ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第16話 恒例のお茶会

 

 

 

 

「デスペラードブラスター!!」

 

アリスのエクスブイモン、エリスのスティングモンがジョグレスしたパイルドラモンが、腰部にある生体砲からのエネルギー波の連射で完全体デジモンであるワルもんざえモンを撃ち抜き、消滅させる。

 

「やったわ!」

 

嬉しそうな声を上げるアリス。

エリスも嬉しそうに微笑む。

 

「やりましたね。アリス、エリス」

 

そんな2人に労いの言葉を掛けるリティナ王女。

今いる場所は、訓練用デジタルダンジョンのレベル4のボスエリア。

荒野のステージであり、実の所、今まで何回か挑戦して撤退を余儀なくされたステージでもある。

まあ、俺がドルモンを完全体に進化させればクリアも出来たのだが、それでは意味が無いため今まで足踏みしていたのだが、先日アリスとエリスのエクスブイモンとスティングモンが、パイルドラモンにジョグレス進化出来るようになったため、今まで倒せなかった完全体のボスデジモンを倒す事に成功したのだ。

 

「凄いです! 流石ですね!」

 

エミリアが称賛の声を上げる。

 

「流石は完全体………いや、パイルドラモンと言うべきか………」

 

クラウディアもそう漏らす。

 

「これでレベル4もクリアだね!」

 

カイルも嬉しそうだ。

 

「まあね! 私とエリスの絆があればこんなものよ!」

 

どやっ、と言いたげな表情でアリスが言う。

 

「でも、ここまでこれたのは皆のお陰。皆がスティングモンとエクスブイモンの消耗を最小限に抑えてくれたから、ここのボスに万全の体勢で挑む事が出来た…………」

 

エリスが見渡す先には、傷だらけのグレイモン、ガルルモン、テイルモン、ジオグレイモン。

 

「それに………」

 

エリスが言葉を続けながら俺を見ると、

 

「タイシが後ろにいるから、安心して戦える………」

 

微笑みながらそう言った。

 

「……………何時までも俺を頼るのも問題だけどな」

 

ちょっと照れ臭くなり、顔を逸らしながら俺はそう言う。

笑いを零す皆。

 

「とにかく、これで単体のチームとしてレベル4のダンジョンをクリアしました。これは学院の歴史の中でも数えるほどしかない偉業です。十分に誇ってよい事ですよ」

 

リティナ王女が笑みを浮かべながらそう言うと、

 

「さあ、凱旋です」

 

現れた出口のゲートに向かって歩みを進めた。

 

 

 

 

 

その翌日、恒例のお茶会が開かれた。

最初にリティナ王女が切り出す。

 

「さて、レベル4のデジタルダンジョンをクリアしましたが、次はいよいよ訓練用デジタルダンジョンとしては最高難易度のレベル5に挑戦します。この学院の歴史の中でも、レベル5をクリアした生徒は居ません。ですが、わたくしはこのチームなら、レベル5もクリアできると信じています!」

 

「大丈夫ですよリティナ様! 私とエリス、そしてパイルドラモンに任せてください!」

 

アリスはえっへんと胸を張りながらそう言う。

だが、俺は楽観せずに、

 

「そのレベル5の情報はあるのか?」

 

そう訊ねる。

 

「レベル5まで到達した実績が少ないので、あまり多くの情報は得られませんでしたが、レベル5のフィールドは、どうやら『天空』のようです」

 

「天空…………」

 

「そして、出てくる敵デジモンは成熟期の他、完全体にも遭遇するようです。そして何より、レベル5のボスは、3体の完全体の様なのです………そして、レベル5のダンジョンは、訓練用とは言え外からの救援は望めないと考えて良いでしょう」

 

「完全体が3体…………そして『天空』のフィールドか……………」

 

俺は軽く脳内でシュミレーションすると、

 

「正直に言えば、今のままだと攻略するのは難しいと言わざるを得ないな」

 

