ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第48話 デーモンの罠

 

 

 

 

翌日。

朝起きて、エミリア、クラウディアと共に葵達と合流すると、

 

「昨日はお楽しみでしたね?」

 

「ぐふっ!?」

 

葵から開口一番にそう言われ、俺は膝を着く。

 

「た、タイシさん!?」

 

「一体どうしたというのだ!?」

 

突然膝を着いた俺に、エミリアとクラウディアが驚く。

 

「それと、エミリアとクラウディアもおめでとう」

 

「「ッ!?」」

 

その言葉で、何を言われているかを察した2人は頬を染める。

更に、

 

「それにしても、遂に南雲を超えたわね」

 

「がはっ!?」

 

優花が追撃の一言を放つ。

そうなのだ。

エミリアとクラウディアが恋人になった事により、俺の恋人(ハーレム)の人数は9人となり、8人だったハジメを超えてしまった。

 

「……………言わないでくれ。これでも結構自己嫌悪してるんだ…………」

 

俺は項垂れながら呟く。

 

「ついでに言えば、もう1人増える可能性が高い」

 

「うぐっ!?」

 

シャルロットが、カンナに視線を向けながら呟いた。

 

「フフフ。旦那様? まだ私をお嫁さんにはしてくれないの?」

 

カンナが悪戯っぽく笑みを浮かべながらそう言ってくる。

 

「タ、タイシ……! 私はお妾さんが何人いても気にしないから………!」

 

テファが必死にフォローしてくれようとしているが、その言葉はある意味これからも増えるとも取れる。

すると、

 

「では旦那様は、私達と恋人になった事を後悔なさっておいでですか?」

 

カトレアがそう問いかけてきた。

 

「そんな事は無い!!」

 

俺は思わず顔をがばっと上げながら叫んだ。

 

「俺は、お前達と恋人になれて本当に幸せなんだ! 後悔なんてこれっぽっちも感じていない!!」

 

俺がそう言い切ると、

 

「…………タイシって、普段冷静なのに時々熱くなって女心にクリティカルヒットする事言うのよね………」

 

「ん、とても嬉しい」

 

アリスとエリスが頬をそめながらそう言う。

よく見れば、皆も大なり小なり顔を赤くしていた。

 

「………なあ? 一体何の事だ?」

 

「「さあ?」」

 

その傍らでは、シスタモン達が俺達のやり取りを見て首を傾げていたりする。

 

「おとーさんたちは、みんななかよし……!」

 

クオンが純粋な笑みを浮かべながらそう言った。

 

 

 

 

それから暫くして、エンジェモンがやって来た。

 

「皆さま、ゆっくり休めましたか?」

 

そう聞いてくる。

 

「ああ」

 

俺は頷き、

 

「デーモン軍の状況は?」

 

そう問いかけた。

 

「斥候からの報告では、デーモン軍は撤退した後、ここより少し離れた終末の谷と呼ばれる峡谷で軍を再編成しているようです」

 

「終末の谷?」

 

カイルが声を漏らす。

 

「はい、底の見えない深く険しい大地の裂け目です………」

 

エンジェモンはそう言いながら、若干俯いた。

 

「どうかしたの?」

 

ドルモンが気になったのか、そう問いかけると、

 

「…………その終末の谷は、我々の隊長だったバンチョーレオモンが、ダークドラモンと相打ちになった場所なのです………」

 

エンジェモンは振り絞る様にそう言った。

 

「あ……ごめん………」

 

ドルモンは申し訳なさそうに謝った。

 

「いえ、だからこそ我々は、隊長に代わりこの場所を護っていかなければならないのです!」

 

エンジェモンは力強くそう言った。

 

「そして、デーモン軍の立て直しが完全に終わる前に、我々は追撃をかけるつもりです」

 

更にエンジェモンは続ける。

 

「現在確認されている究極体は、デーモンと、そして先日スカルサタモンが進化したガルフモンのみです。あなた方に頼ることになってしまいますが、ここでデーモンを倒せば、長い戦いに終止符を打つことができます!」

 

その言葉を聞いて、大士は少し考える。

 

