている。

カイルは少し呆けていたが、すぐに気を取り直し、

 

「ジオグレイモン!!」

 

その名を叫んだ。

 

「おおっ!!」

 

ジオグレイモンは勇ましく応えてティラノモンに突撃していく。

 

「おおらぁっ!!」

 

ジオグレイモンは鼻先の角で突き上げるようにティラノモンにぶち当たる。

 

「グァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?」

 

ティラノモンは軽々と吹っ飛ぶ。

 

「なっ!?」

 

その力に王子サマは驚愕する。

 

「凄い……!」

 

その力を見て、カイルも驚いている。

 

「グァアアッ……!」

 

ティラノモンは立ち上がり、ジオグレイモンに向かっていくと、そのまま腕を伸ばして互いに組み付いた。

ティラノモンは腕の力が発達したデジモンだ。

確かに組み合いになれば有利に思える。

しかし、

 

「うぉりゃぁあああああああああああああっ!!」

 

その腕の力すら、ジオグレイモンは凌駕した。

一方的にティラノモンを押し出す。

そのまま突き飛ばしてティラノモンを押し倒した。

 

「バ、バカな………こんな事……あり得る筈が…………! ティラノモン!!」

 

現実を認められない王子サマの叫びに、ティラノモンは最後の力を振り絞って立ち上がり、その口に炎を溜め始める。

そして、

 

「ファイヤーブレス!!」

 

ティラノモンがその口から火炎の息を吐き出した。

燃え盛る火炎がジオグレイモンに向かってくる。

だが、

 

「ジオグレイモン!!」

 

カイルの声に応え、

 

「メガフレイム!!」

 

その口から豪火を吐き出した。

通常のグレイモンのメガフレイムは圧縮された豪火球だが、ジオグレイモンのメガフレイムは放射状の炎。

互いの炎がぶつかり合う。

しかし、拮抗は一瞬。

 

「うぉおおおおおおおおおおっ!!!」

 

ジオグレイモンの気合の入った声と共にメガフレイムの威力が増し、ティラノモンのファイヤーブレスを飲み込んでいく。

そして、

 

「グァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

豪火によってその身を焼かれ、ティラノモンは倒れ伏した。

 

「そ、そこまで! しょ、勝者、カ、カイル!」

 

審判もどもりながらそう宣言した。

静まり返る観客席。

カイルはジオグレイモンと共に、俺達の方に戻ってこようとしたが、

 

「………奇跡に助けられるとは、運のいい奴め………! だが、奇跡は二度は起こらん! 覚悟するんだな!」

 

王子サマは負け惜しみの様にそう言い放つ。

すると、

 

「………奇跡じゃないよ」

 

カイルはそう言った。

 

「何……?」

 

「今の進化は、奇跡じゃない………デジモンとの絆が起こした、『必然』なんだ」

 

「ッ……!」

 

王子サマは忌々しそうにカイルを睨み付けると、踵を返して背を向けた。

それを見送ると、カイル達も戻って来る。

 

「よくやったな」

 

俺はカイルを労う。

 

「うん………タイシ」

 

カイルは頷くと、俺の名を呼んで右の拳を前に突き出した。

 

「後は……頼んだよ?」

 

その言葉に、俺は笑みを浮かべ、

 

「フッ……任せろ」

 

突き出された拳に自分の拳を当てて応えた。

カイルも笑みを浮かべる。

その時、クラウディアが歩み寄って来た。

 

「クラウディア、大丈夫か?」

 

俺はクラウディアに声を掛ける。

 

「あ、ああ………応援もせずに、すまなかった………」

 

幾分か落ち着いたようだが、まだ精神的ダメージは大きい様だ。

 

「大将! 前へ!」

 

審判から呼び出される。

俺はリングの方を向くが、一度クラウディアに向き直り、

 

「クラウディア」

 

そう声を掛けた。

 

「タイシ………?」

 

「………先に言っておくが、俺は勇者じゃない」

 

「………………………」

 

「けど、まあ、勇者の真似事ぐらいはしてやるさ」

 

「えっ………?」

 

クラウディアは怪訝そうな声を漏らしたが、俺は前を向いて歩き出す。

 

「行くぞ、ドルモン」

 

「うん!」

 

俺の横に並ぶドルモン。

そのままリングの中央へ向かうと、既にあのパチモン勇者が待っていた。

まだデジモンは出していない。

一定の距離で立ち止まると、

 

「始める前に1つ聞きたい」

 

パチモン勇者がそう言って来た。

 

「ん?」

 

「何でお前はあんな奴に味方するんだ?」

 

「………あんな奴っていうのは、クラウディアの事でいいのか?」

 

「そうだ! あいつが何をやったか知っているのか!?」

 

「何って………自分の婚約者に近付いた女に注意しただけだろう?」

 

「それだけじゃない! 取り巻きに命じてマリカに虐めを繰り返してたんだ!」

 

「………クラウディアはそんな事する奴じゃ無いだろ?」

 

