【Side 三人称】
決闘後、ファイル伯爵家の執務室。
そこに豪勢な机の椅子に座る男性と、机を挟んで正面に立つアリスの姿があった。
その男性は、ファイル伯爵家当主のダニエル・ジエス・フォン・ファイル。
アリスとエリスの父親であった。
「…………エリスのデジモンが進化したそうだね?」
「ッ……………」
ダニエルのその言葉に、アリスは僅かに俯く。
「そしてそのデジモンは、緑の昆虫型デジモンだと……………」
「…………はい」
その言葉にアリスは少しの沈黙の後頷く。
「フフフ………いいぞ、文献の通り…………!」
ダニエルは嬉しそうにそう言うが、アリスはますます俯いていく。
「『青き竜従えし者が緑の昆虫を従えし者の力を得る時、皇帝の道を歩む』…………この言い伝えが本当ならば、我が伯爵家がこの世の皇帝となれる…………その為には………分かっているな……………?」
ダニエルはアリスに忠告する様に言い聞かせる。
「…………………」
「『エリスとそのデジモンを殺し、その力をお前のデジモンが吸収しろ』」
「ッ………!」
アリスは隠しきれない動揺を見せる。
「……………あの、お父様…………その言い伝えは本当なのでしょうか? その言い伝えも古い文献からの翻訳であり、その翻訳も完璧では無いのですよね? やはり、もう少し確実性を持ってから…………」
アリスはそう言うが、
「何を言っているアリス? 私の命令に逆らうのか……!?」
「ッ……い、いえ……………」
「お前には昔から言い聞かせてきたはずだ。お前は我が伯爵家が皇道を進む為の鍵だとな」
「でも………その為にエリスは…………」
「我が家が皇道を進む為の必要な犠牲だ。それに、ファイル伯爵家の仕来たりにより女児は1人のみという決まりだ。お前達は双子として生まれてしまった為に本来は生まれた時点で片方を殺さなければならなかった所を、お前達の母親の命を懸けた懇願により特別に生かしてやっていたのだ。あ奴もファイル伯爵家の人間である以上、その身をファイル伯爵家の為に捧げるのは当然の事。むしろ、栄誉の礎となれるのだ。光栄に思ってくれなければ」
「ッ…………!」
自分の子を子と思っていない様な発言に、アリスは歯を食いしばる。
しかし、
「儀式は近いうちに行う。心構えだけはしておけ」
「……………はい」
父であるダニエルの言葉に、アリスは頷くしか無かった。
【Side Out】
決闘が終わって数日が経った。
今日は決闘が終わってからの初めてのお茶会が開かれている。
だが、
「………………………………」
その参加者の1人、クラウディアは心ここにあらずと言った雰囲気だ。
「クラウ………」
エミリアが心配そうに見つめる。
何だかんだで、クラウディアにとってショックな出来事が連続した一週間だ。
そうなるのも仕方ないだろう。
「………で? 結局王子サマの処遇はどうなったんだ?」
俺は気になる事をリティナ王女に訊ねる。
「あ、はい。未だ議論中ですが、おそらく一定期間の謹慎という事で落ち着きそうです」
「謹慎ね…………」
「兄上に反対する派閥からは、廃嫡するべきとの声も上がったようですが、兄上に期待する派閥からの若気の至りだという声もあり、謹慎が妥当との事です」
そう言ったリティナ王女は、少し困ったような表情をしていた。
「リティナ様? どうかしたんですか?」
その様子に気付いたカイルがそう聞くと、
「え、ええ………その………今回の出来事で、次期国王にわたくしを、という声も上がって来まして………」
「えっ? どうしてそんな話になるんですか?」
エミリアも疑問を零す。
「今回の出来事は、兄上に対する評価を下げる結果となりました。そして同時に、兄上達を破ったあなた方を同じチームに引き入れたわたくしを、慧眼の持ち主だとか、その様な理由で評価が上がってきているのです」
そう言って困った様に笑みを浮かべる。
そのリティナ王女が俺達をチームに招き入れた理由が、カイルに対する恋の暴走の結果だという事を自覚しているからだろう。
すると、
「ところでわたくしもお聞きしたかったのですが………」
リティナ王女の視線が俺に向く。
「何故タイシ殿はあれ程の力をお隠しになられていたのですか?」
やはり聞かれるだろうと思われていた質問をされた。
「…………まあ、簡単に言えば信用していなかったって事が一番の理由だろうな」
「『信用』………ですか?」
「ああ。いきなり知らない所に呼び出されて力を貸せといきなり言われても信用できない。その信用できない相手に、最初から手の内を晒そうとは思わなかったというのが一番の理由だ」
