ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

183 / 298
まさかの本日2話目。


第12話 本領発揮! テイマーの力!

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

闘技場は静寂に包まれていた。

大将戦が始まったかと思うと、ドルモンがサトジの投げたモンスターボックスを弾き飛ばし、大士がデルフリンガーの刃をサトジの首筋に寸止めしていたからだ。

 

「…………………………え?」

 

サトジが呆けた声を漏らす。

 

「はい終わり」

 

大士がそう言ってデルフリンガーを引くと、鞘に納める。

そのまま踵を返して立ち去ろうとした時、

 

「ちょ、ちょっと待て!!」

 

サトジは思わず大士を呼び止めた。

大士は軽く息を吐くと、

 

「何だよ?」

 

面倒くさそうに振り返る。

 

「何だ今のは! 卑怯だろ!?」

 

サトジはそう叫ぶ。

 

「何で?」

 

「何で……って、俺がデジモンを出す前に攻撃してくるなんて………」

 

「開始の合図があったらそこはもう戦場だ。その戦場のど真ん中に『敵』が無防備に立っていた。で、デジモンの入った箱を出そうとしていたからそれを阻止する為に弾き飛ばした。続けて他のデジモンを出されないようにその『敵』を直接仕留めた。何か問題でも?」

 

大士は淡々と事実を述べる。

 

「大有りだろ!? これはデジモンバトルだぞ!!」

 

サトジはそう叫ぶが、

 

「何を言ってる? これは決闘だ。相手を殺さないように配慮するだけで、後は実戦と同じだろ? これが実戦じゃなくて良かったな? 実戦だったらお前の首は飛んでいたぞ?」

 

「ッ………!?」

 

「お前は召喚されてから何も学んでいないのか? お前達は魔族との戦争に駆り出される。そこは生きるか死ぬかの戦場だ。お前がやっていたような遊び半分のバトルじゃないんだよ」

 

「遊びだと!? 取り消せ! デジモンバトルは………」

 

「百歩譲ってもスポーツ感覚だろ?」

 

「ッ……………」

 

「お前と俺とじゃ『真剣』の度合いが違う。お前のデジモンの戦いは、全力で競い合って最後には互いを称える『競技』なんだろうが、俺にとってデジモンの戦いとは、生きるか死ぬかの『生存競争』だ。負ければ死ぬ。負けないためにあらゆる策を尽くす。どれだけ打ちのめされようと死ななきゃ勝ちだ。それが俺達『デジモンテイマー』だ」

 

「デジモン………テイマー………?」

 

「俺からすれば、お前は甘っちょろいんだよ」

 

「ッ……………!」

 

サトジが言い淀んだ時、

 

「おい! 今のは無効だ! デジタルナイトとしてあるまじき姿だ!」

 

レオナルドがそう叫ぶ。

すると、観客席からも、「そうだそうだ」「卑怯だぞ」といったブーイングが発せられる。

大士は深く溜息を吐くと、

 

「わかったわかった。今の無しな。それで、俺達はお前を直接攻撃しない。それでいいな?」

 

やや投げ遣りにそう言った。

 

「最初からそう言えばいいんだよ………!」

 

サトジはぶつくさと言いながら、先程弾き飛ばされたモンスターボックスを拾う。

そして、

 

「仕切り直しだ!」

 

再びモンスターボックスを振り被り、

 

「ガジモン! 君の出番だ!」

 

アンダースローでモンスターボックスを投げる。

投げられたモンスターボックスは空中でパカッと開き、その中からデータ粒子が渦巻きながら現れ、デジモンの形を成していく。

それは、灰色の体毛に包まれた長い爪が特徴的な成長期デジモ………

 

「メタルキャノン!!」

 

………ンが完全に形を成した瞬間、その眉間に鉄球が直撃した。

 

「なっ!?」

 

現れたガジモンはバッタリと倒れる。

 

「何するんだ!?」

 

再びサトジが叫ぶ。

 

「何処に『敵』が現れるのか分かっているのなら、先制攻撃は当然だろ?」

 

大士は悪びれる事もなくそう言う。

 

「ッ………! そこは準備が整うまで待つのが当然だろ!?」

 

その言葉に大士は再び溜息を吐く。

 

「わかったわかった。戦闘準備が整うまで攻撃しない………」

 

やれやれと言いたげに大士は言う。

それを見ていたカイル達は、

 

「…………何だろう………? タイシが負けるイメージが全然沸かないや………」

 

