デジタルナイト養成学院で初めてのレベル5のデジタルダンジョンをクリアした俺達のチームだったが、反響は思ったよりも少なかった。
何故なら、レベル5をクリアできたのは、俺とドルモンの力が大きいと思われていたからだ。
アリア先生は純粋にクリアしたことを褒めてくれたが、他の生徒達はそうはいかない。
疑惑の目でカイルやエミリア達を見ていた。
まあ、疑われる理由として、完全体に進化したデジモン達を公にしていないというのもあるが。
そして、公にしていないのには理由がある。
それは、近々行われる『学院披露会』の為だ。
学院披露会とは、この学院内で年1回行われる大会で、生徒達の成長を披露するための大会であり、全生徒が出場し、2対2の組み合わせで1戦ずつ戦うというものだ。
王都内にある闘技場で行われ、一般にも公開される。
特に、国王や貴族達も観戦に来るため、生徒達………
特に平民クラスの生徒にとっては、将来の為の数少ないアピールの機会でもある。
その為、事前に知られているより、サプライズで完全体を見せた方がインパクトがデカいだろうという理由だ。
まあ、クラウディアは元より、アリスとエリスについてもフォルダ公爵の庇護下に入っているし、カイルもほぼリティナ王女の派閥と言っても問題無いだろう。
エミリアもクラウディアと仲が良いし、フォルダ公爵の派閥と言うべきか。
それと、その学院披露会のコンビは既に決まっている。
アリスとエリスは最早当然。
カイルもリティナ王女に誘われて快諾し、エミリアもクラウディアから頼まれて了承した。
そして肝心の俺だが、先生から連絡を受けたとき、俺は個人で出場する様に要請を受けた。
なんでも、俺とドルモンの強さは学生レベルを超えており、他の生徒と差があり過ぎるという理由らしい。
それ言ったらカイル達も完全体まで進化させたから一緒だけどな。
最近はテイマーとしての実力も上がって来てるし、もし戦ったとしたら、完全体までと言う縛りがある上では油断が出来ない相手になる。
因みに、パチモン勇者も複数のデジモンを持つという事で、個人で出場するとの事だ。
そんなこんなで学院披露会当日。
王都にある闘技場は、学院のものよりも更に広く、観客も10倍以上入るほどの広さだ。
闘技場から観客席までの壁も高く、安全性も少しは高くなっているだろう。
王族や貴族専用のVIP席には、国王を始めとした貴族達が参列している。
その中にはフォルダ公爵の姿もあった。
闘技場内では、既に何組かの試合が行われており、試合が盛り上がる度に、大きな歓声や惜しみない拍手が送られる。
因みに不正防止の為に、試合相手は試合直前まで分からず、学院側で決めた組み同士での対戦となる。
まあ、貴族の力をもってすれば、いくらでも不正というか、対戦相手を決める事は可能なんだろうが…………
その為、貴族クラスの生徒が平民クラスの生徒と戦う事が多く、その大半は貴族クラスの生徒が勝利を収めている。
偶に平民クラスの生徒が勝つこともあるが………
とりあえず、試合内容は特に特筆する事も無い正面衝突の力押し。
ハッキリ言ってつまらない。
俺は生徒用の観客席から欠伸をしながら次々に行われる試合を眺めていた。
昼が近くなった頃、
『アリス選手、エリス選手! 前へ!』
アリスとエリスが呼ばれる。
「ふふん、漸く出番ね!」
「頑張る………!」
アリスは自信満々に。
エリスは静かながらも覇気のある言葉を口にする。
「2人とも、頑張れよ」
俺は2人に声を掛けると、
「ふ、ふん! よく見てなさい! 私とエリスなら誰だろうとあっという間に倒してやるんだから!」
アリスは若干頬を赤くしつつ、何故かやる気を出していた。
「ん、見てて……!」
エリスも小さいファイティングポーズの様に両手の拳を握りしめた。
2人がリングに登ると、相手は貴族クラスの生徒のようで、右腕にカノン砲を装備したゴリラのような成熟期デジモンのゴリモンと、戦車のような姿をしたマシーン型デジモンのタンクモンを連れていた。
「ふん! アリス、平民に成り下がるとは落ちたものだな!」
相手の男がビシッと指を突き付けながらそう言う。
だが、アリスの反応は何処吹く風と言った様子だ。
「で? だから何?」
「な、何だと!?」
「私が貴族だろうが平民だろうが、今ここであんた達を倒す事には変わりないわ」
「ぐっ……! 平民の分際で………!」
「貴族とか平民とか………そんな事に拘ってちゃ、私達には勝てないわ!」
そう言うと、アリスとエリスはD-3を掲げる。
「エクスブイモン!」
「スティングモン!」
D-3の画面が輝き、エクスブイモンとスティングモンがリアライズする。
そして、
「「ジョグレス(よ)!」」
アリスとエリスが叫ぶと、2体は光に包まれ、
「エクスブイモン!」
