ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第32話 誕生! 子連れテイマー!

 

 

 

ロイヤルナイツ披露闘技会からまた少しの時が流れた。

現在、俺達学院の生徒達は、馬車の隊列を組んで移動していた。

その理由は、所謂修学旅行だ。

行き先はフォルダ領の南にある海に隣接した領にあるリゾートビーチ。

魔族領に近いが、それでも毎年かなりの観光客が訪れる人気スポットでもある。

因みに俺達のチームは、王族御用達の豪華な馬車に乗っている。

 

「この世界の学校にも、修学旅行があったんだね~」

 

葵がのほほんと声を漏らす。

 

「ううっ……………」

 

その葵の膝の上には、相も変わらず馬車酔いに苦しむ俺の姿。

俺が乗り物に弱いのは周知の事実なので、チーム内に驚く者はいないが、葵が何の躊躇いもなく俺を膝枕した事には、多少なりと驚きの目が向けられた。

まあ、この数日の道程で慣れたようだが、それよりも俺はエリスはともかく、アリスまで膝枕をしてくれるとは思わなかった。

現在は葵、アリス、エリスのローテーションで膝枕をして貰っていたりする。

端から見れば、本当に美女を侍らす最低な男にしか見えないな。

そして、1週間ほどの馬車での旅の末、漸く目的地であるリゾートビーチに辿り着いた。

早速生徒達が水着に着替え、砂浜に向かっていく。

如何でもいいが、この世界にも水着の文化はあったりする。

俺はドルモン、リュウダモン、カイルと一緒に砂浜で同じチームの女性陣を待っていると、

 

「お待たせ~!」

 

元気のいい葵の声が聞こえてきた。

その声に俺達が振り返ると、

 

「おおっ………」

 

「わぁ…………」

 

俺とカイルは声を漏らした。

そこには、桃源郷と呼ぶべき尊い光景があったからだ。

葵は黄土色の大胆なビキニ。

アリスとエリスも葵ほどでは無いが、それなりに大胆なビキニタイプの水着を青と緑の色違いで着ている。

エミリアは白のワンピースタイプの水着で恥ずかしそうにしており、クラウディアはハイレグタイプの赤い水着をカッコよく着こなしている。

リティナ王女は王族だけあってあまり大胆では無いが、それでもボディラインがハッキリと分かるピンク色の水着を着ていた。

因みにカイルの視線はリティナ王女に釘付けだったりする。

 

「良く似合ってるな。皆綺麗だぞ」

 

俺は率直に思った事を口にする。

 

「えへへ」

 

葵は嬉しそうにはにかみ、アリスとエリスは嬉し恥ずかしと言った様子。

クラウディアとエミリアも恥ずかしそうに顔を赤らめていた。

リティナ王女はカイルの視線だけが気になるようで、期待の眼差しを向けていた。

 

「あ、その………き、綺麗だよ………」

 

カイルはしどろもどろになりながらその言葉を口にする。

リティナ王女は嬉しそうに頬を染めながら笑みを浮かべた。

 

「さ~て、遊ぶか!」

 

俺達は、折角の海を満喫する事にした。

 

 

 

科学文明が発達していない異世界なだけあり、海はとても綺麗だった。

透明度も高く、熱帯魚らしき魚やサンゴ礁のようなものも見受けられた。

皆で泳いだり、実はカナヅチだったエミリアに宝物庫から浮き輪を貸してやりながら泳ぎを教えたり、時には釣りしたり、ビーチボールを出してビーチバレーをしたりもした。

楽しい時間を過ごすと、時間はあっという間に過ぎ去る。

日が傾き始め、もうすぐ今日の自由時間が終わろうという頃だった。

俺達は、遊び付かれた身体を休めるため、砂浜の近くにあった岩浜に座り休憩していた。

潮風を身体全体で感じながら、海を眺める。

その時だった。

 

「………………ん?」

 

