ステンドグラスから降り注ぐ光の柱の中から現れたのは、黒髪をポニーテールにした2対の翼を持つ美しい女天使と、その女天使を侍らした短い癖のある金髪の少年の姿をした『神』の姿。
その『神』から発せられる存在感は、先程の天使とは比較にならない。
「「「「「「「「「「……………………………………」」」」」」」」」」
その存在感に、流石のアリスやエリス、クラウディアにエミリアも含めたその場の全員が声を失っていた。
その『神』が地面に降り立ち、その傍に控えるように女天使も降り立つ。
そして、ゆっくりと開いた『神』の眼が、呼び出した天使を見据えると、
「………………ああ、もう……! いきなり呼び出すなんて、一体何の用だいザキエル?」
面倒臭そうな素振りを隠しもせずに、投げやりな言葉で本物のデニティスが言った。
その一言で、最大限になっていた俺の警戒心や緊張感が、一気に四散してしまった。
「最近は僕も暇じゃないんだよ? 新しく補佐役に任命された天使が厳しくてさ………」
デニティスはそう言いながら、斜め後ろに控えている女天使にこれ見よがしに視線を向けた。
「……………」
その女天使は澄まし顔でスルーしているが。
「………で? 僕を呼び出すなんて一体何の用なのさ。あんまりこっちに長居すると、仕事が溜まって後で大変な目に遭うんだけど?」
デニティスが面倒くさそうに問いかけると、
「ふ、不敬でございます! 矮小な人間が、デニティス様の僕たる我々天使に手を挙げた上、あろうことか至高の存在であるデニティス様を乏しめる発言をしたのでございます!!」
ザキエルと呼ばれた天使はデニティスの態度に何か言いたげだったが、それをぐっと堪え、鼻血を流したままデニティスに懇願の様に必死に告げる。
デニティスは、その言葉を聞いて鼻血を流すザキエルの顔を眺めた後、近くで気絶している2人の天使に気付いた。
「ありゃりゃ………この2人は完全に伸びちゃってるや」
半ば呆れたような口調でそう言うと、
「天使を倒しちゃう人間か~。凄い人間も居たもんだね~!」
何処か楽しそうに笑いながらそう言った。
「笑い事ではございませんぞ! いえ、我々の事は万歩譲っていいとして、デニティス様を乏しめた事は、決して許される事ではございません!」
ザキエルは諭すような口調でデニティスに進言する。
「『神』を乏しめるって、無神論者も腐るほど居るのに、その程度でそんなにカッカしなくてもいいじゃん」
だが、デニティスはどうにも興味無さげだ。
「デニティス様! あなたは人間等とは比較にならぬ程の高位な存在なのですよ! その御身に対し、言葉とはいえ乏しめるなどとは言語道断!!」
ザキエルは、注進を続ける。
「あ~はいはい。そんな熱くならないで、分かった分かった。で? 人間が僕の事を何て言ったのさ?」
いい加減面倒になったのか、デニティスは投げ遣りに受け応える。
「はい! あろうことか、至高の『神』であるデニティス様を『面倒くさがりのサボり神』等と宣ったのでございます!!」
ザキエルのその言葉を聞くと、一瞬呆気に取られたような表情をして、
「……………あっはっは! 言ってくれるじゃないか!」
顔に手を当てながら笑い声を上げた。
「ですから、笑い事ではございません!!」
ザキエルはデニティスの反応に不満があるのか、叫び声を上げる。
「いや~、それは笑うしかないでしょ………」
「一語一句間違いも誤りもありませんからね」
そこで初めて女天使が口を開いた。
「一々言わなくても分かってるよ、アリエル。それに、最近はちゃんと仕事してるでしょ?」
「私が目を離した隙にサボろうとしなければ、素直に頷けるのですがね?」
アリエルと呼ばれた女天使は、ジト目気味な視線をデニティスに向ける。
「………だって、アリエルの持ってくる僕の仕事量が、明らかに他の『神』よりも多いじゃないか」
「私が以前仕えていた『あの御方』程ではないにしろ、デニティス様も優秀な『神』であらせられるのですから、その能力に見合った仕事量を割り振っているだけです。それに、多いと言っても、『あの御方』が受け持っていた仕事の20分の1程度です」
「それでも他の『神』の10倍は仕事あるんだけど!?」
「デニティス様は、普通の下級神の5倍は優秀なので問題ありません」
「いや、倍はキャパシティ足りてないんだけど!?」
「問題ありません。普通の下級神の数十倍優秀だと言われていた『あの御方』は、最終的に200倍の仕事を熟していたので」
「いやいや! 仕事が恋人と言っても過言じゃないワーカーホリックな『彼女』と一緒にしないでくれよ!?」
なんか、有能な秘書に仕事を強制させられる社長を見ている気になる。
というか、さっきから言ってる『あの御方』とか『彼女』ってもしかして………
「アリエル貴様! 先程からデニティス様に対して無礼だぞ!?」
アリエルの態度に我慢ならなかったのか、ザキエルが叫んだ。
だが、アリエルはその怒りをスルーすると、
「私は、上級神様直々にデニティス様の『補佐』と言う名のお目付け役を命ぜられています。よって、あなたに何か言われる筋合いはございません」
しれっとそう言う。
「ホントだよも~………アリエルの監視が厳し過ぎて、遊びにも行けやしない」
「『あの御方』が抜けた穴を埋める為には、その様な暇などあろうはずがございません」
「はぁ~……………所でザキエル? 僕を『面倒くさがりのサボり神』って言ったのは誰だい?」
「あ、あそこの人間の女でございます!