「スティングモン!」
螺旋を描きながら上昇していく。
「「ジョグレス進化!!」」
その頂点で2体が1つとなり、その姿を現す。
「「パイルドラモン!!」」
ジョグレス進化して完全体に進化したパイルドラモンがその場に降り立つ。
その姿を見て、相手の生徒達は歯噛みするが、
「2体が一体となったからって何だ!」
「そうだ! 2体掛かりならいくら完全体とて!」
相手の2人がフライング気味にデジモン達に命令を下しそうになり、
「し、試合開始!!」
審判が慌てて開始の合図を出す。
その瞬間、
「パワーアタック!!」
ゴリモンが右手のカノン砲からエネルギー弾を発射し、
「ハイパーキャノン!!」
タンクモンが頭部の主砲から砲弾を放つ。
それらの必殺技はパイルドラモンに直撃し、爆煙に呑み込まれる。
「手を休めるな! やれー!!」
「撃ち続けろ!!」
相手2人の命令に、ゴリモンとタンクモンは必殺技を連射する。
必殺技が次々と撃ち込まれ、爆発音が絶え間なく続く。
そして、ゴリモンとタンクモンのエネルギーが尽き掛け、疲労によって攻撃が止む。
「やったか!?」
「これだけ攻撃を受ければ………!」
相手2人は思わずそう叫んだ。
だが、その台詞は所謂フラグと言う奴だ。
その瞬間、爆煙の中から10本のワイヤー付きアンカーが飛び出してきて、それぞれ5本ずつゴリモンとタンクモンに絡みついた。
「ギッ!?」
「ッ!?」
ワイヤーによって締め上げられる2体は声を漏らす。
その時、爆煙の中からパイルドラモンが姿を見せる。
その身体には、殆どダメージを感じさせない。
そして、2体に絡みついたワイヤー付きアンカーは、パイルドラモンの両手に繋がっていた。
そう言えば、パイルドラモンの両手の指にはそう言う能力があったっけ。
すると、
「「はぁああああああああああっ!!」」
パイルドラモンが勢いよく両腕をクロスさせると、ワイヤーによって繋がれている2体も勢い良く振り回され、互いの中央で激突する。
「ギアッ!?」
「ガッ!?」
それと同時にワイヤーを解くと、
「「デスペラードブラスター!!」」
腰の生体砲を展開し、纏めてエネルギー弾の嵐を叩き込んだ。
完全体の攻撃は成熟期では耐えきれず、瞬く間に力尽き、倒れ伏した。
「そこまで! 勝者、アリス選手、エリス選手!!」
審判が決着の合図を出すと、観客達が一気に盛り上がった。
学生の試合で完全体の姿が見られるとは思っていなかったからだろう。
悔しがる相手を他所に、アリスとエリスは俺達の所に戻って来る。
「どーよ!」
アリスはどんなもんだと言いたげに胸を張る。
「ああ、流石だな」
俺は純粋にアリスを褒める。
「えへへ………」
すると、アリスは嬉しそうにはにかんだ。
こういう姿は普通に可愛いと思う。
「タイシ………私とスティングモンも頑張った………!」
エリスが何かを求めるように俺に歩み寄る。
「え? ああ、エリスもよく頑張ったよ」
俺が労いの言葉を口にすると、エリスは嬉しそうに頬を染め、小さく笑みを零した。
それからまた試合が消化されていき、昼が過ぎ、そして太陽が傾いてきた頃、
『リティナ・オメガ・フォン・サーバー王女殿下、カイル選手! 前へ!』
ようやくカイルとリティナ王女が名を呼ばれ、2人は席を立つ。
「頑張れよ」
俺は軽く声を掛ける。
「うん! 行ってくるよ!」
カイルは自信を持って頷き、
「はい、油断はしませんわ」
リティナ王女も頷く。
すると、
『レオナルド・オメガ・フォン・サーバー王子殿下、ルーカス・ロードナイト・フォン・プロパティ選手! 前へ!』
2人の対戦相手に選ばれたのは、よりにもよってあの王子サマだった。
「あの王子サマ、謹慎解けたのか?」
俺はそう呟く。
「おそらく、殿下を推す派閥が謹慎を解くように働きかけたのだろう。この大会で殿下のデジタルナイトとしての有能振りを改めて民衆や他の貴族達に知らしめようというのだろう。対戦相手にリティナ様が選ばれたのも、リティナ様よりも殿下の方が上だという箔を付けたいが為の策略だろう」
クラウディアがそう言う。
「なるほどね。本来なら、王族同士が戦うのは避けるべきなんだろうし………それにしても………その策考えた奴って本当に馬鹿だろう?」
「仕方あるまい。2人のデジモンが完全体に進化したことは、我々仲間内しか知らないのだから」
その『策』は、王子サマがリティナ王女に勝つことが前提だ。
そもそも、ジオグレイモンの時点で王子サマのティラノモンを圧倒しているのに、その相手と組んでいるリティナ王女と対戦させようとするなど、博打にも程があるだろう。
すると、
「………クラウ? その…………大丈夫なんですか………?」
エミリアが心配そうな表情でクラウディアに問いかけた。