視界の片隅に何かが映り、俺はそちらを向く。

 

「大士? どうかした?」

 

ドルモンが俺の様子に気付き、声を漏らす。

 

「いや、あそこに何か…………」

 

俺の視線の先には、岩礁の影に『何か』が打ち上げられていた。

俺は立ち上がると、その『何か』が何なのかを確かめるため、岩礁を乗り越える。

他の皆も少し遅れて俺の後を付いてきた。

一足早くその『何か』の下に辿り着くと、その正体を確認する。

 

「これは…………」

 

その『何か』とは少女だった。

ミュウとあまり変わらないように見える幼い少女だ。

巫女服のような服を身に纏っている。

以前エミリアが来ていたコスプレ感溢れるような物ではなく、限りなく本物に近い赤と白の着物の長袖に緋袴を身に着けた格好をしていた。

きつね色の長い髪をポニーテールにしている。

そして極めつけは、その少女の頭には狐の耳があり、お尻あたりからは狐の尻尾が生えている事だ。

 

「……………亜人の子供か……?」

 

その子をよく観察すると、僅かに肩が上下している。

呼吸をしている証拠だ。

 

「ッ………! まだ息がある……!」

 

流石にこんな幼い子供を目の前で見捨てるような薄情な真似は出来ないため、波に晒されるその小さな体を抱き上げ、水から上げる。

 

「大士! 如何したの?」

 

葵が追い付いてきたので、俺はその子を抱き上げたまま振り返ると、

 

「大士、その子って………」

 

俺の腕に抱き上げられているこの子を見て、葵は驚いた表情を浮かべた。

 

「ああ………亜人の子供だな………恐らく狐の獣人だ…………ここに打ち上げられていた」

 

俺がそう言うと、

 

「まっ、魔族の子供っ………!?」

 

遅れて追いついてきたアリスが驚愕の声を上げる。

この世界の人間からすれば、『魔族』と言うだけで警戒するのは当然だ。

その様に教育されているからな。

 

「落ち着け。確かにこの子はお前達から見れば『魔族』だろう。だが、だからと言って即『危険』と判断するのは早計だ。『魔族は危険』という色眼鏡で見ずに、ちゃんとこの子自身を見て見ろ」

 

俺は、この子を警戒する皆にそう呼びかける。

 

「実際に私達の仲間にも、この子と同じ動物の特徴を持った種族の子が居るよ。勿論、その子はすっごくいい子だよ」

 

葵もシアの事を説明する。

皆は困惑した様に顔を見合わせるが、

 

「まあ、私はタイシの判断に従うわ」

 

「タイシを信じる」

 

アリスとエリスはそう言う。

 

「……………一先ず、様子を見るべきか………」

 

「私も、いきなり殺すのはどうかと…………」

 

クラウディアとエミリアも、不安そうではあるが様子見を選んだ。

 

「皆がそう言うなら………」

 

「ですが、全くの無警戒と言う訳にはいきません」

 

カイルは渋々と、リティナ王女は警戒をするように言う。

 

「ああ。それは勿論だ。俺もその可能性を全く考慮して無いわけじゃない」

 

襲い掛かられたら反撃するつもりだし。

でも、何となくだがそんな事になる気はしない。

 

「葵、まずは〝再生魔法〟を頼む。大分衰弱してるようだ」

 

「うん、わかったよ」

 

葵がこの子に魔法を掛け、濡れていた服も乾き、見た限り呼吸も大きくなっている。

 

「この子を宿に連れてくと、間違いなく大騒ぎになると思うから………」

 

俺は〝宝物庫〟からテントを出す。

 

「とりあえずこの子はここで様子を見る。リティナ王女は宿に戻らないと拙いだろうから、カイルと一緒に俺達の事は適当に誤魔化しといてくれ」

 

「わかりました」

 