ザキエルは葵を指差しながら叫ぶ。
デニティスの視線が葵の方を向くと、
「…………………あれ………? 彼女は……………」
何かに気付いたように声を漏らした。
「真偽は如何あれ、『神』の苦労を知らぬ人間如きが『神』を愚弄するなど、あっていい筈がございません!」
これ幸いと、ザキエルは矛先を葵に向けようと必死だ。
だが、
「………君、本気で言ってる…………?」
心底呆れた声色と視線を、ザキエルに向けた。
「は………?」
ザキエルは意味を理解していないのか呆けた声を漏らす。
すると、
「あ、あの方は………!」
今まで無表情を貫いていたアリエルが、葵を見て驚愕の表情をしながら声を漏らした次の瞬間、
―――ドンッ!
「おおぅ!?」
デニティスの後ろに控えていたアリエルが葵に向かって一直線に飛び出し、その途中にいたデニティスを突き飛ばしつつ、葵の前に跪いた。
「お久しぶりでございます! 気付くのが遅れ誠に申し訳ありません!」
「あ~、うん。久しぶりだね、アリエル」
葵は困った様に返事を帰す。
「それと、今の私は『人間』だから、そんな風に畏まる必要は無いよ?」
「そうはいきません! あなた様は、私が今でも敬愛する主です!」
アリエルは跪きながら尊敬の眼差しを葵へと向ける。
話の流れからすると、このアリエルと言う女天使は、元々葵………アルオイスの補佐的な立場だったのか?
「アリエル貴様! デニティス様を突き飛ばす無礼を働く所か、ただの人間に首を垂れるとは何事か!?」
ザキエルがアリエルに詰め寄った。
だが次の瞬間、
「無礼なのはあなたです! この方をどなたと心得るのですか!?」
アリエルがザキエルの頭を鷲掴むと、そのままザキエルの頭を床へ叩きつけた。
「ぐはっ!?」
「頭を床に擦りつけて許しを請いなさい!」
頭を床に擦りつけるどころか、床が砕けて地面にめり込んでるんだが?
「申し訳ありません! デニティス様の下に配属されて日は浅いとはいえ、部下の不祥事は私の不徳の致すところ! 何なりと処罰を!」
「あ~、うん。だから、今の私は『人間』だから、畏まる必要も無いし、処罰する権限も無いから………」
葵は相変わらず困った様子だ。
「何と寛大なお言葉………!」
アリエルは何か感動のあまり泣きそうな勢いだ。
すると、
「な、何なの一体!? どういう事!? 何で天使が葵に跪いてんの!?」
漸く我を取り戻したアリスが、目の前の光景を見ながら叫んだ。
「あ、あの天使様の口振りからすると、まるで以前にアオイに仕えていたような口振りだが…………」
クラウディアは動揺しつつも、目の前で起こっている出来事を何とか把握しようとしていた。
その時、アリエルに地面に頭を埋められたザキエルが、頭を押さえられながらじたばたともがき出し、
「な゛、な゛に゛を゛ずる゛………!?」
這う這うの体でそう抗議した。
すると、先程突き飛ばされたデニティスがザキエルに歩み寄り、
「君、本当に気付いて無いの?」
呆れた口調で問いかけた。
「な゛、な゛んのごどでじょう………?」
その様子に、ザキエルは困惑しながら問い返した。
「君さぁ~、『運命神』に仕える天使でも、下級の天使ならともかく、天使長ともあろうものが、彼女が誰か見抜けないのは問題だなぁ~…………? 現に、アリエルはすぐ気付いたでしょ?」
「当然です」
アリエルは言葉通り、当然だという態度だ。
すると、デニティスが葵へと向き直ると、
「やあ、久し振りだね。〝アルオイス〟」
葵にそう笑い掛けた。
「はっ………!?」
その言葉を聞き、ザキエルは素っ頓狂な声を漏らす。
すると、葵が淡い光に包まれ、
「……………久しぶりですね、デニティス」
白い翼が広がり、蒼銀の髪を持つ、女神アルオイスの姿となってそう返した。
「あ、あのお姿は……………!」
「村にある女神像と同じ………!?」
いち早く気付いたのはエミリアとカイル。
「あおいおねーちゃん………きれい………」
クオンも呆然と呟く。
「ア、ア、アルオイス………様……………!?」
ザキエルはその姿を見て、驚愕と同時に震えた声でその名を口にした。
「な………何故……………!?」
ザキエルは理解不能と言いたげに声を漏らす。
「何故って………アルオイスが人間に転生させられたのは、天界じゃ有名な話じゃん?」
そんなザキエルに向かってデニティスはそう言う。
「し、しかし! その転生先は、この世界では無かった筈!」
ザキエルが必死に言い返すと、
「そう言えばそうだったけど………そこのところどうなの?」
デニティスが葵……アルオイスに問いかける。
「………事の発端は、彼が『召喚』されてしまった事です」