「まあ、確かに今の戦力なら追撃をかけるという選択肢は間違いではないと思う………だが、それが陽動であるという点も捨てきれない…………」

 

「それは…………」

 

「………が、デーモンとガルフモンが居るということは、そちらに主力を割いている事は確かだろう。ならば、こちらも戦力を分ける」

 

「戦力を分ける?」

 

「ああ。カイルとビクトリーグレイモン。そして、上位究極体が出てきた時に備えて優花とハックモンも城に残す。あと、シャルロットとクレシェモン、カトレアとヤタガラモンも城の防衛に専念してくれ」

 

「ん」

 

「承りました」

 

「デーモンの相手は俺とドルモン、葵とリュウダモンでやる。アリスとエリスはインペリアルドラモンでガルフモンの相手を頼む」

 

「任せなさい!」

 

「うん」

 

「テファが進化したメルヴァモン、エミリアとウォーグレイモン、クラウディアとメタルガルルモンで、他のデジモン達に対する先陣を切って欲しい。究極体が先陣を切れば、味方の士気も上がるはずだ。あとは、予想外の強敵が出てきた時も、究極体が3体居ればカバーできると思う」

 

俺はそこまで言って視線を落とし、クオンを見つめた。

 

「クオンは…………」

 

本当なら、カンナと一緒に城に残って貰いたいのだが、

 

「おとーさんと一緒がいい………」

 

泣きそうな目で、上目遣いで見上げられては断るに断れない。

すると、

 

「心配するな! クオンは私らが護る!」

 

「ええ、任せて」

 

「頑張る!」

 

シスタモン シエル、ノワール、ブランがやる気を見せる。

 

「ま、仕方ないか…………」

 

結局俺は折れてしまった。

まあ、クオンが来るということは、自動的にカンナも付いてくる事になった訳だが………

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

 

数時間後。

終末の谷と呼ばれる大地の裂け目を中心に、デーモン軍とホーリーエンジェモン軍が睨み合っていた。

その中で、デーモンはホーリーエンジェモン軍の………

正確には、究極体や完全体のデジモンの数を見て、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「やはり戦力を分散してきたな………」

 

デーモンは、狙い通りと言わんばかりにそう漏らす。

 

「へ? どういうことでしょう?」

 

ガルフモンが呆けた声を漏らすと、

 

「このように、撤退した軍が目立つところであからさまに再編成していれば、余程のバカでない限り陽動を疑う。その為、追撃部隊には主力を全て割けなくなるのだ。城の護りをおろそかにするわけにはいかんからな」

 

「な、なるほど、デーモン様はそれを逆手にとって、相手の戦力を分散させたわけですね?」

 

「まあ、それでも奴らの相手は骨が折れる……………ガルフモン、分かっているな?」

 

「へい。間もなくこの近くを通る筈です。その時に………」

 

「フフフ…………」

 

ガルフモンの言葉に、デーモンは怪しい笑みを零すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

俺達が終末の谷に到着した時には、既に両陣営が谷を挟んで睨み合っていた。

因みに俺達の移動手段はアリスとエリスのインペリアルドラモンだ。

流石アニメで世界中を回るのに30分かからないというだけあり、全速力で無いにも関わらず、城から5分と掛からずに到着した。

一先ず膠着状態が続きそうなので俺と葵、ティファニアは体力温存の為に進化を解いている。

インペリアルドラモンは、その巨体から存在するだけで相手に威圧感を与えられるので、そのままになって貰っている。

少し小高い岩場からしばらく様子を窺っていると、エンジェモンの近くに成熟期デジモンであるイガモンが忍者のごとく現れ、何かを報告していた。

 

「何かあったのか?」

 

気になった俺は問いかける。

すると、エンジェモンが振り向き、

 

「はい。偵察からの報告ですが、間もなく光の柱がこの近くを通過するそうです」

 

「光の柱か………」

 

デジタルワールドに来た直後に皆が巻き込まれて離れ離れになった原因だ。

 

「状況的に、谷から我々寄りに通過する模様です。そのため、その時の混乱に乗じてデーモン軍が攻撃に移る可能性が高いと思われます」

 

