ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第19話 サバイバル2日目

 

 

 

 

【Side カイル】

 

 

 

 

気持ちのいいまどろみの中、俺は目を覚ました。

落ち葉を集め、マントやローブを敷いて布団代わりにした寝床。

そして…………俺の腕の中にある温もり…………

そこには、一糸纏わぬリティナ。

 

「…………………………」

 

俺は彼女を見つめ………………

やっちまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!

心の中で大絶叫した。

いや、リティナの事は好きだけど!

前々から、リティナからも好意を向けられてるんじゃないかとは期待してたけども!

昨日の夜に相思相愛だったのは間違いなかったと確信したけども!

それでも……………!

嫁入り前の王女様に手を出すって、何やってんの俺ぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?

貴族や王族のしがらみを良く知らない俺でも、これだけは言える。

絶対にヤバい!

 

「んんっ…………」

 

そう思っていると、リティナが可愛らしく身動ぎした。

そんな姿を見ると、先程までの焦燥が嘘のように愛しさに押し流される。

彼女の顔に掛かる前髪を退かす様に頭を撫で、彼女の顔がハッキリと見えるようにして、彼女の顔を見つめた。

色々心配事はあるんだろうけど、彼女を抱いた事に後悔は無い。

すると、

 

「んっ……………あ………」

 

彼女の瞼が開き、俺を見上げるように見つめた。

一瞬呆けていたようだが、昨夜の事を思い出したのか、徐々に顔が赤く染まっていく。

 

「お、おはようございます………カイル………」

 

「おはよう、リティナ」

 

挨拶を返すと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

このままこうして居たかったけど、よく考えれば今は遭難中。

昨日の内に乾かしていた服を着て、身支度を整える。

すると、

 

「カイル………もしかしたら、あなたは昨夜の事を負い目に思っているのかもしれません。ですが、あれはわたくしが望んだ事。カイルが負い目を感じる必要はありません」

 

「そんな! 負い目なんて……!」

 

「それに、わたくしが純潔を失ったことについても、カイルの責任にするつもりは毛頭ありません。火遊びで純潔を捨てた愚かな王女。わたくしがそう言われればいいだけの話です」

 

「ッ…………!」

 

その言葉を聞いた瞬間、俺は我慢できなかった。

 

「取るよ。責任………!」

 

そう口走る。

 

「えっ………?」

 

「リティナを抱いた責任は、俺が取る!」

 

「で、ですが………」

 

「俺は平民だ。だけど、リティナの隣に立てる男になって見せる!」

 

「カイル…………」

 

「具体的にどうすればいいのかは分からないけど………でも、必ず君に相応しい男になって見せるから………!」

 

「カイル…………はい! 期待していますね」

 

俺の言葉に、リティナは笑顔で応えるのだった。

 

 

 

 

 

「それではカイル………これからどの様に動きますか?」

 

リティナがそう問いかけてきた。

俺は少し考え、

 

「……………やっぱり、このまま脱出を優先した方がいいと思う」

 

「ですが、クラウディア達は…………」

 

「他の皆なら、きっと大丈夫。完全体も殴り倒せるタイシも一緒だし。そんじょそこらの魔物なんて相手にならないよ」

 

「……………………」

 

リティナは何か言おうとしたけど、口を噤んだ。

 

「そうですね………皆が何処に居るか分からない以上、闇雲に探しても危険が増すだけです。むしろ、入れ違いになってしまえば目も当てられません………」

 

流石は王女と言うべきか、彼女の冷静な部分がリスクとリターンを把握する。

 

「皆が俺達を探したとしても、タイシなら一旦脱出する判断は取れるはず。無暗に探し回るよりも、同じ目的地を目指した方が合流できる可能性は高いと思う」

 

「…………そうですね。脱出を優先して動きましょう」

 

リティナは僅かに考えた後、ハッキリと頷いた。

 

 

 

 

 