カイルが苦笑しながらそう言う。

 

「少なくとも、戦いの『流れ』は完全にタイシに傾いた」

 

エリスが説明する様に言った。

 

「頑張ってください! タイシさん!」

 

エミリアは純粋に大士を応援する。

 

「タイシ………」

 

クラウディアは、心配そうに大士を見ていた。

サトジは、気絶したガジモンをモンスターボックスに戻すと、次のモンスターボックスを手に取る。

 

「ゴブリモン! 君の出番だ!」

 

そう叫びながらモンスターボックスを投げる。

モンスターボックスからデータ粒子が溢れ出し、ゴブリモンの形を取った。

 

「ゴブリモン……ね」

 

俺はゴブリモンを見据える。

 

「ゴブリモン! 油断するなよ!」

 

「ゴブッ!」

 

サトジの言葉にゴブリモンは頷く。

そして、その手に炎の玉を生み出し、

 

「ゴブリストライク!」

 

それをドルモン目掛けて投げ付けてきた。

だが、

 

「よっと……メタルキャノン!!」

 

俺が指示するまでもなく、ドルモンはサイドステップで火の玉を避けると、反撃のメタルキャノンを放った。

火の玉を投げ付けた後のゴブリモンは隙だらけで、

 

「ゴブッ!?」

 

その眉間に直撃した。

そのままバッタリ倒れるゴブリモン。

 

「ああっ!? ゴブリモン!」

 

サトジがゴブリモンに駆け寄る。

 

「敵の体勢も崩さずに挙動の大きい必殺技が当たるわけ無いだろ………」

 

大士は呆れた様にそう言う。

サトジはゴブリモンをモンスターボックスに戻すと、

 

「思ったよりはやるみたいだな! だけど、ここからが本番だ!」

 

勇ましくそう言う。

サトジは3つ目のモンスターボックスを手に取ると、

 

「フーガモン! 君の出番だ!」

 

そう叫んでモンスターボックスを投げると、モンスターボックスが開いてデータ粒子が溢れ出す。

その量は今までよりも多い。

すると、そのデータ粒子が形を成し、3mほどの身長を持つ赤銅色の肌を持つ鬼のようなデジモンとなった。

 

「フーガモン………成熟期か…………」

 

大士は落ち着いた様子でフーガモンを見ている。

 

「フーガモン! イビルハリケーンだ!」

 

サトジが叫ぶと、フーガモンは手に持ったホネ棍棒を振り被ると、その場で駒の様に高速回転を始めた。

 

「イビルハリケーン!!」

 

その状態で徐々に大士達に近付いてくる。

 

「ドルモン!」

 

「メタルキャノン!!」

 

大士はドルモンに攻撃させてみるが、ドルモンが放った鉄球はあっさりと弾かれてしまう。

 

「無駄だ! 成長期の攻撃じゃフーガモンの回転は止められない!」

 

サトジは自信満々に言い放ち、回転するフーガモンはどんどん大士とドルモンに近付いていく。

すると、

 

「……………ドルモン! 足元!」

 

大士がフーガモンの足の先を指差した。

 

「メタルキャノン!!」

 

ドルモンがそこに鉄球を撃ち込むと、フーガモンの回転がピタッと止まった。

何故ならば、ドルモンの鉄球が当たった場所はフーガモンの脚の小指だったからだ。

 

「フガッ!? フガーッ!?」

 

フーガモンは鉄球が当たった足を抱えつつ、片脚でピョンピョンと跳ね回る。

それを見ていたカイル達も、

 

「うわぁ………あれは痛いね………」

 

「箪笥の角に足の小指をぶつけた様なもの……」

 

「い、痛そうです………」

 

フーガモンに同情する様子を見せていた。

 

「くっそー! 運のいい奴だな………!」

 

跳ね回るフーガモンにサトジはそう零す。

 

「フーガモン! いつまでやってるんだ!」

 

サトジの声にフーガモンが気を取り直す。

 

「行け! フーガモン!」

 

フーガモンは、今度は真っ直ぐに走ってくる。

 

「メタルキャノン!!」

 

ドルモンはメタルキャノンを連射するが、フーガモンはホネ棍棒を振り回して、その全てを叩き落しながら近付く。

 

「もらった!」

 

サトジが叫ぶと同時にフーガモンが跳び上がり、ドルモン目掛けでホネ棍棒を両手持ちで振り被った。

 

「フゥゥゥゥゥゥガッ!!」

 

渾身の力で振り下ろすフーガモン。

そして、

 

――バキャァッ!

