ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第50話 新たなる絆! ミタマモン顕現!

 

 

 

洞窟で一夜を過ごした俺とカンナは、再び雪山を歩いていた。

吹雪は止んでおり、昨日よりかはマシとは言え、それでも無視できない寒さは残っている。

なので現在、その寒さを防ぐ為に俺とカンナは身を寄せ合い、更にカンナの尻尾に包まれる事で寒さを凌ぎながら進んでいた。

 

「ふふっ………」

 

一緒に歩いていたカンナが突然微笑んだ。

 

「いきなりどうした?」

 

気になった俺が尋ねると、

 

「いいえ。ただ、私がこんな風に尻尾で愛しい男性を包む日が来るなんて思ってなかったから、ちょっとね………」

 

「………やっぱり獣人にとって、耳や尻尾を触らせるのは、特別な相手じゃないとダメなのか?」

 

もしそうだったら、コッソリとクオンの耳と尻尾をモフモフした俺にとって、割とシャレにならない案件なんだが………

 

「別にそう言う決まりがある訳じゃないけど………誰だって耳やお尻に近い所を触られるのは、いい気分じゃないでしょ?」

 

「…………それもそうか」

 

何となく言いたい事を理解して、妙に納得できた。

そのまま軽く雑談をしながら歩いていく。

目印はリアルワールド球だ。

デジタルワールドのどの辺りに飛ばされたのかは分からないが、一先ずこの雪山のエリアを抜ける事を優先しようとしていた。

暫く歩いていると、

 

「……………………ッ!」

 

何かに気付いたようにカンナが狐耳をピクリとさせ、突然上を向いた。

俺もそれにつられて上を向くと、雪に覆われた小高い岩山の頂上に何かが居た。

太陽の光が雪に反射して見辛かったが、4足歩行のデジモンだ。

 

「あれは…………」

 

俺は目を細めてそのデジモンを注視する。

シルエットは馬に近いが、その背には翼があり、頭部には一本の角。

よく見れば、その身体は緑色の鱗に覆われている。

そして、その姿は俺にも見覚えがあった。

 

「……………チィリンモン………?」

 

シアのパートナーであるクダモンの完全体の名を俺は口にする。

 

「………………………」

 

だが、そのチィリンモンは冷めた目で俺達を見下ろしている。

シアのパートナーのクダモンでは無い事は明白だ。

 

「この場所に何用か?」

 

敵意………と言うより嫌悪の感情を感じさせる声色と雰囲気で問いかけてくる。

 

「俺達は光の柱に巻き込まれてこの近くに転移させられただけだ。出来るならすぐにでも立ち去りたいんだけどな。ホーリーエンジェモンの城を知らないか?」

 

俺はとりあえず質問に答えた後、問い返した。

 

「ホーリーエンジェモン………光と闇の戦いか…………くだらぬ事だ………不毛な争いに私を巻き込むな」

 

チィリンモンは俺の問いには答えず、呆れたように呟くと、一方的に話を切って背を向けた。

 

「このデジタルワールドは近く滅びる…………最期の時までの僅かな時間………静かに過ごす事が我が望み…………早々に立ち去れ」

 

チィリンモンは取り着く島もなく飛び去ろうとして、

 

「随分と腑抜けた事を言うのね? あなた」

 

カンナがその背に言い放った。

 

「……………何?」

 

チィリンモンが再び振り向く。

 

「不毛な争いに巻き込むなっていうのは共感するわ。私が居た村も、そう言う思いを持つ者達の集まりで作られたのだから…………だけどね、自分の世界が滅びると分かってて、自分や大切なものも全て消えると知っているのに、それを甘んじて受け入れるっていうのは違うと思うわ」

 

カンナはそう言う。

 

「…………滅びは形あるものの定め………決して抗うことはできん」

 

チィリンモンは言い返した。

 

「確かにそうかもね………それは私も承知しているわ。形在るものは滅び、命あるものは必ず死ぬ」

 