俺達は寝床にしていた大木の根の隙間から出る。

朝だというのに日の光は樹海の木々に遮られ、薄暗く鬱蒼としている。

 

「昨日は魔物や魔獣に出会わなかったけど、注意して進もう」

 

「はい」

 

俺の言葉にリティナは頷く。

俺達は一先ず川沿いに遡って落ちてきた滝を目指した。

暫く歩いていると、バキバキバキと木々の枝が折れる音が響く。

それと同時に、ズシンズシンと重い足音も響いてきた。

 

「ッ!」

 

俺は咄嗟に背中の大剣を引き抜く。

 

「リティナは俺の後ろに!」

 

そう言うと、リティナは俺の後ろで身構えた。

そして、大木の枝を掻き分けるようにして、それは現れた。

身長が4mほどもある、筋肉粒々の巨人。

 

「トロル!」

 

背後のリティナが叫ぶ。

トロル。

それは魔物強さでは中の上に位置する強力な人型の魔物だ。

通常であれば、ベテラン冒険者が4~6人のパーティーを組んで漸く戦えるほどの強さを持つ。

だけど…………

 

「不思議と怖くない…………!」

 

大剣にデジソウルを纏わせる。

その時、トロルが剛腕を振り被った。

 

「……………!」

 

俺は大剣を構える。

そして、

 

――ドゴォォォォン!

 

トロルの剛腕が振り下ろされ、衝撃音が鳴り響く。

だけど、

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

俺はその一撃をしっかりと受け止めていた。

 

「だああっ!!」

 

受け止めた状態から大剣を振り上げる。

 

「グォッ!?」

 

同時にトロルの腕も上に弾き上げられた。

そして跳躍。

 

「はぁああああああああああっ!!」

 

トロルの頭上まで跳び上がった俺は、大剣を振り被り、

 

「でやぁああああああああああああっ!!!」

 

渾身の力で大剣を振り下ろした。

その一撃は、トロルの巨体を一刀両断に分割する。

 

「えっ………?」

 

その光景に、俺は思わず声を漏らした。

 

「カイル………すごいですわ!」

 

リティナも驚愕の声を漏らしている。

 

「何でだろう………? 昨日よりも威力が上がっている様な…………」

 

昨日はオークを真っ二つに出来ていた。

だけど、オークは下の上程度の魔物。

トロルはそれより遥かに大きく、筋肉質の為に防御力も高い。

なのに、今はそのトロルをあっさりと真っ二つに出来た。

俺は真紅のデジソウルを纏う大剣を見る。

心なしか、剣に纏うデジソウルの密度も増している気がした。

少し気になるけど、今はそんな事を考えている暇はない。

 

「リティナ。さあ、行こう」

 

「はい」

 

俺達はその場に留まる事は危険と考え、先を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

テントの中で快適な目覚めを迎えた俺達は、朝食を摂っていた。

朝食は、ご飯に味噌汁(市販のインスタント)、目玉焼きに漬物と言った、日本風の朝食である。

因みに俺は箸を使っているが、他の皆はスプーンやフォークなどを使わせている。

 

「何と言うか………ホッとする味ですね」

 

味噌汁を飲んだエミリアが、1つ息を吐いてそう零す。

 

「それわかるわ………寝起きに丁度いいっていうのかしら?」

 

同じようにアリスもそう零した。

 

「美味しくて、優しい味…………」

 

エリスも微笑みを浮かべながら食事をしている。

 

「この『ゴハン』と言ったか? ライスを『炊く』という調理法で調理したものも、これ単体では味気なく感じたが、他の料理と一緒に食べるとまるで違うな」

 

クラウディアも満足そうに頷いている。

 

「俺の故郷の朝食だが、気に入ってくれて何よりだ」

 

俺は日本の料理を気に入ってくれたことに気を良くしていた。

その朝食が終わると、

 

「さて、これからの方針だが………」

 

「勿論リティナ様達を探すぞ!」

 

クラウディアがそう発言する。

 

