【Side 三人称】
時は魔物の群れの侵攻時まで遡る。
森から現れた大量の魔物の群れに、フェート村の人々は驚愕し、恐怖しながらも、少しでも生き残る道を探す為に足掻いていた。
とは言うものの、魔物の群れの進軍速度は速く、今から避難しても間に合わない。
以前の盗賊が襲撃してきた時と同じように、女子供や、戦えない老人は教会の中に避難させる。
そして、戦える者達が教会の前で武器を構えた。
だが、今回は以前の盗賊襲撃より規模が違う。
生き残れる可能性は、ほぼゼロに等しい事も、全員が理解していた。
しかし、それでもこの村の者達は、『死の運命』を黙って受け入れるつもりは無かった。
受け入れがたい『運命』には抗う。
その気持ちは、フェート村全員の総意だ。
男達が、緊張した面持ちで武器を構える。
そして……………
轟音と共に木製の柵が破られ、魔物達が雪崩れ込んできた。
一方、教会の中では、外から聞こえてくる戦闘音や掛け声………
そして、魔物達の咆哮や男達の悲鳴に恐怖し、不安に包まれていた。
そんな中、
「おとうさん………」
外で戦っている男の娘だろう少女が、母親に抱きしめられながら、泣きそうな表情で呟く。
先程聞こえてきた悲鳴は、この少女の父親のものだった。
「おとうさん………おとうさん………!」
遂に我慢できなくなり涙をボロボロと零す。
すると、突然母親の手から離れると、教会内に祀られているアルオイスの女神像の前に跪き、
「おねがいです女神様………おとうさん達を助けてください………!」
泣きながら助けを求めた。
「おねがいです………家のおてつだいもちゃんとやります………ワガママもいいません…………ですから、今だけでいいのでたすけてください………!」
少女は必死に願いを口にする。
すると、初老の男性がその少女に歩み寄った。
それは、この教会の神父だ。
神父は、その少女の横に並びながら跪くと、
「この女神様は、縋っても何もしてはくださらない………何故なら、人は自分自身の力で『運命』を切り開ける可能性があると知っているからだ…………」
「神父さま……………」
少女は愚図りながら神父を見上げる。
「……………ですが祈りましょう。神に縋るのではなく、純粋に、私達の願いを伝えましょう。戦えない我々に出来る事は、祈る事だけ。ならば、祈る事に全力を注ぎましょう」
そう言いながら手を胸の前で組み、祈りを捧げる仕草をする。
その少女も、それに習って手を組んで祈りを捧げる。
すると、それを見た教会内にいた人々が、次々と2人に続き、跪いて女神像に祈りを捧げ始める。
「おねがいです、女神さま……………アルオイスさま…………!」
人々は、アルオイスの像に向かって、一心に祈り続けた。
【Side Out】
【Side 葵】
大士が召喚されて数ヶ月が過ぎた。
南雲君と、回復した優花の尽力もあって、何とか大士が召喚された世界を特定する所までは出来た。
だけどその世界は、神の力が膜の様に世界を覆っていて、『外』の世界からは干渉できない様になっていた。
南雲君達が試行錯誤を繰り返して、何とかその『世界』に行く方法を模索しているけど、結果は著しくない。
そして今回も…………
「チッ! これでもダメか………!」
南雲君が吐き捨てるようにそう言った。
目の前には、優花やユエと一緒に作り出した、空間ゲートが広がっている。
だけど、入り口を開く事が出来ても、世界を覆う『膜』を通り抜ける方法が見つからない。
その言葉に、私は内心落胆する。
南雲君達が必死に頑張ってくれてることは分かってる。
だけど、一刻も早く大士に会いたい私達にとって、その言葉は死刑宣告に近い。
南雲君達は、次の方法を考えようと、ゲートを閉じようとして………
―――おねがいです女神様………おとうさん達を助けてください………!
小さな願いが、『
「えっ?」
―――おねがいです………家のおてつだいもちゃんとやります………ワガママもいいません…………ですから、今だけでいいのでたすけてください………!
また聞こえる。
「待って!!」
ゲートを閉じようとした南雲君達を反射的に止める。
「ッ? どうした?」
南雲君が怪訝な声を漏らすけど、私はその『声』に耳を傾ける。
―――おねがいです、女神さま……………アルオイスさま…………!
「やっぱり………! 『
私が呟くと、別の『声』が混じり始める。
―――後生です、アルオイス様。夫をお助け下さい。
―――お兄ちゃんを助けて!
