ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第49話 極寒の中の熱き想い

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

エンジェモン達の捨て身の挺身により、城まで無事に撤退する事に成功した葵達。

そして、起きた出来事をホーリーエンジェモンに報告していた。

 

「………そうですか………彼らが……………」

 

ホーリーエンジェモンは若干俯き、残念そうな声色で呟く。

 

「…………ごめんなさい。私達が敵の策略に引っかかったばっかりに………」

 

葵はそう謝罪する。

ホーリーエンジェモンは首を横に振り、

 

「その所為だけでは無いでしょう………黒いインペリアルドラモンに、バンチョーレオモンとダークドラモンのジョグレス体…………予想外の強敵が立て続けに現れたのです。むしろ、あなた達だけでもよくぞ戻って来てくれました」

 

そう言って責める事はしなかった。

 

「……………………」

 

それでも葵達は悔しそうだ。

 

「もしエンジェモン達の事を思って下さるのなら、彼らがあなた方に託した希望を捨てないでください」

 

ホーリーエンジェモンの言葉に、葵達は顔を上げると、

 

「「「「「うん!」」」」」

 

力強く頷いた。

それを見るとホーリーエンジェモンは微笑み、そして表情を引き締めた。

 

「それでは、デーモン軍に対する対策を決めましょう。おそらく、デーモン軍は大した時間を置かずにこの城に攻め入ってくるだろうと思われます。話を聞くに、黒いインペリアルドラモンとバンチョーレオモンとダークドラモンのジョグレス体は、デーモンの配下と言う訳ではなく、黒いインペリアルドラモンはアリスさんとエリスさんのインペリアルドラモンへの復讐心で動き、バンチョーレオモンとダークドラモンのジョグレス体はミレニアモンの力の影響で生まれた偶然の産物………正義と悪のデジモンが交じり合った混沌たる存在…………言わば混沌(カオス)…………カオスモンとも呼ぶべき存在で、特定の意思は持っていないでしょう。それらを制御する事は、デーモンでも難しいと思われます」

 

「カオスモン………」

 

クラウディアがその名を呟く。

 

「そして、その2体のデジモンも目的地はここだと思われます。黒いインペリアルドラモンは、標的であるアリスさんとエリスさんのインペリアルドラモンを狙って………カオスモンは、ミレニアモンの力の影響で、ミレニアモン復活の為に動くでしょう。そして、デーモンもその2体の動きに便乗して攻めてくると思われます」

 

「少なくとも、強大な2体の力を持つデジモンと共闘した方が、この城を落とせる確率が上がるもんね………」

 

葵の言葉にホーリーエンジェモンは頷く。

 

「っていうか、ずっと気になってたけど、あの黒いインペリアルドラモンの姿は何なの? 突然人型になったと思ったら、私達のインペリアルドラモンを圧倒してくるし………!」

 

アリスがずっと気になっていたであろう事を質問した。

 

「………あれはファイターモードだよ」

 

それに答えたのは葵。

 

「ファイターモード……?」

 

エリスが聞き返す。

 

「そう。インペリアルドラモン:ファイターモード。インペリアルドラモンが全てのパワーを解放して、形態を変化させた姿って言われてる。その力は惑星………世界1つを破壊できる力を持ってるとも言われてるデジモンだよ」

 

葵は、惑星と言う言葉ではピンと来ないと思い、世界として言い換えた。

 

「せ、世界を……」

 

その言葉はアリスにも伝わったようで、戦慄した声を漏らす。

 

「では、もう一体の……カオスモンは…………」

 

クラウディアがそう問いかけてくる。

 

「……………あのデジモンについては私も知らないから詳しい事は分からない…………だけど、あのデジモンによく似たデジモンなら知ってる?」

 

「よく似たデジモン?」

 

エミリアが声を漏らすと、

 

「そう………………『オメガモン』だよ」

 

「オメガ………モン………ッ! 『オメガ』の名を冠するということは………!」

 

クラウディアが気付いたように声を上げると、

 

「そう、お察しの通りロイヤルナイツの1体だよ。そのオメガモンも、2体の究極体がジョグレスして生まれる究極の聖騎士。あのカオスモンも似た様な外見をしてたから、オメガモンと同等の力を持ってると考えた方がいいよ」

 

「真のロイヤルナイツと同等の敵………!」

 

クラウディアはその事実を実感したのか、悔しそうに歯を食いしばる。

 

「ウォーグレイモン達が敵わなかったのも納得です………」

 

エミリアも意気消沈するように呟いた。

すると、

 

「デーモン、インペリアルドラモン、カオスモンの内、1体なら私とハックモンで受け持てるわ。残りの2体を何とかする方法を考えないとね」

 

「優花、ガルフモンの事も忘れてはならない」

 

「そうだったわね………」

 

優花とハックモンがそう言う。

 

「俺が進化出来れば良かったんだけど…………」

 

ドルモンが俯きながらそう言う。

 

「無いものねだりもしても仕方ないよ。ともかく、せめて大士達が戻って来るまで時間稼ぎをしないと……………」

 

葵がドルモンに向かってそう言う。

 