「まあ、それが妥当だと思う。一先ず川沿いに遡れば、カイル達の痕跡を見つけられるだろう。そこから本格的にカイル達の捜索をする」

 

「うむ!」

 

クラウディアは勇ましく頷くが、そこで気付いた。

 

「そう言えば、武器を失ってるんだったな………」

 

「うっ………」

 

俺の言葉にクラウディアはたじろぐ。

クラウディアだけではなく、エミリアやアリス、エリスも杖を手放している。

 

「ん~~~~…………まあ、今更か」

 

俺は少し考え、開き直った。

そして、〝宝物庫〟に意識を向けると、目の前に何の変哲もない、柄が黒いだけのクロススピアが現れた。

 

「クラウディアはこいつを使え」

 

そう言いながらそのクロススピアを差し出す。

これは、八重樫さんが使っている黒刀と同時期に、ハジメが錬成の練習がてら作り出したものだ。

クラウディアが何気なしにその槍を受け取ると、

 

「なんて軽い………!」

 

クラウディアがその軽さに驚く。

材質は黒刀と同じくアザンチウム製だったりする。

 

「俺のダチが練習で作ったものだ。まあ、そんじょそこらの物よりかは性能が良いのは保証するぞ」

 

俺は続けてスタッフとワンド2本を取り出す。

これもハジメの作品で、白崎さんが使っている杖の試作品だったりする。

当然ながら、いろんな付与がされているので、魔法の発動のしやすさやら魔力消費量の軽減など盛沢山だ。

特に、白崎さんと同じ回復役(ヒーラー)のエミリアとは相性もいいだろう。

 

「ホント、何でも出て来るわね。その〝宝物庫〟って奴」

 

アリスが呆れ半分に言う。

 

「まあ、元々非常用に必要な物は揃えてあるからな」

 

俺は踵を返すと、

 

「そんじゃ、サバイバル2日目行ってみますか!」

 

意気揚々とテントから出た。

そして――――

 

―――ズズンッ!

 

目の前に体長10mほどの大きな四足歩行のトカゲの様な生き物がいた。

 

「おおぅっ!?」

 

突然の事態に俺も素っ頓狂な声を漏らしてしまう。

テントの認識阻害の影響下だったせいか、デルフも気付かなかったようだ。

 

「アースドラゴン!!」

 

クラウディアが叫ぶ。

 

「アースドラゴンって事は土属性の竜か!」

 

俺がそう叫ぶと、

 

「アースドラゴン………翼が無いから飛べない分、ワイバーンよりも脅威度は低く設定されている。でも、その防御力と耐久力はそれ以上」

 

エリスが説明してくれる。

その時、アースドラゴンの目がギロッとこちらを向いた。

向こうからしてみれば、いきなり目の前に現れた様な物だろう。

俺は戦闘に巻き込まれないようにテントを〝宝物庫〟にしまうと、

 

「グガァァァァァァッ!!」

 

計った様にアースドラゴンが襲い掛かって来た。

後ろにはクラウディア達が居る。

避ける訳には行かない。

 

「ぬおおっ!!」

 

食らいつこうとする上顎と下顎を両腕で支え、足はしっかりと地面を踏みしめる。

足元が少し陥没したが、何とか受け止め切れた。

その瞬間、

 

「はぁああああああああああっ!!」

 

クラウディアが跳躍し、アースドラゴンの首を狙ってクロススピアを振り上げていた。

突くのでは無く、斬りつけるように振るわれた槍は、アースドラゴンの首の側面を切り裂いた。

 

「なっ!?」

 

その事に驚いたのはクラウディア自身。

クラウディアが付けた傷は浅くなく、血が噴き出す。

 

「これだけの軽さで、何と言う切れ味………! アースドラゴンの鱗がまるでスライムの様に………」

 

クラウディアは思わず槍の切っ先を見る。

すると、

 

「エリス! あれ試すわよ!」

 

「うん!」

 