―――我が子をお守りください………!
その『声』はあまり多くない。
だけど、確かに『
「世界を越える…………思い…………」
その世界への空間ゲートを開いているから、と言う理由が大きいのは分かってる。
だけど、このタイミングで『
「今なら………行けるかも…………!」
『
私の力でその『声』を辿れば、あの世界に行けるかもしれない。
「本当なの!?」
優花がものすごい勢いで食い付いてきた。
「うん………だけど、その『道』はほんの僅かなもの。行けるとしても、私と、私が抱えられる位の大きさの………リュウダモンが限界だと思う」
正直、私だけが大士に会いに行くのは、優花やシャルロット、カトレアさん、テファに悪い気がする。
私がそう思っていると、
「だったら何やってるのよ!? 早く行きなさい!」
優花が強い口調でそう言って来た。
「優花………でも………」
「私達に遠慮してるって言うならお門違いよ! あの世界には大士が居る! あの世界に行くためには、あの世界を覆っている『神の力』を何とかしなきゃいけない! その神を何とかする為に必要な適任者が、葵以外に誰が居るの!?」
優花はそう言ってくる。
でも、自惚れるつもりは無いけど、『神』が関わっているなら、私以上の適任者は居ないと思う。
「……………うん、わかったよ!」
私は頷く。
「先に大士に会いに行くね!」
「ええ。頼むわよ!」
優花の言葉に頷き、私は一緒にいたシャルロット達に向き直る。
「そう言う事だから、私は行くね!」
その言葉に、
「タイシをお願い………!」
「旦那様を頼みます………」
「気を付けてください……!」
シャルロット、カトレアさん、テファからそれぞれ言葉を贈られる。
その言葉に私は微笑むと、
「それじゃあ、いきなりだけど………リュウダモン。準備はいい?」
「元よりそのつもり! 心配無用!」
リュウダモンの言葉に私は微笑むと、リュウダモンを抱え上げる。
そして、女神の姿になると、
「行くよ!」
勢いをつけて空間ゲートに飛び込んだ。
空間ゲートに飛び込んだ直後、物凄い抵抗が私を襲う。
「んんんっ………!」
だけど、私はその抵抗に耐えつつ、
使える『神力』をギリギリまで使い、蜘蛛の糸を辿る様に僅かな導を頼りにその『世界』へと近付く。
「こんっ………のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
私は気合を入れて『膜』の僅かな綻びを見つけて突破。
抵抗がなくなり、勢い良くその『世界』に飛び込んだ。
そして次の瞬間、
「わったったったぁ~~~~~~っ!?」
「ぬおっ!?」
視界が開け、勢い余った私は、リュウダモンと一緒にその場に倒れ込んだ。
「いったぁ~~~~っ………! でも、何とか成功したかな………?」
身を起こしながら、辺りを確認すると、
「……………………女神さま?」
小さな女の子が、呆けた表情で私を見ていた。
「へっ?」
私は思わず声を漏らす。
見れば、女の子の後ろの方にも、何人もの人々が、驚愕したような表情で私を見ていた。
ふと後ろを見れば、そこには、
「………………………」
私は、チラッと人々を伺う。
これは………ここで私がアルオイス本人だと言うと、大騒ぎになるのは間違いないかな………?
世界を越える時に、神力を使い果たしたから、今は人間の姿になっている。
「…………女神さまなんですか?」
少女が再び問いかけてくる。
「え~っと…………私はアルオイスとは関係な……くは無いけど、私は人間だよ。名前は神代 葵! こっちは私のパートナーのリュウダモン!」
嘘をつかないレベルでそう名乗った。
今の私は確かに『人間』だし!