俺はその子を連れてテントの入り口を潜る。

その子を1人で寝かせるにはデカすぎるベッドに寝かせ、布団をかけてやる。

俺は、ベッドのすぐ横に椅子を用意して、その子の様子を見ていた。

その子は、時々大きな狐耳をぴくぴくと揺らしながら、あどけない寝顔で眠っている。

 

「可愛い寝顔だね」

 

同じように寝顔を眺めていた葵がそう言う。

 

「ああ」

 

この子は、整った可愛い顔立ちをしており、将来美人になるだろうと予想する。

因みにだが、俺達は既に普段着に着替えている。

流石にずっと水着姿と言う訳では無い。

アリスとエリス、クラウディアとエミリアのこの世界生まれの人間は、やはり俺達よりも警戒心が強いのか、少し離れた所で様子を窺っていた。

暫くすると、

 

「んんっ…………」

 

呻き声を漏らし、その子の瞼がゆっくりと開く。

その子の瞳は、アリスやエリスと同じ、透き通るような蒼。

 

「気が付いたか?」

 

俺がそう声を掛けると、その青い瞳がキョロキョロと声の主を探し、そして俺を捉えた。

その瞬間、

 

「ッ………!?」

 

その子はバッと飛び起きたかと思うと、驚愕………いや、怯えるように後退り、警戒の眼差しを向けてきた。

 

「ああ、そんな怖がらなくても………取って食ったりなんかしないから………」

 

俺は両手を前に軽く上げながら、敵意が無い事をアピールしつつ、そう声を掛ける。

 

「ッ………!」

 

だが、その子は警戒心を一向に緩めない。

 

「名前は何て言うんだ?」

 

「………………ッ!」

 

俺はそう聞くが、彼女は怯えた眼差しで何も言おうとしない。

 

「完璧に警戒されちゃってるね」

 

葵が仕方なさげに呟く。

俺は如何すればいいかと少し考え、

 

「ほら、これでも食べるか?」

 

手に飴玉を取り出してその子に見せた。

 

「……………?」

 

その子は飴玉が何なのか分かっていないのか、怪訝な表情をする。

 

「美味いぞ、これ」

 

俺は目の前で飴玉を口に含み、舐めて見せる。

美味しさを表現する為に、精一杯の笑みを浮かべて。

 

「お前も食べるか?」

 

俺はもう1つ飴玉を取り出してその子に見せる。

 

「ッ!」

 

すると、先程とは違い、明らかな興味を見せた。

 

「ほら、甘くて美味いぞ?」

 

俺はその子に手を伸ばし、飴玉を差し出す。

すると、その子は警戒しつつも、恐る恐る手を伸ばした。

俺はその手に飴玉を乗せると、その手はびくりと驚いたように引っ込んだ。

ただ、飴玉はしっかりと握っている。

その子は、飴玉をいろんな角度から眺め、匂いを嗅いだりした後、少し躊躇しながら、飴玉を口に含んだ。

その瞬間、

 

「ッ!?!?」

 

端から見ても、驚いたのがよくわかる様に、狐耳と尻尾がピンッと立った。

すると、一心不乱に飴玉を舐めだす。

 

「ははは、そうか、美味いか!」

 

その反応は見ていても嬉しくなるような素直な反応で、俺はほんわかとした気分になる。

暫くその様子を見ていて、ある程度警戒心が緩んだ所を見計らい、

 

「それじゃあ、改めて。俺は大士だ。君の名前を教えてくれないか?」

 

出来るだけ優しく問いかけた。

 

「…………………」

 

その眼差しは、若干警戒を含んでいたが、

 

「……………………クオン」

 

少し長い沈黙の後、そう名乗った。

 

「ッ………! そうか、クオンか。いい名前だな」

 

俺はそう言って笑い掛ける。

 

「初めまして、クオンちゃん。私は葵だよ!」

 

葵が横から声を掛ける。

クオンは少し驚いた表情を見せるものの、取り乱す事は無かった。

すると、何かを探す様にキョロキョロとして、

 

