ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第13話 国王来たる

 

 

 

王子サマの顔面に拳を叩き込んだ俺は、スッキリした気分になった。

 

「あ~~~~! スッキリした!」

 

思わずそう口から出る。

王子サマは後ろに吹っ飛んで倒れたままだ。

俺はもう用は無いとばかりに背を向けて歩き出す。

すると、

 

「タイシ………何故………!?」

 

クラウディアが驚愕から少し目を見開きながら問いかけてきた。

 

「ん?」

 

俺がそっちを向くと、

 

「何故………殴ったのだ………? 私の為に殴る必要は無いと………!」

 

「別にお前の為じゃない」

 

クラウディアの言葉にそう返す。

 

「さっきも言ったが、俺があの王子サマを殴ったのは、俺が俺の意思で、俺の感情に従った結果だ。殴った理由も、それによって起こる問題も、お前の所為にするつもりは無い」

 

俺はそう言う。

 

「…………………………そうか」

 

クラウディアは沈黙の後、小さく微笑んだ。

すると、

 

「それにしてもタイシさん! タイシさんって、本当の勇者様だったんですね!」

 

エミリアが興奮を隠しきれない表情でそう言って来る。

因みにエリスもそれとなく期待に満ちた表情だ。

 

「……………はぁ。さっきも言ったが俺は勇者じゃない。勇者の真似事が出来るだけだ」

 

俺はそう言う反応をされることを半ば分かっていたために、溜息を吐きながらそう返す。

 

「どうしてですか!? タイシさんは、カードでドルモンに力を与えて、青く輝くカードで完全体まで進化させました! 物語の勇者様そのものです!」

 

エミリアは完全に舞い上がっているのか、俺を勇者と信じて疑っていないっぽい。

 

「確かに俺は物語の勇者と同じ事は出来る。カードを使ってドルモンをサポートしたり進化させることも出来るし、デジソウル………光を拳に宿してデジモンを殴り倒す事だって可能だ」

 

「でしたら………!」

 

「けど、力があるから勇者なのか?」

 

「えっ………?」

 

「力があれば、誰でも勇者になれるのか?」

 

「それは…………」

 

「勇者に一番必要な物………それは『心』だ。自分を顧みず、見ず知らずの『誰か』の為に命を懸けられる『勇気』を持つ者。俺にはそれが無い」

 

「そんな事………!」

 

エミリアが何か言おうとした時、突如として闘技場内への出入り口から、多数の兵士達がデジモン達と共に現れて俺達を取り囲んだ。

 

「なっ!?」

 

クラウディアが驚愕の声を漏らす。

 

「…………………やっぱりこうなったか」

 

俺は可能性の1つとして予想し、そして一番可能性が高いだろう予想が的中したと確信した。

俺は王子サマの方に向き直る。

王子サマはよろよろと立ち上がった所だった。

 

「…………何の真似だ?」

 

俺は一応問いかける。

 

「き、貴様…………よくもこの私の顔を………! 許さん! この場で即刻処刑してやる!!」

 

王子サマは腫れ上がった頬を押さえながら、怒りに満ちた目で俺を睨む。

 

「何を言ってるんだ! タイシがあなたを殴ったのは、決闘の条件として盛り込まれていた筈だ」

 

カイルが反論するが、

 

「黙れ! 平民如きが王族であるこの私に意見するな! 貴様も処刑してやろうか!?」

 

「ッ!?」

 

王子サマの物言いに、僅かに怯むカイル。

流石にこの世界の平民は、王族と聞くだけで臆してしまう様だ。

 

「でもっ………!」

 

それでもカイルは言い返そうとしたが、

 

「カイル、お前達は下がれ………」

 

俺はそんなカイルを手で制して前に出た。

 

「タイシ……!?」

 

カイルは引き留めるような声を漏らすが、俺は前に少し歩み出すと、王子サマを見据えた。

 

「フン、観念したか?」

 

何か言って来たが、俺はそれを無視し、

 

「なあ王子サマ? 一つ聞きたい」

 

「如何した? 命乞いか?」

 

王子サマの返答は在り来たりの物だったが、俺は一呼吸置き、

 

「…………お前は俺の『敵』か?」

 

肝心の一言を言い放った。

 

「何…………?」

 