おそらく、あの王子サマを前にして、以前の事を気にしていないか気がかりなのだろう。
だが、
「ん………? ああ、大丈夫だ。自分でも驚くほどに何も感じないよ」
クラウディアは平然とそう答えた。
俺が見る限り、無理しているようにも見えない。
「こう言っては不敬かもしれんが、殿下への想いはすっかり冷めてしまったようだ………いや、冷めるというのは少し違うかな………? 私は元々、殿下だけしか見ていなかった………
「殿下だけを………ですか?」
エミリアがきょとんとして問い掛ける。
「私は昔から殿下の婚約者として言い聞かせられてきた。その事を疑問に思っていなかったし、当然の事だと思っていた。だから、他の男に目を向けるなどしてこなかったが故に、他の男の事を何も知らなかったんだ。少し他に目を向ければ、殿下よりいい男は居たというのに………」
その言葉と共に、クラウディアは横目で俺を見た。
って、何でそこで俺を見る!?
「………そう言う訳で、今の私に殿下に思う所は全く無い。心配しなくても大丈夫だ」
クラウディアがそう言った所で、他の観客達から歓声が沸いた。
リング上に、カイル達と王子サマとその取り巻きの男が上がったからだ。
王子サマと取り巻きの男のデジモンは、以前と変わらずティラノモンとクワガーモンだった。
「リティナ! 王族ともあろうものが傍に置く者が唯の平民とは、見損なったぞ!」
王子サマはそんな事を言う。
「お兄様………カイルはわたくしが最も信を置く騎士です。いくらお兄様と言えど、カイルへの侮辱は許しませんよ」
リティナ王女は堂々とそう言い返した。
「以前の決闘では、奇跡によって敗北を喫したが、偶然は2度も続かん! 今度こそ平民に身の程を分らせてやる!」
「『奇跡』、『偶然』…………お兄様は、あれだけ見せつけられてもそんな言葉で片付けてしまわれるのですね」
「奇跡や偶然以外の何だというのだ!? それ以外に王族であるこの俺が平民なんぞに負ける筈があるまい!!」
「それは違います。カイルがお兄様に勝てたのは、デジモンとの確かな『絆』を持っていたからです。その絆が力となり、進化を呼んだのです」
「絆だと? お前もそんな甘言に絆されたのか!? デジモンは強く鍛え、戦わせてこそ存在意義がある!」
「違います。デジモンは兵器ではありません。デジモンにも『心』があります。デジモンは、人と共に生きていくベき『パートナー』です」
「戯言を…………!」
「では、見せて差し上げましょう。わたくし達が、デジモンと紡いだ『絆の力』を………!」
リティナ王女はそう言うと、カイルに目配せする。
カイルは頷いてデジヴァイスicを掲げると、
「リアライズ! ライズグレイモン!!」
デジヴァイスicの画面が輝き、その巨体がリアライズされていく。
ジオグレイモンが現れるだろうとタカを括っていた王子サマは、そこに現れたライズグレイモンを見て驚愕の表情を見せた。
「な、何だと!?」
そして、続けてリティナ王女もデジヴァイスを取り出すと、
「リアライズ………! エンジェウーモン!」
デジヴァイスの画面から放たれた光が、8枚の翼をもつ天使を顕現させる。
光と共に現れたエンジェウーモンの姿に、観客達は静まり返り、息を呑んだ。
「な、何だそのデジモン達は!?」
王子サマが叫ぶと、
「ライズグレイモン! ジオグレイモンが進化した、完全体デジモンだ!」
カイルがそう言い放つ。
「エンジェウーモン。テイルモンが進化した完全体です」
リティナ王女もそう口にした。
「ば、馬鹿な………! 完全体だと………!?」
「お兄様は、わたくし達がレベル5のデジタルダンジョンをクリアした話は聞いていないのですか?」
「あ、あれは、あの異世界から召喚された者の力で…………」
「違います。タイシ殿の力は確かにお借りしました。ですが、それは成熟期のドルガモンまでですわ」
リティナ王女がそう言い放つ。
「うぐっ………!?」
王子サマが言い淀むと、
「…………口上はここまでにいたしましょう。審判」
リティナ王女は審判を促した。
「そ、それでは、試合開始!」
審判が開始の合図を出す。
「お、おのれ! 行けティラノモン!!」
「クワガーモン!!」
王子サマ達の呼びかけに応えて、ティラノモンとクワガーモンは真正面から突撃していく。
すると、
「ソリッドストライク!!」
ライズグレイモンが左腕の銃身でティラノモンを殴り飛ばし、
「ヘブンズチャーム!!」
エンジェウーモンが光の十字架のエネルギー波を放ってクワガーモンを吹き飛ばした。
当然ながら、完全体の攻撃をまともに受けたら成熟期では耐えられない。
2体とも一撃で気絶していた。
それ以前に、完全体相手に真正面からは分が悪いって分かってるのに、何で真正面から挑みかかるんだろうか?
