ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

20 / 298
第19話 ブルックからフューレンへ

 

 

ミレディによって水に流された俺達は水路の中を水の流れに乗って移動していた。

俺と葵は白崎さんの聖絶によって守られているので大丈夫だが、所々引っかかりながら流されているので、個人で流されているハジメ達とは大分距離が離されていた。

ふと見れば、シー◯ンに似た人面魚が泳いでいたのを一瞬目撃してしまった。

そのまま引っかかりながら先に流されていくとやがて、横の流れから上に向かって流れが変わり、そのまま勢いよく空中に放り出された。

近くにブルックの街が見えたので、ここはブルックの街の近くにある泉らしい。

そのまま泉に着水した俺達が目撃したのは、地面に寝そべるシアに口付けするハジメの姿だった。

よく見れば心臓マッサージと交互に行っているので人工呼吸だという事に俺は気付いたのだが、次の瞬間、蘇生したシアがそのままハジメの首に手を回して更に唇を押し付け、舌まで差し込み始めた。

焦ったハジメがシアの頭を掴んでそのまま泉に放り投げて俺達の横に水飛沫を上げながら着水したのだが、俺の横に居た白崎さんの背後に般若のスタ◯ドが浮かび上がっていた。

白崎さんはシアをスルーしてハジメに歩み寄ると、

 

「ハジメ君…………? シアに何してたのかな? かな?」

 

ゴゴゴと地鳴りが鳴りそうな雰囲気で白崎さんが問いかける。

 

「お、落ち着け香織!? 今のは人工呼吸で………!」

 

「ふ~ん………ハジメ君は人工呼吸で舌まで入れちゃうんだ……………!」

 

「ま、待て! あれはシアが無理矢理…………!?」

 

しかし、白崎さんはプルプルと震え、

 

「ハジメ君のバカーーーーーーーーーーッ!!」

 

「アーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

白崎さんの叫びと共に『纏雷』の雷鳴が鳴り響き、ハジメの悲鳴が響いた。

 

「……………因みに聞くが、何で優花がやらなかったんだ?」

 

俺はすぐ近くに居た優花に訊ねる。

 

「え? だって、女同士とは言え、もう大士以外に唇を許すつもりは無いし?」

 

優花はあっけらかんとそう言うが、

 

「…………………本音は?」

 

それが建前である事に俺は気付いている。

すると、ニッコリと笑って、

 

「頑張ったシアへのご褒美って所かな?」

 

「なるほど…………」

 

人工呼吸とは言え、ハジメの口付けは確かにシアにとってご褒美だろう。

俺はそう納得した。

 

 

 

 

 

その後、何だかんだで以前に泊まったマサカの宿に到着すると、

 

「9名1泊。風呂も付けてくれ」

 

宿娘にそう言うハジメ。

 

「この前のお客様!? そのお姿は一体!?」

 

宿娘が驚くのも無理はないだろう。

一行の大半がずぶ濡れ。

しかも内一人は黒焦げなのだ。

 

「まあ、色々あってな………出来ればすぐ風呂に入りたい。空いてるか?」

 

「は、はい! 今の時間帯なら貸し切りでご利用いただけます! 15分100ルタですが、何分ご利用ですか?」

 

「んー………そうだな………」

 

宿娘の言葉にハジメは少し考え、

 

「3時間だ」

 

「さ、3時間もっ………!?」

 

ハジメの言った言葉に宿娘が驚く。

 

「そんなに使って何する気ですかっ!?」

 

「いや、普通に風呂に入るだけなんだが………」

 

「そんなはずありません! この前の大部屋に泊まった時だってきっとすごいプレイを………痛い!」

 

その瞬間、母親に拳骨を落とされる宿娘。

 

「すみません、そう言う年頃でして………どうぞゆっくりなさってください」

 

「お、おう………」

 

そのまま引き摺られていく宿娘を見て、ハジメは若干引いた声を漏らした。

 

 

 

 

因みにハジメが3時間も時間を取った理由として、全員が一緒に入るわけにはいかないので、それぞれ男女でゆっくり入れるようにそれだけ時間を取ったわけだが、それぞれに何があったかはご想像にお任せしよう。

ハジメが考えていた、男女別にならなかった事だけは記しておく。

 

 

 

 

 

翌日。

再びブルックの冒険者ギルドを尋ねた俺達を、あの『キャサリン』というおばちゃんが出迎えた。

 

「おや、いつぞやの坊や達じゃないか。今日はどんな用だい?」

 

「グリューエン大火山の迷宮へ行きたい。何か情報を持ってないかと思ってな」

 

「はいはい、ちょっと待ちな」

 

おばちゃんは資料を取り出すと捲り始める。

 

「そう言えばこの間、冒険者登録をここでしたよね? とすると、今のランクは青だね」

 

「ああ」

 

「…………あった。待たせたね。大火山の情報だよ。これを見てみな」

 

おばちゃんが資料を見せながらそう言ってくる。

 

「グリューエン大火山は大陸を西に進んだ大砂漠の中にある。迷宮に挑戦するならしっかり準備をする必要があるよ。おすすめは途中の『フューレン』って所に寄ることだね。大陸一の商業都市だから、大体の物は何でもそろうはずさ。今ならフューレンへの護衛の依頼が一件あるね。馬車で移動できるから丁度いいと思うよ。どうするかい?」