アルオイスが俺に視線を向けながらそう言った。
「『召喚』?」
デニティスは、初めて知ったと言わんばかりに意外そうな表情をしていた。
「『神託』と称してこの世界の人間に『勇者召喚』を行わせたらしいのです。彼は、運悪くその勇者召喚の召喚者に選ばれてしまい、この世界に飛ばされました。私は、彼を連れ戻すために追って来たのですよ」
「…………君、そんな事してたの………?」
デニティスは目を細めつつザキエルを見下ろした。
「い、いえ! それは全て、デニティス様の御威光を高める為の………!」
「誰がそんな事頼んだのさ?」
声は大きく無いものの、『神』としての迫力は、ザキエルを黙らせる。
「召喚時に感じた『神力』から、私は並の『下級神』が召喚に関わっていると思いましたが…………」
「そう言えば、少し前にそれなりの量の『神力』を持ってかれた事があったなぁ………その時か………」
デニティスは、今思い出したと言わんばかりにそう言った。
「デニティス様は、面倒くさがりでサボり癖も持っていますが、『神』としての『力』は、並の『下級神』の5倍程の力を持っています。その内の一部を使ったのだとしたら、並の『下級神』程の力は使えると思われます」
アリエルが説明する。
「ふう………『下界への必要以上の干渉』も『異世界からの召喚』も、『神の掟』に引っかかる重罪の筈なんだけどねぇ………」
「ですからそれは、全てデニティス様の為に………!」
「だから、そんな事誰が頼んだのさ?」
再びザキエルを黙らせるデニティス。
「因みに、この世界のデニティス教の教義は、『汝、運命の流れに身を委ねよ。運命のままに進む道こそ汝の一番の幸福なり』というものらしいのですが?」
アルオイスがそう言うと、
「確かに面倒くさいから、昔、皆『運命』の通りに生きてくれればいいのに、って愚痴った事はあるけどさ、それを下界の子供達に強制させるほど『神』として落ちぶれてはいないつもりなんだけどねぇ………」
デニティスはやれやれと頭を掻く。
デニティスの話を聞いていると、この一連の騒動は、部下の天使の暴走という事か。
「世界1つを部下に丸投げして、まともに様子を見に来なかったあなたの責任でもありますよ」
「あ~、その通りなんだけどさ~…………こんな事なら、下界に遊びに行くときに、この世界にも来て様子を見とくべきだったなぁ~」
デニティスの表情は、後悔先に立たずといった感じだ。
それから溜息を吐くと、
「とにかくザキエル。君には罰を受けて貰うよ。少なくとも、天使長からの降格は覚悟してね」
「は、はい…………」
「それと、好き勝手やってたと思われるあの2人の天使もね」
デニティスは伸びている2人の天使に目をやる。
ザキエルは完全に項垂れた。
「それにしても………」
デニティスはそう言いながらアルオイスに向き直り、同時に後ろにいる俺にも目を向けた。
「そこの彼を追って来た……か。方法は知らないけど、そこまでするって事は、彼の事を気に入ってるのかな?」
面白そうな含み笑いをしながらアルオイスに問いかけた。
すると、
「ええ、もちろんです。私は彼を愛しています」
「……………………………………………え?」
真顔で返されたその言葉に、デニティスは長い沈黙の後、意外そうな声を漏らした。
「そ、それはもちろん『人間』としてだよね?」
デニティスは信じられない事を聞いたと言わんばかりに震えた声で問いかけた。
「両方です。人間『神代 葵』としても、女神『アルオイス』としても、私は彼を愛している」
「…………………………………………………………………………………………………」
アルオイスの答えを聞き、時間が止まったように固まるデニティス。
そして、
「……………………ッく、うっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!」
腹を抱えて大笑いを始めた。
「あ、あのアルオイスがっ………! 男を愛してるってっ………!」
笑い過ぎで涙を浮かべているデニティス。
「……………そんなに笑う事でしょうか?」
アルオイスは何処か不満そうな表情をする。
「だって……! 前に天界に居た時は、仕事が恋人ってぐらい役目に没頭してたじゃないか! 無自覚に万を超える男神を振った伝説を持つあのアルオイスがだぞ!?」
「……………はい?」
デニティスの言葉に、アルオイスは身に覚えの無い様な声を漏らした。
そう言えば、カズマやアクアが居た世界で会った女神のエリス様が、アルオイスは男神にモテていたって言ってたっけ。
でも、『格』の違いから気後れしてたって言って無かったか?