もう少し立ち回りを考えたら、勝てないまでも善戦ぐらいは出来たかもしれないのに。
「分かりましたかお兄様。これが人とデジモンの絆の力です」
リティナ王女はそう言い残すと、王子サマに背を向けてリングを後にした。
ボロ負けしてしまった王子サマに観客達の間には何とも言えない空気が流れていたが、
『タイシ選手! 前へ!』
俺の名が呼ばれたので、俺はリングへ向かう。
仲間達の応援を背にリングへ上がると、相手側にはあのパチモン勇者が居た。
「久し振りだな」
パチモン勇者がそう呼びかけてくる。
「まあ、決闘以来か………」
「今度は負けない………!」
パチモン勇者は俺を気合の入った顔で睨み付けると、
「皆! 出てこい!!」
そう叫んで6つのモンスターボックスを放り投げた。
その箱が開き、データ粒子が渦巻いてそれぞれの形を作り上げる。
メガドラモン、メタルティラノモン、ヤンマモン、フーガモンは前と一緒だったのだが、ゴブリモンとガジモンは、フーガモンによく似た緑色の肌を持つ鬼のようなデジモンと肩から角を伸ばした緑色の恐竜型のデジモンになっていた。
「オーガモンとタスクモン………進化したのか………」
「これが俺の全力だ! まさか卑怯とは言わないよな!?」
パチモン勇者がそう叫ぶ。
「いや、全くこれっぽっちも言うつもりは無いが? むしろ、何で前の決闘の時はご丁寧に1体ずつ出したのかと疑問に思ってた所だ」
「ッ!」
俺の言葉が癇に障ったのか不機嫌そうな顔をした。
「それじゃあ、俺も………」
俺は拳にデジソウルを宿し、
「デジソウル………フルチャージ!!」
Dアークに叩き込んだ。
「ドルモン進化!」
その光を受けてドルモンが金色の竜戦士デジモンに進化する。
「グレイドモン!!」
多数相手ならドルグレモンの『力』より、グレイドモンの『技』の方が有効だと思い、こちらを選択した。
すると、審判が合図を出す。
「試合開始!!」
その瞬間、
「行け! 皆!」
パチモン勇者の号令と共に、デジモン達が押し寄せてくる。
俺は迫って来るデジモン達を一通り眺めると、
「行くぞ、グレイドモン!」
「ああ!」
目と目を合わせ、頷き合う。
俺は1枚のカードをスラッシュする。
「カードスラッシュ!」
そのカードは、
「高速プラグインB!!」
一瞬だけだが超スピードを可能にするカード。
突進してきたタスクモンがグレイドモンに体当たりを仕掛ける寸前、
「なっ!?」
その姿が掻き消えた。
パチモン勇者が驚愕の声を漏らす。
そのグレイドモンは、フーガモンの後ろで剣を構えていた。
「ハッ!? フーガモン! 後ろだ!」
パチモン勇者が呼びかけ、フーガモンが振り返ろうとしたが、
「フッ……!」
グレイドモンの剣の一振りにより、大ダメージを受けて脱落する。
「くそっ! ヤンマモン! メガドラモン! 空中から攻撃するんだ!!」
その呼びかけに、ヤンマモンが電撃の光線を放ち、メガドラモンがミサイルを乱射する。
俺は、別のカードを取り出し、
「カードスラッシュ! 白い羽!!」
そのカードをスラッシュした。
グレイドモンの背中に、白い6枚のエンジェモンの羽が現れる。
その翼でグレイドモンは飛び立つと、ヤンマモンのサンダーレイを躱しつつ、メガドラモンのミサイルを剣で切り裂き、迎撃していく。
そして、
「ハッ!」
ヤンマモンをその剣に捉え、墜落させた。
俺は更にカードをスラッシュする。
「カードスラッシュ!! 強化プラグインW!!」
グレイドモンの剣に、青白い炎のようなオーラが纏われる。
そのままメガドラモンに接近し、
「グレイドスラッシュ!!」
渾身の上段斬りを叩き込んだ。
「グォオオオオオオオオオオッ!?」
叩き落されるメガドラモン。
その時、カードの効果が切れて白い羽が消える。
グレイドモンはそのまま下に落下していく。
「チャンスだ! 着地の瞬間を狙って集中攻撃!!」
パチモン勇者の言葉に、メタルティラノモン、オーガモン、タスクモンが狙いを定める。
そして、グレイドモンがリング上に着地する瞬間、
「ギガデストロイヤーⅡ!!」
「覇王拳!!」
ミサイルと拳型のエネルギー波が飛び、タスクモンが突進していく。