 

「んー………乗り物はあるから移動手段には困ってないが…………」

 

ハジメはそう言いながら俺達に振り向く。

その顔は依頼を受けてみたいとウズウズしている顔だ。

性格が変わったとはいえ、根っからのオタクなのは変わらないらしい。

 

「急ぐ旅じゃない…………」

 

「他の冒険者さん達と情報交換できるかもですよ?」

 

「俺もこういう冒険者らしい依頼を受けてみたいと思ってた所だ」

 

俺達は賛成に回る。

 

「そうだな………たまにはいいか。受けさせてもらおう」

 

「あいよ。それじゃそのまま正門へいっとくれ………あ、ちょっと待ちな」

 

おばちゃんが俺達を呼び止め、何かを一筆サラサラと書き始めた。

すると、それに封をして、

 

「あんた達には見込みがありそうだからね」

 

そう言いながらそれを渡してきた。

 

「これは?」

 

「手紙だよ。他の町でギルドと揉めた時はそれを見せな」

 

…………それって、このおばちゃんがギルド全体に対して結構な影響力を持つって事じゃ………?

 

「おっと、詮索は無しだよ? イイ女には秘密が付き物さね☆」

 

おばちゃんが良い笑顔でサムズアップする。

 

「あんた一体何者だよ………」

 

俺と同じ疑問をハジメは口にした。

 

 

 

 

 

 

正門へ行くと、護衛の依頼主である隊商が集まっていた。

すると、責任者らしき男が近付いて来て、

 

「私の名はモットー・ユンケル。この隊商のリーダーをしている。護衛よろしく頼むよ」

 

「あぁ、期待は裏切らないと思うぞ」

 

そう名乗った男とハジメが握手を交わす。

すると、

 

「………早速で悪いが、君に相談がある」

 

モットーはまるで物を見るような目でシアに視線を向けると、

 

「その兎人族………売るつもりは無いかね?」

 

その言葉を聞いた瞬間、こちらのメンバーから非難するような目がモットーに向けられる。

しかし、モットーは慣れているのかどこ吹く風だ。

 

「シアを売る気は無いかだと………?」

 

「ええ。珍しい白髪に美しい容姿の兎人族。これほど美しい商品は初めて見るものでして」

 

『商品』と言った時点で非難の目が一層強くなる。

シアはハジメの後ろに隠れるように移動した。

 

「見れば随分と懐かれている様子。それなりの額を出しますが………いかがかな?」

 

その言葉にシアは不安そうにしている。

すると、

 

「…………そうだな」

 

ハジメはそう言いながらシアの肩に手を回し、

 

「例えどこぞの神が欲しがっても手放す気は無い…………と言えば分かってもらえるか?」

 

そう言い切った。

ハジメ、特別な感情は無いんだろうが、その言い方はシアの好感度が急上昇だぞ。

ほら、シアの顔が恋する乙女だ。

 

「………そこまで言われたら仕方ない。一先ず今は引き下がろう」

 

モットーは思ったよりもあっさりと引き下がった。

 

「では、そろそろ出発しますよ。護衛の程宜しくお願いします」

 

モットーはそう言うと自分の馬車へと戻っていった。

 

 

 

 

 

隊商が出発し、俺達に割り当てられた馬車の中では、

 

「………言っとくが特別な意味は無いからな?」

 

「わかってますよぉ~~~~」

 

ハジメの言葉にシアはそう答えるが、その表情はご機嫌だ。

まあ、好きな相手にあんな事を言って貰えたのが嬉しいんだろう。

 

「シア、嬉しい?」

 

「はい! それはもちろん!」

 

ユエの質問にシアは笑顔で答える。

 

「そう…………カオリ………」

 

すると、ユエがじっと白崎さんの顔を見る。

 

「う~~~…………!」

 

白崎さんは何やら唸っている。

 

「シアの気持ちは、私達と一緒」

 

「それは分かってるけど…………」

 

ユエと白崎さんが何やら話し合っている。

 

「何の話ですか?」

 

シアが聞くと、

 

「……内緒」

 

ユエがそうはぐらかした。

因みに俺だが、

 

「…………………気持ちワリィ…………」

 

ものの見事に馬車に酔って倒れていたりする。

馬車はハジメの作った魔力駆動四輪とは違って道の舗装もしなければ、サスペンションも付いていないので、道の凹凸による揺れが諸に伝わる。

元々乗り物に酔いやすい体質の俺はその被害を被ったのだ。

 

「大士………大丈夫?」

 

ドルモンが心配そうに声を掛けてくる。

 

「…………大丈夫じゃない」

 

俺は思わずそう言ってしまう。

 

「意外な弱点があったものね………」

 

そう言うのは優花。

そして俺の頭は優花の膝の上だったりする。

 

「…………弱点だらけだろ、俺って…………」

 

「その辺は私達でカバーしてあげるから安心して。ほら、無理に話さずに楽になって」

 

「…………すまん」

 

俺はお言葉に甘えることにした。

 

「優花、次は私だからね」

 