カンナはチィリンモンの言葉に同意する。

そして、それは俺も分かっている。

それはどの世界でも覆せない理だ。

 

「その通りだ………故に………」

 

「けどね、それは別に『今』じゃなくても良いでしょう?」

 

チィリンモンの言葉に被せるように、カンナは言った。

 

「ッ…………!?」

 

「どうせ死ぬなら、私は精一杯生きてからの方がいいわ。それに、私には愛する娘が居るの。その娘の為にも、『今』世界を終わらせたくは無いわ」

 

「………………………」

 

チィリンモンは黙ってカンナを見据える。

 

「…………………」

 

カンナも目を逸らさずにチィリンモンを見据えた。

暫くそうしていると、

 

―――バサッ

 

「ッ!?」

 

羽音と共に、チィリンモンが居る岩山とは反対側にある岩山の頂上に何かが降り立った。

それは、白い羽毛に包まれた青く輝くクジャクのような尾羽をもつ巨鳥型のデジモンだった。

そのデジモンは俺も知らないし、ドルモンが居ないためにDアークで情報を得ることもできない。

だが、

 

「フロスベルグモン………!」

 

チィリンモンがその名を呟いた。

 

「…………何故余所者………しかも人間がこの場所に居る? チィリンモン」

 

まるで汚物を見る様な目で俺達を見下ろすフロスベルグモン。

 

「…………この者達は、ホーリーエンジェモンの城から光の柱に巻き込まれてこの付近に飛ばされたらしい」

 

「ホーリーエンジェモンだと………? ふん、どうせまたデジタルワールドの危機を救うということを口実に、我々の力を自軍に取り込もうという魂胆だろう?」

 

チィリンモンの言葉に、まるで決めつけた様にそう言い放つフロスベルグモン。

 

「いや、本当に光の柱に巻き込まれただけなんだが………昨日はマジで死にそうになったし………」

 

俺はそう言ってみるが、

 

「余所者の言葉など信用できるか………! 丁度いい、貴様達を見せしめにして、2度と我々に関わりたくなくなるようにしてくれる!」

 

「ッ!?」

 

フロスベルグモンの敵意が増し、嘴を大きく広げると、俺は直感に従いカンナを抱えてデジソウル全開でその場を飛び退いた。

直後、

 

「フリージングレイ!」

 

フロスベルグモンの口から青いレーザーが放たれ、先程まで俺達がいた場所に直撃。

その周辺を大きく凍らせ、巨大な氷塊が生み出された。

 

「冷凍ビームか!」

 

メタルガルルモンのコキュートスブレス並の冷気だ。

となれば、フロスベルグモンはおそらく究極体。

まともに戦うのは得策じゃない。

俺は近くの岩場に着地すると、

 

「話を聞いてくれ! 俺達は本当に光の柱に巻き込まれただけで、ここに居るデジモン達を如何こうしようなんて思ってない! 何なら、俺達がこのエリアを抜けるまで監視してくれたって良い!!」

 

俺はそう呼びかける。

 

「聞く耳持たぬわ!!」

 

再び口から冷凍ビームを放ってくる。

 

「くそっ!」

 

俺はデジソウルで強化した身体能力で足場を飛び移る。

次々と放たれる冷凍ビームを躱していくが、

 

「ちょこまかとすばしっこい奴め………! ならば、これで如何だ!」

 

フロスベルグモンはそう言うと翼と尾羽を広げ、

 

「イノセンスブリザード!!」

 

広げた尻尾と翼から全方位に猛吹雪が放たれた。

 

「ッ!? 範囲攻撃……!」

 

全てを凍てつかせる猛吹雪が地面や岩山を凍らせながら迫って来る。

俺はデジソウルで何とか防御できても、カンナが危ない。

俺はそう判断すると、僅かな時間の中必死に打開策を考える。

その時、吹雪に巻き込まれないように飛び立とうとするチィリンモンの姿が目に入った。

 

「ッ……………!」

 

これは賭けだが選択肢は無い。

俺はカンナの腰に手を回し、

 