「確かに………多少は陣形も崩れるだろうからその可能性は高いか…………」

 

エンジェモンの言葉は的を射ている。

 

「かと言って、このまま何もしなければ、戦士たちが光の柱に巻き込まれてしまいます。ここは、一旦戦士達を下げた方がいいでしょう」

 

「ああ。別の場所に飛ばされるだけと言っても、多くの戦力がこの場から消えるんだ。こちらにとってそれは致命的だろう」

 

「はい」

 

エンジェモンは頷くと、イガモンに戦士達を下がらせるように伝えた。

イガモンは頷くと、再び忍者のようにその場から消えた。

味方が下がり始めてしばらくすると、遠くに見えていた光の柱が、こちらに近付いてきているのが見えた。

 

「あれか………」

 

確かにこちらに向かってきている。

 

「………念のために、俺達ももう少し下がろう」

 

俺がそう言うと皆は頷き、それぞれデジモンに乗ってこの場を離れようとした。

その瞬間、

 

「「………………ッ!?」」

 

クオンとカンナの耳がピクピクッと動く。

それと同時に、クオンの影が突如として蠢き出した。

直後、

 

「キェェェェェェェェッ!!」

 

クオンの影から、黒いペラペラな体で、不気味な赤い二つの眼を持つデジモンが飛び出してきた。

 

「こいつは、アイズモン!!」

 

エンジェモンが叫ぶ。

そのデジモン―――アイズモンがクオンに襲い掛かる。

 

「やっ……!」

 

クオンは怯えるが、

 

「プロテクトウェーブ!!」

 

「キッ!?」

 

ブランが放った防御波動がアイズモンの動きを止める。

 

「そこよ!」

 

更にノワールが放った弾丸がアイズモンを撃ち抜き、消滅させた。

それを確認して一先ずほっとする。

 

「………まさか、アイズモンが潜り込んでいたとは………」

 

エンジェモンが悔しそうに呟く。

だが、

 

「ッ! センサーキャッチ! 気を付けろ! まだ居る!」

 

メタルガルルモンが叫んだ。

その直後、俺達の影も蠢き始め、アイズモンが飛び出してくる。

 

「俺達の影にも!?」

 

俺は驚愕の声を上げる。

 

「キェェェェェッ!!」

 

アイズモンが俺に襲い掛かって来る。

だが、

 

「メタルキャノン!!」

 

いち早く気付いたドルモンがメタルキャノンを放ち、アイズモンを怯ませる。

 

「ナイスだドルモン! おらぁっ!!」

 

その隙に俺は拳にデジソウルを宿し、アイズモンを殴り飛ばす。

アイズモンは岩肌に激突して消滅した。

 

「そらよっ!!」

 

シエルが刀で葵の影から飛び出したアイズモンを切り裂き、

 

「させないわ!」

 

ノワールがその巨体ゆえに動けなかったインペリアルドラモンに代わり、アリスとエリスに襲い掛かろうとしたアイズモンを撃ち抜く。

 

「はぁあああああっ!!」

 

「させるか!」

 

ウォーグレイモンがエミリアに襲い掛かろうとしたアイズモンをドラモンキラーで切り裂き、メタルガルルモンが鼻先のレーザーでクラウディアに襲い掛かろうとしたアイズモンを氷漬けにする。

 

「ヘヴンズナックル!!」

 

そして、テファに襲い掛かろうとしていたアイズモンは、エンジェモンが光の拳で消滅させていた。

しかし、

 

「きゃあっ!?」

 

パートナーが居らず、カバーできるデジモンも居なかったカンナが、アイズモンに掴みかかられるように押し倒され、岩山の上からアイズモンごと突き落とされた。

 

「カンナッ!?」

 

「おかーさん!?」

 

俺とクオンが思わず叫ぶ。

空中に投げ出され、落下していくカンナ。

 

「ッ……………!」

 

俺は一瞬躊躇する。

このままではカンナは光の柱に巻き込まれ、別の場所に飛ばされてしまう。

だが、ここにいる皆を放っておくわけにもいかない。

しかし、

 