それを抜いても万以上無自覚で振ってたって事なのか?
そんで今更だが、エリスの名前は女神のエリス様と同じだな。
俺がそう思っていると、
「失礼」
アリエルと呼ばれていた女天使が、妙な威圧感を纏いながら、俺にズイッと迫って来た。
「な、何か………?」
俺が聞き返すと、
「あなたはアルオイス様を愛しているのですか?」
そう聞いてきた。
「ああ。俺は『葵』も………そして『アルオイス』も愛している」
俺はハッキリと答える。
「そうですか…………それはどの位愛していますか?」
何とも答えに困る質問が来た。
俺は、天使に如何言えば納得できるのかと少し考え、
「…………葵の……アルオイスの為なら、運命の上級神様に喧嘩を売ろうとするぐらいには………」
過去に会った事実を例に出して答えた。
「それは虚偽が過ぎるというものです………! 上級神様の前では、並の『下級神』ですら指一本動かせなくなるというのに………!」
例えが壮大過ぎて、逆に信じて貰えなかった!
「アリエル。彼の言っている事は本当ですよ」
「アルオイス様!?」
アルオイスが横から口を出す。
「大士は実際に上級神様と会い、そして私の為に上級神様の『神言』を跳ね除け、本気で戦いを挑もうとしていました」
「………では、本当に………?」
アリエルは信じられないと言った表情をする。
「はい」
アルオイスが頷く。
「うひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ! あのアルオイスが乙女のような顔をしているぞ! これは珍しいものを見た!」
デニティスが笑いながら言う通り、その時の事を思い出しているのかアルオイスは何処かうっとりした表情だ。
「『黙りなさい』」
「うごっ!?」
アルオイスは我慢できなかったのか、その言葉と共にデニティスの頬を殴った。
デニティスは吹き飛ぶが、ケロッとして起き上がる。
先程の言葉には、『神言』も加わっていたが、やはり力を封印されているアルオイスでは、デニティスに通用しない様だ。
「吃驚したぁ~! あのアルオイスが殴るなんて………!? 変われば変わるもんだねぇ~」
ある意味恋人ができた以上に驚いているデニティス。
「そりゃ『人間』として、19年生きてますから!」
『葵』の口調でアルオイスが言った。
「でも、前のアルオイスよりかは断然いいと思うよ」
「誉め言葉として受け取っておくよ」
そう言葉を交わす。
そこでアルオイスは思い出したように、
「ところでデニティス。この世界には『神力』によって外界からの干渉が出来ないように『膜』が張られています。私はこの世界の信者の願いもあり、何とか突破する事が出来ましたが、このままでは元の世界から迎えが来ることができません。取り払っておいてください」
『アルオイス』の口調でそう言った。
「あらま、そんな事までしてたんだ。徹底してるねぇ………」
呆れた様にザキエルを見下ろす。
「それじゃあ戻る時に取り払っておくよ。アリエル、そいつら拘束して」
「はい」
アリエルは淡々と返事をすると、手を翳して光の輪で3人の天使を拘束する。
すると、
「あ、あのっ……デニティス様………!」
デニティス教の聖女が、恐る恐るデニティスに声を掛けた。
「ん? 誰だい君?」
「ッ………! わたくしは、畏れ多くもデニティス教の聖女を務めさせていただいておりますマリアと申します」
「僕の聖女………? まあ、資質はそこそこあるみたいだけど………そこの彼女と比べるとねぇ……」
デニティスはエミリアに目をやる。
「エミリアは私の聖女ですよ」
釘をさすようにアルオイスが言った。
「ッ!」
そう言われたエミリアが、畏れ多いと言わんばかりに身を縮こませる。
「はぁ~、羨ましい。多分彼女の資質って、1兆人に1人ぐらいの資質の持ち主だよね」
「あなたの聖女も、1億人に1人位の資質の持ち主ですよ」
「桁が4つも違うじゃん」
デニティスが呆れた様に言う。
「そもそも、彼女は信仰というより依存に近いんだよね。何でも神に縋り付いて、そのお零れに預かろうって言う魂胆が透けて見えるよ」
「そ、そんな事は………!」
「今まで信じてたのが唯の天使と分かって、信仰が揺らいでるんでしょ? だから本物である僕にすり寄って来てる」
「ッ!?」
その言葉に動揺しているのが見て取れる。
「あなたは先程のエミリア達の姿を見て何も感じなかったのですか?