「チィリンモン! 頼む!!」

 

チィリンモンに向けてカンナを投げ飛ばした。

 

「なっ!?」

 

「旦那様っ!?」

 

突然の行動にチィリンモンとカンナが驚愕の声を漏らす。

チィリンモンは反射的にだろうか、カンナをその背で受け止めている所が見えた。

しかし、その直後に俺は猛吹雪に巻き込まれる。

 

「くっ……! うぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

俺は全身にデジソウルを纏い、襲い来る冷気に抗う。

視界は吹雪で真っ白に塗りつぶされ、耳も吹き荒れる風の音以外は聞こえない。

 

「がぁあああああああっ!!」

 

身体の各部が凍り付いてきているのか、鋭い痛みが俺を襲う。

そして、遂に耐えきれなくなり、俺は地面から巻き上げられて暴風に吹き飛ばされ、激突する衝撃を感じ、俺の意識は闇に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

「旦那様!?」

 

カンナがチィリンモンの背から悲痛な声で吹雪に巻き込まれてしまった大士に向かって叫ぶ。

やがて吹雪が通り過ぎると、岩壁に叩きつけられ、体の各部が凍って磔の様にされた大士の姿があった。

 

「旦那様っ!!」

 

カンナが必死に呼びかける。

だが、

 

「フン……!」

 

フロスベルグモンは嘲笑うように声を漏らし、止めを刺すために大士に向き直る。

すると、

 

「お願い! 旦那様を助けて!」

 

カンナはチィリンモンにそう懇願した。

 

「何だと………?」

 

チィリンモンは若干困惑した声を漏らした。

 

「お願いよ! 私に出来る事だったら何だってするわ! 何だったら、この命を捧げたって良い! だからお願いよ! 旦那様を助けて………!!」

 

カンナは涙を浮かべながら必死にチィリンモンに呼びかける。

 

「………何故そこまでしてあの者を助けようとする? お前は先程言った。どうせ死ぬなら精一杯生きてからの方がいいと………お前の行動は、その言葉と矛盾する」

 

チィリンモンは疑問の言葉を漏らす。

 

「そんなの旦那様を愛してるからにきまってるじゃない!!」

 

「ッ………!?」

 

カンナの気迫のこもった言葉に、チィリンモンは虚を突かれたように動揺した。

 

「私の精一杯生きるっていうのは、愛する娘や旦那様と一緒にって意味よ! 自分の大切を護る為なら命だって懸けれるわ!!」

 

「護る………為…………」

 

「そうよ! 大切なものを護る為だったら何でもする! 何だったら、この世界だって救って見せるわ!」

 

「ッ……………!」

 

「あなただって、死にたいわけじゃないんでしょう!? 何もせずにここに居て、世界と共に滅びるの待つだけの生き方なんて、本当に受け入れてるわけ無いんでしょう!?」

 

「わ、我は……………」

 

カンナの言葉に、チィリンモンは言い淀む。

 

「だったら抗いなさい!! 滅びだろうと、定めだろうと、精一杯足掻いてみなさい! そうすれば、きっと死ぬことになっても、後悔だけはしないですむわ………」

 

カンナは最後に、まるで諭すように言った。

その時、

 

「これで終わりだ!」

 

フロスベルグモンが大士に向かって口を広げ、必殺技を放つ体勢になる。

 

「ッ! お願いッ!!」

 

カンナが万感の思いを込めて叫ぶ。

 

「……………ッ!」

 

その瞬間、チィリンモンが目を見開く。

 

「フリージングレイ!!」

 

フロスベルグモンの口から冷凍ビームが放たれ………

 

「疾風天翔剣!!」

 

………る瞬間に、その頭部に衝撃が走り、狙いが狂って明後日の方向に冷凍ビームが放たれた。

 

「…………………………………」

 

フロスベルグモンは無言のままゆっくりと顔を正面に戻す。

そして、

 

「………………何のつもりだ? チィリンモン」

 