その時だった。
轟音と共に、この建物の出入り口らしき扉が破壊される。
「「ッ!?」」
私とリュウダモンが瞬時に身構えると、その扉の向こうから、豚顔の魔物が現れた。
この世界にも魔物は居るんだね。
そう思っていると、
「ブヒャッヒャッヒャッヒャッ!!」
まるで嘲笑うかのような鳴き声を上げると、手に持っていた剣を掲げた。
そこには、
「お、おとうさん………」
さっきの少女が震えながら呟いた。
「おとうさん…………!」
「あなた………!?」
その女の子と母親らしき女性が、悲痛な声を上げる。
その剣には、1人の男性が胴を貫かれて串刺しにされていた。
ピクリとも動かない所を見ると、もう死んでいると判断できた。
だけど、
「おとうさん…………!!」
その少女が涙を流す。
「ブヒャヒャヒャヒャッ!!」
そんな少女の反応を見て、気を良くしたように豚顔の魔物がその死体を弄ぶように振り回し始める。
「やめてっ! おとうさんをそれ以上傷付けないで………!!」
懇願するように叫ぶ少女。
豚顔の魔物は、ニマニマと笑うように表情を歪める。
それを見た私は、頭に来た。
「ッ!」
〝宝物庫〟から右手に刀を取り出し、一気に飛び出す。
串刺しにした男性の身体を貫いていた剣を持つ右手を、二の腕辺りから斬り落とし、男性の亡骸を抱えると、飛び退いた。
魔物からは、突然私の姿が消えた様に見えたのか、一瞬呆けていたけど、暫くして右腕を切り落とされていた事に気付き、
「プギャーーーーーーーーーッ!?!?」
悲鳴のような鳴き声を上げた。
私は男性の亡骸から剣を引き抜くと、
「はっ!!」
魔物に向かってその剣を投げ付けた。
投術師の天職を持つ優花のような威力は出ないけど、その剣は豚顔の魔物の胴体を貫き、串刺しにしながら後方に吹っ飛んだ。
因みに胴体を狙ったのはワザと。
この人の痛みを少しでも返せたらと思ってやった。
「おとうさん………」
「あなた………」
この男性の妻と娘だろう2人がその亡骸に縋り付く。
私はそれを見て、
「………大丈夫」
そう声を掛けた。
「えっ………?」
女の子が涙を浮かべながら私を見上げる。
私は、その男性の亡骸に手を翳し、〝魂魄魔法〟と〝再生魔法〟を発動させた。
その男性の身体が光に包まれ、傷が瞬く間に消えていく。
その光が消えると、
「………うっ………私は………?」
その男性が息を吹き返した。
「おとうさん!」
「あなた!」
2人は勢いよく男性に抱き着いた。
その様子を見て、私は微笑みを浮かべる。
すると、
「お、おおっ…………死者が甦るとは…………! まさしく神の奇跡だ………!」
神父さんらしき恰好をした初老の男性が、感嘆の声を漏らした。
「いえ、ただの神代魔法の力です」
私はそう訂正する。
その時、外からはまだ争いの声が聞こえてきた。
「………一先ず、この騒ぎをどうにかするのが先決みたいだね。話は後で。行くよ! リュウダモン!」
「承知!」
私達はその建物を飛び出す。
私達がいた建物は小さな教会で、この場所も小さな村みたい。
でも、その小さな村に、オーバーキルにも程があるほどの魔物の大群が攻め込んでいる。
男の人達が懸命に応戦してるけど、多勢に無勢。
既に半分ぐらいの人数が脱落………魔物に殺されている。
「ッ………! まだ間に合う!」
それでも見た限り殺されてから時間は経っていない。
まだ蘇生は可能なはず!
私はもう一本の刀を左手に持つと、
「リュウダモンはここで魔物達の侵入を防いで!」
「任せよ!」
リュウダモンにこの場を頼むと、一気に駆け出した。
「はぁあああああああああああああああああっ!!」
私は魔物達をすれ違い様に切り裂き、同時に〝魂魄魔法〟と〝再生魔法〟で、斃れた人達の蘇生と治療を行っていく。
「居合刃!」
リュウダモンも、教会に近付く魔物を放った刃で切り裂く。
短時間で村の敷地内に入って来た魔物を倒し終えると、
「き、君は一体………?」
戦っていた男性の1人が呆けながら私に問いかけてくる。
「ただの通りすがりです」
私はそう言って笑い掛ける。
だけど、
「魔物が来るぞぉーーーっ!!」
村人の1人が叫ぶ。
村の外から、さっきまでいた魔物達より、更に多い魔物達が迫ってきていた。
「う~ん…………あれだけの数を普通に倒そうとすると、面倒くさいなぁ………」
私としては、早く大士を探しに行きたいんだけど………
だから私は、
「リュウダモン! サクッと終わらせるよ!」
「心得た!」
私の言葉に、リュウダモンは頼もしく応え、私はDアークを掲げた。
―――MATRIX
EVOLUTION―――
Dアークの画面にその文字が刻まれる。
「マトリックスエボリューション!!」