王子サマは怪訝そうな顔で俺を見る。

 

「さっきまでは『決闘ごっこ』だったから、ある程度お前らの我儘にも付き合ってやった。だが、お前が俺とドルモンの『命』を脅かす『敵』ならば、容赦はしない………!」

 

俺は意識を完全な戦闘モードに切り替える。

 

「ッ…………!?」

 

俺の意識の変化に気付いたのか、王子サマは怯んだ。

だが、

 

「て、『敵』ならば何だというのだ!? この数の兵士達を相手に、貴様程度が敵うと思っているのか!?」

 

「逆に聞きたいが、自分達の戦力でどうにもならない魔族を倒すために勇者召喚したのに、自分達の戦力で勇者が倒せたら勇者召喚の意味が無いと思うんだが? それだと、お前らのやった召喚は単なる誘拐に成り下がる訳だが?」

 

「ぐぬ………! 屁理屈を!」

 

「この上ない正論だと思うんだがなぁ…………」

 

「もういい! 兵士達よ! その男を始末しろ!!」

 

王子サマが見せた完全なる敵意。

兵士達が、号令と共に俺とドルモンに向かってくる。

それを見て、

 

「…………ならば容赦しない……!」

 

俺は意志を固め、ドルモンを究極体へ進化させようと―――

 

 

 

 

「それまでっ!!!」

 

 

 

 

―――した瞬間、威厳に満ちた怒声が響き渡った。

兵士達は一斉に動きを止め、俺も出鼻を挫かれた形になる。

その場の全員が、声のした方向へ振り向いた。

そこは、闘技場の観客席の中腹辺りにある出入り口の1つ。

その前に、数人の人影があった。

その先頭に立つのは、王子サマと同じ赤髪をした中年男性。

その人は冠を被り、立派な赤いマントも羽織っている。

更には、その人の斜め後ろには、フォルダ公爵の姿もあった。

すると、

 

「ち、父上…………!」

 

王子サマが決定的な一言を漏らす。

どうやらあの男性がこの国の国王の様だ。

その瞬間、ズザザザザッ!と観客席にいた生徒や教師たちが一斉に跪く。

すると、国王とその一行はゆっくりと階段を降りて来て、風魔法で宙に浮くと、闘技場内に降り立ち、こちらに歩み寄って来る。

すると、ズザッと音がして、俺の近くにいたクラウディア、カイル、エミリア、エリスも国王に向かって跪く。

ついでに言えば、山口、中島さん、パチモン勇者も周りに倣って跪いていた。

俺は立ったままだが。

 

「な、何してるんですかタイシさん………! 国王陛下ですよ……!」

 

エミリアが小声で注意する様に言ってくる。

 

「だろうな………」

 

まあ、跪けって言ってるんだろうけど。

 

「悪いが、俺は今、国王サマに跪くべきとは思っていない」

 

俺はエミリアにそう言う。

 

「貴様!」

 

国王の後ろにいた鎧姿の1人。

おそらく親衛隊の1人だろうが、声を荒げて剣を抜こうとした。

だが、

 

「よい」

 

国王が手で制しながらその一言だけで兵士を止める。

 

「陛下……!? しかし……!」

 

その兵士は食い下がろうとしたが、

 

「あの者からすれば、私は自分の命を奪おうとした者の父親だ。安易に跪かず、警戒するのは当然の事」

 

「ですが………!」

 

兵士は尚も食い下がろうとしたが、

 

「くどいぞ……! そもそも、完全体デジモンすら素手で殴り倒せる者を相手に、並の人間が敵うと思っているのか……!?」

 

国王は叱るような口調でそう言う。

 

「うっ…………」

 

兵士は言われた事で気付いたのか、意気消沈する。

そして、国王はまず王子サマの方を向くと、

 

「私が居らぬ間に、随分と勝手な事をしてくれたようだな、レオナルド」

 

目を細めながら、王子サマを睨む国王。

 

「ッ………私は! この国に必要だと思った事を為したまでです!!」

 

王子サマはその眼力に一瞬怯むが、そう言い返す。

 

