【Side 三人称】
魔族領の沿岸部にあるとある村…………
海沿いに作られたその村には、木造の家が十数棟建てられている。
規模としては、フェート村よりも少し大きいぐらいだろうか。
小さな港から数隻の小舟が出ており、海に網を投げているので、この村の主な生業は漁業なのだろう。
そして、その十数ある家の1つに、他の家よりも少し大き目の家があった。
見た目も他の家よりしっかりしており、この村の有力者の家なのが見て取れた。
その家の一室。
まだ昼間だというのに突き上げ窓の板が降ろされ、部屋の中は薄暗い。
その部屋の真ん中あたりに、1人の女性が正座で座りながら目を伏せていた。
その女性は、見た目の年齢は20代半ば程であり、白く美しい髪が腰辺りまで届き、巫女装束に似た着物を身に着けている。
そして何より、その女性には、髪の色と同じ白い狐の耳と、9つもある狐の尻尾があった。
だが、その女性の表情は、目を伏せていても優れず、何かを後悔している様な様子だった。
すると、コンコンとその部屋のドアがノックされ、その女性の返事も待たずにその扉が開けられた。
入って来たのは、狼の特徴を持つ獣人の男性。
「カンナ……やはりここに居たか………」
その男性は、納得したような、仕方ないと言いたいような複雑な表情をしながらそう呟く。
「………………………」
カンナと呼ばれた女性は話しかけられても動く気配を見せなかった。
「………………『あの子』の事については、俺も残念だと思う。だが、あれだけ探しても見つからなかったんだ…………魔獣に襲われたか海に落ちてしまったか…………どちらにせよ諦める他無い」
その男性は、無情にもそう言う。
「…………………」
カンナはスッと目を開く。
その紅い瞳からは、分かっていると言いたげな意思が見受けられた。
「…………でも…………私には諦めきれないのよ………………もし海に落ちてしまったのなら、ほんの僅かでも可能性はあるわ…………!」
カンナは初めて口を開く。
「…………認めたくない気持ちは分かるが、お前も分かっているだろう? あの辺りは潮の流れが速い。しかも、その流れは人間領の方へ向かっている。万に1つの可能性で岸に打ち上げられたとしても、人間に見つかればそれこそ一巻の終わりだ。人間族が、俺達獣人………いや、魔族をどのように思っているか、知らないわけじゃないだろう?」
男性は諭すようにそう言う。
「…………知ってるわ………だけど………もし………もしも私達獣人や魔族に対して偏見を持たない人に拾われていたら………もしかしたら……………」
「そんな都合のいい………いや、夢物語に等しい事があるなんて、本当に思っているのか?」
「そうね………自分でもわかっているわ。夢物語………いえ、ただの願望だって事は……………もしそんな人間が居れば………………その人に全てを捧げても良いって思ってるぐらいよ………………」
カンナは自嘲するように力無く笑みを浮かべた。
「………滅多なことを言うな。お前はこの村の族長だ。勝手に人間に全てを捧げられても困る」
「分かってるわ。唯の意気込み、その位『あの子』が生きてるって思いたいの」
そこで初めてカンナは狼人の男性へ向き直った。
「それで何の用かしら、ソウガ? そんな事を言う為に態々私の所に来た訳じゃないでしょう?」
男性の名を呼んだカンナはそう問いかけた。
その顔は、既に『族長』としての凛とした表情だ。
「あ、ああ………物見からの報告だが、この村に馬車らしきものが近付いているらしい」
「馬車……『らしき』もの?」
「ああ。何でもその馬車らしきものには、馬に引かれておらず、馬車そのものが自力で走っているそうだ」
「そんなものが…………」
「更に、その馬車らしきものに追従するように、青い竜も飛んでいた」
「竜が!?」
カンナは驚いた声を上げる。
「いや、竜と言っても報告では小さく、幼竜のようだ。そこまで脅威では無いだろう」
「………そう」
カンナはホッとしたように息を吐く。
「だが、その自力で走る馬車のようなものは得体が知れない。警戒するに越したことは無いだろう」
「分かったわ。私もすぐ行くわ」
ソウガの言葉にカンナは頷く。
「頼む」
ソウガはそう言うと立ち去る。
「…………………」
カンナは少し間を置いて立ち上がる。
そして、部屋の扉の方へ歩き出し、部屋を出る寸前、悲しそうな目をして振り返り、部屋を見回すと、
「……………………………『クオン』」
その名を呟いた。
【Side Out】
魔族領に入ってまた数日。
流石にずっと運転は疲れるので、現在は優花に運転を代わって貰い、俺は助手席でクオンを膝に乗せて抱いている状態だ。
「えへへ………おとーさん!」
クオンは嬉しそうに俺に抱き着いている。
正直可愛い。
「………随分と懐かれたわね」
優花が何処か呆れた口調で行ってくる。
「俺としては、何か特別な事をしているつもりは無いんだがな………」
「あれだけ甲斐甲斐しく世話を焼いておいて?」