 

フーガモンのホネ棍棒が粉々に砕け散った。

 

「フガッ!?」

 

驚愕の声を漏らすフーガモン。

その目には、金色のデジソウルを拳に宿した大士が、その拳を振り被っている姿が映っていた。

その直後、

 

「はぁああああああああああああああっ!!!」

 

金色のデジソウルが宿った拳がフーガモンの腹部に叩き込まれる。

 

「グッ………ボァァァァァァァァァァァァッ!?!?!?」

 

フーガモンは身体をくの字に折り曲げ、一直線に後方に吹き飛ぶ。

フーガモンはリングを超え、場外も越えて勢いを衰えさせぬまま観客席の前にある壁に激突した。

 

「ァ…………ガ………………!?」

 

大の字に壁にめり込んでいるフーガモン。

完全に気絶していた。

 

「なっ………!? なっ………!? なっ………!?」

 

サトジは目の前の光景が信じられなかった。

サトジの目には、拳を振り切った大士の姿が映っている。

つまり、フーガモンを殴り飛ばしたのは大士という事だ。

 

「な、何が起こったんだ……? 一体何をしたんだ!?」

 

サトジは思わず問いかける。

 

「何って………? 殴っただけだが?」

 

大士はさも当然の様に答える。

 

「デジモンを殴り飛ばすだって!? そんな事が出来る訳………」

 

「勉強不足だな。高められたデジソウルは、その大きさに比例して身体能力をアップさせる力を持つ。さっきカイルがやった様にな」

 

その拳に宿る金色のデジソウルがその存在を主張する。

そして、その光景を見て絶句していたのはカイル達も同じだった。

 

「デウルの灯……ううん、デジソウルにそんな力があったなんて………」

 

「成熟期のデジモンを殴り飛ばすなんて、信じられません………」

 

カイルとエミリアがそう零す。

そしてエリスは、

 

「拳に光を宿す………勇者………?」

 

自分の好きな物語と大士の類似点を見て、まるで物語の勇者の様だと感じていた。

 

「くっ………! 戻れ! フーガモン!」

 

サトジはフーガモンをモンスターボックスに戻すと、

 

「次はこいつだ! ヤンマモン! 君の出番だ!」

 

サトジが次のデジモンを出してくる。

今度のデジモンはトンボの様な姿をした昆虫型デジモンのヤンマモン。

ヤンマモンは空中を自在に飛び回る。

 

「ヤンマモン! サンダーレイ!!」

 

サトジが指示を出すと、ヤンマモンは空中から電撃を帯びたレーザーを放ち、それが大士とドルモンの周りに着弾して爆発を起こす。

 

「くっ! メタルキャノン!!」

 

ドルモンは反撃するが、空を自在に飛び回るヤンマモンはあっさりと避けて見せる。

ヤンマモンはそのまま空中から一定の距離を保って攻撃を放ってきた。

大士は爆風に煽られながら、

 

「なるほど、飛べない相手に空中から距離を取って攻撃か………悪くない策だ」

 

余裕の表情でサトジの策を称賛する。

 

「だからどうした!? 降参するか!?」

 

サトジは漸く自分のペースに持ってこれたと思ったのか、そんな事を言う。

 

「まさか。相手が俺達じゃ無ければ、その策は間違って無かったと言いたいだけさ」

 

「何ッ!?」

 

大士は懐に手を入れると、そこからDアークを取り出す。

 

「あれは、もしかしてデジヴァイス!?」

 

カイルがそれを見て声を上げる。

 

「やっぱり、タイシさんもデジヴァイスを持ってたんですね!」

 

エミリアもそう言う。

 

「私達のどれとも形が違う………」

 

エリスは冷静にデジヴァイスの形を分析する。

そして大士は、続けて1枚のデジモンカードを取り出した。

 

「……………カード?」

 

クラウディアがそれを見て呟く。

そして、

 

「カードスラッシュ!」

 

大士がそのカードをDアークの側面にある溝に通し始める。

Dアークがそのカードの情報を読み取り、ドルモンへと転送する。

そして大士は、そのカードを通し切ると同時に、そのカードの名を言い放った。

 

「エアロウイング!!」

 

その直後、ドルモンの小さく、退化していた翼が、青い外骨格に赤い翼膜の大きな翼へと変貌した。

 

「なっ!?」

 

