デニティス達が天界へ帰って行った後、アルオイスと共に皆の方へ向き直ると、
「「「「「「「「「「………………………………………」」」」」」」」」」
全員が呆気に取られた顔でこちらを見ていた。
「あ~………まあ…………」
俺は頭を掻きながら如何するかを考え、
「…………聞きたいことがあれば答えるぞ?」
何時だったかと同じように、質問を丸投げする事にした。
「いや、あの、えっと…………」
アリスは何か質問しようとしているが、頭が一杯一杯なのか、中々言葉が出てこない様だ。
すると、
「……………アオイは一体何者?」
幾分か冷静なエリスがそう聞いてきた。
「そ、そうです! アオイさんは、アルオイス様なんですか!?」
エミリアもそれが聞きたかったのか、声を大きくして問いかけてくる。
「正確には、葵は『アルオイスが人間に転生した』姿だ」
俺はそう答える。
「人間に……転生………?」
カイルが呟く。
「で、ですが、アルオイス様は存在しないと…………」
リティナ王女がそう言うと、
「ああ。『天界』には存在しないな。だってここに居るんだから」
俺はアルオイスの姿を見ながらそう答える。
アルオイスはニコッと微笑みを浮かべて見せた。
「私は『天界』で罪を犯し、その罰として人間に転生しました。故に、『今の天界』に私の居場所はありません」
「罪……と言うのは、先程あの天使が言っていた………」
アルオイスの言葉に、クラウディアが聞き返す。
「はい。ザキエルが言っていた事は事実です。私の過ちが1人の男性の『運命』を狂わせ、死なせてしまったのです。神の行いにより、直接人を……命を死に追いやってしまった事は、神の掟の中でも重罪の中の重罪です。本来であれば、先程聞いた通り、数万年の幽閉か存在の消滅を言い渡されていたでしょう」
「その………上級神様という方のお陰で減刑されたんですよね?」
エミリアが遠慮がちに質問する。
「正確には、少し違います」
「えっ………」
「上級神様は公平なお方………いくら覚えがよくとも、『神の掟』を根本から覆す真似を私情のみで行う事はありません」
「では、何故……?」
アルオイスはチラッと俺に視線を向けると、
「それは、私が死なせてしまった男性のお陰です」
「えっ?」
「上級神様がお詫びをするために、彼の魂を呼び寄せた時、彼は上級神様に私の減刑を願い出てくれたのです」
「「「「「「ええっ!?」」」」」」
その言葉に全員が驚く。
そこまで驚く事かね?
「あの時………罵詈雑言を吐かれても仕方ないと思っていた私にとって、私の減刑を願い出た彼の言葉は衝撃でした………」
「そ、そりゃ、自分を殺したと言っても過言じゃない相手の減刑を願い出るなんて、よっぽどの聖人君子じゃ無きゃ無理でしょ………」
アリスが半ば呆れた様に呟く。
「それは少し違いますね。彼は聖人君子ではありません。その時彼はこう言っていました。『偽善であり、自己満足であり、ただ格好つけているだけ。一時の感情からくる言葉であり、後から大いに後悔するかもしれない。でも、ほっとけないと思ってしまったのだから仕方ない』、と………彼は全てを自覚した上で、私の減刑を願い出てくれました……」
「「「「「「……………………………」」」」」」
その言葉に、カイル達は呆気に取られていた。
「そんな『彼』の魂を、私はとても強いと感じ…………そして同時に強く惹かれました…………」
「「「「「「えっ?」」」」」」
皆が素っ頓狂な声を漏らす。
それから、皆の視線がまさかと言う表情と共に、俺の方を向いた。
「えっと………アルオイス様が惹かれた男性って…………」
「もしかして………」
まあ、勘のいい奴なら気付くわな。
俺は軽く息を吐き、
「お察しの通り俺の事だ。アルオイスが過失で死なせたのが前世の俺で、上級神様がその詫びとして、記憶を持ったままの転生をさせてくれたんだよ」
「「「「「「ええええええっ!?!?!?」」」」」」
その言葉には、全員が盛大に驚いた。
「それで私も『神代 葵』として人間の女の子に転生したって訳」
突如として『葵』の姿に戻り、軽い口調でそう言う葵。
「本来は女神としての記憶と力は封印されてたんだけど、前にあった異世界召喚で、魂に影響を与える事が立て続けに起こって、封印が緩んじゃって、女神の記憶と少しの力を取り戻したの」
