ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第34話 デニティス(?)降臨

 

 

 

 

王都を出て2週間と少し。

俺達は漸くエクスプローラー聖国の首都に到着した。

やはり文明の利器が発達していないこの世界では、国1つ跨ぐだけでも時間がかかる。

ぶっちゃけ、ドルモンをドルゴラモンにでも進化させて乗ってくれば、1日どころか1時間も掛からない道程だったりする。

首都は、サーバー王国の王都とは違い、人口は多そうだが、人々の活気と言うか、人々の騒めきというものが少なく、寂しさすら感じた。

一応魔族であるクオンにはフード付きのローブを着せ、獣耳と尻尾を隠している。

そして、使者の案内で大聖堂へ案内された。

それは、凄まじく煌びやかな宮殿のような教会だった。

大理石と思われる磨かれた壁太陽の光を反射し、キラキラと輝いている

 

「うわ、すっげ」

 

俺は思わずそう零す。

あまり芸術には興味の無い俺だが、この大聖堂は有無を言わさない迫力がある。

内心、金の無駄遣いとも思っているが。

 

「う~ん…………デニティスってこんな趣味あったかなぁ…………?」

 

葵は何やら首を傾げている。

大聖堂の中へ入ると、広いホールを抜け、礼拝堂らしき場所へと通される。

その礼拝堂もかなり広く、数百人から千人規模の信者たちが祈りを捧げられるようになっている。

更に壁や天井には、名のある芸術家が描いたと思われる絵画が描かれていた。

 

「ふわ………うちの村の教会とは比べ物になりません………」

 

エミリアがその大きさに圧倒されている。

フェート村の教会は、入ってすぐに礼拝堂があって、後は神父用の部屋がある程度の小さな教会だからな。

そのまま中央の通路を通り、正面の一番奥には階段の先に作られた祭壇と、その後ろに大きな石像が祀られていた。

その石像は、中々整った顔をした、ダンディーなオジサンだ。

背中には二対の翼も持っている。

もしかして、これがデニティスの像なんだろうか?

祭壇の周りには、聖職者らしき白い衣を纏った者達が並んでおり、祭壇の前には偉そうな男性が立っている。

教皇とか聖王とかその類だろうか?

その傍らに他の者達とは違う特別な衣を纏ったそれなりに美人な少女も控えていた。

因みに、その教皇らしき男は、他の線の細い信者たちとは違い、中々に肥え太っている。

見た限りだと破戒僧っぽいな。

 

「勇者達よ。前へ」

 

その言葉に、一緒に来ていた山口、中島さん、パチモン勇者が迷わずに前に出た。

俺は前に出ようとは思わなかったが、周りの信者たちに促され、仕方なく前に出た。

 

「遠路はるばるご苦労だった。異界から召喚されし勇者達よ。余はエクスプローラー聖国の聖王であり、デニティス教の教皇、聖ディバイン3世である」

 

教皇と名乗った男は偉そうな口調で話し出した。

召喚された他の3人は、恐縮そうに畏まった。

俺は平然と立っていたが。

 

「貴君らの活躍は聞き及んでおる。召喚されて僅か数ヶ月でデジモンを完全体まで成長させ、サトジ殿は元より複数のデジモンを従え、完全体も2匹持っていると…………そして………」

 

教皇の目が俺に向く。

 

「タイシ殿は、伝説の究極体を従え、先の魔族侵攻も人間族を護る為に前線に立ち、多大な功績を上げた事も聞き及んでいる。此度の働き、真に大儀であった。褒めて遣わす」

 

全く持って感謝の欠片も無い上から目線の言葉を投げかけられた。

やって当然と言いたげだな。

俺は呆れて言葉が無かった。

 

「貴君らには、この聖ディバイン3世の名において、『救世の勇者』の称号を贈ろう」

 

「謹んでお断……………」

 

「そして!」

 

俺が即答しようとした瞬間、言葉を被せられる。

 

「タイシ殿には先の魔族侵攻の功績も踏まえ、我がデニティス教の聖女、マリアとの婚姻を宣言しよう!」

 