アリスとエリスが互いに背中合わせとなり、アリスが右手に、エリスが左手に持ったワンドをアースドラゴンに向ける。

すると、ワンドの先に炎が集中し始めた。

 

「〝昇華魔法〟で底上げされた私の炎魔法を、エリスが〝重力魔法〟で圧縮。形作る」

 

炎が圧縮され、まるで生きているようにその形を変えていく。

 

「これが私とアリスの合体魔法…………!」

 

炎が広がり、翼となって力強く羽搏く。

その姿は正に火の鳥。

 

「「〝フェニックス〟!!」」

 

火の鳥が羽搏き、アースドラゴンを飲み込む。

そして、触れた部分を蒸発させた。

 

「「えっ?」」

 

2人が放った火の鳥は、アースドラゴンを貫通するとそのまま空に羽搏き消えていく。

 

「「………………………」」

 

その跡を見て、エリスとアリスは呆然としていた。

 

「こ、こんな凄い威力になるとは思わなかったわ………」

 

「予想以上…………」

 

「………ユエの〝蒼龍〟と同等かそれ以上の威力だな………」

 

俺はそう漏らす。

因みにその余波で手に少し火傷を負った。

すると、それに気付いたのか、

 

「タイシさん、手を見せてください。治療します!」

 

エミリアが俺の手に回復魔法を掛ける。

火傷は見る見るうちに治り、後も残らず消え去った。

俺は何度か手を握ったり開いたりして問題無い事を確認すると、

 

「ありがとう、エミリア」

 

お礼を言う。

 

「いえ、タイシさんのお役に立てて良かったです!」

 

綺麗な笑みを浮かべながらそう言った。

 

「ッ…………」

 

その笑顔に顔が少し熱くなったことを自覚した俺は誤魔化す様に目を逸らす。

 

「さ、早く先に進もう」

 

俺は誤魔化す様に先を促した。

 

 

 

襲い掛かって来る魔物達を蹴散らしつつ、落ちてきたであろう滝の近くまで辿り着いた。

目の前には絶壁と言える断崖が聳え立っている。

 

「…………で? ここまで辿り着いたのはいいけど、どうやって昇るつもりよ?」

 

崖の高さは50m近い。

ロッククライミングで昇るのはまず不可能だろう。

 

「いくつか考えたプランはあるが、まず1つ目。お前達の〝重力魔法〟で俺達全員を浮かせて崖の上まで行く。もしくは崖の側面自体を〝重力魔法〟で足場にして歩いて昇る」

 

「……………〝重力魔法〟はまだ使い始めて日が浅い。短時間ならともかく、登り切るまで繊細なコントロールが出来る自信が無い」

 

エリスがそう言う。

 

「悪いけど、私も同意見よ」

 

アリスも同意見の様だ。

 

「それじゃあ2つ目。〝宝物庫〟の中に、〝空力ブーツ〟という空中に足場を作り出せる特殊な靴がある。それを使って上まで昇る」

 

「何よ、そんな便利な物があるなら………」

 

「ただし、1足しか無いし、サイズも俺に合わせてあるから、俺が1人ずつ抱えて上まで昇らなきゃいけない。そして、俺が行き来してる間に魔物に襲われたら、俺抜きで………最悪1人で対処しなくてはいけない。上も下もな」

 

「流石にそれは勘弁ね…………」

 

アリスが意見を変えた。

 

「それから3つ目。まあ、これは1つ目と2つ目を合わせた様なものだが、〝重力魔法〟で全員の体重を軽減し、俺が皆を抱えて、空力ブーツで一気に上まで運ぶ。この時は、俺だけで4人を抱えるのは無理だから、俺にしがみ付いてもらわなきゃいけないわけだが」

 

「まあ、それが妥当だろう」

 

クラウディアが肯定の意を示した。

 

「ま、まあ、全員の安全を考えたらそれがベストだと思うわよ」

 

アリスも、

 

「問題無い………」

 

エリスも、

 

「じゃ、じゃあ、お願いします………」

 