葵はいつもの笑顔でそう言った。
「「「「「「………………………」」」」」」
ポカーンとしている一同。
「え、えっと………結局アオイさんは、アルオイス様なんですよね……?」
エミリアが確認するように問いかける。
「まあ、アルオイスの生まれ変わりで、女神としての記憶と力もあるけど、前にも言った通り、今の私は『人間』の神代 葵だよ。だから、そんなに畏まらないで、今まで通りに接してね」
笑顔のまま葵はそう言い切る。
「いきなり色々な真実が明らかになって困惑しているのは理解できる。だけど、葵は特別扱いを望んでいるわけじゃない。いきなりは難しいかもしれないが………今まで通り接してやって欲しい」
俺もそう頼む。
すると、
「正直全部呑み込めた訳じゃないし、困惑してるところがあるのも確かだけど…………」
アリスが少し困惑しつつそう言うが、
「でも、今まで通りにして欲しいっていうのならそうするわ。だから、これからもよろしくね! 葵!」
アリスはそう言って手を差し出す。
「うん! こちらこそ!」
葵も満面の笑みでその手を握り返した。
「私も………よろしく」
エリスも手を差し出す。
「うん。エリス!」
エリスの手も握り返す葵。
この2人は、割と自然に受け入れたな。
「エミリア達は………すぐには無理かな?」
葵がエミリア達の方を向くと、エミリア、クラウディア、カイル、リティナ王女は緊張した面持ちを見せる。
エミリアはアルオイスの聖女であり、その存在感を常人以上に感じている筈だし、カイルもエミリア程ではないにしろ、昔からアルオイスを信仰している信者と言っても過言ではないので、その信仰対象が目の前に居ると分かれば緊張するのも仕方ないだろう。
クラウディアやリティナ王女は、自分より高位な存在など滅多にお目に掛からないので、そう言う意味で緊張しているのかもしれない。
「まあ、そんなに硬くなるな。葵もこう言ってるんだし、こっちの貴族社会みたいに無礼をしたから処刑するとか、そんな真似はしないから」
「そうそう! それに私は、そんな理由で処刑するなんてくだらないって思ってるぐらいだから!」
「危害を加えようとするのなら別だけどな」
「大士! そこで脅さない!」
すると、
「…………っ、くくっ!」
そんな俺達の様子を見ていて我慢できなかったのか、クラウディアから笑いが零れた。
「あっはっは! 本当に仲が良いな、お前達は」
一度声を上げて笑うと、笑いで零れた涙を拭いながらクラウディアがそう言った。
「まあね」
葵が当然だと言わんばかりに頷く。
「とにかく、ここにはもう用は無いんだろう? 俺達の目的も達成したし、さっさと戻ってクオンを母親の下に送り届けたいんだが?」
「おかーさんのところに行くの?」
クオンがコテンと首を傾げる。
俺はそんなクオンを抱き上げ、
「ああ。少し寄り道しちゃったけど、おかーさんの所に行こうな?」
「うん!」
クオンは嬉しそうにそう言いながら俺に抱き着く。
この世界を覆う『膜』が解かれれば、そう遠くない内に迎えが来るだろう。
だから、早い所クオンを送り届けて、何時でも帰れるようにしたいところだ。
クラウディアとエミリアの2人と別れるのは、寂しいけどな。
俺じゃあ2人の心は掴めなかったってだけだ。
俺達は、石像が崩れ落ち、あちこち罅の入った礼拝堂を後にしようとして、
「お待ちください!」
突如として男の声で呼び止められた。
俺達が振り向くと、この国の教皇が俺達に………
いや、葵に跪いていた。
「何か用か? 俺達はさっさと帰りたいんだが」
俺が聞き返すと、
「今までの御無礼、真に申し訳ございません!!」
教皇を筆頭に、周りの信者たちも一斉に跪く。
それを見て、葵は溜息を吐き、
「さっきも言ったけど、今の私は『人間』だから、そんな畏まる必要も無いし、罰を与える権限も無いよ」
「いえ、ですがあなたは紛れもない『神』の生まれ変わりだと聞きました! そのお方に礼儀を尽くすのは当然の事!」
教皇はそう言って頭を下げ続ける。
葵は再び溜息を吐く。
「……………で? あなたは私に何を望んでるの?」
「我々は無知ゆえに過ちを犯しました! 何卒、あなた様の御威光で我々をお導き下さい!」
教皇は深く頭を下げた。
それに対する葵の答えは、
「え? 嫌だけど?」