「……………は?」

 

俺は予想外にも程がるほどの言葉に、思わず素っ頓狂な声を漏らした。

 

「ちょ!? いきなり何言ってるのよ!?」

 

後ろからアリスの声が聞こえた。

 

「選ばれし『勇者』には、同じく選ばれし『聖女』が付き従うべきなのだ。『勇者』と『聖女』が結ばれ、人々に希望を齎す。これは即ち、デニティス様によって定められた『運命』なのだ!」

 

教皇は高らかに宣言する。

すると、教皇の傍らに控えていた少女が歩き出し、俺の前に来ると跪いた。

 

「マリアと申します。どうぞよしなに………」

 

「…………………俺には将来を誓い合った恋人が居るんだが?」

 

「残念ですが、諦めていただく他ないかと。わたくし達の婚姻は、デニティス様によって定められた『運命』です。あなたとその方とは結ばれぬ『運命』だったというだけです」

 

聖女らしいマリアの言葉。

『運命』を完全に受け入れ、疑う事すら知らないセリフだ。

 

「あんたと結ばれることが『運命』ね…………………ハッ!」

 

俺は思わず鼻で笑ってしまった。

 

「そいつはおかしいな。俺の元々の『運命』は、『誰とも結ばれない』はずだが?」

 

これは葵から聞いた、運命の上級神様が言った言葉だ。

 

「何を…………?」

 

「俺と結ばれるには、『運命』を超えなきゃいけない。『運命』を受け入れるだけのアンタが、俺と結ばれるなんて絶対にありえない」

 

ハッキリ言って、このマリアとか言う聖女には、魅力を全く感じない。

 

「デニティス様の御意思に逆らうというのですか…………!?」

 

聖女の目が厳しくなる。

すると、

 

「好き勝手言わないで欲しいな」

 

いつの間にか、葵が俺の前に歩み出て来ていた。

聖女の前に立つと、

 

「何者です……!?」

 

「大士の恋人だよ」

 

聖女の疑問に葵が即答する。

 

「デニティス様の決定に異を唱えるというのですか………!?」

 

「デニティスの決定じゃなくて、あなた達の権威を盤石にしたいが為の決定でしょ?」

 

すると、聖女は嘲笑のような笑みを浮かべ、

 

「何を馬鹿な事を。デニティス様の聖女であるこのわたくしが、デニティス様直々に神託を受けたのですよ? それに間違いなどございません」

 

「デニティス直々の神託?」

 

聖女の言葉に、葵は疑問符を浮かべるように首を傾げた。

 

「ん~? 確かにあなたは普通の人よりは聖女の資質を持ってるみたいだけど、『神』直々の神託を受けられるほどじゃないんだけどなぁ………精々、神に使える『天使』の声を聞ける程度だと思うんだけど………」

 

葵が聖女をジーッと見つめながら呟いた。

 

「そうなのか?」

 

俺が聞くと、

 

「うん。大士にも分かり易く言えば、聖女や神官の資質を数字で表すと、普通の人が『1』。カトレアさんやエミリアの資質を『100』とすると、この子の資質は『20~30』って所かな?」

 

「微妙だな」

 

「いや、十分凄いよ。カトレアさんやエミリアが規格外すぎるだけで。それでも『神の声』を聞く為には、資質が『50』以上はないと無理だから。因みにそこにいる教皇さんは、普通に『1』だね」

 

単なる一般人と変わりがないと。

 

「やっぱりエミリアやカトレアは凄いんだな」

 

俺は後ろにいるエミリアに目をやる。

そのエミリアは、俺達の行動にあわあわと狼狽えている様だが。

 

「さ、先程から聞いてれば、このわたくしが『聖女』に相応しくないと、そう仰りたいのですか!?」

 

「そうは言ってないけど、あなたが受けた『神託』は、デニティス本人から受けたのか疑問な所って言いたいの」

 

葵は平然と言い返す。

すると、聖女は俺の方に視線を向け、

 