俺はそう言う。

 

「何よ!? 私達のパイルドラモンが負けるって言いたいの!?」

 

アリスが不服そうにそう言ってくる。

 

「いや、確かにパイルドラモンは強い。1対1の戦いならそうそう負ける事は無いと思う。空も飛べるし『天空』のフィールドでも問題なく戦えるだろう」

 

「じゃあ何が問題なのよ?」

 

アリスがそう問いかけてきたので、

 

「簡単に言えば、パイルドラモンを除いて空戦に対応できるのがドルガモン以外に居ない」

 

その事実を述べた。

 

「あっ!」

 

カイルが気付いたように声を上げる。

 

「グレイモン、ガルルモン、ジオグレイモン、テイルモン。皆、成熟期の中でも強力なデジモンだと言える。だけど、それは地上で戦えたらの話だ。『天空』のフィールドという事は、出てくる敵デジモンも飛行型のデジモンが多いだろう。そうなれば、どうしても飛べないデジモンは地上からの後方支援を強いられ、飛べるデジモンが前に出る必要がある。必然的にパイルドラモンとドルガモンの負担が大きくなり、ボスデジモンの所へ辿り着けたとしても、その力を十全に発揮できずに負けるのがオチだ。何より、無傷でボスと戦っても、勝てる可能性は3割以下だと思う」

 

「ッ…………言ってくれるじゃない………!」

 

「アリス……タイシの言ってることは正論」

 

「エリス………!?」

 

「確かにパイルドラモンは強いけど、パイルドラモンも1体だけじゃ出来る事は限られる。ここまで来れたのも、皆が居たから………」

 

諭すように言うエリスの言葉。

 

「う………そ、そうね………思えば、最近調子に乗ってたかもしれない………」

 

アリスが反省する様に呟く。

そんな姿を見て、エリスは微笑む。

 

「わたくしもレベル5を攻略するのは容易では無いと考えております。現状、レベル5をクリアできる可能性があるのは、王国内でも12人のロイヤルナイツが揃った時ぐらいだろうと思います」

 

リティナ王女の言葉に、ふと気になる所に気付いた。

 

「12人? ロイヤルナイツは13人じゃないのか?」

 

確かアリスが、13家が1人ずつ指名すると言っていた筈。

 

「それは…………」

 

リティナ王女が気まずそうに視線をクラウディアに移した。

クラウディアは目を伏せると、

 

「簡単な話だ。ロイヤルナイツの指名権を持つ13家の内、フォルダ公爵家だけはロイヤルナイツを指名していないからだ」

 

そう口にした。

 

「指名してない?」

 

「今回だけでは無い。フォルダ公爵家は、過去に一度たりともロイヤルナイツを指名したことは無い」

 

俺はその言葉に軽く驚き、

 

「………何か理由があるのか?」

 

「フォルダ公爵家には、『ロイヤルナイツは指名するものではない』と口伝が伝えられている。父上も………そして歴代の当主達もその口伝を守り、ロイヤルナイツを指名していない。その所為で、年々フォルダ公爵家の影響力が落ちてきているのは否定できんがな。最近では、『空白の第13席』などと揶揄されているよ」

 

クラウディアは自嘲気味に口元に笑みを浮かべながらそう言った。

それを聞いた俺は、

 

「………………フッ」

 

思わず笑みを浮かべた。

 

「………何を笑っている?」

 

馬鹿にされたと思ったのか、クラウディアが俺を睨む。

 

「ああ、勘違いしないでくれ。馬鹿にした訳じゃない。ただ、俺の中でフォルダ公爵の評価が上がっただけさ」

 

「………何故今の話で父上の評価が上がる?」

 

クラウディアが怪訝な声を漏らす。

 

「そこは俺個人の事情と言う奴だ」

 

俺ははぐらかすと、

 