私が自分の胸にDアークを押し当てると、私の身体がデータ化。
リュウダモンと1つになる。
「リュウダモン進化!」
リュウダモンの腕が分解され、大刀を持つ腕として再構築される。
リュウダモンの足が分解され、鋭い爪を持つ足として再構築される。
リュウダモンの胴が分解され、長大な尾を持つ龍の身体として再構築される。
リュウダモンの頭部が分解され、私と共に1つとなった眼で前を見据える、和風の兜を被った龍の頭部として再構築される。
それは、威風堂々とした和風の鎧を身にまとい、両腕に刀を持つ武者竜。
「オウリュウモン!!」
オウリュウモンとなった私達は、空へと舞い上がり、
「永世竜王刃!!」
空中から斬撃を飛ばす。
もちろん、村に被害が及ばない様に手加減して。
それでも、轟音と共に大地を大きく吹き飛ばし、その周辺にいた魔物達が巻き込まれ、消し飛んでいく。
「はぁあああああああああああああああっ!」
やがて、本能的に敵わないと魔物達は悟ったのか、この村を避けながら何処かへ行ってしまった。
『終わったかな?』
私はそう呟く。
「どうやらその様だ……………ところで葵、今更なのだが………」
オウリュウモンが歯切れ悪く言葉を濁す。
『如何したの? オウリュウモン』
「この村は農村の様なのだが、某達が吹き飛ばした所は、この村の畑だったのではないだろうか?」
『……………………あ』
私は思わず声を漏らす。
村の周りは、見るも無残にクレーターだらけだった。
いや、やったのは
私は、サーッと血の気が引く様な感覚を覚えた。
すると、村人たちが様子を伺うように私達の周りに集まって来る。
だから私は、
「え、えっと………ごめんなさい! 畑を滅茶苦茶にしてしまいました!」
思いっきり頭を下げた。
その行動に、村人たちはポカンとした表情をして、
「い、いや………それはいい………とは言えないが、あのままだったらこの村は間違いなく全滅していた。謝る必要は無いよ。今年の収穫もほぼ終わっているから、冬は越せる。来年は少し厳しいだろうが、何とかするさ」
私はその言葉を聞くと、
「あっ! そ、それなら数日待ってください! 数日もあれば、魔力が回復して〝再生魔法〟で元通りに出来ますから!」
今は先程までの戦いと蘇生で、魔力を多く消費してしまっている。
これだけの範囲を元通りにするためには、魔力が万全の状態じゃないと無理だ。
『神力』も世界を越える時に使い切ってるから、こちらも回復には時間が要る。
結局私は、早く大士を探しに行きたくてやり過ぎた結果、逆に足止めを受ける事になってしまった。
それから数日。
私は、ロウさんとルンさんという夫婦の家にお世話になっていた。
2人には息子がいて、王都にあるデジタルナイト養成学院という所に通っているという。
ここ数日で話を聞いた所、この世界にもデジモンが存在し、デジタルナイトと言うのは所謂テイマー兼騎士のような職業みたい。
ここ数日で、私は女神の使徒という立場が定着していた。
まあ、教会にある
その
正確には転生体だけど。
それからようやく魔力が回復してきて、明日ぐらいに辺りを元通りに出来るかと思っていたこの日。
教会でリュウダモンと一緒に子供達と遊んでいると、突然外が騒がしくなった。
教会の入り口から見える外の様子は、村人たちが慌てた様に駆け回っていた。
私は、また魔物でも攻めてきたのかなと、教会から出てみると、村の入り口の前に灰銀の巨大な獣竜が着地する所だった。
「あれは………! ドルゴラモン!?」
リュウダモンが驚愕の声を上げる。
その言葉と同時、もしくは僅かに早く私は駆け出していた。
私はドルゴラモンが降り立った村の入り口に向かって駆ける。
集まっていた村人たちの隙間を掻い潜り、視界が開けた瞬間、ずっと求めて止まなかった姿が飛び込んできた。
「ッ…………!」
その瞬間、何時だったかと同じように、『彼』を求める気持ちが溢れかえり、心の箍が外れてしまった。
「大士っ!!!」
そのままの勢いで『彼』………大士に飛び掛かり、押し倒す。
そして、本能のままに大士に自分の唇を押し付けた。
「へぁっ!?」
「なっ……!?」
「んなっ!?」
「ッ!?」
周りから何か声が聞こえたみたいだけど、そんなのは私の耳には入らない。
何故なら、あの日から欠けていた『私』という存在を構成する大事なピースが、やっと元通りに収まった感覚に酔いしれていたから。
「ん~~~~~~~~~っ♪」
「んぐっ……………!」
私は本能の赴くままに、大士の唇を貪り続けた。
【Side Out】
「ん~~~~~~~~~っ♪」
「んぐっ……………!」
何時だったかと同じように、俺は押し倒されて唇を奪われていた。