「あなたも! 『勇者』でありながらデニティス様の決定に逆らうのですか!?」

 

「葵達と別れてアンタと結婚しろっていうのならお断りだ。悪いがアンタには魅力を感じないし、何より俺は葵達を手放す気は更々無い。そもそも、俺はデニティス教信者じゃないし」

 

俺がそこまで言うと、

 

「そうよ! 私達には、私達の信じる神様が居るの!」

 

「運命神 アルオイス………それが私達の信じる女神様の名………!」

 

アリスとエリスが、俺の両腕にしがみ付くようにしながらそう言う。

 

「アルオイス………? そのような神など聞いた事がありません………そのような無名の木っ端女神より、偉大なる神であるデニティス様に従いなさい!」

 

「お断りよ! 『運命』に流されるだけが幸せなんて言ってる神様なんか、敬えるわけないでしょ!」

 

「私達は、『運命』を変えたから、今ここに居る………!」

 

「なっ…………!?」

 

アリスとエリスの言葉に、聖女は驚愕の声を漏らす。

その時だった。

 

「おやおや、人間如きが言ってくれるじゃないか……………」

 

礼拝堂に少年らしき声が響いた。

 

「ッ!?」

 

俺はその声が聞こえてきた方向、上を向く。

すると、天井にあるステンドグラスから眩い光が降り注ぎ、バサッという羽音と共に、2つの影が舞い降りてきた。

 

「おっ……おおっ…………!」

 

それを見た教皇が、涙を流しながら感嘆の声を上げた。

 

「天使様…………!」

 

聖女も胸の前で手を組みながら、その場に跪く。

周りにいた信者たちも、次々と跪いた。

 

「タイシ!」

 

カイル、リティナ王女、クラウディア、エミリア達が、クオンを連れて俺の近くに駆け寄ってくる。

 

「あれが………天使…………」

 

カイルが天使を見上げながら呟く。

天使が放つ『神気』に当てられているのか、カイル達は今にも跪きそうだ。

現に一緒に来ていた王子サマや兵士達、召喚組の3人は跪いていた。

皆も、初めて受ける『神気』に耐えきれそうになりそうだった時、

 

「跪かなくてもいいよ」

 

葵がその一言を放つ。

 

「アオイさん………?」

 

エミリアが呆然とした声を漏らす。

その一言で、皆への負担が一気に軽くなったようだった。

因みに俺は素で平気だった。

だって、上級神様の『神気』と比べれば、太陽と豆電球みたいなものだし。

 

「へぇ………僕達を前にして跪かない人間が居るなんてね」

 

少年のような雰囲気を持つ天使がそう言う。

 

「生意気な………デニティス様の僕であり、使いである我々を前にして、その様な不遜な態度。万死に値する」

 

もう1人の、堅物そうな雰囲気の天使は、忌々しそうにこちらを見下している。

2人の天使は祭壇の少し上に留まると、

 

「で? 天使が直々に何しに来たの?」

 

葵が平然とした態度で問いかける。

 

「ふん。デニティス様の意に従わぬ愚か者共に、身の程を分らせるためだ」

 

堅物の方の天使が答えた。

 

「……………下界の人間に直接干渉する事は、『神の掟』に反する事だったと思うけど?」

 

葵は再度問いかける。

 

「人間とは愚かで矮小な存在だ。よって、我々高位な存在によって正しく導かれなければならん」

 

堅物天使はそう答えるが、葵の質問に対して全くの答えになって無いな。

 

「現に、こうしてデニティス様のお決めになった『運命』に逆らい、見苦しく生にしがみ付く愚か者達がいる」

 

堅物天使はそう続けると、俺の横にいるアリス、後ろにいるクラウディア、そして、カイルの隣にいるリティナ王女を順に指差す。

 

「貴様と貴様、そして貴様も。貴様達は本来の『運命』では、既に『死』んでいなければならない筈なのだ!」

 

そう言い放つ堅物天使。

 

「「「ッ!?」」」

 

指差された3人は息を呑んだ。

 