「……………おかーさんは?」

 

そう問いかけてきた。

 

「おかーさん? おかーさんと逸れたのか?」

 

俺の問いに、クオンはこくりと頷く。

 

「クオン。ここに来る前に何があったか覚えてるか?」

 

俺がそう聞くと、クオンはぽつりぽつりと話し出した。

それは、片言に近い喋り方で、情報も断片的だったが、纏めるとおそらくこう言う事だ。

彼女、クオンは、母親と二人暮らしで海沿いの村に住んでいた。

ある時、薬草採集か何かの為に、母親と一緒に村の近くにある森に出かけ、母親が目を離した隙に、クオンはヒラヒラ舞う虫(おそらく蝶)に気を取られて追いかけていき、母親と逸れた。

暫く迷った挙句、森から出た場所は海に面した高い岸壁。

更に運の悪い事に、狼の魔獣が現れ、崖の端に追い詰められた後、襲われそうになって崖から足を踏み外した。

覚えているのはここまでらしい。

 

「……………良く生きてたな………」

 

俺はクオンの悪運の強さに思わず声を漏らした。

悪運の強さだけなら、奈落に落ちても生きていたハジメに匹敵するのでは無かろうか?

俺は、不安げになるクオンに、

 

「安心しろ。ここにはお前を傷つけようとする奴はいないから」

 

俺は安心させようとそう言う。

 

「今日はゆっくり休め。明日になったら、また話そう」

 

俺はクオンをベッドに横にさせ、布団をかけてやる。

 

「……………………」

 

クオンはジッと俺を見つめた後、目を閉じた。

俺はそれを見届けると、皆に休む様に促し、俺は椅子に座って彼女を見守りながら休むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――カタン

 

突然の物音にハッとする。

いつの間にか、椅子に座ったまま眠ってしまったようだ。

俺は、クオンの様子を見ようとして、ベッドに視線を移した。

だが、

 

「なっ………!?」

 

俺は思わず立ち上がった。

 

「ふあ………大士? 如何したの?」

 

俺の横で丸くなって眠っていたドルモンが首を起こす。

 

「クオンが居ない……!」

 

「えっ!?」

 

俺の言葉にドルモンが驚いて飛び起きる。

俺達の目の前には、もぬけの殻になったベッドがあった。

 

「ッ!」

 

俺は慌ててテント内を探す。

寝室はもちろん、ベッドの下、リビング、キッチン、バスルーム。

最終的には、女性陣が寝ている本来はデジモン用の寝室にまで突撃した。

 

「クオンは居ないか!?」

 

「「「「きゃぁあああっ!?」」」」

 

「ふみゅ………? どうしたの?」

 

「何事か?」

 

アリス、エリス、エミリア、クラウディアには悲鳴を上げられたが、葵とリュウダモンは慣れたもので寝ぼけ目を擦りながら訳を尋ねて来る。

 

「クオンが居なくなったんだ」

 

「「「「「「えっ?」」」」」」

 

5人と1体は驚きの声を漏らす。

 

「多分、怖くなって逃げたんだ………少しは警戒心を解いてくれたと思ってたんだが………迂闊だった……! せめてデルフを出して見張りを任せておけば………」

 

俺は自分の浅はかさを食いながら右の拳を左の掌に打ち付ける。

 

「それは仕方ないよ。あの子も『人間』の事は怖がってたみたいだし………今は悔いるよりも、クオンちゃんを探してあげよう? あの年代の足なら、そこまで遠くまでは行けないだろうから」

 

葵の言葉に俺はハッとなる。

 

「ああ……そうだな!」

 

葵の言葉で、俺は今やるべきことを見出す。

俺はテントの外へ出ると、

 

「デルフ!!」

 

〝宝物庫〟からデルフを呼び出す。

 

「おっ、何だい相棒?」

 

デルフはお気楽に問いかけて来るが、

 