「おかーさんっ!!」

 

今にも泣きそうなクオンの声が、全ての迷いを吹き飛ばした。

 

「カンナッ!!」

 

俺は地面を蹴ってカンナの後を追う。

 

「「「「「「「「「大士ッ!?」」」」」」」」」」

 

「おとーさん!?」

 

皆が俺の名を呼ぶ。

俺は拳にデジソウルを宿し、

 

「おらぁぁぁぁっ!!」

 

カンナに掴みかかっていたアイズモンを殴り飛ばした。

そして、

 

「カンナ!」

 

「旦那様っ!?」

 

俺の姿を捉えたカンナが驚愕で目を見開く。

俺はそんなカンナに手を伸ばし、

 

「カンナッ! 手を!」

 

手を掴むよう叫ぶ。

 

「…………ッ!」

 

カンナは驚愕しつつも気を取り直し、俺の方に手を伸ばす。

光の柱は既に目前に迫っていた。

 

「カンナッ!」

 

俺は必死に手を伸ばし、

 

「旦那様っ!」

 

同じく俺に手を伸ばしていたカンナの手が繋がり合った瞬間、俺の視界は光に埋もれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

 

その様子を見ていたデーモンは、満足気な笑みをこぼしていた。

 

「くっくっく………巻き込まれたのは2人か…………まあよい。1人でも減れば十分だったからな…………ガルフモン!」

 

デーモンがそう言うと、

 

「へい! テメエら! 突撃だ!!」

 

ガルフモンが突撃命令を下す。

 

「「「「「「「「「「ウォォォォォォォォォォォォォッ!!!」」」」」」」」」」

 

その命令に従い、デーモン軍は突撃を始めた。

 

 

 

 

 

「おとーさん! おかーさん!」

 

目の前で消えた大士とカンナを見て、クオンが叫ぶ。

だが、それと同時にデーモン軍が突撃を開始してきた。

 

「ッ…………!」

 

葵は歯を食いしばり、

 

「皆! 大士の事は心配だろうけど、大士ならきっと大丈夫! 今は、私達のやるべき事をやろう!」

 

そう皆に呼びかけた。

 

「ッ………! そうね。タイシならきっと大丈夫………!」

 

「タイシを信じる………!」

 

アリスとエリスは自分に言い聞かせるようにそう言うと、

 

「インペリアルドラモン! 私達は、予定通りガルフモンを抑えるわ!」

 

「「わかった!」」

 

アリスの言葉にインペリアルドラモンが羽ばたく。

 

「エミリア、クラウディア! 私達だけだと、デーモンは抑えきれない! 手伝って!」

 

葵が2人にそう叫ぶ。

 

「分かりました! ウォーグレイモン!」

 

「おう!」

 

「メタルガルルモン!!」

 

「わかった!」

 

それぞれのパートナーの言葉に頷く。

葵はDアークを掲げ、

 

 

―――MATRIX

   EVOLUTION―――

 

Dアークの画面にその文字が刻まれる。

 

「マトリックスエボリューション!!」

 

自分の胸にDアークを押し当てると、葵の身体がデータ化。

リュウダモンと1つになる。

 

「リュウダモン進化!」

 

リュウダモンが究極体へと進化する。

 

「オウリュウモン!!」

 

2本の大刀を持った武者竜となり、空へ舞い上がった。

 

『ティファニアとクオンは皆の護衛をお願い!』

 

葵がそう呼びかけると、

 

「はい! スピリットエボリューション!!」

 

ティファニアがデジヴァイスを掲げると、そこから溢れたデータがティファニアを包む。

 

「メルヴァモン!!」

 

メルヴァモンとなってその場に現れた。

そして、クオンもクロスローダーを掲げ、

 

「でじくろす!!」

 

そのキーワードを叫んだ。

 

「「「デジクロス!!」」」

 

シスタモン達が1つになり、

 

「シスタモンX!!」

 

シスタモンXとなって降り立つ。

 

「ここは任せた!」

 