だが、俺は抗うつもりは無かった。
何故なら、彼女は、俺の『特別』で『大切』な存在だったから。
何故ここに居るのかと言う疑問も過るが、そんな事はここに『葵が居る』という現実の前には些細な事。
葵は、今まで離れ離れだった分を補うかのように、俺の唇に自分の唇を押し当て続けている。
そしてそれは、俺も一緒だった。
今まで求めて止まなかったものが、目の前に居る。
その幸福をしっかりと確かめようと、彼女を抱きしめる為に手を伸ばそうとして………
「………って! いきなり何やってるのよ、あんたはぁぁぁぁぁぁっ!?!?」
アリスが叫びながら葵を引き離そうとその肩に手を掛けた。
だが、
「って、力強っ!?」
一心不乱に俺を求め続ける葵の力の前に、アリスの力では引き離す事は出来ない。
それでも、その声で幾分頭が冷えた俺は、現状を思い出して葵の肩を支えると、
「っと…………!」
身体を起こしながら、ゆっくりと唇を離す。
「あっ…………!」
葵は寂しそうに声を漏らした。
俺は、心配ないと葵を軽く抱きしめ、ポンポンと頭を撫でる。
その行動に、葵は笑みを浮かべて嬉しそうにはにかんだ。
「……………さて」
俺は周りを見渡す。
やはりと言うべきか、驚愕と呆気と嫉妬の視線が俺達に向いていた。
如何説明するか悩んだ俺は、
「……………とりあえず、聞きたいことがあれば答えるぞ?」
皆に質問を促す事にした。
すると、皆が気を取り直し、
「とりあえず…………その女は誰よ!?」
アリスが葵を指差しながら叫ぶ。
「あ~、彼女は神代 葵。俺の………恋人だ」
「「「「ッ!?」」」」
質問に答えた俺に、アリス、エリス、クラウディア、エミリアの4人が僅かに声を漏らした。
「そ、その人が話に聞いたタイシさんの恋人…………!」
エミリアが驚愕と、僅かに畏れが混じった表情で呟いた。
「神代 葵だよ!」
調子を取り戻した葵がいつもの様に名乗る。
すると、
「大士!」
遅れてやって来た小さな影が、俺の名を呼んだ。
「リュウダモン!」
俺もその小さな影、リュウダモンの名を呼ぶ。
「無事だったようだな」
リュウダモンはそう言って安堵の表情を見せる。
すると、ドルゴラモンが光に包まれて小さくなっていくと、ドルモンに戻り、
「リュウダモン! 久しぶり!」
「ドルモンも無事で何よりだ」
そう言葉を交わした。
「あ、こっちはリュウダモン。私のパートナーだよ」
葵がリュウダモンを紹介する。
「某はリュウダモンだ」
リュウダモンもそう名乗る。
「……………何故、異世界の人間である筈のお前の恋人がこの世界にいる?」
クラウディアが続けて疑問を投げかける。
「そりゃあ大士の為だったら世界の壁の1つや2つ越えてみせるよ!」
葵はそう答えた。
「………まあ、神代魔法には世界の壁も越えられる魔法がある。その魔法が使える仲間の協力でこっちに来たんだと思うぞ」
俺がそう補足した。
すると、
「…………………タイシを……………連れ帰りに来たの……………?」
エリスが静かに、だが、何処か悲壮感の混じった声でそう問いかけた。
「ッ………………」
その言葉に、俺は息を呑んだ。
葵がこの世界に来たという事は、つまりそう言う事なんだろう。
俺がそう思っていると、
「あ~、それがね、そう簡単な話でも無いんだ」
その問いに、葵があっけらかんと答えた。
「えっ?」
「私とリュウダモンがこの世界に来れたのは、私しか使えない裏技で、しかも一方通行の方法なの。だから、現状では私も帰る方法が無いね」
「帰れる保証が無いのに来たのか!?」
俺は思わず問い返した。
「もちろん! 大士の傍にいられるなら、帰れなくたって構わないよ! とは言っても、優花やシャルロット、カトレアさんやテファに悪いから、帰る方法は全力で探すけどね」
葵は迷わずにそう言う。
その言葉に、俺は思わず嬉しさが込み上げた。
すると、
「…………………ッ」
エミリアが何処かそわそわしていた。
「リア………? どうかしたのか?」
それに気付いたクラウディアが問いかけると、
「あ、あの………クラウ達はその人………その方と話していて、平気なんですか………?」
エミリアは葵に対して怯え………いや、畏れを抱いていた。
「………? どういうことだ?」
クラウディアが意味を計りかねて首を傾げる。
「い、いえ………何でか分かりませんが、その方を見てると、畏まらなきゃいけない気がして…………まるで国王陛下や、それ以上の立場に立つお方のような気がして…………」
エミリアは自分でもわかっていなさそうに言葉を濁す。
俺はふと、このエミリアの反応と似た反応をした人物が居た事を思い出した。
すると、