静かに正面に居るチィリンモンに問いかけた。

チィリンモンは僅かに俯き、

 

「……………わかりません…………ただ、このままではいけないと思った…………それだけです」

 

自分でも何故行動を起こしたのか正確に理解してないのか、チィリンモンはそう零す。

 

「チィリンモン…………」

 

カンナはそんなチィリンモンに、感謝の気持ちを述べるようにその名を呟いた。

 

「ふん。その輩に絆されおったか…………よかろう! 貴様もこの地の安寧を乱す反逆者として処刑する!」

 

「ッ!?」

 

その言葉に、僅かに声を漏らすチィリンモン。

だが、すぐに気を取り直すと、

 

「しっかり掴まっていろ!」

 

チィリンモンは背に乗るカンナにそう言うと、

 

「迅速の心得!!」

 

分身が出来るほどのスピードでフロスベルグモンを翻弄しようとする。

 

「しゃらくさいわ!!」

 

フロスベルグモンは翼を強く一羽搏きする。

それだけで暴風が巻き起こり、チィリンモンは吹き飛ばされそうになる。

 

「くっ!」

 

チィリンモンは何とか耐える。

しかし、暴風に耐えている隙にフロスベルグモンはチィリンモンのすぐ近くまで接近してきていた。

フロスベルグモンは、足でチィリンモンの角を鷲掴む。

 

「ぐっ………!」

 

「ふん!」

 

フロスベルグモンがその足に力を込めると、チィリンモンの角を圧し折った。

 

「ぐあっ!?」

 

「チィリンモン!?」

 

チィリンモンの苦しむ声に、カンナが声を上げる。

更に、

 

「はああっ!」

 

続けて繰り出されたフロスベルグモンの蹴りで、チィリンモンは吹き飛ばされる。

 

「ぐああああああああっ!?」

 

「きゃぁあああああああっ!?」

 

そのまま地面に激突し、カンナは投げ出されるが、雪がクッションになったおかげで大きなケガは無い。

だが、彼女達の前にフロスベルグモンが悠々と降り立ち、

 

「完全体のお前が究極体の我に敵うと思ったか?」

 

「ぐぐっ………!」

 

その言葉に、チィリンモンは立ち上がろうとしたが、フロスベルグモンに踏みつけられて地面に抑え付けられる。

 

「があっ!?」

 

「チィリンモン!?」

 

カンナが悲鳴のような声を上げる。

だが、チィリンモンは立ち上がろうと必死にもがいている。

それを見て、

 

「…………らしくないなチィリンモン………以前のお前であれば、無駄な抵抗などしなかった筈…………何がお前をそこまで変えた?」

 

フロスベルグモンはそう問いかける。

 

「…………さあ、何故だろうな? 正直、自分自身でもよく分からん…………だが、彼女の言葉を聞き、必死になる彼女を見て、抗うことも悪くない………そう思ったのかもしれん…………」

 

チィリンモンはカンナを見つめる。

 

「チィリンモン………」

 

カンナもチィリンモンを見つめ返した。

 

「だが、その所為でお前は死ぬことになる。大人しくして居れば、もう少し長生きできたものを……………」

 

フロスベルグモンは諭すようにそう言った。

しかし、

 

「………『精一杯足掻けば、たとえ死ぬことになろうとも、後悔は無い』…………! その通りだ……!」

 

カンナの言葉を繰り返し、チィリンモンは尚も立ち上がろうとする。

 

「そうか………………ならば、それが無駄な足掻きだと心に刻みながら死ぬがいい!!」

 

フロスベルグモンが脚を大きく振り上げる。

止めを刺すつもりだ。

 

「チィリンモン!!」

 

カンナが叫ぶ。

その瞬間、

 

「無駄じゃない!!」

 

「なっ!? ぐぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!?!?」

 

その言葉と共に、フロスベルグモンが横殴りに吹き飛ばされ、転倒した。

そして、チィリンモンの前に着地したのは、ボロボロになり、未だあちこちを凍らせながらも、その拳に金色のデジソウルを宿す大士の姿だった。

 