サトジは驚愕の声を上げる。

ドルモンがその翼を羽搏かせると、その風圧によって、爆煙が吹き飛ばされる。

ドルモンはそのまま空へと飛び立つ。

 

「ドルモンが………」

 

「飛んだ………?」

 

カイル達が空へと舞い上がるドルモンを見上げる。

ドルモンはヤンマモンが放ってくるサンダーレイを躱しつつヤンマモンへ接近する。

 

「ドルモン! 背中に組み付け!」

 

大士の指示に、ドルモンは体当たりを仕掛けてくるヤンマモンを急上昇して躱すと、その背中へと組み付いた。

そして、

 

「メタルキャノン!!」

 

ヤンマモンの羽の付け根へと向かってメタルキャノンを連射する。

 

昆虫型デジモンの外骨格は堅く、成長期のデジモンではダメージを与えるのは難しい。

だが、羽は比較的脆い。

羽搏きの小さな付け根部分なら、成長期の攻撃でも十分にダメージが与えられる。

その目論見通り、ヤンマモンは羽にダメージを受けてバランスを崩し、失速しながら墜落していく。

その先には、

 

「さあ、来やがれ!」

 

拳にデジソウルを宿して待ち構える大士の姿。

そして、墜落の寸前にドルモンはヤンマモンの背から離れ、

 

「おらぁっ!!」

 

そのまま墜落したヤンマモンに大士の拳が叩き込まれた。

一直線に殴り飛ばされるヤンマモン。

そのまま観客席の壁に頭から突き刺さった。

大士の隣にドルモンが降りてくると、背中の翼が元に戻る。

 

「ナイスだったぞ、ドルモン」

 

「へへっ!」

 

大士のサムズアップにドルモンは笑顔で応える。

 

「………………カードでデジモンに力を与えた………?」

 

クラウディアが呆然と呟く。

 

「まるで物語の勇者様みたいです!」

 

エミリアも同じことを思ったのか妙に言葉に力が籠っている。

 

「ッ~~~~~~~~~~~!?」

 

サトジは訳が分からないと言った表情で歯を食いしばる。

 

「戻れ! ヤンマモン!!」

 

サトジは少々乱暴な口調でヤンマモンを戻すと、

 

「……………遊びはここまでだ! 俺の本気を見せてやる!!」

 

サトジがそう言うと、5つ目のモンスターボックスを手に取る。

それを振り被り、

 

「メガドラモン! 君の出番だ!!」

 

その名を口にしながらモンスターボックスを投げ放った。

モンスターボックスから溢れるデータ粒子。

それは成熟期の時よりも更に多い。

そのデータ粒子は巨大な竜を形作り、

 

「グォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

完全体サイボーグ型デジモンであるメガドラモンが現れた。

 

「メガドラモン………完全体か」

 

大士はそう呟く。

 

「もう油断はしない! 一気に決める! メガドラモン! ジェノサイドアタックだ!!」

 

サトジが叫ぶと、メガドラモンは両腕のメガハンドを大士達に向けると、その砲口を露にする。

 

「多少の怪我は我慢しろ! 行くぞ!!」

 

サトジがそう叫んだ時、大士はまた別のカードを取り出した。

そして、

 

「ジェノサイドアタック!!」

 

メガドラモンの腕から合計10発の有機体系ミサイルが発射された。

それらは大士とドルモンへ向かう。

その瞬間、

 

「カードスラッシュ! ブレイブシールド!!」

 

大士はそのカードをスラッシュする。

2人の前に黄金の盾が具現された。

 

「何ッ!?」

 

メガドラモンが放ったミサイルはその盾に当たって爆発を起こすが、その盾を揺るがす事は無かった。

全てのミサイルを防ぎ切った黄金の盾は、役目を果たしたと言わんばかりに消える。

 

「くそっ! しつこい………!」

 

思い通りに行かないのが悔しいのか、そんな風に吐き捨てるサトジ。

 

「けど、いくら攻撃を防げても、成長期の攻撃じゃ絶対に完全体は倒せない! この勝負は俺の勝ちだ!」

 

サトジはそう言い張る。

 

「なるほど………確かに成長期じゃ完全体に勝てる可能性は限りなく低いだろうな」

 

大士はサトジの言葉を肯定する様にそう言った。

 

「だったら降参するか!?」

 

そう言うサトジに、

 

「別にその必要は無い」

 

また新しいカードを取り出す。

 

「行くぞ、ドルモン!」

 

「何時でも行けるよ! 大士!」

 

大士の言葉にドルモンは頼もしく応え、

 