そしてエミリアも。

全員が反対しなかった。

 

「お、おう………」

 

俺はあれ?と思った。

多少は反発されるかなと思ったんだけど………

 

「そ、それじゃあ早速やるわよ! いつまでもこんな所に居たら、生きてる心地しないし!」

 

アリスが俺を急かす様に言った。

 

「あ、ああ」

 

俺は〝宝物庫〟から空力ブーツを取り出し、履き替える。

 

「な、なら、俺に掴まってくれ」

 

俺がそう言うと、

 

「こ、これは仕方の無い事なんだからね!」

 

「タイシ………よろしく………」

 

俺から見て右前にアリスが、左前にエリスが寄り添うようにしがみ付き、

 

「で、では、失礼する」

 

「お、お願いします………」

 

右後ろにクラウディア、左後ろにエミリアが捕まった。

 

「………………………」

 

その瞬間、俺は思わず無言になる。

今更だが、クラウディアもエミリアもアリスもエリスも、皆俺の恋人達に負けず劣らずの美少女であり、スタイルも全員が抜群だ。

そんな美少女たちが不可抗力とは言え、こうやって俺にしがみ付いていると、何処とは言わないが思わず反応してしまいそうになる。

 

「な、何黙り込んでんのよ………?」

 

しがみ付いているアリスが問う。

 

「い、いや…………何でもない」

 

俺は煩悩を振り払い、

 

「じゃ、じゃあアリス、エリス。頼む」

 

俺がそう言うと、2人が〝重力魔法〟を発動させ、全員の体重が軽減される。

 

「………行くぞ!」

 

俺はデジソウルで身体能力を強化して地面を蹴った。

勢い良く空へと跳び上がる俺。

身体に襲い掛かる浮遊感に、全員が更にギュッと俺にしがみ付いた。

 

「ッ………!」

 

俺は煩悩を我慢しつつ、空力の足場で更に跳び上がる。

それを何度か繰り返して、崖の上を目指した。

 

 

 

 

 

 

【Side カイル】

 

 

 

 

 

 

 

日が傾いてきた時間帯。

俺達の探索はあまり進んでいなかった。

何故なら、

 

「「「「グガァァァァァァァァッ!!!」」」」」

 

「くっ!」

 

トロルの群れに出くわし、執拗に襲われ続けていたからだ。

しかも、その群れを統率しているのは、

他のトロルよりも1回り大きい個体。

 

「ゴァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

トロルを統率するトロル達の王。

キングトロルが居る群れだったのだから。

キングトロルは強さで言えば上の下。

個体では竜種なんかには劣るけど、そのトロルが統率する群れの危険度はそれを上回る。

キングトロルは知能が高く、狡猾だ。

その証拠に、先程から部下のトロル達をけしかけ続け、俺を休ませないようにしている。

キングトロルを狙おうにも、他のトロル達が邪魔している間に距離を取り、近付くことを許さない。

 

「はぁ………はぁ…………」

 

「カイル…………!」

 

昼頃から戦いっぱなしの俺の疲労は限界に近い。

真面な食事もとれてないから、その疲労感は一押しだ。

リティナが心配そうな声を上げる。

その時、金棒を持ったトロルが前に出てくる。

キングの周りに控えていた、親衛隊とも言うべき個体。

そのトロルが金棒を振り上げる。

 

「くぅ…………!」

 

俺はデジソウルを纏わせてその金棒を弾き返そうとした。

だけど、

 

「うぐっ…………!」

 

疲労の所為か、一瞬眩暈がして集中力が途切れてしまう。

そして、

 

―――バキィィン!!