「『父親』なら当然と思う事をしているだけだ」
「……………この調子で、クオンを本当の子供にするなんて言い出さないでよ?」
「流石に言わねーよ。クオンには母親も居るしな」
「その内、南雲みたいに『家の子』って言い出すんじゃないの?」
その言葉に俺は苦笑する。
するとその時、車の進路上に3匹の狼の魔獣が姿を現した。
だが、その直後に上空から飛来した氷の矢によって瞬く間に貫かれ、絶命した。
俺達は何事も無かったかのようにその横を通過する。
「………シャルロットか……見事なものだな」
後部座席に座っていたクラウディアが呟いた。
同じ氷系の魔法使いとして、その実力がよくわかるのだろう。
まあ、シャルロットは優花と同じように魔物肉を食べて固有技能を習得しているから、感知系でいち早く察知して魔法を放つ、サーチ&デストロイだからな。
そのまましばらく走っていると、
「…………あれは………」
優花が気付いたように呟いた。
「如何した?」
俺が尋ねると、
「多分村だと思うけど、集落があるわ」
優花はそう答える。
「村………もしかしたらクオンの………?」
「それは分からないけど、聞いた話の状況から察するに、可能性は低くないと思うわ。クオン位の年齢の子供の体力で、ここから生きて流れ着くだけでも奇跡みたいなものだわ」
「そうだな。よし、多分怪しまれるだろうから、攻撃を受けても反撃せずに防衛に徹してくれ。念話でシャルロット達にも伝えてくれ」
「了解よ」
優花は車のスピードを少し落としながら、その集落へ向かう事にした。
その集落は、木の柵で囲われた集落で、木造の門の上には物見櫓が作られている。
やはり魔力駆動四輪は怪しさ満点なのか、物見櫓から数人の獣の特徴を持つ男達が矢を番えてこちらに向けていた。
その服装は、和服に近い。
俺は優花に車を止めるように言うと、いきなり矢を撃たれる可能性を考慮し、念の為に
クオンを車内に残して扉を開けて外に出た。
そのまま俺は両手を上に挙げて、敵意が無い事をアピールする。
「人間!?」
「人間が何故ここに!?」
見張りの獣人たちが驚愕の声を上げる。
俺は、こちらの要件を伝えようと口を開こうとした時、物見櫓にまた別の人物が昇って来た。
「族長!」
見張りの言葉からすると、昇って来たのは族長らしい。
見張り達が物見櫓の両側に寄る様に道を開けると、櫓の中央にその人物は姿を見せた。
「……………おお」
俺は思わず声を漏らす。
その人物は女性で、見た目の年齢は20代半ば位。
髪は白いが、老人のような白髪ではなく、艶のある美しい白い髪だ。
瞳は紅く、内に秘めた情熱を感じさせる、燃える様な紅。
そして、髪の色と同じ白い狐耳と、九つもある白い狐尻尾がとても目を引く。
言うなれば九尾の白弧と言った所か。
クオンと同じような巫女装束に近い着物に身を包み、ついでに言えば、スタイルも抜群だった。
その九尾の獣人の女性は、スッと目を細めて俺を見下ろす。
「……………人間がこの村に何の用かしら?」
何処か飄々とした、掴みどころのない雰囲気を感じさせる声色で、その女性は言った。
「………俺は黒騎 大士。先ずはいきなり訪ねて驚かせてしまった事を詫びよう。すまなかった」
俺はまずは謝罪を述べた。
「あら? 人間にしては礼儀正しいのね?」
「少なくとも、いきなり押し掛けたのはこっちだからな」
その女性はクスクス笑っているが、何処かこちらを警戒しているように思える。
「それでこちらの要件だが、1ヶ月ほど前にあなた達と同じ獣の特徴を持つ魔族………獣人の子を保護した」
「えっ…………?」
俺がそう言うと、その女性は目を見開いて思わず声を漏らした。
これは演技ではなく、本気で驚いているように感じた。
「その子はあなたと同じ、狐の耳と尻尾を持つ女の子だ。俺達は、その子の母親を探す為に旅をしている。その子は海岸に打ち上げられていたから、海沿いに伝ってここまで来た。この村に、1カ月ほど前に行方不明になった子供は居ないか?」
「ッ…………!」
その女性は何か言いたげに動揺していた。
それでも表情を取り繕おうと必死になっている。
だが、周りの見張りの男達は、驚いた顔でその女性を見ていた。
「ッ…………! 一つ尋ねます………その女の子の名は?」
表情を取り繕うのに必死になりながら、その女性は問いかけてきた。
「………………クオンだ」
「ッ!? 何処に!? その子は何処に居るの!?」
遂に表情を取り繕えなくなったのか、その女性は必死の形相で問いかけてくる。
俺は車内へ目を向けると、
「クオン、出てこい」
俺がそう呼ぶと、クオンが車内からいそいそと出てくる。
クオンが地面に足を着け、彼女達から見える位置まで出てきた。
その瞬間、
「クオン!!!」
女性が一目散に物見櫓から飛び降り、門の前に降り立つと、こちらに向かって駆け寄ってくる。
クオンも彼女を認識すると、
「おかーさん!!」
そう言いながら駆け出した。
って、あの人がクオンの母親かい!