「ほう? 審議中だった勇者召喚を強行したのはまだ良しとしよう。お前が行わずとも、最終的に召喚に踏み切った可能性はあるのだからな…………しかし、召喚された状況だけで判断したお前は、最も『力』を持つだろう召喚者を切り捨て、修復不能なほど関係を悪化させた挙句、更には私が無理を言って叶えたクラウディア嬢との婚約を勝手に解消した。この責任を如何するつもりだ………?」

 

「で、ですが、魔力も無く、連れているデジモンも8年間も成長期のままと聞けば……!」

 

「愚か者! 上辺だけを見て判断するからそのような事になる! 少なくとも、他の召喚者達と同列に扱い、しばらく様子を見るべきであった。そうしていれば、今ほど悪い関係にはならなかったであろう………」

 

「うっ…………」

 

「今言っても詮なき事だがな」

 

「………………………」

 

「そして、クラウディア嬢との婚約を、勝手に解消してしまった事も短慮としか言いようが無い」

 

「それについてはマリカと婚約すれば問題は………!」

 

「ほう? 貴様は先程のあの者の言葉を聞いていなかったのか? 異世界の………そして一般庶民のマリカ殿が、王妃としてやっていけると思っているのか? いや、少なくとも、王妃としてこの国………国民の為に身を削る『覚悟』を持っているのか?」

 

「私は! マリカなら立派な王妃になれると信じています!」

 

王子サマはそう叫ぶ。

 

「そうかな?」

 

国王が視線をズラし、中島さんへ視線を向ける。

跪いたまま様子を窺っていた中島さんは、国王と目が合う。

すると、

 

「ッ!」

 

国王がキッと目を細めて中島さんを見つめる。

その目に中島さんは、ビクッと怯えた様に目を逸らした。

それを見て国王は軽く溜息を吐くと、

 

「この程度の眼力に目を合わせられないようでは、王妃としてやっていけるとは思えんがな………」

 

続いて国王はクラウディアを見た。

クラウディアは先程から跪いたまま顔を下げている。

 

「クラウディア嬢、面を上げよ」

 

国王にそう言われて、クラウディアは初めて顔を上げた。

そう言えば、国王の前では許可が無ければ発言どころか顔を上げることも許されないんだったか?

今まで会った王族は、その辺割とフランクな奴が多かったからな。

俺達の仲間が、全員我が道を行くタイプだったから、畏まる事なんてまず無かったが。

 

「……………………………」

 

顔を上げたクラウディアは、国王と目を合わせる。

国王は、先程の中島さんにやった様にキッと目を細めて見つめた。

 

「……………………………」

 

しかし、クラウディアは平然としたままその目を見つめ返した。

すると、国王は溜息を吐き、

 

「本当に、バカな事をしたものだ…………」

 

そう言葉を零す。

その言葉は、王子サマに向けられたものだろう。

 

「クラウディア嬢。大筋の話は、其方がフォルダ公爵に送った手紙の内容で把握している。王家から無理を言って叶えた婚約だったのに………其方には本当に申し訳ない事をした」

 

「いえ…………」

 

「これほどまでに人目に触れている以上、撤回も不可能だ」

 

「存じております………」

 

国王の言葉に、クラウディアは淡々と答えている。

 

「………故に、これから言う言葉は、私なりの謝罪の証だと思って欲しい」

 

「…………え?」

 

国王の言葉に、クラウディアが疑問の声を漏らした時、

 

「今、この場を以って、レオナルドとクラウディア嬢の婚約を、正式に破棄する!」

 

国王は、まるで観客席にいる者全員に聞こえるように宣言した。

クラウディアがその言葉を受け入れようとした時、

 

「婚約破棄の理由として、我が息子レオナルドでは、クラウディア嬢に相応しくないと判断したためである!」

 

「えっ!?」

 

「なっ!? ち、父上!?」

 

国王の言葉に、クラウディアと王子サマが驚愕の声を漏らす。

かくいう俺も内心驚いていた。

今までは、クラウディアが王子サマから婚約破棄をされた。

つまり、クラウディアは王族から袖にされたという、貴族令嬢にとって致命的な傷を負ってしまうことになっていた。

だが、国王の発言によってクラウディアが王子サマに袖にされたのではなく、王子サマに問題があり、婚約を破棄せざるを得なくなった、と立場が入れ替わったのだ。

王子サマが思わず反論しようとした時、

 

「そして、レオナルド! お前には謹慎を命ずる! 許可があるまで王宮から一歩も出るな! 連れていけ!」

 