オウリュウモンがそう言うとデーモン軍に向かって飛び立ち、ウォーグレイモン、メタルガルルモンも続く。

その姿を見たホーリーエンジェモン軍も気を取り直し、デーモン軍を迎え撃つ為に態勢を立て直し始めた。

 

 

 

先陣を切っていたインペリアルドラモンがガルフモンに向かっていく。

 

「来るか!」

 

ガルフモンも身構えた。

インペリアルドラモンがガルフモンに向かって急降下攻撃を仕掛けようとした。

その瞬間、

 

「「……ッ!?」」

 

何かに気付いたインペリアルドラモンが攻撃を中断し、回避行動に入った。

直後、その目前を漆黒の閃光が横切る。

 

「な、何だぁ!?」

 

ガルフモンも驚愕の声を上げた。

 

「何っ!?」

 

「今の攻撃は………?」

 

アリスとエリスがその閃光が放たれたであろう方向に目をやる。

そこには、

 

「グゥゥゥゥ………!!」

 

ボロボロの体ながらも、低い唸り声と凄まじい敵意をインペリアルドラモンに向けた、黒いインペリアルドラモンの姿があった。

 

『黒いインペリアルドラモン!?』

 

葵が驚愕の声を上げる。

 

「あいつ……! あの時の………!?」

 

以前戦ったアリスが驚きの声を漏らした。

 

「「生きてたのか!?」」

 

メガデスの直撃を受けて生きていた事に、インペリアルドラモンも驚愕している。

 

「…………でも、あの時のダメージは回復しきってない」

 

エリスが黒いインペリアルドラモンの姿を見て、甲殻の所々が罅割れ、欠けている部分がある事に気付く。

 

「満身創痍って事ね! だったらさっさと片付けてガルフモンの相手をするだけよ! インペリアルドラモン!!」

 

アリスがインペリアルドラモンに呼びかける。

 

「「ポジトロンレーザー!!」」

 

インペリアルドラモンが背中の砲台からエネルギー波を放った。

 

「グォォォォォォォォッ!?」

 

ボロボロだった黒いインペリアルドラモンはその攻撃を避ける事が出来ず、直撃を受けて吹き飛ばされ、地面に激突した。

 

「な、何だぁ!? いきなり出てきてやられてるじゃねえか!?」

 

ガルフモンはやや困惑気味にそう言う。

 

「「このまま止めだ!」」

 

インペリアルドラモンは反撃を許さず、一気に止めを刺そうとした。

その時――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下深くの禍々しさを感じるクリスタル。

その中に蠢くあやしい影が、再び目を光らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インペリアルドラモンが止めを刺そうとした時、轟音と共に天空に黒い稲妻が奔った。

 

「「ッ!?」」

 

突然変わった様子にインペリアルドラモンは警戒する。

そして次の瞬間、天から黒い稲妻が降り注ぎ、黒いインペリアルドラモンに直撃した。

 

「あれは………スカルサタモンがガルフモンに進化した時と同じ………!」

 

その様子を見ていたメルヴァモンが叫ぶ。

 

「インペリアルドラモンは究極体………これ以上進化するなんて無い筈だけど…………!」

 

「でも、嫌な予感がする………!」

 

アリスとエリスが悪寒を感じていた。

 

「インペリアルドラモン! 早く止めを!!」

 

「急いで!」

 

2人がインペリアルドラモンに呼びかけた。

 

「「ッ! メガデス!!」」

 

インペリアルドラモンは驚愕しつつも、最大の必殺技であるメガデスを口から放った。

それは黒い稲妻に包まれた黒いインペリアルドラモンに直撃。

暗黒物質が数百メートル範囲を飲み込み消滅させる。

その範囲に呑み込まれたモノは全て消滅する。

本来なら。

 

「「なっ!?」」

 

インペリアルドラモンは驚愕の声を漏らした。

何故なら着弾地点であり、暗黒物質のど真ん中に居た筈の黒いインペリアルドラモンは、黒い稲妻に包まれた状態で変わらずそこに存在したからだ。

稲妻の中の様子は分からないが、そこに存在している事だけはわかる。

すると、稲妻が薄れていき、徐々にその中の黒いインペリアルドラモンのシルエットが浮かび上がって来た。

だが、

 