「あいつに命じられてやったと虐めていた張本人が言ったんだ!」

 

「その証言だけじゃ、クラウディアがやったと言い切るには薄いと思うんだがなぁ………」

 

そもそも、貴族や王族がクロと言えばクロになるような世界だし。

 

「それに、レオとマリカは本当に好き合ってるんだ! 政略結婚で決められた婚約者だからって、2人の邪魔をする権利は無い筈だ!」

 

「別に人の恋路を邪魔するつもりは無いし、そこは別に勝手にしろと俺自身は思っている。けど、第三者的視点から意見を言わせてもらえば、仮に中島さんが王子サマと結婚したとしよう。それで、その後ちゃんと王妃としてやっていけると思っているのか?」

 

「ど、如何いう意味だ!?」

 

「だから、元々一般人で異世界の人間である中島さんが、王妃としての役目をちゃんと熟せるのかって言ってるんだ。もしかして、物語みたいにヒロインは王子様と結婚して幸せに暮らしました。めでたしめでたし………で終わると思ってるんじゃないだろうな?」

 

「えっ? えっ?」

 

本気で意味が解ってないのか狼狽える。

 

「王妃には王妃の役割がある。社交や他国との関係強化の為の面会は当然の事、時には国王の代理として国政に関わらなきゃいけない時だってあるだろう。極端な事を言えば、王妃の一言が国民の命を左右することだってある。娯楽に浸るだけの愚鈍な王妃として名を残すなら、それでもいいかもしれないけどな」

 

「……………………」

 

「知らないことは学べばいい。とはいうが、知っているに越したことは無い。少なくとも、クラウディアは公爵家の娘としてそう言う教育を受けてきたんだ。王妃としての素養は十分に備わってたと思うけどな。それでも中島さんの事を諦められないというのなら、クラウディアを正室に迎えて王妃とし、中島さんを側室に迎え入れるのが一番後腐れ無かったと思うんだがな」

 

俺は自分の勝手な予想を口にした。

 

「少なくとも、王子と結婚するって事は、そうそう甘いもんじゃないって事だ」

 

視線をズラして中島さんを見ると、不安げな表情を浮かべていた。

あっちも予想外だったようだな。

 

「ま、そんな事は俺には関係無い。俺は唯、ムカつくあの王子サマを殴りたかっただけだからな。まあ、今はそこにカイルの……『仲間』の信頼に応えるという目的も出来た。悪いが負ける気はない………!」

 

「ッ………! 成長期デジモン1匹で勝てると思うなよ………!」

 

「素人に負けるほど、甘い経験は積んでないんでね」

 

「素人だと………!?」

 

「先に言っておくが、俺達の戦い方はお前達の様なお行儀のいい戦い方じゃない。油断してるとあっという間に勝負は付くぞ?」

 

「何処まで俺を馬鹿にすれば気が済む………!」

 

「馬鹿にしているつもりは無い。事実を言っているだけだ」

 

「ッ!!」

 

パチモン勇者は俺をギロッと睨んでくる。

全然怖くもなんともないが。

 

「両者、準備はよろしいか………?」

 

審判がタイミングを見計らって声を掛けてくる。

 

「「………………………」」

 

俺達は沈黙で答える。

審判は右手を上げ、

 

「それでは大将戦………始め!」

 

振り下ろした。

すると、パチモン勇者が動き出す。

ベルトに取り付けられているモンスターボックスを外すと、振り被る。

 

「ガジモン! 君の出番………!」

 

アンダースローでそのモンスターボックスを投げた瞬間、

 

「ドルモン!」

 

俺はそのモンスターボックスを指差し、ドルモンの名を呼ぶ。

それと同時に俺は駆け出す。

 

「メタルキャノン!!」

 

間髪入れず放たれた鉄球が、パチモン勇者の投げたモンスターボックスに当たり大きく弾き飛ばした。

 

「えっ…………?」

 

パチモン勇者が呆けた声を漏らした瞬間、俺はデルフの柄を握り、一気に抜き放った。

そして、パチモン勇者の後方に弾かれたモンスターボックスがカツンと音を立てて落ちた時、

 

「……………………………え?」

 

長い沈黙の後、パチモン勇者は先程よりも呆けた声を漏らす。

何故なら、そのパチモン勇者の首筋には、俺が抜き放ったデルフの刃が寸止めされていたからだった。

 

 

 







オリジナル異世界編第11話です。
ノリノリで書きあげました。
カイル君の見せ場、ジオグレイモンへの進化です。
グレイモンよりも戦闘能力の高いジオグレイモンの前にはティラノモンも相手になりませんでした。
王子へのざまぁその1。
ジオグレイモンは自分の中では戦闘能力はグレイモンより高くても、エネルギー消費が激しく、継続戦闘能力でグレイモンより劣ると考えています。
そんでいよいよ登場の大士。
と思いきや開始と同時に終わった!?
だって、仲間を呼ぶ敵は、仲間を呼ばれる前に叩くのがセオリーですから。
さて、このまま決着なのか?
次回をお楽しみに。
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