「それは確かに…………では、カイル様やわたくし達も信用に値しなかったと………?」
「それは少し違うな。俺は所詮余所者だから、裏方に徹しようと思っただけだ。ドルモンを進化させてダンジョンをクリアしたとしても、カイル達は何も成長しないしな」
「タイシ………」
カイルが呟く。
「それに、いざと言う時は進化させて助けるつもりだったぞ? ドルモンを進化させる前に、エミリア達が先に進化させたから、タイミングを逃しただけだ」
「そういえば、タイシにはいつも余裕があった」
エリスも納得がいったように頷く。
「では、イレギュラーのダンジョンのカラテンモンが相手の時は?」
「カラテンモン相手にドルグレモンじゃ相性悪かったからな」
正直、大雑把な攻撃しか出来ないドルグレモンでは、カラテンモン相手はきつかっただろう。
だからグレイドモンを選んだわけだが。
俺はふと、先程から一言も時喋っていないアリスに視線を向けた。
「……なあ、さっきから黙ったままだけど、どうかしたのか?」
俺はそうアリスに声を掛けた。
「えっ? あ、べ、別に何でもないわよ!」
アリスはそう言ってそっぽを向くが、明らかに何かありそうな感じだ。
「アリス………?」
エリスがアリスの顔を覗き込もうとしたが、
「ッ………! 近付かないで!!」
ドンッとアリスがエリスを突き飛ばした。
「あ……………」
後ろに倒れそうになるエリスの背を、俺は咄嗟に支える。
「アリスさん!? なんてことを!?」
エミリアが立ち上がりながら叫ぶが、
「………ハン! 何? ちょっと優しくしてあげた位で本当に仲良くなれたと思ってたの? おめでたいわね………!」
アリスは立ち上がってエリスを見下ろしながらそう言う。
「アリス………!?」
リティナ王女も驚愕の声を上げるが、
「仲良しごっこはもうおしまい! もう私に近付かないで頂戴!」
アリスは吐き捨てるようにそう言うと、踵を返して去って行く。
「ッ…………………」
だが、振り返る際に零した涙を、俺は見逃さなかった。
【Side 三人称】
大士達から別れたアリスは、袖で涙を拭いながら中庭に出た。
そこに、
「アリス…………あれでよかったのか?」
エクスブイモンが空から舞い降り、アリスに声を掛ける。
「ええ………! あの子を助けるには、これしか無いもの………!」
涙を拭って顔を上げたアリスの眼は、覚悟が決まった様に金色に輝いていた。
「アリス……………」
「悪いわね、エクスブイモン…………あなたまで巻き添えを喰らうことになるけど………」
アリスは申し訳なさそうな表情をエクスブイモンに向ける。
「俺の事はいい。だけど、アリスは…………」
「それこそ如何でもいい事だわ」
エクスブイモンの言葉に間髪入れずそう返すアリス。
「アリス……………」
そう言って歩き出すアリスの後ろ姿を、エクスブイモンは何とも言えない表情で見つめていた。
その夜。
自室でベッドで横になっているエリス。
「……………アリス」
考えているのはやはりアリスの事。
最近のアリスは自分の心に素直になり、エリスとも良好な関係が築けていると思っていた。
だが、今日はエリスを拒絶した。
いや、正確には少し前と同じく本心では無い事はエリスにも分かっている。
しかし、今日のアリスには今までにない『覚悟』があった。
「……………………」
エリスがアリスのことについて悶々としていると、
――カンカン
と、窓ガラスが音を立てた。
「?」
エリスは起き上がって、スティングモンをすぐに呼び出せるようにD-3を手に取り、警戒しつつ窓に近付く。
エリスが窓を開けると、
「………エクスブイモン?」
エリスの部屋の窓の外にいたのは、アリスのデジモンであるエクスブイモンだった。
「夜遅くにすまない。いきなりだが、スティングモンと話がしたい」
「スティングモンと………?」
エクスブイモンの言葉にエリスは首を傾げるが、エリスはD-3からスティングモンを呼び出す。
スティングモンが窓の外にリアライズすると、
「話とは何だい?」
そう問いかける。
すると、エクスブイモンは背を向け、
「ついて来てくれ。2人だけで話がしたい」
そう言うとエクスブイモンは離れた場所へ飛んでいく。
スティングモンは一度エリスに視線を向ける。
「エリス………」
「きっと大丈夫…………」
「わかった」
スティングモンは頷くと、エクスブイモンを追った。
それから数日後―――