「デルフ! 感知技能で辺り一帯をくまなく探してくれ! ミュウ位の年代の子供だ!」

 

俺は要望を簡潔に伝える。

 

「えれぇ剣幕だな相棒………任せときな!」

 

俺の様子に驚きながらも、デルフは俺の頼みに応えて感知技能を発動させる。

 

「ッ……! 相棒! 反応があったぜ! 少し離れた所だが、こっから離れようとしてる反応がある!」

 

「どっちだ!?」

 

「3時の方向だ!」

 

デルフの言葉を聞くや否や、俺は一気に地面を蹴る。

そちらには森があり、暗い夜も相まって更に不気味に感じるが、俺は気にせず森の中を駆ける。

すると、

 

「相棒! やべえぜ! さっきの反応の近くに獣っぽい反応が3つ近付いてる!」

 

「何ッ!?」

 

デルフの言葉に、俺は思わずデジソウルを纏う。

 

「クオン………!」

 

俺は地面を抉るほどの強さで蹴り、クオンの下へ急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

その頃、クオンは森の中を必死に走っていた。

クオンは母親や周りの大人から、『人間族』は怖い種族だと言い聞かされて育ってきた。

故に最初、人間と判断した大士達に過剰に怯えていた。

だが、大士達は優しく歩み寄って来たので、クオンも一旦は警戒を緩めた。

しかし、静かになって改めて考えてみたら、やはり不安になってしまったのだ。

その時、ふと大士を見て、寝息を立てていると気付いたクオンは、再び湧き上がって来た不安に押し負け、ベッドから出て逃げ出してしまったのだ。

外に出たクオンは、暗い夜の闇に不安に駆られたが、昔から言い聞かされた『人間族への不安』が、『夜の闇への不安』を上回り、そのまま逃げだす事を選んでしまった。

当ても無く走っていたクオンは森の中へと入ってしまい、それでも立ち止まる事はしなかった。

『怖い人間族』から必死に逃げる為に。

だが、クオンは知らなかった。

この世界の『夜の怖さ』を。

走り続けるクオンの前に近くの茂みから影が飛び出してきた。

それは、3匹の狼の魔獣だった。

 

「あ…………!」

 

クオンは思わず立ち止まる。

クオンは、崖から落ちる前の事が思い出されていた。

あの時も、狼の魔獣に追い立てられ、岸壁に追い詰められた。

 

「あ………ああ………!」

 

その時のトラウマも重なり、クオンは恐怖で身体が動かなくなってしまった。

その目からは、恐怖により涙がボロボロと零れている。

 

「ゥゥゥ………!」

 

狼の魔獣は、低く唸り声を上げながら、クオンに一歩一歩近付く。

 

「あ…………や…………!」

 

クオンは後退ろうとしたが、恐怖で足が動かずバランスを崩して後ろに尻餅を着いてしまう。

 

「ぅぅっ………!」

 

痛みも相まって、恐怖と不安に駆られるクオン。

近付いてくる狼の魔獣の口からは、涎がダラダラと流れ、それが更にクオンの恐怖を煽る。

 

「お、おかーさん……………」

 

クオンは本能的に『母』へと救いを求める。

 

「たすけて………おかーさん…………」

 

クオンの脳裏には、走馬灯のように今までの記憶が駆け巡っていた。

すると、その中の1つの記憶が鮮明に蘇る。

 

『おかーさん。クオンのおとーさんはどこにいるの?』

 

幼い故の純粋な質問。

クオンには、物心ついた時から父親が居らず、同じ村の子供達の父親を見て、ふと疑問に思ってしまった。

クオンの母親は、少し困った顔をして、

 

『お父さんはね、遠い所に居るの』

 

クオンの母親から出た言葉は、亡くなってしまった者を子供へ伝える時の常用句。

つまり、クオンの父親は既に亡くなっているという事。

だが、幼いクオンはそれに気付かず、

 