「へぇ…………あなた、カトレアさん並みの巫女や聖女の資質を持ってるんだね………」
葵がエミリアを見ながら感心したように呟く。
「やっぱりそうなのか?」
「うん。これだけの資質を持つ人は、滅多に居ない筈なんだけど………」
既にカトレアと言う前例が居るからな。
「まあ、今は気にしなくてもいいよ。私は大士と同じでただの異世界の人間。畏まる必要なんて、ちっともないからさ!」
葵がエミリアに向かってそう言う。
「は、はい…………」
エミリアはまだ緊張してるようだが。
「改めて、私は神代 葵! あなた達の名前を教えてくれるかな?」
葵は俺と一緒にいた皆に問いかける。
「わ、私はエミリアと言います!」
「クラウディア・アルファ・フォン・フォルダだ」
「アリスよ」
「エリス………」
「俺はカイル!」
「わたくしは、リティナ・オメガ・フォン・サーバーと申します」
それぞれが名乗ると、
「エミリアにクラウディアにアリスにエリス。それとカイル君にリティナちゃんだね!」
葵がそれぞれの名を復唱する。
だが、何故カイルとリティナ王女だけは呼び捨てじゃないんだ?
すると、
「ところで大士?」
葵が俺に向き直って問いかけてきた。
「何だ?」
俺が聞き返すと、
「この中で側室候補は何人?」
「ゴフッ!?」
「「「「ッ!?」」」」
その言葉に俺は吹き出し、他の4人も息を呑むのが聞こえた。
「何でいきなりそんな話になる!?」
俺が言い返すと、
「私の見立てでは4人かな? エミリアにクラウディアにアリスとエリス。違う?」
その言葉に名前を呼ばれた4人は顔を真っ赤にして、俺は的確過ぎる葵の指摘に何も言えなくなる。
「………………………………合ってる」
そこまで確信を持たれていれば、肯定するしかない。
「私としては、大士が本気で好きになったのなら、特に言う事は無いんだけど………」
「「「「ッ!?」」」」
その言葉に4人は強く反応した。
「ちょ、ちょっと! アンタはそれでいいの!?」
アリスが問い掛ける。
まあ、当然の反応だろう。
「良いも何も、既に恋人が私含めて5人居るしね~」
「「「「5人!?」」」」
4人が一斉に驚く。
「あれ? 知らなかったの?」
葵が俺に視線を向ける。
「言えるか、そんな事………」
俺は溜息を吐く。
「ふ~ん。まあ、その中でも、私が一応『正妻』って立場になってるから、大士の恋人になりたいっていうのなら、ある程度の決定権は持ってるよ」
葵の言葉に、俺は軽く息を吐きつつ皆を見た。
「…………軽蔑したろ?」
俺はそう問う。
「今言った通り、俺は葵以外にも恋人を4人も持つ女誑しと言っていい。その上で更にお前達を好きになっているんだ。最低な男だと自覚はしてるよ」
「まあ、その程度で揺らぐ程度の気持ちしか持ってないなら、大士の恋人として認める訳は無いけどね~」
俺の言葉に続いて、葵がまるで煽るような口調でそう言う。
「大士の恋人になる最低条件としては、この世界を捨ててでも大士に付いてくる位に大士を好きな事。『この世界にいる間だけでも』って程度なら、悪いけど認めない」
「ッ…………!」
誰かが声を漏らした。
すると、
「……………………」
エリスが歩み出てきた。
そして、
「私を………タイシの恋人にして欲しい………」
そう口にした。
「へぇ…………」
「エリス…………!?」
葵が声を漏らし、アリスが驚愕する。
「叶わないと思ってた………でも、許されるなら、私はこれからもずっと、タイシと一緒に居たい…………!」
葵はエリスをジッと見つめると、
「なるほど………でもね、あなたが好きになった大士は、大士のほんの一部かもしれないよ」
「……………」
「大士のいい所だけを見て好きになっても、理想と違う所があれば、そこから幻滅していくんじゃないかな?」
「……………どうやって証明すればいい?」
「この程度じゃ揺らがないか…………」
葵は軽く息を吐くと、
「なら、後で私の所に来てもらおうかな? じっくりと話し合いたいし」
「わかった………」
エリスは即頷く。
そこで話を終えようとして、
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
アリスが叫ぶ。
「何かな?」
葵が聞き返すと、
「わ、私も………私もタイシの恋人にしなさい!」
アリスが顔を真っ赤にしてそう叫んだ。
序に魔眼が発動していて、目が金色に輝いている。
「アリス………だったよね?」
「そうよ! 私はアリス! エリスの双子の姉よ!」
葵はアリスの魔眼を見ても平然としている事から、アリスの魔眼は〝魂魄魔法〟に類するのか、もしくは葵の魔力量が上回っている所為なのか?