当然ながらNoだ。
「何故ですか!? やはり、我々の御無礼をお許しにはならないと!?」
教皇が必死の形相で問いかける。
「そうじゃなくて、『神』は全てにおいて平等が原則なの。『命』が生きていくためにほんの少し力を貸すだけ。『神』は見守ってはいるけど、特定の人物や勢力に力を貸す事は禁じられてるの!」
「で、では、我々はこのまま魔族に滅ぼされろと!?」
「……………この世界の人間族が、魔族に滅ぼされるのなら、それがこの世界の『運命』なのかもね」
「そ、そんな…………お、お願いでございます! 我々を滅びの『運命』からお救い下さい!」
教皇は懇願を続ける。
「そうやって『神』に縋ろうとする限り、この世界の人間族に未来は無いよ」
葵は冷たく言い放つ。
「そ、そんな………!?」
「何で滅びの『運命』が迫ってきていると分かって自分達で何かしようとしないの? 『神』に縋り付いて、泣き喚くだけで、自分達の力を信じようとしないの?」
「で、ですが、『運命』には…………」
「人には、『運命』を変える力があるよ。その証拠に、ここに居る大士は、エミリア達の『運命』を変えて見せてるよ」
葵が俺を見る。
「そ、それは、異世界から召喚された勇者であるからで………」
「異世界かどうかなんて関係無いよ。要は、その人自身が『運命』を受け入れるか抗うかの2択でしかない。大士は、ずっと『運命』に抗い続けてる。だから、何度も『運命』を変える事ができてるんだよ。それに、大士だけじゃない、ここに居るアリスやエリスだって自分の『運命』を変える事が出来てる」
葵はアリスとエリスを見る。
「………そうね。確かに私の最初の『死の運命』を変えてくれたのはタイシだったわ。でも、その『運命』を変えても次に待っていたのは『エリスを殺す運命』だった。だから私は、そんな『運命』ぶち壊してやるって思ったのよ!」
アリスは拳を握って力強く言い放つ。
「私もそう。『アリスと争う運命』なんて絶対に嫌だった………だから私は、『アリスと共に歩む運命』を自分で選んだ……!」
エリスもハッキリとそう言う。
「そう言う事。縋るだけじゃ、何も変えられないし、『神』も変える気も無い」
「お、お願いでございます! あなた様の為の教会を立て直し、盛大に祭り上げ、信者も増やします故、何卒力をお貸しください!」
その言葉に、葵は更に深く溜息を吐いた。
「『私』はそんな大きいだけの教会になんか興味は無いし、無理矢理増やした信者なんて欲しくないよ。教会なんて、フェート村にあるような小さな教会で十分だし、数だけ増やした信者が100万人いるよりも、心の片隅に本気で『私』を信仰してくれる気持ちがある人が1人いる方が『私』は嬉しいよ」
葵はキッパリと言い放つ。
「第一に、あなたは人間族の行く末が心配なんじゃない、自分の持ってる地位と権力が揺らいでる方が心配なんでしょ?」
「そ、そんな事は…………」
「そう? じゃあ何でやせ細っている信者が多い中で、あなたを含めたごく一部の人だけが肥え太ってるのかな?」
「ッ!?」
「それが、限られた人だけが美味しい汁を吸ってる何よりの証拠でしょ?」
「…………………」
図星だろう言葉に教皇たちは何も言えなくなる。
「じゃあ、そう言う事だから」
葵はそう言って踵を返す。
俺達もそれに習って立ち去ろうとして、
「ま、待て!」
別方向から再び呼び止められた。
そちらに振り向けば、今度は山口が俺達を呼び留めていた。
その表情には、焦りが感じられる。
「い、一体今のは如何言う事なんだ………!?」
おそらく現実が認められないんだろう。
説明を求めてきた。
「如何言う事も何も、デニティス教が崇めていたのは、本当の『神』じゃなく、神の名を騙っていた、ただの天使。で、デニティス教の教義も、その天使が勝手に決めただけの教義で、本当のデニティスは全く関与していなかったって事だろ」
「じゃ、じゃあ、俺達が召喚されたのも………」
「その天使の勝手な思い込みで、デニティスの威光をより世界に広める為の広告塔として呼び出されたようなもんだろ?」
「そ、そんな…………」
「正直、俺の当てずっぽうだが、お前達のデジモンが進化したのも、天使たちが何かやったんじゃないかと俺は思ってる」
「な、何ッ!?」