エリスはスティングモンと共に、闘技場に呼び出されていた。
リングの周りをファイル伯爵家の私兵で囲まれ、同じリングの上にはアリスの姿。
そして、観客席の一角には、父親であるダニエルの姿があった。
「お父さま………! アリス………! これは………!?」
アリスに問いかけるエリス。
すると、アリスは嘲笑う様な笑みを浮かべ、
「エリス………これから私はあなたを殺すわ」
そう言い放った。
「ッ………!?」
思わず動揺するエリス。
「『青き竜従えし者が緑の昆虫を従えし者の力を得る時、皇帝の道を歩む』…………あなたは、私が皇帝の道を歩むための生贄に選ばれたの」
「…………………………」
「感謝して欲しいわね………あなたみたいな出来損ないが、私の皇道の礎になれることに…………!」
「アリス…………」
嘲笑を浮かべながらどういうアリスに、エリスは困惑するような声を漏らす。
「さあアリス。始めるのだ」
「はい。お父様」
アリスはダニエルに恭しく礼をすると、エリスに向き直った。
「さあエリス、覚悟はいい?」
「アリス………本気………?」
エリスはそう問いかけるが、
「行きなさい! エクスブイモン!!」
アリスがエクスブイモンに命令を下し、エクスブイモンは飛び出す。
エクスブイモンは拳を振り被りながら、一直線にエリスに向かい、
―――ドキャァッ!!
エリスの前に飛び出したスティングモンの左腕で受け止められた。
「エリスはやらせない……!!」
「スティングモン……!」
スティングモンは右の拳で反撃する。
エクスブイモンは左腕で防御しつつ、その反動で距離を取った。
「エクスレイザー!!」
腹部からX字の光線を放つ。
「くっ!!」
スティングモンはエリスに当たらないようにその身をもって防御した。
すると、
「ちょっとエクスブイモン! 今のは………!」
アリスが叫ぼうとしたが、
「……………アリスを、死なせるわけにはいかない………!」
エクスブイモンは、信念の籠った目でそう呟く。
「エクスブイモン……………!?」
アリスは困惑した声を漏らす。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
エクスブイモンは気合の入った声でスティングモンに殴りかかる。
「はぁああああああああああああああああああっ!!」
スティングモンもそれに対抗する様に迎え撃った。
拳や蹴りが互いの身体に叩き込まれる。
「エクスブイモン………!?」
「スティングモン…………!」
アリスとエリスは互いのデジモンの名を呼ぶが、その戦いは激化していく。
エクスブイモンの放つレーザーがスティングモンの甲殻に罅を入れ、スティングモンの鋭いスパイクがエクスブイモンの身体を傷付ける。
だがその中で、エクスブイモンとスティングモンは互いに視線で語り合っていた。
(分かっているな? スティングモン)
(ああ。もちろんだとも)
その理由は、先の夜にエクスブイモンがスティングモンを呼び出した時まで遡る。
エクスブイモンを追って、スティングモンが学院の中庭に降り立つ。
「エクスブイモン…………」
「来たか………」
「話と言うのは?」
「……………アリスとエリスの事だ」
「2人の………?」
そしてエクスブイモンは話し出す。
「事の始まりは、ファイル家が古代の文献を翻訳していた時に発見した『青き竜従えし者が緑の昆虫を従えし者の力を得る時、皇帝の道を歩む』という伝承だ」
「青き竜と緑の昆虫……………ッ!?」
「気付いたようだな? 青き竜は俺。緑の昆虫はお前。まさしく伝承と一致する。成長期だったころ、青い小竜型のブイモンだった俺と、緑色の幼虫型のワームモンだったお前を見て、アリス達の父親であるファイル伯爵はその伝承を信じ込んでしまったんだ」
「まさか!?」
「ファイル伯爵は、アリスと俺にエリスとお前を殺させてその力を得させるつもりだ」
「馬鹿な!? そんな根も葉もない伝承で………!」
「ああ。第一翻訳自体もあやふやなモノらしい。だが、『皇帝』と言う地位に目が眩んだファイル伯爵は、それを強制させようとしている」
「ふざけるな! そんな事の為にエリスを殺させるものか!」
スティングモンは猛る。
「…………………もちろんアリスもそう思っている。だからアリスは、
「ッ………………!?」
その言葉にスティングモンは絶句する。
「エリスを生かすために、自分を犠牲にする。昔、その話を聞かされた時にアリスが決意したことだ」