「何………あれ………?」

 

アリスが思わずそう漏らした。

何故なら、黒い稲妻の中から浮かび上がって来たシルエットはドラゴンの姿ではなく人型だったからだ。

 

『あれって………まさか…………!』

 

同じくその様子を目撃した葵が、オウリュウモンの中で声を漏らす。

それが先程までの黒いインペリアルドラモンだと一目でわかる。

その姿が人型でも、先程までのドラゴンヘッドが胸部となりその存在を主張する。

背中に装備されていたポジトロンレーザーは左腕へと移動し、赤い翼は変わらずその背中で大きく広げられている。

それは、

 

『インペリアルドラモン………ファイターモード…………!』

 

インペリアルドラモンのもう1つの姿である、ファイターモードであった。

その時、黒いインペリアルドラモン:ファイターモードが左腕のポジトロンレーザーをインペリアルドラモンに向け、エネルギーを集中させ始めた。

 

「「ッ! ポジトロンレーザー!!」」

 

それに気付いたインペリアルドラモンも背中のポジトロンレーザーにエネルギーを溜め始めた。

 

『ッ………! いけない! 逃げて!!』

 

葵が咄嗟に叫ぶ。

だが、その直後にそれらは放たれた。

同時に放たれたポジトロンレーザーは互いの中央で衝突。

以前の戦いでは、威力は互角で相殺となった。

しかし、今回は、

 

「「なっ!?」」

 

黒いインペリアルドラモン:ファイターモードのポジトロンレーザーが、一方的にインペリアルドラモンのポジトロンレーザーを押し返していく。

そのまま一気に押し返され、インペリアルドラモンは黒いポジトロンレーザーの直撃を受けて爆発に飲まれた。

 

「「ぐあぁぁぁっ!?」」

 

大ダメージを受けたインペリアルドラモンは墜落し、大地に激突する。

 

「「インペリアルドラモン!?」」

 

アリスとエリスが叫ぶ。

 

『オウリュウモン! インペリアルドラモンの援護に!』

 

「承知!」

 

オウリュウモンがインペリアルドラモンを助けに向かおうとしたが、その眼前を炎が遮る。

 

「貴様の相手は我だろう?」

 

手に炎を宿したデーモンがニヤリと笑う。

 

「くっ、デーモン……!」

 

背を向けるのは拙いと判断したオウリュウモンはデーモンに向かって構える。

 

「ウォーグレイモン、メタルガルルモン! デーモンは某が何とか抑える。インペリアルドラモンを!」

 

「わかった!」

 

「任せるぞ!」

 

ウォーグレイモンとメタルガルルモンがインペリアルドラモンの方へ向かう。

その時、再び天に雷鳴が轟き、黒い稲妻が落ちる。

 

「「ッ!?」」

 

ウォーグレイモンとメタルガルルモンは、一旦止まって警戒した。

だが、今度はどのデジモンに当たらず、終末の谷と呼ばれた大地の裂け目の中へと落ちていった。

 

「…………今度は何も起こらないな………?」

 

「………みたいだな」

 

ウォーグレイモンとメタルガルルモンは警戒しつつも、どのデジモンも進化していないことを確認すると、再びインペリアルドラモンの援護へ向かおうと動き出した。

しかし、その瞬間、谷の底から膨大なエネルギーが放たれる。

 

「今度は何だ!?」

 

谷の底から天を衝くほどのエネルギーが円柱状に放たれ、光の柱となる。

そして、そのエネルギーの内部に何者かが存在していた。

それは、人型をしていた。

騎士のような身体を持つ、人の形をしたデジモンだった。

しかし、その両腕は異質だった。

左腕は蒼い竜の頭の形をしており、右腕は学生帽を被った獅子の頭の形をしている。

すると、

 

「あ、あの右腕は………!?」

 

エンジェモンが驚愕の声を上げた。

全員がエンジェモンに視線を向ける。

 

「バ、バンチョーレオモン隊長………!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

その言葉に全員が驚く。

 

「それにあの左腕は、ダークドラモン!?」

 