「クオン!!」
その女性がクオンを力一杯抱きしめる。
「おかーさん!」
クオンも精一杯抱きしめ返した。
その様子を俺は微笑ましく見つめる。
女性の表情は、心底ホッとした、安心した表情を浮かべている。
すると、その女性は俺に見つめられていた事に気付くと、何か言いたげな目をしたが、何かに気付いたようにハッとなると、先程と同じように表情を取り繕った。
その女性は、クオンを後ろに庇い立てするように前に立つと、
「…………………クオンを助け、連れて来てくれた事には礼を言うわ。だけど、私達は人間を信用する事は出来ない。今なら見逃すわ。すぐに立ち去りなさい!」
冷たく言い放つ彼女。
「おかーさん……!?」
クオンは驚いたように声を上げる。
「……………わかった」
俺はその言葉に素直に頷いた。
俺は踵を返し、彼女達に背を向ける。
「あ………おと「クオン!」ッ!?」
俺はクオンの言葉に被せるように彼女の名を呼んだ。
そして、
「…………約束は、君の母親の元に送り届けるまでだ」
「ッ………ううっ…………!」
俺がそう言い放つと、クオンは悲しそうに涙を浮かべる。
俺はクオンの方を振り返らずに、そのまま車に乗り込む。
「出してくれ」
「いいの?」
優花が確認するように呟く。
「ああ」
俺は頷いた。
「…………………」
優花はやれやれと言いたげに一度息を吐くと、アクセルを踏んでハンドルを切る。
車はUターンしてその場を離れた。
「………………………」
そのまましばらく走っていると、
「…………………はぁ」
優花が呆れたように深く溜息を吐いた。
そして、いきなり伸びてきた左腕に首根っこを掴まれ、
「おわっ!?」
後部座席に放り投げられた。
「カトレア、大士を慰めといて」
俺が文句を言う前に、俺は温かいものに包まれた。
優花の言葉通り、カトレアが俺の頭を優しく抱きしめていたのだ。
「我慢しなくていいんですよ。旦那様………」
カトレアは優しい声でそう告げる。
その言葉を聞いた瞬間、目が熱くなって視界がぼやける。
「お、俺は…………!」
「旦那様にとって、クオンちゃんは大事な『娘』だったんですから………」
カトレアはまるで子供をあやすように言い聞かせてくる。
「クオン…………」
その言葉に、俺は思わず涙を流した。
そうだ、俺はクオンを『大切』に思っていた。
父親代わりだと言っておきながら、俺自身がクオンを本当に『娘』として見てしまっていたんだ。
「ゴメンな………クオン………ゴメンな…………!」
あんな別れ方をしてしまったクオンに俺は謝罪を述べるしか出来なかった。
【Side 三人称】
その頃、クオンは母親のカンナに連れられ、自宅の前に来ていた。
その徐たちの近くにはソウガも居た。
「本当にクオンが無事だったのは驚きだが、お前が本当に人間に傅かないか冷や冷やしたぞ?」
「あら? あんな言葉を本気にしていたの? クオンを救ってくれた事には感謝するけど、人間に尻尾を振るほど私は安い女じゃないわ」
「ハッ! そりゃそうだ。この際だ。お前ももう一度身を固めたら如何だ? 今なら俺がお買い得だぜ?」
「残念だけど、その気は無いわ。今はクオンが居れば十分よ」
カンナはそっけなく受け流す。
「ッ………なあクオン? お前もお父さんが欲しくないか?」
ソウガは面食らったように言葉を詰まらせるが、今度はクオンに対してそう問いかける。
だが、
「…………………おとーさんは…………もういるもん……………!」
クオンはそう言うと、テテテッと家の中へ駆け込んでいってしまった。
「クオン………?」
クオンの言葉の意味を計りかねたカンナは、疑問の声を漏らした。
「おとーさん…………」
クオンは家の中で俯いていた。
大好きな『おかーさん』であるカンナと、同じぐらい大好きになった『おとーさん』の大士。
2人には仲良くなって欲しいと子供心ながらクオンは思っていた。
しかし、カンナは大士を冷たくあしらい、そして大士からもクオンは突き放されてしまった。
クオンはそれが悲しく、寂しかった。
その時、扉を開けてカンナが入って来た。
「………おかーさん」
クオンが呟くと、不意に抱きしめられた。
「ごめんねクオン。あなたを助けてくれた人に、酷い事を言って………」
「おかーさん………?」
「本当なら、ご馳走でも作って存分に御もてなししてあげたかったけど、この村にも、人間を快く思ってない人は少なくないわ。この村に招き入れれば、逆に危険に晒してしまう事になりかねないの…………」
「………………………?」
クオンは首を傾げる。
「クオンには難しいかもしれないけど、私はクオンを助けてくれた人たちの事を嫌っているわけじゃないわ。ごめんね」
「ッ………!」
クオンは難しい話は分からなかったが、『おかーさん』が『おとーさん』を嫌っていない。
これだけは理解できたクオンは、笑顔を浮かべる。
「おかーさん!」