「それで話を戻すが、どうしてもレベル5のダンジョンをクリアしたいというのなら、俺が本格的に手を貸すのが手っ取り早いが?」

 

話を戻すためにそう言う。

 

「それは何か負けた気がするからお断りよ!」

 

アリスが即座に断った。

 

「私も、ここまで来たら自分達の力でダンジョンを攻略したいです!」

 

エミリアも握り拳を作って、やる気を見せる。

 

「俺も同じ気持ちだよ!」

 

カイルもその気だ。

 

「ホント、気持ちのいい奴らだよ………」

 

だからこそ手を貸してやりたくなるんだけどな。

すると、

 

「えっと………やる気になっている所に水を差す様で申し訳ありませんが、レベル5への挑戦はしばらく先になります」

 

リティナ王女の言葉に、全員の視線がそちらへ向く。

 

「来週の予定は、冒険者実習となります。それも、1週間にわたる長期日程です。そしてその後は、『豊穣祭』の為に、学院も暫く休校となります」

 

「あっ………もうそんな時期なんですね……!」

 

リティナ王女の言葉に、エミリアが思い出したように声を上げる。

 

「『豊穣祭』…………?」

 

読んで字の如くだと思うが、俺は一応聞く。

 

「『豊穣祭』は小麦の収穫の時期に行われる、収穫を祝い、次の時期の豊作を祈る祭りだ。この時期には王国の各地で祭りが行われる」

 

クラウディアがそう説明した。

豊穣と聞いて、トータスで『豊穣の女神』と言われている愛子先生が居たら、人気が出そうだなとズレた事を考えていた。

 

「この王都でも、デニティス神への感謝を捧げる為に、大々的に祭典が開かれます。良ければ皆様もご覧になっては?」

 

リティナ王女がそう進めるが、エミリアとカイルは気まずそうな顔をして、

 

「えっと…………お気持ちは嬉しいんですが、私達、故郷の村で行われる祭事に行くつもりなんです」

 

「特にエミリアは、その祭事の中心的な『聖女』ですから」

 

「リアが『聖女』…………?」

 

2人の言葉にクラウディアが怪訝な声を漏らす。

 

「デニティス教の『聖女』はエクスプローラー聖国に居るはずですが………?」

 

リティナ王女も不思議そうにそう零す。

カイルとエミリアは困った様に顔を見合わせたが、決心したような顔になると、

 

「えっと………もう気付いてるかもしれませんが、俺達はデニティス教信者ではありません」

 

カイルがハッキリとそう口にした。

 

「俺達の村には、俺達の村で祭られている神様が居るんです」

 

「名前も伝えられていない、無名の女神様なんですけど、その教えだけは言い伝えられています。『『運命』とは、流されるものではなく自分の手で掴み取るもの。『運命』に嘆くのではなく、『運命』を切り拓く者にこそ、『未来』はやってくるもの』だと」

 

「ッ……………!?」

 

エミリアのその言葉を聞いて、俺は思わず息を呑んだ。

その教えは、葵………延いてはアルオイスの教えと同じだったからだ。

 

「…………だからあなた達は、『運命』に逆らう道を選び続けているのですね」

 

リティナ王女がそう呟く。

カイルとエミリアは、今まで『運命』と言う言葉には抗い続けていた。

『運命』を受け入れる事を良しとする者が多いこの世界の中では、異質な考えだろう。

すると、

 

「いい教えじゃない」

 

アリスがそう口に出す。

 

「『運命』とは自分の手で掴み取るもの………デニティス神の教えより、よっぽど共感できるわ!」

 

アリスがエミリアの言葉にそう言うと、

 

「ねえ、あなた達が帰郷する時、私達もついて行っていいかしら?」

 

「………その神様に、興味がある」

 

アリスとエリスがそう発言する。

 

「えっ? それは構いませんが………」

 

「ついでに俺達も頼む」

 

ついでとばかりに俺もその話に便乗した。

 

「タイシも?」

 