国王は王子サマに反論を許さず、兵士に命じて王子サマを拘束すると、そのまま連れ出していく。

 

「ち、父上! 父上ぇーーーーっ!!」

 

王子サマの空しい叫びだけが残された。

 

「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

 

暫く沈黙がその場を支配する。

すると、

 

「さて…………」

 

国王が俺達に向き直る。

 

「異世界から召喚されし者達よ。そう畏まらずともよい。立ち上がって楽にせよ」

 

国王からそう言われ、山口、中島さん、パチモン勇者の3人は戸惑いながらも立ち上がる。

それから、俺を含めた召喚者全員を見回すと、

 

「私はこのサーバー王国の国王、アスラン・オメガ・フォン・サーバー。其方たち異世界人を、この世界の都合で呼び出してしまった事を、ここに改めて謝罪したい」

 

そう言って頭を下げる国王。

すると、

 

「そ、そんな! 頭を上げてください!」

 

「そ、そうです! その事はもう気にしていませんから!」

 

「お、王様が謝る事なんて……!」

 

3人は、王様に頭を下げさせているという事に耐えきれず、そんな事を言っている。

俺は別にどうも思わないけどな。

国王は頭を上げると、

 

「感謝する。そして、不躾な願いではあるが、人間族が危機を迎えている事もまた事実。諸君らの力を、我々に貸していただきたい」

 

続けてそう言った。

 

「そ、それは勿論……です!」

 

「元々協力するつもりでしたし………!」

 

「困っている人たちを放っては置けません!」

 

3人は流れのままに承諾している。

本当に意味分かってんのかね?

 

「…………………………」

 

俺は無言でその様子を見ていた。

すると、国王の視線が俺の方を向き、

 

「其方は如何かね?」

 

そう問いかけてきた。

召喚された3人と、そして、観客席にいる生徒達の注目が俺に集まる。

この状況で断れる奴は並の精神力を持つ人間では無理だろう。

だから俺は、

 

「………………断る!」

 

思いっきり断ってやった。

 

「ッ!」

 

国王は軽く目を見開き、

 

「なっ!?」

 

「えっ!?」

 

「何だって!?」

 

召喚者3人達は驚愕の声を漏らす。

そして、声こそ漏らしてはいないが、クラウディア達も動揺している様子が伺える。

 

「……………理由を聞いてもいいかね?」

 

「単純な話だ。俺は、『見ず知らずの誰か』の為に命を懸けられるような殊勝な考えは持ってないだけだ」

 

「……………………」

 

「王子サマが俺の事を勇者に相応しくないと言ったが、それには大いに同意する。俺は自分で自分を勇者に相応しい人間だとは思っていない。俺は自己中心的な人間だ。俺が戦うのは自分の為、自分の『大切』の為。それ以外に命を懸ける気など毛頭無い」

 

「お前っ! 自分が良ければ他の人はどうなっても良いって言うのか!?」

 

パチモン勇者が義憤に駆られて声を上げる。

 

「まあ、極端な事を言えばそう言う事だ。目の前で助けを求められて、かつ自分で何とかできそうな事柄からなら手を貸してもいいが、『命』を懸けろと言われて懸けられるような出来た人間じゃないな」

 

「お前っ! あれだけの実力を持っていながら……!」

 

「『力』があるから戦わなきゃいけないのか?」

 

「何ッ!?」

 

「俺は争い事は好きじゃないんだ。俺はドルモンと………そして大切な『家族』や『仲間』………『恋人達』と平穏な『日常』を送りたいだけだ。自分から英雄になろうとか、勇者になりたいなんて欠片も思ってないね。まあ、その『日常』を脅かそうとする『敵』とは文字通り『命懸け』で戦うけどな。そもそも、その『日常』を送っていた俺とドルモンを、強引に『日常』から引き剥がしてこの世界に連れて来られたんだ。その『日常』を奪った奴らに助けてくれと言われても素直に頷くと思ってんのか?」

 

「で、でも、困っている人がいたら助けるのは当たり前だろ!?」

 

「それはそうかもしれないが、その『困っている人』の為に命を懸けられるかどうかは別問題だ。この世界は物語でもゲームでもない。紛れもない『現実』なんだ。『正義の味方』が必ず勝つとは限らないんだよ」