 

金棒によって大剣が砕かれてしまった。

 

「しまった!?」

 

その瞬間、

金棒を持っていた手とは反対の手が握られ、拳が振り抜かれる。

 

「がっ!?」

 

「カイルッ!?」

 

身体強化による防御が遅れた俺の側面にその拳が叩き込まれた。

そのまま吹き飛ばされ、

 

「がはっ!?」

 

崖の岩場に叩きつけられた。

 

「カイル!」

 

リティナが俺に駆け寄る。

 

「うぐっ………!?」

 

右腕に激痛が走る。

 

「カイル! 腕が……!」

 

見れば、右腕があらぬ方向に折れ曲がっている。

 

「くっ……骨が………!」

 

それは完全に骨折していた。

リティナが回復魔法を唱えるけど、いくら回復魔法でも骨折の治療には1日~数日必要だ。

俺は痛む身体に鞭打って立ち上がる。

 

「カイル! 動いては……!」

 

「リティナ………ここは俺が何とか食い止める………! リティナは逃げて身を隠すんだ……!」

 

「カイル! 何を!?」

 

「リティナ………君だけは、必ず護るから………!」

 

俺は精一杯の笑顔を浮かべる。

 

「嫌です! 逃げるなら、カイルも一緒に………!」

 

「今の俺は足手纏いにしかならない………! なら、せめて君が逃げる間の時間だけでも稼いで見せる………!」

 

「嫌です!」

 

リティナはそう言って俺から離れようとしない。

 

「カイルを見捨てて逃げるぐらいなら………ここであなたと一緒に…………」

 

リティナは涙を浮かべながらそう呟く。

 

「リティナ…………」

 

その時、先程の金棒を持ったトロルが目の前まで歩いてきた。

 

「くそ…………」

 

そのトロルが金棒を振り上げる。

 

「……………カイル」

 

リティナが俺の名を呟く。

 

「リティナ…………ごめん!」

 

護れなくてごめん。

約束を守れなくてごめん。

色んなごめんを込めて、最期にリティナを力一杯抱きしめる。

そして――――――

 

「〝アイスウォール〟!!」

 

目の前に氷の壁が現れ、トロルの金棒からの盾になった。

その一撃で氷の壁は砕かれたけど、金棒は俺達には届かない。

 

「大丈夫か!?」

 

その時、頼もしい仲間の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

川沿いに遡ってきた俺達は、昼頃に焚火の後を見つけ、それから更にさかぼって滝の手前まで来た後、崖沿いにカイル達を探し始めた。

度々トロルと言う巨人と遭遇したが、下に居た竜種ほどではなく、あっさりと倒す事が出来た。

そして、日が傾いてきた頃、

 

「相棒! 俺っちの気配感知に反応があった! やべえぜ! あの坊主たち囲まれてる!」

 

デルフの言葉で俺達はその場に急ぐ。

そこには崖に叩きつけられて負傷したカイルと、彼に寄り添うリティナ王女。

そして、そんな2人に金棒を振り下ろそうとするトロルの姿があった。

 

「ッ! 〝アイスウォール〟!!」

 

咄嗟にクラウディアが槍の切っ先を地面に突き刺し、氷の壁を生み出し、それをカイル達の前まで連ならせる。

それによって金棒はカイル達の命を奪う事は無かった。

 

「大丈夫か!?」

 

俺は声を掛けながらカイル達の前に辿り着く。

 

「タイシ殿! 皆さん!」

 

リティナ王女が叫ぶ。

 

「タイシ………?」

 

カイルは満身創痍で立っているだけでやっとの様だ。

 

「カイル君!? 酷い怪我じゃないですか!? すぐに回復魔法を……!」

 

エミリアが回復魔法を行使しようとしたが、

 

「いや、それよりもエリス! 〝再生魔法〟だ。そっちの方が早い!」

 

「わかった」

 

エリスが頷き、カイルに〝再生魔法〟を懸けようとした時、

 

「グガァァァァァァッ!!」

 

再びトロルが金棒を振り上げる。

しかし、

 

「させん!」

 

そんなトロルにクラウディアがクロススピアを振り下ろす。

そのトロルは金棒を断ち切られ、同時に首を落とされて絶命した。

 

「ク、クラウディア………!?」

 