嬉しくなったクオンは、そのままカンナに抱き着いた。
その時、
「入るぞカンナ」
無粋にもソウガが入って来た。
「…………何かしら? ノックもせずに人の家に上がり込むなんて、失礼な人ね」
「そいつは悪かったな。だが、急用だ。『奴ら』が来た。
「ッ! 分かったわ」
ソウガの言葉にカンナは頷くと『族長』の顔になり、立ち上がるのだった。
カンナが村の中央にある広場に行くと、そこには1人の獣人が立っていた。
獅子の特徴を持った獣人の男だ。
「待たせたかしら?」
カンナがそう問いかける。
「遅い! 魔王軍四天王である俺を待たせるとは、どういう了見だ!?」
「アポなしでいきなり来られても、こちらにも準備というものがあるわ。それで? 要件は何かしら?」
カンナが相手の怒りをスルーして問い掛ける。
「知れた事! この村の者達は魔王軍の傘下に入れ! 人間共と戦うのだ!」
獅子の獣人の男はそう叫ぶ。
「その答えは以前にも言った筈よ。この村は争いには関わりたくない者の集まりで作られた村よ。魔王軍には入らない。だけど、人間にも味方しない。それでいいじゃない。私達は唯静かに暮らしたいだけよ」
カンナは平然とそう言う。
「そんな自分勝手が許される状況ではなくなったのだ! 今の魔王軍は、戦力の増強が急務なのだ!」
男は、そんな勝手は許さないと言わんばかりの剣幕で叫ぶ。
「…………それだけ必死って事は、あの噂は本当だったみたいね?」
「噂………?」
「ええ。魔王軍が人間領に侵攻して、返り討ちにあったって噂よ」
「ぐっ………あれはガビエルの奴が無能だっただけだ! お陰で多くの戦力を失ってしまった」
「否定はしないのね」
カンナは薄く笑う。
「ぐぬっ!?」
その男は悔しそうに歯ぎしりする。
「だっ、黙れ! このシオウ様はガビエルの奴とは違う! 戦力を増強した暁には、人間共を根絶やしにしてくれる!」
「はいはい、やりたければ勝手にやってくれない? この村は戦いには関わらない。そう決めているわ」
「ぐぬぬ………!」
シオウと名乗った男は悔しそうに歯ぎしりしていたが、突然ニヤッと笑うと、
「いいのかな? この村は俺の部隊によって包囲されている。俺の合図1つで滅ぼす事も容易なのだぞ?」
シオウはそう言うが、
「あなた馬鹿? この村の者達を戦力として取り込みたいのに、全滅させたら本末転倒じゃない」
「うぐっ!?」
言葉に詰まるシオウ。
「それとも、また一騎打ちで決着をつける? 何処かの誰かさんは、私に燃やされてひーこら言いながら逃げ帰ってたけど」
カンナは尻尾に炎を纏わせ、九つの大きな火柱を作り上げた。
「ギギギ………このアマ………!」
悔しそうに歯ぎしりするシオウ。
何を隠そう、カンナが言った者とは他でもないシオウの事だ。
シオウは獣人の中でも最強と名高い獅子の獣人なのだが、カンナは本来中の中程の狐の獣人。
一年前のシオウは、意気揚々と一騎打ちでカンナと戦ったのだが、カンナは唯の狐ではなく、複数の尾を持つ妖狐。
その中でも最強格の九つの尾を持つ九尾の獣人だった。
シオウはあっさりと返り討ちに遭い、逃げ帰ったのだ。
その事を思い出されたシオウは、屈辱を感じていた。
「俺を怒らせたな! 来い! ベリアルヴァンデモン!!」
シオウが叫んだ瞬間、カンナの足元が割れ砕け、巨大な腕がカンナを捕え、更にその下から本体が現れた。
それは、二本足で立っているが、人型とも獣型とも言い難い姿形をしており、顔こそマスクを付けた人型だが、その身体は尻尾もあり、何と言っていいのか分からない。
「くっ!」
ベリアルヴァンデモンの腕に捕らえられたカンナは声を漏らす。
「ふはははは! これこそ我が最強のデジモン! 究極体のベリアルヴァンデモンだ!」
シオウはしてやったと言わんばかりに高笑いした。
「ッ………女相手にデジモンをけしかけるなんて、最強の獅子の獣人も落ちたものね」
それでもカンナは気丈に笑って見せた。
「口が減らない様だな………!」
その言葉に応えるように、ベリアルヴァンデモンがカンナを握る力を強める。
「うくっ…………このまま私を握り潰すつもり………? 好きにすればいいわ。その瞬間、あなたは最強種という誇りを失うことになるんだから………」
「何処までも生意気な奴め…………! この手は使いたくなかったが………仕方あるまい」
シオウが指を弾くと、
「カンナ! こっちを見ろ!」
ソウガの声が響いた。
カンナが首だけで声のした方に振り向くと、
「ッ!? クオン!?」
驚愕の声を上げた。
何故なら、ソウガがクオンの首を左腕で締め付けながら、その顔にナイフを近付けていたからだ。
「ソウガ! あなた………!?」
「悪いなカンナ。俺はお前の巻き添えは御免だ。シオウ様は俺を重用してくれると約束してくださった。俺はシオウ様に着く! さあ、クオンを殺されたくなければシオウ様に忠誠を誓え!」
「なっ!?」
カンナが驚愕の声を漏らす。