「クラウ達が………死んでいた………!?」

 

エミリアが驚愕の声を漏らす。

 

「ついでに言えば、君達も落ち零れのまま学院を中退するはずだったんだけどね」

 

少年天使がエミリア、カイル、エリスを見ながら口を挟む。

 

「ここまで『運命』が狂っちゃった原因は…………」

 

少年天使はこれ見よがしに俺を見てきた。

そこで俺は察する。

 

「…………俺か」

 

そう呟く。

 

「タイシ……?」

 

エリスが俺を見る。

 

「俺がこの世界に召喚されなければ、カイル、エミリア、エリスと関わることは無かった。俺が3人と関わらなければ、3人はパートナーとの絆を深められずにいた事は容易に想像できる。更に、俺………デルフが居なければ冒険者実習の時にデススコーピオンの存在に気付くことは無かったし、クラウディア達が追われてることも知らずに撤退していただろう。そうなれば、クラウディア達もデススコーピオンに殺されていたことになる」

 

「「「「「「ッ!?」」」」」」

 

6人が再び息を呑む。

 

「そういうことだよ。異世界から人間を呼び込むことによって、多少『運命』が狂っちゃうことは予想出来てたけど、君はやり過ぎだ」

 

少年天使は俺を責めるような口調だ。

 

「…………」

 

俺はそれを黙って聞いていると、

 

「狂ってしまった『運命』は、正さねばならん」

 

「それに、君は神聖なこの場に、悪しき存在を招き入れた罪人でもあるからね………!」

 

堅物天使と少年天使が見るのは、アリス、クラウディア、リティナ王女。

そしてクオンだ。

堅物天使が手を前に翳すと、突風が巻き起こった。

 

「「くっ!」」

 

「「「「きゃっ!?」」」」

 

何人かが声を漏らす中、その突風によってクオンの被っていたフードが外れ、クオンの狐耳が露になった。

 

「なっ!? ま、魔族!?」

 

教皇が声を上げる。

 

「見たかい? 彼はあろうことかこの神聖な場所に汚らわしき魔族を招き入れたんだよ」

 

少年天使が煽るような言動をする。

 

「何と言う事だ………! 魔族が侵入するとは………! 者共、であえぃ!」

 

時代劇のような口ぶりで教皇が叫ぶと、白い鎧を纏った騎士達が礼拝堂に雪崩れ込んできた。

そして、同時に天使型のデジモンであるピッドモンも何体か確認できた。

 

「神聖騎士団よ! 不浄な魔族と、デニティス様の定めた『運命』に逆らう愚か共達に、神の鉄槌を下すのだ!」

 

教皇はそう叫ぶが、

 

「……………神聖騎士団と言う割には、エンジェモンすら居ないんだな」

 

神聖騎士団とやらを見た俺はそう零す。

神聖騎士団とやらには、完全体のホーリーエンジェモンはおろか、エンジェモンすら見当たらなかった。

ピッドモンはエンジェモンの下位互換というイメージが強いからなぁ。

確か初出がゲームの初代デジモンワールドの雑魚敵としてだったか。

まあ、こいつ等はどうとでもなるからいいんだが、

 

「やっぱりお前達は『悪』だったんだな!」

 

山口が俺達を見て叫んだ。

 

「リティナ………我が妹でありながら、デニティス様の定めに従って無かったとは………愚かな奴め……!」

 

「お兄様………!」

 

王子サマは実の妹であるリティナ王女を仇の様に睨んでるし。

 

「…………で? だったら何だ?」

 

俺は否定せずに聞き返す。

すると、堅物天使が高らかに叫んだ。

 

「偉大なるデニティス様に従いし者達よ! そこに居るのは愚かにもデニティス様に逆らいし『神敵』である! 今こそ神の鉄槌を下し、『運命』の流れを正常に戻すのだ!」

 

「「「「「「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」」」」」」」」

 

堅物天使の言葉に、神聖騎士団の騎士達はヒートアップする。

 