リティナ王女が驚愕の声を漏らす。

エリスが〝再生魔法〟をカイルに掛けると、瞬く間にカイルの傷が消えた。

 

「凄い………あれだけの傷がもう………」

 

カイルは驚きながら各部を確認する。

折れていた腕もすっかり元通りだ。

しかし、その時エリスがよろめいた。

 

「エリス!?」

 

俺は咄嗟に支える。

 

「………大丈夫。魔力を使い切っただけ………」

 

やはり神代魔法は燃費が悪い様だ。

俺はホッとするが、前を見ると、大量のトロルが迫ってきていた。

 

「くっ! 俺にも武器があれば………!」

 

カイルがそう漏らす。

見れば、カイルの手には砕かれた大剣の柄と鍔の部分しか残ってない。

 

「…………………」

 

俺は、カイルが仕えそうな武器が〝宝物庫〟に無かったか記憶を掘り起こし始める。

そして、

 

「ああ、そう言えばこんなのがあったな」

 

俺は右手に『それ』を出現させる。

 

「カイル、こいつを使え」

 

俺はそう言って『それ』をカイルの目の前に突き刺した。

カイルの目の前に突き刺した『それ』は無骨な大剣。

鍔も無く装飾も最低限しかない簡素な見た目をしている。

 

「タイシ……? 今、何処から………?」

 

〝宝物庫〟を初めて見るカイルが疑問の声を零したが、

 

「話は後だ。今は奴らを倒すのが先だ」

 

「う、うん……!」

 

カイルは気を取り直してその大剣の柄を握り、地面から引き抜いた。

 

「……………凄い…………何か………言葉では言い表せないけど、この剣凄い………!」

 

カイルは引き抜いた剣を見てそう呟く。

その時、

 

「ガァアアアアアアアアアアアッ!」

 

先程とは別の金棒を持ったトロルが襲い掛かって来る。

 

「ッ! でやぁああああああああああああっ!!」

 

それに気付いたカイルが前に出た。

デジソウルも纏っていない。

それでもカイルは大剣を振り被り、振り下ろされる金棒に向かって大剣を薙ぎ払う。

そして、

 

「グガッ………?」

 

トロルは何が起きたのか分からないという声を漏らし、上下真っ二つにされて絶命した。

 

「…………え?」

 

カイルも声を漏らす

カイルは金棒を弾こうとしたが、その大剣は金棒をあっさりと切り裂き、そのままトロルの胴を両断したのだ。

 

「まあ、試作品とは言え、流石は解放者の『オスカー・オルクス』が作った剣だよな。ネーミングセンスはアレだが……………」

 

カイルに渡した大剣。

それは、真のオルクス大迷宮の最下層にあったオスカーの隠れ家の倉庫にあった物だ。

その正式名称は『試作品・ドラゴン殺せる剣』(命名:オスカー)だったりするのだが。

これを見つけた時、ハジメは持っていくか如何か数時間迷った挙句、置いて行こうとしたのだが、同じくその剣のナニカに惹かれた俺が持っていくようにお願いした物だったりする。

結局トータスの旅では使わなかったが、地球帰還後の荷物の整理をした時に、折角なので俺の〝宝物庫〟に入れておいたのだ。

こういう形で日の目を見ることになろうとは。

でも、カイルにあの剣は結構似合ってると思う。

そして気付いた時には、カイルがキングトロルを真っ二つにしており、残りのトロル達が逃げていく所だった。

 

 

 

 

 

尚、その夜のテントに、カイルとリティナ王女が驚愕したのは言うまでもない。

 

 

 

 





オリジナル異世界第19話です。
とりあえずサバイバル2日目~合流です。
そして何故か出てきた『ドラゴン殺せる剣』。
本来はありふれた日常で出てきた物ですけど、アフターで本編に逆輸入されていたので出してみました。
そしてカイル君の愛剣に。
さて、どうなる事やら。

葵とリュウダモンだけでも早く合流させるべきか?

  • 早く合流させるべき。
  • 合流する時は嫁全員で。
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