「じゃあ、今までアリスが執拗にエリスを蔑んでいたのは………!」
「全て
「…………………………」
その言葉を聞いて、スティングモンは言葉を失ってしまう。
「俺の事は別に構わない。アリスの為に死ぬ覚悟はある……………だが、俺はアリスにまで死んでほしくは無い…………!」
すると、エクスブイモンはスティングモンに向き直り、
「スティングモン…………お前は、エリスの為に命を捨てる覚悟はあるか?」
その問いかけと共に、一陣の風が吹き、植えられている木々が揺れる。
「それは……………まさか!?」
エクスブイモンの考えに気付いたスティングモンが声を上げる。
「ああ。俺達が相打ちになれば、アリスとエリスは生きられる………2人一緒に…………」
「………………………………」
その言葉にスティングモンが沈黙する。
「アリスは本当にエリスの事が大好きなんだ。それなのに、アリスがエリスと仲良くできないなんて事は、これ以上見てられない………」
「エクスブイモン………」
「アリスとエリスが仲良くできない原因は俺達にある。ならば、その俺達がいなくなれば…………」
「エリスとアリスは仲良くできる……………」
スティングモンの言葉にエクスブイモンは頷く。
「…………わかった。僕もエリスの為に命を捨てられるのなら望むところだ」
「…………ありがとう」
互いに頷くエクスブイモンとスティングモン。
だが、木々の1本の影に1人の人影があった事に、その2体は気付かなかった。
互いに傷付き、消耗したエクスブイモンとスティングモンは、肩で息をしながら間合いを取った。
そして、何度か息を整えると、
「「ッ!」」
同時に目を見開き、地面を蹴って飛翔する。
「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」
そして示し合わせた様に同時に右腕を振り被り、お互いにワザと晒した腹部に狙いを定める。
「エクスブイモン!」
「スティングモン!」
2体の雰囲気に何かを感じたアリスとエリスは叫ぶ。
だが、2体は止まらずそのまま互いの渾身の拳が繰り出され、
―――ドォオオオオオオオオオオオオン!!
爆発に似た衝突音が響き、衝撃がアリスとエリスを襲った。
咄嗟に顔を庇う2人。
少しして衝撃が収まり、2人は同時に顔を上げた。
そして、その2人の視界に飛び込んできたのは、
「「なっ!?」」
エクスブイモンとスティングモンが同時に声を漏らす。
何故なら、2体が繰り出した拳は、金色の光を纏う手によって止められていたからだ。
そして、2体の拳を止めたのは、
「タ………」
「タイシ………!?」
大士だった。
大士は激突の瞬間に2体の間に割り込み、両手にデジソウルを宿して2体の拳を受け止めたのだ。
すると、
「…………………何馬鹿な事をしようとしているんだ? お前らは………!」
呆れと怒りが半々の声で、大士が呟く。
その直後、大士がエクスブイモンの拳を掴んで引っ張り、体勢を崩す。
「うわっ!?」
前のめりに倒れ込んだエクスブイモンが声を上げると、大士は拳を握り、その頭を殴りつけ、エクスブイモンをリング上に叩きつけた。
「ぐはっ!?」
続けてスティングモンの拳を引っ張ると、同じように拳を握ってスティングモン頭を殴りつけ、リング上に叩きつける。
「うぐっ!?」
その様子を目撃したダニエルは、
「な、何者だ!? 神聖な儀式を邪魔するなど………!?」
そう声を上げようとしたが、
「黙れオッサン…………!!」
大士の一睨みで黙らせられた。
大士は地面の叩きつけたエクスブイモンとスティングモンを見下ろすと、
「お前達は、自分のパートナーを救う為に自分の身を犠牲にしようとしていたようだが、それで本当にあいつらが笑えると思っているのか………!?」
「「ッ!?」」
その言葉に、エクスブイモンとスティングモンはハッとなる。
「一度振り返ってちゃんと見て見ろ」
大士の言葉に、エクスブイモンとスティングモンは、それぞれアリスとエリスに振り返った。
アリスとエリスは、同じように涙を浮かべている。
「アリス………」
「エリス………」
2人はその涙に、今まで一緒にいた事が思い返されていた。
エクスブイモンはブイモンだったころ、ある程度制御できるようになったとはいえ、時折魔眼を暴走させてしまうアリスの傍に変わらずいた事。
スティングモンは、ワームモンの頃に、ファイル伯爵家で疎ましく思われていて、独りぼっちだったエリスの傍に居続けた事。