グレイドモンは必殺技の爆発に飲まれる。
だが、
「まだだ! 行け! タスクモン!!」
パチモン勇者は油断せずに追撃を命じる。
悪くない判断だ。
だが、視界が塞がれた状態での突撃は危険を伴う。
タスクモンは煙の間から見えたグレイドモンに渾身の突進を食らわせようと加速する。
「もらった!!」
パチモン勇者は勝利を確信したのかそう叫び、
「グォオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ…………ッ!?」
タスクモンはその勢いのままグレイドモンにぶつかり、何の抵抗もなくすり抜けた。
タスクモンは困惑の声を上げながらリングの上から場外に落ちる。
「な、何が起こった!?」
パチモン勇者は思わず叫ぶ。
そのネタはエイリアス――分身――のカードだ。
グレイドモンが攻撃を受ける寸前、俺は防御プラグインCのカードをスラッシュし、無傷とは行かないがダメージを減らす事に成功。
そのままエイリアスのカードをスラッシュして爆煙に紛れてその場を離脱したのだ。
そして、本物のグレイドモンは、
「クロスブレード!!」
オーガモンを背後から斬りつける。
「ガァァァッ!?」
これで残りはメタルティラノモンのみ。
「「………………………」」
グレイドモンとメタルティラノモンは、少しの間睨み合っていたが、メタルティラノモンが左腕を向けた瞬間、
「カードスラッシュ! 高速プラグインH ハイパーアクセル!!」
そのカードをスラッシュする。
その直後、メタルティラノモンの左腕から電撃のようなエネルギー波が放たれた。
それは、不規則な動きでグレイドモンに迫るが、グレイドモンは付加されたスピードでそのエネルギー波の隙間を掻い潜った。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおっ! グレイドスラッシュ!!」
そのまま懐まで飛び込み、渾身の一撃を食らわせた。
「ガァアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?」
メタルティラノモンは声を上げてリングに沈む。
「ああっ………!?
パチモン勇者は声を上げたが、メタルティラノモンは戦闘不能だ。
「そ、そこまで! 勝者、タイシ選手!」
審判が俺の勝利を宣言する。
グレイドモンがドルモンに戻り、俺と共にリングを降りようとした時、
「…………何でだ?」
パチモン勇者は呟く。
「何で勝てない…………碌に指示もしてなかったのに………!」
悔しそうに俯きながらそう漏らす。
「…………指示ねぇ…………ちゃんと伝えてたぞ?」
俺はそう言う。
「えっ?」
パチモン勇者は声を漏らす。
「伝わってたよ」
ドルモンは笑みを浮かべながら俺と視線を交わす。
「ま、まさかアイコンタクトとでも………? そんな事………」
「俺達の間にある『絆』なら出来るさ」
俺はそう言う。
「絆…………俺のデジモン達に対する絆より、お前達の方が上だっていうのか………」
「絆の強さを比べるつもりは無いが………お前達の間にあるのは『本当の絆』なのか?」
「な、何ッ!? どういう意味だ!?」
「俺はお前の世界の事を良く知らないが、今までの話から察するに、お前達の世界はデジモンと戦って弱らせたうえで、そのモンスターボックスとやらで捕まえてるんだろう?」
「そ、それが何だ!?」
「別にそれが間違いとは言わないが、デジモン達からしてみれば、戦いでぶちのめされた挙句にそんな箱に閉じ込められ、ほぼ強制的に戦わされる。そんなので『本当の絆』が、結べるのかな、って疑問に思っただけさ」
「ッ………!?」
「俺達は違う。元々大人しいドルモンの性格もあったかもしれないが、俺とドルモンは初めて出会い、互いに歩み寄り、心で触れ合い、時には喧嘩もしてお互いを分かり合って来た。俺達は、ゼロから絆を紡いできたんだ。だからこそ、互いに信頼し合える『絆』が結ばれた」
「お、俺は……………………」
パチモン勇者は、まるで敗北を悟った様に項垂れる。
「別に俺が絶対に正しいとは言わないし、お前達にそうしろと言うつもりも無い。俺は、俺の信じた道を進むだけだ」