「カードスラッシュ!」

 

大士はそのカードをDアークにスラッシュする。

そのカードは、

 

「超進化プラグインS!!」

 

ドルモンを進化させるキーカード。

 

―――EVOLUTION

 

Dアークの画面にその文字が刻まれる。

Dアークから放たれる光がドルモンを包む。

そして、

 

「ドルモン進化!」

 

ドルモンのデータが分解され、再構築される。

体毛の色は、紫から藍色へ。

背中にあった小さな羽は飛行可能なほど発達し、巨大化。

獣の凶暴性と竜の知性を併せ持った成熟期の獣竜型デジモン。

 

「ドルガモン!!」

 

成熟期へと進化したドルガモンがその姿を現す。

 

「なっ!? し、進化した!?」

 

サトジは驚愕する。

 

「おのれ………またしても奇跡という偶然に助けられおって………!」

 

それを見ていたレオナルドも忌々しそうに吐き捨てる。

 

「違う! これは『奇跡』でも『偶然』でもない!」

 

カイルが叫ぶ。

 

「デジモンとの絆が起こした『必然』なんだ!!」

 

そう言い放つカイル。

 

「世迷いごとを………!」

 

レオナルドが叫ぼうとした時、

 

「あ~、カイル? 燃えている所悪いが少し訂正させてもらう」

 

カイルの言葉にそう言ったのは大士だった。

 

「タイシ………?」

 

カイルが声を漏らすと、

 

「カイル、エミリア、エリス………お前達のデジモンが進化したのは、デジモンとの『絆』が起こした『奇跡』であり『必然』だ……………」

 

大士は、奇跡は起きたのではなく、カイル達が『起こした』ものだと訂正した。

 

「だが、ドルモンの進化は違う。『絆』が起こした事には違いないが、それは『奇跡』でも『必』然でも、ましてや『偶』然でもない……………」

 

大士は一呼吸置くと、

 

「…………『当』然の事なんだよ」

 

「当然……………?」

 

その意味を理解できなかったカイル達は声を漏らす。

 

「何を意味の分からない事を………進化が当然? そんなわけあるもんか!」

 

サトジは気を取り直してドルガモンを見据える。

 

「例え進化したとしても成熟期! メガドラモンの敵じゃない! 行け! メガドラモン!!」

 

「グォオオオオオオオオッ!!」

 

メガドラモンは咆哮を上げるとドルガモンに向かってくる。

大士はドルガモンの背に飛び乗ると、

 

「行くぞ、ドルガモン!」

 

「おう!」

 

ドルガモンも翼を羽搏かせて飛び立つ。

 

「パワーメタル!!」

 

ドルガモンが巨大な鉄球を放った。

 

「グガッ!?」

 

メガドラモンは僅かに怯むが、すぐに持ち直してメガハンドを向ける。

 

「ジェノサイドアタック!!」

 

再びミサイルを放ってくるメガドラモン。

ドルガモンは避けようとするが、有機体系ミサイルはドルガモンを追尾してくる。

そして、ドルガモンよりミサイルの方がスピードは速く、命中するのは時間の問題と思われた。

だが、

 

「カードスラッシュ!」

 

大士がドルガモンの背中で1枚のカードをスラッシュする。

 

「高速プラグインH ハイパーアクセル!!」

 

その瞬間、ドルガモンのスピードが急激に増した。

ミサイルを躱し、自爆させる。

 

「なっ!? スピードが増した!?」

 

突然の事に、サトジは声を上げる。

更に大士はもう1枚のカードをスラッシュする。

 

「カードスラッシュ!」

 

そのカードは、

 

「ドラモンキラー!!」

 

ドラモン系を始めとした竜種のデジモンに特攻能力を持つ武装。

ドルガモンの両腕に黄金の手甲に3本の爪が付いたような武器が装着される。

ドルガモンはハイスピードのままメガドラモンへ接近し、

 

「ドラモンキラー!!」

 

両腕の武器でメガドラモンの胴体を斬りつけた。

 

「グギャァアアアアアアアアアッ!?!?」

 

予想外の大ダメージにメガドラモンは苦しみの声を上げた。

その瞬間、

 

「はっ!」

 

大士がドルガモンの背中から飛び上がると、

 

「はぁあああああああああああっ!!」

 

メガドラモンの頭上からデジソウルを纏った拳を振り下ろした。

 

「グガッ!?」

 

その一撃は、メガドラモンを叩き落し、リングの上に激突させる。

 