「……………それから、お前達もだ! アリス! エリス! 親に言われた事だからと言って、自分の望まないことを強制される………! それでいいのか!?」
「「ッ!?」」
その言葉に、アリスとエリスもハッとなる。
「お前達はどうしたいんだ!? お前達の望みは何だ!?」
大士の叫びに、最初に答えたのはエリスだった。
「……………私は一緒に生きたい…………アリスは勿論、スティングモンやエクスブイモンとも……………」
「エリス…………」
その言葉を聞き、スティングモンはエリスの名を呼ぶ。
「それがエリスの望みだそうだ。お前は如何だ? アリス」
大士はアリスに問いかけた。
「……………………ッ、私だって………」
沈黙の後、アリスは箍が外れた様に叫んだ。
「私だって、エリスと一緒に生きたい! エリスを殺すなんて絶対に嫌! エクスブイモンだって、昔から私と一緒に居てくれた! 皆と一緒に、私も生きたい!!」
「アリス…………」
アリスはそう言うと、エリスに向かって歩き出した。
エリスもアリスに向かって歩き出す。
そして、2人の中央に居た大士と、エクスブイモン、スティングモンの前で向かい合う。
そして、アリスはエリスを抱きしめた。
「エリス………何度でも言うけど、大好きよ………」
「私も大好き…………アリス………」
エリスも抱きしめ返す。
少しして離れると、
「エクスブイモン、あなたにも謝らなきゃね。私のバカに付き合わせてゴメン………」
アリスはエクスブイモンに向かって謝る。
「いいさ。俺はアリスの為なら命だって懸けれる。それは本当だ」
「エクスブイモン………」
アリスは涙を浮かべながらエクスブイモンの手に触れる。
すると、そこから青い光が放たれた。
「これは………!?」
アリスは思わず声を上げるが、
「あ………これって………」
エリスはその光に見覚えがあったように呟く。
すると、アリスの手にエリスと同じ形のデジヴァイス―――D-3が握られていた。
「これって………エリスと同じ…………」
「D-3………アリスも、エクスブイモンと本当のパートナーになったって事だな」
大士の言葉に、アリスはエクスブイモンを見上げる。
「アリス………!」
エクスブイモンは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「…………うん!」
アリスも満面の笑みを浮かべ、頷いた。
その時、
「ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁっ!!」
観客席にいたダニエルが叫んだ。
「アリス! 何をしている!? エリスとそのデジモンを殺して力を得るのだ!」
「嫌です!」
ダニエルの言葉をアリスはキッパリと断った。
「な、何だと!?」
「お父様………私はもう、お父様の言う事は聞けません。私はエリスと………そして、大切なパートナーと一緒に生きていきます!」
「皇帝だ! 皇帝になれるのだぞ!?」
「私はそんな地位より、エリスの方が大切です」
「ッ…………ファイル伯爵家の跡取りであるお前に、そんな勝手が許されるとでも………」
「……………………………」
その言葉を聞くと、アリスはチラリと大士に視線を向けた。
「そうですね。お父様にとって、私はまだ利用価値があるのでしょう………」
そう言うと、アリスは大士に歩み寄っていく。
「なら私は…………その利用価値すらも捨ててやるわ!」
そう言ってアリスは大士の前に立った。
「アリス………? ま、まさか!? やめろ!!」
ダニエルは狼狽えながら叫ぶ。
しかし、アリスは大士を見つめると、
「ねえタイシ………」
「何だ?」
「私の眼を見て………」
そう言ったアリスの眼が金色に輝く。
その金色の眼を大士はジッと見つめる。
すると、
「やっぱり、私の眼を見つめられるのね………」
「前から分かってる事だろ?」
「いいのよ。只の確認。それに、エリスが前に言った通り、そう言う意味ではあなたは『合格』だしね」
「?」
アリスの言葉の要領がいまいちつかめなかった大士は首を傾げたが、次の瞬間アリスの両腕が大士の首に回され、
「ん………………」
「ッ………!?」
不意に口付けを交わされた。
目を見開く大士。
アリスはすぐに離れる。
が、その頬は赤く染まっている。
「…………いきなり何を………!?」
大士は思わずそう問いかけるが、
「なっ!? 貴様! 自分が何をやったか分かっているのか!?」
ダニエルの怒声が響く。