俺はそう言ってドルモンと共にリングを降りた。
俺はそのまま皆の元へ戻る。
「流石だな」
クラウディアが俺に労いの言葉を掛ける。
「まあ、流石にあの数を一度に相手にしたんだ。下手をすれば負けていてもおかしくは無かった」
「って言うか、あの数を完全体1体で倒せるほうがおかしいわよ……!」
アリスが驚愕気味な口調でそう言う。
「流石タイシさんです!」
「凄かった」
エリスとエミリアも俺を褒める。
ちょっと照れ臭くなって俺は頬を掻いた。
すると、
『クラウディア選手! エミリア選手! 前へ!』
クラウディアとエミリアが呼ばれる。
「さあ、私達の出番だ。行こう、リア」
「はい! クラウ!」
互いに笑みを向け合い、一緒にリングへ向かう2人。
そしてその相手は、決闘の時と同じ、勇者として召喚されたあの2人だった。
後ろにはヴァーミリモンとヒポグリフォモンが居る。
「…………ッ!」
リングの上で中島さんがクラウディアを睨み付けた。
「あなたには負けません!」
クラウディアに向かってそう言う中島さん。
対するクラウディアは冷静な様子で、
「…………………もうお前と殿下の関係に口を出すつもりは無い。好きにすればいいさ」
「えっ?」
クラウディアの言葉に中島さんは困惑したような声を漏らす。
「…………だが、私はこれでも負けず嫌いでな。お前に負けたままと言うのは癪だ。今回は勝たせてもらう!」
そう宣言するクラウディア。
一方、
「ははは! お前も運が無いな! また俺にやられる役になるとは!」
山口がエミリアに対して馬鹿にしたような言葉を投げる。
「今度は負けません!」
エミリアもそう言い返すが、
「ハッ! 典型的なやられ役のセリフだな!」
相も変わらず山口は、この世界を物語かなんかと勘違いしてるっぽい。
「ならば見せてやろう、リア! 私達のパートナーの力を!」
「はい! クラウ!」
クラウディアとエミリアはデジヴァイスを掲げる。
「リアライズ! ワーガルルモン!!」
「リアライズ! メタルグレイモン!!」
そこから放たれる光と共に、ワーガルルモンとメタルグレイモンがリアライズする。
「なっ!?」
「前と違う……!?」
山口と中島さんが驚きの声を漏らす。
「成長したのがリティナ様やカイルだけだと思ったら大間違いだ!」
「私達も前に進んでいるんです!」
2人は揃ってそう言う。
「さあ、準備は整った。始めようか?」
クラウディアがそう言うと、2人は表情を曇らせつつも、戦闘準備に入る。
審判が手を挙げ、
「試合開始!」
開始の合図が下された。
「行け! ヴァーミリモン!!」
「お願い! ヒポグリフォモン!!」
他の生徒達と同じように突撃の合図を下す。
ヴァーミリモンがメタルグレイモンに向かって突進する。
「メタルグレイモン!」
エミリアが呼びかけると、メタルグレイモンは機械化された左腕を振り被り、
「うぉりゃぁっ!!」
ヴァーミリモンの突進のタイミングに合わせ、横からヴァーミリモンの顔を殴りつけた。
「グォオオオオッ!?」
横から殴られ、突進の向きを変えられながら横転するヴァーミリモン。
「そこだよ!」
エミリアが叫ぶと、
「ジガストーム!!」
倒れているヴァーミリモンに向かって高熱のエネルギー波を放った。
ヴァーミリモンはその攻撃を諸に受けたが、元々熱には強いデジモンだけあり、致命的なダメージは受けてはいなかった。
一方、ヒポグリフォモンは空中からワーガルルモンに襲い掛かる。
しかし、
「見えているぞ!」
ヒポグリフォモンの爪の攻撃を紙一重で躱すと、逆にワーガルルモンは自分の爪でヒポグリフォモンの身体に傷を付ける。
「グァァッ!?」
ワーガルルモンはヒポグリフォモンの動きを完全に見切っており、空を飛べないというハンデを背負いながらも、優勢に戦っているように見えた。
【Side 三人称】
エミリア達が優勢に試合を運んでいたその上空。
何時だったかと同じように、そこには翼を持った2人の人影があった。
「何やってるのあの2人………? また負けそうになってるし」
「以前の決闘も蓋を開けてみれば負けていた………このままではデニティス様に申し訳が立たん」