眠る寸前、葵の楽しそうな声が聞こえた。

 

 

 

 

 

やがて日が落ちて野営の準備をしていると、

 

「今日はどのくらい進んだんだ?」

 

ハジメがモットーに問いかけた。

 

「大体三分の一って所ですな。順調に行けば、後4日程で着くでしょう」

 

「結構かかるな」

 

魔力駆動四輪なら1日で着くだろう距離だからな。

 

「因みに食事は如何されるおつもりで? 一応食料の販売もしてはいますが………」

 

流石商人。

こういう細かい所でも商売を忘れない。

すると、

 

「ああ………そう言った事は心配いらない」

 

ハジメが視線をシアと優花に向けると、彼女達の目の前に食料の入った袋が現れた。

ハジメが宝物庫から取り出したものだ。

 

「頼んだぞ食事係」

 

「お任せくださーい!」

 

「了解よ」

 

因みに優花とシアは料理の腕前を見込まれて食事係に任命されている。

白崎さんはちょっと悔しそうだったが。

しかし、そんなものを目の前で見せられたモットーは目を真ん丸にして食い入るように見つめていた。

 

「なっ……何ですかその道具は!?」

 

「あっ………」

 

自分の失態に気付いたハジメが声を漏らす。

 

「『宝物庫』って言うアーティファクトだ。見ての通り好きな物を出し入れ………」

 

「言い値で買う!! いくら欲しい!?」

 

ハジメが言い終わる前にモットーは叫んだ。

そりゃ物資の輸送のコストを大幅に削減できる道具だ。

商人にとっては垂涎ものだろう。

ハジメは目が血走ったモットーに一晩中質問攻めにされることとなった。

 

 

 

 

 

翌日。

ハジメは馬車の中で眠そうにしていた。

シアが馬車の屋根の上で風に当たりながら、

 

「ハジメさん、風が気持ちいいですよ!」

 

ハジメにそう言うが、

 

「あぁ、そうかい」

 

ハジメは興味無さそうにそう返した。

 

「あの後ひたすら質問攻めされて眠いんだよ………」

 

ハジメはそう言いながら欠伸をする。

と、その時、相変わらず馬車酔いで気持ち悪くなって横になっている俺の頭を膝枕していた優花が何かに気付いたように顔を上げた。

 

「南雲、魔物よ。数はおよそ百以上。森の方から来るわ」

 

特に慌てた素振りも見せずにそう告げる優花。

すると、ハジメが御者に向かって、

 

「おい、魔物が来るぞ。数は大よそ百」

 

その言葉を聞いた御者は驚愕の表情をして、

 

「ひゃ、百以上だと!? そんな数聞いた事ないぞ!」

 

直ぐに手綱を引こうとする。

 

「引き返せ! 今ならまだ間に合うかもしれん!」

 

御者は完全に狼狽えていた。

そんな御者にハジメは、

 

「あー、このまま進んで大丈夫だぞ」

 

何でもないようにそう言った。

 

「何言ってる!? 魔物が百匹も居るんだぞ!?」

 

御者は馬鹿かこいつと言わんばかりの表情だ。

どうやら普通の人達にとっては低級の魔物百匹でもヤバいらしい。

俺達はもっとヤバい魔物百匹以上に囲まれた事もあるから全然危機感が無い。

 

「皆、ここは私に任せて」

 

ユエがそう言うと馬車の屋根に上る。

すると、

 

「葵、ちょっと代わって」

 

優花が葵に膝枕の交代を申し出た。

 

「はいは~い!」

 

葵は嬉しそうに交代すると、優花も馬車の屋根に上った。

 

「ユエ、悪いんだけど少し残してくれない? 考えてた新技を試してみたいから」

 

「………ん、了解」

 

ユエの実力なら全滅させることは簡単なので、優花はそう言った。

魔物の群れが見えてくると、ユエは天を指差し、

 

「彼の者、常闇に紅き光をもたらさん、古の牢獄を打ち砕き、障碍の尽くを退けん、最強の片割れたるこの力、彼の者と共にありて、天すら呑み込む光となれ」

 

ユエに本来詠唱は必要無いが、無詠唱で魔法を使うと人目の多い隊商では疑問に思う人間も多く出てくるので、そのカモフラージュの為にハジメが詠唱する様に言っていたのだ。

そして、

 

「〝雷龍〟」

 

ユエの魔法が発動すると、暗雲にとどろく雷鳴が集まり、一匹の龍を象った。

ユエが天へ向けた指を魔物の群れに向かって振り下ろすと、雷の龍は魔物の群れに襲い掛かった。

雷の龍は魔物達を蹂躙し、一瞬の内に消し去っていく。

 

「………おいおい、あんな魔法俺も初めて見たぞ」

 

ハジメも今の魔法に驚きを隠せない。

 

「複合魔法、私のオリジナル。雷属性の魔法にライセンで手に入れた重力魔法を組み合わせてみた」

 

重力で雷を龍の形に束ねたってことか。

雷の威力だけじゃなく重力もプラスされてるから、雷が質量を持って襲い掛かってくるみたいなもんだな。

 

「因みに詠唱はハジメと私の出会いと未来を詠ってます」

 