「手始めに、汚らわしい魔族を! そして、みっともなく生き恥を晒す女共を冥界へ旅立たせぶぺらっ………!?」

 

「………ぶぺら?」

 

堅物天使の途中で上げた変な言葉をクオンが不思議そうに復唱した。

堅物天使が何故そんな声を上げたのかと言えば、俺が一足飛びで堅物天使に近付き、その顔面に拳を叩き込んでいたからだ。

 

「ふんっ!」

 

俺はそのまま拳を振り抜き、堅物天使を床に叩き落す。

 

「……………え? ちょ………? 今………殴っ………? えええっ………!?」

 

少年天使は何が起きたのか理解して無かったのか狼狽えた声を漏らす。

床に着地した俺は、再び地面を蹴ると、少年天使に肉薄する。

そのまま拳を振り被ると、

 

「ちょっ………ま………!?」

 

「うぉらぁああああああああああっ!!」

 

少年天使の制止を無視して拳を叩き込んだ。

 

「うごぉっ!?」

 

少年天使も床に叩きつけ、2人揃って床に伸びている。

 

「て、天使様っ!?」

 

聖女が声を上げた。

 

「貴様! 天使様に手を挙げるとは、無礼千万! 万死に値する!!」

 

教皇も俺に向かって叫んでいるが、

 

「俺の『大切』に手を出す奴は、例え『神』だろうとぶん殴る。それが俺の信条なんでな」

 

自分の拳にデジソウルを宿しながら言い放った。

 

「「ッ………!?」」

 

教皇と聖女は気圧された様に下がった。

すると、

 

『そうか。では、試してみたまえ』

 

再び礼拝堂の中に声が響いた。

先程よりも強い光が天井のステンドグラスから降り注ぎ、立派な衣を着た2対の翼を持つ男性の姿をした者が、舞い降りてきた。

その男は、礼拝堂の祭壇に祀られている石像の姿そのままの男だった。

それじゃあ、この男がデニティスか?

 

「お、おお………そのお姿は…………」

 

「デニティス様……………」

 

教皇と聖女は涙を流しながら再び跪いた。

 

「………そう。我はデニティス………全知全能の『神』である!」

 

静かに、だが、それでも良く通る声でそう言い放った。

 

「まさか、生きている間にデニティス様の御尊顔を拝見できるとは………何たる幸運………自分の『運命』に感謝します………!」

 

感極まったような声を漏らす教皇。

 

「『跪き頭を垂れよ。汝らの前に居るのは『神』であるぞ!』」

 

「「「「「「「「「「ははぁ~………!」」」」」」」」」」

 

その言葉通り、跪いて頭を垂れる一同。

俺達はやってないけどな。

それに気付いた教皇が、

 

「貴様ら! 『神』の御前であるぞ! 跪かんかぁっ!!」

 

俺達に向かってそう叫ぶ。

 

「よい」

 

「し、しかしデニティス様…………」

 

「よいといった」

 

「は、ははっ………!」

 

教皇はデニティスの言葉に頭を下げる。

デニティスは俺達に向き直ると、

 

「『跪け』」

 

『神言』を言い放った。

 

「あぐっ……!?」

 

「身体が……勝手に………!?」

 

アリス、エリス、クラウディア、エミリア、カイル、リティナ王女の6人が自分の意思に反して跪こうとしている。

 

「神の言葉には逆らえんぞ。『跪け』!」

 

先程よりも強い言葉が発せられる。

 

「くうぅっ!?」

 

6人が次々に膝を着いて行く。

その様子を満足そうに眺めるデニティス。

だが、

 

「ふ……ざけんじゃ………ないわよっ…………!」

 

アリスがそう言いながら、よろよろと立ち上がった。

 

「例え………アンタが本当の『神』だとしても…………私とエリスの中を引き裂く『運命』を定めたアンタなんかに………誰が跪くもんですかっ………!」

 

「そう………自分の『運命』は…………自分で決める………!」

 

エリスもそう言いながら立ち上がる。

 