アルオイスが聖女に諭すように言う。
「あれこそが、本当の『聖女』たる姿です」
その言葉に、聖女はがくりと膝を着いた。
その時、
「ふん、下界に堕ちた神が偉そうに……!」
ザキエルがまるで吹っ切れたかのようにそう叫び出した。
「『よく聞け! その女神はな! 天界で罪を犯して下界に堕とされた神なのだ!』」
『神言』まで使って叫び出す。
「1人の人間の『運命』を狂わせ、死に追いやった罪深き神! それがその女神の正体だ! 本来であれば、数万年の幽閉か存在の消滅の罰を受けねばならなかった所を、上級神様のお気に入りと言う理由で減刑された卑怯な神だ! そのような神より、デニティス様こそが至高のかぶほっ!?」
「いい加減黙れ………!」
我慢ならなかった俺は、ザキエルの顔面にデジソウルの拳を叩き込んでいた。
「わーお。躊躇なく殴ったね」
デニティスが楽しそうな声を漏らす。
「アルオイスの罪についてはとっくに知ってることだし、何より俺がその張本人だ。俺が許している以上、テメェにどうこういわれる筋合いは無い!」
「大士………!」
アルオイスも嬉しそうな声を漏らした。
「凄いね君。格上の『存在』である天使を殴るなんて」
デニティスがそう声を掛けてくる。
「………もしアンタもこいつ等と同類だったら、この拳を叩き込むつもりだったんだがな」
デジソウルを纏わせた拳をデニティスに突きつける。
「へぇ………『神』を殴る気かい?」
「2回………いや、3回だな」
「何がだい?」
「過去に『神』を名乗ってた奴を殴った回数だ」
「本当かい?」
デニティスはアルオイスに確認するように目を向けると、
「本当です。大士は過去3度、『神』を名乗る者達を殴っていますよ」
「マジですかっ………!?」
デニティスの言葉が崩れる。
その位は驚いたようだ。
「それよりも、そろそろ戻らないと上級神様にお叱りを受けます。只でさえ仕事が滞っているのに、正式な手順を踏んだとはいえ、下界に長い時間顕現するのは心証が良くないでしょう」
「おっと、そうだったね」
アリエルの言葉に気を取り直す。
「じゃ、僕はこれで。アルオイスは出来れば早く天界に戻ってきてくれよ。そうすればまた僕が楽できるから」
「あと80年前後は戻るつもりはありませんし、もし戻ったとしても、以前ほど尻拭いはするつもりありませんからね。アリエル、デニティスの『
「はっ! お任せください!!」
アリエルは気合を入れた返事を返す。
「たはは、お手柔らかに」
そう言いながら光と共に天へと消えていった。
その場に残された俺達は、
「如何説明したもんかな…………」
呆気に取られた表情でこちらを見つめる一同に頭を悩ませるのだった。
オリジナル異世界編第35話です。
今回はデニティス(真)の登場でした。
さて、皆さんデニティスもくず野郎で大士に殴られる事を期待していた方が多かったと思いますが、実はデニティスは面倒くさがりのサボり癖があるだけで、やればできる子だったのです。
お目付け役に優秀な補佐が入ればこの通り。
期待外れだったらごめんなさい。
一応アルオイスには殴られたから許してね。
さてさて、次回は漸く………
お楽しみに。
大士のヒロイン全員にパートナーデジモンを付けるべきか?
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是非ともつけるべき!
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ヒロイン自身が魅力的なので別にいいです。