「旦那様!!」

 

その姿に、カンナは喜びの声を上げる。

 

「ありがとうチィリンモン。あなたが抗ってくれたおかげで、俺が目を覚ますまでの時間が稼げた」

 

大士はそう言う。

 

「フロスベルグモンを………殴り倒した………?」

 

チィリンモンが呆然と呟く。

 

「き、貴様………!」

 

フロスベルグモンが困惑しながらも起き上がる。

 

「フロスベルグモン! お前はチィリンモンの抗いを無駄と言ったが、それは決して無駄なんかじゃない! 抗う事を止めてしまえば可能性はそこで潰えてしまう………けど、抗えば抗っただけ、可能性は繋がる!! チィリンモンが抗ったお陰で、俺が目覚めるという可能性を繋げる事が出来た!」

 

「ッ! 何が可能性だ!? 我を殴り倒したのは驚きだが、それは所詮不意打ちあっての事! 2度目は無い!!」

 

フロスベルグモンは憤慨するように叫び、空中に浮かぶ。

 

「ならば俺は、次の可能性に賭けてお前に挑む!」

 

大士は拳のデジソウルを燃やして戦う意志を見せる。

 

「次の可能性だと!? チィリンモンは倒れ、貴様の拳も2度は喰らわん! 他にどんな可能性があるというのだ!?」

 

「あるさ! カンナと言う可能性がな!!」

 

大士は即座に言い返した。

 

「旦那様………?」

 

カンナは声を漏らす。

 

「カンナは俺が惚れた女だ。だからこそ、その可能性に辿り着けると俺は信じている!!」

 

大士はそう叫んでフロスベルグモンに立ち向かっていった。

 

「私の………可能性………?」

 

カンナは大士の言葉に困惑する。

だが、

 

「ぐぐ………」

 

「チィリンモン!」

 

チィリンモンが立ち上がろうとしている事に気付き、カンナは駆け寄った。

 

「大丈夫?」

 

チィリンモンに声を掛けるカンナ。

 

「ああ………何とかな………」

 

チィリンモンは立ち上がり、フロスベルグモンに向かっていく大士を見つめる。

大士はフロスベルグモンが放つ冷凍ビームを避けつつ接近していくが、フロスベルグモンは空を飛んで決して降りて来ようとしない。

だが、その代わりに先程の範囲攻撃は大士にダメージを与える十分な距離まで近付けないので、どちらも決定打に賭ける状況だった。

しかし、ジリ貧なのは間違いなく大士だろう。

いくらデジソウルを纏っているとは言え、物理攻撃なら耐えたり弾くことは可能でも、冷凍ビームのような攻撃は完全には防げないため、大士にとってかなり相性が悪いのだ。

だが、それでも大士は諦める素振りは一切無い。

先程の言葉通り可能性を信じ、抗い続けている。

 

「旦那様………」

 

その姿を見て、カンナが心配そうな声を漏らす。

 

「…………抗い続ければ、可能性は繋がる…………」

 

チィリンモンが呟いた。

 

「チィリンモン………?」

 

「我も………もう少し足掻いてみるとしよう…………!」

 

チィリンモンはそう言って足に力を込めて完全に立ち上がる。

 

「大丈夫なの?」

 

「精一杯足掻けば後悔は無いのだろう?」

 

チィリンモンは、小さく笑いながらそう言った。

 

「…………そうね」

 

カンナも微笑む。

 

「だけど、私も一緒に足掻かせて」

 

「む?」

 

「旦那様は、私に可能性があると言ったわ。なら、私は妻として旦那様の言葉を信じるわ」

 

その表情に迷いは無い。

 

「……………其方の名は?」

 

「………カンナよ」

 

「そうか………ではカンナよ。我の背に乗るが良い」

 

チィリンモンは先程の咄嗟の行動の時とは違い、今度は自分の意思でカンナを背に乗る様に促し、身を屈める。

 