「私達が信じるのは………自分の『運命』は自分で決める事を良しとする、アルオイス様よ!」

 

アリスもそう言い放つ。

 

「…………………フッ、アルオイスか……………」

 

その言葉を聞くと、デニティスはニヤッと笑みを浮かべた。

 

「何も知らない愚かな汝らに教えてやろう……………『天界にアルオイスという神は存在しない』!」

 

「「ッ!?」」

 

その言葉に、アリスとエリスは目を見開く。

 

「で、出鱈目よ!」

 

「出鱈目では無い。我が身の存在全てに誓ってもう一度言おう。『天界にアルオイスと言う神は存在しない』と」

 

「う、嘘よ………!」

 

「タイシ………!」

 

アリスとエリスは、縋る様に俺を見てくる。

 

「……………まあ、嘘は言っていないな」

 

俺はあえてその言葉を肯定した。

 

「そんな………」

 

その言葉がショックだったのか、抗おうとしていた『神言』に逆らえなくなり、2人は再び膝を着く。

そのまま頭を垂れようとして、

 

「………………居ます」

 

その言葉に踏みとどまった。

その言葉を口にしたのはエミリアだ。

 

「アルオイス様は………居ます………!」

 

エミリアは真剣な表情でそう告げる。

 

「ふっ、何度も言うが、『天界にアルオイスと言う神は存在しない』。これは紛れもない『真実』なのだ」

 

デニティスは尚もそう言う。

しかし、

 

「いいえ。アルオイス様は居ます」

 

エミリアはそう言いながら立ち上がる。

 

「私達の…………心の中に…………!」

 

エミリアは目を伏せながら自分の胸に手を当て、

 

「例えアルオイス様と言う神が居なかったとしても…………その存在が、『偽り』だったとしても…………………私達が『アルオイス様』を信じて歩いてきた道は、決して『偽り』なんかじゃないから!」

 

そう言い放つと同時に目を見開く。

 

「ッ…………!」

 

その姿に俺は見惚れた。

 

「………ああ、その通りだ…………!」

 

そして、そのエミリアの言葉に応えるようにクラウディアも立ち上がり始めた。

 

「私は………アルオイス様と言うよりも、リア達を信じてここまできた………! アルオイス様が居るか居ないかなど些細な事………! 私は………リア達を信じる! 今までも! そしてこれからも!」

 

「クラウ………!」

 

完全に立ち上がったクラウディアに、エミリアが笑みを向ける。

そして、そんな2人に負けじと、アリスとエリスも再び立ち上がろうとしていた。

 

「クラウディアの言う通りね………! 確かにアルオイス様が居るか居ないかなんて如何でもいい事だったわ。私は、惚れた男を信じてここまで来たんだから……!」

 

「『神』が如何とかなんて関係無い………タイシと一緒に居たい………それが私達の望み……!」

 

この4人は、完全に『神言』を振り切っていた。

すると、

 

「……………嬉しいなぁ」

 

葵が本当に嬉しそうな笑みを浮かべながらそう零した。

 

「エミリア、本当にいい子だね。聖女の鑑だよ。もちろん他の皆も」

 

「ああ。俺も惚れ直したよ」

 

俺は本音を言う。

 

「………って言うか、今更だけど、何であんた達は平気なのよ!?」

 

アリスが本当に今更な事を聞いてきた。

 

「『神言』は強い心を持てば跳ね除けるのは難しい事じゃない」

 

俺はそう言う。

 

「なっ!? き、貴様………!?」

 

デニティスは声を荒げる。

 

「さて………」

 

俺はデニティスに向かって一歩踏み出す。

 

「『止まれ』!」

 

デニティスは俺に向かって『神言』を放つ。

だが、俺は構わずに2歩目を踏み出す。

 

「『止まれ』!!」

 

デニティスは再び叫ぶが、俺は気にせずにズンズンと歩みを進めていく。

 

「『止まらんかぁっ』!!!」

 

デニティスは声を荒げるが、当然の如く俺はその『神言』をスルーし、

 

「ショボい『神言』だな………」

 