「ええ、もちろん。タイシは魔力を全く持たず、魔法を一切使えない。そのタイシと口付けを交わした私に、利用価値は無いわ」
ハッキリとそう返すアリス。
「ッ………お前達! エリスを…………!」
ダニエルが私兵にエリスを確保しようと命令を下そうとした時、
「タイシ…………」
「エ、エリス………?」
エリスが頬を染めながら、大士の前に立っていた。
「タイシなら…………いい………」
すぐに大士もエリスがキスしようとしている事に気付いたので止めようとしたが、
「タイシお願い。エリスを受け入れて」
真剣な声でアリスからそう言われ、思わず止めようとした手が止まり、
「ん……………」
「ッ!?」
エリスからも口付けをされた。
「なっ!?」
ダニエルが絶句する。
エリスが大士から離れると、
「これで私、エリス共に利用価値は無くなりましたね………お父様?」
アリスはしてやったりの笑みを浮かべた。
「き、貴様ら…………!」
ダニエルは怒りでプルプルと手を震わせると、
「貴様ら2人とも勘当だ! 今後一切ファイル伯爵家の地を踏むことは許さんっ!!」
感情のままにそう叫ぶと、踵を返してズカズカと立ち去る。
それと共に、私兵達もダニエルを追って行った。
それを見送ると、
「……………………ふう」
アリスは大きく息を吐いた。
それから大士に振り返ると、
「悪かったわね。私達のいざこざに巻き込んで………」
アリスはそう謝罪する。
「気にするな。首を突っ込んだのは俺だ」
「そう………」
大士がそう言うと、アリスは微笑む。
「ところで………何でさっきは、その………キスをしたんだ?」
大士は気になっていた事を訊ねる。
すると、先程のキスを思い出したのか、アリスもエリスも頬を赤くした。
「…………その、ファイル伯爵家は、この国では最も魔法研究が進んでいる家と言ってもいい所なの」
「ふむ………?」
「で、その魔法の研究の過程で、何世代前か分からないけど、とある秘術を生み出したの。それが、清き乙女の口付けにより、男性と魔法的なパスを繋いで、魔力や魔法知識を得るというもの」
「…………………はい?」
「その秘術は、初めての口付けのみ適用される。そして、その男性と子を生せば、その子供は両親の魔法適性を全て受け継いて生まれる。だから婚約者も魔法適性が高いものの中から厳選される。私とアリスの魔法適性が高いのはその為」
エリスも続けて説明した。
「清き乙女の口付けとか、どっかでありそうな設定だな………」
大士はボソッと呟く。
「勿論それは門外不出。外に流出しないようにファイル伯爵家には女児は1人だけという掟があった。だけど、私達は双子として生まれてしまった。本来なら、どっちかが殺される筈だったけど、お母さまの必死の懇願により、命だけは助かったわ。だけど………」
「エリスの扱いが雑なのはその為だったのか」
大士はエリスを見ると、エリスは頷いた。
「けど、さっきの口付けで私達の価値は無くなったに等しいわ。魔力ゼロのアンタとパスを繋いだんだからね。お母様ももう亡くなってるから、ファイル伯爵家の秘術は失われたも同然。その秘術を受け継ぐとすれば………………」
そう言いかけて大士の顔を見つめたアリスが、ボッと顔を赤くした。
その後、ブンブンと顔を振る。
「……………………ん?」
その時、大士が何かに気付いたように声を漏らす。
「なあ? その秘術って、その男性が持つ『魔法知識』も得る事ができるんだよな?」
「ええ、そうよ。聞いた話ではそろそろ―――――ッ!?」
大士の質問に答えようとしたアリスの頭に痛みが走り、思わず頭を抑える。
「なっ……なにこれ………!? 頭が………割れそう…………!」
「アリス…………!? ッ…………!?」
思わず駆け寄ったエリスの頭にも痛みが走り始める。
「ううっ…………!?」
その痛みに耐えきれなくなった2人は、思わず意識を手放した。
倒れそうになる2人を、大士が咄嗟に支える。
「アリス!?」
「エリス!?」
エクスブイモンとスティングモン思わず近付く。
「ッ……………! 一先ず保健室に運ぶ! 話はそこでだ」
2人の症状に何となく予想が付いた大士は2体にそう語りかけるのだった。
オリジナル異世界第14話です。
決闘終わってからの急展開です。
まあアリスがエリスに酷い事してた理由がこんな感じ。
色々ツッコミどころあるでしょうが。
1話に突っ込む情報量では無かったかな?
最期に2人が気絶した理由は、まあ想像つくでしょう。
大士の宝の持ち腐れを何とかしたかったので。
それでは次回をお楽しみに。