「ええ」

 

カンナは頷き、チィリンモンの背に跨る。

 

「では往くぞ! カンナ!」

 

「いつでもいいわよ! チィリンモン!」

 

カンナの声に合わせ、チィリンモンが力強く地を蹴る。

そのまま空中を駆けるようにフロスベルグモンに向かっていくチィリンモンとカンナ。

すると、それにフロスベルグモンがいち早く気付いた。

 

「チィリンモン! まだ無駄な足掻きを続けるか!?」

 

フロスベルグモンが叫ぶ。

 

「無駄かどうかはやってみねば分からぬ事! そして、我は精一杯足掻くと決めた!」

 

「そして、抗う事を止めない限り、可能性は繋がるわ!」

 

チィリンモンとカンナの反論に、

 

「同じ戯言は聞き飽きたわ! ならば今すぐその可能性など万に一つも無い事を教えてやろう!!」

 

フロスベルグモンは口を大きく開けることで応えた。

 

「フリージングレイ!!」

 

放たれる全てを凍てつかせる冷凍ビーム。

それに、

 

「我々の可能性は………!!」

 

「絶対に断ち切らせない!!」

 

チィリンモンとカンナは呑み込まれた。

 

「カンナ………チィリンモン………!」

 

それを目撃した大士が2人の名を呟く。

そして、フロスベルグモンは大士に向き直ると、

 

「見たか! 貴様らの可能性など、万に一つも無い事を!!」

 

そう言い放った。

 

「…………………ああ、そうだな」

 

大士は、フロスベルグモンの言葉を肯定するように呟く。

 

「ならば貴様も、無駄な足掻きなどやめて、潔く散るが良い!!」

 

フロスベルグモンは、大士に向かってフリージングレイを放つ体勢を取る。

それに対し、大士は………

 

「…………確かに万に一つも可能性は無かったのかもしれない……………ならば、億に一つの可能性に賭けるだけだ」

 

「何…………?」

 

「そして…………その億に一つの可能性すらも、俺が惚れた女(カンナ)なら掴み取れると信じている………!」

 

大士がそう言い放った瞬間、フロスベルグモンの眼前で光が弾けた。

 

「な、何だこの光は!?」

 

突然の事態に狼狽えるフロスベルグモン。

そして、その光の中では、

 

「チィリンモン………究極進化っ!!」

 

あるシルエットが浮かび上がってくる。

長い首と胴と尻尾を持ち、胴体にはしめ縄が巻かれ、頭部には金の仮面。

首は長い毛に覆われ、周囲には4つの車輪が浮遊している。

何処か和風な神聖さを感じさせる神獣型デジモン。

 

「ミタマモン!!」

 

冷気によって出来た煙を切り裂き、ミタマモンが飛び出してくる。

その背にはカンナの姿があり、カンナの右手には水色のデジヴァイスが握られていた。

 

「なっ!? 何だとぉっ!?」

 

フロスベルグモンが驚愕の声を上げる。

すると、ミタマモンの周囲に浮遊していた車輪が炎に包まれ、

 

轟炎輪(ごうえんりん)!!」

 

突風と共にフロスベルグモンに向かって放たれた。

 

「ぬぐぁあああああああっ!?」

 

それらがフロスベルグモンの各部に着弾。

フロスベルグモンは悲鳴を上げて地に墜ちた。

氷属性のフロスベルグモンにとって、炎系の攻撃は正に弱点だ。

その隙にミタマモンは大士の近くに降り立つ。

 

「旦那様!」

 

「カンナ………流石だな。チィリンモン………いや、ミタマモンもな!」

 

大士は純粋に2人を称賛する。

 

「………これが、抗うことで辿り着いた可能性………」

 

ミタマモンは、進化した己の姿に驚いている。

 

「………くっ!」

 

大士は気が抜けたのか、苦しそうな表情でふら付く。

 

「旦那様!」

 

カンナはミタマモンの背から飛び降りると、大士を支える。

 