「俺の経験から言えば、デジモンが短時間で進化するには、パートナーとの絆………もしくは、強い感情が必要だ。あの時のお前達にはどちらも足りていない。なら、考えられるのは外部の干渉からの強制進化。天使なら、何らかの力で完全体程度に進化させることは可能だろう」
俺はそう推測する。
「じゃ、じゃあ、今まで、ずっと掌の上で踊らされてたって言うのか!?」
「それで満足してたっていうのなら、そうなんだろうな」
「ッ!?」
山口が俯く。
「そ、そんな筈はない………! 俺は主人公なんだ………! そうだ……! これもきっと、主人公の試練の1つなんだ……!」
相変わらず自分が主人公だと思っているのか、認められない様だ。
俺は軽く溜息を吐き、
「そう思いたいならそう思っていればいい。俺は別に、俺達の『敵』にならなければ、特に関与はしない」
俺はそう言い残して再び立ち去ろうと前を向いた。
その視線の先には、
「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」
空間が歪んで、ゲートが現れる光景があった。
「これは………まさか………!」
「あ、これってもしかして………」
俺が期待に満ちた声を漏らし、葵が察した様子を見せる。
そして、そのゲートから数人が飛び出してきた。
その後にゲートはすぐに閉じてしまう。
だが、ゲートが閉じた事など俺は全く気にならなかった。
何故なら、ゲートがあった場所に居たのは………
「大士…………」
「タイシ………」
「旦那様………」
「タイシ………!」
俺を見て涙を浮かべながら俺の名を呟く4人の女性。(+1体と1人(匹?))
そこに居たのは、紛れもなく俺が会いたくてたまらなかった恋人達だった。
「優花………シャルロット………カトレア………テファ………!」
俺がそれぞれの名を呟いた瞬間、
「大士!!」
おそらく瞬光まで使って飛び付いてきたであろう優花が俺を抱きしめ、
「タイシ!」
珍しく大声を上げて優花に一瞬だけ遅れて飛び付いてきたシャルロット。
「旦那様っ!」
「タイシ!」
そして、彼女達の出せるであろう全力で駆けよって来たカトレアとテファ。
「優花! シャルロット! カトレア! テファ!」
俺は思わず4人纏めて抱きしめる。
「会いたかったよ、皆………!」
「私達もよ………!」
「やっと会えた……!」
「ご無事で何よりです。旦那様……!」
「タイシ……無事でよかった……!」
4人はそれぞれ涙を浮かべながらそう言う。
因みに、
「きゅい! おねえさま、嬉しそうなのね!」
「シルフィード。ここはおそらく黙っているのが正解では無いのか?」
純粋に俺達の再会を喜ぶ人間姿のシルフィードもといイルククゥと優花のパートナーデジモンであるハックモンの姿もあった。
その時、
「おとーさん? このおねーちゃん達だれ?」
俺の傍らにいたクオンが純粋な疑問をぶつけてきた。
だが、
「『おとーさん』…………?」
その言葉で、周りの空気が絶対零度まで冷え込んだ気がした。
その発生源は優花だ。
俺を抱きしめていた腕に、別の意味で力が籠る。
「何でこんな年齢の女の子があなたを『おとーさん』なんて呼ぶのかしら………?」
ゴゴゴと音が聞こえてきそうな雰囲気を纏った優花が語り掛けてきた。
「ま、まて! ちゃんと説明するから………!」
嫉妬丸出しの優花に、俺は必死に弁明を訴えるのだった。
オリジナル異世界編第36話です。
今回は事情説明と最後に再会をお送りいたしました。
こんなに早く来た理由は次回で。
そしてクオンの『おとーさん』発言を聞き、えらい事になりそうな?
次回をお楽しみに。
P.S すみませんが気力切れのため、今回の返信はお休みします。
P.SのP.S 因みに前回の大士の殴った3人の神と言うのは、エヒトにイグドラシルに、もう1人は分かりましたか?
殴った時の印象は薄いかもしれませんが、水を司る通称駄女神様を殴っております。
大士のヒロイン全員にパートナーデジモンを付けるべきか?
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是非ともつけるべき!
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ヒロイン自身が魅力的なので別にいいです。