「フフフ、良い顔だな」
シオウが笑みを浮かべる。
「クオンを放しなさい!」
「それはお前の態度次第だ」
「人質を取るなんて、最強種の名が泣くわよ!?」
「人質を取っているのは俺では無い。あいつだ」
シオウは悪びれも無くそう言う。
「さあどうした!? 早く忠誠を誓え! さもないと……!」
ソウガはクオンの顔にナイフを近付けていく。
「ッ…………………!」
そして、ナイフの刃がクオンの頬に触れようとした時、
「ま、待ちなさい!」
カンナが叫んだ。
その言葉に、ナイフの動きが止まる。
そして、カンナは観念したように項垂れた。
「皆………ごめんなさい…………私は、クオンを見捨てる事は出来ない…………」
カンナは村のみんなに謝罪を述べる。
「…………………分かりました」
カンナは口調を変え、敬語で話し出す。
その態度に、シオウは満足気な笑みを浮かべる。
「我ら一同、魔王軍に忠誠を……………」
カンナがその言葉を紡ごうとした時だった。
「おかーさん!!」
「ッ!?」
突如としてクオンが叫んだ。
「へいき! わたし、へいきだから!」
「なっ!? こいつ! 黙れ!」
ソウガがクオンの首を絞める力を強める。
「だ、だって…………おとーさんがいるから…………」
クオンは首を絞められながらも言葉を止めない。
「おとーさんは………ぜったいにたすけにきてくれるから…………」
「クオン…………?」
「だから………こんなよわむしの人のいうことなんてきいちゃダメ………!」
『よわむし』と言う言葉に、ソウガは一気に頭に血が上り、
「このガキ!」
ナイフを思いきり振り上げる。
「クオン!?」
カンナが悲痛な声で叫ぶ。
そして、振り上げられたナイフが振り下ろされようとした時、
「たすけて! おとーさん!!」
クオンは最後の、そして渾身の力で叫んだ。
周辺に響いたその叫びは、
「ウチの子に何してくれとんじゃゴラァ!!!」
「ぶほっ!?」
「えっ!?」
クオンの望み通り『おとーさん』に届き、金色に輝く拳がソウガの頬に叩き込まれた。
ソウガはそのまま海の方に吹っ飛び、二、三度水面を跳ねて海に沈んだ。
「無事か? クオン?」
大士が優しい声でクオンに問いかける。
クオンが大士に気付くと、
「おとーさん!」
感極まって大士に抱き着いた。
「よしよし、よく頑張ったな。クオン」
大士もクオンを抱きしめながらポンポンと頭を撫でる。
すると、クオンはハッとして、
「おとーさん! おかーさんを助けて!」
クオンがベリアルヴァンデモンの腕に捕らえられているカンナを指差しながら叫んだ。
「ベリアルヴァンデモンか…………」
大士は一度ベリアルヴァンデモンを見上げると、すぐにクオンを見下ろし、
「分かった。おとーさんに任せとけ!」
「ッ……うん!」
その言葉にクオンはとても嬉しそうに頷いた。
「さて…………」
大士は再びベリアルヴァンデモンに向き直る。
「あ? 何だテメェは?」
ベリアルヴァンデモンが問いかける。
「この子の『おとーさん』さ。と、言う訳で………」
大士はそう言うと、拳を握りしめて金色のデジソウルを宿し、
「その人を放してもらう!!」
一瞬でベリアルヴァンデモンの眼前に跳び、その拳を叩き込んだ。
「うおおおおおおおおっ!?」
「ッ!?」
ベリアルヴァンデモンは驚愕の声と共に殴られた衝撃で大きくバランスを崩し、転倒。
その拍子に捕らえられていたカンナが放り出された。
大士は一度地面に着地すると、
「ちょいと失礼……!」
落下してきたカンナを横抱きで受け止めた。
「きゃっ……!?」
可愛い声を上げるカンナ。
「怪我は無いか………?」
大士がカンナを抱き上げたまま問いかける。
「え、ええ…………」
カンナは半ば呆然と頷いた。
大士は飛び退いてクオンの所まで戻ると、
「おかーさん!」
クオンが駆け寄って来た。
「クオン……!」
大士はカンナを降ろすと、2人は抱き合う。
すると、
「間に合ったみたいだね」
「っていうか、『ウチの子』って言っちゃったね」
遅れてやって来た、ドルモン、葵、リュウダモン、アリス、エリス、パイルドラモン、エミリア、メタルグレイモン、クラウディア、ワーガルルモン、カイル、ライズグレイモンが現れる。
因みに、カトレアとティファニアは非戦闘員の為待機で、優花とハックモン、シャルロットはその護衛である。
「おねーちゃんたち………」
クオンが嬉しそうな表情になる。
その時、
「きっさまらぁぁぁぁぁぁっ!」
今まで無視されていたシオウが声を上げる。
「………あいつは?」
大士がカンナに問いかける。
「魔王軍四天王の1人、シオウよ」
「ああ、あのガビエルとか言う奴のお仲間か………」
カンナの答えに、大士は納得した様に頷く。
「ガビエルなんぞと一緒にしないでもらおう! 奴は四天王の中でも最弱! 四天王の本当の恐ろしさを味合わせてくれる!!」
「四天王の中でも最弱とか、本当に言うんだな………」