『じゃあ、おとーさんはどんな人なの?』

 

そう質問した。

クオンの母親は困った様に、だが、それでも優しそうに微笑み、

 

『お父さんはね、とっても頼りになる人よ』

 

『たよりになるひと?』

 

『ええ。クオンが心の底から頼りになると思える人………その人がクオンのお父さんよ』

 

そこで記憶が途切れ、次の瞬間、

 

「ガァアアアアアアッ!!」

 

一番先頭にいた狼の魔獣が、クオンに食らいつかんと口を大きく上げて飛び掛かった。

 

「たすけて! おとーさん!!」

 

クオンは目を瞑り、精一杯の声を上げて叫んだ。

そして―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無事か? クオン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

温もりに包まれると共に、そんな声が聞こえた。

 

「ッ!」

 

クオンが目を開けるとそこには、食らいつこうとした狼の魔獣に自分の右腕を喰らいつかせ、それでもクオンを護る様に半身でクオンを抱きしめる大士の姿があった。

 

「あ……………」

 

「ゥゥゥ………!」

 

大士の腕に食らいつきながら唸る狼の魔獣を見て、クオンは不安に駆られるが、

 

「怪我は無いか?」

 

優しそうな表情と声で、大士は言った。

その言葉に、不思議と安心感を覚えるクオン。

 

「フッ……!」

 

大士が腕を振り上げると、食らい付いていた狼の魔獣が振りほどかれ、宙を舞う。

そして、

 

「はぁあああああああっ!!」

 

落下してきた狼の魔獣に、デジソウルを纏った拳によるアッパーカットが炸裂した。

 

「ギャイン!?」

 

狼の魔獣は、甲高い悲鳴を上げて、先程よりも高く宙を舞う。

少しして落ちてきた狼の魔獣は動かなくなっていた。

 

「ゥゥゥ………ガァアアアアアアッ!!」

 

残っていた2匹の内の1匹が一瞬躊躇しながらも、大士に向かって襲い掛かろうと駆け出した。

だが、

 

「メタルキャノン!!」

 

大士の更に奥から鉄球が勢いよく飛んできて、襲い掛かろうとした狼の魔獣に直撃。

 

「ギャンッ!?」

 

吹き飛ばされて近くの木に叩きつけられ、その狼の魔獣も動かなくなった。

すると、ドルモンが駆けて来て大士達の前に陣取ると、残り1匹の狼の魔獣に向かって威嚇する様に睨み付けた。

 

「ゥゥゥ……………」

 

狼の魔獣は、本能的に敵わないと悟ったのか、唸り声を潜め、逃げるように去って行った。

それを見届けた大士は、再びクオンに視線を向ける。

 

「あ………その…………」

 

クオンはどんな仕打ちを受けるか不安になった。

しかし、

 

―――コツン

 

本当に軽く頭に拳骨が当てられ、

 

「駄目だろ? 勝手に居なくなったりしちゃ………心配したんだからな?」

 

優しく叱られる。

 

「………………!」

 

クオンは驚いた表情で大士を見上げる。

その時、

 

「大士! クオンちゃんは無事?」

 

葵達が追い付いてきた。

 

「ああ。この通りだ」

 

大士がクオンを見えるようにすると、

 

「もう、心配したんだからね!」

 

葵には優しく抱きしめられる。

 

「あ……う………あ………」

 

クオンは、今の気持ちをどう表現していいか分からなかった。

すると、

 

「クオン、悪い事をしたと思ったなら、『ごめんなさい』だ」

 

大士がそう言った。

クオンは一瞬戸惑ったが、

 

「ご……ごめんなさい………」

 

大士の言った通り、謝罪の言葉を口にした。

 

「よく出来ました」

 

そう言って大士はクオンの頭を撫でた。

 

「……………!」

 

クオンは驚いたように大士を見上げる。

 

「ん? 如何した?」

 