「完全体も殴り倒した………!?」

 

エリスが珍しく驚愕の声を上げる。

空中で落下していく大士をドルガモンが拾うと、

 

「次で止めだ! ドルガモン!」

 

「おう!」

 

大士は更にカードを取り出し、

 

「カードスラッシュ!」

 

それをDアークにスラッシュする。

 

「キング・デヴァイス!!」

 

そのデータがドルガモンに送られると、ドルガモンが巨大化して2倍ほどの大きさになる。

そして、

 

「パワーメタル!!」

 

2倍の大きさとなった巨大な鉄球が、轟音と共にメガドラモンを圧し潰した。

カードの効果が切れ、ドルガモンが元の大きさに戻り、同時に鉄球もデータ粒子に分解される。

その下に居たメガドラモンは、完全に気を失っていた。

 

「そんな………メガドラモンが………負けた…………?」

 

サトジが呆然と呟く。

余程自信があったのだろう。

かなりショックが大きかった様だ。

その時だった。

 

「貴様! 先程から妙な小細工ばかり! そんな戦い方は騎士として認められん!」

 

レオナルドが叫ぶ。

大士はその言葉に深ぁ~く溜息を吐くと、

 

「ならどうしろと?」

 

「最後ぐらい、正々堂々真正面からぶつかって見せろ! そうでなくては貴様達の勝ちは認められん!!」

 

「滅茶苦茶言ってんなコイツ………」

 

明らかに大士の実力を出させないするような要件に、大士は呆れる。

だが、

 

「…………わかった。小細工抜きの真っ向勝負だな? 受けてやるよ」

 

「当然だが、貴様も手を出すのは無しだ!」

 

「はいはい、出さない出さない………」

 

レオナルドの言葉に投げ遣りに答える大士。

 

「さあ、最後のデジモンを出せ」

 

サトジに向き直ると大士はそう言う。

 

「くっ………!」

 

サトジは気後れするが。

 

「大丈夫だ、サトジ。卑怯な手を使われなければ、君が負ける筈が無い!」

 

レオナルドはそう声援を送る。

 

「そ、そうだな………ようし……!」

 

何とか気力を取り戻したサトジは、最後のモンスターボックスに手を伸ばす。

 

「これで最後だ! メタルティラノモン! 君の出番だ!」

 

投げ放たれるモンスターボックス。

そこから溢れ出す粒子が形を取り、機械化されたティラノモンの完全体。

メタルティラノモンが姿を現す。

 

「さあ! 掛かって来い!」

 

サトジがそう言い放つ。

 

「………ドルガモン!」

 

大士の言葉でドルガモンが突進する。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

ドルガモンが渾身の力で体当たりを仕掛けるが、ドシィッと重い音を響かせてメタルティラノモンに受け止められる。

 

「グガァァァァッ!!」

 

押し返されたドルガモンは、バランスを崩しながら後退する。

 

「クッ!」

 

何とか転倒は防ぐが、

 

「ギガデストロイヤーⅡ!!」

 

メタルティラノモンの右腕から発射されたミサイルが迫っていた。

 

「うわぁああああああああああっ!?」

 

そのミサイルに直撃し、爆発によって吹き飛ばされるドルガモン。

傷だらけとなってリングの上に倒れる。

 

「ああっ! やっぱり、完全体相手に真っ向勝負じゃ分が悪すぎる!」

 

カイルが叫ぶ。

 

「ふはは! 卑怯な手さえ使われなければこの通りよ! やはりサトジこそ最強の勇者だ!」

 

レオナルドが笑い声をあげる。

その笑い声を聞いて、大士が呆れた様に溜息を吐くと、

 

「やっぱり、成熟期のままじゃ不利か…………」

 

そう呟く。

そして、また1枚のカードを取り出した。

 

「おい! 何をしている!? 小細工は無しと言った筈だ!」

 

大士の行動を見て、レオナルドが声を上げる。

 

「安心しろ。『小細工』じゃない」

 

大士がそのカードを見せつけるように持つと、そのカードが青く輝き始め、カードそのものも、澄んだ青く輝くカードへと変貌する。

それを見たクラウディアは、

 

「青く輝く………カード…………!」

 

思わずそう呟いた。

 

「カードスラッシュ!」

 

大士はその青く輝くカード――ブルーカードをDアークに通していく。

 

「マトリックスエボリューション!!」

 

そのカードをスラッシュした瞬間、Dアークが輝いた。

 