「…………うん!」

 

ドルモンも気を取り直して頷いた。

 

「………………あなた方は、余程あの彼を信頼しているのですね」

 

ホーリーエンジェモンがそう呟いた。

 

「もちろん! どんな状況でも大士が居れば何とかなる! 今までも、そしてこれからもね!」

 

葵は迷わずに言い切った。

その言葉に、他の皆も揃って頷く。

 

「大士は、いろんな意味で私達の中心なのよ。逆を言えば、大士が居ないからこんなピンチに陥ってるわけだけど…………」

 

優花が肩を竦めながらそう言う。

 

「大士………待ってるからね………」

 

葵は、何処かに飛ばされてしまった大士とカンナの事を思いながら空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ………はぁ…………!」

 

俺は今、カンナを背負いながら猛吹雪の中を歩いていた。

光の柱に巻き込まれた俺達は、何処かの雪山の上空に転移させられ、落下の衝撃はデジソウルで防御できたが、カンナはその時に気を失ってしまい、俺はそのカンナを背負いながら、吹雪を凌げる場所を探していた。

 

「はぁ……はぁ……くっ……!」

 

思わず折れそうになる膝を踏ん張る。

 

「大丈夫かい? 相棒」

 

腰に携えているデルフが俺を気遣う。

 

「はぁ……はぁ………正直っ……厳しいな………移動の体力はともかくっ………このままじゃ凍えちまう………!」

 

本来であれば、氷雪洞窟でも使った防寒のアーティファクトがあるのでこの程度の寒さなどどうということは無いのだが、生憎ここはデジタルワールド。

魔力頼みのアーティファクトは唯のアクセサリーにしかならないし、そもそも宝物庫が起動しないので取り出す事も出来ないわけだが。

なので、諸にこの雪山の寒さが、俺の体温を容赦なく奪っていく。

せめて、雪と風だけでも凌げる場所を探そうと歩き回っているのだが、吹雪の所為で視界も悪く、中々いい場所を見つけられないでいた。

 

「く……そ………!」

 

手や足の指先の感覚が曖昧になってきており、このままでは本格的に拙い。

俺は思わず下を向く。

その時、

 

「相棒! あそこに洞窟があるぜ!」

 

デルフの言葉に前を向けば、岩壁の中にぽっかりと空いた洞窟が見える。

 

「ッ!」

 

俺は足を踏ん張り、その洞窟に向かって歩き出した。

そして、やっとの思いでその洞窟の入り口を潜る。

洞窟の中は空気は冷たかったが、雪が入ってこない分、幾分かマシだ。

俺はカンナを背から降ろし、洞窟の壁に寄りかからせる。

 

「はぁ、はぁ………まずは、風が入ってこないようにしないと…………」

 

俺は洞窟の入り口付近にある雪をかき集め、壁を作る様に積み上げていく。

 

「くっ…………」

 

もちろんその方法は素手なので、指先が凍る様に冷たい。

それを我慢しつつ、俺は雪の壁を積み上げていく。

どれだけ時間が経ったのか分からないが、入り口の壁が完成した。

苦労した甲斐だけあり、風が入って来なくなったので、体感的な寒さは随分と和らいだ。

こういうのをビバークって言うんだったか?

だが、その代わりに俺の指先の感覚は殆どない。

 

「拙いな………これから火を起こさなきゃいけないって言うのに…………」

 

俺は何とか火を起こす方法を考えようと雪の壁から離れようとした。

と、その時、

 

「あ……れ………?」

 

立ち眩みの様に意識が朦朧としてきた。

俺は立っていられずに倒れ込んだ。

 

「おい!? 相棒! しっかりしろ…………!」

 

デルフの声が遠くなっていく。

 

「やべぇ! 壁を作るのに思った以上に体力と体温を失ってやがった! 壁が完成して気が抜けたから、その影響が一気に襲ってきやがったのか!?」

 

デルフが何やら言っているが、俺はその内容を理解できない。

 

「相棒………! 寝…な…! 寝た…死ん……う……!」

 

デルフの声が途切れ途切れに聞こえるようになり、

 

「………っ! ………………!」

 

遂に俺の意識は闇へ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処までも冷たい闇の中を俺は彷徨う。

寒い………

何も感じない………

俺はどうなった………?

ここは何処だ………?

皆は何処に居るんだ?

ドルモン……!

葵……!

優花……!

シャルロット…!

カトレア……!

テファ……!

アリス……!

エリス……!

エミリア……!

クラウディア……!

俺は大切な者達の名を叫ぶが答えはない。

その時、俺の身体が手足の指先から闇に呑まれて消えて言っている事に気付いた。

ッ!?

待て!

嫌だ!

消えたくない……!