ユエが得意げにそう言った。

そのままであれば瞬く間に魔物達は全滅するはずであったが、ある程度魔物達を蹂躙すると、ユエは手を振り上げて雷龍を天へと帰らせていく。

残ったのは5分の1ほどの魔物だった。

 

「………この位?」

 

ユエが隣にいる優花にそう聞くと、

 

「う、うん、十分」

 

優花はそう言って背中に背負う投げ槍を持つとそれを振りかぶる。

 

「ユエの後じゃちょっと見劣りすると思うけど…………せぇのっ!!」

 

そんな声を出して投げ槍を思い切り投擲する。

しかし、魔物達ではなく空に向かって。

槍は空高く突き進み、地上からは見えなくなる。

更にユエの魔法で集まった暗雲に穴が開き、青空が見える。

すると、

 

「………落ちろ!」

 

優花がそう口にする。

その時、魔物の頭上から何かが猛スピードで落下してきた。

先程の優花が投擲した槍だ。

それは生き残った魔物の群れの中心に突き刺さり、轟音と共に爆発が起こった。

そこには地面を抉るほどのクレーターが出来ている。

 

「まるで隕石だな……………」

 

「槍に反重力をかけて高高度まで投げてから、超重力をかけて加速させながら落下させたの。他の魔法も組み合わせれば、もう少し威力が出るかな?」

 

優花は得意げにそう言う。

 

「…………まるでグングニルの槍だな」

 

馬車の中から見えた、空高く槍を投げてそれを落下させて貫くという技に、俺は前世の国民的RPGの最終幻想7作目に出てくる召喚獣の技を思い出した。

 

「グングニルか…………中々いい名前ね。じゃあ、これからこの技はグングニルって事で」

 

俺の呟きを聞いていたのか優花がそう言った。

するとその時、煙の中から一匹のワイバーンの様な魔物が飛び出した。

 

「一匹仕留め損ねたようね。空中に居る敵には直撃以外は効果が薄いみたいね」

 

優花はグングニルの効果を分析する。

その魔物はやけくそになったのかこっちに向かってきている。

 

「……………………」

 

ハジメが無言でドンナーを構えると、

 

「待って、ハジメ君」

 

白崎さんがハジメを止めた。

すると、白崎さんが銃を構え、一発の弾丸を放った。

『纏雷』を使わずに放った普通の銃弾だ。

その弾丸は魔物に当たるが、傷が小さいのか怯むことなく向かって来る。

しかし次の瞬間、ほぼ直角に魔物が墜落し、地面に叩きつけられると同時に押しつぶされた。

 

「……………何だ今の?」

 

魔物のおかしな倒され方にハジメが白崎さんを見ると、白崎さんは得意げな顔で、

 

「銃弾に生成魔法で重力魔法を付与したの。私の生成魔法の適性じゃ、ハジメ君みたいに永続的に効果を付与させることは出来ないけど、一時的な付与なら出来るから。名前を付けるなら『重力弾(グラビティブレット)』かな」

 

3人とも何気に重力魔法を使いこなしていることに、俺達は感嘆した。

 

 

 

 

その後も特に問題なく(魔物の襲撃はあったがあっさり片付けた)進み、目的地であるフューレンが見えてきた頃だった。

 

「ハジメ殿、着く前に宜しいか?」

 

隊商のリーダーであるモットーがそう言って近付いて来た。

 

「出発前に話したその兎人族と『宝物庫』。やはり売る気はありませんかな?」

 

「またその話かよ。いい加減しつこいぞ」

 

ハジメは鬱陶しそうにそう言う。

しかしモットーは話を続け、

 

「一生遊んで暮らせる金額をお支払いしますよ。特に『宝物庫』は個人の手に余る代物。この先厄介な事になるかもしれませんぞ………例えば彼女達のみに何か起きたり………」

 

脅しとも取れるその言葉に、空気が一変したのを感じる。

いつの間にかモットーの視界から、ハジメ、白崎さん、優花の姿が消えていた。

 

「…………? あれ………何処に………」

 

次の瞬間、

 

「それは宣戦布告と受け取っていいのか?」

 

背後からモットーの後頭部に銃を突き付け、威圧と殺気を放ちながらそう言うハジメ。

 

「心配しなくても身を守れる位の強さは身に着けているつもりです。それでもハジメ君の敵に回るのなら容赦はしません」

 

ハジメの右側で同じように銃を突き付ける白崎さん。

 

「脅す相手の力量を見抜けないと碌な事にならないわよ?」

 

左側から槍の刃を首筋に当てる優花。

三者から殺気と威圧を受けて、モットーは慌てて取り繕った。

 

「ひっ………ち、違っ………! わ、私はあなたがそれを隠そうとしていないので………可能性としてそういう事もあると………たっ、ただそれだけで………」

 

嘘か本当かは分からないが、モットーは完全に委縮してしまっている。

それを見て敵意が無いと判断したのかハジメは銃を下げた。

 

「………ならそう言う事にしておこうか。だが、敵意を持って俺達の前に立った時は、ただの1人も生き残れると思うなよ」

 

忠告の意味を込めてハジメはそう言った。

その後、街に到着すると、

 