拳を握りしめ、デジソウルを宿す。

 

「俺の歩みを止めたきゃ…………」

 

その拳を振り被り、

 

「『止まっ……………』」

 

「上級神様クラスの『神言』でも持って来いやぁっ!!」

 

そのいけ好かない顔面に叩き込んだ。

 

「ぶごぉっ!?!?」

 

「うおらぁあああああああああっ!!!」

 

その拳を振り切ると、後方に一直線に吹き飛び、祭壇に立てられていた10mほどある石像の胴体の中央に激突。

その罅が石像全体に広がり、ガラガラと崩れ去った。

 

「うぉ、うぉのれぇぇぇぇぇっ………!!」

 

デニティスは鼻血を出しながら忌々しそうな声を上げて起き上がる。

俺がしぶといと思っていると、葵が起き上がろうとしたデニティスに歩み寄った。

 

「!?」

 

「ねえ、ちょっと聞きたいんだけどさ」

 

葵がそう言って呼びかけると、

 

「何で天使がデニティスを………『神』を名乗ってるのかな?」

 

驚くべきことを問いかけた。

 

「ちょっと待て葵。何? そいつがデニティスじゃなかったのか?」

 

「うん。天使たちを束ねる天使長クラスではあると思うけど、少なくとも『神』じゃないね。そもそもデニティスの見た目って小学生から中学生ぐらいの少年の姿だし」

 

「おおぅ…………」

 

俺は若干気が抜ける。

葵はデニティス……の名を騙っていた天使に向き直ると、

 

「で? どうしてデニティスの名を騙っていたのかな? 天使が『神』を名乗るのは『神の掟』でも重罪だよ?」

 

再び問いかけた。

 

「ッ…………! 確かに私はデニティス様では無い………!」

 

「なっ………!?」

 

「そ、そんな………!?」

 

その言葉に驚いたのは、教皇と聖女だ。

 

「だが! 私はデニティス様よりこの世界の全権を任されたのだ! 言わばデニティス様の名代! 私の言葉はデニティス様の言葉! 私の意思はデニティス様の意思なのだ!!」

 

「いや、絶対に違うだろ………」

 

俺は天使の言い分に呆れる。

 

「ああ。デニティスは面倒くさがりのサボり神だからね…………部下の天使に丸投げして後はほったらかしだから、こういう勘違いしちゃう天使も出てきちゃうか………」

 

葵は何処か納得した様子だが。

 

「き、貴様!? ただの人間の分際で私だけでなく『神』であるデニティス様に何たる言い草! もはや許しては置けん!!」

 

その天使は天を仰ぐ様に手を広げると、

 

「真のデニティス様のお姿をその目に焼き付け、その『力』の前にひれ伏すが良い!!」

 

その天使から光が天へ向かって伸びていく。

 

「デニティス様! 今こそそのお姿を現し、そして、御身を乏しめた狼藉者に『神罰』を下したまえ!!」

 

その直後、先程の天使たちとは比べ物にならない強い光が降り注ぎ、光の柱がその場に立った。

 

 

 

 

そして――――

 

 

 

 

 

その光の柱の中から現れたのは――――

 

 

 

 

 

黒髪をポニーテールにした2対の翼を持った美しい天使と――――

 

 

 

 

 

その天使を侍らせた、短い癖のある金髪を持つ少年のような姿をした――――

 

 

 

 

 

紛れもない『神』の姿がそこにあった――――

 

 

 

 







オリジナル異世界編第34話です。
はい、聖国編の一話目でした。
下手すれば1話だけで終わりそうな予感もありましたが、長くなってくれたので2話構成でいきます。
というわけで、今まで好き勝手やってたのはこの世界を丸投げされた天使長でした、の巻。
ちょっと纏まりが悪かったところもありますが、まあ許してください。
次回はデニティス(真)の登場です。





大士のヒロイン全員にパートナーデジモンを付けるべきか?

  • 是非ともつけるべき!
  • ヒロイン自身が魅力的なので別にいいです。
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