俺はそう強く思うが、闇の浸食は止まらず既に手足は消え、体が消えかかっている。

消えてしまった部分は氷のように冷たい。

そしてついに、俺の身体はすべて消え、ただ冷たさと寒さだけを感じている。

冷たい……

寒い………

苦しい………

誰か………

誰か俺を……………

 

 

 

 

 

 

 

 

助けてくれ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

そう願った瞬間、フワッと温かいものに包まれる感覚がした。

それはとても暖かく、心地いい。

それから、とても心安らぐ感覚だ。

その感覚は、俺も良く知っている気がした。

そう、これはまるで、恋人達に抱かれている様な………………

その瞬間、浮遊感を感じ、俺の意識は浮上して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………うっ」

 

温もりに包まれながら、俺は意識を取り戻した。

 

「俺は………そうだ! 雪の壁を作った後に倒れて……!」

 

俺は意識を失う前の事を徐々に思い出す。

すると、

 

「気が付いた?」

 

すぐ後ろ。

いや、すぐ耳元で囁かれた。

その声の主は紛れもなくカンナ。

だが、何故その声が耳元で聞こえるのか?

そう疑問に思いつつ、聞こえた方に首を回す。

すると、カンナの顔がすぐ傍にあった。

 

「カッ、カンナッ!?」

 

俺は反射的に離れようとしたが、動けなかった。

なぜなら、

 

「まだ動いちゃダメよ、旦那様」

 

後ろからカンナにしっかりと抱きしめられ、更にはカンナの九つの尻尾にカンナごと巻き付けられていたからだ。

 

「私の尻尾にはこういう使い方もあるのよ?」

 

カンナは楽しそうにそう言う。

先程から感じていた温かさは、カンナの尻尾に包まれていたからだった。

いや、それはいい。

それはいいんだが…………

 

「カ、カンナ………? 何で裸なんだ?」

 

俺は思わずそう問いかける。

そうなのだ。

俺自身も服を脱がされており裸の状態だし、後ろから俺を抱きしめているカンナも、背中に感じる感触は、肌と肌同士で感じるそれだ。

つまり、俺は裸の状態で、同じく裸のカンナに抱きしめられていることになる。

 

「だって、私の服も旦那様の服も、雪でずぶ濡れだったのよ? 脱がないと身体が冷えちゃうじゃない」

 

カンナは至極尤もな理由を口にした。

 

「そ、そうか…………」

 

「それに、人の身体を温めるには、人肌が一番いいって言うじゃない?」

 

「そ、そうだったか………?」

 

そう言うと、カンナは抱きしめる腕に力を込める。

カンナの言う通り、確かに温かい。

温かいんだが、それによってカンナの豊満な胸が俺の背中に直に押し付けられていることになり、俺は気が気でない。

 

「そ、その……カンナ? 助けてくれたことは感謝してるんだが、少し力を緩めてくれないか………? でないと………」

 

「………でないと………何かしら?」

 

カンナはクスクスと笑いつつ、抱きしめる腕に力を込める。

これは分かっててやってるな。

つーか、さっきから俺の息子が反応しっぱなしでカンナの尻尾に当たってるから、普通に気付いてるんだろう。

ここまで言えば自分でもわかる。

俺はカンナに欲情している。

カンナは美人だし、スタイルも葵並だし、ケモミミ尻尾属性と言うオタク心に直撃しする属性の持ち主だし。

もちろんそれだけではなく、飄々としながらも、献身的なカンナに俺は魅力を感じていた。

俺は一度溜息を吐き、

 

「…………………カンナ。お前は本当にいいのか?」

 

俺は最後に確認を取る。

正直、これ以上我慢できる自信がない。

すると、カンナはキョトンとしたあと、

 

「私の気持ちは前に言った筈よ? 愛しているわ、旦那様」

 

真剣な表情でそう告白した。

その告白に、俺は間違いなく嬉しさを感じている。

 

「あ~も~! 俺って本当に最低だよな………!」

 

自嘲気味にそう吐き捨てると、

 

「カンナ、一度放してくれ」

 

そうお願いした。

 

「嫌よ」

 

俺が逃げると思ったのか、カンナは断る。

だが、俺はもう腹は括った。

 

「一度放してくれないと、お前の方に向き直れないだろ?」

 

俺はそう口にする。

 

「ッ!」

 

カンナは驚いたように目を見開く。

すると、カンナは腕の力を緩めて俺の身体から手を放す。

尻尾には包まれたままだが、体を反転させるだけなら問題ない。

そのままカンナと向き合う形になると、今度は俺からカンナを抱きしめた。

 

「あっ、旦那様………」

 

「カンナ、愛してる」

 

「ッ!?」

 

抱きしめながらカンナの狐耳の耳元でそう囁いた。

カンナは驚いたように狐耳をピンと立てた。

それからカンナの背中に手を回したまま少し体を離し、カンナと見つめ合う。

 

「カンナ………」

 

「旦那様………」

 

どちらからともなく顔を近付け、口付けを交わす。

そしてそのまま―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚、デルフの存在をすっかり忘れていて、翌日に盛大に揶揄われたのは余談である。

 

 







オリジナル異世界編第49話です。
はい、撤退後のその後と大士とカンナの様子でした。
遭難中に何やってるんですかねこの2人?
とりあえず次回はカンナのパートナーデジモンが登場する予定。
お楽しみに。

カンナのパートナーは?(候補追加)

  • クズハモン
  • アポロモン
  • ミタマモン
  • その他
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