「では、私は手続きがあるのでこれにて」

 

「ああ」

 

モットーが別れの挨拶に来る。

すると、

 

「とんだ失態を犯しました。ご入用の際はぜひ我が商会を」

 

「銃口を突き付けられた相手に営業かよ。ホント商魂逞しいな」

 

その言葉には俺も同意した。

 

 

 

 

 

近くの軽食屋で休憩を取っていた俺達は、

 

「人の数が凄いな」

 

「流石大陸一の商業都市だ」

 

先ずは人の多さに驚く。

ブルックとは比較にならない人口の多さだ。

 

「これ食ったら一先ずギルドで依頼完了の報告と宿探しをするぞ」

 

ハジメがそう言うと、

 

「またお風呂がある所が良い。勿論混浴で貸し切り出来る所」

 

「私は4人で寝れるベッドが良いです!」

 

ユエとシアは要望を口にする。

驚くことに、シアの言葉に白崎さんは何も言わなかった。

ふと周りを見れば、男達の視線がこちらに集中している。

まあ、男が2人いるとは言えこれだけの美人が集まっているのだ。

視線を集めるのも仕方ないだろう。

見られるだけなら害は無いと俺は気にしないようにしていたのだが、

 

「お、おい、そこのガキ共」

 

いきなりそんな声を掛けられてそちらを見れば、身形のいい格好をした、でっぷりと腹の出た、正に『The ロクデナシ貴族』と言わんばかりの金髪の男が立っていた。

 

「ひゃ、100万ルタやる。その兎をわ、渡せ。そ、そっちの女共は私の妾にしてやる。い、一緒に来い」

 

ハァハァ言いながらそういう男に女性陣は気持ち悪さに一気に引いた。

と、次の瞬間、ハジメがその男を睨み付けると同時に強烈な殺気を叩き込んだ。

 

「ヒィイイイイイイッ!!??」

 

そんな男がハジメの殺気に耐えきれるわけもなく、情けなく悲鳴を上げて尻餅を着く。

 

「………場所を変えよう」

 

ハジメは鬱陶しそうに舌打ちするとそう言って立ち上がった。

 

「良かったのハジメ君? 街中であんな殺気を…………」

 

白崎さんが声を掛けると、

 

「いいんだ。周りの視線も鬱陶しかったからな。それにあいつは香織を妾にするとかふざけた事抜かしやがったんだぞ。人の目が無かったら撃ち殺している所だ」

 

「ハジメ君…………」

 

そんな物騒な言葉でキュンと来ている白崎さんを見て、白崎さんも大概図太くなったなぁと内心思う。

そのまま立ち去ろうとした時、

 

「ま、待てクソガキィ!!」

 

その男は俺達を呼び止めた。

あ~あ、そのまま見逃せばよかったのに。

 

「レガニド!! あいつ等を殺せ! 私を殺そうとしたのだ!」

 

とは言え、自分で立ち向かう気概が無いのは見て分かる事。

近くに居た冒険者らしき男にそう叫んだ。

 

「坊ちゃん、流石に殺すのはヤバいですぜ」

 

「い、いいからやれぇ!!」

 

「ったく、報酬は弾んでくださいよ」

 

口では諫めている物の、貴族(らしき)男の言葉を強くは止めない冒険者の男は俺達の前に立ちはだかると、

 

「そういうことだ。何、殺しはしねえよ。悪いが女の事は諦めてくれや」

 

自分の実力に自信があるのか、堂々とそう言って来た。

すると、周りの人々からの声が聞こえる。

 

「あいつ………『黒』のレガニドだぞ」

 

「マジかよ!? 金次第であんな奴の護衛もするのか………」

 

どうやら目の前の男はそれなりに有名な冒険者らしい。

『黒』というのは冒険者ランクの事だろう。

つまり、この男は上から3番目の冒険者ランクという事だ。

ハジメが仕方なく相手をしようとした時、

 

「ハジメ君。私が相手をするよ」

 

白崎さんがそう言った。

 

「香織?」

 

ハジメが何故と尋ねると、

 

「私が戦えるって事を周りに示せば、変な事を考える人も減ると思うの」

 

「ふむ……………」

 

白崎さんの言葉にハジメが腕を組んで考えると、

 

「そういうことなら任せた」

 

「うん!」

 

そう言って白崎さんはレガニドと呼ばれた男の前に立つ。

 

「おいおい、嬢ちゃんが相手だって!? 中々笑わせるじゃねえの」

 

その言葉に白崎さんは杖を構え、

 

「怪我をしても私が治すから安心して。報酬は諦めてもらうけど………」

 

「……………本気で言ってんのか? 俺はランク『黒』だぞ」

 

「私の天職は治癒師。冒険者ランクは『青』。パーティーの中の直接的な強さだけで言えば最弱だよ」

 

それって俺と葵はドルモンとリュウダモンをセットに考えてるだろ?