――MATRIX

  EVOLUTION――

 

Dアークの画面にその文字が刻まれる。

Dアークから放たれる光が、ドルガモンを包んだ。

目を見開くドルガモン。

そして、

 

「ドルガモン進化!」

 

その輝きの中、ドルガモンは更に巨大化。

完全な4足歩行となり、体毛は紺色から紅色へ。

更に黒いラインが各所に入る。

鼻先に鋭いブレードが現れ、背中には2対4枚の黒い翼。

獣寄りの姿から、ドラゴンの因子が強くなり、更に竜の姿に近付いた獣竜型デジモン。

 

「ドルグレモン!!」

 

全長20m、全高10mに匹敵する巨体がその場に現れた。

 

「そ………そんな馬鹿な………!? ついさっき進化したばかりだぞ………それなのに、もう完全体に進化するなんて………ありえない!」

 

サトジは驚愕で固まっている。

レオナルドも言葉を失っている様だ。

 

「………言った筈だぞ。俺にとってパートナーが進化するのは、『当然』の事だってな……!」

 

大士はそう言い放つ。

 

「…………進化するのが当然………まさか………! あり得るのか………そんな事が…………!」

 

クラウディアは驚愕し、

 

「勇者が青く輝くカードを使うと、勇者のデジモンが完全体へと進化した…………物語の通りです………!」

 

エミリアは憧れに似た感情を大士へ向ける。

 

「タイシ………………タイシは本当の勇者…………?」

 

エリスも期待の眼差しを大士へ向けていた。

ドルグレモンがリングの石板に罅を入れながら一歩踏み出す。

そして、

 

「行け! ドルグレモン!!」

 

「おおっ!!」

 

ドルグレモンは翼を羽搏かせて一気に突っ込む。

 

「メ、メタルティラノモン!!」

 

サトジも慌ててメタルティラノモンに指示を出す。

その直後、ドルグレモンの巨体がメタルティラノモンに衝突した。

一瞬受け止めるものの、

 

「パワーでドルグレモンに敵うと思うなぁっ!!」

 

大士の叫びと共に、一気にメタルティラノモンが押され出す。

そして、

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

ドルグレモンが首を振り上げると、それに伴ってメタルティラノモンが空高く投げられた。

 

「メ、メタルティラノモン!?」

 

サトジが叫ぶが、空の飛べないメタルティラノモンでは空中での行動は不可能。

対して、

 

「ドルグレモン!!」

 

ドルグレモンは4枚の翼で空高く舞い上がる。

ドルグレモンは投げられたメタルティラノモンよりも高く跳ぶと、

 

「はぁああああああああああああああああっ!!」

 

一気に急降下し、メタルティラノモンを踏みつけ、そのまま全体重をかけて落下していく。

そして、

 

―――ドゴォォォォォォォォォォォォォォン!!!

 

リングを粉々に砕きながら、メタルティラノモンを叩きつけた。

激突の衝撃が上から押し付けられるドルグレモンによって逃げ場を無くし、メタルティラノモンに全て襲い掛かる。

メタルティラノモンはそれに耐えきれるはずもなく、意識を手放した。

ぐったりと倒れるメタルティラノモン。

ドルグレモンは飛び上がり、大士の隣へ着地する。

 

「そ、そこまで……! 勝者………タイシ……!」

 

流石の審判も、これには大士の勝利を認める他無かった。

 

「あ、ありえない…………!」

 

レオナルドが呟く。

 

「ありえない………ありえない!」

 

そう言いながら砕けたリングの上に上がり、大士の方に向かってくる。

 

「何故だ!? 一体どんなトリックだ!? 何故こんな短時間で完全体まで進化できる!?」

 

狼狽えるレオナルドに対し、大士は落ち着いた表情で、

 

「何故って………?」

 

そう言いながらドルグレモンを見上げる。

すると、ドルグレモンが光に包まれて一気に縮み始めた。

そして、その光が消えると、元のドルモンの姿に戻っていた。

 

「こう言う事だが?」

 

それを見たレオナルドが再び固まる。

 

「な…………何故戻る!?!?」

 

レオナルドは理解できないと叫んだ。

 

「何故と言われても困る。俺の世界のパートナーデジモンは大体こんなもんだ」

 

大士がそう言うと、

 

「やはり……そうなのか………?」

 

クラウディアが何かに気付いたように声を漏らした。

 

「タイシ! お前のドルモンは………! お前の意思で自由に進化させ、元のドルモンにも戻れるという事なのか!?」

 