「とは言ってもどうするのさ? デジメンタルのエネルギーはまだ溜まって無いんでしょ?」
「……………あまり気は進まんが、われら『天使』の力を奴らに貸す」
「それってルール違反だよね? 僕は面白ければいいけどさ」
「デニティス様への忠義は何よりも優先される。些細な事だ」
天使の1人がそう言うと、眼下に手を翳す。
「お前はもう1人の方のデジモンに力を貸せ」
「は~い」
そう言うと、もう1人も眼下に手を翳した。
【Side Out】
「ギガデストロイヤー!!」
「カイザーネイル!!」
メタルグレイモンの放ったミサイルがヴァーミリモンに直撃し、ワーガルルモンの爪がヒポグリフォモンの身体を大きく切り裂く。
「そこまでだ」
クラウディアがストップをかける。
明らかに致命的な一撃だったのだろう。
このまま続ければ命に係わる。
「そ、そんな………」
「俺が………負けた………?」
中島さんと山口はショックを受けた様な表情になる。
まあ、あんな戦い方では、幾度もの戦闘を乗り越えてきたエミリア達には勝てないだろう。
審判も、困惑しながら勝利宣言をしようとした。
その瞬間、天から光が降り注いできた。
「ッ!? 何だ!?」
その光は2つあり、それぞれヴァーミリモンとヒポグリフォモンに降り注いでいる。
すると、見る見るうちに2体のダメージが消えていき、立ち上がった。
更に、淡い光を纏っている。
次の瞬間、
「「ヴォオオオオオオオオオオオッ!!」」
ヴァーミリモンが猛スピードで駆け出し、ヒポグリフォモンが飛翔しながらワーガルルモンに襲い掛かる。
「何ッ!? うぐあっ!?」
ヴァーミリモンの体当たりを受けたメタルグレイモンは大きく吹き飛ばされ、
「くっ!?」
ヒポグリフォモンの一撃を躱し損ねたワーガルルモンの胸には傷が付く。
「さっきよりもスピードが増してる!?」
いきなり能力の上がった2体に困惑するメタルグレイモンとワーガルルモン。
すると、
「は、ははは! やっぱりだ! やっぱり俺は負ける筈が無いんだ! 俺が勝つと『運命』で決まっているんだ!」
山口が息を吹き返したように調子に乗り始める。
「ヒ、ヒポグリフォモン………?」
対する中島さんは、ヒポグリフォモンの様子に戸惑っている様だ。
「ヴォルケーノストライクS!!」
「ぐうっ!?」
ヴァーミリモンが強烈な火炎弾を放ち、メタルグレイモンは防御するものの少なくないダメージを受ける。
「ヒートウェーブ!!」
「ぐぐぐ………!?」
ヒポグリフォモンが口から高温の熱風を吐き出し、ワーガルルモンが必死にそれに耐えている。
何とか耐えきる者の、メタルグレイモンとワーガルルモンは膝を着く。
「メタルグレイモン!?」
「大丈夫か!? ワーガルルモン!」
エミリアとクラウディアが声を掛ける。
「ああ………まだ大丈夫だ………!」
「だが、何て力だ………!」
「ハハハ! もう諦めたら如何だ? 如何足掻いてもお前達の負けは『運命』で決まっているんだ! この世界の神様も言っているんだろう? 『運命』に身を任せるのが幸せってね」
山口がそう言うと、
「………………『運命』……か………」
クラウディアが目を伏せながら呟く。
「以前の私なら、その様な『運命』でも享受していたのだろうな…………」
そう言いながら目を開けると、
「だが、今は違う……!」
ハッキリとそう言う。
「私はリアやタイシ達から学んだのだ。『運命』を享受するだけが幸せでは無いと………! 『運命』を自ら選び、掴み取る事こそ本当の幸せに繋がるのだと!」
「クラウ………!」
「だから私は諦めない! 負ける事が『運命』だというのなら、その様な『運命』など変えて見せる!」
「その通りです! クラウ! だから私も一緒に戦います! 1人では変えられない『運命』だとしても、2人ならきっと変えられます!」
「リア………!」
「私達は、どんなに苦しくても『運命』に抗う道を選びます! それが、私達の信じる道だから!」
エミリアの言葉に、メタルグレイモンが立ち上がる。
「そうだ。だから僕も戦う………! エミリアの信じる道が、僕の信じる道だから………!」
「ああ………俺も諦めない………! どんな困難な道だろうと、クラウディアと共に乗り越えて見せる……!」