その言葉を聞いて、大士は呆れるように声を漏らす。
すると、シオウは合図をするように手を挙げた。
「…………………………」
だが、
「「「「「「「「「「………………………………」」」」」」」」」」
いくら待っても何も起きない。
「おい! 何をやっている!?」
シオウが我慢できなくなったのか後ろを向いて叫んだ。
すると、
「あ、もしかして、村の外にいた奴らか?」
「村に来るときに邪魔だったから、全部片付けといたけど?」
「は?」
シオウは素っ頓狂な声を漏らす。
「ッ………だ、だが、こちらには究極体のベリアルヴァンデモンがいる! ベリアルヴァンデモンがいる限り、この俺に負けは無い!!」
自信満々に叫ぶシオウ。
「ベリアルヴァンデモンか………確かにヴェノムヴァンデモンよりは上なんだろうが………」
大士の知識からすると、ベリアルヴァンデモンは、ヴェノムヴァンデモン以上七大魔王以下と言う、中途半端な立ち位置でしかない。
「あまり長引かせると、クオン達が危ない。ドルモン、一気に終わらせるぞ!」
大士はそう言ってDアークを構える。
「何時でもいいよ! 大士!」
ドルモンもいつも通り勇ましく応える。
「行くぞ!」
――MATRIX
EVOLUTION――
「マトリックスエボリューション!」
大士が輝くDアークを自分の胸に押し付ける。
すると、ドルモンと共に光に包まれ、光の柱が立ち昇った。
その光の中で大士とドルモンが一つになって進化する。
「ドルモン進化!」
ドルモンの手のデータが分解され、鎧を纏った騎士の腕として再構築される。
ドルモンの足のデータが分解され、鎧を纏った騎士の足として再構築される。
ドルモンの体のデータが分解され、鎧を纏った騎士の体として再構築される。
ドルモンの頭のデータが分解され、大士の決意の篭った瞳を持った騎士の頭部として再構築される。
丸みを帯び、金の装飾が施された黒く輝く鎧を身に纏い、背中には外側が白、内側が青のマントをはためかせた、『最初』の名を冠せし黒き聖騎士。
「アルファモン!!」
光の柱の中より、黒き聖騎士が舞い降りる。
「ッ!? このデジモンは!」
クラウディアが声を上げる。
「タイシとドルモンが1つに………!?」
カイルは驚愕の表情だ。
「あ、そっか。皆は進化する所を見るのは初めてだっけ」
葵はそう言えばと声を漏らした。
「な、何だ貴様は!?」
シオウが驚愕の表情で問いかける。
「ロイヤルナイツ………アルファモン!」
「アルファモンだと………? ふん! 何か知らんが、俺のベリアルヴァンデモンの敵ではない!」
『…………言ってることが、あのガビエルとか言う奴とあまり変わりが無いな』
大士が呆れたように呟く。
「やれ! ベリアルヴァンデモン!!」
「パンデモニウムフレイム!!」
ベリアルヴァンデモンが両肩の生体砲、『ソドム』と『ゴモラ』から地獄の業火と思えるほどの灼熱の炎を発した。
「ッ……………!」
アルファモンはマントを翻し、皆の盾となる様にその背で炎を受けた。
「ふははははは! どうだ!?」
シオウが高笑いをあげる。
しかし、その炎が途切れると、
「…………魔王型とは言え、七大魔王に比べればこの程度か…………」
アルファモンは、再びマントを翻しながらベリアルヴァンデモンに向き直ると、その炎が掻き消された。
「「なぁっ!?」」
シオウとベリアルヴァンデモンが同時に驚愕の声を漏らす。
だが、それもそのはずである。
ベリアルヴァンデモンは、確かにヴェノムヴァンデモンより強力なデジモンで、知性も残っているため、その実力はヴェノムヴァンデモンを上回る。
しかし、その必殺技、パンデモニウムフレイムは、地獄の業火と呼べるほどの威力だが、かつて戦ったベルフェモンと同じ七大魔王の一角、バルバモンの必殺技、『パンデモニウムロスト』はダークエリアの邪悪エネルギーを一斉解放し、全てを焼き尽くす本当の地獄の炎。
ベリアルヴァンデモンのパンデモニウムフレイムは、このエネルギー総量のごく僅かでしか無く、完全な下位互換の必殺技に当たるため、七大魔王とも互角以上に戦う事が出来るアルファモンに通用するはずが無いのだ。
アルファモンはゆっくりと右手を前に向け、魔法陣を展開する。
そして、
「デジタライズ・オブ・ソウル!!」
その魔法陣から無数の光弾を連続で放った。
その一発一発がベリアルヴァンデモンの甲殻を抉り、砕き、粉砕していく。
「ぬぁあああああああああああああああああああああああああっ…………!?!?!?」
ベリアルヴァンデモンは、そのまま成す術無く文字通り砕かれ、バラバラになって消滅していった。
「な………あ………あ………」
シオウはその横で腰を抜かしていた。
『……………………奴は如何する?』
大士がカンナに訊ねる。
「…………………」
カンナはそれを聞くと、無言で歩き出した。
そのままシオウの前に立ち、彼を見下ろすと、