続けて声を上げるエンジェモン。

 

「ちょ、ちょっと待って! バンチョーレオモンとダークドラモンって確か、相打ちになったって言う………」

 

アリスが驚愕しながら問いかける。

 

「間違いありません! あの両腕は、バンチョーレオモン隊長とダークドラモンです!」

 

「ど、どういうことですか!?」

 

エミリアが問いかけると、

 

「分かりません! 何らかの原因で、バンチョーレオモン隊長とダークドラモンが1つになったデジモンであるとしか………」

 

「ま、待て! その推測が事実ならば、あのデジモンは究極体同士のジョグレス体ということなのか!?」

 

続けてクラウディアが更なる驚愕を以って問いかけた。

 

「そういうことに………なります………」

 

エンジェモンが絞り出すように呟いた。

その時、そのデジモンがバンチョーレオモンの頭となっている右腕を天に掲げる。

次の瞬間、その口から大刀の刃が飛び出した。

そして、

 

「覇王両断剣…………!」

 

その刃を振り下ろす。

その瞬間、巨大な斬撃がホーリーエンジェモン軍に向かって大地の亀裂と直角方向に走り、まるでもう1つの終末の谷が生み出されたかのような裂け目が出来上がっていた。

そして、当然ながらその斬撃に巻き込まれたデジモン達は、跡形も残ってはいない。

 

「な、何て………威力…………」

 

偶然にも斬撃はアリス達とは離れた場所に放たれたため、影響はなかったがその威力に彼女達は戦慄した。

 

「………まるでオメガモンだ…………」

 

オウリュウモンが思わず呟く。

すると、

 

「くっくっく、何とも面白い状況になって来たではないか………」

 

デーモンが愉快そうに笑う。

すると、再びそのデジモンがホーリーエンジェモン軍に向かって刃を構えたため、

 

「やめろ!」

 

ウォーグレイモンがドラモンキラーを突き出す。

それに気付いたそのデジモンは、刃を振り下ろす事を止め、ドラモンキラーを受け止めた。

 

「くっ!」

 

攻撃を受け止められたウォーグレイモンが声を漏らす。

 

「はぁあああああああっ!!」

 

ウォーグレイモンが両腕のドラモンキラーを連続で突き出す。

 

「…………………」

 

しかし、目の前のデジモンは、右腕の大刀だけで余裕で捌き切って見せた。

だが、

 

「離れろ! ウォーグレイモン!!」

 

「ッ!」

 

メタルガルルモンの言葉にウォーグレイモンが離れた瞬間、無数のミサイルがそのデジモンに襲い掛かった。

メタルガルルモンの放った冷凍ミサイルだ。

そのデジモンは氷に覆われる。

 

「ウォーグレイモン、大丈夫か!?」

 

「メタルガルルモン、助かったぞ」

 

礼を言うウォーグレイモンだったが、ピシッと言う音で咄嗟にそのデジモンに向き直った。

その直後、氷が砕かれ無傷の姿を現した。

 

「くそっ………」

 

メタルガルルモンが悔しそうな声を漏らす。

 

「メタルガルルモン、こうなったら同時攻撃だ」

 

「よし! わかった!」

 

ウォーグレイモンの言葉に即座に頷くメタルガルルモン。

2体は少し距離を取るように空中に跳び上がると、

 

「ガイアフォース!!」

 

ウォーグレイモンは巨大なエネルギー球を作り上げ、

 

「コキュートスブレス!!」

 

メタルガルルモンは口から絶対零度の息を放とうとする。

すると、そのデジモンは、今度は左腕のダークドラモンの頭を2体へ向ける。

 

「ダークプロミネンス………!」

 

そのダークドラモンの口から暗黒球を放った。

撃ち出された暗黒球は、ガイアフォースとコキュートスブレスと激突。

一瞬にしてそれらを掻き消した。

 

「「なっ!?」」

 

驚愕の声を漏らす2体。

尚も暗黒球体は向かってきており、ウォーグレイモンとメタルガルルモンは咄嗟に回避行動を取った。

しかし、

 

「「ッ!? うわぁあああああああああああっ!?」」

 