 

「でも、それでも…………」

 

「第一、召喚された時点で役立たずと判断された俺を殺そうとしてきた奴らに、進んで協力しようなんて聖人君子がどれだけいると思ってる?」

 

「な、何の事だ!?」

 

「あの王子サマは、兵士に『然るべき処置』をしておけと命じていた。ハッキリ聞いたわけでは無いが、十中八九間違いないだろう。あの時フォルダ公爵が来なかったら、おそらく俺を殺そうとしてきただろうな」

 

「ッ………!?」

 

国王が僅かに声を漏らす。

 

「レ、レオがそんな事する筈………!」

 

「さっきの姿を見てもそう言えるのか? 決闘の約束すら守らず、殴られた事を逆恨みして、俺を処刑しようとしてきた奴の事を………」

 

「そ、それは…………」

 

「その事は初耳だが、真に申し訳ない。我が息子には厳しく追及しよう」

 

パチモン勇者が言い淀んだ時、国王が頭を下げる。

 

「フォルダ公爵には感謝しておくべきだな。あの時フォルダ公爵が来なかったら、俺はこの『国』そのものを『敵』として対処していた」

 

俺はフォルダ公爵に視線を移しながらそう言う。

 

「そうしよう」

 

国王は俺の言葉をどう受け止めたのかは分からないが、素直に頷いた。

すると、

 

「………やはり、力を貸してはくれんかね?」

 

国王がもう一度聞いてくる。

 

「今現在その気はない。それに、力を貸す貸さない以前に、俺はこの世界の事を何も知らない」

 

「何言ってるんだ! この世界の人達は、魔族によって危険に晒されて………!」

 

山口がそう口を出して来るが、

 

「その魔族が何故人間族を襲うのか? その理由を考えた事はあるか?」

 

「えっ?」

 

「お前達は、正義の味方として召喚されたと考えているのかもしれないが、もしかしたら、人間族が悪で魔族が正義って可能性も否めない」

 

「そ、そんな筈はない! 俺達は神様によってこの世界を救う為に召喚されたんだ! そんな俺達が正義じゃ無い訳無い!」

 

「……………俺は、その『神』も信用できない」

 

「「「なっ!?」」」

 

「信じる信じないはそっちに任せるが、俺は、異世界に召喚されたのは初めてじゃないんだ」

 

「何だって!?」

 

「えっ!?」

 

「そんなっ……!?」

 

俺の言葉に全員が驚く。

 

「以前召喚された時も、『あなた達は神によって召喚されました。その力で人間族を救ってください』と言われたよ。だけどな、ひょんなことから俺と仲間達は、その世界の真実を知った」

 

「真実………?」

 

「ああ。その世界は、『神の遊戯盤』だったんだよ。『神』が神託と称してそれぞれの国をそそのかし、『戦争』というゲームを楽しんでいたんだ。勿論、召喚された俺達も、世界を救う勇者どころか、単なるゲームを面白くするために、ボードに新たに配置された『駒』に過ぎなかった」

 

「「「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」」」

 

「だから俺は、『神』を名乗っていようと信じる事は出来ない。自分の眼で見て、耳で聞いて、その場の空気を肌で感じて、その時に感じた感情に従って俺は行動する。言われるがままに戦う『駒』になるのは御免だね」

 

「……………なるほど。俄には信じがたい話だが、君の何事にも動じない態度を見ていると、満更出鱈目にも思えん。そして、クラウディア嬢に味方したことも、自分の感情に従った結果かね?」

 

「そういうことだ」

 

「なるほど、良く分かった」

 

国王はそこで一息つくと、

 

「つかぬ事を聞くが、君は我々に敵対する気は無いのだね?」

 

「そっちから何もしなければ、こっちから何もする気はありません。売られた喧嘩は買いますけどね」

 

「よろしい。では、君の処遇は、今まで通りフォルダ公爵に『保護』されているという形を取らせてもらおう」

 

「異存は無い」

 

それから召喚者の3人の方を向くと、

 

「一先ず君達もこれまで通り学院生活を送っていてくれたまえ。いずれ追って連絡があるだろう。それでは、失礼する」

 

国王はマントを翻しながら背を向け、兵士達と共に去って行った。

国王がその場から立ち去ると、

 