「あなたも大士の恋人になるの?」
「そ、そうよ! 悪い!?」
アリスは照れまくっているのか、声が荒い。
そんなアリスを見て、葵は笑みを浮かべる。
「ふふっ、可愛いなぁ………じゃあ、エリスと一緒にまた後で話そっか」
葵はエリスの時よりもスムーズにアリスの事を認めた。
アリスは感情がよくわかる性格だからな。
照れ隠しに声を荒げているのが丸わかりだったからだろう。
そんな彼女達を見て、エミリアとクラウディアは複雑そうな表情を浮かべていた。
その後、落ち着いて話すために場所を変え、葵がこの村で何をしていたのか話を聞くと、葵がこの世界に来たら偶々この村の教会で、魔物に襲われていたのでそれを葵とリュウダモンで殲滅したらしい。
因みに外のクレーターも葵とリュウダモンがはっちゃけた結果らしい。
それでも、
「ありがとう! この村を………! 父さんと母さんを助けてくれて、本当にありがとう!」
「ありがとうございます!」
カイルとエミリアは深く感謝した。
それから更に話を聞くと、この世界は神の力によって膜のような物に覆われており、外界からの干渉をシャットアウトする様になっていたようだ。
例外として、その『神』自身による召喚なら移動は可能らしい。
「『神』の力ですか…………この世界において、もっとも広く信仰されているのは、デニティス教ですが…………」
リティナ王女がそう呟いた。
すると、
「デニティス………? もしかして、運命神のデニティスの事…………?」
葵が思い当たりがあるような口調で問い返した。
「え? ええ………デニティス神は、運命を司る神と言われています。その教えが、『汝、運命の流れに身を委ねよ。運命のままに進む道こそ汝の一番の幸福なり』というものだったのですが………」
リティナ王女が言葉を濁す。
リティナ王女も今となっては『運命』は自分の手で掴み取るものと信じているからな。
「あ~~~、ある意味デニティスらしい教えだね~」
その教えを聞くと、葵は少し呆れた様に声を漏らした。
「知ってるのか?」
俺が聞くと、
「あ~~、うん………」
葵は歯切れ悪く頷く。
「デニティスは、運命神の中でも筆頭の『サボり神』なんだよね~」
「はい?」
葵の言葉に俺は素っ頓狂な声を漏らす。
「天界の仕事をほっといて、下界にしょっちゅう遊びに行っちゃうような神だよ。私が何度尻拭いしたと思って…………」
最後の方で少し愚痴が漏れたな。
「サボりって…………デニティス神は、世界の人達に知られてるぐらい有名で、良く姿を現して人々を導いてるって…………」
カイルがそう言うと、
「えっとね…………基本的に名が知られている神っていうのは、大体自分の仕事をサボって下界に来た神なの。本来は天界で自分の役目を果たさなきゃいけないのに、それをせずに下界に姿を現してたって事。それに本来、神は下界の人間達への干渉は禁じられてるはずなんだよね…………」
呆れた口調でそう言う。
「それに、デニティスの教えの、運命に逆らうなって所も、自分の仕事を少なくするための自分勝手な教えだね。運命を変えると、それに合わせて運命神の仕事も増えるから」
それなのに、運命を変える事を是としている
その言葉を聞いて、一同はポカーンとしている。
「……………随分と、『神』にお詳しいんですね?」
エミリアがそう問いかける。
「えっ? あ。あはは………他の人よりはね」
少し調子に乗って話過ぎたのに気付いたのか、葵は話をはぐらかした。
「とりあえず、私はこれから大士と一緒に行動して、デニティスについて調べていくからよろしくね!」
葵はそう言う。
そうなると、
「クラウディア。悪いがフォルダ公爵にお願いして、葵の学院への編入手続きを頼む」
「まあ、その位はお安い御用だ」
クラウディアはすぐに頷いてくれた。
だが、その目は少し寂しそうに見えた。
それはエミリアも同じだ。
アリスとエリスは既に家族とは縁を切っており、この世界に対する未練が殆ど無いんだろう。
だからすぐに俺と一緒に付いてくると決心できた。
だが、この2人には家族がいる。