正確には最弱は俺と葵だからな。

 

「おいおい、ランク『青』で治癒師だって?」

 

レガニドは馬鹿にしたようにそう言う。

 

「レ、レガニド傷付けるなよ! その女共は私のだ!」

 

さっきから後ろのロクデナシ貴族が煩い。

正直ドルモンに狙い撃ちしてもらおうと思ってるのをさっきから我慢してる。

メタルキャノンでも下手すれば死ぬから自重してるだけだ。

 

「へいへい、分かってますよ坊ちゃん」

 

レガニドは返事をすると、白崎さんに向き直り、

 

「嬢ちゃん、夜の相手ならしてやってもいいぜ」

 

「あ゛…………」

 

レガニドのその言葉に隣のハジメが青筋を立てた。

 

「悪いけど、私には心に決めた人が居るの。ハジメ君以外に抱かれるのは絶対嫌だよ」

 

照れもせずに真面目に言い返す白崎さん。

 

「そうかい………残念だがその彼とは今日でお別れだ。運が悪かったと思って諦めな!」

 

その言葉と共に、一気に間合いを詰めるレガニド。

一応言われた事は守るつもりなのか、素手で抑え付ける気の様だ。

だが、白崎さんはその動きをあっさりと見切って回避する。

 

「何っ!?」

 

余裕で制圧できると思っていたのか驚愕の声を漏らすレガニド。

 

「腰の剣を抜かなくてものいいの? 手加減はするけど危ないよ?」

 

白崎さんがそう言うと、

 

「治癒師如きが大きく出たな! 坊ちゃん、悪いが傷の1つや2つは勘弁ですぜ!」

 

頭に来たのか叫びながら剣を抜く。

先程とは違い、油断をしてないのか構えに隙が無い。

次の瞬間には、一気に飛び掛かってきた。

一撃で武器を弾き飛ばして戦意を喪失させようとした攻撃。

しかし、白崎さんは片手でそれを簡単に防いだ。

 

「何だと!?」

 

レガニドが驚愕する。

しかし、それも当然だ。

この世界の人間族のトップレベルの実力者のメルド団長が、平均ステータス300前後。

いくらレガニドがランク『黒』とはいえ、メルド団長よりも強い事は無いだろう。

予想だが高く見積もって平均ステータス200~250と言った所だろう。

それに対して、白崎さんは魔力を除いたステータスはハジメ、優花に劣るものの、それでも5000以上はある。

10分の1以下のステータスしか持たないレガニドに負ける道理は無かった。

白崎さんは逆に剣を押し返すと杖を振りかぶり、

 

「ふっ!」

 

無造作に薙ぎ払った。

 

「ぐはっ!?」

 

その一撃で剣は圧し折られ、吹き飛ばされたレガニドは建物の壁に罅が入るほどの強さで叩きつけられ、内臓にダメージを負ったのか口から血を吐く。

近付いてくる白崎さんを見てレガニドは、

 

「…………なるほどな。どうやら俺が間抜けだったらしい」

 

実力の差を思い知ったのか動こうとしない。

いや、普通に大ダメージで動けないのだろう。

目の前まで歩いてきた白崎さんに、レガニドは諦めた様に項垂れると、

 

「天の息吹、満ち満ちて、聖浄と癒しをもたらさん。〝天恵〟」

 

白崎さんの回復魔法で全快した。

 

「なっ!? あれだけのダメージが一瞬で………! 今のは初級回復魔法の〝天恵〟だろ!?」

 

白崎さんの回復魔法の凄まじさに驚くレガニドに、

 

「まだやりますか? 私は何度やっても良いですよ? 何度でも治してあげますから安心してください」

 

そう言ってニッコリと笑う白崎さんにレガニドは冷や汗を流し、

 

「冗談じゃない…………」

 

両手を上げてもう敵意が無い事をアピールする。

 

「悪いが坊ちゃん、この依頼はキャンセルだ。いくら積まれても割に合わなさすぎる」

 

体は回復したとはいえ、実力の差は十分と言えるほどに身に染みたようだ。

すると、ハジメがロクデナシ貴族の男に近付いていく。

 

「ひっ! ひぃいいいいいいっ!! く、来るなぁ!!」

 

その男は腰を抜かしながら狼狽える。

 

「わ、私を誰だと思っている! ミン男爵家のプーム・ミンだぞ! 私に逆らったら………プギャ!?」

 

それでも尚偉そうな口を閉じないその男の顔面にハジメは足を叩き込んだ。

まあ、死なないように手加減したようだが。

 

「うるせぇよブタ野郎。テメェの事なんざ知るかボケ」

 

やっと静かになったとこの場を離れようとした所、

 

「そこの冒険者、止まりなさい!」

 

また別の男の声が聞こえた。

 

「冒険者同士での争いはギルドにて公正に判断いたします。一旦その足をどけてはいただけませんか?」

 

どうやらメガネを掛けた男はギルド職員の様だ。

 

「そうは言ってもな。こいつらが襲ってきたから対処しただけだぞ」

 

ハジメはそう言うが、

 

「………証人は大勢いますし嘘では無いのでしょう。ですが双方の言い分を聞くのが規則となっています。あなた達のステータスプレートを拝見しても?」

 

そう言われたので、俺達はステータスプレートを差し出す。

 

「…………非戦闘職の『錬成師』に『治癒師』、『投術師』に『デジモンテイマー』? 聞いた事の無い天職もありますが、どれも直接的な戦闘に向かない職ばかり…………しかもランクは『青』………妙ですね、あちらの彼はランク『黒』なんですが………」