「…………タイシさん」

 

エミリアが、少し遠慮がちに声を掛けてきた。

 

「…………落胆したろ?」

 

「えっ?」

 

俺の言葉に声を漏らす。

 

「さっき言った事が俺の本心だ。俺は勇者じゃない。勇者とはかけ離れた自己中心的思考の持ち主だ」

 

「………………確かに、そうかもしれません」

 

エミリアは、俺の言葉に目を伏せる。

だが、すぐに俺に向き直ると、

 

「でも、タイシさんは以前も私を救ってくれて、そして今回もクラウの為に戦ってくれました」

 

「決闘に参加したのは、王子サマを殴りたかっただけだぞ?」

 

「でもタイシさん。最初に殿下を殴ろうとした時、3割はクラウの為って言ってましたよ」

 

「………………………」

 

そう言われて俺は思わず顔を背けた。

 

「確かにタイシさんは自分の感情を優先して行動するのかもしれません。見ず知らずの人の為には命を懸けられないかもしれません。だけど、タイシさんは今までに何度も私達を救ってくれました。それは間違いないです!」

 

「結果的にな」

 

「結果的だろうと何だろうと、私達はタイシさんに救われているんです。ですからこう言います。助けてくれてありがとうございます。タイシさん」

 

笑みを浮かべてエミリアはそう言った。

その顔が綺麗で、顔が熱くなったことを自覚した俺は、思わず顔を逸らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

 

王宮に戻った国王であるアスランは、執務室の椅子に座り、その前に居るフォルダ公爵と話し合っていた。

 

「ふう………まさか、クラウディア嬢達が勝つとは思わなかった。そして、その勝利の鍵となったのが、お前が保護していた少年だとはな」

 

「私も驚いております。只の少年にしては、落ち着き過ぎている節は感じていましたが、まさかあのような奥の手を隠し持っていたとは………」

 

「その様子から察するに、お前もあの者のデジモンが自由に進化させる事が出来るとは知らなかったようだな?」

 

「はい。そのような事は一度も…………」

 

「能ある鷹は爪隠すとはよく言ったものよ。私も含めて見事に騙されたよ」

 

「まさか、この世界に召喚される以前に、別の異世界に召喚された事があったとは………それでは我々を簡単に信用する事は出来ますまい」

 

「うむ。レオナルドはそれによって手痛い反撃を受けたわけだからな。それでも不幸中の幸いは、お前があの者を『保護』してくれていた所か」

 

「私としては、無辜の民が殺されるのを、黙って見ているわけにはいかなかったという理由ですが………今思えば、もしあのままであれば、タイシ殿は確実に抵抗していたでしょう。そして、王宮内で完全体デジモンが暴れたとなれば…………」

 

「甚大な被害が出ていたな。そして、レオナルドはほぼ確実に命を落としていた………か?」

 

「はい」

 

「……………ロレンツォ。お前はあの者をどう見る?」

 

「少なくとも、他の3人の召喚者達とは違い、現実を見ています。戦争に参加するという意味、実戦の厳しさ、そして、何者にも屈する事無い強靭な精神力。陛下を前にしても、少しも怯みませんでした」

 

「うむ、私も、あわよくばと言う思いでこの世界の為に戦う事を申し出てみたのだが、見事に断られてしまった」

 

「彼は、『戦う』という事の本当の意味をわかっているのでしょう」

 

「…………ロレンツォ。お前が勇者召喚について反対派だった事は知っている。だが、レオナルドの言う通り、この国に『必要』だった事も確かだ。故に、『召喚』した事自体について私はレオナルドに何か言う資格は無い。だが、召喚されたのがあんな少年少女であることは、私も予想していなかった………私は、異世界の子供を戦場に駆り出した愚鈍な王として、歴史に名を残すのだろうな」

 

「陛下…………」

 

そうして、王宮の夜は更けていくのであった。

 

 

 

 

 

 






オリジナル異世界編第13話です。
前回までで燃え尽きたのか、中々難産でした。
とりあえず決闘後のお話です。
国王推参。
王子ざまぁ。
だが断る。
って感じですかね。
ともかく、次回も頑張ります。



P.S すみません。今日は時間が無いので今回の返信はお休みします。
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