「…………あなたは………やってはいけない事をしてしまったわ…………!」
その言葉は静かな、それでいて激しい怒りを感じさせる。
そして、その怒りを表すように、カンナの九つの尾が炎を纏い、激しく燃え上がった。
「あ………や、やめ……………」
「あなたはクオンに手を出した…………! 絶対にゆるさない………!!」
カンナはその言葉と共に九つの尾の炎を束ね、
「燃え尽きなさい!!」
その場で翻る様に一回転しながら尾を振り、シオウを炎に呑み込む。
「ぎゃぁああああああああああああああああああああああああっ!?!?!?」
断末魔の叫びが響く。
因みにクオンには教育上宜しくないので、葵が耳を塞ぎ、リュウダモンが視界を塞いでいたりする。
やがて悲鳴も消え去り、灰となって風に吹かれていった。
それを確認すると、アルファモンは大士とドルモンに退化する。
すると、
「おとーさん!」
クオンが大士に駆け寄ってきて抱き着く。
「クオン…………」
大士は膝を着いてクオンと目線を合わせると、
「クオン、ゴメンな。あんな別れ方をして………」
大士はそう謝る。
大士達がここに現れたのは、あのような別れ方をした事をクオンに謝り、改めてちゃんと『お別れ』を言いに来ようと戻って来たためだ。
「ううん………おとーさんは、ちゃんと護ってくれたから………」
クオンはニコッと笑みを浮かべる。
「そうか………」
大士も笑みを浮かべる。
すると、
「それにしても、やっぱりアルファモンはタイシだったのね」
アリスがそう口を開く。
「あ、ああ………って、やっぱり?」
大士は気まずそうに頷いたが、アリスの言葉に疑問を漏らす。
「可能性としては考えていた。タイシのドルモンは2つの進化ルートを持つ。それなら、究極体も2つあると考えるのが妥当」
エリスがそう説明する。
「それに、あのように都合よく現れて、疑問に思わないと思う方がおかしい」
クラウディアも、
「アルファモンが現れたタイミングも、タイシさんが姿を消していた間ですからね」
そしてエミリアも。
「まあ、流石にドルモンと融合したのは驚いたけど………」
カイルが最後にそう言う。
「そうなると、お前はやはり、最初からロイヤルナイツの名について分かっていたのだな?」
「ん? もしかして、13家の称号に使われているミドルネームの事か?」
「やはりそうなのだな?」
「ああ。ロイヤルナイツ(笑)の称号にも使われているミドルネームは、ロイヤルナイツの名を表している。王家のオメガ、フォルダ公爵家のアルファと聞いて、もしやと思ってた時に、アリスとエリスのジエスと言う名を聞いた時に、ほぼ確信したな」
「えっ? ジエス?」
葵が聞き覚えのある名に声を漏らす。
「ああ。アリスの本名は、アリス・ジエス・フォン・ファイルだからな。それで、貴族のミドルネームがロイヤルナイツの名を冠してることに気付いたんだよ。俺の当てずっぽうだと、建国時の初代当主が、ロイヤルナイツをパートナーにしてたか、もしくはよく知る立場だったんじゃないのか?」
「へぇ~」
「まあ、私達は勘当されてるから、その名はもう捨てたけどね」
アリスはそう言う。
「ああ、だからタイシさんは、変な所でフォルダ公爵の評価を上げたりしてたんですね」
エミリアが納得したように声を上げる。
「まあな。流石に異世界の事で直接は関係無いとはいえ、俺とドルモンの絆の象徴であるあの姿を安売りされてちゃ気分が悪くなる」
「納得できました!」
エミリアは、スッキリした言いたげな表情だ。
その話が一段落すると、
「さてと………」
大士は改めてクオンに向き直る。
「おとーさん………?」
クオンは首を傾げる。
その姿を見ていると、別れを告げるのが苦しく思える。
だが、言わないわけにはいかない。
「クオン…………その………俺達は、もう行かなきゃいけないんだ」
「おとーさん………何処かにいっちゃうの………?」
クオンは悲しそうな表情になってそう聞き返す。
「……………………………」
その顔を見ると、次の言葉が出なくなってしまう。
それでも、俺は覚悟をもって口を開こうとした。
その時、
「横から失礼するわ」
カンナが大士に話しかけてきた。
「あなたはクオンの母親だったな?」
「ええ。私はこの子の母親で、カンナと言うわ。よろしくね」
カンナは飄々とした態度でそう名乗る。
「まずはお礼を言わせて。クオンを助けてくれて、ありがとう。それから、最初に会った時は、あんな態度を取ってごめんなさい」
カンナはお礼と謝罪を述べて頭を下げた。
「クオンを助けたのは、仮とは言え『おとーさん』だし、最初に関しては、得体の知れない人間族を信用しろって方が無理な話だ。気にして無いよ」
「そう…………」
カンナは顔を上げるそう呟き、フッと笑みを浮かべる。
「ッ………!」
その笑みに、大士はドキッとした。
「それで、クオンは何故あなたを『おとーさん』って呼んでるのかしら?」