「大丈夫?」

 

「あ、ああ………だが、正直キツイ………」

 

大士は戦いでボロボロな上、フロスベルグモンの氷系の技により体温が奪われている。

正直限界だ。

すると、

 

響香水月(きょうかすいげつ)

 

ミタマモンが呟くと、大士の周囲にシャボン玉のような水球が幾つも浮かび上がり弾けて消えていく。

大士は一瞬怪訝に思ったが、

 

「ッ………!? 体が!?」

 

大士の傷が癒えていき、体力も回復している。

 

「回復技も持っているのか!」

 

大士は驚愕の声を上げる。

それからミタマモンに向き直り、

 

「ありがとうミタマモン!」

 

「フッ、礼を言われるほどの事では無い」

 

そう言って笑みを零すミタマモン。

すると、

 

「おのれぇぇ………! この地の安寧を乱す狼藉者め………!!」

 

「フロスベルグモン……我々はこれ以上争う気はない。だが、我はカンナ達と共に行くと決めた。我は、このデジタルワールドの滅びに抗ってみようと思う」

 

「そんな事出来るわけが無かろう! 滅びは形在るものが持つ定めだ!」

 

「確かにそうだろう………だが、その滅びの時を引き延ばす事は不可能ではないかもしれん」

 

「何………!」

 

「確かに滅びは定め。それは覆らないかもしれん。しかし、その滅びを受け入れる必要は無いのだ!」

 

ミタマモンは言い放つ。

 

「故に我はカンナ達と共に行き、滅びへと抗う! 少なくとも、そうした方が後悔は無い!」

 

「ッ! ならば、その言葉が偽りで無い事を証明してみせよ!!」

 

フロスベルグモンは口を大きく開け、今まで以上の冷気を集中させる。

それに対し、ミタマモンはその両眼を輝かせる。

そして、

 

「フリージングレイ!!」

 

フロスベルグモンは冷凍ビームを放ち、

 

灰迅雷瞳(かいじんらいどう)!!」

 

ミタマモンはその瞳から雷を放った。

互いの中央で冷凍ビームと雷がぶつかり合う。

一瞬の拮抗。

だが、その拮抗はすぐに崩れた。

 

「おおおおおおおおっ!!」

 

ミタマモンの放つ雷が、フロスベルグモンの放つ冷凍ビームを押し返していく。

 

「な、何っ!?」

 

フロスベルグモンが驚愕の声を漏らす。

 

「これが、我の覚悟だ!!」

 

ミタマモンのその言葉と共に、雷が冷凍ビームを打ち破り、フロスベルグモンに直撃した。

 

「がぁあああああああああああああっ!?!?!?」

 

フロスベルグモンは雷の直撃を受け、一瞬痙攣したように動かなくなった後、バッタリとその身が地面に倒れ込んだ。

データ分解は始まっていないが、完全に気を失っている様だ。

ミタマモンはそれを確認すると、大士とカンナの近くに降り立つ。

 

「行こう。ホーリーエンジェモンの城なら、大体の位置は分かる」

 

ミタマモンはそう言う。

 

「…………いいのか?」

 

大士がそう聞くと、

 

「ああ。我も抗おう。カンナと共に………」

 

「ミタマモン………」

 

その言葉に、カンナも嬉しそうに呟いた。

そして、カンナと大士はミタマモンの背に跨り、ミタマモンは大空へ向かって飛び立つのだった。

 

 

 

 

 

 







はい、オリジナル異世界編第50話でした。
カンナのパートナーはチィリンモン→ミタマモンとなりました。
デジヴァイスは初代バージョンです。
特に意味は無し。
話を強引に進めたために、若干話がしっちゃかめっちゃか感がありますね………
さて次回は再びホーリーエンジェモンの城へ。
大士が居ない状況でどうやって切り抜けるのか!?
お楽しみに。

カンナのパートナーは?(候補追加)

  • クズハモン
  • アポロモン
  • ミタマモン
  • その他
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