「ああ。俺もその女神様に興味が湧いた」

 

「それは勿論大丈夫だけど………」

 

カイルとエミリアは面食らった表情だ。

まあ、この国からすれば『異教』を信仰していた自分達が、こうもあっさり受け入れられたことに驚いているんだろう。

 

「…………リアが『聖女』と言うのは?」

 

「あ、はい。私は、その女神様に仕える『聖女』と言う立場なんです。『聖女』とは言っても小さな村で崇められている女神様の『聖女』なので、そんな自慢できるようなものでは無いんです」

 

「だけど、その女神様の奇跡は確かにあったんだ。エミリアが元気なのがその証拠だよ!」

 

カイルがそう言う。

 

「リアが元気なのが証拠?」

 

クラウディアが疑問の声を漏らすと、

 

「あの、以前にも少し話したと思うんですが、私は昔、体が弱かったんです。10歳ぐらいの頃からどんどん身体の調子が悪くなってきて、少し運動したり魔法を使うだけで咳き込んだりして、村の農業の手伝いも儘なりませんでした」

 

「…………………」

 

俺は、何となくカトレアに似た症状だな、と内心思っていた。

 

「私も両親も、村にある女神様の教会に毎日お祈りを捧げていました。ですが、実の所、当時は女神様はもう居ないんじゃないかと噂されていました」

 

「それは如何して………?」

 

リティナ王女がそう聞くと、

 

「その教会には、女神様の姿とされる女神像が祀られているんですが、今から20年近く前に、その女神像の輝きが失われた為に、女神様がお隠れになられたと言われていたんです。私やカイル君が生まれた時にはその状態だったので、女神様の石像としか当時は認識して無かったんですけど…………それでもその教会に居た神父様は、女神様がお戻りになると信じて毎日祈りを捧げ、教会の手入れも怠りませんでした。私も両親も、私の身体が治る様に毎日祈りを捧げていました。それが、この学院に入る1年位前の事です。私はいつもの様に女神様の像にお祈りを捧げていました…………」

 

エミリアは懐かしむ様に目を閉じる。

 

「私が祈りを捧げていると、突然その女神像が光を放ったんです。私は驚いて固まってしまいましたが、その光を浴びた私の身体から、黒い煙が追い出されるように出てきて、光にかき消されました。その後、5分ほどでその光は消えてしまいましたが、それからも、その女神像に仄かな輝きが宿る様になったんです。それ以来、私は女神様の祝福を受けた者として、女神様の『聖女』と呼ばれるようになったんです」

 

「20年近く前………そして大よそ2年前…………時期は合う………か…………」

 

エミリアの言葉に、とある仮説が浮かび上がった俺は声を漏らした。

 

「ですからそれ以来、女神様に関する祭事の際には、私が立ち会う事が通例になったんです」

 

「そうか………」

 

クラウディアは納得したように頷いた。

 

「そうなると、やはりカイル様達は『豊穣祭』の間は故郷へ戻られてしまうのですね………」

 

リティナ王女が残念そうに言う。

 

「えっと…………折角のお誘いを断ることになって、申し訳ありません」

 

カイルが申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「い、いえ! 頭をお下げにならなくて結構です! 故郷を思う気持ちは誰もが同じですから………」

 

「すみません………」

 

リティナ王女は一度咳払いをすると、

 

「ですが、『豊穣祭』の前に冒険者実習に全力を注ぎましょう。死者が出る可能性もゼロでは無いのですから………」

 

身形を正し、真剣な表情でそう言うのだった。

 

 

 

 






異世界編第16話です。
今回の副題は正直適当。
いいものが思いつかなかった。
とりあえず今後の予定を立てるための繋ぎ回みたいなお話です。
なので今回は短め。
次もお楽しみに。

葵とリュウダモンだけでも早く合流させるべきか?

  • 早く合流させるべき。
  • 合流する時は嫁全員で。
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