カンナにそう言われ、大士はクオンを保護した時の事を掻い摘んで説明した。
それから、魔族に偏見を持たないのも、異世界から召喚された人間だからということも含めて。
「そう………やっぱりクオンが随分とお世話になったようね。この恩は、一生懸けても返させてもらうわ」
「いや、そんな重く考えなくていいから………」
「それから………あなた達は、もうこの村を立ち去るつもりなのよね?」
カンナの言葉に、クオンが寂しそうに俯く。
狐耳と尻尾も力無く垂れさがっている。
「ああ」
それでも大士は頷いた。
「それなら、不躾で申し訳ないのだけど、お願いを聞いてくれないかしら?」
「お願い?」
「ええ。クオンの本当の父親になってくれないかしら?」
「…………………………………………………………………………………………………は?」
その言葉を理解するのに、幾分か時間を要した。
「だから、仮じゃなくて、この子の本当の父親になって欲しいって言ったのよ」
「ちょっと待て! 俺の勘違いでなければ、その言葉の意味は…………」
「もちろん、私の旦那様になって欲しいって意味よ」
カンナは楽し気に肯定する。
「はぁああああああああああああっ!?!?」
大士が驚く前に、アリスが声を上げた。
「ちょっとアンタ! 一体何考えてるのよ!?」
「何って………そうすれば、クオンはおとーさんと別れなくて済むじゃない」
「アンタは子供の為なら好きでもない男と結婚するっていうの!?」
「あら? 見損なわないで欲しいわね。いくら私でも、好きでも無い男にこんな話を持ち掛けたりしないわ」
「「「「「「「「「「はぁっ!?」」」」」」」」」」
その言葉に全員が驚く。
「私は彼が好きだって言ったの」
カンナがそう言うと、
「一体いつそんなタイミングがあったのよ!?」
アリスは更に問いかける。
「私達獣人の女性は、獣の特徴を備えているだけあって、本能的に『強い
「オスとか生々しい………いや、それよりも亡くなったって言う旦那さんは………?」
大士が思わず尋ねる。
「あの人とは恋愛結婚って訳じゃなくて、親が決めた許嫁だったからよ。これでも族長の娘として、結婚は義務みたいなものだしね。まあ、特に嫌いでは無かったし、夫婦仲も悪い訳じゃなったけど、愛してたかって言われるとちょっとね………もちろんクオンの事は愛してるわよ」
大士は思わず元旦那を不憫に思ってしまう。
「でもあなたは、私が捕まって身動きすら出来なかったデジモンを、拳一つで殴り倒したのよ。あの瞬間の衝撃は、忘れられないわ…………!」
そう言ってカンナはうっとりした表情になる。
「そう言う訳で、あなたが旦那様になってくれれば、私も嬉しい、クオンも嬉しい。良い事尽くめよ?」
「いや、さっきも言ったが俺は異世界の人間で、もう近いうちに帰ることになってるから…………」
「だったら、旦那様について行くわ」
カンナは事も無げに言う。
「いや、あなた族長でしょ!?」
大士がそう言うと、
「悪いけど、もう私に族長の資格は無いわ。私は村人たちよりクオンを優先したの。族長としてやってはいけない事だわ」
「いや、まあ、言ってることは分かるけど………」
「だから、もうこの村に私達の居場所は無いの。だったら、旦那様とクオンと一緒に新天地へ行って、新しい生活を始めた方がよっぽど有意義だわ」
「いや、俺既に何人も恋人居るんだけど…………」
「『強い
「論理感が獣寄り過ぎて何も言えねえ……………」
ぶっ飛んだことを当然と言わんばかりのカンナに大士もタジタジである。
「先越されちゃったねぇ………」
葵がエミリアとクラウディアの耳元でボソッと呟く。
「「ッ!?」」
その言葉に焦りを感じる2人。
結局カンナの勢いに押し切られ、とりあえず同行することになるのは当然と言うべきなのだろうか?
オリジナル異世界編第39話です。
未亡人はチョロインでした。
チョロイン………だよね?
新ヒロインのカンナです。
以前言った通り、モデルはFLOWER KNIGHT GIRLのヒガンバナです。
はい、まんまです。
自分はキャラづくりが苦手っぽいのでモデルが無いと中々魅力的なキャラが出来ないのです。
何故か1話で親子関係が完結してしまった。
速過ぎるかな?
因みに次回から急展開。
ちょいと強引な手を使います。
お楽しみに。
P.S すいません。やらなければいけない仕事をほったらかして小説書いてる自分は馬鹿です。なので、申し訳ありませんが今週も返信はお休みします。
大士のヒロイン全員にパートナーデジモンを付けるべきか?
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是非ともつけるべき!
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ヒロイン自身が魅力的なので別にいいです。