その家族を捨てる事は、簡単には行かないだろう。
俺の本音を言えば、是非とも一緒に来て欲しい。
だが、それでも決めるのは彼女達自身だ。
もし俺が選ばれなかったとしても、彼女達が決めた道に口は出さない。
そう思っている。
その夜、俺は葵に頼まれて村の広場にテントを張っていた。
葵は何も言わなかったが、何の為かは、まあ、お察しだ。
正直な所を言えば、我慢するのも辛かった。
アリスにエリス、クラウディアにエミリアと、魅力的な女の子が周りにいて、否応無しに意識してしまうのに、それを発散する術が無い。
前世の俺は、よくもまあ死ぬまで致さずにいられたものだ。
俺はテントを用意すると、寝室で葵を待つことにする。
にしても、ホントベッドがデカいな。
それから暫くして、
「お待たせ~」
明るい声で葵が寝室に入って来た。
「ああ…………」
俺はその声に振り向き………
「なっ!?」
思わず固まった。
何故なら、
「………な、何よ………?」
「…………………ッ」
そこに居たのは葵だけではなく、アリスとエリスも居た。
しかもそれだけではなく、アリスとエリスの恰好が、下着姿と言う何とも刺激的な格好だったからだ。
アリスもエリスも美少女で、しかもスタイルも良いため、俺の目が勝手にそっちに向いてしまう。
2人は恥ずかしそうに顔を赤くしながら胸を隠す様に腕を抱きしめているが、それがまた扇情的で興奮する。
「…………って、葵! これは何だ………!?」
「何って………大士に抱いてもらうため?」
「いや、確かに恋人になる話は出たが、いきなりすぎるだろ!? しっかりと話すんじゃなかったのか!?」
「え? だって、大士が一番豹変するのってエッチな時だよね?」
「ゴフッ!?」
………………タガが外れてやり過ぎる時もある事は否定できないが…………
「だから手っ取り早く大士の事を分かって貰うには、抱かれるのが一番って事」
付き合う為の段階を10歩ぐらいすっ飛ばしてる気がするのは気の所為か!?
俺はもう一度アリスとエリスを見る。
「………………………………」
「な、何よ………? 私達に魅力が無いって言いたいの?」
「いや、そんな事は無い。思わず見惚れてしまう位には綺麗だ」
「「ッ!?」」
俺の言葉に2人は更に顔を真っ赤にする。
「そ、そう思うなら抱いてよ…………覚悟はできてるから………」
「………タイシに抱かれたい…………」
アリスとエリスは純粋にそう願う。
2人がそこまで覚悟しているなら、これ以上迷うのは野暮というものだろう。
俺も覚悟を決めて、2人に歩み寄る。
俺は並び立つ2人に左右それぞれの手を伸ばし、頬に添える。
「アリス、エリス………2人とも、愛してるぞ………」
俺は自分の気持ちを口にした。
「ッ…………やっと言ってくれたわね………! 遅いわよ………!」
「ッ……嬉しい………!」
それぞれの言葉で喜びを表現する。
そのまま俺達の影が近付いていき…………
そして一つとなった。
翌日、4人揃って寝不足になったのはお約束である。
オリジナル異世界編第28話です。
今回は葵の合流までの流れが明らかになりました。
そして何故か、アリスとエリスが一気にゴールイン!
エミリアとクラウディアはまだですね。
何気に葵が大士よりも早く究極体をお披露目していた事が明らかに。
村人たちは、一体何が起きたのかあんまり把握して無いです。
さて、次回はどうなるのか?
お楽しみに。
新しいヒロインを増やしていいですか?
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ここまで来たならどこまでもやってしまえ!
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女帝サキュバスのみ
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狐耳尻尾未亡人娘付きのみ
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流石にこれ以上は自重しましょう