そう叫ぶクラウディア。

その言葉に、

 

「…………まあ、そう言う事だ」

 

肯定の意を示す大士。

 

「……………お………おおっ………! 貴殿もやはり勇者の1人だったのだな!」

 

レオナルドの態度が手のひらを返したように変わった。

 

「今までの無礼失礼した。早く言ってくれれば最高の待遇で迎えて差し上げたものを。すぐに貴殿には貴殿に相応しい地位を用意しよう。学院も平民クラスではなく貴族クラスへの転入の手続きを始める。今までの事は水に流し、貴殿もこの世界の為に勇者としてその力を振るって頂きたい!」

 

レオナルドは笑みを浮かべて握手の為に右手を差し出す。

それに対し、大士はレオナルドに歩み寄ると、右手を上げる。

レオナルドはその右手を握ろうと更に手を差し出す。

が、

 

「ッ!?」

 

大士はその手を握らずに、右手を顔の近くまで持ってくると、その手を握りしめて拳を作った。

 

「………おい………約束、忘れて無いだろうな………?」

 

「は…………? や、約束………?」

 

「ああ………俺達が勝ったら、そのスカした面をぶん殴るってなぁっ!」

 

「なっ!?」

 

大士は拳を振り被り、レオナルドの顔面目掛けて拳を繰り出し――――

 

「やめろっ!!!」

 

後ろから聞こえたその声に、レオナルドの顔に当たる寸前でその拳を止めた。

 

「……………………」

 

大士は首だけで後ろを振り向く。

そこには、

 

「…………頼む…………私の為に殴ろうとしているのなら…………やめてくれ…………」

 

クラウディアは何かに耐えるように俯きながらそう言葉を絞り出した。

 

「……………なぜ止める………?」

 

「ここで殿下を殴れば、お前の立場が悪くなる…………私の所為でこれ以上お前に重荷を背負わせるのは………忍びない…………」

 

そのクラウディアの言葉に、

 

「………………………お前がそこまで言うなら、この拳は収めよう」

 

繰り出していた拳を引く。

すると、

 

「……………ふっ、ふっはっはっはっはっは! それで私に恩を売ったつもりかクラウディア!? その程度で私の許しが得れると思っているのか!? 貴様も、フォルダ公爵家も唯で済むとは思わない事だ!」

 

「……………………………………」

 

レオナルドの言葉に、クラウディアは無言で俯く。

その時、

 

「おい………何馬鹿笑いしてやがる………?」

 

大士が再び拳を握りながらレオナルドに言う。

 

「タイシ…………!?」

 

クラウディアが驚愕の表情で大士を見つめる。

 

「な、何をしている………? 私を殴る事はクラウディアの思いを無駄にすることだぞ………?」

 

冷や汗を流しながらレオナルドは言い返すが。

 

「ああ。確かにさっきの拳には、クラウディアの為って意味もあったから、お前を殴るのは止めた」

 

「な、ならば………」

 

「3割程度だけどな」

 

「なっ?」

 

「けど、3割程度とは言え、クラウディアがそれを望まないまま殴るのは、クラウディアに失礼だと思ったからさっきは止めた…………だから………!」

 

大士は一歩近づく。

 

「今度は100%俺が俺の意思で………!」

 

「なっ……ま、待て……!」

 

拳を握りしめ、

 

「俺の感情に従って…………!」

 

「ま、待て………! やめろ………!」

 

その拳を振り被り、

 

「お前を殴るっ!!!」

 

「待っ…………!?」

 

その拳をレオナルドの顔面に叩き込んだ。

大士の拳がレオナルドの頬に突き刺さり、振り抜く勢いでレオナルドが後方に吹っ飛ぶ。

 

「「「「「………………………」」」」」

 

それを驚愕の表情で見ている一同。

そして、大士が拳を振り抜いた体勢から身体を戻すと、

 

「あ~~~~! スッキリした!」

 

晴れ晴れとした顔でそう言い放つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






オリジナル異世界編第12話です。
ノリノリついでに書き切ってしまいました。
流石にこのペースで書くのは不可能なので、次週からはまた週一に戻ります。
今回は大士のターンでした。
こんな感じで如何ですか?
今までの鬱憤は晴らせましたかね?
とりあえずドルガモンとドルグレモンを披露しました。
これでも全力出してないんだぜ?
そしてやっと王子サマを殴らせるとこが出来た!
満足!
では、次も頑張ります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。