 

ギルド職員に視線を向けられたレガニドは冷や汗を流しながら顔を背ける。

 

「そちらの2人もステータスプレートを宜しいですか?」

 

ギルド職員はユエとシアの方を向いてそう言う。

 

「ああ、彼女達はプレートを無くしちまってな。再発行はしてない………あれ高いだろ?」

 

ハジメは尤もらしい言い訳を言う。

 

「でしたらギルドで立て替えましょう。事情聴取もそちらで行います」

 

なんかめんどくさい事になって来たな。

ハジメも同じような顔をしていると、

 

「ねえ、南雲君。ブルックのギルドのおばさんから貰った手紙を出してみれば?」

 

葵が思い出したようにそう言った。

そう言えばそんなもの貰ってたな。

 

「ああ、あの手紙か………こんな事ならさっさと中を見ておくべきだったな」

 

ハジメも言われて思い出したのか、手紙を取り出すと、

 

「これを読んでくれ。知り合いのギルド職員に困ったら渡せと言われてな」

 

目の前のギルド職員はその手紙を受け取り、

 

「………拝見します」

 

その手紙に目を通した瞬間、明らかに顔色が変わった。

 

「ッ………!? こ、これは……………支部長に連絡を入れろ! 客人を迎える準備もだ!!」

 

大慌てで部下たちにそう指示する。

 

「「…………マジで何者なんだよあのオバサン………」」

 

俺とハジメが同時にそう呟いた。

 

 

 

 

 

そのままギルドに連れて来られて支部長室に通されると、向かい合ったソファーで支部長と対面する。

 

「冒険者ギルドフューレン支部へようこそ。支部長のイルワ・チャングだ」

 

イルワと名乗った男性がそう挨拶をする。

 

「手紙は読ませてもらったよ。有望だけどトラブル体質………出来れば目をかけて欲しいとあった…………あの人らしいな」

 

大陸一の商業都市のギルドの支部長をこうまで言わせるあのキャサリンオバサンは何者なんだろうか?

 

「あの~~~~………キャサリンさんって何者なんでしょう?」

 

シアが若干遠慮がちにそう質問した。

それは俺も気になる。

 

「おや、聞いてないのかい?」

 

すると、イルワ支部長は突然懐かしそうな顔をすると、懐から1枚の紙を取り出す。

 

「………………彼女は素晴らしい女性だよ」

 

そう言いながらその紙を机の上に置く。

それは写真だった。

この世界に写真ってあったんだな。

まあ、それに類するアーティファクト何だろうが。

一般には流通してなくても、こういう大きな組織には使用する機会もあるって事だろう。

それよりも、そこに写っていたのは、髪の色と顔の面影から10代後半の頃だろうイルワ支部長と、20代半ばと思われる女性が映っていた。

上半身しか映っていないが容姿端麗でスタイルも抜群にいいだろう、可愛いというよりも、美しいと言った方がしっくりくる、葵に近いタイプの美人さんだ。

 

「王都のギルド本部ギルドマスターの秘書長だった人さ。辞めた後もギルド運営に関する教育係になってね。現ギルド支部長の大半は彼女の教え子なんだ。隣にいるのが若い頃の…………」

 

イルワ支部長がそう言いかけた時、

 

「ちょっと待て。誰だそれは?」

 

我慢できずにハジメが突っ込んだ。

すると、

 

「誰って………当時のキャサリン先生だが?」

 

「「「「「「「「「……………………………」」」」」」」」」

 

その言葉に俺達全員が沈黙する。

 

「美しさと人柄で僕らの憧れの存在だったよ。結婚して田舎へ転勤になった時は王都中が大荒れさ」

 

そう続けるイルワ支部長だったが、俺達にはこの写真の超美女と、何処かの食堂で働いてそうな恰幅のいいあのおばちゃんが同一人物とはどうしても思えなかった。

ぶっちゃけエンジェモンがアンキロモンとジョグレス進化してシャッコウモンになった位の変わりようと衝撃だ。

 

「………時間の流れって奴は………」

 

ハジメが何とも言えない声を漏らす。

 

「それはそうと、さっきの件は大丈夫なのか? 問題が無いならもう行きたいんだが………」

 

ハジメは目の前の現実を否定する様に話を変えた。

 

「あぁ、彼女の紹介なら身分証明は問題ない」

 

「なら………」

 

もう用は無いとハジメが立ち上がろうとした時、

 

「その前に一ついいかい? ドット君あれを」

 

「はっ」

 

イルワ支部長がさっきのメガネのギルド職員に話しかけた。

ドットって名前なのね。

そのドットという男性が俺達の前に1枚の紙を置く。

 

「………こちらをご覧ください」

 

「………依頼書?」

 

「ああ、君達の腕を見込んでの依頼だ」

 

「断る」

 

ハジメが即答した。

 

「そう言わず話を聞いてもらえないかな? 聞いてくれるなら今回の件は不問とするのだが………」

 

「あ? たった今問題無いって言っただろ?」

 

「今のは身分証明についてだ。街中で暴れた件について許した覚えは無いよ」

 

「………………」

 