大士がそう聞くが、クオンは大士をジーッと見上げ、

 

「…………………おとーさん」

 

「…………はい?」

 

ポツリと呟いたその言葉に、大士は思わず素っ頓狂な声を漏らした。

 

「クオン………? 今なんて?」

 

大士は、聞き間違いかと一縷の望みをかけて聞き返したが、

 

「……おとーさん!」

 

「はぃいいいいいいいいっ!?!?」

 

先程よりもハッキリと言われたその言葉に、驚愕の声を上げる。

 

「ちょ、ちょっと待ったクオン!? なんで俺が『おとーさん』なんだ?」

 

大士はしどろもどろになりながらそう聞き返す。

 

「………おかーさんが、『おとーさん』は、とってもたよりになるひとだって…………だから、『おとーさん』」

 

そう言いながら大士を見上げるクオンの瞳は、完全に憧れの父親を見る眼だった。

 

「ま、待て待て! ちょっと待て…………!」

 

大士は一旦話を止めようとそう言ったが、

 

「おとーさんじゃ………だめ?」

 

不安そうに大士を見上げるその目に、大士は凄まじい罪悪感を覚えた。

 

「あ、う、あ……………」

 

過去、これほど悩むのは数えるほどと思えるぐらい悩んだ末の大士の答えは…………

 

「………………じゃあこうしよう」

 

大士はそう言いながら片膝を着いてクオンに視線を合わせると、

 

「俺は君を、おかーさんの元まで送り届ける事を約束する。だから君のおかーさんの所に行くまでは、俺が君の『おとーさん』の代わりでいよう」

 

期間限定の父親役になる事だった。

その事を、クオンは全部は理解して無いだろうが、ニコッと笑みを浮かべ、

 

「おとーさん!」

 

大士に抱き着いた。

大士はクオンを受け止めると、そのまま抱き上げて立ち上がる。

そのまま優しくポンポンとあやす様に背中を叩いた。

その姿は、本当の父親の様であった。

因みに、

 

「「「「えええええええええええええええええええええええええええええっ!?!?!?」」」」

 

先程までのやり取りを、実はずっと見ていたアリス、エリス、エミリア、クラウディアの4人が、今になってようやく驚愕の声を上げるのだった。

 

 

 

 

 

 







オリジナル異世界編第32話です。
大士、おとーさんになる、の巻でした。
はい、以前から言っていたタイシの新しいヒロインの未亡人狐獣人、その娘の登場です。
名前がクオンそのまんまなのは、久遠のイメージが強すぎてそれ以外の名前に超絶に違和感を覚えるようになってしまったからです。
まあ、そっちの方がイメージしやすいし………(爆)
あと、大士のヒロインのクオンの母親ですが、以前は大人モードの久遠をイメージしてたのですが、改めて見ると、久遠の大人モードは母親と言うよりお姉ちゃんっぽいイメージだったので、モデルを変えようと思います。
今の最有力は『FLOWER KNIGHT GIRL』のヒガンバナです。
そう言う訳なのでよろしくお願いします。
次からは、クオンを帰すための旅の始まり?
お楽しみに。







で、ここからは毎度おなじみアンケートなのですが………
今までは大士のヒロイン全員にパートナーデジモン付けようとは思って無かったのですが、
流石にここまで増えるとパートナー持ってないヒロインの影が薄くなるかな?
と思ったので、急遽アンケートです。
大士のヒロイン全員にパートナーデジモン付けるべきかどうか!?
パートナー有になった時の物語への影響としては、イベントの順番が変わりますね。
予定よりも嫁さん達が早く来ます。
どんなデジモンにするかは、自分の独断になりますが………
そうなると、シルフィードの立つ瀬が全くなくなります(汗)
ともかく、投票お待ちしてます!

大士のヒロイン全員にパートナーデジモンを付けるべきか?

  • 是非ともつけるべき!
  • ヒロイン自身が魅力的なので別にいいです。
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