ワーガルルモンも立ち上がって見せた。
「エミリアが………」
「クラウディアが共に居るのなら…………」
「「俺達は負けない!!」」
デジモン達の叫びに、エミリアとクラウディアはデジヴァイスを強く握りしめる。
「メタルグレイモン………!」
「ワーガルルモン………!」
「「一緒に行こう!!」」
同時に叫んだ瞬間、エミリアのデジヴァイスからオレンジ色の光が、クラウディアのデジヴァイスから青い光が溢れ出す。
「これは………」
「この光は………」
その光に呼応する様に、メタルグレイモンは右腕にオレンジ色の光を。
ワーガルルモンは背中に青色の光を纏い出した。
「これは…………新しい『力』………!」
「クラウディアの………『心』が与えてくれた『力』………!」
それぞれが呟くと、
「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」
2体が咆哮を上げ、オレンジ色の光と青色の光が溢れ出す。
すると、メタルグレイモンの右腕が変化し始め、生身だった右腕が機械化。
巨大な剣のような形へと変化した。
ワーガルルモンは背中に8枚の鋼鉄の翼が生み出される。
「何だ!? あの変化は!?」
俺はメタルグレイモンとワーガルルモンの新たな姿に驚愕する。
俺はDアークを取り出すと、2体のデータを表示させる。
「メタルグレイモン:アルタラウスモードとワーガルルモン:サジタリウスモード………! メタルグレイモンとワーガルルモンのモードチェンジか!」
俺が思わず叫んだ瞬間、メタルグレイモンが新しくなった右腕をヴァーミリモンに向ける。
すると、その右腕が中央から展開し、巨大な砲身の様になり、その根元にある砲口にエネルギーが集中し始める。
そして、
「ポジトロンブラスター!!!」
そこから放たれたエネルギー砲がヴァーミリモンに直撃。
そのままリング外まで吹き飛ばし、場外に着弾する。
「ヴァ、ヴァーミリモン………!?」
山口は何が起きたかも理解できていない様な声を漏らす。
そしてワーガルルモンは、鋼鉄の翼の一部が展開すると、そこから青い光の翼が広がり、飛翔した。
それは、ワーガルルモンに進化して失われてしまった俊敏性を補うだけでは飽き足らず、高速飛行をも可能にした追加武装。
空を飛ぶヒポグリフォモンを翻弄するスピードを見せる。
「はぁあああああああああああっ!!」
更に、一番下にある翼が分離して手に収まると、光の双剣となって振るわれる。
「剣にもなるのか!」
俺はさらに驚く。
ヒポグリフォモンは次々とダメージを蓄積されていき、
「うぉおおおおおおおおおおおおっ!!」
鋼鉄の翼がワイヤーによって伸びると、その先からレーザーが放たれた。
「射撃武装まで!?」
ワーガルルモンの欠点を補うその武装に、驚愕を隠し切れない。
ヒポグリフォモンはそのレーザーの集中攻撃を受け、今度こそ撃ち落とされた。
「そ、そこまで! 勝者、クラウディア選手! エミリア選手!」
審判が勝利を宣言する。
呆然となる山口と中島さんを他所に、エミリアとクラウディアがそれぞれのパートナーを労っている。
俺はそれを眺めながら、
「あれが2人の、『運命を変える力』、か…………」
俺の知らない進化を果たした2人に、俺は思わず呟く。
俺はふと空を見上げる。
先程の光は、何となく『神の光』に似ていたような気がする。
相手のデジモン達がパワーアップしたのは、もしかしたら『神』が介入したのだろうか?
だが、それが本当なのだとしたら、2人は自分の力で『運命』を変えたのだ。
そんな2人に益々惹かれている自分に、何度目かも分からない溜息を俺は零すのだった。
オリジナル異世界編第25話です。
ぶっちゃけ詰め込み過ぎました。
でも、早く次が書きたかったので、ちょいと駆け足ですがここまで進めました。
さて皆さんお待ちかねのアップデート。
速過ぎかもしれませんが、このタイミングでしか出すとこなかったんですよ。
何せ次は………
お楽しみに。
P.S すみません、執筆で力尽きたので今回の返信はお休みします。
葵とリュウダモンだけでも早く合流させるべきか?
-
早く合流させるべき。
-
合流する時は嫁全員で。