ハジメはイルワ支部長を睨み付けるが、イルワ支部長はその視線を真っすぐに受け止めて見返す。

 

「説明はあったと思うけど、双方の言い分を聞くことになっている。向こうの回復を考えるといつ頃話せるようになるだろうね?」

 

ハジメの威圧を受けても怯まないイルワ支部長に俺は逆に感心した。

 

「分かった分かった。聞くよ」

 

ハジメが折れて椅子に掛け直す。

 

「流石大都市のギルド長。いい性格してるな」

 

「君も大概だと思うけどね」

 

やはり大都市の支部長ともなれば、並の胆力ではやっていけないのだろう。

 

「さて、依頼内容だが行方不明者の捜索だ。ある冒険者一行が予定を過ぎても『北の山脈地帯』から戻ってこない。捜索対象は冒険者の1人、ウィル・クデタ。クデタ伯爵家の三男だ。彼はいささか強引に同行をしてしまってね。本来はあの場所へ行けるほどの実力は持っていない。『北の山脈地帯』は1つ山を越えるとほぼ未開の地だ。強力な魔物も出没している。並の冒険者じゃ二次被害になる。そこで君達に………」

 

そこまで言った所でハジメが口を挟んだ。

 

「おいおい待ってくれよ! 何か勘違いして無いか? 俺達はランク『青』だぞ!?」

 

ハジメ、面倒くさい事は分かるが、ついさっきパーティー最弱の白崎さんがランク『黒』を瞬殺したばかりだぞ?

と、思った時、

 

「さっきそちらの彼女が『黒』を瞬殺したばかりだろう。彼女の言った事が本当なら彼女は君達の中では最弱だそうじゃないか。わざとらしい芝居は止めてくれたまえ」

 

やはりと言うべきか先程の話は耳に入っている。

 

「今は君達しかいないんだ。引き受けては貰えないだろうか?」

 

「そう言われてもな………俺達にも目的がある。そんな貴族の坊ちゃんに使う時間は無いんだ」

 

「…………では君達のランクを一気に『黒』まで引き上げよう。普通なら滅多にあり得ない事だがどうだ?」

 

「いや、ランクなんてどうでもいいんだが………」

 

ハジメは何とか断ろうとするが、それでもイルワ支部長は食い下がってくる。

 

「なら今後、ギルド関係の揉め事には私が後ろ盾となろう。ギルド全体でも相当の影響力があると自負してるよ」

 

「…………随分と気前が良くなったな」

 

ハジメが怪訝そうに呟く。

 

「ただの貴族のご機嫌取りじゃ無さそうだな?」

 

俺がそう言うと、

 

「………伯爵とは個人的に仲が良くてね。同行パーティーに話を通したのは私なんだ。確かな実力のあるパーティーだから問題無いと思った。同行させてウィルに厳しさを教えようとしたんだが………それがこんなことになるなんて…………」

 

イルワ支部長は歯を食いしばりながら悔しそうな表情を浮かべる。

許可を出してしまった自分が許せないのだろう。

すると、

 

「………そこまで言うなら2つ条件がある」

 

ハジメが口を開いた。

 

「1つ、ユエとシアのステータスプレートの作成。その表記について他言無用を確約する事。2つ、ギルド関連を含むすべてのコネクションを用い、俺の要求に応える事」

 

「なっ……!? 何を………言っているんだ………君は………」

 

「無理ならこの話は無しだ。もう行かせてもらう」

 

そう言ってハジメが立ち上がる。

 

「な………何を要求する気かな………?」

 

イルワ支部長はその質問を絞り出した。

その言葉に、

 

「大したことじゃない。俺達が教会から指名手配された時、便宜を図ってくれればいい」

 

その言葉にイルワ支部長とドットさんが沈黙する。

 

「教会からの指名手配………?」

 

「あぁ。いつかほぼ確実にされる」

 

イルワ支部長の言葉にハジメがそう答えると、

 

「ば………馬鹿な、教会に敵対するなんて無謀な………!」

 

ドットさんが叫ぼうとしたが、

 

「……わかった」

 

イルワ支部長は頷いた。

 

「キャサリン先生が認めた人間が言う事だ。きっと何か理由があるのだろう」

 

「物分かりが良くて助かるよ。依頼の方は任せてくれ」

 

ハジメは依頼を承諾する。

 

「分かってると思うが犯罪に加担する要望には応えられない」

 

「あぁ、それでいい。依頼は本人か遺品を持って帰ればいいだろ?」

 

「あぁ………どんな形であれ痕跡を見つけて欲しい………どうか………よろしく頼む」

 

 

 

 

 

 

こうして俺達はグリューエン大火山に向かう前に捜索依頼を請け負う事となった。

先ずは『北の山脈地帯』の麓にある『ウル』という街に向かう事になったのだが、そこで『俺達』は思い掛けない再会を、そして『俺とドルモン』にとっては予想外の再会をすることになるとは、今は思いもしていなかった。

 

 

 

 

 




第19話の完成。
大筋の流れは原作………というか漫画版の通り。
ちょくちょく変わってる所もありますけどね。
今回は特に特筆することも無いかな。
次回はいよいよ再会編。
お楽しみに。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。