直撃でないにも関わらず、その余波だけで究極体であるウォーグレイモンとメタルガルルモンが吹き飛ばされた。

 

「ウォーグレイモン!?」

 

「メタルガルルモン!!」

 

エミリアとクラウディアが叫ぶ。

 

『やっぱり強さもオメガモンクラス………!』

 

その力に葵も戦慄する。

戦力的にはホーリーエンジェモン軍が有利だったにもかかわらず、予想外の出来事が重なり、劣勢に立たされている。

大士が居て、ドルモンがアルファモンに進化出来ればまだ勝ち筋はあった。

しかし、大士は光の柱に飲み込まれて行方不明。

今まで幾度も戦い抜いてきたオウリュウモンと葵でも、勝ち筋が見えなかった。

 

「ッ……………」

 

その時だった。

 

「……………皆さんは撤退を。殿は我々が引き受けます」

 

エンジェモンがそう発言する。

 

「エンジェモン!?」

 

ドルモンが思わず声を上げる。

 

「このままでは全滅します。一度城まで撤退し、体勢を立て直して迎え撃つべきです」

 

「でも……それじゃあエンジェモン達が…………」

 

「悔しいですが、我々の力では奴らに勝つことは不可能でしょう。ですが、あなた達なら可能性は残されている筈です! もとより、この戦いにあなた達を巻き込んだのは私の責任………ならば、あなた達を逃がすために命を懸けるのは当然の事です」

 

エンジェモンはそう言い切る。

 

「でも………!」

 

エミリアは何か言いたげだったが、

 

『皆! エンジェモンの言う通りだよ!』

 

オウリュウモンがデーモンの攻撃を捌きつつ、葵が叫んだ。

 

『悔しいけど、このままじゃ勝てない。エンジェモンの言う通り、一度城まで戻って優花達と協力した方が、可能性は高いよ!』

 

「でも、それじゃあここに居るエンジェモン達が………!」

 

『それじゃあここで全滅する?』

 

「ッ…………!」

 

葵の言葉にエミリアが言葉を詰まらせる。

 

『もしここで皆が………ううん、誰か1人でも死んだとしたら、大士はどれだけ悲しむと思う?』

 

「それ………は………」

 

『悲しむだけじゃない。大士はきっと憎む。私達を殺した相手を。そして、どんな犠牲を厭わずに憎しみのままに復讐する。大士に、そんな事をさせたいの?』

 

「………………………」

 

エミリアは何も言えなくなってしまう。

すると、そんなエミリアの肩にクラウディアが手を置く。

 

「クラウ…………」

 

「エンジェモンの言う通りにしよう。彼の思いを無駄にしてはいけない」

 

「『思い』………」

 

「エンジェモンは………私達に希望を託したのだ。私達は、その希望を受け継がねばならない」

 

「『希望』………」

 

エミリアは涙を流しながら、エンジェモンを見上げる。

エンジェモンは、笑みを浮かべて頷いた。

 

「……………わかりました!」

 

エミリアは涙を拭う。

その目は決意に満ちていた。

それを見ると、エンジェモンはホーリーロッドを掲げる。

 

「戦士達よ! 皆の命! 私にくれ! 未来へ希望を繋ぐ為に!!」

 

エンジェモンの言葉に、戦士たちが声を上げる。

エンジェモンは一度振り返ると、

 

「後は、お願いします」

 

エンジェモンはそう言うと、戦士達と共に突撃して行った。

そして、その捨て身の行動のお陰で、彼女達は城に撤退する事に成功するのであった。

 

 

 

 






オリジナル異世界編第48話です。
はい、皆様予想通りなカオスモンが出てきました。
あと、実は生き残ってたインペリアルドラモン(黒)。
ミレニアモンの影響でファイターモードにチェンジです。
でもって大士はカンナと一緒に光の柱に巻き込まれて再び離れ離れに………
ドルモンとも離れ離れで一体どうなるのか?
お楽しみに。



P.S 今回の返信はお休みします。

カンナのパートナーは?(候補追加)

  • クズハモン
  • アポロモン
  • ミタマモン
  • その他
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